(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120629
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】複合配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220810BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 Q
H05K3/46 N
H01L23/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017648
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】澤田石 将士
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA22
5E316AA25
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC32
5E316DD25
5E316DD33
5E316FF22
5E316FF27
5E316GG16
5E316GG17
5E316GG18
5E316GG22
5E316GG27
5E316GG28
(57)【要約】
【課題】半導体チップとの接合に使用する接合端子の狭ピッチ化、基板内の配線の微細化、及び低コスト化が容易であり、高い接続信頼性を達成し得る配線基板を提供する。
【解決手段】本発明の複合配線基板10は、第1配線基板11と、前記第1配線基板11と向き合うように前記第1配線基板11に接合され、周縁部は中央部と比較して前記第1配線基板11からの距離がより大きい第2配線基板12と、前記第1及び第2配線基板11,12間に介在するとともに、前記第2配線基板12の端面を被覆した封止樹脂層13とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線基板と、
前記第1配線基板と向き合うように前記第1配線基板に接合され、周縁部は中央部と比較して前記第1配線基板からの距離がより大きい第2配線基板と、
前記第1及び第2配線基板間に介在するとともに、前記第2配線基板の端面を被覆した封止樹脂層と
を備えた複合配線基板。
【請求項2】
前記第2配線基板は、前記中央部が前記周縁部に対して前記第1基板へ向けて突き出るように撓んだ請求項1に記載の複合配線基板。
【請求項3】
前記第1配線基板から前記周縁部までの距離と、前記第1配線基板から前記中央部までの距離との差は、5μm以上30μm以下の範囲内にある請求項1又は2に記載の複合配線基板。
【請求項4】
前記第2配線基板は、互いに積層された2以上の層を備え、
前記2以上の層の各々は、
有機絶縁体を含んだ材料からなり、凹部が設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられるとともに、前記凹部を埋め込んだ導体層と
を含んだ請求項1乃至3の何れか1項に記載の複合配線基板。
【請求項5】
前記第2配線基板の前記第1配線基板と向き合った面の縁から、前記2以上の層が含む前記導体層からなる多層配線構造までの距離は100μm以上である請求項4に記載の複合配線基板。
【請求項6】
前記縁から前記多層配線構造までの前記距離は1000μm以下である請求項5に記載の複合配線基板。
【請求項7】
前記第2配線基板は、厚さが20μm以上100μm以下の範囲内にある請求項1乃至6の何れか1項に記載の複合配線基板。
【請求項8】
前記周縁部は、曲げ弾性率が1.5GPa以上20GPa以下の範囲内にある請求項1乃至7の何れか1項に記載の複合配線基板。
【請求項9】
前記封止樹脂層は、線膨張係数が20ppm/℃以上35ppm/℃以下の範囲内にある請求項1乃至8の何れか1項に記載の複合配線基板。
【請求項10】
前記第1配線基板はフリップチップボールグリッドアレイ用配線基板であり、前記第2配線基板はインターポーザである請求項1乃至9の何れか1項に記載の複合配線基板。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の複合配線基板と、
前記第1配線基板の前記第2配線基板とは反対側の面に実装された機能デバイスと
を備えたパッケージ化デバイス。
【請求項12】
第1配線基板と第2配線基板とを、互いに向き合うように接合することと、
前記第1及び第2配線基板間に封止樹脂を注入して、前記第1及び第2配線基板間に介在し且つ前記第2配線基板の端面を被覆した封止樹脂層を形成するとともに、前記第2配線基板を、周縁部に対して中央部が前記第1配線基板へ向けて突き出るように撓ませることと
を含んだ複合配線基板の製造方法。
【請求項13】
前記第1及び第2配線基板の接合は、支持体上に剥離可能に支持された前記第2配線基板を前記支持体から前記第1配線基板へ転写することを含む請求項12に記載の複合配線基板の製造方法。
【請求項14】
第1配線基板と第2配線基板とを、封止樹脂を間に挟んで重ね合わせることと、
この状態で、第1配線基板と第2配線基板とを互いに対して加圧して、前記第1及び第2配線基板間に介在し且つ前記第2配線基板の端面を被覆した封止樹脂層を形成するとともに、前記第2配線基板を、周縁部に対して中央部が前記第1配線基板へ向けて突き出るように撓ませることと
を含んだ複合配線基板の製造方法。
【請求項15】
前記第1及び第2配線基板の重ね合わせは、支持体上に剥離可能に支持された前記第2配線基板を、前記支持体から、前記封止樹脂を間に挟んで前記第1配線基板へ転写することを含む請求項14に記載の複合配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高速化及び高集積化が進む中で、半導体チップを搭載するフリップチップボールグリッドアレイ(Flip Chip-Ball Grid Array)用配線基板、即ち、FC-BGA基板にも、半導体チップとの接合に使用する接合端子の狭ピッチ化及び基板内の配線の微細化が求められている。その一方で、FC-BGA基板とマザーボードとの接合には、従来とほぼ変わらないピッチで配列した接合端子による接合が要求されている。これらの要求のもと、FC-BGA基板と半導体チップとの間に、インターポーザとも呼ばれる、微細な配線を含む多層配線基板を設ける技術が採用されている。
【0003】
その一つは、シリコンインターポーザ技術である。このシリコンインターポーザ技術は、シリコンウェハ上に、微細な配線を各々の層が含んだ多層配線構造を、半導体回路の製造技術を用いて形成することによりインターポーザを製造するというものである。これについては、特許文献1に開示されている。
【0004】
また、上記の多層配線構造をシリコンウェハ上に形成するのではなく、FC-BGA基板に直接作り込む手法も開発されている。この手法は、コア層が例えばガラスエポキシ基板からなるFC-BGA基板の製造において、化学機械研磨(CMP)などを利用して、上記の多層配線構造を形成するというものである。これについては、特許文献2に開示されている。
【0005】
更に、インターポーザをガラス基板等の支持体の上に形成し、そのインターポーザをFC-BGA基板と接合させ、その後、インターポーザから支持体を剥離することで、上記の多層配線構造を、FC-BGA基板上に設ける方式(以下、転写方式という)もある。これについては、特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-280490号公報
【特許文献2】特開2014-225671号公報
【特許文献3】国際公開第2018/047861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体チップとの接合に使用する接合端子の狭ピッチ化、基板内の配線の微細化、及び低コスト化が容易であり、高い接続信頼性を達成し得る配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、第1配線基板と、前記第1配線基板と向き合うように前記第1配線基板に接合され、周縁部は中央部と比較して前記第1配線基板からの距離がより大きい第2配線基板と、前記第1及び第2配線基板間に介在するとともに、前記第2配線基板の端面を被覆した封止樹脂層とを備えた複合配線基板が提供される。
【0009】
本発明の他の側面によると、前記第2配線基板は、前記中央部が前記周縁部に対して前記第1基板へ向けて突き出るように撓んだ上記側面に係る複合配線基板が提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、前記第1配線基板から前記周縁部までの距離と、前記第1配線基板から前記中央部までの距離との差は、5μm以上30μm以下の範囲内にある上記側面の何れかに係る複合配線基板が提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、前記第2配線基板は、互いに積層された2以上の層を備え、前記2以上の層の各々は、有機絶縁体を含んだ材料からなり、凹部が設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられるとともに、前記凹部を埋め込んだ導体層と
を含んだ上記側面に係る複合配線基板が提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、前記第2配線基板の前記第1配線基板と向き合った面の縁から、前記2以上の層が含む前記導体層からなる多層配線構造までの距離は100μm以上である上記側面の何れかに係る複合配線基板が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記縁から前記多層配線構造までの前記距離は1000μm以下である上記側面に係る複合配線基板が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記第2配線基板は、厚さが20μm以上100μm以下の範囲内にある上記側面の何れかに係る複合配線基板が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記周縁部は、曲げ弾性率が1.5GPa以上20GPa以下の範囲内にある上記側面の何れかに係る複合配線基板が提供される。
【0016】
ここで、「曲げ弾性率」は、JIS K7171:2016「プラスチック-曲げ特性の求め方」において規定される方法に則って得られる値である。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、前記封止樹脂層は、線膨張係数が20ppm/℃以上35ppm/℃以下の範囲内にある上記側面の何れかに係る複合配線基板が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記第1配線基板はフリップチップボールグリッドアレイ用配線基板であり、前記第2配線基板はインターポーザである上記側面の何れかに係る複合配線基板。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る複合配線基板と、前記第1配線基板の前記第2配線基板とは反対側の面に実装された機能デバイスとを備えたパッケージ化デバイスが提供される。
【0020】
ここで、「機能デバイス」は、電力及び電気信号の少なくとも一方が供給されることにより動作するデバイス、外部からの刺激により電力及び電気信号の少なくとも一方を出力するデバイス、又は、電力及び電気信号の少なくとも一方が供給されることにより動作し且つ外部からの刺激により電力及び電気信号の少なくとも一方を出力するデバイスである。機能デバイスは、例えば、半導体チップや、ガラス基板などの半導体以外の材料からなる基板上に回路や素子が形成されたチップのように、チップの形態にある。機能デバイスは、例えば、大規模集積回路(LSI)、メモリ、撮像素子、発光素子、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の1以上を含むことができる。MEMSは、例えば、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、傾斜センサ、マイクロフォン、及び音響センサの1以上である。一例によれば、機能デバイスは、LSIを含んだ半導体チップである。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、第1配線基板と第2配線基板とを、互いに向き合うように接合することと、前記第1及び第2配線基板間に封止樹脂を注入して、前記第1及び第2配線基板間に介在し且つ前記第2配線基板の端面を被覆した封止樹脂層を形成するとともに、前記第2配線基板を、周縁部に対して中央部が前記第1配線基板へ向けて突き出るように撓ませることとを含んだ複合配線基板の製造方法が提供される。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、前記第1及び第2配線基板の接合は、支持体上に剥離可能に支持された前記第2配線基板を前記支持体から前記第1配線基板へ転写することを含む上記側面に係る複合配線基板の製造方法が提供される。
【0023】
本発明の更に他の側面によると、第1配線基板と第2配線基板とを、封止樹脂を間に挟んで重ね合わせることと、この状態で、第1配線基板と第2配線基板とを互いに対して加圧して、前記第1及び第2配線基板間に介在し且つ前記第2配線基板の端面を被覆した封止樹脂層を形成するとともに、前記第2配線基板を、周縁部に対して中央部が前記第1配線基板へ向けて突き出るように撓ませることとを含んだ複合配線基板の製造方法が提供される。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、前記第1及び第2配線基板の重ね合わせは、支持体上に剥離可能に支持された前記第2配線基板を、前記支持体から、前記封止樹脂を間に挟んで前記第1配線基板へ転写することを含む上記側面に係る複合配線基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパッケージ化デバイスを概略的に示す断面図。
【
図2】
図1に示すパッケージ化デバイスが含んでいる第2配線基板に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【
図3】
図1に示すパッケージ化デバイスの一部を拡大して示す断面図。
【
図4】
図1に示すパッケージ化デバイスの製造方法における一工程を概略的に示す断面図。
【
図5】
図1に示すパッケージ化デバイスの製造方法における他の工程を概略的に示す断面図。
【
図6】
図1に示すパッケージ化デバイスの製造方法における更に他の工程を概略的に示す断面図。
【
図7】
図1に示すパッケージ化デバイスの製造方法における更に他の工程を概略的に示す断面図。
【
図8】
図1に示すパッケージ化デバイスの製造方法における更に他の工程を概略的に示す断面図。
【
図9】
図1に示すパッケージ化デバイスの製造方法における更に他の工程を概略的に示す断面図。
【
図10】変形例に係るパッケージ化デバイスの製造に使用する支持体付き多層配線基板を概略的に示す断面図。
【
図11】変形例に係るパッケージ化デバイスを概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記態様の何れかをより具体化したものである。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化した例を示すものであって、本発明の技術的思想を、以下に記載する構成要素の材質、形状、構造、及び配置等に限定するものではない。本発明の技術的思想には、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0027】
以下の説明において参照する図面では、同様又は類似した機能を有する構成要素に、同一の参照符号を付している。ここで、図面は模式的なものであり、厚さ方向の寸法と厚さ方向に垂直な方向、即ち面内方向の寸法との関係や、複数の層の厚さ方向における寸法の関係等は、現実のものとは異なり得ることに留意すべきである。従って、具体的な寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、2以上の構成要素の寸法の関係が、複数の図面の間で異なっている可能性があることにも留意すべきである。更に、幾つかの図面では、同一の構造を、他の図面とは天地を逆にして描いていることにも留意すべきである。
【0028】
なお、本開示において、「上面」及び「下面」は、板状部材又はそれに含まれる層の2つの主面、即ち、厚さ方向に垂直であり且つ最も広い面積を有する面及びその裏面であって、図面において上方に示された面と下方に示された面とをそれぞれ意味している。また、「側面」とは、面内方向に対して垂直であるか又は傾いた面を意味している。
【0029】
また、本開示において、「AAをBBの上に」という記載は、重力方向とは無関係に使用している。「AAをBBの上に」という記載によって特定される状態は、AAがBBと接触した状態を包含する。「AAをBBの上に」という記載は、AAとBBとの間に他の1以上の構成要素を介在させることを除外するものではない。
【0030】
<構造>
図1は、本発明の一実施形態に係るパッケージ化デバイスを概略的に示す断面図である。
【0031】
図1に示すパッケージ化デバイス1は、複合配線基板10と、機能デバイス20と、封止樹脂層30と、接合電極40とを含んでいる。
【0032】
機能デバイス20は、例えば、半導体チップ、又は、ガラス基板などの半導体以外の材料からなる基板上に回路や素子が形成されたチップである。ここでは、一例として、機能デバイス20は半導体チップであるとする。即ち、ここでは、パッケージ化デバイス1は、半導体パッケージである。
【0033】
パッケージ化デバイス1は、複数の機能デバイス20を含んでいる。パッケージ化デバイス1は、機能デバイス20を1つのみ含んでいてもよい。
【0034】
機能デバイス20は、接合電極40を介して、複合配線基板10へ接合されている。ここでは、機能デバイス20は、フリップチップボンディングによって、複合配線基板10へ接合されている。機能デバイス20の1以上は、ワイヤボンディングなどの他のボンディング法によって複合配線基板10へ接合されていてもよい。
【0035】
接合電極40は、機能デバイス20と複合配線基板10との間で、狭いピッチで配列している。接合電極40は、例えば、はんだ、銅及び金などの金属又は合金からなる。機能デバイス20の1以上をワイヤボンディングによって複合配線基板10へ接合する場合、その機能デバイス20は、例えば、金ワイヤを用いて複合配線基板と電気的に接続することができる。
【0036】
封止樹脂層30は、機能デバイス20と複合配線基板10との間に介在した部分と、機能デバイス20の側面を少なくとも部分的に被覆した部分とを含んでいる。封止樹脂層30は、機能デバイス20を複合配線基板10へ固定している。
【0037】
複合配線基板10は、FC-BGA基板11と、多層配線基板12と、封止樹脂層13と、接合電極14とを含んでいる。
【0038】
FC-BGA基板11は、第1配線基板の一例である。FC-BGA基板11は、例えば、図示しないマザーボードへ接合される。
【0039】
FC-BGA基板11は、コア層111と、絶縁層112と、導体層113と、絶縁層114とを含んでいる。
【0040】
コア層111は、絶縁層である。コア層111は、例えば、織布又は不織布に熱硬化性の絶縁樹脂を含浸させた繊維強化基板である。織布又は不織布としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、又はアラミド繊維を使用することができる。絶縁樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を使用することができる。
【0041】
コア層111には、貫通孔が設けられている。導体層113の一部は、貫通孔の側壁を被覆している。ここでは、導体層113の一部は、側壁が導体からなる貫通孔を生じるように、コア層111に設けられた貫通孔の側壁を被覆している。これら側壁が導体からなる貫通孔は、絶縁体で埋め込んでもよい。
【0042】
導体層113の残りは、コア層111の両主面上で多層配線構造を形成している。各多層配線構造は、互いに積層された複数の導体層113を含んでいる。
【0043】
多層配線構造が含む各絶縁層112は、導体層113の隣り合った2つの間に介在している。絶縁層112は、例えば、絶縁樹脂層である。絶縁層112には、貫通孔が設けられている。
【0044】
導体層113は、銅などの金属又は合金からなる。導体層113は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0045】
多層配線構造が含む各導体層113は、配線部とランド部とを含んでいる。絶縁層112を間に挟んでコア層111と向き合った導体層113は、絶縁層112に設けられた貫通孔の側壁を被覆したビア部を更に含んでいる。
【0046】
絶縁層114は、導体層113と絶縁層112との積層体上に設けられている。絶縁層114は、例えば、ソルダーレジストなどの絶縁樹脂層である。絶縁層114には、上記多層配線構造の最表面に位置した導体層113へ連通する貫通孔が設けられている。
【0047】
FC-BGA基板11は、導体層113のうち絶縁層114の貫通孔の位置で露出した部分の上に、接合用導体を更に含むことができる。接合用導体は、例えば、導体層113のうち絶縁層114の貫通孔の位置で露出した部分に設けられた金属バンプである。なお、接合用導体は、接合端子ともいう。接合用導体は、例えば、はんだからなる。
【0048】
多層配線基板12は、第2配線基板である。多層配線基板12は、上面が機能デバイス20と向き合うように、接合電極40を介して機能デバイス20に接合されている。また、多層配線基板12は、下面がFC-BGA基板11と向き合うように、接合電極14を介してFC-BGA基板11に接合されている。即ち、多層配線基板12は、機能デバイス20とFC-BGA基板11との接合を媒介するインターポーザである。
【0049】
多層配線基板12は、FC-BGA基板11と比較して、寸法がより小さい。また、多層配線基板12は、機能デバイス20と比較して、寸法がより大きい。具体的には、FC-BGA基板11の厚さ方向に垂直な平面への多層配線基板12の正射影は、この平面へのFC-BGA基板11の正射影の輪郭によって取り囲まれている。そして、上記平面への多層配線基板12の正射影の輪郭は、この平面への機能デバイス20の正射影を取り囲んでいる。多層配線基板12については、後で詳述する。
【0050】
接合電極14は、多層配線基板12と機能デバイス20との間で配列している。接合電極14のピッチは、接合電極40のピッチと比較してより広く且つFC-BGA基板11の下面に設ける接合用導体のピッチと比較してより狭い。接合電極14は、例えば、はんだからなる。
【0051】
封止樹脂層13は、FC-BGA基板11と多層配線基板12との間に介在した部分を含んでいる。なお、封止樹脂層は、アンダーフィル層ともいう。封止樹脂層13は、多層配線基板12をFC-BGA基板11へ固定している。
【0052】
多層配線基板12について、
図1及び
図2を参照しながら、更に詳しく説明する。
図2は、
図1に示すパッケージ化デバイスが含んでいる多層配線基板に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0053】
図2に示す多層配線基板12は、互いに積層された2以上の層120を含んでいる。これら層120の各々は、有機絶縁体を含んだ材料からなり、凹部が設けられた絶縁層と、この絶縁層上に設けられるとともに、その凹部を埋め込んだ導体層1203とを含んでいる。ここでは、上記の絶縁層は、第1絶縁層1201と第2絶縁層1202との組み合わせである。また、ここでは、各層120は、密着層1204aとシード層1204bとを更に含んでいる。なお、以下、有機絶縁体を含んだ材料からなる絶縁層を、「有機絶縁層」と記載することがある。
【0054】
第1絶縁層1201及び第2絶縁層1202が交互に積層してなる積層体は、
図1に示す絶縁層12Iを構成している。また、
図2に示す導体層1203の積層体は、
図1に示す多層配線構造12Cを構成している。
【0055】
図2に示す第1絶縁層1201は、上記凹部の一部として、内部にビア部1203Vが設けられる第1貫通孔を有している。第2絶縁層1202には、上記凹部の他の一部として、1以上が第1貫通孔と連通し、内部にランド部1203Lが形成される第2貫通孔と、第2貫通孔と繋がり、内部に配線部1203Wが形成される溝とが設けられている。各層120が含む第2絶縁層1202が有する溝の底面は、その層120が含む第1絶縁層1201の表面の一部である。
【0056】
第1絶縁層1201及び第2絶縁層1202は、例えば、有機絶縁体を含んだ材料からなる。第1絶縁層1201及び第2絶縁層1202の材料は、無機材料であってもよいが、好ましくは有機材料を含む。一例によれば、第1絶縁層1201及び第2絶縁層1202は、絶縁樹脂層である。これら絶縁樹脂層は、好ましくは、フィラーを含んでいない。第1絶縁層1201の材料と第2絶縁層1202の材料とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1絶縁層1201の材料と第2絶縁層1202の材料とが同じであったとしても、厚さ方向に平行な断面を、例えば、走査電子顕微鏡で観察することにより、第1絶縁層1201と第2絶縁層1202との間の界面を確認することができる。
【0057】
導体層1203は、第1及び第2貫通孔並びに溝を埋め込んでいる。導体層1203の上面及び下面は、それぞれ、第1絶縁層1201の上面及び第2絶縁層1202の下面に対して面一である。
【0058】
導体層1203のうち、第1貫通孔を埋め込んでいる部分は、ビア部1203Vである。導体層1203のうち、第2貫通孔を埋め込んでいる部分はランド部1203Lである。そして、導体層1203のうち、溝を埋め込んでいる部分は配線部1203Wである。
【0059】
導体層1203は、銅などの金属又は合金からなる。導体層1203は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0060】
密着層1204aは、導体層1203と第1絶縁層1201との間に介在した部分と、導体層1203と第2絶縁層1202との間に介在した部分と、導体層1203の上面を被覆した部分とを含んでいる。密着層1204aは、第1絶縁層1201及び第2絶縁層1202へのシード層1204bの密着性を向上させて、シード層1204bの剥離を生じ難くする層である。
【0061】
シード層1204bは、密着層1204a上に設けられている。シード層1204bは、密着層1204aと導体層1203との間に介在している。シード層1204bは、導体層1203の電解めっきによる成膜において、給電層としての役割を果たす。
【0062】
上記のパッケージ化デバイス1は、以下に説明する構造を有している。
図3は、
図1に示すパッケージ化デバイスの一部を拡大して示す断面図である。
【0063】
図1及び
図3に示すように、多層配線基板12の周縁部は、多層配線基板12の中央部と比較して、FC-BGA基板11からの距離がより大きい。ここでは、FC-BGA基板11の上面は平坦である。そして、ここでは、多層配線基板12は、中央部が周縁部に対してFC-BGA基板11へ向けて突き出るように撓んでいる。
【0064】
具体的には、多層配線基板12のうち多層配線構造12Cが設けられた第1部分は変形しておらず、この第1部分のFC-BGA基板11と向き合った面は平坦である。これに対し、多層配線基板12のうち多層配線構造12Cが設けられていない部分、即ち、多層配線基板12のうち第1部分を取り囲んだ第2部分は、第1部分からの距離が大きくなるほど、FC-BGA基板11からの距離が大きくなるように変形している。
【0065】
後で詳述するように、この構造によると、多層配線基板12の損傷を生じ難く、それ故、高い接続信頼性を達成することができる。
【0066】
多層配線基板12の厚さは、20μm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましく、25μm以上60μm以下の範囲内にあることがより好ましい。多層配線基板12が薄いと、十分な数の導体層1203を含んだ多層配線構造12Cを得ることが難しい。
【0067】
多層配線基板12の周縁部は、曲げ弾性率が1.5GPa以上20GPa以下の範囲内にあることが好ましく、2GPa以上15GPa以下の範囲内にあることがより好ましい。曲げ弾性率が小さいほど、多層配線基板12を、その中央部が周縁部に対してFC-BGA基板11へ向けて突き出るように撓ませ易い。曲げ弾性率が小さすぎると、多層配線基板12の形状にばらつきを生じ易い。
【0068】
多層配線基板12のFC-BGA基板11と向き合った面の縁から多層配線構造12Cまでの距離D1は、100μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましい。距離D1は、1000μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましくい。ここで、距離D1は、複合配線基板10の厚さ方向に対して垂直な方向における、上記縁から多層配線構造12Cまでの距離である。距離D1が短い多層配線基板12は、撓ませ難い。距離D1が十分に長ければ、距離D1を更に大きくすることに伴う接続信頼性の更なる向上は小さい。最も好ましくは、距離D1は約500μmである。
【0069】
FC-BGA基板11から多層配線基板12の周縁部までの距離D2と、FC-BGA基板11から多層配線基板12の中央部までの距離D3との差D4は、5μm以上30μm以下の範囲内にあることが好ましく、10μm以上25μm以下の範囲内にあることがより好ましい。接続信頼性を高めるうえでは、差D4を大きくすることが有利である。但し、差D4を大きくするほど、多層配線基板12の平坦性は低下する。
【0070】
なお、FC-BGA基板11から多層配線基板12の中央部までの距離D3は、例えば、50μm以上150μm以下の範囲内にある。また、多層配線基板12のFC-BGA基板11と向き合った面のうち、その端面近傍の部分が、複合配線基板10の厚さ方向に対して垂直な平面に対して成す角度は、例えば、5°以上30°以下の範囲内にある。
【0071】
絶縁層12Iが含む有機絶縁層、例えば、第1絶縁層1201及び第2絶縁層1202を構成している材料の線膨張係数は、40ppm/℃以上65ppm/℃以下の範囲内にあることが好ましく、封止樹脂層13を構成している材料の線膨張係数は、20ppm/℃以上35ppm/℃以下の範囲内にあることが好ましい。絶縁層12Iが含む有機絶縁層を構成している材料の線膨張係数は、封止樹脂層13を構成している材料の線膨張係数よりも大きいことが好ましい。この場合、熱膨張に伴う多層配線基板12のFC-BGA基板11からの剥離を特に生じ難い。
【0072】
<製造方法>
このパッケージ化デバイス1が含む多層配線基板12は、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0073】
図4乃至
図9は、
図1に示すパッケージ化デバイスの製造方法を概略的に示す断面図である。
【0074】
(1)支持体2上への剥離層3の形成
この方法では、先ず、
図4に示すように、支持体2の一方の面に剥離層3を形成する。
【0075】
支持体2は、支持体2を通じて剥離層3に光を照射する場合もあるため、透光性を有しているキャリア基板を使用することが有利である。支持体2としては、例えば、矩形のガラス板を用いることができる。矩形のガラス板は、大型化に適している。また、ガラス板は、優れた平坦性及び高い剛性を実現可能である。そのため、支持体2としての矩形のガラス板は、その上に微細なパターンを形成するのに適している。
【0076】
また、ガラス板はCTE(coefficient of thermal expansion;熱膨張率)が小さく歪みにくいことから、パターン配置精度及び平坦性の確保に優れている。支持体2としてガラス板を用いる場合、ガラス板の厚さは、製造プロセスにおける反りの発生を抑制する観点から厚い方が望ましく、例えば0.7mm以上1.1mm以下の範囲内にある。
【0077】
ガラス板のCTEは、3ppm以上15ppm以下であることが好ましく、FC-BGA基板11及び機能デバイス20のCTEとの整合性の観点から9ppm程度がより好ましい。
【0078】
一方、剥離層3に熱によって発泡する樹脂を用いる等、支持体2を剥離する際に支持体2に光の透過性が要求されない場合は、支持体2には、歪みの少ない材料、例えばメタルやセラミックスなどを用いることができる。セラミックスを使用した場合、所望のCTEを達成することが容易である。
【0079】
以下、一例として、剥離層3の材料は紫外光(UV光)を吸収して剥離可能となる樹脂であり、支持体2はガラス板であるとする。
【0080】
剥離層3は、例えば、UV光などの光を吸収することにより発熱若しくは変質して剥離可能となる樹脂でもよく、又は、熱によって発泡して剥離可能となる樹脂でもよい。
【0081】
剥離層3は、光分解促進剤、光吸収剤、増感剤、及びフィラー等の添加剤を更に含有していてもよい。
【0082】
剥離層3は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。また、例えば、支持体2上に形成される多層配線構造の保護を目的として、剥離層3上に保護層を設けてもよく、支持体2と剥離層3との間にそれらの密着性を向上させる層を更に設けてもよい。また、剥離層3と多層配線構造との間に、レーザー光反射層や金属層を更に設けてもよい。
【0083】
なお、剥離層3の材料として、UV光などの光、例えばレーザー光によって剥離可能となる樹脂を用いる場合、支持体2が透光性であれば、剥離層3へは、支持体2を介して光を照射してもよい。
【0084】
(2)剥離層3上への多層配線基板12の形成
支持体2の上面に剥離層3を形成した後、
図5に示すように、剥離層3の上に多層配線基板12を形成する。なお、支持体2と、これに支持された多層配線基板12とを含む構造体は、「支持体付き多層配線基板」である。
【0085】
多層配線基板12は、例えば、セミアディティブ法(Semi-Additive Process; SAP法)及びダマシン法によって形成することができる。
【0086】
例えば、先ず、感光性樹脂をスピンコート法により剥離層3上へ塗布する。次いで、フォトリソグラフィにより、塗膜に第1貫通孔を設けて、
図2に示す第1絶縁層1201を得る。
【0087】
次に、第1絶縁層1201上に第2絶縁層1202を形成する。第2絶縁層1202は、例えば、感光性樹脂を用いて形成することができる。例えば、第1絶縁層1201が設けられた面に、感光性樹脂をスピンコート法により塗布し、フォトリソグラフィにより、第2貫通孔及び溝を有する第2絶縁層1202を得る。
【0088】
第1絶縁層1201及び第2絶縁層1202の形成に使用する感光性樹脂は、感光性のエポキシ樹脂であることが好ましい。感光性エポキシ樹脂は、比較的低温で硬化させることができ、硬化に伴う収縮が少ないため、平坦性に優れた絶縁層を得ることができ、その後の微細パターン形成に有利である。
【0089】
第1絶縁層1201及び第2絶縁層1202は、感光性樹脂を塗布して形成する代わりに、絶縁樹脂フィルムを真空ラミネータで圧縮キュアを行って設けることもできる。この場合、平坦性に優れた絶縁層を得ることができる。また、高い平坦性が要求されない場合は、ポリイミドを使用してもよい。
【0090】
次いで、真空中で、密着層1204a及びシード層1204bを形成する。密着層1204aは、第1絶縁層1201及び第2絶縁層1202へのシード層122bの密着性を向上させて、シード層1204bの剥離を防止する層である。また、シード層1204bは、導体層1203を形成するための電解めっきにおいて、給電層としての役割を果たす。
【0091】
ここでは、一例として、密着層1204a及びシード層1204bは、スパッタリング法により形成することとする。また、ここでは、一例として、密着層1204aとして厚さが50nmのチタン層を形成するとともに、シード層1204bとして厚さが300nmの銅層を形成することとする。なお、シード層1204bは、無電解めっきによって形成してもよい。
【0092】
次に、シード層1204b上に、電解めっきにより導体層を形成する。電解めっきとしては、電解ニッケルめっき、電解銅めっき、電解クロムめっき、電解Pdめっき、電解金めっき、電解ロジウムめっき、及び電解イリジウムめっき等が挙げられる。簡便且つ安価であり、電気伝導性が良好な導体層1203が得られることから、電解銅めっきが望ましい。
【0093】
次に、上記の構造を化学機械研磨(CMP)等によって研磨して、導体層、シード層1204b及び密着層1204aのうち、第1若しくは第2貫通孔又は溝外に位置した部分を除去する。これにより、導体層1203を形成するとともに、層120を得る。
【0094】
その後、層120を形成するための工程を繰り返す。これにより、
図1、
図3及び
図5に示すように、多層配線構造12Cと絶縁層12Iとを含んだ多層配線基板12を得る。
【0095】
(3)複合配線基板10の製造
次に、
図5に示すように、多層配線構造12Cの露出部上に、接合用導体129を設ける。接合用導体129は、例えば、はんだバンプである。
【0096】
次いで、
図6に示すように、支持体2によって支持された多層配線基板12とFC-BGA基板11とを接合する。なお、
図6に示すFC-BGA基板11は、接合用導体115を含んでいる。接合用導体115は、例えば、半田からなる。接合用導体115及び129が互いに接合することにより、
図7に示す接合電極14となる。
【0097】
その後、剥離層3にレーザー光を照射して、
図7に示すように、支持体2と多層配線基板12とを互いから剥離する。このようにして、多層配線基板12を支持体2からFC-BGA基板11へ転写する。なお、剥離層3が多層配線基板12上に残留した場合には、例えば、エッチングによって除去する。
【0098】
次に、
図8に示す封止樹脂層13を形成する。ここでは、上記の剥離後に封止樹脂層13を形成しているが、封止樹脂層13を形成した後に上記の剥離を行ってもよい。
【0099】
封止樹脂層13の材料、即ち、封止樹脂(又はアンダーフィル材)としては、例えば、樹脂とフィラーとの混合物を使用することができる。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、及びマレイミド樹脂の1種又はこれらの樹脂の2種以上の混合物を使用することができる。フィラーとしては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛の1種又はこれらの2種以上を使用することができる。
【0100】
封止樹脂層13は、例えば、液状の封止樹脂をFC-BGA基板11と多層配線基板12との間に充填させ、これを硬化させることにより形成することができる。
【0101】
この液状の封止樹脂としては、例えば、FC-BGA基板11及び多層配線基板12を濡らし易いものを使用する。そのような封止樹脂を使用すると、FC-BGA基板11と多層配線基板12との間へ封止樹脂を注入することにより、この封止樹脂を、毛細管現象によってFC-BGA基板11と多層配線基板12との間に拡げるとともに、多層配線基板12の端面を封止樹脂で被覆することができる。
【0102】
この過程で、封止樹脂は、雰囲気と接する面の面積を小さくしようとする。上記の通り、多層配線基板12は周縁部が撓み易い。それ故、この周縁部よりも外側に位置した封止樹脂は、多層配線基板12の周縁部を上方へ押し上げて、周縁部とFC-BGA基板11との間へ移動する。その結果、多層配線基板12の中央部が周縁部に対してFC-BGA基板11へ向けて突き出た構造が得られる。
【0103】
封止樹脂として、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film;ACF)又は非導電性フィルム(Non-Conductive Film;NCF)を使用してもよい。
【0104】
即ち、先ず、FC-BGA基板11と支持体2に支持された多層配線基板12とを、封止樹脂としてのACF又はNCFを間に挟んで重ね合わせる。次いで、この状態で、FC-BGA基板11と多層配線基板12とを互いに対して加圧して、それらの間に介在し且つ多層配線基板12の端面を被覆した封止樹脂層13を形成するとともに、多層配線基板12及び支持体2を、周縁部に対して中央部がFC-BGA基板11へ向けて突き出るように撓ませる。その後、多層配線基板12と支持体2とを互いから剥離する。
【0105】
ACF又はNCFを使用して封止樹脂層13を形成する場合、支持体2が撓み易いものであれば、多層配線基板12の中央部に対して、周縁部よりも高い圧力で押圧すると、多層配線基板12の中央部が周縁部に対してFC-BGA基板11へ向けて突き出た構造が得られる。或いは、ACF又はNCFとして、中央部よりも周縁部がより厚いものを使用すると、多層配線基板12の中央部が周縁部に対してFC-BGA基板11へ向けて突き出た構造が得られる。
【0106】
以上のようにして、FC-BGA基板11及び多層配線基板12などを含んだ複合配線基板10を得る。
【0107】
(4)パッケージ化デバイス1の製造
次に、
図9に示すように、複合配線基板10へ機能デバイス20を接合する。この接合には、例えば、熱圧着(Thermo Compression Bonding)又はマウントリフローを利用することができる。
【0108】
機能デバイス20の接合に先立って、多層配線構造12Cの露出部上に、酸化防止及びはんだに対する濡れ性向上の目的で、無電解Ni/Pd/Auめっき層、OSP(Organic Solderability Preservative)膜、即ち、水溶性プリフラックスによる表面処理層、無電解スズめっき層、及び無電解Ni/Auめっき層などの表面処理層を設けてよい。
【0109】
次いで、機能デバイス20と複合配線基板10との接合部に対してフラックス洗浄を実施する。その後、それらの接合部を、
図1に示す封止樹脂層30で封止する。
封止樹脂層30の材料としては、例えば、封止樹脂層13の材料として例示したものを使用することができる。封止樹脂層30は、例えば、封止樹脂層13について上述したのと同様の方法により形成することができる。
以上のようにして、
図1に示すパッケージ化デバイス1が完成する。
【0110】
<変形例>
図10は、変形例に係るパッケージ化デバイスの製造に使用する支持体付き多層配線基板を概略的に示す断面図である。
図11は、変形例に係るパッケージ化デバイスを概略的に示す断面図である。
【0111】
図10に示す多層配線基板12は、絶縁層128としてソルダーレジスト層を更に含んでいること以外は、
図5などを参照しながら説明した多層配線基板12と同様である。
図11に示すパッケージ化デバイス1は、多層配線基板12が絶縁層128を更に含んでいること以外は、
図1乃至
図9を参照しながら説明したパッケージ化デバイス1と同様である。
【0112】
この例に示すように、FC-BGA基板11、多層配線基板12、複合配線基板10、及びパッケージ化デバイス1には、様々な変形が可能である。
【0113】
<効果>
上記のパッケージ化デバイス1では、機能デバイス20をFC-BGA基板11へ直接搭載するのではなく、それらの間に多層配線基板12を介在させる。多層配線基板12においてFC-BGA基板11との接合に使用する接合端子のピッチは、FC-BGA基板11においてマザーボードとの接合に使用する接合端子のピッチよりも十分に小さくすることができる。それ故、多層配線基板12において、機能デバイス20との接合に使用する接合端子の狭ピッチ化や、配線の微細化を達成することは容易である。従って、上記の複合配線基板10では、機能デバイス20との接合に使用する接合端子の狭ピッチ化や、配線の微細化を達成することが容易である。
【0114】
シリコンインターポーザ技術によって得られるインターポーザ、所謂シリコンインターポーザは、シリコンウェハと半導体前工程用の設備とを用いて製造されている。シリコンウェハは、形状及びサイズに制限があり、1枚のウェハから製造できるインターポーザの数は、必ずしも多くはない。そして、その製造設備も高価である。それ故、シリコンインターポーザは高価である。また、シリコンウェハは半導体であることから、シリコンインターポーザを使用すると、伝送特性が劣化するという問題もある。
【0115】
上記の複合配線基板10の製造に、シリコンウェハは不要である。また、複合配線基板10では、例えば、絶縁層の殆ど又は全てを絶縁樹脂層とすることができる。それ故、上記の複合配線基板10は、安価な材料及び設備で製造することができ、低コスト化が可能であり、また、優れた伝送特性も達成し得る。
【0116】
微細な配線パターンを有する導体層を含んだ多層配線構造をFC-BGA基板に直接作り込む手法は、シリコンインターポーザに見られる伝送特性の劣化は小さい。しかしながら、この手法には、FC-BGA基板自体の製造歩留まりの問題や、ガラスエポキシ基板などのコア層上に、微細な配線パターンを有する導体層を含んだ多層配線構造を形成する難易度が高いため、全体的に製造歩留まりが低いという課題がある。更に、このFC-BGA基板では、その厚さを二等分する平面に対して高い対称性を実現することは難しい。それ故、そのようなFC-BGA基板は、加熱時に反りや歪みを生じ易い。
【0117】
上記の複合配線基板10及びパッケージ化デバイス1の製造においては、FC-BGA基板11とは別に、多層配線基板12を製造し、それらを互いに接合する。微細な配線パターンを有する導体層を含んだ多層配線構造12Cは、FC-BGA基板11には作り込まず、多層配線基板12に作り込む。また、多層配線基板12は、支持体2に支持させた状態でFC-BGA基板11と接合するので、多層配線基板12が薄い場合であっても、FC-BGA基板11との接合が可能である。それ故、上記の複合配線基板10及びパッケージ化デバイス1は、高い歩留まりで製造可能である。
【0118】
また、複合配線基板10の製造において、微細な配線パターンを有する導体層を含んだ多層配線構造12Cは、ガラスエポキシ基板などのコア層上に形成するのではなく、支持体2上に形成する。支持体2として平滑性に優れたものを使用することができるため、その上に形成する微細パターン等は高い形状精度で形成可能である。このような理由でも、上記の複合配線基板10及びパッケージ化デバイス1は、高い歩留まりで製造可能である。
【0119】
更に、上記の複合配線基板10及びパッケージ化デバイス1では、FC-BGA基板11において、その厚さを二等分する平面に対して高い対称性を実現することは容易であり、また、多層配線基板12においても、その厚さを二等分する平面に対して高い対称性を実現することは容易である。更に、上記の複合配線基板10及びパッケージ化デバイス1では、別々に形成したFC-BGA基板11及び多層配線基板12を接合しているので、それらのCTEが相違していても、この相違に起因した反り等は生じ難い。それ故、上記の複合配線基板10及びパッケージ化デバイス1は、加熱時に反りや歪みを生じ難い。
【0120】
また、上記の複合配線基板10は、高い接続信頼性を達成し得る。これについて、以下に説明する。
【0121】
この複合配線基板10では、上記の通り、多層配線基板12の周縁部は、多層配線基板12の中央部と比較して、FC-BGA基板11からの距離がより大きい。即ち、封止樹脂層13は、多層配線基板12の中央部と比較して、多層配線基板12の周縁部においてより厚い。そして、封止樹脂層13は、多層配線基板12の端面を被覆している。それ故、この封止樹脂層13は、多層配線基板12を損傷から保護する能力に優れている。従って、この複合配線基板10は、例えば、多層配線基板12にその端部からクラックが発生し難く、高い接続信頼性を達成し得る。
【符号の説明】
【0122】
1…パッケージ化デバイス、2…支持体、3…剥離層、10…複合配線基板、11…FC-BGA基板、12…多層配線基板、12C…多層配線構造、12I…絶縁層、13…封止樹脂層、14…接合電極、20…機能デバイス、30…封止樹脂層、40…接合電極、111…コア層、112…絶縁層、113…導体層、114…絶縁層、120…層、128…絶縁層、129…接合用導体、1201…第1絶縁層、1202…第2絶縁層、1203…導体層、1203L…ランド部、1203V…ビア部、1203W…配線部、1204a…密着層、1204b…シード層。