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特開2022-120611粒状物の跳ね検出装置及び跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120611
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】粒状物の跳ね検出装置及び跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
G01N21/85 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017608
(22)【出願日】2021-02-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
(72)【発明者】
【氏名】沖本 光太郎
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA04
2G051AB20
2G051CA03
2G051CA07
2G051DA07
2G051DA13
2G051EA08
2G051ED23
(57)【要約】
【課題】流下する粒状物の跳ねを定量的に把握することが可能な、光学式選別機を提供すること。
【解決手段】粒状物2を搬送させる搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記粒状物2を撮像可能な撮像手段4,5と、前記撮像手段4,5によって取得したデータに基づいて、前記搬送手段上を搬送される前記粒状物2における跳ねの有無を判別可能な跳ね判別手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物を搬送させる搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記粒状物を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって取得したデータに基づいて、前記搬送手段上を搬送される前記粒状物における跳ねの有無を判別可能な跳ね判別手段と、を備えた
ことを特徴とする粒状物の跳ね検出装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、
前記搬送手段により搬送される前記粒状物を一方側から撮像可能な第1撮像手段と、
前記第1撮像手段と対向する他方側から前記粒状物を撮像可能な第2撮像手段と、を備え、
前記跳ね判別手段は、前記第1撮像手段によって撮像された前記粒状物の画像と前記第2撮像手段によって撮像された前記粒状物の画像との画素ずれの検出結果に基づいて、前記粒状物における跳ねの有無を判別可能である
請求項1に記載の粒状物の跳ね検出装置。
【請求項3】
前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記搬送手段により搬送される前記粒状物の跳ねを抑制することが可能な跳ね調整手段を備える
請求項1又は2のいずれかに記載の粒状物の跳ね検出装置。
【請求項4】
前記搬送手段により搬送される前記粒状物に対して噴風を噴射することが可能なエジェクタを備え、
前記跳ね調整手段は、前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記エジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲を調整可能である
請求項3に記載の粒状物の跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、前記粒状物を一定方向に流下させるシュートであり、
前記シュートから放出された前記粒状物に対して噴風を噴射することが可能なエジェクタと、
前記シュートの傾斜角度を調整可能なシュート傾斜角調整機構と、
前記シュートを流下する前記粒状物の跳ねを抑制することが可能な跳ね調整手段と、を備え、
前記跳ね調整手段は、前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記シュートの傾斜角度と、前記エジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲と、を調整可能である
請求項1又は2のいずれかに記載の粒状物の跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、前記粒状物を一定速度で搬送するベルトコンベアであり、
前記ベルトコンベアから放出された前記粒状物に対して噴風を噴射することが可能なエジェクタと、
前記ベルトコンベア上で搬送される前記粒状物の跳ねを抑制可能な跳ね調整手段と、
を備え、
前記跳ね調整手段は、前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記ベルトコンベアのベルトテンションの張力、前記ベルトコンベアの搬送速度、及び前記ベルトコンベアと同期して前記粒状物を前記ベルトコンベアに押し付ける押し付けローラの押し付け力のうちのいずれかと、前記エジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲と、を調整可能である
請求項1又は2のいずれかに記載の粒状物の跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流下する粒状物の跳ねを検出可能な、粒状物の跳ね検出装置及び跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学式の粒状物選別装置においては、複数の種類の穀粒等の粒状物を対象として選別作業を行うことができる。しかし、粒状物の種類や形状、大きさ、流量等によっては搬送手段となるシュート上での流下状態が異なることが想定される。このような状況で粒状物がシュート上を流下すると、粒状物がシュート上を跳ねながら(バウンドしながら)流下することとなる。粒状物がシュート上を跳ねながら流下すると、粒状物がシュート下端から放出される際に正常な流下軌跡を通過せず、正確に粒状物を選別することができない。これが、粒状物選別装置にあっては、選別精度低下の要因となる。
【0003】
光学式の粒状物選別装置においては、従来から前述した粒状物の「跳ね」を抑制するために様々な技術的手段が講じられている。
【0004】
特許文献1には、真に球形状ではない大豆を被選別物とした場合であってもシュート上での「跳ね」を抑制することができる粒状物選別装置が開示されている。このものは、粒状物を流下させるシュートのシュート底面に噴風孔を多数設け、この噴風孔から被選別物に噴風すべく上記シュート底面の背面側に蓄気室を設けて、この蓄気室に送風機を連通させるという技術的手段を講じたものである。すなわち、シュート上を流下する被選別物は、噴風孔からの噴風によってわずかに浮上しながら流下することとなる。これにより、被選別物が傾斜したシュートの底面に接触して跳ねることなく整列した流下状態となり、検出部における被選別物の流下軌道を同一にすることができるといった作用・効果の記載がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明にあっては、シュート底面に噴風孔を多数設け、この噴風孔から被選別物に噴風すべく上記シュート底面の背面側に蓄気室を設けて、この蓄気室に送風機を連通させるという大掛かりな構成が必要となる。また、種々の穀粒等の粒状物の種類や形状、大きさ、流量等に臨機応変に対応するのが難しいといった問題がある。
【0006】
特許文献2は、上記同様、真に球形状ではない大豆を被選別物とした場合の粒状物選別装置の発明であって、傾斜流下路の上端部に、当該傾斜流下路への大豆の供給量を調整するシャッターを設け、さらに、その下流側に振動供給路と傾斜流下路とを直線状に配置して、傾斜流下路を流下する大豆の「跳ね」を抑制しようとしたものである。
しかしながら、特許文献2に記載の発明も特許文献1に記載の発明と同様に、種々の穀粒等の粒状物の種類や形状、大きさ、流量等に臨機応変に対応するのが難しいといった問題がある。
【0007】
特許文献3及び特許文献4には、長粒種米のような細長い粒状物や、パーボイル米のような表面に粘性を有する粒状物を被選別物とし、これを大量に供給した場合であっても、粒状物の流れのムラや、粒状物がシュート上で跳ねて流下方向に分散することを抑制することのできる光学式選別機用のシュートが開示されている。
【0008】
すなわち、特許文献3には、複数の突部が形成される表面を有して被選別物を振動フィーダから受け取る第一部分と、当該第一部分から連続し、下端から被選別物を自由落下させる第二部分とをシュートに備えた構成が開示されている。これにより、振動フィーダから供給される被選別物を受け取る第一部分が、複数の突部が形成される表面を有するため、当該第一部分に落下する被選別物を確実に分散させることができ、粒状物の流れのムラを防ぐ。その結果、不良品の検出ミスを防ぎ、選別精度を向上させることができるとの作用・効果の記載がある。
【0009】
また、特許文献4には、粒状物が流下するシュートの表面全体に滑らかな起伏を形成することで、粒状物が互いに重なったり結合したりした状態で流下することや、粒状物の流れのムラや跳ねを抑制することが記載されている。
しかしながら、特許文献3及び特許文献4に記載の発明は、長粒種米のような細長い粒状物やパーボイル米のような表面に粘性を有する粒状物に特化したものであり、種々の穀粒等の粒状物の種類や形状、大きさ、流量等に臨機応変に対応するのが難しいといった問題がある。
【0010】
特許文献5には、手動で螺子を回転させてシュートの傾斜角度を可変とした技術が開示されている。すなわち、シュートの傾斜角度を微調整することで、穀粒の正常な流下軌跡を維持させ、穀粒の品質を光学的に判別することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63-084680号公報
【特許文献2】特開昭63-093387号公報
【特許文献3】特開2013-000684号公報
【特許文献4】特開2013-043164号公報
【特許文献5】実公昭60-26011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、特許文献5に記載の考案のように、シュートの傾斜角度を可変とするという簡単な操作であれば、種々の穀粒等の粒状物の種類や形状、大きさ、流量等に適宜対応することが可能であると考えた。しかしながら、シュートの傾斜角度が、種々の穀粒等の粒状物の種類や形状、大きさ、流量等に応じて適正であるのかどうか(例えば、真に球形状ではない大豆や、長粒種米のような細長い粒状物、パーボイル米のような表面に粘性を有する粒状物など、それぞれに「跳ね」の生じない適正な傾斜角度は何度か)は全く解明されておらず不明であった。すなわち、シュートの傾斜角度の調整は、従来から作業者の目視によって感覚的に行われているために、作業者による選別精度のバラツキが生じている虞(おそれ)がある。
【0013】
本発明は上記問題点にかんがみ、シュート上を流下する粒状物の跳ねを定量的に把握することが可能な粒状物の跳ね検出装置及び跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置を提供することを技術的課題とする。また、流下する粒状物の跳ねを抑制する跳ね抑制装置を備え、上記跳ね検出装置による跳ねの検出信号に基づいて跳ね抑制装置を制御し、粒状物の選別精度を向上させることが可能な粒状物選別装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明は、
粒状物を搬送させる搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記粒状物を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって取得したデータに基づいて、前記搬送手段上を搬送される前記粒状物における跳ねの有無を判別可能な跳ね判別手段と、を備えたことを特徴とする粒状物の跳ね検出装置とした。
【0015】
また、請求項2記載の発明では、
前記撮像手段は、
前記搬送手段により搬送される前記粒状物を一方側から撮像可能な第1撮像手段と、
前記第1撮像手段と対向する他方側から前記粒状物を撮像可能な第2撮像手段と、を備え、
前記跳ね判別手段は、前記第1撮像手段によって撮像された前記粒状物の画像と前記第2撮像手段によって撮像された前記粒状物の画像との画素ずれの検出結果に基づいて、前記粒状物における跳ねの有無を判別可能であることを特徴とする跳ね検出装置とした。
【0016】
さらに、請求項3記載の発明では、
前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記搬送手段により搬送される前記粒状物の跳ねを抑制することが可能な跳ね調整手段を備えることを特徴とする粒状物の跳ね検出装置とした。
【0017】
そして、請求項4記載の発明では、
前記搬送手段により搬送される前記粒状物に対して噴風を噴射することが可能なエジェクタを備え、
前記跳ね調整手段は、前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記エジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲を調整可能である
請求項3に記載の粒状物の跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置とした。
【0018】
また、請求項5記載の発明では、
前記搬送手段は、前記粒状物を一定方向に流下させるシュートであり、
前記シュートから放出された前記粒状物に対して噴風を噴射することが可能なエジェクタと、
前記シュートの傾斜角度を調整可能なシュート傾斜角調整機構と、
前記シュートを流下する前記粒状物の跳ねを抑制することが可能な跳ね調整手段と、を備え、
前記跳ね調整手段は、前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記シュートの傾斜角度と、前記エジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲と、を調整可能である
請求項1又は2のいずれかに記載の粒状物の跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置とした。
【0019】
そして、請求項6記載の発明では、
前記搬送手段は、前記粒状物を一定速度で搬送方向に投げ出して自由落下させるベルトコンベアであり、
前記ベルトコンベアから放出された前記粒状物に対して噴風を噴射することが可能なエジェクタと、
前記ベルトコンベア上で搬送される前記粒状物の跳ねを抑制可能な跳ね調整手段と、
を備え、
前記跳ね調整手段は、前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記ベルトコンベアのベルトテンションの張力、前記ベルトコンベアの搬送速度、及び前記ベルトコンベアと同期して前記粒状物を前記ベルトコンベアに押し付ける押し付けローラの押し付け力のうちのいずれかと、前記エジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲と、を調整可能である
請求項1又は2のいずれかに記載の粒状物の跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置とした。
【発明の効果】
【0020】
上記発明によれば、撮像手段によって、流下する粒状物の跳ねの有無を判別することが可能となり、これに基づいて、粒状物の跳ねを抑制する措置を実行することが可能となる。例えば、光学式の粒状物選別装置に本発明を適用することにより、不良粒の選別精度を向上することが可能となる。
【0021】
上記発明によれば、第1撮像手段と第2撮像手段とによって撮像された粒状物の画像から、定量的に画素ずれを検出することが可能となり、粒状物における跳ねの有無を高精度に判別することができる。
【0022】
上記発明によれば、跳ねの判別結果に基づいて、跳ね調整手段により、粒状物の跳ねを抑制することができる。
【0023】
上記発明によれば、跳ね調整手段により、画素ずれ検出手段の検出結果に基づくエジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲が調整可能となり、選別対象となる粒状物を確実に選別することができる。
【0024】
光学式選別機に備えられた、粒状物の品質を判別するための撮像手段を利用し、跳ね検出することが可能となる。これにより、新たに跳ね検出のための撮像手段を設ける必要がなくなり、既存の品質を判別するための撮像手段によって効率的に、低コストで跳ね検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態における光学式選別機の運転前の制御フローである。
図2】撮像手段による、通常の流下軌跡から外れた粒状物の撮像態様を説明する図である。
図3】画素ずれが縦ずれである場合の態様を示した図である。
図4】画素ずれに基づく跳ね量の閾値を説明する図である。
図5】撮像手段による、通常の流下軌跡から外れた粒状物の撮像態様を説明する図である。
図6】画素ずれが横ずれである場合の態様を示した図である。
図7】流下する粒状物の画素ずれを示した図である。
図8】本実施形態における光学式選別機の運転中の制御フローである。
図9】エジェクタによる噴風の噴射範囲を説明する図である。
図10】シュートの傾斜角度を調整する機構を説明する断面図である。
図11】シュートの傾斜角度を調整する機構の別実施形態を説明する断面図である。
図12】粒状物の飛散率に基づくシュートの傾斜角度の制御フロー図である。
図13】飛散率と傾斜角度調整回数の関係を示したグラフである。
図14】粒状物の飛散率に基づくシュートの傾斜角度の別実施形態による制御フロー図である。
図15】飛散率と傾斜角度調整回数の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施形態における粒状物の跳ね検出装置について図面を用いて説明する。
本実施形態の粒状物の跳ね検出装置は、例えば、粒状物2を選別する光学式の粒状物選別装置(光学式選別機1)に備えられる。そして、シュート3上を流下するとともに、当該シュート3下端から放出されて自由落下により光学検出部に至る被選別物としては、米、麦、豆類、コーンなどの穀粒のほか、工業製品の原料となるガラス製や樹脂製の粒状物2などを適宜選択することができる。
【0027】
(試運転中における跳ね検出)
図1には、本実施形態の光学式選別機1の稼働運転前の試運転において、シュート3上を流下する被選別物としての粒状物2の跳ねを検出することと、粒状物2の跳ねの検出結果から粒状物2の跳ねを抑制するように調整することとを併せた制御フローが示されている。光学式選別機1の稼働運転前の試運転では、シュート3上を流下する粒状物2に跳ねが生じていると、粒状物2がシュート3下端から放出されて自由落下する際に、通常の流下軌跡から外れた軌道で粒状物2が光学検出部によって検出される。そして、光学検出部における跳ねの検出結果に応じて、シュート3上を流下する粒状物2の跳ねを抑制するように必要な調整が行われる。
【0028】
図2に示すように、光学式選別機1には、粒状物2を流下させるシュート3と、当該シュート3下端から放出されて自由落下する粒状物2を撮像することが可能な撮像手段4,5と、当該撮像手段4,5から取得した画像データを分析して良品・不良品を判別するとともに、不良品と判別された場合に除去信号を出力して選別部のエジェクタを駆動するなどの制御を行う不図示の制御部と、を少なくとも備えている。
【0029】
続いて、本実施形態における光学式選別機1における粒状物2の跳ね検出装置の制御構成について図1の制御フローに基づいて説明する。まず、光学式選別機1の稼働運転前の試運転では、不図示の制御部が備える画素ずれ検出手段によって、粒状物2の前方画像(フロント画像)と後方画像(リア画像)との差分が算出される(ステップS101)。
【0030】
より詳細に説明すると、図2に示されるように、シュート3下端から放出された粒状物2は、一方側(本実施形態では前方)から撮像することが可能な第1撮像手段4と、流下軌跡6を挟んで前記第1撮像手段4と対向する他方側(本実施形態では後方)から粒状物2を撮像することが可能な第2撮像手段5とによって、粒状物2の前方画像と後方画像とがそれぞれ撮像される。粒状物2がシュート3上を跳ねることなく正常にシュート3下端から放出される場合は、粒状物2が流下軌跡6に沿った軌道で自由落下し、点Aにおいて、第1撮像手段4と第2撮像手段5とによって撮像されることとなる。このとき、第1撮像手段4と第2撮像手段5とは、いずれも点Aを監視するように焦点が合わされており、粒状物2が点Aに到達したときの第1撮像手段4と第2撮像手段5とによる撮像のタイミングは、ほぼ同じタイミングとなる。
【0031】
一方、粒状物2がシュート3上で跳ね、シュート3下端から放出されて自由落下する際、通常の流下軌跡6よりも上方に外れた軌道で流下した場合(図2の符号2の黒色楕円)には、まず、第1撮像手段4によって符号2の黒色楕円が撮像される(図2の左側の図を参照)。次いで、図2の左側の図から、わずかに粒状物2が自由落下して図2の右側の図に示された位置に至ったタイミングで、第2撮像手段5によって符号2の黒色楕円が撮像される。
【0032】
すなわち、第1撮像手段4と第2撮像手段5とがともにラインセンサであり、点Aを監視しているとすれば、図2の左側の図に示したタイミングで第1撮像手段4によって符号2の黒色楕円を撮像するときは、第2撮像手段5では、符号2の黒色楕円は監視されていない。その後、図2の右側の図に示したタイミングになると、第1撮像手段4では符号2の黒色楕円は撮像できず、第2撮像手段5により符号2の黒色楕円が監視されることになる。つまり、第1撮像手段4と第2撮像手段5とで、撮像される粒状物2の撮像位置が異なり、それぞれの撮像手段4,5が撮像するタイミングに時間差が生じることとなる。なお、撮像画像は点Aからずれているので、焦点(ピント)はわずかにぼけているかも知れない。
【0033】
したがって、第1撮像手段4によって撮像された粒状物2の前方画像と、第2撮像手段5によって撮像された粒状物2の後方画像を重ねると、図3に示されるように、流下方向に撮像タイミングの時間差による画素ずれが生じる(以下、流下方向の画素ずれを「縦ずれ」という。)。画素ずれは、不図示の制御部における画素ずれ検出手段によって、前方画像と後方画像との差分として定量的に算出される。画素ずれは、正常な流下軌跡6からの粒状物2の跳ねが大きくなるほど大きくなる。
【0034】
本実施形態では、画素ずれの面積を算出し、撮像された粒状物2の全体面積に対する画素ずれの割合によって、粒状物2の跳ねを定量的に把握できるように構成されている。しかし、粒状物2の跳ねを定量的に把握する方法としては、必ずしも面積によるものに限られるものではなく、例えば、前方画像の粒状物2の重心位置と、後方画像の粒状物2の重心位置との離間距離を算出することで、粒状物2の跳ねを定量的に把握することも可能である。
【0035】
次いで、図1の制御フロー図では、撮像された粒状物2が、跳ねた粒状物2であるか否かが判別される(ステップS102)。撮像された粒状物2が跳ねた粒状物2であるか否かは、跳ねの程度を判別することにより行われ、図4に示されるように、画素ずれ検出手段によって検出された画素ずれの割合(例えば、撮像された各粒状物の面積和における、画素ずれ面積和の割合)を跳ね量とし、当該跳ね量に所定の閾値を設定して、不図示の制御部における跳ね判別手段によって粒状物2の跳ねを判別している。ステップS102において、跳ね量が閾値A未満(領域1)であれば、粒状物2は跳ねた粒状物2ではないと判別し、ステップS109に至り、試運転を終了して通常の稼働運転が開始可能となる。なお、図4における跳ね量の閾値Aを0(閾値A=0)とし、画素ずれが僅かでも検出されれば、粒状物2が跳ねた粒状物2であるとしてステップS103の判断処理へ進むように構成することも可能である。
【0036】
一方、ステップS102における判別において、跳ね量が図4に示される閾値A以上(領域1又は領域2)であると判断された場合(閾値A≦跳ね量)は、粒状物2が跳ねた粒状物2であると判別され、ステップS103の判断処理へ進む。そして、ステップS103では、検出された画素ずれに基づく跳ね量が図4に示される閾値B以上(領域3)であるか否かが判別される。
【0037】
ステップS103において画素ずれに基づく跳ね量が図4に示される閾値B以上(領域3)でないと判別された場合(閾値A≦跳ね量<閾値B)は、粒状物2に対して噴風を噴射して選別するエジェクタの、噴風の噴射範囲を拡大する制御が跳ね調整手段によって実行される(ステップS108)。図9には、粒状物2に対する噴風の噴射範囲の一例が図示されているが、エジェクタによる噴風の噴射時間を延長することで、粒状物2の流下方向における噴風の噴射範囲を拡大することができる。これにより、流下方向に画素ずれのある粒状物2に対して確実に噴風を噴射することができるので、粒状物2の選別精度をより向上させることができる。
【0038】
一方、ステップS103において画素ずれに基づく跳ね量が図4に示される閾値B以上(領域3)であると判別された場合(閾値B≦跳ね量)は、画素ずれに基づく跳ね量が閾値Bを超えたと判別した回数をカウントアップ(ステップS105)するとともに、粒状物2の跳ねを抑制する調整が跳ね調整手段によって行われる(ステップS106)。本実施形態における粒状物2の跳ねを抑制する調整は、後述するシュート傾斜角調整機構によって光学式選別機1のシュート3の傾斜角度を変更することや、粒状物2の流量を調節することによって行われる。
【0039】
粒状物2の跳ねを抑制する調整が行われた後は、図1に示されるようにループして繰り返し粒状物2の跳ねが監視される。ステップS104では、ステップS103において画素ずれに基づく跳ね量が閾値B以上(領域3)であると判別された回数Nが、予め設定した設定回数(本実施形態では5回)を超えたか否かが判別される。回数Nが予め設定した設定回数を超えたと判別された場合は、不図示の表示装置や発光手段などでアラーム表示が行われるとともに、シュート3へ粒状物2を供給するフィーダ8(図10等参照)の動作が停止される(ステップS107)。
【0040】
(稼働運転中における跳ね検出)
図8には、前述した試運転の後に行われる稼働運転中の制御フローが示されている。光学式選別機1の稼働運転中においても、試運転時と同様に、流下する粒状物2の跳ねを監視し、光学式選別機1に対する必要な調整が行われる。
【0041】
光学式選別機1の稼働運転中は、図1の試運転時のステップS101と同様に、不図示の制御部が備える画素ずれ検出手段によって、粒状物2の前方画像と後方画像との差分が算出される(ステップS201)。図7には、シュート3上を流下しシュート3下端から放出された複数の粒状物2の画素ずれのイメージ画像が示されている。図示されるように、第1撮像手段4によって撮像された粒状物2の前方画像と、第2撮像手段5によって撮像された粒状物2の後方画像とを重ねることによって、重複画素以外の部分が画素ずれとして検出される。そして、画素ずれは、画素ずれ検出手段によって前方画像と後方画像との差分として定量的に算出される。
【0042】
本実施形態では、画素ずれを面積として算出しているが、必ずしも面積に限られるものではなく、前方画像の粒状物2の重心位置と、後方画像の粒状物2の重心位置との離間距離を算出するように構成することも可能である。
【0043】
続いて、図8の制御フロー図では、撮像された粒状物2が跳ねた粒状物2であるか否かが判別される(ステップS202)。撮像された粒状物2が跳ねた粒状物2であるか否かは、前述した試運転時の制御と同様に、画素ずれ検出手段によって検出された画素ずれの割合を跳ね量とし、当該跳ね量に所定の閾値を設定して判別を行っている(図4参照)。ステップS202において、跳ね量が閾値A未満(領域1)であれば、粒状物2は跳ねた粒状物2ではないと判別し、ループして繰り返し粒状物2に跳ねがあるか否かが監視される。なお、図4における跳ね量の閾値Aを0(閾値A=0)とし、画素ずれが僅かでも検出されれば、粒状物2が跳ねた粒状物2であるとしてステップS203の判断処理へ進むように構成することも可能である。
【0044】
一方、ステップS202における判別において、跳ね量が図4に示される閾値A以上(領域1又は領域2)であると判断された場合(閾値A≦跳ね量)は、粒状物2が跳ねた粒状物2であると判別され、ステップS203の判断処理へ進む。そして、ステップS203では、検出された画素ずれに基づく跳ね量が図4に示される閾値B以上(領域3)であるか否かが判別される。
【0045】
ステップS203において画素ずれに基づく跳ね量が図4に示される閾値B以上(領域3)でないと判別された場合(閾値A≦跳ね量<閾値B)は、試運転時と同様に、粒状物2に対して噴風を噴射して選別するエジェクタの噴風の噴射範囲を、画素ずれに基づく跳ね量の程度に応じて跳ね調整手段によって拡大する制御が実行される(ステップS208)。
【0046】
一方、S203において画素ずれに基づく跳ね量が図4に示される閾値B以上(領域3)であると判別された場合(閾値B≦跳ね量)は、画素ずれに基づく跳ね量が閾値B以上(領域3)と判別された回数をカウントアップ(ステップS205)するとともに、エジェクタによる噴風の噴射範囲を、画素ずれに基づく跳ね量の程度に応じて跳ね調整手段によって拡大する制御が実行される(ステップS206)。ステップS206において実行される噴射範囲の拡大範囲は、ステップS208で行われる噴射範囲の拡大範囲よりも大きなものとなる。
【0047】
ステップS206によってエジェクタによる噴風の噴射範囲を拡大する制御が実行された後は、図8に示されるようにループして繰り返し粒状物2が跳ねた粒状物2であるか否かが監視される。ステップS204では、ステップS203において画素ずれが閾値を超えたと判断された回数Nが、予め設定した設定回数(本実施形態では5回)を超えたか否かが判定される。回数Nが予め設定した設定回数を超えた場合は、不図示の表示装置や発光手段などでアラーム表示が行われるとともに、シュート3へ粒状物2を供給するフィーダ8(図10等参照)の動作が停止される(ステップS207)。
【0048】
以上、試運転中及び稼働運転中における制御態様を説明したが、画素ずれに基づく跳ね量の各閾値の設定に際しては、試運転中及び稼働運転中ともに、それぞれ同じ閾値を設定してもよいし、試運転中と稼働運転中とでそれぞれ異なる閾値を設定するようにしてもよい。また、前述の実施形態では、画素ずれの面積と粒状物2の全体面積に対する画素ずれの割合から跳ね量を算出し、閾値を設定することによって各判別処理を行った。しかし、必ずしもこのような形態に限られるものではなく、上記画素ずれの割合に閾値を設定するようにしてもよい。また、前述した実施形態では、粒状物2の跳ねの程度を判別するために、画素ずれに基づく跳ね量を求めたが、跳ねの程度を判別する方法として飛散率を求めるようにしてもよい。すなわち、シュート3を流下する単位粒数当たりの跳ねた粒状物2の粒数の割合によって飛散率を求め、当該飛散率に閾値を設定して各判別処理を行うことも可能である。さらに、前述したように、前方画像の粒状物2の重心位置と、後方画像の粒状物2の重心位置との離間距離に基づいて跳ね量を算出し、閾値を設定してもよいし、上記重心位置の離間距離に閾値を設定するようにしてもよい。
【0049】
(比較試験の結果)
上記した本実施形態の粒状物の跳ね検出装置を備えた光学式選別機1において、粒状物2の選別精度について比較試験を行った。比較試験は以下に示す3つの条件で行った。
試験(1)では、粒状物2の跳ねの有無に関わらず、品質的に不良粒であると判定された粒状物2に対して、通常の噴射範囲でエジェクタの動作を行った。
試験(2)では、不良粒の選別率99.99%を目指して、粒状物2の跳ねの有無に関わらず、不良粒と判定された全ての粒状物2に対して、エジェクタによる噴射時間を延長し、流下方向の噴風の噴射範囲を拡大した。
試験(3)では、跳ねた不良粒に対してのみ、エジェクタの噴射時間を延長して流下方向の噴風の噴射範囲を拡大し、跳ねていない不良粒に対しては試験(1)と同様に、通常の噴射範囲でエジェクタの動作を行った。
【0050】
上記した比較試験の結果、試験(2)の条件下では、不良粒であると判定された粒状物2の選別率は、ほぼ100%であったが、不良粒ではないものも多く選別されてしまい、エジェクタによって選別された粒状物2のうち、約半分が不良粒ではないものが選別されてしまっていた。一方、本実施形態のような制御で行った試験(3)の条件下では、試験(1)よりも高い選別率となり、さらに、選別された粒状物2のうち、ほとんどの粒状物2が実際に不良粒であった。
【0051】
以上の比較試験の結果から、跳ねた粒状物2に対してのみ噴射時間を延ばして噴風の噴射範囲を拡大することで、不良粒であるとして選別された粒状物2における不良粒の割合を大幅に下げることなく、選別率を向上させて、高精度な粒状物2の選別が可能となることが判った。
【0052】
(シュート傾斜角調整機構について)
図10には本実施形態における、シュート傾斜角調整機構の断面図が図示されている。図示されるように、光学式選別機1の内部にモータ30を設け、当該モータ30の動作によってシュート3と直接的又は間接的に連結されたシャフト31が回転するように構成されている。さらに、シュート3は粒状物2を供給するフィーダ8の底面との交点を支点(図示f)にして、図中の破線で示される範囲において、シュート3の傾斜角度(図示a)が調整可能となっている。
【0053】
また、上記モータ30及びシャフト31を使用したシュート傾斜角調整機構に特に限定されるものではなく、例えば、図11に示されるような構成とすることもできる。具体的には、光学式選別機1の内部に巻取機40を設け、当該巻取機40の動作によってシュート3と直接的又は間接的に連結されたチェーン41を巻取り可能に構成されている。そして、シュート3は粒状物2を供給するフィーダ8の底面との交点を支点(図示f)にして、図中の破線で示される範囲において、シュート3の傾斜角度(図示a)を調整することができる。
【0054】
シュート傾斜角調整機構のモータ30や巻取機40は、光学式選別機1の制御部の制御によってシュート3の傾斜角度を変更することが可能となっている。これにより、前述した試運転時のS106の跳ね調整が実行される場合には、自動的に適切なシュート3の傾斜角度に変更される。
【0055】
(別実施形態)
以上、本実施形態における粒状物の跳ね検出装置について、光学式選別機1に適用した制御構成を説明した。しかし、必ずしも、前述の実施形態に限定されるものでなく、以下に示す種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、画素ずれ検出手段によって粒状物2の前方画像と後方画像との差分を算出する原理として、図5及び図6には横ずれの検出原理が図示されている。図5には、粒状物2が跳ねることなく正常に流下軌跡6を流下した場合の平面位置である通過平面ライン7と、図示される撮像範囲において粒状物2の前方画像を撮像する第1撮像手段4及び後方画像を撮像する第2撮像手段5が示されている。図5における奥行き方向は粒状物2の流下方向となる。図示されるように、跳ねた粒状物2が撮像される場合は、第1撮像手段4と第2撮像手段5で撮像した撮像範囲において、図示されるような画素ずれが生じる。
【0057】
すなわち、図6に示されるように、第1撮像手段4によって撮像された粒状物2の前方画像と、第2撮像手段5によって撮像された粒状物2の後方画像を重ねたときに、図示されるような画素ずれが生じる。画素ずれは、画素ずれ検出手段によって粒状物2の前方画像と後方画像との差分として定量的に算出される。前述の実施形態と同様に、画素ずれを面積として算出してもよいし、前方画像の粒状物2の重心位置と、後方画像の粒状物2の重心位置との離間距離を算出するように構成することも可能である。
【0058】
前述の図2に示した画素ずれ(縦ずれ)の検出原理と、図5に示した画素ずれ(横ずれ)の検出原理は、画素ずれ検出手段においてその両方の原理に基づいて画素ずれを算出することが可能である。このように構成することで、いずれか一方の検出原理による検出方法を採用した場合よりも、より精度良く粒状物2の跳ねを検出することが可能とる。さらに、光学式選別機1に適用した場合には、跳ねた粒状物2をより確実に判別して、不良粒の選別精度を向上することが可能となる。
【0059】
加えて、画素ずれ(横ずれ)の検出に基づいて、図9に示されるように、跳ね調整手段によってエジェクタにおける水平方向の噴風の噴射範囲を拡大することができる。このように、噴風の噴射範囲を拡大することにより、跳ねた粒状物2をより確実にエジェクタによって選別することが可能となる。
【0060】
前述の実施形態では、光学式選別機1の試運転時の跳ねを抑制する調整(ステップS106)が実行される際に、光学式選別機1の制御部の制御によって自動的に適切なシュート3の傾斜角度に変更するように構成した。しかし、これに限定されず、例えば、光学式選別機1に設けられた不図示のタッチパネルや遠隔操作用PC等を利用して、作業者がシュート3の傾斜角度を直接入力して傾斜角度を変更するように構成することができる。
【0061】
作業者がシュート3の傾斜角度を直接入力して傾斜角度を変更するような場合は、粒状物2が跳ねる割合(例えば、シュート上を流下した全粒数に対し、跳ね検出手段により「跳ね」と識別された粒状物2の粒数の割合や、シュート上を流下した単位粒数当たりの跳ねた粒状物2の粒数の割合。)(以下、「飛散率」という。)を測定するとよい。経験的に、シュート3の傾斜角度が大きくなれば、流下する粒状物2の流下速度が大きくなる一方、粒状物2への空気抵抗やシュート3底面との摩擦抵抗によって粒状物2の跳ねが起こり易くなり、飛散率が上がってしまう。逆に、シュート3の傾斜角度が小さくなれば、粒状物2の跳ねが起こり難くなって飛散率が下がる。このような傾向から、図13に示されるように、飛散率を抑えつつ、必要な流量を確保することができる飛散率の適正な基準範囲を設定することができる。
【0062】
そして、粒状物2の飛散率が上記した適正な基準範囲内に収まるように、図12に示されたフローに従って、シュート3の傾斜角度を調整することができる。例えば、光学式選別機1の稼働運転前の試運転において、粒状物2の飛散率を測定する。次に、現状の飛散率が図13の基準範囲内であるか否かを判別する(ステップS301)。飛散率が基準範囲外ではない(基準範囲内である)のであれば、シュート3の傾斜角度を変更することなく稼働運転を開始することが可能となる(ステップS305)。
【0063】
一方、飛散率が基準範囲外であると判別された場合は、続いて飛散率が基準範囲を超えているか否かが判別される(ステップS302)。飛散率が基準範囲を超えていないのであれば、シュート3の傾斜角度を大きくし(ステップS304)、飛散率が基準範囲を超えている場合は、シュート3の傾斜角度を小さくして(ステップS303)、測定される粒状物2の飛散率が基準範囲内に収まるまで、シュート3の傾斜角度の調整を行う。
【0064】
別実施形態として、図15に示されるように、粒状物2の飛散率が基準値以下となるように、図14に示されたフローに従って、シュート3の傾斜角度を調整することも可能である。例えば、光学式選別機1の稼働運転前の試運転において、粒状物2の飛散率を測定する。そして、シュート3の傾斜角度を初期化して(ステップS401)、現状の飛散率が図15の基準値を超えているか否かを判別する(ステップS402)。飛散率が基準値を超えていなければ、シュート3の傾斜角度を変更することなく稼働運転を開始することが可能となる(ステップS404)。
【0065】
一方、飛散率が基準値を超えていると判別された場合は、シュート3の傾斜角度を小さくして(ステップS403)、飛散率が基準値以下となるまで繰り返しシュート3の傾斜角度の調整を行うようにすればよい。
【0066】
前述の実施形態では、粒状物2の跳ねの有無や、画素ずれを検出するために、図2に示されるように、シュート3から放出された粒状物2の前方側に第1撮像手段4と、後方側に第2撮像手段5を設けた。しかし、このような実施形態に限定されず、流下軌跡6の側方に撮像手段を設け、正常に粒状物2が流下する際の流下軌跡6と撮像された粒状物2との離間状態を検出して、粒状物2の跳ねの有無や、跳ねの程度を検出することも可能である。例えば、流下する粒状物2の重心位置と、流下軌跡との離間距離に基づいて、粒状物2の跳ねの有無を判別することができる。
【0067】
前述の実施形態の、図8に示された稼働運転中の制御フローでは、ステップS206において画素ずれに基づく跳ね量の程度に応じて跳ね調整手段によって噴風の噴射範囲を大きくするようにしたが、シュート3の傾斜角度を調整するように構成してもよい。さらに、噴風の噴射範囲の拡大を所定回数行った後に、シュート3の傾斜角度を調整するように構成してもよい。すなわち、粒状物2の跳ねが大きいと、画素ずれも大きくなる。そうすると、エジェクタの調整のみで対処するよりも、シュート3の傾斜角度を再調整する方が、粒状物2の跳ねを効果的に抑制(飛散率の低下)しつつ、粒状物2の選別精度を向上できる場合がある。
【0068】
前述の実施形態では、粒状物の跳ね検出装置を光学式選別機1に適用した実施形態について説明したが、必ずしも光学式選別機1に限定して用いられるものではなく、幅広く、粒状物2の跳ねを検出する手段として利用することが可能である。
【0069】
前述の実施形態では、本発明の粒状物の跳ね検出装置を光学式選別機1に適用した実施形態を説明した。従来、光学式選別機1には、粒状物2の品質を判別するために、粒状物2を挟んで前後に撮像手段が設けられているが、このような品質を判別するための撮像手段を第1撮像手段4及び第2撮像手段5として利用し、得られた画像に基づいて跳ね検出を行うようにしてもよい。このようにすれば、新たに跳ね検出のための撮像手段を追加で設ける必要がなくなり、光学式選別機1の大幅な仕様の変更作業が不要となることから、低コストで粒状物2の跳ね検出が可能となる。
【0070】
また、前述の実施形態では、光学式選別機1の搬送手段として粒状物2を一定方向に流下させるシュート3を主体に説明したが、これに限らず、搬送手段として粒状物2を一定速度で搬送方向に投げ出して自由落下させるベルトコンベアであってもよい(図示せず)。このベルトコンベア上での前記粒状物2の跳ねを抑制するためには、跳ね調整手段によってベルトコンベアのベルトテンションの張力、ベルトコンベアの搬送速度、及び、ベルトコンベアと同期し、粒状物2をベルトコンベアに押し付ける押し付けローラの押し付け力、のいずれかを調整するとよい。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、又は、省略が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 光学式選別機
2 粒状物
3 シュート
4 第1撮像手段
5 第2撮像手段
6 流下軌跡
7 通過平面ライン
8 フィーダ
30 モータ
31 シャフト
40 巻取機
41 チェーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2021-10-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物を搬送させる搬送手段と、
前記搬送手段により搬送され前記粒状物を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって取得したデータに基づいて、前記搬送手段上を搬送され前記粒状物における跳ねの有無を判別可能な跳ね判別手段と、を備え
前記撮像手段は、
前記搬送手段により搬送された前記粒状物を一方側から撮像可能な第1撮像手段と該粒状物を他方側から撮像可能な第2撮像手段と、を備え、
前記跳ね判別手段は、前記第1撮像手段によって撮像された前記粒状物の画像と前記第2撮像手段によって撮像された前記粒状物の画像との画素ずれのうち、画像の縦ずれおよび横ずれのうちの少なくともいずれかの検出結果に基づいて、前記粒状物における跳ねの有無を判別可能である
ことを特徴とする粒状物の跳ね検出装置。
【請求項2】
前記跳ね判別手段は、前記画素ずれの面積に基づいて前記粒状物の跳ね量を算出することが可能である
請求項1に記載の粒状物の跳ね検出装置。
【請求項3】
前記跳ね判別手段は、前記第1撮像手段によって撮像された画像の前記粒状物の重心と、前記第2撮像手段によって撮像された画像の前記粒状物の重心との間の離間距離に基づいて前記粒状物の跳ね量を算出することが可能である
請求項1又は2のいずれかに記載の粒状物の跳ね検出装置。
【請求項4】
前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記搬送手段により搬送される前記粒状物の跳ねを抑制することが可能な跳ね調整手段を備える
請求項1乃至3のいずれかに記載の粒状物の跳ね検出装置。
【請求項5】
前記搬送手段により搬送された前記粒状物に対して噴風を噴射することが可能なエジェクタを備え、
前記跳ね調整手段は、前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記エジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲を調整可能である
請求項に記載の粒状物の跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、前記粒状物を一定方向に流下させるシュートであり、
前記シュートから放出された前記粒状物に対して噴風を噴射することが可能なエジェクタと、
前記シュートの傾斜角度を調整可能なシュート傾斜角調整機構と、
前記シュートを流下する前記粒状物の跳ねを抑制することが可能な跳ね調整手段と、を備え、
前記跳ね調整手段は、前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記シュートの傾斜角度と、前記エジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲と、を調整可能である
請求項1乃至3のいずれかに記載の粒状物の跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置。
【請求項7】
前記搬送手段は、前記粒状物を一定速度で搬送するベルトコンベアであり、
前記ベルトコンベアから放出された前記粒状物に対して噴風を噴射することが可能なエジェクタと、
前記ベルトコンベア上で搬送される前記粒状物の跳ねを抑制可能な跳ね調整手段と、
を備え、
前記跳ね調整手段は、前記跳ね判別手段の判別結果に基づいて、前記ベルトコンベアのベルトテンションの張力、前記ベルトコンベアの搬送速度、及び前記ベルトコンベアと同期して前記粒状物を前記ベルトコンベアに押し付ける押し付けローラの押し付け力のうちのいずれかと、前記エジェクタによる噴風の噴射時間及び/又は噴射範囲と、を調整可能である
請求項1乃至3のいずれかに記載の粒状物の跳ね検出装置を備えた粒状物選別装置。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
粒状物を搬送させる搬送手段と、
前記搬送手段により搬送された前記粒状物を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって取得したデータに基づいて、前記搬送手段上を搬送された前記粒状物における跳ねの有無を判別可能な跳ね判別手段と、を備え、
前記撮像手段は、
前記搬送手段により搬送された前記粒状物を、該粒状物の流下軌跡よりも前方側から撮像可能な第1撮像手段と該粒状物の流下軌跡よりも後方側から撮像可能な第2撮像手段と、を備え、
前記跳ね判別手段は、前記第1撮像手段によって撮像された前記粒状物の画像と前記第2撮像手段によって撮像された前記粒状物の画像との画素ずれのうち、画像の縦ずれおよび横ずれのうちの少なくともいずれかの検出結果に基づいて、前記粒状物における跳ねの有無を判別可能である
ことを特徴とする粒状物の跳ね検出装置。