(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120622
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル伝送路
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
G02B6/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017638
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】591236172
【氏名又は名称】株式会社ハタ研削
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 俊樹
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137BA03
2H137BA04
2H137BA13
(57)【要約】
【課題】多心の光ファイバケーブルを接続する作業を、単心の中継用の光ファイバケーブルを用いて行える光ファイバケーブル伝送路を提供すること。
【解決手段】光ファイバケーブル伝送路10では、2心の第1光ファイバケーブル3からの2種類の光信号が第1、第2マルチモード光ファイバ心線15、16を順次に経由し、第2マルチモード光ファイバ心線16と1本の中継用のシングルモード光ファイバ心線11aとの接合面に焦点を結ぶように伝送される。重なり合う状態でシングルモード光ファイバ心線11aに入射した複数の光信号は、ここを介して、第1、第2マルチモード光ファイバ心線15、16とは光学的に対称な第4、第3マルチモード光ファイバ心線22、21を順次に介して伝送されて、初期の状態に分かれ、2心の第2光ファイバケーブル5の対応する第2シングルモード光ファイバ心線5a、5bに入射する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1シングルモード光ファイバ心線を備えた伝送用の多心の第1光ファイバケーブルと、前記第1シングルモード光ファイバ心線のそれぞれに対応付けされた形態で各第2シングルモード光ファイバ心線が接続される伝送用の多心の第2光ファイバケーブルとの間を接続する光ファイバケーブル伝送路であって、
前記第1光ファイバケーブルの前記第1シングルモード光ファイバ心線のそれぞれの端面に、一方の端面が光結合されるグレーデッドインデックス型の第1マルチモード光ファイバ心線と、
前記第1マルチモード光ファイバ心線の他方の端面に光結合されているグレーデッドインデックス型の第2マルチモード光ファイバ心線と、
前記第2光ファイバケーブルの前記第2シングルモード光ファイバ心線のそれぞれの端面に、一方の端面が光結合されるグレーデッドインデックス型の第3マルチモード光ファイバ心線と、
前記第3マルチモード光ファイバ心線の他方の端面に光結合されているグレーデッドインデックス型の第4マルチモード光ファイバ心線と、
前記第2マルチモード光ファイバ心線に一方の端面が光結合され、前記第4マルチモード光ファイバ心線に他方の端面が光結合されている中継用のシングルモード光ファイバ心線と、
を有しており、
前記第1光ファイバケーブルの前記第1シングルモード光ファイバ心線から前記第1マルチモード光ファイバ心線に入射した光信号が、前記第2マルチモード光ファイバ心線と前記シングルモード光ファイバ心線との間の接合面において焦点を結ぶように、前記第1、第2マルチモード光ファイバ心線の長さが設定されており、
前記第2光ファイバケーブルの前記第2シングルモード光ファイバ心線から前記第3マルチモード光ファイバ心線に入射した光信号が、前記第4マルチモード光ファイバ心線と前記シングルモード光ファイバ心線との間の接合面において焦点を結ぶように、前記第3、第4マルチモード光ファイバ心線の長さが設定されていることを特徴とする光ファイバケーブル伝送路。
【請求項2】
中継用の前記シングルモード光ファイバ心線は、光ファイバコネクタを介して着脱可能に接続された複数本の連結用光ファイバ心線から構成されている請求項1に記載の光ファイバケーブル伝送路。
【請求項3】
前記第1光ファイバケーブルの前記第1シングルモード光ファイバ心線のそれぞれと前記第1マルチモード光ファイバ心線との間、前記第1、第2マルチモード光ファイバ心線の間、および前記第2マルチモード光ファイバ心線と中継用の前記シングルモード光ファイバ心線との間は、それぞれ、融着接合あるいはV溝基板を備えた光ファイバアレイによって光結合されており、
前記第2光ファイバケーブルの前記第2シングルモード光ファイバ心線のそれぞれと前記第3マルチモード光ファイバ心線との間、前記第3、第4マルチモード光ファイバ心線の間、および前記第4マルチモード光ファイバ心線と中継用の前記シングルモード光ファイバ心線との間は、それぞれ、融着接合あるいはV溝基板を備えた光ファイバアレイによって光結合されている請求項1または2に記載の光ファイバケーブル伝送路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多心の光ファイバケーブルの間において、単心の光ファイバケーブルを介して、同時に複数の光信号を伝送可能な光ファイバケーブル伝送路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信においては同時に複数の光信号を伝送するために、例えば、光信号の送受が行われる一方の光通信機器と他方の光通信機器との間が、多心の光ファイバケーブルによって接続される。一方の機器の光ファイバ用接続端子のそれぞれに、予め対応付けされている他方の機器の光ファイバ用接続端子のそれぞれが接続されるように、双方の機器の間が、複数本の光ファイバ心線を束ねた構成の多心の光ファイバケーブルを介して接続される。
【0003】
光通信機器の間を多心の光ファイバケーブルを介して接続する場合には、相互に対応付けされている光ファイバ用接続端子同士が誤りなく接続されるように、各光ファイバ心線の結線作業を行う必要がある。本願人は、特許文献1において、一方の光通信機器から引き出される多心の光ファイバケーブルと、他方の光通信機器から引き出される多心の光ファイバケーブルとの間を単心の光ファイバケーブルを用いて接続可能な光ファイバ接続構造を提案している。この光ファイバ接続構造を用いることで、多数本の光ファイバ心線の結線作業を省略できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特許文献1に記載の発明の改良に係るものであり、一方の光通信機器から引き出される多心の光ファイバケーブルと、他方の光通信機器から引き出される多心の光ファイバケーブルとの間において、単心の光ファイバケーブルを介して、複数の光信号を同時に伝送可能な光ファイバケーブル伝送路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、伝送用の多心の第1光ファイバケーブルと、前記第1光ファイバケーブルの各第1シングルモード光ファイバ心線のそれぞれに対応付けされた形態で各第2シングルモード光ファイバ心線が接続される伝送用の多心の第2光ファイバケーブルとの間を接続する光ファイバケーブル伝送路であって、
前記第1光ファイバケーブルの前記第1シングルモード光ファイバ心線のそれぞれの端面に、一方の端面が光結合されるグレーデッドインデックス型の第1マルチモード光ファイバ心線と、
前記第1マルチモード光ファイバ心線の他方の端面に光結合されているグレーデッドインデックス型の第2マルチモード光ファイバ心線と、
前記第2光ファイバケーブルの前記第2シングルモード光ファイバ心線のそれぞれの端面に、一方の端面が光結合されるグレーデッドインデックス型の第3マルチモード光ファイバ心線と、
前記第3マルチモード光ファイバ心線の他方の端面に光結合されているグレーデッドインデックス型の第4マルチモード光ファイバ心線と、
前記第2マルチモード光ファイバ心線に一方の端面が光結合され、前記第4マルチモード光ファイバ心線に他方の端面が光結合されているシングルモード光ファイバ心線と、
を有しており、
前記第1光ファイバケーブルの前記第1シングルモード光ファイバ心線から前記第1マルチモード光ファイバ心線に入射した光信号が、前記第2マルチモード光ファイバ心線と前記シングルモード光ファイバ心線との間の接合面において焦点を結ぶように、前記第1、第2マルチモード光ファイバ心線の長さが設定されており、
前記第2光ファイバケーブルの前記第2シングルモード光ファイバ心線から前記第3マルチモード光ファイバ心線に入射した光信号が、前記第4マルチモード光ファイバ心線と前記シングルモード光ファイバ心線との間の接合面において焦点を結ぶように、前記第3、第4マルチモード光ファイバ心線の長さが設定されていることを特徴としている。
【0007】
多心の第1光ファイバケーブルの第1シングルモード光ファイバ心線のそれぞれからの光信号が、第1、第2マルチモード光ファイバを順次に経由して、第2マルチモード光ファイバと中継用のシングルモード光ファイバ心線との間の接合面に焦点を結ぶ。複数の光信号が1本のシングルモード光ファイバのコアを通って重なり合った状態で伝送される。重なり合った状態の複数の光信号は、第4、第3マルチモード光ファイバ心線を順次に経由して伝送される間に半径方向に分かれ、第3マルチモード光ファイバ心線と第2光ファイバケーブルの第2シングルモード光ファイバ心線のそれぞれとの間の接合面において、第1光ファイバケーブルの第1シングルモード光ファイバ心線のそれぞれに対応する第2シングルモード光ファイバ心線のそれぞれに入射する。
【0008】
光信号が逆方向に伝送される場合も同様である。すなわち、多心の第2光ファイバケーブルの第2シングルモード光ファイバ心線のそれぞれからの光信号が、第3、第4マルチモード光ファイバ心線を順次に経由して、第4マルチモード光ファイバ心線と中継用のシングルモード光ファイバ心線との間の接合面に焦点を結ぶ。複数の光信号が1本のシングルモード光ファイバ心線のコアを通って重なり合った状態で伝送される。重なり合った状態の複数の光信号は、第2、第1マルチモード光ファイバ心線を順次に経由して伝送される間に半径方向に分かれ、第1マルチモード光ファイバ心線と第1光ファイバケーブルの第1シングルモード光ファイバ心線のそれぞれとの間の接合面において、第2光ファイバケーブルの第2シングルモード光ファイバ心線のそれぞれに対応する第1シングルモード光ファイバ心線のそれぞれに入射する。
【0009】
本発明によれば、多心の第1光ファイバケーブルと多心の第2光ファイバケーブルとの間における複数の光信号の伝送を、単心の光ファイバケーブルを用いて行うことができる。すなわち、複数の光信号を1本のシングルモード光ファイバ心線を介して伝送できるので、多数本の光ファイバ心線の接続作業が不要となり、多心の光ファイバケーブルの間の配線作業が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用した光ファイバケーブル伝送路を備えた光通信システムの一例を示す説明図である。
【
図2】
図1の光ファイバケーブル伝送路を示す説明図、2心の第1シングルモード光ファイバ心線を示す説明図、および2心の第2シングルモード光ファイバ心線を示す説明図である。
【
図3】
図2の光ファイバケーブル伝送路における一方の光ファイバケーブル接続部分の平面構成を示す説明図および断面構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明を適用した実施の形態に係る光ファイバケーブル伝送路を備えた光通信システムの一例を示す説明図である。図示の光通信システム1は、一方の第1光通信機器2の側の複数本のシングルモード光ファイバを備えた多心の第1光ファイバケーブル3と、他方の第2光通信機器4の側の複数本のシングルモード光ファイバを備えた多心の第2光ファイバケーブル5と、これら第1、第2光ファイバケーブル3、5の間を繋ぐ光ファイバケーブル伝送路10を備えている。
【0012】
本例の第1光ファイバケーブル3は2心の光ファイバケーブルであり、例えば、光ファイバアレイ100を介して、2本のシングルモード光ファイバ心線101、102に分かれている。他方の多心の第2光ファイバケーブル5も2心の光ファイバケーブルであり、光ファイバアレイ200を介して、2本のシングルモード光ファイバ心線201、202に分かれている。なお、本発明は、3心以上の多心の第1光ファイバケーブルと3心以上の多心の第2光ファイバケーブルとの間を接続する光ファイバケーブル伝送路にも適用可能である。
【0013】
光ファイバケーブル伝送路10は、単心の中継用の光ファイバケーブル11と、この中継用の光ファイバケーブル11に第1光ファイバケーブル3を接続する第1光ファイバケーブル接続部12と、中継用の光ファイバケーブル11に第2光ファイバケーブル5を接続する第2光ファイバケーブル接続部20とを備えている。中継用の光ファイバケーブル11は、1本のシングルモード光ファイバ心線11aから構成されている。
【0014】
図2(A)は光ファイバケーブル伝送路10を示す説明図であり、
図2(B)は2心の第1光ファイバケーブル3の断面を示す説明図であり、
図2(C)は2心の第2光ファイバケーブル5の断面を示す説明図である。
【0015】
2心の第1光ファイバケーブル3は、
図2(B)に示すように、直径方向に配列された2本の第1シングルモード光ファイバ心線3a、3bが被覆層で覆われた円形断面の構造となっている。第1シングルモード光ファイバ心線3a、3bのそれぞれは、コアをクラッドが取り囲む円形断面のシングルモード光ファイバ心線である。他方の2心の第2光ファイバケーブル5も同様であり、
図2(C)に示すように、直径方向に配列された2本の第2シングルモード光ファイバ心線5a、5bが被覆層で覆われた円形断面の構造となっている。
【0016】
例えば、第1光ファイバケーブル3の一方の第1シングルモード光ファイバ心線3aと、第2光ファイバケーブル5の第2シングルモード光ファイバ心線5aとが対応付けされており、これらの間で光信号の送受が行われる。同様に、第1光ファイバケーブル3の他方の第1シングルモード光ファイバ心線3bと、第2光ファイバケーブル5の第2シングルモード光ファイバ心線5bとが対応付けされており、これらの間で光信号の送受が行われる。
【0017】
第1光ファイバケーブル接続部12は、
図2(A)に示すように、第1光ファイバケーブル3の第1シングルモード光ファイバ心線3a、3bのそれぞれから射出される光信号を伝送するグレーデッドインデックス型の第1マルチモード光ファイバ心線15と、第1マルチモード光ファイバ心線15からの光信号を中継用の光ファイバケーブル11のシングルモード光ファイバ心線11aに伝送するグレーデッドインデックス型の第2マルチモード光ファイバ心線16とを備えている。第1マルチモード光ファイバ心線15のコア15aの径は、第1光ファイバケーブル3の2本の第1シングルモード光ファイバ心線3a、3bのコアの双方を包含する大きさである。第2マルチモード光ファイバ心線16のコア16aの径は、コア15aの径よりも小径であるが、中継用の光ファイバケーブル11のシングルモード光ファイバ心線11aのコア径よりも大きい。
【0018】
ここで、第1マルチモード光ファイバ心線15の一方の端面と、第1光ファイバケーブル3の第1シングルモード光ファイバ心線3a、3bのそれぞれの端面との間の接合面を第1接合面S(1)と呼ぶ。また、第1マルチモード光ファイバ心線15の他方の端面と、第2マルチモード光ファイバ心線16の一方の端面との間の接合面を第2接合面S(2)と呼び、第2マルチモード光ファイバ心線16の他方の端面と中継用の光ファイバケーブル11のシングルモード光ファイバ心線11aの一方の端面との間の接合面を第3接合面S(3)と呼ぶものとする。
【0019】
本例では、第1接合面S(1)において第1光ファイバケーブル3の第1シングルモード光ファイバ心線3a、3bのそれぞれから第1マルチモード光ファイバ心線15に入射する光信号が、第3接合面S(3)において焦点を結ぶように設定されている。すなわち、第1接合面S(1)から第2接合面S(2)までの間の第1マルチモード光ファイバ心線15の長さL15を適切な値に設定することで、第2接合面S(2)において第2マルチモード光ファイバ心線16への入射光が平行光とならないようにしている。第2マルチモード光ファイバ心線16の第2接合面S(2)から第3接合面S(3)までの長さL16を適切な値に設定することで、第2マルチモード光ファイバ心線16を伝送される光が第3接合面S(3)において焦点を結ぶようにしている。
【0020】
第2光ファイバケーブル接続部20は、第1光ファイバケーブル接続部12に対して、光学的に対称な構造をしている。第2光ファイバケーブル接続部20は、
図2(A)に示すように、第2光ファイバケーブル5の第2シングルモード光ファイバ心線5a、5bのそれぞれから射出される光信号を伝送するグレーデッドインデックス型の第3マルチモード光ファイバ心線21と、第3マルチモード光ファイバ心線21から射出される光信号を中継用の光ファイバケーブル11のシングルモード光ファイバ心線11aに伝送するグレーデッドインデックス型の第4マルチモード光ファイバ心線22とを備えている。第3マルチモード光ファイバ心線21のコア21aの径は、第2光ファイバケーブル5の2本の第2シングルモード光ファイバ心線5a、5bのコアの双方を包含する大きさである。第4マルチモード光ファイバ心線22のコア22aの径は、コア21aの径よりも小径であるが、中継用の光ファイバケーブル11のシングルモード光ファイバ心線11aのコア径よりも大きい。
【0021】
第3マルチモード光ファイバ心線21の一方の端面と、第2光ファイバケーブル5の第2シングルモード光ファイバ心線5a、5bのそれぞれの端面との接合面を第4接合面S(4)、第3マルチモード光ファイバ心線21の他方の端面と、第4マルチモード光ファイバ心線22の端面との接合面を第5接合面S(5)、第4マルチモード光ファイバ心線22の他方の端面と、中継用の光ファイバケーブル11のシングルモード光ファイバ心線11aの端面との接合面を第6接合面S(6)と呼ぶものとする。第4接合面S(4)において第2光ファイバケーブル5の第2シングルモード光ファイバ心線5a、5bのそれぞれから第3マルチモード光ファイバ心線21に入射する光信号が、第6接合面S(6)において焦点を結ぶように、第4接合面S(4)から第5接合面S(5)までの間の第3マルチモード光ファイバ心線21の長さL21、および、第5接合面S(5)から第6接合面S(6)までの間の第4マルチモード光ファイバ心線22の長さL22が、それぞれ設定されている。
【0022】
光ファイバケーブル伝送路10を介して接続された第1光ファイバケーブル3と第2光ファイバケーブル5との間においては、同時に伝送される2種類の光信号のうちの一方が、対応する第1、第2シングルモード光ファイバ心線3a、5aの間で送受され、他方の信号が、第1、第2シングルモード光ファイバ心線3b、5bの間で送受される。
【0023】
例えば、第1光ファイバケーブル3の第1シングルモード光ファイバ心線3a、3bのそれぞれから同時に射出される2種類の光信号は、第1マルチモード光ファイバ心線15を介いて第2マルチモード光ファイバ心線16に伝送される。これらの光信号は、第2マルチモード光ファイバ心線16と中継用の光ファイバケーブル11の1本のシングルモード光ファイバ心線11aとの間の接合面である第3接合面S(3)において焦点を結び、重ね合わされた状態で、シングルモード光ファイバ心線11aを介して伝送される。ここから、第4マルチモード光ファイバ心線22および第3マルチモード光ファイバ心線21を介して再び分離された状態で伝送される。そして、第4接合面S(4)において、第2光ファイバケーブル5の対応する第2シングルモード光ファイバ心線5a、5bに入射する。第2光ファイバケーブル5から第1光ファイバケーブル3に光信号が伝送される場合も同様である。
【0024】
この構成の光ファイバケーブル伝送路10では、一方の第1接合面S(1)における第1マルチモード光ファイバ心線15に対する2心の第1光ファイバケーブル3の第1シングルモード光ファイバ心線3a、3bの接合位置、および、他方の第4接合面S(4)における第3マルチモード光ファイバ心線21に対する2心の第2光ファイバケーブル5のシングルモード光ファイバ心線5a、5bの接合位置を対称となる位置に設定される。これにより、第1、第2光ファイバケーブル3、5の間を、一方の端に第1光ファイバケーブル接続部12を備え、他方の端に第2光ファイバケーブル接続部20を備えた単心の中継用の光ファイバケーブル11を用いて簡単に接続できる。
【0025】
第1~第6接合面S(1)~S(6)において、それぞれ、双方の光ファイバ心線同士を融着機を用いて融着接続して光結合することができる。また、融着接続の代わりに、V溝基板を備えた光ファイバアレイを用いることができる。
【0026】
(光ファイバアレイモジュール)
図3は光ファイバケーブル伝送路10の第1光ファイバケーブル接続部12と第1光ファイバケーブル3との間の接続部分を構成する光ファイバアレイモジュールの一例を示す説明図であり、
図3(A)はその平面構成を示す説明図であり、
図3(B)はその断面構成を示す説明図である。他方の第2光ファイバケーブル接続部20の場合も同様な構成の光ファイバアレイモジュールを用いて構成でき、その説明は省略する。
【0027】
本例の光ファイバアレイモジュール30は、第1光ファイバケーブル3の先端に取り付けた第1光ファイバアレイ40と、中継用の光ファイバケーブル11の一方の端部に取り付けた第2光ファイバアレイ50および第3光ファイバアレイ60とから構成される。第2、第3光ファイバアレイ50、60によって第1光ファイバケーブル接続部12が構成される。
【0028】
第1光ファイバアレイ40は、2本のV溝41が形成されているV溝基板42と、V溝基板42におけるV溝41が形成された上面部分を覆うカバーガラス43とを備えている。第1光ファイバケーブル3から一定の間隔で引き出された2本の第1シングルモード光ファイバ心線3a、3bは、接着剤44によってV溝基板42の表面に固定されている。2本の第1シングルモード光ファイバ心線3aの先端側の部分は徐々にピッチが狭められ、狭いピッチで平行に延びるV溝41に装着固定されており、この状態で、V溝基板42とカバーガラス43の間に挟まれている。第1光ファイバアレイ40の先端面45は第1接合面S(1)を規定する面であり、V溝基板42の底面46に直交する直交面である。この先端面45には、V溝41に装着された第1シングルモード光ファイバ心線3aの先端面が狭いピッチ間隔で露出している。
【0029】
同様に、第2光ファイバアレイ50は、1本のV溝51が形成されているV溝基板52と、V溝基板52におけるV溝51が形成された上面部分を覆うカバーガラス53とを備えている。中継用の光ファイバケーブル11から引き出されたシングルモード光ファイバ心線11aは、接着剤54によってV溝基板52の表面に接着固定されている。シングルモード光ファイバ心線11aの先端側の部分はV溝51の途中位置まで延びている。
【0030】
V溝51の途中からは、シングルモード光ファイバ心線11aの先端面に接合された第2マルチモード光ファイバ心線16がV溝51に装着されている。これらの光ファイバ心線の接合面により、第3接合面S(3)が規定される。シングルモード光ファイバ心線11aと第2マルチモード光ファイバ心線16は、V溝51に装着固定された状態で、V溝基板52とカバーガラス53の間に挟まれている。第2マルチモード光ファイバ心線16の先端面は、V溝基板52の先端面55に露出している。先端面55は、第2光ファイバアレイ50の底面56に直交する面である。
【0031】
次に、第3光ファイバアレイ60は、1本のV溝61が形成されているV溝基板62と、V溝基板62におけるV溝61が形成された上面部分を覆うカバーガラス63とを備えている。第1マルチモード光ファイバ心線15は、V溝61に装着固定されている。第1マルチモード光ファイバ心線15は、V溝61に装着固定された状態で、V溝基板62とカバーガラス63の間に挟まれている。
【0032】
V溝基板62におけるV溝形成部分の一方の側には、第1光ファイバアレイ40を位置決め固定する第1装着面65およびこれに直交する第1端面66が形成されており、他方の側には、第2光ファイバアレイ50を位置決め固定する第2装着面67、これに直交する第2端面68が形成されている。第1端面66には、V溝61に装着した第1マルチモード光ファイバ心線15の後端面が露出しており、第2端面68には、第1マルチモード光ファイバ心線15の先端面が露出している。
【0033】
第1装着面65に第1光ファイバアレイ40を装着して、2本のシングルモード光ファイバ心線3aが露出している先端面45を、第1マルチモード光ファイバ心線15の後端面が露出している第1端面66に位置決めして固定することで、第1接合面S(1)において双方の光ファイバ心線が接合された状態が形成される。同様に、第2装着面67に第2光ファイバアレイ50を装着して、第2マルチモード光ファイバ心線16の後端面が露出している先端面を、第1マルチモード光ファイバ心線15の先端面が露出している第2端面に位置決めして固定することで、第2接合面S(2)において双方の光ファイバ心線が接合された状態が形成される。
【0034】
光ファイバケーブル伝送路10は、中継用の光ファイバケーブル11の一方の端に、第2光ファイバアレイ50および第3光ファイバアレイ60が取り付けられた構成とされる。第1、第2光ファイバケーブル3、5の先端には、それぞれ、第1光ファイバアレイ40が取り付けられる。光ファイバケーブル伝送路10を、第1、第2光ファイバケーブル3、5の間に架け渡す作業においては、第3光ファイバアレイ60の第1装着面65、第1端面66に、第1光ファイバアレイ40を位置決めして接着固定し、第2装着面67、第2端面68に、第2光ファイバアレイ50を位置決めして接着固定すればよい。
【0035】
なお、前述の実施例では、中継用の光ファイバケーブル11を連続した1本のケーブルとして説明したが、中継用の光ファイバケーブル11を2本あるいは多数本の光ファイバケーブルを連結した構造のケーブルであってもよい。例えば、中継用の光ファイバケーブル11を2本の光ファイバケーブルを連結した構成にすることができる。この場合には、例えば、
図1において想像線で示すように、一方の光ファイバケーブルの先端に雄側の連結用光ファイバコネクタ17を取り付け、他方の光ファイバケーブルの先端に、雌側の連結用光ファイバコネクタ18を取り付けておけばよい。
【符号の説明】
【0036】
1 光通信システム
2 第1光通信機器
3 第1光ファイバケーブル
3a、3b 第1シングルモード光ファイバ心線
4 第2光通信機器
5 第2光ファイバケーブル
5a、5b 第2シングルモード光ファイバ心線
10 光ファイバケーブル伝送路
11 光ファイバケーブル
11a シングルモード光ファイバ心線
12 第1光ファイバケーブル接続部
15 第1マルチモード光ファイバ心線
15a コア
16 第2マルチモード光ファイバ心線
16a コア
17 連結用光ファイバコネクタ
18 連結用光ファイバコネクタ
20 第2光ファイバケーブル接続部
21 第3マルチモード光ファイバ心線
21a コア
22 第4マルチモード光ファイバ心線
22a コア
30 光ファイバアレイモジュール
40 第1光ファイバアレイ
41 溝
42 溝基板
43 カバーガラス
44 接着剤
45 先端面
46 底面
50 第2光ファイバアレイ
51 溝
52 溝基板
53 カバーガラス
54 接着剤
55 先端面
56 底面
60 第3光ファイバアレイ
61 溝
62 溝基板
63 カバーガラス
65 第1装着面
66 第1端面
67 第2装着面
68 第2端面
100、200 光ファイバアレイ
101、102、201、202 シングルモード光ファイバ心線