(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120732
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】制震装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20220810BHJP
F16F 15/03 20060101ALI20220810BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20220810BHJP
F16F 9/53 20060101ALI20220810BHJP
F16H 19/04 20060101ALI20220810BHJP
D06F 37/20 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/03 F
F16F15/03 G
F16F9/46
F16F9/53
F16H19/04 Z
D06F37/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017834
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000236665
【氏名又は名称】不二ラテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹森 弘明
【テーマコード(参考)】
3B165
3J048
3J062
3J069
【Fターム(参考)】
3B165AE01
3B165BA24
3B165CD10
3B165CD15
3B165GA12
3B165GA26
3B165JM02
3B165JM03
3J048AA06
3J048AB08
3J048AC04
3J048AC08
3J048AD01
3J048BE05
3J048CB21
3J048EA07
3J062AB05
3J062AC07
3J062CA15
3J069BB10
3J069DD25
3J069EE63
(57)【要約】
【課題】複雑な制御を要することなく入力された振動の大きさに拘わらず固定側部材及び可動側部材間での振動伝達を抑制可能とする制振装置を提供する。
【解決手段】入力された振動に応じて相対的に往復移動可能な固定側部材3及び可動側部材5の相対的な往復移動の中心が基準位置RPに対してズレた場合に、固定側部材3と可動側部材5とを断続部15により接続して相対的な往復移動を制限することにより、可動側部材5を変位させてズレを解消する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された振動に応じて相対的に往復移動可能な固定側部材及び可動側部材と、
前記固定側部材と前記可動側部材とを断続可能な断続部と、
前記固定側部材及び可動側部材間の相対的な往復移動の中心の基準位置に対するズレを監視する監視部とを備え、
前記中心の前記基準位置に対するズレが生じた場合に、前記断続部により前記固定側部材と前記可動側部材とを接続し、前記相対的な往復移動を制限することにより前記可動側部材を変位させて前記ズレを解消する、
制振装置。
【請求項2】
請求項1記載の制震装置であって、
前記断続部は、前記中心の前記基準位置に対するズレが生じた場合、前記相対的な往復移動の移動方向が前記ズレの方向とは逆向きになった時点で前記固定側部材と前記可動側部材とを接続する、
制振装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制震装置であって、
前記監視部は、前記固定側部材及び前記可動側部材の一方の前記固定側部材及び前記可動側部材他方に対する前記相対的な往復移動の位置が前記基準位置に対する一方側及び他方側の何れであるかの移動位置を検出する移動位置検出部と、前記相対的な往復移動の移動方向を検出する移動方向検出部と、前記相対的な往復移動の移動量を検出する移動量検出部とを備え、前記検出した前記移動位置と前記移動方向と前記移動量に基づいて前記ズレを監視する、
制震装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の制振装置であって、
前記断続部は、
前記固定側部材及び前記可動側部材間を噛み合いにより接続し少なくとも一方が回転により前記相対的な往復移動を許容する回転ギヤからなる一対のギヤ部と、
前記回転ギヤの回転に対して負荷トルクを作用させるトルク発生部とを備え、
前記トルク発生部は、前記中心の前記基準位置に対するズレが生じた場合に前記回転ギヤに負荷トルクを作用させ、前記相対的な往復移動を制限する、
制震装置。
【請求項5】
請求項4記載の制震装置であって、
前記トルク発生部は、電力に応じた負荷トルクを前記回転ギヤの回転軸に作用させる回転ダンパーである、
制震装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の制震装置であって、
前記一対のギヤ部は、ラックアンドピニオンであり、
前記ラックは、前記固定側部材及び前記可動側部材の一方に支持され、
前記ピニオンは、前記回転ギヤとして前記固定側部材及び前記可動側部材の他方に支持された、
制震装置。
【請求項7】
請求項4~6の何れか一項に記載の制震装置であって、
前記トルク発生部は、磁場の印加によって負荷トルクを発生させ、
前記可動側部材と前記固定側部材との前記相対的な往復移動の移動限界に対応して配置され前記移動限界で前記トルク発生部に磁場を印加する永久磁石を備えた、
制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器等の可動側と設置面等の固定側との振動伝達を抑制可能とする制震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の制振装置としては、例えば特許文献1に記載のサスペンションがある。このサスペンションは、洗濯機のドラムを有する可動側としての水槽を固定側としての台板に支持し、洗濯機の運転時の振動を低減するようになっている。
【0003】
具体的には、特許文献1のサスペンションは、磁気粘性流体を用いた直動ダンパーであり、台板に固定された固定側部材であるシリンダと、水槽に固定された可動側部材であるシャフトと、シャフトの周囲に保持された磁気粘性流体を含侵させた摩擦部材とを有している。
【0004】
このサスペンションは、シャフトが摩擦部材を摺動する際に、水槽の振動の大きさ、特に加速度に応じて摩擦部材の摩擦係数を変化させ、減衰力を調整しつつ水槽の振幅を減衰させる。
【0005】
従って、特許文献1のサスペンションでは、振動の大きさに拘わらず水槽及び台板間での振動伝達を抑制することができる。しかし、水槽の加速度に応じて減衰力を調整するための複雑な制御が必要になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、振動の大きさに拘わらず固定側部材及び可動側部材間での振動伝達を抑制するために複雑な制御が必要な点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、入力された振動に応じて相対的に往復移動可能な固定側部材及び可動側部材と、前記固定側部材と前記可動側部材とを断続可能な断続部と、前記固定側部材及び可動側部材間の相対的な往復移動の中心の基準位置に対するズレを監視する監視部とを備え、前記中心の前記基準位置に対するズレが生じた場合に、前記断続部により前記固定側部材と前記可動側部材とを接続し、前記相対的な往復移動を制限することにより前記可動側部材を変位させて前記ズレを解消する制震装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、固定側部材及び可動側部材が相対的に往復移動することにより、複雑な制御を要することなく振動の大きさに拘わらず固定側部材及び可動側部材間での振動伝達が抑制される。しかも、可動側部材と固定側部材との間を断続する簡単な制御により可動側部材を変位させて往復移動の中心を基準位置に保持でき、往復移動を確実に行わせ、固定側部材及び可動側部材間での振動伝達の抑制を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1の制振装置の側面図である(実施例1)。
【
図3】
図1の制振装置のIII-III線に係る断面図である(実施例1)。
【
図4】制振装置の動作を示す平面図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
複雑な制御を要することなく入力された振動の大きさに拘わらず固定側部材及び可動側部材間での振動伝達を抑制可能とするという目的を、固定側部材及び可動側部材の相対的な往復移動とその中心の基準位置に対するズレの解消とが可能な制振装置により実現した。
【0012】
すなわち、制振装置(1)は、固定側部材(3)及び可動側部材(5)と、断続部(15)と、監視部(17)とを備える。固定側部材(3)及び可動側部材(5)は、入力された振動に応じて相対的に往復移動可能となっている。断続部(15)は、固定側部材(3)と可動側部材(5)とを断続可能とする。監視部(17)は、固定側部材及び可動側部材間の相対的な往復移動の中心と基準位置とのズレを監視する。中心の基準位置に対するズレが生じた場合には、断続部により固定側部材(3)と可動側部材(5)とを接続し、相対的な往復移動を制限することにより可動側部材(5)を変位させてズレを解消させる。
【0013】
断続部(15)は、中心の基準位置に対するズレが生じた場合、相対的な往復移動の移動方向がズレの方向とは逆向きになった時点で固定側部材(3)と可動側部材(5)とを接続してもよい。
【0014】
監視部(17)は、移動位置検出部(23)と、移動方向検出部(24)と、移動量検出部(24)とを備えてもよい。移動位置検出部(23)は、固定側部材(3)及び可動側部材(5)の一方の他方に対する相対的な往復移動が基準位置(RP)に対する一方側及び他方側の何れであるかの移動位置を検出する。移動方向検出部(24)は、相対的な往復移動の移動方向を検出する。移動量検出部(24)は、相対的な往復移動の移動量を検出する。この場合、監視部(17)は、検出した移動位置と移動方向と移動量に基づいてズレを監視する。
【0015】
断続部(15)は、一対のギヤ部(19a,19b)と、トルク発生部(21)とを備えてもよい。一対のギヤ部(19a,19b)は、固定側部材(3)及び可動側部材(5)間を噛み合いにより接続し、少なくとも一方が回転により相対的な往復移動を許容する回転ギヤからなる。トルク発生部(21)は、回転ギヤ(19b)の回転に対して負荷トルクを作用させる。この場合、トルク発生部(21)は、中心の基準位置に対するズレが生じた場合に、回転ギヤ(19b)に負荷トルクを発生させ、相対的な往復移動を制限する。
【0016】
トルク発生部(21)は、電力に応じた負荷トルクを回転ギヤ(19b)の回転軸に作用させる回転ダンパーであってもよい。
【0017】
一対のギヤ部(19a,19b)は、ラックアンドピニオンであり、ラックが、固定側部材(3)及び可動側部材(5)の一方に支持され、ピニオンが、回転ギヤとして固定側部材(3)及び可動側部材(5)の他方に支持されてもよい。
【0018】
トルク発生部(21)は、磁場の印加によって負荷トルクを発生させてもよい。この場合、可動側部材(5)と固定側部材(3)との相対的な往復移動の移動限界に対応して、トルク発生部(21)に磁場を印加する永久磁石(29a,29b)を配置してもよい。
【実施例0019】
[制震装置]
図1は、本発明の実施例1に係る制振装置を示す平面図、
図2は、同側面図である。
図3は、
図1のIII-III線に係る断面図である。
図4(A)~
図4(C)は、制振装置1の動作を示す平面図である。
【0020】
制振装置1は、機器等の可動側と設置面等の固定側との間の振動伝達を抑制可能とするものである。例えば、制振装置1は、可動側の動作等による振動が固定側に伝達されることや地震等による固定側の振動が可動側に伝達されることを抑制するようになっている。振動とは、本実施例において周期振動を意味する。
【0021】
なお、固定側とは、機器のフレーム部や設置面等の相対的に静止しているものをいう。このため、固定側は、動作しないものを意味するのではなく、地震等によって振動する可能性がある。可動側とは、機器の動作部や機器自体等の固定側に対して動作するものをいう。
【0022】
かかる制振装置1は、固定側部材3及び可動側部材5と、ズレ解消部7とを備えている。
【0023】
固定側部材3及び可動側部材5は、入力された振動に応じて相対的に往復移動可能となっている。固定側部材3は、本実施例において固定側に取り付けられる部材であるが、固定側の一部であってもよい。同様に、可動側部材5は、本実施例において可動側に取り付けられる部材であるが、可動側の一部であってもよい。
【0024】
本実施例の固定側部材3及び可動側部材5は、相互に長手方向に移動自在に支持された板状部材からなる。これにより、固定側部材3及び可動側部材5は、長手方向に相対的に往復移動可能となっている。なお、固定側部材3及び可動側部材5は、相互に往復移動可能である限り、板状部材に限られない。
【0025】
固定側部材3及び可動側部材5間の支持は、支持部としてのスライドレール9によって行われている。具体的には、固定側部材3及び可動側部材5の対向部分に板厚方向に突出する台座部11a,11bをそれぞれ設け、この台座部11a,11b間にスライドレール9が取り付けられている。
【0026】
なお、固定側部材3及び可動側部材5間の支持は、固定側部材3及び可動側部材5を相互に往復移動可能にする限り、他の構成によって行うことも可能である。例えば、固定側部材3及び可動側部材5の一方に突起部を設け、固定側部材3及び可動側部材5の他方に凸部を摺動によってガイドする凹部を設けてもよい。
【0027】
これら固定側部材3及び可動側部材5は、長手方向の両端の取付部であるクレビス13a,13bを介してそれぞれ設置面等の固定側及び機器等の可動側に取り付けられている。可動側が動作等によって振動した場合は、可動側から入力された振動により可動側部材5が固定側部材3に対して往復移動し、設置面等の固定側が地震等によって振動した場合、固定側部材3が可動側部材5に対して往復移動する。かかる往復移動により、固定側部材3及び可動側部材5間での振動の伝達が抑制される。
【0028】
ズレ解消部7は、固定側部材3及び可動側部材5の相対的な往復移動の中心が基準位置RPに対してズレた場合に、可動側部材5を変位させることによりズレを解消するものである。なお、往復移動の中心の基準位置RPに対するズレは、単に「中心のズレ」と称する。
【0029】
基準位置RPは、相対的な往復移動の中心の基準となる位置である。本実施例の基準位置RPは、後述する遮蔽板25の端部と光スイッチ27とが重なる位置となる。ただし、基準位置RPは、任意に設定可能である。
【0030】
中心のズレは、往復移動の中心が基準位置RPに一致している場合において、可動側部材5及び固定側部材3間の往復移動に伴う可動側部材5の変位によって生じる。ここでの変位は、振動前後で可動側部材5の位置が変わることを意味する。また、中心のズレは、固定側部材3及び可動側部材5の初期位置から基準位置RPまでの相対的な移動量と入力された振動の振幅との相違等によっても生じる。
【0031】
本実施例のズレ解消部7は、断続部15と、監視部17とを備え、中心のズレの解消を電気的に行う。
【0032】
断続部15は、固定側部材3と可動側部材5とを断続可能とするものである。本実施例において、断続部15は、一対のギヤ部19a,19bと、トルク発生部21とを備えている。
【0033】
なお、断続部15は、固定側部材3と可動側部材5とを断続可能なものであれば、トルク発生部21(回転ダンパー)を用いたものに限られず、ブレーキシューのような摩擦部材や電磁石等とすることも可能である。摩擦部材は、例えば固定側部材3及び可動側部材5の一方に可動支持し、同他方に適宜押し付けるように構成すればよい。電磁石は、固定側部材3及び可動側部材5の一方に支持し、他方を適宜吸着するように構成すればよい。
【0034】
一対のギヤ部19a,19bは、固定側部材3及び可動側部材5間を噛み合いにより接続し、少なくとも一方が回転により相対的な往復移動を許容する回転ギヤからなる。本実施例の一対のギヤ部19a,19bは、ラックアンドピニオンである。
【0035】
一方のギヤ部19aは、ラックであり、固定側部材3及び可動側部材5の一方として可動側部材5に支持されている。このギヤ部19aは、可動側部材5の幅方向の一側の縁部全体に沿って設けられている。
【0036】
なお、ギヤ部19aは、可動側部材5の幅方向の一側の縁部の一部に設けてもよい。また、ギヤ部19aは、ラックに代えて、複数の回転ギヤを可動側部材5の幅方向の一側の縁部に沿って連設してもよい。この場合、それら回転ギヤに対しても後述するように負荷トルクを発生させる必要がある。
【0037】
他方のギヤ部19bは、回転ギヤとしてのピニオンであり、固定側部材3及び可動側部材5の他方として固定側部材3に支持されている。本実施例の他方のギヤ部19bは、トルク発生部21を介して回転自在に固定側部材3に支持される。なお、他方のギヤ部19bは、可動側部材5に支持してもよく、この場合は、一方のギヤ部19aを固定側部材3に支持すればよい。
【0038】
トルク発生部21は、回転ギヤである他方のギヤ部19bの回転に対して負荷トルクを作用させるものである。本実施例において、トルク発生部21は、固定側部材3の支持部3aに支持された回転ダンパーである。なお、支持部3aは、固定側部材3から幅方向に突出した板状部である。
【0039】
かかるトルク発生部21は、出力軸21aに他方のギヤ部19bを一体回転するように支持している。なお、他方のギヤ部19bを固定側部材3に直接軸支してもよい。この場合、トルク発生部21は、回転ダンパー以外であってもよく、他方のギヤ部19bの回転軸や他方のギヤ部19b自体に負荷トルクを作用させる摩擦部材や電磁石等としてもよい。
【0040】
本実施例のトルク発生部21は、磁気粘性流体、磁性流体、磁性パウダー、又は多板クラッチ等を内包しており、電力に応じて負荷トルクを発生させる。なお、本実施例において、トルク発生部21は、電力に応じた磁場によって負荷トルクを発生させるため、永久磁石を近接させることによって負荷トルクを発生させてもよい。発生した負荷トルクは、出力軸21aを介して他方のギヤ部19bに作用し、他方のギヤ部19bを回転し難くし或いは回転を停止させる。
【0041】
これにより、固定側部材3と可動側部材5との相対的な往復移動を制限し、両者間の完全に往復移動を停止させ又は往復移動量を減少させる。トルク発生部21に電力が供給されていない間は、他方のギヤ部19bの回転が許容され、固定側部材3と可動側部材5との相対的な往復移動が許容される。
【0042】
本実施例のトルク発生部21は、負荷トルクの発生が、相対的な往復移動の中心の基準位置RPに対するズレが生じた場合に行われる。
【0043】
監視部17は、かかる中心のズレを監視する。監視部17は、中心のズレを監視できればよく、適宜の構成を用いることが可能である。本実施例の監視部17は、移動位置検出部23と、移動方向及び量検出部24と、制御部26とを備えている。
【0044】
移動位置検出部23は、固定側部材3及び可動側部材5の一方の同他方に対する相対的な往復移動が、基準位置RPに対する一方側及び他方側の何れであるかを検出する。移動位置検出部23は、遮蔽板25及び光スイッチ27からなる。
【0045】
光スイッチ27は、固定側部材3の基準位置RPに対する位置を示すものであり、固定側部材3の長手方向の所定位置に設けられている。本実施例の光スイッチ27は、固定側部材3及び可動側部材5の板厚方向で対向する投光部27a及び受光部27bを有する。なお、光スイッチ27は、透過型であるが、反射型としてもよい。また、光スイッチ27に代えて、磁気センサー等を設けることも可能である。
【0046】
遮蔽板25は、可動側部材5の基準位置RPに対する位置を示すものである。遮蔽板25は、可動側部材5の幅方向の他側の縁部に突出し、長手方向に沿って所定範囲に設けられている。
【0047】
この遮蔽板25は、基準位置RPに対する一方側を規定する。このため、可動側部材5の遮蔽板25の存在しない部分によって基準位置RPに対する他方側を規定する。この遮蔽板25の端部と光スイッチ27とが可動側部材5の中央部付近で重なる位置が基準位置RPとなる。
【0048】
かかる移動位置検出部23は、光スイッチ27の投光部27a及び受光部27b間の光が遮蔽板25によって遮断された場合に、往復移動の移動位置が基準位置RPに対する一方側であることを検出する。光スイッチ27の投光部27a及び受光部27b間の光が遮断されていない場合には、移動位置検出部23が往復移動の移動位置が基準位置RPに対する他方側であることを検出する。
【0049】
移動方向及び量検出部24は、移動方向検出部と移動量検出部とを兼用するものである。この移動方向及び量検出部24は、固定側部材3及び可動側部材5の相対的な往復移動の移動方向及び移動量を検出する。本実施例の移動方向及び量検出部24は、二相のロータリーエンコーダーからなり、トルク発生部21に取り付けられている。
【0050】
この移動方向及び量検出部24は、トルク発生部21が支持する他方のギヤ部19bの回転量及び回転方向を、固定側部材3及び可動側部材5の相対的な往復移動の移動量及び移動方向として検出する。
【0051】
なお、移動方向及び量検出部24は、光スイッチを複数設けて構成することも可能である。また、移動方向検出部と移動量検出部とは、別々に設けることも可能である。さらに、移動位置検出部23、移動方向検出部、移動量検出部は、リニアエンコーダーによって一つの構成することも可能である。また、可動側部材5が機器等の可動側から振動が入力されて固定側部材3に対して往復移動する場合は、往復移動が予測可能な範囲で基準位置RPを跨いで行わせることができる。
【0052】
制御部26は、プロセッサーやメモリーデバイスを有する情報処理装置であり、移動位置検出部23並びに移動方向及び量検出部24に電気的に接続されている。この制御部26は、移動位置検出部23並びに移動方向及び量検出部24で検出した移動位置と移動方向と移動量を受け取り、移動位置と移動方向と移動量に基づいて相対的な往復移動の中心の基準位置に対するズレを監視する。
【0053】
中心のズレの監視では、中心のズレ量、ズレの方向を判断する。例えば、移動位置に基づいて基準位置RPを跨いで往復移動すると判断される場合は、そのときの移動量に基づく基準位置RPに対する一方側と他方側の移動量の差により、ズレ量及びズレの方向が判断可能である。また、移動位置に基づいて基準位置RPに対する一方側又は他方側のみでの往復移動している場合は、移動方向と移動量に基づいて特定される往復移動の中心と基準位置RPとのズレ量及びズレの方向が判断可能である。
【0054】
かかる制御部26は、中心の基準位置RPに対するズレが生じた場合に、固定側部材3と可動側部材5とを接続する。これにより、固定側部材3と可動側部材5との相対的な往復移動を制限し、可動側部材5を変位させる。固定側部材3と可動側部材5との接続は断続部15によって行わせる。具体的には、制御部26が断続部15の負荷トルク発生部21に通電により負荷トルクを発生させる。
【0055】
断続部15による固定側部材3と可動側部材5との接続は、相対的な往復移動の移動方向がズレの方向とは逆向きになった時点で行われる。これにより、ズレが生じた方向とは逆向きの振動を利用して、ズレの解消が可能となる。接続時間は、ズレ量及び振動の大きさに応じて適宜調整される。
【0056】
[制振装置の動作]
本実施例では、固定側部材3が入力された振動によって可動側部材5に対して往復移動し、この往復移動に伴い可動側部材5が変位して基準位置RPに対する中心のズレDが生じる場合について説明する。
【0057】
本実施例では、
図4(A)のように、固定側部材3が基準位置RPに対して往復移動の他方側に変位した位置を初期位置として振動の入力を受け付ける。
【0058】
なお、固定側部材3の基準位置RPに対する一方側及び他方側の位置は、基準位置RPに対する光スイッチ27の位置に基づく。また、初期位置は、
図4(B)や
図4(C)のように固定側部材3が可動側部材5に対する往復移動の中心や一方側に変位した位置であってもよい。また、本実施例において、初期位置の中心に対する変位量aは、理解容易のために、往復移動及び入力される振動の振幅と一致しているものとする。
【0059】
上記のように固定側部材3が振動の入力を受けると、本実施例では、
図4(B)並びに
図4(C)のように固定側部材3が基準位置RPを通過して一方側へと移動する。このように、固定側部材3が可動側部材5に対して相対的に移動するだけで、可動側部材5への振動の伝達が抑制される。
【0060】
なお、固定側部材3は、
図4(A)の初期位置から更に他方側に移動する場合もあるが、理解容易のために初期位置から一方側に移動するものとする。また、以下において、基準位置RPに対する一方側は、
図4における左側として説明し、同様に他方側は、
図4における右側として説明する。
【0061】
かかる固定側部材3の可動側部材5に対する相対移動時には、トルク発生部21での負荷トルクがピニオンである他方のギヤ部19bの回転を許容する程度に小さいか或いはゼロとなっている。この結果、固定側部材3の可動側部材5に対する移動が許容されている。
【0062】
固定側部材3が
図4(C)の状態から
図4(A)の状態まで右側に移動する際も同様に可動側部材5への振動の伝達が抑制される。
【0063】
かかる固定側部材3の移動時には、監視部17によって固定側部材3の移動位置、移動方向、移動量が監視されている。
【0064】
すなわち、固定側部材3が
図4(A)の初期位置から
図4(B)の基準位置RPまで移動する際には、移動位置検出部23の光スイッチ27が遮蔽板25によって遮断されていないOFF状態であり、基準位置RPに対する右側での移動であることが検出される。同時に、移動方向及び量検出部24が他方のギヤ部19bの回転に応じて移動量及び移動方向を検出する。
【0065】
固定側部材3が基準位置RPに位置すると、移動位置検出部23の光スイッチ27が遮蔽板25の端部によって遮断されてON状態となり、基準位置RPに対する左側での移動に切り替わったことが検出される。このとき、固定側部材3の右側での移動量が確定する。ここで確定する移動量は、上記の変位量aである。
【0066】
そして、
図4(C)のように固定側部材3が基準位置RPから更に左側へ移動する際には、移動位置検出部23の光スイッチ27がON状態であるため、移動方向及び量検出部24が他方のギヤ部19bの回転に応じて固定側部材3の左側での移動量及び移動方向を検出する。移動方向の検出により、固定側部材3の移動方向が初期位置に戻る方向になったとき、固定側部材3の基準位置RPに対する左側での移動量bが確定する。
【0067】
本実施例では、この移動量bが移動量aよりも小さい。これは、可動側部材5がギヤ部19a,19b間の摩擦等によって固定側部材3の移動時に変位したこと等による。この移動量a及びb間の差により、往復移動の中心の基準位置RPに対するズレ量及びズレの方向が検出される。つまり、本実施例では、可動側部材5が基準位置RPに対して左側へ離間するように、移動量の差だけ中心のズレが生じていることが検出される。
【0068】
かかるズレが検出された場合は、可動側部材5を変位させることによりズレが解消される。すなわち、可動側部材5を基準位置RPに対して近接させるように、ズレ量だけ右側へ変位させる。
【0069】
具体的には、相対移動の方向がズレの方向と逆になった時点、つまり固定側部材3の移動方向が初期位置(右側)に戻る方向になったとき、制御部26での通電制御によって断続部15のトルク発生部21に負荷トルクを発生させる。この負荷トルクにより、他方のギヤ部19bを回転し難くし或いは回転を停止させ、固定側部材3と可動側部材5との相対的な往復移動を制限する。
【0070】
この結果、可動側部材5が固定側部材3と共に右側へ変位するため、その可動側部材5の変位によってズレを解消することができる。従って、入力される振動を利用して中心のズレが、解消されることとなる。結果として、可動側部材5と固定側部材3との相対的な往復移動を、中心位置を安定させて、オーバーストローク等を防止しつつ確実に行うことができる。
【0071】
このとき、固定側部材3と可動側部材5との接続は、直前の往復移動の中心、つまり移動量a及びbの合計を全振幅とした往復移動の中心から1/4波長以上の時間が経過した時点で行われる。これにより、ズレが生じた後、可動側部材5の往復移動の移動方向が変わってから、固定側部材3と可動側部材5とを確実に接続することができる。従って、入力される振動を利用して中心のずれを確実に解消することができる。
【0072】
中心のズレが解消された後は、通電制御によってトルク発生部21の負荷トルクをゼロにし或いは他方のギヤ部19bの自由な回転を許容する程度に小さくし、固定側部材3と可動側部材5との接続を解除する。この結果、固定側部材3が可動側部材5に対して相対的な往復移動を再開する。
【0073】
固定側部材3の往復移動としては、上記のように基準位置RPに対する両側にわたって行われる場合だけでなく、基準位置RPに対する右側又は左側でのみ行われる場合もある。基準位置RPに対する右側でのみ往復移動が行われる場合は、移動位置検出部23の光スイッチ27がOFF状態のまま、移動方向及び量検出部24で移動量及び移動方向が検出され続けることになる。
【0074】
この場合、往復移動の中心が基準位置RPに対して右側にズレているため、可動側部材5を右側へ移動させる必要がある。このとき、往復移動及びその中心は、検出された移動量及び移動方向によって特定することが可能である。中心のズレ量は、少なくとも検出された移動量より大きいと判定される。
【0075】
そして、可動側部材5の往復運動の移動方向が右側に変わってから、次に移動方向が左側に変わるまでの期間で、断続部15のトルク発生部21の通電制御により、検出された移動量以上に可動側部材5を右側へ移動させる。この動作を、光スイッチ27がON状態になるまで繰り返す。光スイッチ27がON状態となった後は、
図4で説明したように中心のズレを解消する。なお、初期位置が
図4(C)のように基準位置RPに対する左側であって、その左側でのみ往復移動が行われる場合も同様である。
【0076】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例の制振装置1は、入力された振動に応じて相対的に往復移動可能な固定側部材3及び可動側部材5と、相対的な往復移動の中心が基準位置RPに対してズレた場合に可動側部材5を変位させることによりズレを解消するズレ解消部7と、を備えている。
【0077】
従って、本実施例では、固定側部材3及び可動側部材5が相対的に往復移動することにより、複雑な制御を要することなく振動の大きさに拘わらず固定側部材3及び可動側部材5間での振動伝達が抑制される。しかも、可動側部材5を変位させる簡単な制御により、往復移動の中心を基準位置RPに保持でき、基準位置RPを中心とした往復移動を確実に行わせることができる。結果として、固定側部材3及び可動側部材5間での振動伝達を安定して確実に抑制できる。
【0078】
ズレ解消部7は、固定側部材3と可動側部材5とを断続可能な断続部15と、中心の基準位置RPに対するズレを監視する監視部17とを備え、中心の基準位置RPに対するズレが生じた場合に断続部15により固定側部材3と可動側部材5とを接続し、相対的な往復移動を制限することにより可動側部材5を変位させてズレを解消する。
【0079】
従って、本実施例では、固定側部材3と可動側部材5と間を断続する簡単な制御により、容易且つ確実に可動側部材5を変位させてズレを解消できる。
【0080】
断続部15は、中心の基準位置RPに対するズレが生じた場合、相対的な往復移動の移動方向がズレの方向とは逆向きになった時点で固定側部材3と可動側部材5とを接続する。
【0081】
従って、入力される振動を利用して中心のズレを確実に解消することができる。
【0082】
監視部17は、固定側部材3及び可動側部材5の一方の同他方に対する相対的な往復移動の位置が、基準位置RPに対する一方側及び他方側の何れであるかの移動位置を検出する移動位置検出部23と、相対的な往復移動の移動方向を検出し、相対的な往復移動の移動量を検出する移動方向及び量検出部24とを備え、検出した移動位置と移動方向と移動量に基づいて中心のズレを監視する。
【0083】
従って、本実施例では、往復移動の中心を的確に把握してズレを解消することができる。また、かかる構成は、安価なセンサー等によって容易に実現することができ、コストの低減を図ることができる。
【0084】
断続部15は、固定側部材3及び可動側部材5間を噛み合いにより接続し、少なくとも一方が回転により相対的な往復移動を許容する回転ギヤからなる一対のギヤ部19a,19bと、回転ギヤである他方のギヤ部19bの回転に対して負荷トルクを作用させるトルク発生部21とを備え、トルク発生部21は、中心の基準位置RPに対するズレが生じた場合に他方のギヤ部19bに負荷トルクを作用させ、相対的な往復移動を制限する。
【0085】
従って、本実施例の断続部15は、回転ギヤである他方のギヤ部19bが一方のギヤ部19aに対して噛み合いつつ回転することで、固定側部材3及び可動側部材5間の往復移動を許容できる。そして、他方のギヤ部19bの回転に対する負荷トルクを作用させることで固定側部材3及び可動側部材5間の往復移動を制限できる。
【0086】
このため、他方のギヤ部19bの回転に対する負荷トルクのオンオフにより、固定側部材3及び可動側部材5間を容易且つ確実に断続してズレを解消することができる。
【0087】
トルク発生部21は、電力に応じた負荷トルクを他方のギヤ部19bの回転軸である出力軸21aに作用させる回転ダンパーであるため、他方のギヤ部19bに対して容易且つ確実に負荷トルクを作用させることができる。
【0088】
一対のギヤ部19a,19bは、ラックアンドピニオンであり、ラックは、固定側部材3及び可動側部材5の一方に支持され、ピニオンは、回転ギヤとして固定側部材3及び可動側部材5の他方に支持されている。
【0089】
従って、断続部15の構成を簡素化することができる。
本実施例の制振装置1では、可動側部材5と固定側部材3との相対的な往復移動の移動限界に対応し、トルク発生部21に磁場を印加する永久磁石29a,29bが配置されている。その他は、実施例1と同一である。
移動限界は、一対のギヤ部19a,19bの噛合いが維持される範囲を規定する限界である。従って、本実施例の可動側部材5及び固定側部材3では、他方のギヤ部19bが一方のギヤ部19aの両端に位置するときが相対的な往復移動の移動限界となる。
そして、永久磁石29a,29bは、移動限界に対応して可動側部材5に支持されている。なお、永久磁石29a,29bは、移動限界に対応する限り、可動側部材5以外の可動側や固定側或いはそれらに支持された部材等に支持することも可能である。
トルク発生部21は、実施例1同様、磁気粘性流体、磁性流体、磁性パウダー等を内包して電力に応じて負荷トルクを発生させるものである。これにより、トルク発生部21は、印加された磁場によって負荷トルクを発生させる構成となっている。
従って、本実施例の制振装置1では、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。加えて、可動側部材5及び固定側部材3は、相対移動が移動限界に達したときに制限されるので、移動限界を超えて可動側部材5及び固定側部材3が相対移動することを抑制できる。