(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120665
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】液体薬剤供給装置、洗濯システム及び液体薬剤供給装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
D06F 39/02 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
D06F39/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017711
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000115429
【氏名又は名称】ライオンハイジーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】増渕 由樹
(72)【発明者】
【氏名】渡部 慎一
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AC23
3B166AC24
3B166AD06
3B166AE01
3B166AE02
3B166AE07
3B166AE11
3B166BA12
3B166BA84
3B166CA01
3B166FA01
3B166FA04
3B166FA05
3B166FA06
3B166FA12
3B166FB02
3B166FB03
3B166FB05
3B166JM02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】洗濯機で用いられる液体薬剤の水希釈等を省スペースかつ効率的に実施でき、液体薬剤による破損が発生しにくい液体薬剤供給装置の提供。
【解決手段】洗濯機の洗濯槽へ、液体薬剤を水で希釈して供給する液体薬剤供給装置であって、集合配管と、液体薬剤を収容する薬剤タンク、薬剤供給配管等を備える薬剤供給部と、水供給配管等を備える水供給部と、エア供給配管等を備えるエア供給部と、集合配管と洗濯槽とを接続する送液配管と、を備え、集合配管は樹脂により一体に成形された筒状の本体部11を有し、本体部11の周壁12には本体部11の軸方向Jに沿って複数の貫通孔13~16が形成され、本体部11の一方の開口部17にエア供給配管が、本体部11の他方の開口部18に送液配管が、複数の貫通孔13~16のうち最も一方の開口部17側の貫通孔13に水供給配管が、他の貫通孔14~16に薬剤供給配管が接続されている、液体薬剤供給装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機の洗濯槽へ、液体薬剤を水で希釈して供給する液体薬剤供給装置であって、
集合配管と、
液体薬剤を収容する薬剤タンクと、前記集合配管と前記薬剤タンクとを接続する薬剤供給配管と、前記薬剤供給配管に設けられたポンプとを備える薬剤供給部と、
前記集合配管と外部水源とを接続する水供給配管と、前記水供給配管に設けられた水供給制御バルブとを備える水供給部と、
圧縮機と、前記集合配管と前記圧縮機とを接続するエア供給配管と、前記エア供給配管に設けられたエア供給制御バルブとを備えるエア供給部と、
前記集合配管と前記洗濯槽とを接続する送液配管と、
を備え、
前記集合配管は、樹脂により一体に成形された筒状の本体部を有し、
前記本体部の周壁には、前記本体部の軸方向に沿って複数の貫通孔が形成されており、
前記本体部の一方の開口部に前記エア供給配管が接続され、前記本体部の他方の開口部に前記送液配管が接続され、前記複数の貫通孔のうち最も前記一方の開口部側の貫通孔に前記水供給配管が接続され、他の貫通孔に前記薬剤供給配管が接続されている、液体薬剤供給装置。
【請求項2】
前記本体部は、削り出し品である、請求項1に記載の液体薬剤供給装置。
【請求項3】
前記本体部の周壁の肉厚が10~50mmである、請求項1又は2に記載の液体薬剤供給装置。
【請求項4】
前記薬剤供給配管に、前記ポンプよりも前記集合配管側に、逆止弁が設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体薬剤供給装置。
【請求項5】
前記逆止弁のクラッキング圧力が0.001~0.1MPaである、請求項4に記載の液体薬剤供給装置。
【請求項6】
前記ポンプと前記逆止弁との間において、前記薬剤供給配管が屈曲している、請求項4又は5に記載の液体薬剤供給装置。
【請求項7】
複数の前記薬剤供給部を備え、
前記複数の薬剤供給部それぞれにおける前記液体薬剤の少なくとも一部は互いに粘度が異なり、粘度が高いものほど、前記薬剤供給配管が接続された貫通孔のうち前記一方の開口部側に位置する貫通孔から前記集合配管に供給されるようになっている、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体薬剤供給装置。
【請求項8】
前記洗濯機は、複数の洗濯槽を有する連続式洗濯機であり、
前記連続式洗濯機の任意の洗濯槽へ、液体薬剤を水で希釈して供給するものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体薬剤供給装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の液体薬剤供給装置と、洗濯機とを備える、洗濯システム。
【請求項10】
請求項8に記載の液体薬剤供給装置と、連続式洗濯機とを備える、洗濯システムであって、
複数の前記任意の洗濯槽を有し、
前記複数の任意の洗濯槽の各々に対して、前記液体薬剤供給装置を有する、洗濯システム。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の液体薬剤供給装置の運転方法であって、
前記エア供給制御バルブが閉の状態で前記水供給制御バルブを開として、水を前記集合配管に供給するステップS1と、
前記ステップS1の後、前記ポンプの動作により、水とともに液体薬剤を前記集合配管に供給するステップS2と、
前記ステップS2の後、前記ポンプの動作を停止させて、水のみを前記集合配管に供給するステップS3と、
前記ステップS3の後、前記水供給制御バルブを閉、前記エア供給制御バルブを開とし、前記圧縮機の動作により、エアを前記集合配管に供給するステップS4と、
を行う、液体薬剤供給装置の運転方法。
【請求項12】
前記ステップS4の後、前記エア供給制御バルブを閉、前記水供給制御バルブを開として、水を前記集合配管に供給し、前記集合配管の内部を水で満たすステップS5を行う、請求項11に記載の液体薬剤供給装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体薬剤供給装置、洗濯システム及び液体薬剤供給装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シーツ、パジャマ、枕カバー、ユニフォーム等の被洗物を大量に洗浄する際に、業務用洗濯機が用いられる。業務用洗濯機では、洗濯槽の各工程(予備洗浄工程、本洗浄工程、濯ぎ工程、仕上げ工程が一般的)に適した処方とするために、複数の薬剤を、所定の濃度となるように水希釈し、攪拌槽にて混合して供給する。1種の薬剤のみを使用する場合も、水希釈して供給する。
【0003】
業務用洗濯機は大型であることから、洗浄剤、仕上げ剤等の薬剤は、薬剤供給装置を用いて洗濯槽に投入されることが多い。
薬剤供給装置としては、攪拌タンク内に加圧・減圧装置を設け、攪拌タンク内を減圧にして液体薬剤と水を攪拌タンク内に導入し、攪拌タンク内の水希釈された液体薬剤を加圧エアにより洗濯槽内に投入するものが知られている(特許文献1)。
【0004】
業務用洗濯機の1つとして、複数の洗濯槽(予洗槽、洗浄槽、濯ぎ槽、仕上げ槽等)を有する連続式洗濯機がある。連続式洗濯機においては、例えば、被洗物を予洗槽に投入し、水と洗浄剤を含む洗浄液で予備洗浄(予洗)し、次いで、被洗物を洗浄槽に移動させ、洗浄液で本洗浄し、次いで、被洗物を濯ぎ槽に移動させ、水で濯ぎ、次いで、被洗物を仕上げ槽に移動させ、水と仕上げ剤を含む仕上げ液の中に浸漬し又は仕上げ液をスプレーし、次いで、被洗物を脱水機に移動させ、脱水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
連続式洗濯機においては、洗濯槽によって必要な薬剤が異なるので、薬剤を投入する洗濯槽毎に薬剤供給装置を設けることが望ましい。
しかし、特許文献1の薬剤供給装置を連続式洗濯機の複数の洗濯槽毎に設けようとすると、かなり広い設置スペースが必要になってしまう。
【0007】
そこで、本発明者らは、薬剤供給装置の省スペース化のため、集合配管を用いて液体薬剤の水希釈及び混合を行うことについて検討したところ、集合配管が液体薬剤により劣化し、破損する問題があった。特に、集合配管に供給される液体薬剤は、供給時間とポンプの稼働時間を短縮する観点から、濃縮タイプが好ましいが、液体薬剤が濃縮タイプである場合、上記問題が発生しやすい。
【0008】
本発明の一態様は、洗濯機で用いられる液体薬剤の水希釈等を省スペースかつ効率的に実施でき、液体薬剤による破損が発生しにくい液体薬剤供給装置及びその運転方法、前記液体薬剤供給装置を用いた洗濯システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]洗濯機の洗濯槽へ、液体薬剤を水で希釈して供給する液体薬剤供給装置であって、
集合配管と、
液体薬剤を収容する薬剤タンクと、前記集合配管と前記薬剤タンクとを接続する薬剤供給配管と、前記薬剤供給配管に設けられたポンプとを備える薬剤供給部と、
前記集合配管と外部水源とを接続する水供給配管と、前記水供給配管に設けられた水供給制御バルブとを備える水供給部と、
圧縮機と、前記集合配管と前記圧縮機とを接続するエア供給配管と、前記エア供給配管に設けられたエア供給制御バルブとを備えるエア供給部と、
前記集合配管と前記洗濯槽とを接続する送液配管と、
を備え、
前記集合配管は、樹脂により一体に成形された筒状の本体部を有し、
前記本体部の周壁には、前記本体部の軸方向に沿って複数の貫通孔が形成されており、
前記本体部の一方の開口部に前記エア供給配管が接続され、前記本体部の他方の開口部に前記送液配管が接続され、前記複数の貫通孔のうち最も前記一方の開口部側の貫通孔に前記水供給配管が接続され、他の貫通孔に前記薬剤供給配管が接続されている、液体薬剤供給装置。
[2]前記本体部は、削り出し品である、前記[1]の液体薬剤供給装置。
[3]前記本体部の周壁の肉厚が10~50mmである、前記[1]又は[2]の液体薬剤供給装置。
[4]前記薬剤供給配管に、前記ポンプよりも前記集合配管側に、逆止弁が設けられている、前記[1]~[3]のいずれかの液体薬剤供給装置。
[5]前記逆止弁のクラッキング圧力が0.001~0.1MPaである、前記[4]の液体薬剤供給装置。
[6]前記ポンプと前記逆止弁との間において、前記薬剤供給配管が屈曲している、前記[4]又は[5]の液体薬剤供給装置。
[7]複数の前記薬剤供給部を備え、
前記複数の薬剤供給部それぞれにおける前記液体薬剤の少なくとも一部は互いに粘度が異なり、粘度が高いものほど、前記薬剤供給配管が接続された貫通孔のうち前記一方の開口部側に位置する貫通孔から前記集合配管に供給されるようになっている、前記[1]~[6]のいずれかの液体薬剤供給装置。
[8]前記洗濯機は、複数の洗濯槽を有する連続式洗濯機であり、
前記連続式洗濯機の任意の洗濯槽へ、液体薬剤を水で希釈して供給するものである、前記[1]~[7]のいずれかの液体薬剤供給装置。
[9]前記[1]~[8]のいずれかの液体薬剤供給装置と、洗濯機とを備える、洗濯システム。
[10]前記[8]の液体薬剤供給装置と、連続式洗濯機とを備える、洗濯システムであって、
複数の前記任意の洗濯槽を有し、
前記複数の任意の洗濯槽の各々に対して、前記液体薬剤供給装置を有する、洗濯システム。
[11]前記[1]~[8]のいずれかの液体薬剤供給装置の運転方法であって、
前記エア供給制御バルブが閉の状態で前記水供給制御バルブを開として、水を前記集合配管に供給するステップS1と、
前記ステップS1の後、前記ポンプの動作により、水とともに液体薬剤を前記集合配管に供給するステップS2と、
前記ステップS2の後、前記ポンプの動作を停止させて、水のみを前記集合配管に供給するステップS3と、
前記ステップS3の後、前記水供給制御バルブを閉、前記エア供給制御バルブを開とし、前記圧縮機の動作により、エアを前記集合配管に供給するステップS4と、
を行う、液体薬剤供給装置の運転方法。
[12]前記ステップS4の後、前記エア供給制御バルブを閉、前記水供給制御バルブを開として、水を前記集合配管に供給し、前記集合配管の内部を水で満たすステップS5を行う、前記[11]の液体薬剤供給装置の運転方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、洗濯機で用いられる液体薬剤の水希釈等を省スペースかつ効率的に実施でき、液体薬剤による破損が発生しにくい液体薬剤供給装置及びその運転方法、前記液体薬剤供給装置を用いた洗濯システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る洗濯システムの概略構成を示す図。
【
図2】一実施形態に係る液体薬剤供給装置の概略構成を説明する図。
【
図3】
図2の液体薬剤供給装置の本体部の概略構成を示す斜視図。
【
図4】一実施形態に係る液体薬剤供給装置の運転方法を説明する図。
【
図5】液体薬剤供給装置の本体部の他の例を示す図。
【
図6】液体薬剤供給装置の本体部の他の例を示す図。
【
図7】液体薬剤供給装置の本体部の他の例を示す図。
【
図8】液体薬剤供給装置の本体部の他の例を示す図。
【
図9】液体薬剤供給装置の本体部の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、添付の図面を参照し、実施形態例を示して説明する。
なお、以下の説明で使用する
図1~
図9における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0013】
図1は、本実施形態の洗濯システム1000の概略構成を示す図である。
洗濯システム1000は、複数の液体薬剤供給装置(第1液体薬剤供給装置1a、第2液体薬剤供給装置1b、第3液体薬剤供給装置1c、第4液体薬剤供給装置1d、第5液体薬剤供給装置1e)と、連続式洗濯機100と、を備える。
連続式洗濯機100は、第1洗濯槽101~第12洗濯槽112を有する。
連続式洗濯機100については後で詳しく説明するが、本実施形態において、液体薬剤が供給される洗濯槽(任意の洗濯槽)は、第1洗濯槽101、第2洗濯槽102、第3洗濯槽103、第5洗濯槽105、第12洗濯槽112である。洗濯システム1000は、第1洗濯槽101、第2洗濯槽102、第3洗濯槽103、第5洗濯槽105、第12洗濯槽112の各々に対して、第1液体薬剤供給装置1a~第5液体薬剤供給装置1eを有する。
【0014】
第1液体薬剤供給装置1a~第5液体薬剤供給装置1eは各々、第1洗濯槽101、第2洗濯槽102、第3洗濯槽103、第5洗濯槽105、第12洗濯槽112へ、液体薬剤を水で希釈して供給する。
第1液体薬剤供給装置1aは、集合配管10と、第1薬剤供給部20aと、第2薬剤供給部20bと、第3薬剤供給部20cと、水供給部30と、エア供給部40と、送液配管50とを備える。
第2液体薬剤供給装置1b、第3液体薬剤供給装置1c、第5液体薬剤供給装置1eはそれぞれ、集合配管10と、第1薬剤供給部20aと、第2薬剤供給部20bと、水供給部30と、エア供給部40と、送液配管50とを備える。
第4液体薬剤供給装置1dは、集合配管10と、第1薬剤供給部20aと、水供給部30と、エア供給部40と、送液配管50とを備える。
【0015】
<連続式洗濯機>
図1の連続式洗濯機100は、第1洗濯槽101~第12洗濯槽112を有する。第1洗濯槽101には被洗物投入口120が設けられている。第12洗濯槽112には脱水機130が連結されている。
第1洗濯槽101~第2洗濯槽102は、予備洗浄工程を行う予洗槽である。
第3洗濯槽103~第8洗濯槽108は、本洗浄工程を行う洗浄槽である。
第9洗濯槽109~第11洗濯槽111は、濯ぎ工程を行う濯ぎ槽である。
第12洗濯槽112は、仕上げ工程を行う仕上げ槽である。
なお、予洗槽、洗浄槽、濯ぎ槽、仕上げ槽それぞれの数は、
図1に示す構造における数に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0016】
第1洗濯槽101~第12洗濯槽112はそれぞれ、洗濯液を収容する外胴の中に、被洗物を収容して回転する内胴を備えるダブルドラムタイプであってもよいし、又は単一の回転胴によって構成されるシングルドラムタイプでもよい。
第1洗濯槽101~第12洗濯槽112は、例えば同心状に配置され、その中心軸線を回転中心として、図示しない駆動装置により一定の回転角度範囲で、左回りの方向と右回りの方向に交互に断続的に回転駆動される。
【0017】
連続式洗濯機100には、第1洗濯槽101~第12洗濯槽112の隣接した相互の洗濯槽間における被洗物の搬送のための螺旋シュートが設けられている。螺旋シュートは、各洗濯槽から隣接した下流の洗濯槽へ被洗物を移送するように形成されている。よって、洗濯槽が360°回転すると、被洗物は下流の洗濯槽へ移送される。洗浄水、濯ぎ水、仕上げ水は被洗物に対しては並流及び/又は向流(バッチフロー及び/又はカウンタフロー)であり、各洗濯槽の内部において被洗物の予洗・本洗・濯ぎ・仕上げを順々に行う。
【0018】
このような連続式洗濯機100では、洗浄水、濯ぎ水、仕上げ水は被洗物に対しては並流及び/又は向流(バッチフロー及び/又はカウンタフロー)であり、被洗物は第1洗濯槽101から第12洗濯槽112に順々に移動する。また、連続式洗濯機100は、第1洗濯槽101~第2洗濯槽102(予洗用ユニット)で被洗物の予備洗浄が行われ、第3洗濯槽103から第8洗濯槽108(本洗用ユニット)で被洗物の本洗浄が行われ、第9洗濯槽109から第11洗濯槽111で被洗物の濯ぎが行われ、第12洗濯槽112で被洗物の仕上げが行われ、脱水機130で被洗物の脱水が行われるように構成される。
【0019】
<液体薬剤>
液体薬剤としては、リネンサプライ分野で通常使用され得る液体薬剤を使用でき、例えば洗浄剤、仕上げ剤、その他の各種の助剤が挙げられる。液体薬剤は、液体薬剤が供給される洗濯槽に応じて、2種以上が適宜組み合わされて又は1種が単独で用いられる。
【0020】
予洗槽に供給される液体薬剤(以下、「予洗用液体薬剤」とも記す。)としては通常、アルカリ剤及び洗浄剤のいずれか一方又は両方が用いられる。
アルカリ剤の例としては、SiO2/Na2Oモル比が0.5~4である珪酸ナトリウム(例えばメタ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム、1号珪酸ナトリウム、層状珪酸ナトリウム(SKS-6))、SiO2/K2Oモル比が0.5~4である珪酸カリウム(例えばメタ珪酸カリウム、オルソ珪酸カリウム、珪酸カリウム、層状珪酸カリウム)等の珪酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸カリウム、重炭酸カリウム等の炭酸塩;リン酸塩等が挙げられる。
【0021】
洗浄剤の例としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。
【0022】
予洗用液体薬剤として、アルカリ剤及び洗浄剤のいずれか一方又は両方に加えて、キレート剤を用いてもよい。キレート剤の例としては、メチルグリシンジ酢酸塩(MGDA)、β-アラニンジ酢酸塩(ADAA)、イソセリンジ酢酸塩(ISDA)、アスパラギン酸ジ酢酸塩(ASDA)、セリンジ酢酸塩、グルタミン酸ジ酢酸塩(GLDA)、イミノジコハク酸塩(IDS)、ヒドロキシイミノジコハク酸塩(HIDS)、エチレンジアミンテトラ酢酸塩(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩、ヒドロキシ酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、ピロメリット酸塩、ベンゾポリカルボン酸塩、シクロペンタンテトラカルボン酸塩、カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノまたはジサクシネート等のエーテルカルボン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、またイタコン酸、フマル酸、テトラメチレン-1,2-ジカルボン酸、コハク酸、アスパラギン酸等の重合体または共重合体、デンプン、セルロース、アミロース、ペクチン等の多糖類酸化物やカルボキシメチルセルロース等の多糖類、ポリアセタールカルボン酸塩等が挙げられる。
【0023】
予洗用液体薬剤として、上記以外の液体薬剤、例えば、漂白成分、溶解促進剤、膨潤製水不溶性物質、再汚染防止剤、酵素、蛍光増白剤、消泡剤、還元剤、色素、香料等を用いてもよい。漂白成分としては、漂白剤、漂白活性化剤、漂白活性化触媒等が挙げられる。
【0024】
洗浄槽に供給される液体薬剤(以下、「本洗浄用液体薬剤」とも記す。)としては、予洗用液体薬剤と同様のものが挙げられる。
【0025】
本実施形態では濯ぎ槽に液体薬剤は供給されないが、必要に応じて、濯ぎ槽に液体薬剤を供給してもよい。
濯ぎ槽に供給される液体薬剤としては、例えば、柔軟剤、糊剤、抗菌剤、殺菌剤、再汚染防止剤、防汚剤等が挙げられる。
【0026】
仕上げ槽に供給される液体薬剤(以下、「仕上げ用液体薬剤」とも記す。)としては、サワー剤、過酸化水素還元剤、界面活性剤、キレート剤、分散剤、水溶性溶剤、シリコーン、蛍光増白剤、抗菌剤、消臭剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、平滑剤、縮み防止剤、洗濯じわ防止剤、ドレープ性保持剤、アイロン性向上剤、増白剤、白化剤、布地柔軟化クレイ、帯電防止剤、移染防止剤、高分子分散剤、汚れ剥離剤、スカム分散剤、染料固定剤、退色防止剤、染み抜き剤、繊維表面改質剤、カタラーゼ等の酵素、抑泡剤、汚染防止剤及び非イオン性高分子化合物等が挙げられる。
【0027】
サワー剤は、酸性物質であり、被洗物に残留しているアルカリ剤を中和する。
サワー剤としては、公知のサワー剤が使用可能であり、例えばクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、グリコール酸、酒石酸、イソクエン酸、マロン酸、酢酸、乳酸、アスコルビン酸及びフィチン酸等の有機酸、並びにリン酸等の無機酸が挙げられる。中でも、繊維の脆化防止及び装置内の金属の腐食防止の観点から、有機酸が好ましい。
【0028】
予洗用液体薬剤や本洗浄用液体薬剤として漂白剤を使用した場合、仕上げ槽に供給された被洗物に過酸化水素が残留することがある。過酸化水素還元剤は、被洗物に残留している過酸化水素を還元する。
過酸化水素還元剤としては、公知の過酸化水素還元剤が使用可能であり、例えばチオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩、重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム)、二酸化チオ尿素及びスルホキシルナトリウム等が挙げられる。中でも、過酸化水素に対する還元力の観点から、亜硫酸塩が好ましく、亜硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0029】
<液体薬剤供給装置>
第1液体薬剤供給装置1aは、前記したとおり、集合配管10と、第1薬剤供給部20aと、第2薬剤供給部20bと、第3薬剤供給部20cと、水供給部30と、エア供給部40と、送液配管50とを備える。
以下、
図2を参照して、第1液体薬剤供給装置1aを説明する。なお、第2薬剤供給部20b及び第3薬剤供給部20cは、第1薬剤供給部20aと同様であるので、
図2においては、第2薬剤供給部20b及び第3薬剤供給部20cの記載を省略している。
【0030】
(集合配管)
集合配管10は、樹脂により一体に成形された筒状の本体部11を有する。
本体部11を構成する樹脂としては、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等)、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、シリコンカーバイド樹脂(SIC)等が挙げられる。これらの中でも、液体薬剤に対する耐久性の観点から、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0031】
図3は、本体部11の概略構成を示す斜視図である。
図3に示すように、本実施形態の本体部11は円筒状である。本体部11の軸方向Jと直交する方向における断面において、本体部11の周壁12の外周面及び内周面はともに円形である。周壁12の外周面及び内周面はそれぞれ、本体部11の軸方向Jに対して平行に形成されている。
本体部11の周壁12には、本体部11の軸方向Jに沿って複数の貫通孔13~16が形成されている。複数の貫通孔13~16の一方の開口は、周壁12の外周面と面一に形成され、他方の開口は、周壁12の内周面と面一に形成されている。周壁12の外周面は凹凸のない曲面とされている。
【0032】
本体部11の肉厚Tは、10~50mmが好ましく、15~30mmがより好ましい。肉厚Tが上記下限値以上であれば、液体薬剤に対する耐久性がより優れ、上記上限値以下であれば、第1液体薬剤供給装置1aや洗濯システム1000全体を省スペース化できる。
本体部11の外径φ1は、例えば50~60mmである。
本体部11の内径φ2は、例えば20~25mmである。
貫通孔13~16それぞれの直径φ3は、例えば10~20mmである。
本体部11の長さLは、例えば250~300mmである。
【0033】
本体部11の成形方法としては、一般的な樹脂成形法を用いることが可能であり、例えば圧縮成形法、射出成形法、押し出し成形法が挙げられる。
本体部11の成形方法としては、樹脂塊(丸棒状、角棒状、ブロック状等)から通液部となる部分(周壁12の内側部分及び貫通孔部分)を削り出す方法が好ましい。すなわち、本体部11は、削り出し品であることが好ましい。本体部11が削り出し品であれば、本体部11が圧縮成形法、射出成形法又は押し出し成形法により直接成形した成形品である場合に比べて、周壁12内での樹脂構造の均一性が高く、液体薬剤に対する耐久性がより優れる傾向がある。
【0034】
本体部11の一方の開口部17にはエア供給配管42が接続され、他方の開口部18には送液配管50が接続される。複数の貫通孔13~16のうち最も一方の開口部17側の貫通孔13には水供給配管31が接続され、他の貫通孔14~16には、第1薬剤供給部20a、第2薬剤供給部20b、第3薬剤供給部20cそれぞれの薬剤供給配管22が接続される。
【0035】
本体部11の一方の開口部17には、エア供給配管42接続用の接続部材61が取り付けられている。
貫通孔13には、水供給配管31接続用の接続部材62が取り付けられている。
貫通孔14~16にはそれぞれ、薬剤供給配管22接続用の接続部材63が取り付けられている。接続部材61~63は、本体部11とは別体で成形されたものである。
接続部材61~63の材質としては、液体薬剤に対する耐久性の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、本体部11を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
【0036】
(薬剤供給部)
薬剤タンク21は、液体薬剤を収容する。
薬剤タンク21の材質としては、液体薬剤に対する耐久性の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、本体部11を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
【0037】
薬剤供給配管22は、集合配管10と薬剤タンク21とを接続する。薬剤供給配管22に設けられたポンプPの動作により、薬剤タンク21内の液体薬剤が、薬剤供給配管22を通って集合配管10に供給される。
薬剤供給配管22の薬剤タンク21側には、逆流防止のためフートバルブを設けることが出来る。フートバルブは、薬剤タンク中の粗大な固形異物の吸引を防ぐため、メッシュやスリットを備えているものが好ましい。メッシュの目開きは0.5~1mmが好ましい。スリット1~3mm程度のスリット幅が好ましい。メッシュの目開き又はスリット幅が上記下限値以上であれば、長時間使用時に目詰まりが生じにくく、上記上限値以下であれば、固形異物の吸引防止効果に優れる。
薬剤供給配管22の材質としては、液体薬剤に対する耐久性の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、本体部11を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
ポンプPとしては、容積式ポンプ、ターボ式ポンプ等が挙げられる。
【0038】
薬剤供給配管22には、集合配管10からの液状薬剤の逆流を防止するために、ポンプPよりも集合配管10側に、逆止弁23が設けられている。
逆止弁23の材質としては、液体薬剤に対する耐久性の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、本体部11を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
【0039】
第1液体薬剤供給装置1aの運転時、集合配管10への水の供給を停止したときに集合配管10内部の圧力変動(減圧化)により液体薬剤が集合配管10へ過剰吸引されることがある。
この過剰吸引を抑制する観点から、逆止弁23のクラッキング圧力は、0.001MPa以上が好ましく、0.03MPa以上がより好ましい。
逆止弁23のクラッキング圧力は、ポンプ及び配管の耐久性を損ねない観点から、0.1MPa以下が好ましく、0.08MPa以下がより好ましい。
【0040】
上述した過剰吸引を抑制する観点から、ポンプPと逆止弁23との間において、薬剤供給配管22が屈曲していることが好ましい。これにより、薬剤供給配管22の圧力損失(抵抗)が高まり、過剰吸引の抑制効果が得られ易くなる。
また、薬剤供給配管22のその他の施工方法として、配管を円状に複数回巻く、配管内に配管内径を縮小させる部品を取り付け、配管内径を縮小させたのち、再度拡張させる等の方法を用いてもよい。
圧力損失を高める観点から、薬剤供給配管22の内径は、12mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。薬剤供給配管22の内径の下限は、例えば6mmである。
【0041】
第1薬剤供給部20aには、各種のセンサが設けられている。具体的には、薬剤供給配管22に、流量計24及び液感知センサ25が設けられている。薬剤タンク21に、液面レベル感知センサ26が設けられている。
流量計24は、設定供給量が通液したかを積算値で確認する。流量計24は、非接触式(超音波式、電磁式等)でも接触式(歯車式、ギア式、渦式等)でもよい。流量計24はポンプの入口側と出口側のどちらに設置するかは適宜選択が可能である。
流量計24が接触式の場合、接液部のケーシングの材質は、液体薬剤に対する耐久性の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、本体部11を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。また、シール部に用いるゴムの材質としては、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(HNBR)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(VQM)が好ましく、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)がより好ましい。
液感知センサ25は、薬剤供給配管22に液が満たされているか確認する。
液面レベル感知センサ26は、薬剤タンク21内に液体薬剤の残量が充分にあるか確認する。
【0042】
第2薬剤供給部20b及び第3薬剤供給部20cはそれぞれ、第1薬剤供給部20aと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0043】
(水供給部)
水供給配管31は、集合配管10と外部水源(図示せず)とを接続する。水供給配管31に設けられた水供給制御バルブV1を開とすると、外部水源から水が水供給配管31を通って集合配管10に供給される。外部水源としては、上水、井水、該井水を処理した除鉄除マンガン水、軟水機を通じた水等を用いることができる。
水供給配管31の材質としては、液体薬剤に対する耐久性の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、本体部11を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
水供給制御バルブV1としては、電磁式バルブ、エア駆動バルブ等が挙げられる。
【0044】
水供給配管31には、集合配管10からの液状薬剤の逆流を防止するために、水供給制御バルブV1よりも集合配管10側に、逆止弁32が設けられている。
逆止弁32の材質としては、液体薬剤に対する耐久性の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、本体部11を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
【0045】
水供給部30には、各種のセンサが設けられている。具体的には、水供給配管31に、水圧力センサ33及び水フローセンサ34が設けられている。
水圧力センサ33は、水の圧力が充分であるかを確認する。
水フローセンサ34は、水が流れているかを確認する。
水による希釈が行われない場合の集合配管の耐久性への悪影響を考慮して、水圧力センサ33及び水フローセンサ34からの信号により、薬剤供給の可否の判断を行う制御も可能である。
【0046】
(エア供給部)
圧縮機41は、エアを圧送するために用いられる。圧縮機41としては、特に制限は無く、公知の圧縮機を使用できる。
エア供給配管42は、集合配管10と圧縮機41とを接続する。エア供給配管42に設けられたエア供給制御バルブV2を開とすると、圧縮機41の動作によりエアがエア供給配管42を通って集合配管10に供給される。
エア供給制御バルブV2としては、電磁式バルブ等が挙げられる。
【0047】
エア供給配管42には、集合配管10からの液状薬剤の逆流を防止するために、エア供給制御バルブV2よりも集合配管10側に、逆止弁43が設けられている。
逆止弁43の材質としては、液体薬剤に対する耐久性の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、本体部11を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
【0048】
エア供給部40には、各種のセンサが設けられている。具体的には、エア供給配管42に、エア圧力センサ44及びエアフローセンサ45が設けられている。
エア圧力センサ44は、エアの圧力が充分であるかを確認する。
エアフローセンサ45は、エアが流れているかを確認する。
エアによるフラッシングが行われない場合の洗濯槽への薬剤の供給量不足を避けるため、エア圧力センサ44及びエアフローセンサ45からの信号により、アラーム等の出力制御を行うことも可能である。
【0049】
(送液配管)
第1液体薬剤供給装置1aの送液配管50は、集合配管10と連続式洗濯機100の第1洗濯槽101とを接続する。集合配管10に水及び液体薬剤が供給されると、それらの水及び液体薬剤が混合されつつ集合配管10から送液配管50を通って第1洗濯槽101に供給される。
送液配管50の材質としては、液体薬剤に対する耐久性の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、本体部11を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
送液配管50には、エア抜き又は液抜きのためにバルブ51(三方弁等)が設けられている。バルブ51にはエア抜き又は液抜き用の配管52が接続されている。
【0050】
第1液体薬剤供給装置1aにおいて、第1薬剤供給部20a~第3薬剤供給部20cそれぞれの薬剤タンク21に収容される液体薬剤は、前記した予洗用液体薬剤である。各薬剤タンク21に収容される液体薬剤は通常、互いに異なるものである。
各薬剤タンク21に収容される液体薬剤の少なくとも一部が互いに粘度が異なる場合、粘度の高いものほど、貫通孔14~16のうち一方の開口部17側に位置する貫通孔から集合配管10に供給されることが好ましい。粘度の高いものほど一方の開口部17側、つまり集合配管10の上流側の貫通孔から供給することで、粘度の高いものほど水との混合時間が長くなり、粘度の異なる複数の液状薬剤をムラ無く水と混合できる。
同様の観点から、複数の液状薬剤の一部が互いに粘度が同じで比重が異なる場合、比重の高いものほど、貫通孔14~16のうち一方の開口部17側に位置する貫通孔から集合配管10に供給されることが好ましい。
【0051】
表1に示す3種の液状薬剤(1)~(3)を例に挙げて説明すると、最も高粘度の液状薬剤(1)を、第1薬剤供給部20aの薬剤タンク21に収容して、貫通孔14から集合配管10に供給されるようにすることが好ましい。
粘度が同じ液状薬剤(2)、(3)のうち、より高比重の液状薬剤(2)を、第2薬剤供給部20bの薬剤タンク21に収容して、貫通孔15から集合配管10に供給されるようにすることが好ましい。また、液状薬剤(3)を、第3薬剤供給部20cの薬剤タンク21に収容して、貫通孔16から集合配管10に供給されるようにすることが好ましい。
【0052】
【0053】
第1液体薬剤供給装置1aは、液体薬剤自動供給装置として運転制御を行う制御回路を備えることができる。制御回路としては、例えばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)が挙げられる。
制御回路は、ポンプP、水供給制御バルブV1、エア供給制御バルブV2、圧縮機41の動作等を制御することで、薬剤タンク21からの液体薬剤の供給量、外部水源からの水の供給量、圧縮機41からのエアの供給量等を制御する。
例えば、連続式洗濯機100からの薬剤供給要求信号を受けて、ポンプPの動作を開始させ、流量計24での積算値が設定値になった時点でポンプPの動作を停止させることができる。
制御回路及びIoTにより、供給量(設定値と実績値)及び供給時間、所定期間内における薬剤使用量を管理する;設定量の供給に必要な稼働時間を管理してポンプ故障前の劣化状態を検知しアラーム出力する:消耗部品(ポンプ部品、供給ライン上のパーツ等)の使用時間を管理する;リモートにより薬剤の供給設定値や水やエアの供給条件を設定する等も可能である。
【0054】
以上説明した第1液体薬剤供給装置1aにあっては、集合配管10を用いているので、従来のように攪拌槽を用いる場合に比べて、連続式洗濯機100で用いられる液体薬剤の水希釈等を省スペースかつ効率的に実施できる。
また、集合配管10が、樹脂により一体に成形された筒状の本体部11を有し、本体部11の周壁12に形成された貫通孔13~16のうち最も一方の開口部17側の貫通孔13に水供給配管31が接続され、他の貫通孔14~16に薬剤供給配管22が接続されているので、液体薬剤による集合配管10の破損が生じにくい。
これは、本体部11が上記構成を有することで、本体部11内で水と液体薬剤とが良好に混合され、集合配管10の劣化の原因となる液体薬剤の希釈不良物が集合配管10内に付着しにくいことによると考えられる。
【0055】
第2液体薬剤供給装置1b、第3液体薬剤供給装置1c、第5液体薬剤供給装置1eはそれぞれ、本体部11に貫通孔16を有さず、第3薬剤供給部20cを備えていないこと以外は、第1液体薬剤供給装置1aと同様である。
第4液体薬剤供給装置1dは、本体部11に貫通孔15~16を有さず、第2薬剤供給部20b及び第3薬剤供給部20cを備えていないこと以外は、第1液体薬剤供給装置1aと同様である。
なお、第2液体薬剤供給装置1bにおいて、第1薬剤供給部20a~第2薬剤供給部20bそれぞれの薬剤タンク21に収容される液体薬剤は、予洗用液体薬剤である。第3液体薬剤供給装置1cにおいて、第1薬剤供給部20a、第2薬剤供給部20bそれぞれの薬剤タンク21に収容される液体薬剤は、本洗浄用液体薬剤である。第4液体薬剤供給装置1dにおいて、第1薬剤供給部20aの薬剤タンク21に収容される液体薬剤は、本洗浄用液体薬剤である。第5液体薬剤供給装置1eにおいて、第1薬剤供給部20a~第2薬剤供給部20bそれぞれの薬剤タンク21に収容される液体薬剤は、仕上げ用液体薬剤である。
【0056】
<液体薬剤供給装置の運転方法>
次に、
図4を参照し、第2液体薬剤供給装置1bを用いる場合を例に挙げて、液体薬剤供給装置の運転方法を説明する。
図4においては、説明の便宜上、集合配管10の本体部11のみを示している。
この例の運転方法では、以下のステップを行う。
ステップS1:エア供給制御バルブV
2が閉の状態で水供給制御バルブV
1を開として、水を集合配管10に供給するステップ。
ステップS2-1:ステップS1の後、第1薬剤供給部20aのポンプPの動作により、第1薬剤供給部20aの薬剤タンク21に収容された液体薬剤P
1を水とともに集合配管10に供給するステップ。
ステップS2-2:ステップS1の後、第2薬剤供給部20bのポンプPの動作により、第2薬剤供給部20bの薬剤タンク21に収容された液体薬剤P
2を水とともに集合配管10に供給するステップ。
ステップS3:ステップS2-1及びS2-2の後、各ポンプPの動作を停止させて、水のみを集合配管10に供給するステップ。
ステップS4:ステップS3の後、水供給制御バルブV
1を閉、エア供給制御バルブV
2を開とし、圧縮機41の動作により、エアを集合配管10に供給するステップ。
ステップS5:必要に応じて、ステップS4の後、エア供給制御バルブV
2を閉、水供給制御バルブV
1を開として、水を集合配管10に供給し、集合配管10の内部を水で満たすステップ。
ステップS2-1及びステップS2-2は、両方を同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
【0057】
ステップS1において、集合配管10に供給された水は、送液配管50を通って第2洗濯槽102に供給される。集合配管10に予め水を供給することで、薬剤が水で希釈される効率性及び集合配管10の薬剤に対する耐久性を向上できる。
ステップS2-1、S2-2において、集合配管10に供給された液体薬剤P1、P2は、水と混合されつつ送液配管50を通って第2洗濯槽102に供給される。
ステップS3において水を集合配管10に供給すると、集合配管10内に残存する液体薬剤P1、P2が押し流され、第2洗濯槽102に供給される。
ステップS4においてエアを集合配管10に供給すると、集合配管10内及び送液配管50内に残存する水が押し出される。
【0058】
ステップS4において水供給制御バルブV1を閉とすると、水の供給停止による集合配管10内の圧力変動(減圧化)が生じることがある。圧力変動が生じると、液体薬剤P1、P2が集合配管10へ過剰吸引されるおそれがある。
過剰吸引を抑制するため、以下の対策を行うことが好ましい。
・逆止弁23のクラッキング圧力による対策。
・薬剤供給配管22の圧力損失(抵抗)による対策(チューブ径狭小化・ベンド加工)。
・水供給制御バルブV1の閉鎖時間の最適化による対策。
逆止弁23のクラッキング圧力、薬剤供給配管22の圧力損失については前記したとおりである。
水供給制御バルブV1の閉鎖時間については、水供給制御バルブV1の閉鎖時間を遅くすることで、圧力変動を抑制できる。水供給制御バルブV1の閉鎖時間は、0.1秒以上が好ましく、0.2秒以上がより好ましい。
【0059】
ステップS3において集合配管10内に液体薬剤P1、P2の一部が残存していると、ステップS4によって集合配管10内の水を押し出したときに、集合配管10内に液体薬剤を含む水滴が残り、その後、水分の蒸発により液体薬剤が濃縮され、集合配管10を劣化させるおそれがある。
ステップS5は必須ではないが、ステップS5を行うことで、上記のような液体薬剤の濃縮による集合配管10の劣化を防止できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、集合配管の本体部の形状は、筒状であればよく、円筒状でなくてもよい。
例えば、本体部の外形が、
図5、6、8、9に示すように、四角柱、六角柱等の多角柱形状であってもよい。強度の観点では、
図3に示すように、円柱状が好ましい。
本体部11の通液部(周壁で囲まれた部分)が、
図7~9に示すように、四角柱、六角柱等の多角柱形状であってもよい。内部圧の均等化の観点では、
図3に示すように、円柱状が好ましい。
本体部の周壁に設けられる貫通孔の数は、
図1~3、5~9に示す構造における数に限定されるものではなく、供給する液体薬剤の数に応じて適宜変更可能であり、例えば2~5個とすることができる。
本発明の洗濯システムが備える本発明の液体薬剤供給装置の数に特に制限はなく、1つでも複数でもよい。
本発明の液体薬剤供給装置は、複数の洗濯槽を有する連続式洗濯機だけでなく、単一の洗濯槽を有するバッチ式洗濯機やドラム式洗濯機にも使用できる。
【符号の説明】
【0061】
1a 第1液体薬剤供給装置(液体薬剤供給装置)、
1b 第2液体薬剤供給装置(液体薬剤供給装置)、
1c 第3液体薬剤供給装置(液体薬剤供給装置)、
1d 第4液体薬剤供給装置(液体薬剤供給装置)、
1e 第5液体薬剤供給装置(液体薬剤供給装置)、
10 集合配管、
11 本体部、
12 周壁、
13~16 貫通孔、
20a 第1薬剤供給部(薬剤供給部)、
20b 第2薬剤供給部(薬剤供給部)、
20c 第3薬剤供給部(薬剤供給部)、
21 薬剤タンク、
22 薬剤供給配管、
P ポンプ、
30 水供給部、
31 水供給配管、
V1 水供給制御バルブ、
40 エア供給部、
41 圧縮機、
42 エア供給配管、
V2 エア供給制御バルブ、
50 送液配管、
100 連続式洗濯機、
1000 洗濯システム