IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空気圧工具 図1
  • 特開-空気圧工具 図2
  • 特開-空気圧工具 図3A
  • 特開-空気圧工具 図3B
  • 特開-空気圧工具 図4
  • 特開-空気圧工具 図5
  • 特開-空気圧工具 図6
  • 特開-空気圧工具 図7
  • 特開-空気圧工具 図8
  • 特開-空気圧工具 図9
  • 特開-空気圧工具 図10
  • 特開-空気圧工具 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012074
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】空気圧工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/04 20060101AFI20220107BHJP
   B25C 7/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B25C1/04
B25C7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113616
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏司
(72)【発明者】
【氏名】望月 一哉
(72)【発明者】
【氏名】森脇 康介
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC02
3C068DD03
3C068DD17
3C068HH02
3C068HH09
3C068HH19
(57)【要約】
【課題】トリガ操作によって作動するタイマーを有する空気圧工具において、トリガ操作の伝達機構を設けることによって、作業者の操作負担を軽減させる。
【解決手段】釘打機1は、打撃ピストン4等の駆動部を作動させる引き操作を行うトリガ50と、駆動部を作動させる対象物への押し当て動作を行うコンタクトアーム20と、コンタクトアーム20の操作によって駆動部を作動させることが可能な時間を計測し、当該時間の経過後に駆動部の作動モードを切り替えるタイマー8と、タイマー8の作動を制御するタイマースイッチ60と、トリガ50の第1の操作をタイマースイッチ60に伝達するリンク部材70とを備える。トリガ50が引き操作されると、リンク部材70によってトリガ50の操作に基づく上下方向の運動がタイマースイッチ60を作動させる前後方向の運動に変換されることでグリップ7内のタイマースイッチ60及びタイマー8が作動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部を作動させる第1の操作を行うトリガと、
前記駆動部を作動させる第2の操作を行うコンタクト部材と、
前記コンタクト部材の前記第2の操作によって前記駆動部を作動させることが可能な時間を計測し、当該時間の経過後に前記駆動部の作動モードを切り替えるタイマーと、
前記タイマーの作動を制御するタイマースイッチと、を備え、
前記トリガの前記第1の操作は、伝達部材を用いて前記タイマースイッチに伝達される
空気圧工具。
【請求項2】
前記トリガの操作方向と前記タイマースイッチの作動方向とが異なる、
請求項1に記載の空気圧工具。
【請求項3】
前記駆動部が収容される工具本体と、
前記工具本体の側面に設けられ、前記トリガの操作方向と交差する方向に延びるグリップと、を備え、
前記タイマースイッチは前記グリップ内に配置される
請求項1又は請求項2に記載の空気圧工具。
【請求項4】
前記トリガの操作量が前記タイマースイッチの作動量よりも長い、
請求項1~3の何れか一項に記載の空気圧工具。
【請求項5】
前記タイマースイッチの作動方向は、前記グリップの延在方向に平行である
請求項3に記載の空気圧工具。
【請求項6】
前記伝達部材は軸を支点として回動可能に設けられ、
前記伝達部材の一端部が前記トリガに当接し、前記伝達部材の他端部が前記タイマースイッチに当接する、
請求項1~4の何れか一項に記載の空気圧工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気圧工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、打撃シリンダ内に摺動可能に設けられた打撃ピストンを駆動源である圧縮空気を用いて往復移動させることで、打撃ピストンに一体的に連結されたドライバによって釘を対象物に打ち込む空気圧工具が利用されている。
【0003】
空気圧工具の打ち込み方法には、例えば、トリガを引き操作した状態でコンタクトアームを被打ち込み部材に押し付けた状態で釘を対象物に打ち込むコンタクト打ち、及びコンタクトアームを対象物に押し付けた状態からトリガを引き操作して釘を対象物に打ち込むトリガ打ちがある。
【0004】
ここで、コンタクト打ちを行う場合において、トリガを引いたままの状態で不用意にコンタクトアームが押された場合、空気圧工具が作動して釘が誤発射してしまう場合がある。そのため、空気圧工具では、意図しない釘の誤発射を防止するために、トリガを引いた状態で一定時間経過すると空気圧工具の作動を制限するタイマーを設けている。
【0005】
タイマーとしては、例えばエアバルブ又は回路で構成し、トリガの引き操作に応じてエアバルブ又は回路を作動させるものがある。特許文献1には、所定の時間、例えば1秒から4秒内にワーク接触要素がワークに接触しない場合、タンクから十分な量の空気が流出し、空圧信号ラインを介して許可弁集成体が閉じることで工具を動作不能とする空圧式締結具駆動工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-254348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の空圧式締結具駆動工具において、タイマーを含む安全機構を、例えばチャンバとして使用するグリップ内の空間に配置することで工具の小型化を図ることも考えられる。しかし、チャンバ内の空間にタイマーを配置する場合、トリガの操作方向とタイマーの作動方向とが異なる方向となる場合があるため、トリガの荷重方向を変換しなければならないという問題がある。また、従来の空気圧工具では、トリガの操作荷重に加えてタイマーを作動させるタイマースイッチの操作荷重が加わるため、作業者の操作負担が増えてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、トリガ操作によって作動するタイマーを有する空気圧工具において、トリガ操作の伝達機構を設けることによって、作業者の操作負担を軽減させることが可能な空気圧工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示によれば、駆動部を作動させる第1の操作を行うトリガと、前記駆動部を作動させる第2の操作を行うコンタクト部材と、前記コンタクト部材の前記第2の操作によって前記駆動部を作動させることが可能な時間を計測し、当該時間の経過後に前記駆動部の作動モードを切り替えるタイマーと、前記タイマーの作動を制御するタイマースイッチと、を備え、前記トリガの前記第1の操作は、伝達部材を用いて前記タイマースイッチに伝達される
空気圧工具が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、トリガの操作をタイマースイッチに伝達する伝達部材を設けるので、トリガの操作に基づく荷重方向をタイマースイッチを作動させる荷重方向に変換できる。
【0011】
また、本開示によれば、トリガの操作により伝達部材を介してタイマースイッチ及びタイマーを作動させることができるので、トリガ及びタイマースイッチの両方を操作する場合と比べて作業者の操作荷重を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る釘打機の側面断面図である。
図2】本実施の形態に係るトリガバルブ、トリガ、タイマースイッチ及びリンク部材の拡大図である。
図3A】本実施の形態に係るタイマーの拡大図である。
図3B】本実施の形態に係るタイマーを構成する絞り部の拡大図である。
図4】本実施の形態に係る釘打機の作動図である(その1)。
図5】本実施の形態に係る釘打機の作動図である(その2)。
図6】本実施の形態に係る釘打機の作動図である(その3)。
図7】本実施の形態に係る釘打機の作動図である(その4)。
図8】本実施の形態に係る釘打機の作動図である(その5)。
図9】本実施の形態に係る釘打機の作動図である(その6)。
図10】本実施の形態に係る釘打機の作動図である(その7)。
図11】本実施の形態に係る釘打機の作動図である(その8)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
<釘打機1の構成例>
図1は、本実施の形態に係る釘打機1の側面断面図である。図2は、本実施の形態に係るトリガバルブ30、トリガ50、タイマースイッチ60及びリンク部材70の拡大図である。図3Aは本実施の形態に係るタイマー8の拡大図であり、図3Bはタイマー8を構成する絞り部90の拡大図である。なお、図1及び図2は釘打機1のメインチャンバ15内に圧縮空気を供給する前の状態を示し、図3A及び図3Bは釘打機1のメインチャンバ15内に圧縮空気を供給途中の状態を示している。
【0015】
本実施の形態では、釘打機1の使用形態を考慮し、コンタクトアーム20が設けられる側を釘打機1の下側とし、その反対側を釘打機1の上側とする。また、ハウジング2が設けられる側を釘打機1の前側とし、その反対側を釘打機1の後側とする。
【0016】
空気圧工具の一例である釘打機1は、図1に示すように、上下方向に延びる筒状のハウジング(工具本体)2と、ハウジング2の側面から後述するトリガ50の操作方向と略直交する方向(前後方向)に延びるグリップ7と、ハウジング2の下端部から下側に突出するノーズ6と、ノーズ6に図示しない釘を供給するマガジン22とを備える。グリップ7の後端部には、図示しないエアホースの一端部が接続可能なエアプラグ13が設けられている。エアホースの他端部には、図示しないエアコンプレッサが接続される。
【0017】
ハウジング2の内部には打撃シリンダ3が設けられ、打撃シリンダ3の内部には打撃ピストン4が上下方向(軸方向)に摺動可能に設けられている。打撃ピストン4の下面には、棒状をなす打撃ドライバ5が一体に連結されている。打撃ピストン4はメインチャンバ15から供給される圧縮空気により駆動され、打撃ドライバ5をノーズ6に案内することでマガジン22からノーズ6に供給された図示しない釘を対象物に向かって打ち出す。
【0018】
グリップ7の内部には、圧縮空気を収容可能なメインチャンバ15が設けられている。メインチャンバ15には、エアプラグ13に接続されたエアホースを経由してエアコンプレッサから圧縮空気が供給されるようになっている。
【0019】
ハウジング2の内部であって打撃シリンダ3の下部側の外周部には、ブローバックチャンバ18が設けられている。ブローバックチャンバ18は、打撃動作後の打撃ピストン4をリターンさせるための圧縮空気を収容する。ブローバックチャンバ18は打撃シリンダ3の上下方向の略中間部位に穿設された流入排出口17を介して打撃シリンダ3内と連通しており、メインチャンバ15の圧縮空気が打撃シリンダ3を介してブローバックチャンバ18内に供給される。流入排出口17には、打撃シリンダ3からブローバックチャンバ18に空気を流す一方で、ブローバックチャンバ18から打撃シリンダ3への空気の流れを規制する逆止弁19が設けられている。
【0020】
打撃シリンダ3の上側には、略環状をなすヘッドバルブ9が設けられている。ヘッドバルブ9は、ハウジング2の上端部位に設けられたヘッドバルブシリンダ10と、ヘッドバルブシリンダ10の内側でかつ上下方向に摺動可能に配置されたヘッドバルブピストン11とを有する。
【0021】
ヘッドバルブシリンダ10の周縁部には凹部10aが設けられ、凹部10aにはバネ16を介してヘッドバルブピストン11が配置されている。ヘッドバルブピストン11はバネ16によって下側に付勢され、ヘッドバルブピストン11の下面が打撃シリンダ3の上端縁に密接している。ヘッドバルブピストン11は、Oリングを介して凹部10aの内壁面に密接しており、凹部10aとの間に空間部であるヘッドバルブ室9aを形成する。ヘッドバルブ室9aは、通路P1を介してトリガバルブ30の後述する通路P2(図2参照)に連通している。
【0022】
ヘッドバルブピストン11が下死点、つまりヘッドバルブピストン11の下端部が打撃シリンダ3の上端縁に密接している場合、メインチャンバ15内と打撃シリンダ3内とが遮断される。ヘッドバルブピストン11が上死点、つまりヘッドバルブピストン11の下端部が打撃シリンダ3の上端縁から離れ、隙間が形成される場合、メインチャンバ15内と打撃シリンダ3内とが隙間を介して連通する。
【0023】
ヘッドバルブピストン11の内側には、例えば弾性部材からなるピストンストップ12が設けられている。ピストンストップ12は、打撃ピストン4が上死点にリターンした時に、打撃ピストン4のリバウンドを確実に防止しつつ打撃ピストン4を上死点にて保持する。
【0024】
また、釘打機1は、図1図3に示すように、打撃ピストン4及びヘッドバルブ9等を含む駆動部を作動させるトリガバルブ30と、トリガバルブ30を介して駆動部を作動させる引き操作(第1の操作)を行うトリガ50と、トリガバルブ30を介して駆動部を作動させる押し当て動作(第2の操作)を行うコンタクトアーム20と、コンタクトアーム20の操作によって駆動部を作動させることが可能な時間を計測し、当該時間の経過後に駆動部の作動モードを切り替えるタイマー8と、タイマー8の作動を制御するタイマースイッチ60と、トリガ50とタイマースイッチ60との間に設けられ、トリガ50の操作をタイマースイッチ60に伝達するリンク部材(伝達部材)70とを備える。
【0025】
トリガ50は、図2に示すように、ハウジング2の上下方向略中間の側面であって、グリップ7の前端側に設けられている。トリガ50は、トリガレバー52と、コンタクトレバー54と、押圧部55とを有する。
【0026】
トリガレバー52は、ハウジング2に設けられた軸51を介して回動可能に取り付けられ、作業者によるトリガレバー52の引き操作に応じて軸51を支点として回動する。押圧部55は、トリガレバー52の回動に伴って上側に移動することでリンク部材70の一端部70aを押圧する。コンタクトレバー54は、トリガレバー52に設けられた軸53を介して回動可能に取り付けられ、コンタクトアーム20の対象物への押し当て動作に連動して軸53を支点として回動することでトリガバルブステム37を上側に押圧する。
【0027】
コンタクトアーム20は、図1に示すように、ノーズ6の先端側に設けられると共にロッド20aに接続され、ノーズ6の軸方向に沿って往復移動可能に構成されている。コンタクトアーム20は、圧縮バネ20bによってノーズ6の先端部から下方に突出するように付勢されており、その先端部が対象物に押し付けられることでノーズ6に対して圧縮バネ20bを圧縮する方向に相対的に移動する。ロッド20aの上端部はコンタクトレバー54に当接しており、コンタクトアーム20の押し付け動作に連動してコンタクトレバー54を上側に押圧する。
【0028】
トリガバルブ30は、図2に示すように、一対の下ハウジング34a及び上ハウジング34bと、パイロットバルブ35と、トリガバルブステム37と、バネ38とを備える。
【0029】
下ハウジング34a及び上ハウジング34bは、略円筒体で構成され、所定の間隔を空けて対向して配置されている。上ハウジング34bには、通路P1及び後述する隙間S1に連通する通路P2が形成されている。
【0030】
下ハウジング34a及び上ハウジング34bの内側には、パイロットバルブ35及びトリガバルブステム37が収容される。下ハウジング34aとトリガバルブステム37との間にはキャップ36が配置され、キャップ36の上端部内面がパイロットバルブ35の下端部外周面にOリング35eを介して密接している。
【0031】
パイロットバルブ35は、トリガバルブステム37の作動に応じて上ハウジング34b及びキャップ36に対して上下動可能に構成され、打撃ピストン4側の通路P1とトリガバルブ30側の大気につながる通路P4との連通又は遮断の切り替えを行う。パイロットバルブ35と上ハウジング34bとの間には、通路P2に連通する隙間S1が設けられている。パイロットバルブ35の内側の空間部とメインチャンバ15とは、パイロットバルブ35の上端部に形成された通路P3を介して連通している。また、パイロットバルブ35に装着されたOリング35dが上ハウジング34bの下端縁に当接することで、パイロットバルブ35の上方への動作が規制されると共に、隙間S1と通路P4との間の経路が遮断される。
【0032】
トリガバルブステム37は、パイロットバルブ35に配置されたバネ38を介してパイロットバルブ35及び下ハウジング34aの内側に配置され、トリガ50の引き操作に応じて上下動することでパイロットバルブ35の作動又は非作動を切り替える。トリガバルブステム37は、上下方向に延びる細長の略円柱体により構成される。トリガバルブステム37の上端側はバネ38によって下側に付勢され、トリガバルブステム37の下端部がキャップ36に対してトリガ50側に出没可能に構成されている。
【0033】
キャップ36の内壁面とトリガバルブステム37の下面との間には、トリガバルブ室35aが設けられる。トリガバルブ室35aは、パイロットバルブ35の内側の空間部、及び通路P3を介してメインチャンバ15に連通しており、パイロットバルブ35の作動前の状態(初期状態)では圧縮空気が溜められる。キャップ36の外周面と下ハウジング34aの内壁面との間には、通路P8に連通するバルブ作動制御室39が設けられる。
【0034】
タイマースイッチ60は、図2に示すように、タイマー8とトリガ50(トリガバルブ30)との間のグリップ7内に配置され、トリガ50の引き操作に連動してタイマー8を作動させるためのスイッチである。タイマースイッチ60の作動方向は、グリップ7の延在方向(グリップ軸)に対して平行である。タイマースイッチ60は、タイマースイッチハウジング62と、タイマースイッチステム64と、タイマースイッチバルブ66とを備える。
【0035】
タイマースイッチハウジング62内には、タイマースイッチステム64及びタイマースイッチバルブ66が前後方向に移動可能に収容される。タイマースイッチハウジング62の上部には、メインチャンバ15に連通する通路P5が形成されている。
【0036】
タイマースイッチステム64は、前後方向に延びる細長の略円柱体であって、トリガレバー52の操作によってリンク部材70の一端部70aがトリガ50の押圧部55に押し上げられることで回動するリンク部材70の回動によって前後方向に移動可能に構成される。タイマースイッチステム64の先端部は、トリガバルブ30とタイマースイッチ60との間に形成される空間部S5に突出し、リンク部材70の他端部70bに当接している。
【0037】
タイマースイッチバルブ66は、タイマースイッチステム64と同軸上であってタイマースイッチステム64の後端面に当接した状態で配置されると共に、バネ67によってタイマースイッチステム64側に付勢されている。タイマースイッチバルブ66は、タイマースイッチステム64の作動に応じてタイマースイッチハウジング62内を前後方向に移動可能に構成され、通路P6及び通路P7間、通路P5及び通路P6間の連通又は遮断の切り替えを行う。
【0038】
リンク部材70は、図2に示すように、トリガ50の引き操作に基づく上下方向の運動を、タイマースイッチ60を作動させる前後方向の運動に変換するための部材である。リンク部材70は例えば逆L字状からなる板部材で構成され、その一端部70aがトリガ50の押圧部55に当接可能に設けられ、その他端部70bがタイマースイッチ60のタイマースイッチステム64に当接している。リンク部材70の折曲部は、軸72によって回動可能に支持されている。リンク部材70は、軸72に設けられた図示しないバネ、及びタイマースイッチステム64にかかる空気圧によってトリガ50側に付勢されている。
【0039】
リンク部材70の他端側はトリガバルブ30とタイマースイッチ60との間に形成される空間部S5に配置され、リンク部材70の一端側はトリガバルブ30とトリガ50との間に配置される。本実施の形態では、リンク部材70の一端部70aの作用部と軸72との間の第1の長さL1が、リンク部材70の他端部70bの作用部と軸72との間の第2の長さL2よりも長く設定され、トリガ50の操作量がタイマースイッチ60のタイマースイッチステム64の作動量よりも長く設定される。このように、本実施の形態では、リンク部材70の第1の長さL1及び第2の長さL2の比(レバー比)を設定することで、タイマースイッチ60のタイマースイッチステム64の作動量を任意に設定できる。
【0040】
タイマー8は、図3Aに示すように、コンタクトアーム20の操作を許容する所定時間を計測し、所定時間の経過後に釘打機1の打ち込み可能な作動モードから釘打機1の打ち込みを禁止する作動モードへの切り替えを行う。タイマー8は、負荷となる計時用圧縮空気を生成するタイマーピストン80と、タイマーピストン80を付勢するタイマーピストンスプリング81とを備える。なお、タイマー8の所定時間の一例としては、例えば3秒~5秒であるが、これに限定されるものではない。
【0041】
また、タイマー8は、タイマーピストン80を移動可能に支持すると共に、空気が通る流路を形成するタイマーピストンハウジング82A~82Fを備える。更に、タイマー8は、タイマーピストン80を作動させるプリセットピストン83と、プリセットピストン83を付勢するプリセットピストンスプリング84と、プリセットピストン83を移動可能に支持するプリセットピストンハウジング85を備える。
【0042】
タイマー8は、タイマーピストン80及びプリセットピストン83が、グリップ7の延伸方向に沿って移動可能に構成される。タイマー8は、タイマーピストンハウジング82A~82Fが、グリップ7の延伸方向に沿って並び、タイマーピストンハウジング82Fが、タイマーピストン80を移動可能に支持し、タイマーピストンハウジング82A~82Eが、タイマーピストン80のタイマーピストンシャフト86を移動可能に支持する。
【0043】
タイマーピストン80は、外周に断面形状がY状のYリング80aが嵌められ、Yリング80aがタイマーピストンハウジング82Fの内周面を擦動する。
【0044】
タイマー8は、円筒形状のタイマーピストンハウジング82Cが、タイマーピストンハウジング82Bとタイマーピストンハウジング82Dの内側に入れられ、タイマーピストンハウジング82Cの内側をタイマーピストンシャフト86が通る。
【0045】
また、タイマー8は、タイマーピストンハウジング82Bとタイマーピストンハウジング82Dとの隙間により、メインチャンバ15とつながる通路P9と連通して空気が通る流路が形成される。また、タイマー8は、タイマーピストンハウジング82Bとタイマーピストンハウジング82Dとの隙間、タイマーピストンハウジング82Bとタイマーピストンハウジング82Cとの隙間、タイマーピストンハウジング82Bとタイマーピストンハウジング82Aとの隙間により、通路P9と通路P8が連通して空気が通る流路が形成される。
【0046】
タイマーピストン80は、タイマーピストンシャフト86の軸方向の略中央付近に、周方向に沿って凹状とした流路形成凹部87bが形成される。
【0047】
タイマー8は、タイマーピストンハウジング82Bに設けたOリング87が、タイマーピストンシャフト86に接した状態では、通路P9と通路P8を連通する流路が、Oリング87aで閉じられる。これに対し、タイマー8は、流路形成凹部87bがOリング87aと対向する位置にタイマーピストン80が移動すると、Oリング87aと流路形成凹部87bとの隙間により、通路P9と通路P8を連通する流路が開く。
【0048】
プリセットピストン83は、タイマーピストン80と同軸上に設けられる。プリセットピストンハウジング85は、図2等に示すように、タイマースイッチハウジング62との間に形成される通路P6、タイマースイッチハウジング62内、タイマースイッチ60とブローバックチャンバ18との間に形成される通路P7等を介してブローバックチャンバ18とつながる。
【0049】
タイマー室88には、図3A及び図3Bに示すように、タイマーピストン80の作動によってタイマー室88内で圧縮された空気が流入する通路P10が連通している。通路P10には、空気の流量を調整して大気中に排出する絞り部90が設けられている。絞り部90は、通路P10の経路途中に設けられ、他の通路よりも流路面積が小さい(幅が狭い)幅狭部92と、幅狭部92に装着される調整部材94とを有する。調整部材94は、幅狭部92に対する挿入深さを調整することで流路面積、つまり調整部材94の周面と通路P10の壁面との隙間を通る流量を調整できるように構成される。このように、本実施の形態では、絞り部90を用いてタイマー室88内で圧縮された空気の流量を調整し、タイマーピストン80のタイマー計測開始位置からタイマー計測終了位置までの移動速度を調整することで、釘打機1の作動モードの切り替え時間を制御する。通路P10であって絞り部90の上流側には、絞り部90への潤滑油等の侵入を防止するためのフィルタ96が設けられている。
【0050】
<釘打機1の作動例>
次に、本実施の形態に係る釘打機1の作動例について説明する。図4図11は、本実施の形態に係る釘打機1の作動図である。
【0051】
エアプラグ13にエアホースのエアチャックが接続されると、図4に示すように、エアコンプレッサから圧縮空気がメインチャンバ15内に供給される。メインチャンバ15に供給された圧縮空気は、通路P5及びタイマースイッチハウジング62内、及び通路P6を経由してプリセットピストンハウジング85内に流入する。プリセットピストン83及びタイマーピストン80は、プリセットピストンハウジング85内に流入した圧縮空気によって後側に押されて後退していき、図5に示すように、タイマー計測開始位置で停止する。これにより、タイマー8がスタンバイ状態となる。
【0052】
図6に示すように、作業者によりトリガ50が引き操作されると、押圧部55によってリンク部材70の一端部70aが押し上げられる。これに伴い、リンク部材70が軸72を支点として時計周りに回動し、リンク部材70の他端部70bによってタイマースイッチステム64が後側に押される。このように、本実施の形態では、リンク部材70によって、トリガ50の引き操作に基づく上下方向の動作をタイマースイッチステム64を押圧する前後方向の動作に切り替えることができる。タイマースイッチステム64及びタイマースイッチバルブ66はバネ67の弾性力に抗して後側に移動する。これにより、タイマースイッチバルブ66のOリング68の移動により通路P6が開くことで空気の流路が切り替わり、通路P6と通路P7とがタイマースイッチハウジング62内を経由して連通する。
【0053】
図7に示すように、タイマースイッチ60が作動すると、プリセットピストンハウジング85内の圧縮空気が、通路P6、タイマースイッチハウジング62内及び通路P7を経由してブローバックチャンバ18内に流入する。ブローバックチャンバ18内に流入した圧縮空気は、打撃シリンダ3内を介して外部(大気中)に排気される。
【0054】
これに伴い、プリセットピストン83は、タイマースイッチハウジング62内の排気された空気分だけ前進する。また、プリセットピストン83の移動に伴い、タイマーピストン80も前進していく。これにより、タイマー8の計測が開始される。本実施の形態では、タイマーピストン80の移動によってタイマー室88内の圧縮された空気は、通路P10に流入した後に絞り部90を通ることで少しずつ大気中に排気される。タイマーピストン80は、タイマー室88内の排気された空気分だけゆっくりと前進していく。
【0055】
図8に示すように、タイマーピストン80が前進してタイマー計測終了位置に到達すると、タイマー8がタイムアウトする。このとき、Oリング87aが流路形成凹部87bに対向する位置となり、Oリング87aと流路形成凹部87bとの間に形成される隙間を介して、通路P9と通路P8とが連通する。これにより、メインチャンバ15内の圧縮空気は、通路P9、タイマーピストンハウジング82B,82C間に形成された流路、Oリング87aと流路形成凹部87bとの隙間、通路P8を経由し、バルブ作動制御室39内に流入する。トリガバルブ30を構成するキャップ36は、バルブ作動制御室39内に流入した圧縮空気により押し上げられ、上方のパイロットバルブ35の下面に当接することでトリガバルブ室35a(図7参照)が閉じる。
【0056】
図8に示すタイマー8がタイムアウトした後に、コンタクトアーム20の先端部が対象物に押し当てられる場合、釘打機1の打ち込み動作が禁止される。具体的には、図9に示すように、コンタクトアーム20が対象物に押し当てられると、トリガ50を構成するコンタクトレバー54によりトリガバルブステム37が押し上げられる。しかし、本実施の形態では、パイロットバルブ35とキャップ36との間に形成されるトリガバルブ室35aは閉じられており、パイロットバルブ35の下方への移動は規制されている。そのため、トリガバルブステム37が押し上げられても、通路P2(隙間S1)と通路P4とを連通する経路がOリング35dにより遮断されるため、ヘッドバルブ室9a内の圧縮空気が外部の大気中に排出されず、打撃ピストン4は作動しない。つまり、釘打機1の打ち込み動作が禁止される。
【0057】
図7に示すタイマー8がタイムアウトする前に、コンタクトアーム20が対象物に押し当てられると、打ち込み動作が実行される。具体的には、図10に示すように、コンタクトアーム20が対象物に押し当てられると、コンタクトレバー54が押し上げられる。これに伴い、トリガバルブ室35a(図7参照)に収容された圧縮空気が、トリガバルブステム37とキャップ36との隙間S2から大気中に排気される。
【0058】
続けて、トリガバルブ室35a内の圧縮空気が排気されると、パイロットバルブ35の上端部がメインチャンバ15内の圧縮空気によって下側に付勢されることで、パイロットバルブ35が下降してその下面がキャップ36の内壁面に当接する。このパイロットバルブ35の作動により、Oリング35dも下降することで、隙間S1と通路P4とが連通し、打撃ピストン4側のヘッドバルブ室9aの圧縮空気が通路P1、通路P2、隙間S1、通路P4を経由して大気中に排出される。
【0059】
これにより、ヘッドバルブピストン11の下端部がメインチャンバ15内の圧縮空気によって押し上げられ、打撃シリンダ3とヘッドバルブピストン11との隙間からメインチャンバ15内の圧縮空気が打撃シリンダ3内に流入し、図11に示すように、打撃ピストン4が打撃シリンダ3内を急速に下降することで、打撃ドライバ5により釘が対象物に打ち込まれる。打撃ピストン4が下死点に移動する間に、打撃シリンダ3内の圧縮空気が流入排出口17からブローバックチャンバ18内に流入する。ブローバックチャンバ18内に流入した圧縮空気は、下死点近傍に移動した打撃ピストン4の下面に作用し、打撃ピストン4を上死点に復帰させる。
【0060】
また、コンタクトアーム20の対象物への押し当てが解除されると、コンタクトレバー54と共にトリガバルブステム37が下降し、トリガバルブ室35a及びヘッドバルブ室9a内に圧縮空気が再度供給される。これに伴い、ヘッドバルブピストン11が下降して元の位置に復帰し、打撃シリンダ3とヘッドバルブピストン11との隙間が閉じられる。
【0061】
また、図11に示すように、打撃ピストン4が下死点に移動する間に、打撃シリンダ3内の圧縮空気が流入排出口17からブローバックチャンバ18内に流入し、通路P7、タイマースイッチハウジング62内、通路P6を経由してプリセットピストンハウジング85内に流入する。これにより、プリセットピストン83及びタイマーピストン80がタイマー計測開始位置に移動することで、タイマー8がリセットされる。このように、本実施の形態では、打撃ピストン4のリターン用の圧縮空気を用いて、タイマー8をリセットする。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態によれば、トリガ50の操作をタイマースイッチ60に伝達するリンク部材70を設けるので、トリガ50の引き操作に基づく上下方向の運動をタイマースイッチ60を作動させる前後方向の運動に変換することができる。これにより、トリガ50の操作方向とは異なる方向(略直交方向)に延びるグリップ7内にタイマー8を配置した場合でも、トリガ50の操作荷重をタイマー8を作動させる作動荷重に効率的に変換することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、トリガ50を引き操作することで、リンク部材70を介してタイマースイッチ60及びタイマー8を作動させることができる。これにより、トリガ50の操作荷重を低減させることができ、その結果、作業者の操作負担を軽減させることもできる。また、リンク部材70の軸72と一端部70aとの間の第1の長さL1と軸72と他端部70bとの間の第2の長さL2の設定(レバー比)によって、トリガ50の操作荷重の設定が可能となる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、タイマー8と共にタイマースイッチ60をグリップ7内に配置するので、タイマースイッチ60の作動荷重を効率的にタイマー8に伝達することができる。また、グリップ7内にタイマー8及びタイマースイッチ60をまとめて配置することで、釘打機1の小型化を図ることができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、タイマースイッチ60及びタイマー8の作動方向をグリップ7に沿って(グリップ軸に合わせて)配置したので、タイマー8及びタイマースイッチ60を含むタイマーユニットをグリップ7のエンド(後端)側から差し込むように組み付けることが可能になり、組み立てが簡単になる。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施の形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されることはない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得る技術的思想は本開示の技術的範囲に属するものとする。
【0067】
例えば、上記実施の形態では、伝達部材の一例としてリンク部材70を採用した場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、ギヤ及びカムの少なくとも1以上の部品を用いて、トリガ50の引き操作に基づく上下方向の運動をタイマースイッチ60を作動させる前後方向の運動に変換し、タイマー8を作動させるようにしても良い。また、ワイヤーやベルト等の紐状部材によってトリガ50の動作とタイマースイッチ60の動作とを連動させるようにしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1 釘打機(空気圧工具)
2 ハウジング(工具本体)
4 打撃ピストン(駆動部)
5 打撃ドライバ(駆動部)
7 グリップ
8 タイマー
20 コンタクトアーム
50 トリガ
54 コンタクトレバー
60 タイマースイッチ
64 タイマースイッチステム
66 タイマースイッチバルブ
70 リンク部材(伝達部材)
70a 一端部
70b 他端部
90 絞り部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11