(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120740
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】草刈機、草刈装置、草刈方法、及び、動力機構
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
A01D34/64 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017868
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】393000984
【氏名又は名称】株式会社オーレック
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】今村 健二
(72)【発明者】
【氏名】大城 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇
(72)【発明者】
【氏名】下窪 竜
(72)【発明者】
【氏名】花山 裕希
(72)【発明者】
【氏名】小玉 尚人
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA11
2B083BA18
2B083CA03
2B083CA09
2B083CA28
2B083DA03
2B083EA06
2B083HA19
2B083HA21
2B083HA31
2B083HA60
(57)【要約】
【課題】比較的簡易な構造でありながら、遠隔操作で好適に使用可能な草刈機、草刈装置、草刈方法及び動力機構を提供する。
【解決手段】草刈装置1は、草刈機2と無線操作式のコントローラー3を備え、草刈機2は、走行手段部21、動力機構部22、作業部24、信号送受信部25及び制御部26を有する。動力機構部22は、エンジン221、第1モーター222、第2モーター223、第3モーター224、バッテリー225、第1プーリー226、第2プーリー227、第3プーリー228、第4プーリー229、第1ベルト230、第2ベルト231、第1クラッチ232及び第2クラッチ233を有する。作業部24は、側方に配置された回転軸(第3軸)と下方に配置された回転軸とを有するギヤボックス242、同回転軸に設けられた第4プーリー229及び草刈ナイフ部241を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段部と、草刈りを行う作業部と、該作業部及び前記走行手段部を駆動可能な動力機構部と、機外との信号送受信部と、該信号送受信部を介して受信した信号に基づき機体各部を制御可能な制御部とを機体に備え、
該作業部及び該動力機構部は、動力を外部に伝導可能な第1軸及び該第1軸に設けられた第1プーリーを含むエンジン、動力を外部に伝導可能な第2軸及び該第2軸に設けられた第2プーリーと第3プーリーを含む第1モーター、該第1モーターと電気的に接続されたバッテリー、前記第1モーターからの駆動力を受けて回転する第3軸、該第3軸に設けられた第4プーリー、及び、同第3軸に接続されて同第3軸に伝達された動力を以て駆動する草刈ナイフ部を有する作業部、前記第1プーリーと前記第2プーリーに掛け回された第1ベルト、及び、前記第3プーリーと前記第4プーリーに掛け回された第2ベルト、を有し、前記バッテリーにより駆動する前記第1モーターの動力が、前記第1ベルトを介して前記第1軸に伝達されて同第1軸を回転させることで前記エンジンを始動させる始動機能と、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、前記エンジンの動力が、前記第1ベルトを介して前記第2軸に伝達されて同第2軸を常時回転させることで前記第1モーターによる発電及び発電された電力が前記バッテリーに蓄電される発電及び蓄電機能と、前記第2ベルトを介して前記第3軸に伝達された動力を以て前記作業部を駆動させるカッター駆動機能を有する
草刈機。
【請求項2】
前記動力機構部が、燃料切れ検知部、及び、燃料切れによる前記エンジンの停止状態において、同エンジンから前記第1モーターへの動力伝達を遮断する遮断部、を更に有し、
前記燃料切れ検知部により燃料切れが検知された際には、前記信号送受信部を介し機外へ検知情報を送信する燃料切れ通知機能を有すると共に、燃料切れ通知後に自動又は機外からの信号に基づき遮断部が起動し、同遮断部による動力伝達遮断状態において、前記バッテリーに蓄積された電力を以て走行手段を駆動させる機能を有する
請求項1に記載の草刈機。
【請求項3】
前記エンジンの回転数を測定する回転数測定機、及び、該回転数測定機により測定された前記回転数と予め設定された回転数データとを比較して、現在が高負荷状態であるか否かを判定する負荷判定部、を更に有し、
該負荷判定部は、高負荷状態と判定した際に高負荷状態を通知する信号を前記制御部に送信し、同信号を受信した同制御部は前記第1モーターの出力を向上させる機能を有する
請求項1又は請求項2に記載の草刈機。
【請求項4】
前記第1モーターからの電力を直接受けて駆動するか又は前記バッテリーに蓄積された電力を以て駆動する第2モーター及び第3モーターを更に有し、
前記走行手段部が、前記第2モーターの回転軸を車軸として接続された起動輪及び前記第3モーターの回転軸を車軸として接続された起動輪、少なくとも一対の転輪、及び、一対の履帯、を有する履帯式走行構造である
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の草刈機。
【請求項5】
無線操作式のコントローラーと、
該コントローラーとの信号送受信部、該信号送受信部を介して受信した信号に基づき機体各部を制御可能な制御部、走行手段部、草刈りを行う作業部、及び、該作業部及び前記走行手段部を駆動可能な動力機構部を機体に有する、草刈機を備え、
前記作業部及び該動力機構部は、動力を外部に伝導可能な第1軸及び該第1軸に設けられた第1プーリーを含むエンジン、動力を外部に伝導可能な第2軸及び該第2軸に設けられた第2プーリーと第3プーリーを含む第1モーター、該第1モーターと電気的に接続されたバッテリー、前記第1モーターからの駆動力を受けて回転する第3軸、該第3軸に設けられた第4プーリー、及び、同第3軸に接続されて同第3軸に伝達された動力を以て駆動する草刈ナイフ部を有する作業部、前記第1プーリーと前記第2プーリーに掛け回された第1ベルト、及び、前記第3プーリーと前記第4プーリーに掛け回された第2ベルト、を有し、前記バッテリーにより駆動する前記第1モーターの動力が、前記第1ベルトを介して前記第1軸に伝達されて同第1軸を回転させることで前記エンジンを始動させる始動機能と、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、前記エンジンの動力が、前記第1ベルトを介して前記第2軸に伝達されて同第2軸を常時回転させることで前記第1モーターによる発電及び発電された電力が前記バッテリーに蓄電させる発電及び蓄電機能と、前記第2ベルトを介して前記第3軸に伝達された動力を以て前記作業部を駆動させるカッター駆動機能を有する
草刈装置。
【請求項6】
走行手段部と、草刈りを行う作業部と、該作業部及び前記走行手段部を駆動可能な動力機構部と、機外との信号送受信部と、該信号送受信部を介して受信した信号に基づき機体各部を制御可能な制御部とを機体に備える遠隔操作型草刈機を使用し、
前記動力機構部が、動力を外部に伝導可能な第1軸及び該第1軸に設けられた第1プーリーを含むエンジン、動力を外部に伝導可能な第2軸及び該第2軸に設けられた第2プーリーと第3プーリーを含む第1モーター、該第1モーターと電気的に接続されたバッテリー、及び、前記第1プーリーと前記第2プーリーに掛け回された第1ベルトを有し、前記バッテリーにより前記第1モーターを駆動させ、前記第1ベルトを介して同第1モーターの動力を前記第1軸に伝達させて同第1軸を回転させることで前記エンジンを始動させる、始動工程と、
燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、前記エンジンの動力を、前記第1ベルトを介して前記第2軸に伝達させ、同第2軸を常時回転させることで前記第1モーターによる発電及び発電された電力を前記バッテリーに蓄電させる、発電及び蓄電工程と、
前記信号送受信部で受信した機外からの信号に基づき、前記制御部を介して駆動する前記動力機構部及び前記走行手段部を以て、機体を所定位置に移動させる移動工程と、
前記作業部が、第4プーリーが設けられた第3軸に接続された草刈ナイフ部、及び、前記第3プーリーと前記第4プーリーに掛け回された第2ベルトを有し、前記エンジンの動力を、前記第2ベルト及び前記第4プーリーを介して前記第3軸に伝達させ、前記草刈ナイフ部を駆動させて行う草刈工程と、を備える
草刈方法。
【請求項7】
遠隔操作型作業機に設けられ、
動力を外部に伝導可能な第1軸及び該第1軸に設けられた第1プーリーを有するエンジンと、動力を外部に伝導可能な第2軸及び該第2軸に設けられた第2プーリーと第3プーリーを有する第1モーターと、該第1モーターと電気的に接続されたバッテリーと、前記第1モーターからの駆動力を受けて回転する第3軸及び該第3軸に設けられた第4プーリーを有し、作業を行う作業部と、前記第1プーリーと前記第2プーリーに掛け回された第1ベルトと、前記第3プーリーと前記第4プーリーに掛け回された第2ベルトと、を備え、
前記バッテリーにより駆動する前記第1モーターの動力が、前記第1ベルトを介して前記第1軸に伝達されて同第1軸を回転させることで前記エンジンを始動可能であると共に、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、前記エンジンの動力が、前記第1ベルトを介して前記第2軸に伝達されて同第2軸を常時回転させることで前記第1モーターによる発電及び発電された電力が前記バッテリーに蓄電可能であり、かつ、前記第2ベルトを介して前記第3軸に伝達された動力を以て前記作業部を駆動可能な構造である
動力機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈機、草刈装置、草刈方法、及び、動力機構に関する。詳しくは、比較的簡易な構造でありながら、遠隔操作で好適に使用可能な草刈機、草刈装置、草刈方法、及び、動力機構に関する。
【背景技術】
【0002】
農地や牧草地、ゴルフ場等において、草刈は頻繁に定期的に行われる作業であり、以前から歩行型や搭乗型の自走草刈機が普及している。しかしながら、傾斜地等の不整地での作業の場合は、搭乗型の自走草刈機は機体が転倒する危険性があり、歩行型の草刈機を使用した場合は、作業者又は機体の両方又はいずれか一方が転倒する等の危険性があり且つ労力等の作業負担が大きい。
【0003】
そこで、このような課題を解決すべく、例えば、特許文献1記載の遠隔操作式草刈機が提案されている。当該遠隔操作式草刈機は、エンジン駆動により水平に回転する刈刃と、前記エンジンを動力として前進又は後進が可能な走行手段と、を有する草刈機において、草刈機と離れた位置にある遠隔送信機の操作信号を受信し、前記操作信号により前記エンジンの回転数と前後進の切替と走行速度と走行方向とを制御する指令を出す制御装置を有することを特徴としている。
【0004】
そして、特許文献1記載の遠隔操作式草刈機によれば、作業者は、安全な場所において、草刈機を遠隔操作することができ、実際に作業者が法面上に立って作業する必要がなく、法面での転倒や転落をする危険性がなくなり、回転する刈刃が小石等の異物に当り、異物が作業者の目や体などに当たる危険性もなくなる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載の遠隔操作式草刈機は、作業者が離れた位置から草刈機を遠隔操作するものであるが、同草刈機がエンジンにより駆動する構造であるため、エンジンの燃料切れ等により草刈機が操縦者から離れた場所で停止した場合は、停止場所まで行って機体を回収するか、又は、燃料を補給して機体を帰還させる必要がある。
【0007】
しかしながら、機体を回収する際には、少なくとも数十キログラム以上の重量を有する機体を牽引等することになるため、人力による場合は作業者の肉体的負担が大きく、また、車両を使用する場合は、停止場所近くまで車両を乗り入れ、車両と草刈機を接続し、牽引して現場離脱する、という手間が掛かる。他方、機体に燃料を補給する際には、燃料を運んで補給する労力と手間が掛かると共に、作業対象地で可燃物である燃料を注ぐことになり、燃料漏出による火災発生の危険性も生じうる。
【0008】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、比較的簡易な構造でありながら、遠隔操作で好適に使用可能な草刈機、草刈装置、草刈方法、及び、動力機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の草刈機は、走行手段部と、草刈りを行う作業部と、該作業部及び前記走行手段部を駆動可能な動力機構部と、機外との信号送受信部と、該信号送受信部を介して受信した信号に基づき機体各部を制御可能な制御部とを機体に備え、該作業部及び該動力機構部は、動力を外部に伝導可能な第1軸及び該第1軸に設けられた第1プーリーを含むエンジン、動力を外部に伝導可能な第2軸及び該第2軸に設けられた第2プーリーと第3プーリーを含む第1モーター、該第1モーターと電気的に接続されたバッテリー、前記第1モーターからの駆動力を受けて回転する第3軸、該第3軸に設けられた第4プーリー、及び、同第3軸に接続されて同第3軸に伝達された動力を以て駆動する草刈ナイフ部を有する作業部、前記第1プーリーと前記第2プーリーに掛け回された第1ベルト、及び、前記第3プーリーと前記第4プーリーに掛け回された第2ベルト、を有し、前記バッテリーにより駆動する前記第1モーターの動力が、前記第1ベルトを介して前記第1軸に伝達されて同第1軸を回転させることで前記エンジンを始動させる始動機能と、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、前記エンジンの動力が、前記第1ベルトを介して前記第2軸に伝達されて同第2軸を常時回転させることで前記第1モーターによる発電及び発電された電力が前記バッテリーに蓄電される発電及び蓄電機能と、前記第2ベルトを介して前記第3軸に伝達された動力を以て前記作業部を駆動させるカッター駆動機能を有する。
【0010】
ここで、本発明の草刈機は、前述した走行手段部、作業部、動力機構部、信号送受信部及び制御部を機体に備えることにより、機外(例えば有線式又は無線式のコントローラー)からの機体を操作する信号を信号送受信部で受信し、同信号送受信部を介した受信信号に基づいて制御部が走行手段部、作業部及び動力機構部を含む機体各部を制御し、機体の走行及び草刈作業を行うことができる。また、信号送受信部は、制御部に伝達された機体各部の情報等を機外のコントローラー等に送信し、操作者等のユーザーに同情報を知覚可能にすることもできる。
【0011】
前述した動力機構部は、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において(換言すると、通常運転中は常時)、エンジンの動力が、第1プーリー及び第2プーリーに掛け回された第1ベルトを介して第2軸に伝達され、第2軸を常時回転させることで、第1モーターによる発電が行われる。そして、第1モーターにより発電された電力はバッテリーに蓄電される。
【0012】
そして、前述した動力機構部によれば、バッテリーに蓄電された電力を使用して第1モーターを駆動させ、同第1モーターの動力が第1ベルトを介して第1軸に伝達され、同第1軸が回転することで、エンジンを始動させることができる。つまり、同動力機構部によれば、セルスターター非搭載のエンジン(例えばリコイルスターター方式のエンジン)を採用しても、セルスターター搭載エンジンと同様の始動を行うことができる。
【0013】
なお、前述した動力機構部は、「燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、エンジンの動力が、第1ベルトを介して第2軸に伝達されて同第2軸を常時回転させる」構成であり、燃料切れによってエンジンが停止した場合は「第1ベルトを介して第2軸に伝達されない」構成となっている。なお、「第1ベルトを介して第2軸に伝達されない」構成を実現する手段としては、例えばクラッチ等が挙げられ、第1ベルトを介したエンジンと第1モーターとの間の動力の伝達が遮断される。
【0014】
燃料切れによるエンジン停止状態で動力の伝達を遮断することにより、第1軸に伝達される動力によって燃料切れのエンジンを強制的に動かすことに起因する内部機構の破損や、第1軸及び第1プーリーの破損を抑制することもできる。そして、前述した動力機構部によれば、例えば、操縦者から離れた場所で燃料切れによってエンジンが停止した状態であっても、バッテリーに蓄電された電力を動力として走行手段部を駆動させることができ、機体の回収に行く労力を要せずに草刈機を帰還させることが可能となる。また、例えば、大容量バッテリーを搭載する等の余裕を持たせた設計にしている場合は、ある程度の草刈作業を続行した上で、草刈機を帰還させることも可能である。
【0015】
走行手段部は、第1モーターからの動力を受けて駆動する構造であるか、第1モーターで発電されてバッテリーに蓄電された電力を以て駆動する構造である。ここで、「第1モーターからの動力を受けて駆動する構造」とは、例えば、走行手段部の起動輪の車軸と第1モーターとの間に、ギヤ、シャフト、ベルト、プーリー等の動力伝達機構を有し、第1モーターからの動力が起動輪を直接駆動する構造が挙げられる。また、「第1モーターで発電されてバッテリーに蓄電された電力を以て駆動する構造」とは、走行手段部の起動輪の車軸を駆動させる、第1モーター以外の他のモーターを有し、同バッテリーからの電力で同他のモーターを駆動させることで起動輪を駆動する構造が挙げられる。
【0016】
本発明の草刈機は、第3プーリーが設けられた第2軸を介して伝達されるエンジンの動力が、第2ベルトを介して第4プーリーが設けられた作業部に伝達され、同動力を以て作業部に設けられた草刈ナイフ部が駆動する。これにより、同草刈機による草刈作業が可能となる。なお、前述した作業部及び動力機構部の構成によれば、対象となる草木の量が多いか又は硬いために負荷が増大し過負荷状態となった場合に、第1モーターによる動力を更に付加することができる(動力アシスト機能)。
【0017】
更に、前述の作業部及び動力機構部は、動力伝達機構がプーリーとベルトの組み合わせによるものであるため、ギヤやシャフト等の組み合わせによる動力伝達機構と比較して簡易且つ軽量な構造であり、組立効率が良いことから製造コストの抑制を図ることができ、加えて、整備性も良好であることから運用コストの抑制も期待できる。
【0018】
ところで、作業中の草刈機では、作業部で噛み混んだ草木等により動力機構部が急停止することがあり、前述したギヤやシャフト等からなる動力伝達機構である場合は、生じた衝撃や荷重に起因する部品の欠損等が起きる可能性があるが、本発明の草刈機は動力機構部のベルトで急停止による衝撃を吸収できるため、このような故障が生じる可能性を低減することができる。
【0019】
このように、本発明の草刈機は、前述した構成とこれに基づく作用を奏することにより、比較的簡易な構造でありながら、遠隔操作で好適に使用可能なものとなっている。
【0020】
また、動力機構部が、燃料切れ検知部、及び、燃料切れによるエンジンの停止状態において、エンジンから第1モーターへの動力伝達を遮断する遮断部、を更に有し、燃料切れ検知部により燃料切れが検知された際には、信号送受信部を介し機外へ検知情報を送信する燃料切れ通知機能を有すると共に、燃料切れ通知後に自動又は機外からの信号に基づき遮断部が起動し、遮断部による動力伝達遮断状態において、バッテリーに蓄積された電力を以て走行手段を駆動させる機能を有する場合は、燃料切れによってエンジンが停止した際に、エンジン等の破損を抑制することができると共に、バッテリーに蓄積された電力を以て走行手段を駆動させる運転に切り替えることができる。
【0021】
詳しくは、本発明の草刈機は、その運転中に燃料切れが検知されると、燃料切れ検知部が燃料切れを検知し、信号送受信部を介し機外へ検知情報を送信する(燃料切れ通知機能)。これにより、操作者は、直接的又は間接的に草刈機が燃料切れによってエンジンが停止することを知覚することができる。
【0022】
更に、前述した遮断部は、これが起動する(自動)又は起動させる(手動)ことで、燃料切れによるエンジン停止状態で動力の伝達を遮断することができる。これにより、第1軸に伝達される動力によって燃料切れのエンジンを強制的に動かすことに起因する内部機構の破損や、第1軸及び第1プーリーの破損を抑制することもできる。なお、遮断部としては、例えば第1ベルト等の中途に設けたクラッチ等が挙げられるが、他の手段を除外するものではない。
【0023】
そして、燃料切れによってエンジンが停止した場合は、遮断部によってエンジンと第1モーターとの間の動力の伝達が遮断され、バッテリーに蓄電された電力を以て走行手段部を駆動させることができる。なお、バッテリーからの電力で駆動する動力装置としては、例えば、前述した第1モーターであるか、又は、第1モーター以外に設けた他のモーターが挙げられる。これにより、操縦者から離れた場所で燃料切れによりエンジンが停止した場合であっても、機体の回収に行く労力を要せずに、操縦者のところまで草刈機を帰還させることができる。
【0024】
また、エンジンの回転数を測定する回転数測定機、及び、回転数測定機により測定された回転数と予め設定された回転数データとを比較して、現在が高負荷状態であるか否かを判定する負荷判定部、を更に有し、負荷判定部は、高負荷状態と判定した際に高負荷状態を通知する信号を制御部に送信し、同信号を受信した制御部は第1モーターの出力を向上させる機能を有する場合は、草刈作業で対象となる草木の量が多い等の理由に起因する過負荷状態において、第1モーターによる動力アシストを効率良くに行うことができる。
【0025】
詳しくは、過負荷状態となった場合はエンジンの回転数が低下するため、回転数測定機により測定された回転数と予め設定された回転数データとを負荷判定部で比較し、現在が高負荷状態と判定した際には、高負荷状態を通知する信号が負荷判定部から制御部に送信される。そして、同信号を受信した制御部は、第1モーターの出力を向上させることで、第1モーターによる動力アシストがなされる。つまり、過負荷状態であるか否かについて、離れた場所で作業する草刈機に近づいて確認する必要が無く、遠隔操作における機体の作業性及び利便性が向上している。
【0026】
また、第1モーターからの電力を直接受けて駆動するか又はバッテリーに蓄積された電力を以て駆動する第2モーター及び第3モーターを更に有し、走行手段部が、第2モーターの回転軸を車軸として接続された起動輪及び第3モーターの回転軸を車軸として接続された起動輪、少なくとも一対の転輪、及び、一対の履帯、を有する履帯式走行構造である場合は、本発明の草刈機の走行性が更に向上する。
【0027】
詳しくは、走行手段部が、前述した履帯式走行構造であることにより、悪路や不整地での走行性が向上すると共に、傾斜地における作業中の安定性が向上する。
【0028】
更に、起動輪の動力としてモーターを使用することにより、複雑な機械的構造が不要となり、機体を比較的簡易な構造にすることができ、そして、履帯式走行構造かつモーターの使用により、方向転換時には第2モーターと第3モーターを単純に逆に回転させるだけでよいため、小回りが効いて操作性が良い。
【0029】
更にまた、起動輪の動力としてモーターを使用することにより、燃料切れによるエンジン停止状態においては、第1モーターからの電力を直接受けて駆動するか又はバッテリーに蓄積された電力を以て走行可能であり、操縦者のところまで草刈機を帰還させることができる。
【0030】
上記の目的を達成するために、本発明の草刈装置は、無線操作式のコントローラーと、該コントローラーとの信号送受信部、該信号送受信部を介して受信した信号に基づき機体各部を制御可能な制御部、走行手段部、草刈りを行う作業部、及び、該作業部及び前記走行手段部を駆動可能な動力機構部を機体に有する、草刈機を備え、前記作業部及び該動力機構部は、動力を外部に伝導可能な第1軸及び該第1軸に設けられた第1プーリーを含むエンジン、動力を外部に伝導可能な第2軸及び該第2軸に設けられた第2プーリーと第3プーリーを含む第1モーター、該第1モーターと電気的に接続されたバッテリー、前記第1モーターからの駆動力を受けて回転する第3軸、該第3軸に設けられた第4プーリー、及び、同第3軸に接続されて同第3軸に伝達された動力を以て駆動する草刈ナイフ部を有する作業部、前記第1プーリーと前記第2プーリーに掛け回された第1ベルト、及び、前記第3プーリーと前記第4プーリーに掛け回された第2ベルト、を有し、前記バッテリーにより駆動する前記第1モーターの動力が、前記第1ベルトを介して前記第1軸に伝達されて同第1軸を回転させることで前記エンジンを始動させる始動機能と、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、前記エンジンの動力が、前記第1ベルトを介して前記第2軸に伝達されて同第2軸を常時回転させることで前記第1モーターによる発電及び発電された電力が前記バッテリーに蓄電させる発電及び蓄電機能と、前記第2ベルトを介して前記第3軸に伝達された動力を以て前記作業部を駆動させるカッター駆動機能を有する。
【0031】
ここで、本発明の草刈装置は、無線操作式のコントローラーと、前述した同コントローラーとの信号送受信部等を有する草刈機を備えることにより、草刈作業の従事者が機体に追従することなく、機体を無線遠隔操作して機体の走行及び草刈作業を行うことができる。加えて、作業を行うにあたって、従事者の泥汚れや負傷等の可能性が極めて低減されるため、作業性が良く、作業負担も少なくて済む。
【0032】
草刈機は、信号送受信部を有することにより、コントローラーからの無線信号を受信し、かつ、制御部に伝達された機体各部の情報等を信号として機外に送信することができる。なお、送信する信号は、例えば、コントローラーに設けた画面で行う機体情報表示や警告ランプ点灯等に使用すべく、コントローラーに送信する態様であってもよいし、作業者や管理者が使用するスマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末あるいはパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」等)に送信する態様、又は、コントローラー及び携帯情報端末あるいはパソコンの両方に送信する態様であってもよく、操作者等のユーザーが同情報等の内容を知覚可能であればよい。
【0033】
制御部は、信号送受信部を介して受信した信号に基づき機体各部を制御することができる。機体各部としては、少なくとも走行手段部、作業部及び動力機構部が挙げられるが、他の機体構成部分を含んでもよい。
【0034】
動力機構部は、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、エンジンの動力が、第1プーリー及び第2プーリーに掛け回された第1ベルトを介して第2軸に伝達され、第2軸を常時回転させることで、第1モーターによる発電が行われる。そして、第1モーターにより発電された電力はバッテリーに蓄電される。そして、動力機構部は、バッテリーに蓄電された電力を使用して第1モーターを駆動させ、同第1モーターの動力が第1ベルトを介して第1軸に伝達され、同第1軸が回転することでエンジンを始動させることができる。
【0035】
なお、動力機構部は、前述の構成であることにより、燃料切れによるエンジン停止状態で動力の伝達が遮断され、第1軸に伝達される動力によって燃料切れのエンジンを強制的に動かすことに起因する内部機構の破損や、第1軸及び第1プーリーの破損を抑制することもできる。
【0036】
そして、前述した動力機構部によれば、操縦者から離れた場所で燃料切れによってエンジンが停止した状態であっても、バッテリーに蓄電された電力を使用する第1モーターの動力によって、走行手段部を駆動させることができ、機体の回収に行く労力を要せずに草刈機を帰還させることが可能となる。また、例えば、大容量バッテリーを搭載する等の余裕を持たせた設計にしている場合は、ある程度の草刈作業を続行した上で、草刈機を帰還させることも可能である。
【0037】
前述の草刈機は、第3プーリーが設けられた第2軸を介して伝達されるエンジンの動力が、第2ベルトを介して第4プーリーが設けられた作業部に伝達され、同動力を以て作業部に設けられた草刈ナイフ部が駆動し草刈作業が可能となる。加えて、前述した作業部及び動力機構部の構成によれば、対象となる草木の量等に起因して過負荷状態となった場合に、第1モーターによる動力を更に付加することができる(動力アシスト機能)。
【0038】
更に、前述の作業部及び動力機構部は、動力伝達機構がプーリーとベルトの組み合わせによるものであるため、ギヤ等による動力伝達機構と比較して簡易な構造であり、組立効率が良く製造コストの抑制を図ることができ、加えて、整備性も良好であることから運用コストの抑制も期待できる。加えて、前述の動力機構部の構成によれば、ベルトで急停止による衝撃を吸収できるため、衝撃や荷重に起因する部品の欠損等の故障が生じる可能性を低減することができる。また、走行手段部は、第1モーターからの動力を受けて駆動する構造であるか、第1モーターで発電されてバッテリーに蓄電された電力を以て駆動する構造である。
【0039】
このように、本発明の草刈装置は、前述した構成とこれに基づく作用を奏することにより、比較的簡易な構造でありながら、遠隔操作で好適に使用可能なものとなっている。
【0040】
上記の目的を達成するために、本発明の草刈方法は、走行手段部と、草刈りを行う作業部と、該作業部及び前記走行手段部を駆動可能な動力機構部と、機外との信号送受信部と、該信号送受信部を介して受信した信号に基づき機体各部を制御可能な制御部とを機体に備える遠隔操作型草刈機を使用し、前記動力機構部が、動力を外部に伝導可能な第1軸及び該第1軸に設けられた第1プーリーを含むエンジン、動力を外部に伝導可能な第2軸及び該第2軸に設けられた第2プーリーと第3プーリーを含む第1モーター、該第1モーターと電気的に接続されたバッテリー、及び、前記第1プーリーと前記第2プーリーに掛け回された第1ベルトを有し、前記バッテリーにより前記第1モーターを駆動させ、前記第1ベルトを介して同第1モーターの動力を前記第1軸に伝達させて同第1軸を回転させることで前記エンジンを始動させる、始動工程と、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、前記エンジンの動力を、前記第1ベルトを介して前記第2軸に伝達させ、同第2軸を常時回転させることで前記第1モーターによる発電及び発電された電力を前記バッテリーに蓄電させる、発電及び蓄電工程と、前記信号送受信部で受信した機外からの信号に基づき、前記制御部を介して駆動する前記動力機構部及び前記走行手段部を以て、機体を所定位置に移動させる移動工程と、前記作業部が、第4プーリーが設けられた第3軸に接続された草刈ナイフ部、及び、前記第3プーリーと前記第4プーリーに掛け回された第2ベルトを有し、前記エンジンの動力を、前記第2ベルト及び前記第4プーリーを介して前記第3軸に伝達させ、前記草刈ナイフ部を駆動させて行う草刈工程と、を備える。
【0041】
ここで、本発明の草刈方法は、前述した始動工程を備えることにより、第1モーターの動力を以てエンジンを始動させることができる。また、セルスターター非搭載のエンジンを使用した機体であっても、同様の始動工程を実施することができる。
【0042】
そして、本発明の草刈方法は、前述した発電及び蓄電工程を備えることにより、エンジンの動力を以て第1モーターを駆動させて発電し、発電された電力をバッテリーに蓄電させることができる。
【0043】
更に、本発明の草刈方法は、前述した移動工程を備えることにより、機外からの信号を信号送受信部で受信して制御部を制御し、同制御によって動力機構部及び走行手段部を駆動させ、機体を所定位置(例えば草木が繁茂した領域)に移動させることができる。走行手段部は、第1モーターからの動力を受けて駆動する構造であるか、第1モーターで発電されてバッテリーに蓄電された電力を以て駆動する構造である。
【0044】
更にまた、本発明の草刈方法は、前述した草刈工程を備えることにより、伝達されるエンジンの動力が作業部に伝達され、同動力を以て作業部に設けられた草刈ナイフ部が駆動し、草刈作業が行われる。なお、前述した作業部及び動力機構部の構成によれば、対象となる草木の量が多いか又は硬いために負荷が増大し過負荷状態となった場合に、第1モーターによる動力を更に付加することができる(動力アシスト機能)。
【0045】
そして、本発明の草刈方法では、機外からの遠隔操作により、前述した始動工程、発電及び蓄電工程、移動工程、及び、草刈工程を含む草刈作業を行うことができる。また、本発明の草刈方法では、燃料切れによるエンジン停止状態で動力の伝達が遮断され、これにより、第1軸に伝達される動力によって燃料切れのエンジンを強制的に動かすことに起因する内部機構の破損や、第1軸及び第1プーリーの破損が抑制される。
【0046】
更に、本発明の草刈方法では、例えば、操縦者から離れた場所で燃料切れによってエンジンが停止した状態であっても、前述した動力機構部を以て、バッテリーに蓄電された電力を動力として走行手段部を駆動させ、機体の回収に行く労力を要せずに草刈機を帰還させることができる。また、例えば、バッテリー容量に余裕があれば、ある程度の草刈作業を続行した上で、草刈機を帰還させることもできる。
【0047】
加えて、本発明の草刈方法では、使用する遠隔操作型草刈機の動力伝達機構がプーリーとベルトの組み合わせによるものであるため、ギヤやシャフト等の組み合わせによる動力伝達機構と比較して簡易且つ軽量な構造で、整備性も良好であることから運用コストの抑制も期待できる。また、本発明の草刈方法では、前述した動力機構部の構造(プーリー及びベルトの組み合わせ)に起因して、作業部で噛み混んだ草木等による動力機構部の急停止による衝撃を吸収でき、故障が生じる可能性を低減することができる。
【0048】
このように、本発明の草刈方法は、前述した構成とこれに基づく作用を奏することにより、比較的簡易な構造でありながら、遠隔操作で好適に使用可能なものとなっている。
【0049】
上記の目的を達成するために、本発明の動力機構は、遠隔操作型作業機に設けられ、動力を外部に伝導可能な第1軸及び該第1軸に設けられた第1プーリーを有するエンジンと、動力を外部に伝導可能な第2軸及び該第2軸に設けられた第2プーリーと第3プーリーを有する第1モーターと、該第1モーターと電気的に接続されたバッテリーと、前記第1モーターからの駆動力を受けて回転する第3軸及び該第3軸に設けられた第4プーリーを有し、作業を行う作業部と、前記第1プーリーと前記第2プーリーに掛け回された第1ベルトと、前記第3プーリーと前記第4プーリーに掛け回された第2ベルトと、を備え、前記バッテリーにより駆動する前記第1モーターの動力が、前記第1ベルトを介して前記第1軸に伝達されて同第1軸を回転させることで前記エンジンを始動可能であると共に、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、前記エンジンの動力が、前記第1ベルトを介して前記第2軸に伝達されて同第2軸を常時回転させることで前記第1モーターによる発電及び発電された電力が前記バッテリーに蓄電可能であり、かつ、前記第2ベルトを介して前記第3軸に伝達された動力を以て前記作業部を駆動可能な構造である。
【0050】
ここで、前述の動力機構は、遠隔操作型作業機に設けられ、燃料切れによる停止状態を除く運転状態において、エンジンの動力が、第1プーリー及び第2プーリーに掛け回された第1ベルトを介して第2軸に伝達され、第2軸を常時回転させることで、第1モーターによる発電が行われる。そして、第1モーターにより発電された電力はバッテリーに蓄電される。そして、同動力機構は、バッテリーに蓄電された電力を使用して第1モーターを駆動させ、同第1モーターの動力が第1ベルトを介して第1軸に伝達され、同第1軸が回転することでエンジンを始動させることができる。
【0051】
なお、動力機構は、前述の構成であることにより、燃料切れによるエンジン停止状態で動力の伝達が遮断され、第1軸に伝達される動力によって燃料切れのエンジンを強制的に動かすことに起因する内部機構の破損や、第1軸及び第1プーリーの破損を抑制することもできる。そして、同動力機構によれば、操縦者から離れた場所で燃料切れによってエンジンが停止した状態であっても、バッテリーに蓄電された電力を使用する第1モーターの動力によって、遠隔操作型作業機に備わる走行手段部を駆動させることができ、回収に行く労力を要せずに機体を帰還させることが可能なものとすることができる。
【0052】
そして、前述の動力機構部によれば、第3プーリーが設けられた第2軸を介して伝達されるエンジンの動力が、第2ベルトを介して第4プーリーが設けられた作業部に伝達され、同動力を以て作業部に設けられた作業部分(例えば、草刈ナイフ部)を駆動させて、所定の作業(例えば草刈り等)を行うことができる。加えて、同動力機構によれば、作業対象(例えば、草刈作業における草木の量等)に起因して過負荷状態となった場合に、第1モーターによる動力を更に付加することができる(動力アシスト機能)。
【0053】
更に、前述の動力機構は、動力伝達機構がプーリーとベルトの組み合わせによるものであるため、ギヤ等による動力伝達機構と比較して簡易な構造であり、組立効率が良く製造コストの抑制を図ることができ、加えて、整備性も良好であることから運用コストの抑制も期待できる。加えて、同動力機構の構成によれば、ベルトで急停止による衝撃を吸収できるため、衝撃や荷重に起因する部品の欠損等の故障が生じる可能性を低減することができる。
【0054】
このように、本発明の動力機構は、前述した構成とこれに基づく作用を奏することにより、同動力機構を設けた遠隔操作型作業機について、比較的簡易な構造でありながら、遠隔操作で好適に使用可能なものにすることができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、比較的簡易な構造でありながら、遠隔操作で好適に使用可能な草刈機、草刈装置、草刈方法、及び、動力機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】左斜め前方視で示す草刈機と、コントローラーから成る本発明に係る草刈装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の草刈機を右斜め前方から示した斜視図である。
【
図3】
図1の草刈機を右斜め後方から示した斜視図である。
【
図4】
図1の草刈機を下方から示した斜視図である。
【
図5】
図1の草刈機における動力機構部の要部を示した斜視図である。
【
図6】
図5の動力機構部を機体後方から示した背面図である。
【
図7】
図5の動力機構部の動力伝達構造を平面視で示した模式図である。
【
図8】
図1の草刈機を前進させて行う使用状態を側方から示した説明図である。
【
図9】
図1の草刈機を後進させて行う使用状態を側方から示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1~
図9を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。なお、
図1~
図7の図中に示す矢印に係る符号は説明上の方向を示し、
図1に示す草刈機の方向を基準として、符号Fは「前方向」を、Bは「後方向」を、Rは「右方向」を、Lは「左方向」を、Uは「上方向」を、Dは「下方向」を、それぞれ意味している。
【0058】
〔草刈装置1〕
図1~
図7を参照して、草刈装置1について説明する。草刈装置1は、草刈機2と、無線操作式のコントローラー3を備える(
図1参照)。
【0059】
(草刈機2)
草刈機2は、カウル200、フレーム201、走行手段部21、動力機構部22、作業部24、信号送受信部25及び制御部26を有する。動力機構部22、作業部24、信号送受信部25及び制御部26は、フレーム201上に直接又は間接的に配置されている。各部について以下詳述する。
【0060】
(カウル200)
カウル200は、動力機構部22及び作業部24の一部について、天部方向及び左右前後の側部方向を覆う着脱可能な箱状体であり、所定の剛性及び防水性を有する材料で形成されている(
図1~4参照)。
【0061】
(フレーム201)
フレーム201は、左右両端が下方に折り曲げられた略平坦な剛性素材(本実施形態では金属材)で形成され、ステー202、ステー203、スカート部204、及び、スカート部205、を有する。前述の折り曲げられた左右各部分は走行構造部21a、21bの取り付け部分である(
図1~6参照)。
【0062】
ステー202は、フレーム201上において、エンジン221と第1モーター222の間に立設されている。ステー203は、フレーム201上において、エンジン221及び第1モーター222と、作業部24との間に立設されている(
図5参照)。
【0063】
スカート部204は、機体前方に下り傾斜で突出するように設けられ、その幅がフレーム201の幅と略同一であると共に、その先端部が履帯下面部分よりも高くなるように設けられている。スカート部205は、機体後方に下り傾斜で突出するように設けられ、その幅がフレーム201の幅と略同一であると共に、その先端部が履帯下面部分よりも高くなるように設けられている(
図1~4参照)。
【0064】
(走行手段部21)
走行手段部21は、履帯式走行構造であり、フレーム201を挟んで機体の左右に配置されており、
図1に示す機体正面視で左側が走行構造部21a、右側が走行構造部21bである。
【0065】
走行構造部21aは、地面側に配置された前後一対の転輪211と、各転輪の上方に配置された起動輪212aと、起動輪及び前後各転輪に回しかけられた履帯213とを有する。起動輪212aは、第2モーター223の回転軸を車軸として接続されている(
図2~3参照)。第2モーター223は、後述する第1モーター222から直接供給される電力又はバッテリー225に蓄積された電力を以て駆動する。
【0066】
走行構造部21bは、地面側に配置された前後一対の転輪211と、転輪の上方に配置された起動輪212bと、起動輪及び前後各転輪に回しかけられた履帯213とを有する。起動輪212bは、第3モーター224の回転軸を車軸として接続されている(
図1、
図3参照)。第3モーター224は、前述した第2モーター223同様、第1モーター222又はバッテリー225からの電力を以て駆動する(
図1、
図3参照)。
【0067】
(動力機構部22)
動力機構部22は、エンジン221、第1モーター222、第2モーター223、第3モーター224、バッテリー225、第1プーリー226、第2プーリー227、第3プーリー228、第4プーリー229、第1ベルト230、第2ベルト231、第1クラッチ232、及び、第2クラッチ233を有する(
図5~7参照)。なお、エンジン221の詳細な外観については記載を省略する。
【0068】
エンジン221は、フレーム201上部且つ機体前方側に配置され、リコイルスターター式のエンジン本体(符号省略)、動力を外部に伝導可能な回転軸(前述した第1軸)、接続された燃料タンク(図示省略)、及び、回転数測定機(図示省略)を有する(
図1~2参照)。燃料タンクは、燃料切れ検知部(図示省略)に接続されている。回転数測定機は、エンジンに接続され、その回転数を測定可能に接続されている。前述した回転軸は、ステー203に設けられた貫通孔(図示省略)を通過して機体後方側に突出し、同突出部分に第1プーリー226が設けられている。換言すると、第1プーリー226は、ステー203を挟んで機体後方側に設けられている(
図5~7参照)。
【0069】
第1モーター222は、ステー202を挟んでエンジン221の側方(機体幅方向)に配置され、動力を外部に伝導可能な回転軸(前述した第2軸)を有する。前述した回転軸は、ステー203に設けられた貫通孔(図示省略)を通過して機体後方側に突出し、同突出部分に第2プーリー226及び第3プーリー228が設けられている。換言すると、第2プーリー226及び第3プーリー228は、ステー203を挟んで機体後方側に設けられている(
図1、
図5~7参照)。
【0070】
第2モーター223は、ステー202の左側部に取り付けられており、第1モーター222及びバッテリー225の各々と接続され、給電される電力を以て駆動する。そして、第2モーター223は、その回転軸が起動輪212aの車軸として接続されている(
図3参照)。
【0071】
第3モーター224は、ステー202の右側部に取り付けられており、第1モーター222及びバッテリー225の各々と接続され、給電される電力を以て駆動する。そして、第3モーター224は、その回転軸が起動輪212bの車軸として接続されている(
図3参照)。
【0072】
バッテリー225は、機体後方に配置され、第1モーター222、第2モーター223、第3モーター224、信号送受信部24、及び、制御部25と電気的に接続され、各々へ給電可能に設けられている(
図3参照)。
【0073】
第1ベルト230は、第1プーリー226と第2プーリー227に掛け回され、第1プーリー226及び第2プーリー227間で動力伝達可能に設けられている。そして、第1ベルト230近傍には第1クラッチ232(前述した遮断部)が配置され、第1クラッチ232は、エンジン221から第1モーター222間の動力伝達を遮断可能に設けられている(
図5~7参照)。
【0074】
第2ベルト231は、第3プーリー228と後述する第4プーリー229に掛け回され、第3プーリー228及び第4プーリー229間で動力伝達可能に設けられている。そして、第2ベルト231近傍には第2クラッチ233が配置され、第2クラッチ233は、第1モーター222から作業部24間の動力伝達を遮断可能に設けられている(
図5~7参照)。
【0075】
(作業部24)
作業部24は、側方に配置された回転軸(前述した第3軸)と下方に配置された回転軸とを有するギヤボックス242、側方に配置された回転軸(前述した第3軸)に設けられた第4プーリー229、及び、草刈ナイフ部241を有する(
図5~7参照)。
【0076】
ギヤボックス242は、ケーシング内で、水平方向の回転軸先端に設けられたギヤと垂直方向の回転軸に設けられたギヤとが噛合し、動力伝達可能に設けられている。なお、ギヤとしては、例えば傘歯車等が挙げられるが、他の公知技術を除外するものではない。
【0077】
ギヤボックス242下方向きの回転軸は、フレーム201に設けられた貫通孔(図示省略)を通過して機体下方側に突出し、同突出部分先端に草刈ナイフ部241が取り付けられている。換言すると、草刈ナイフ部241は、フレーム201を挟んで機体下方側に設けられている(
図6参照)。
【0078】
草刈ナイフ部241は、カバー部243、基部244、刈刃245a及び245bを有する(
図4、
図6参照)。
【0079】
カバー部243は、上方から下方に向かって縮径する有底円筒形であり、フレーム201と基部243の間に配置されている。そして、カバー部243は、前述したギヤボックス242下方向きの回転軸を内包し、周方向に回転可能に設けられている(
図4、
図6参照)。
【0080】
基部243は、長円形板状であり、その長軸と短軸の交差点に、前述したギヤボックス242下方向きの回転軸が挿着されている。そして、基部243は、長軸と短軸の交差点近傍とカバー部243底部とが固定されており、カバー部243と共に回転可能に設けられている(
図4、
図6参照)。
【0081】
刈刃245a及び245bは、基部243の長軸延長線上となる縁部に着脱可能に取り付けられている。刈刃245aは、基部243の板面を挟んで上下一対の刃で構成されており、刈刃245bも同様である(
図4、
図6参照)。
【0082】
(信号送受信部25)
信号送受信部25は、カウル200により覆われたインナーボックス(符号省略)内に設けられている(
図3参照)。信号送受信部25は、制御部26と電気的に接続され、機体外(コントローラー3等)から受信した操作信号を制御部26に伝達可能に設けられていると共に、制御部26から伝達された信号(例えば、機体各部の状態)を機体外(コントローラー3等)に送信可能に設けられている。
【0083】
(制御部26)
制御部26は、信号送受信部25と同様にインナーボックス(符号省略)内に設けられ、信号送受信部25との送受信装置、演算装置、制御装置、入力装置、出力装置、主記憶装置、負荷判定部等により構成されている。負荷判定部は、前述した回転数測定機により測定されたエンジン221の回転数と予め設定された回転数データとを比較して、現在が高負荷状態であるか否かを判定する機能、及び、高負荷状態と判定した際に高負荷状態を通知する信号を制御装置に送信し、同信号を受信した同制御装置が第1モーター222の出力を向上させる機能、を有する(
図3参照)。
【0084】
本実施形態において、コントローラー3は、無線により遠隔操作する無線操作式を採用しているが、これに限定するものではなく、前述の通り、有線式であってもよいし、また、作業者や管理者が使用するスマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末あるいはパソコンで操作する態様であってもよい。
【0085】
本実施形態において、カウル200は、作業部24及び動力機構部23の一部を覆うものであるが、これに限定するものではなく、例えば、エンジンやモーター等の動力機構部の全部、信号送受信部、制御部等のフレーム上に配置された全ての構成要素を覆う態様等を除外するものではなく、各種変形が可能である。
【0086】
本実施形態において、フレーム201は、前述の形状及び構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、フレームの形状及び構造が相違するか、あるいは、各ステー、前後のスカート部のいずれか又は複数の部材を設けない態様を除外するものではない。
【0087】
本実施形態において、走行手段部21は履帯式走行構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、四輪又は六輪等の独立した走行輪を有する構造であってもよい。
【0088】
本実施形態において、動力機構部22は、動力伝達手段としてベルトを採用しているが、チェーンで代替することを除外するものではない。また、第2プーリー及び第3プーリーは別部品として説明しているが、これらは一体化した構造であっても良い。更にまた、起動輪212aは第2モーター223により、起動輪212bは第3モーター224により、それぞれ駆動する構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、プーリーや駆動シャフトを使用して各起動輪を駆動する態様であっても良い。この場合、バッテリーは、第1モーター、信号送受信部、及び、制御部と電気的に接続され、各々へ給電可能に設けた態様であっても良い。
【0089】
本実施形態において、作業部24は前述の構成であるが、これに限定するものではなく、適宜変更することもできる。例えば、ギヤボックス内における水平方向の回転軸と垂直方向の回転軸との動力伝達機構として、ウォームギアやベルト駆動等を採用することもできる。また、草刈ナイフ部は、カバー部を設けていない構造であるか、基部の形状が四角形である等相違、あるいは、配置された刈刃の数や位置、刈刃が上下方向に一対ではないという構造を採用することもできる。
【0090】
本実施形態において、信号送受信部25及び制御部26は前述の構成であるが、これに限定するものではなく、例えば、コントローラー3以外の機外の端末と送受信可能な送信機能を備えるものであってもよい。
【0091】
(草刈機1の作用及びこれを使用した草刈方法)
図1~
図9を参照して、草刈機1各部の作用効果と、草刈機1を使用した草刈方法について説明する。
【0092】
草刈機1において、フレーム201は、前述した構造であることにより、機体各部の取り付け基部となり、ステー202がエンジン221と第1モーター222の間を仕切り、機体始動後に生じうる両部品のいずれか一方又は双方の廃熱や放出物(例えばエンジンから漏れるオイル)等が他方に影響を与えることを抑制する。
【0093】
また、草刈機1において、ステー203は、第1プーリー226、第2プーリー227及び第3プーリー228や、第1ベルト230及び第2ベルト231、第1クラッチ232及び第2クラッチ233を取り付ける基部となって、動力機構部23の一部を構成する。加えて、ステー203は、同プーリー等の動力機構部23の一部を、エンジン221と第1モーター222の反対側に位置させて仕切り板となることで、カバー等を特に設けることなく、エンジン221等からの廃熱や放出物等によってプーリー等が影響を受けることを抑制する。
【0094】
<始動工程>
コントローラー3からの信号により草刈機1を始動する。より詳しくは、第1モーター222を始動させることにより第2プーリー227が回転し、第2プーリー227に掛け回された第1ベルト230を介して、第1プーリー226に動力が伝達される。第1プーリー226が設けられた回転軸はエンジンのクランクシャフトであり、これが回転することで(いわゆるエンジンの押し掛けのような態様となり)、エンジン221が始動する。
【0095】
つまり、セルスターター非搭載のエンジン221であっても搭載型と同様の始動工程を実施することができる。なお、バッテリー225が完全放電状態にあるときは、エンジン221のリコイルスターターを引いて始動させることもできる。
【0096】
<発電及び蓄電工程>
エンジン221が始動した草刈機1では、通常運転中は、エンジン221の動力を以て第1プーリー226が回動し、第1プーリー226に掛け回された第1ベルト230を介して第2プーリーが回動し、第1モーター222が駆動する。つまり、通常運転中の草刈機1では、エンジン221の動力を以て第1モーター222が駆動して発電が常時行われ、発電された電力がバッテリー225に蓄電する。
【0097】
バッテリー225に蓄電された電力は、第1モーター222、第2モーター223、第3モーター224、第1クラッチ232及び第2クラッチ233を動かすクラッチ用モーター(図示省略)、燃料切れ検知部(図示省略)、信号送受信部25、制御部26等、各部に供給され、次回のエンジン始動、機体運転の動力源となる。
【0098】
<移動工程>
始動した草刈機1は、コントローラー3からの信号(すなわち機外からの信号)を信号送受信部25で受信して制御部26に伝達し、制御部26の制御によって動力機構部22及び走行手段部21を駆動させ、機体を草木が繁茂した作業対象地等の所定位置に移動させることができる。
【0099】
草刈機1は、前述した構造のカウル200を有することにより、移動、待機、作業あるいは保管の際に、雨又は泥土を被ったり、刈り取った草木やその破片等の塵芥を巻き込んだりする等の故障原因から、作業部24及び動力機構部23を保護することができる。
【0100】
走行手段部21は、走行構造部21a、21bが前述した履帯式走行構造であることにより、悪路や不整地での走行性が良く、更に傾斜地における作業中の安定性も良い。加えて、起動輪212a、212bの動力がモーター(第2モーター223及び第3モーター224)であることにより、複雑な機械的構造が不要となり、機体を比較的簡易な構造にすることができる。
【0101】
そして、走行手段部21は、方向転換の際に第2モーター223と第3モーター224を単純に逆に回転させて各履帯213を逆向きに動かすだけで、その場で素早く旋回させることができるので、小回りが効いて操作性も良い。
【0102】
移動中又は作業中に、燃料切れ検知部(図示省略)は、燃料切れ間近であるか又は燃料切れによるエンジン停止状態を検知した際には、信号送受信部25を介し機外へ検知情報を送信し(燃料切れ通知機能)、これにより操縦者は直接的又は間接的に草刈機1の状態を知ることができる。そして、燃料切れ通知後でエンジン221停止の前後に、自動で第1クラッチ232が起動するか、又は、コントローラー3等の機外からの信号に基づき第1クラッチ232を起動させる(
図6参照。なお、ここで「第1クラッチ232を起動」とは、第1クラッチを遮断方向に起動させて動力伝達を遮断する意味で使用している)。
【0103】
そして、燃料切れの際には、第1クラッチ232によってエンジン221と第1モーター222との間の動力の伝達が遮断され、バッテリー25からの電力を使用した第1モーター221、第2モーター223及び第3モーター224の動力で、走行手段部21を駆動させることができる。
【0104】
これにより、操縦者から離れた場所で燃料切れによりエンジン221が停止した場合であっても、バッテリー25に蓄積された電力を以て機体を走行させる運転に切り替えることができ、機体の回収に行く労力を要せずに、操縦者のところまで草刈機1を帰還させることができる。
【0105】
加えて、燃料切れによってエンジン221が停止した際に第1クラッチ232を起動させることで、エンジンの回転軸(前述した第1軸)に伝達される動力によって燃料切れのエンジン221を強制的に動かすことに起因する内部機構の破損や、同回転軸及び第1プーリー226の破損を抑制することもできる。
【0106】
<草刈工程>
草刈機1は、これを作業対象地に走行させると、前述した構造のスカート部204が、刈取対象物W1を略同一方向(機体進行方向側)へ折り曲げるようにして押し倒すことができる。このとき、刈取対象物W1は、スカート部204先端部分と地面との間の隙間に起因して、根元近傍の揃った高さで折れ曲がることになる。これにより、次に行われる草刈ナイフ部241による刈取対象物W1の切断において、刈取対象物W1の倒伏方向と刈取高さとが略一致し、作業対象地における平面方向における刈取ムラが生じにくく、且つ、高さ方向における刈取後対象物W2の不揃いが生じにくく(換言すると刈取後対象物W2の刈高が揃い易く)なっており、作業効率を高め、作業後の作業対象地の美観向上に寄与するものとなっている(
図8を参照)。
【0107】
加えて、前述した構造のスカート部205は、作業対象地において草刈機1を後進あるいは切り返し走行させた際に、スカート部204と同様の作用効果を奏し、刈取対象物W1の刈取ムラや、刈取後対象物W2の刈高の不揃いが生じにくくし、作業効率を高め、作業後の作業対象地の美観向上に寄与する(
図9参照)。
【0108】
草刈機1は、機体下方において回転する草刈ナイフ部241を以て草刈作業を行う。草刈ナイフ部241は、エンジン221の動力が、第3プーリー228、第2ベルト231、第4プーリー229及びギヤボックス242を介して伝達され、カバー部243及び基部244が回転する。これにより、基部244に設けられた刈刃245a、245bが、刈取対象物W1を刈り取る。
【0109】
なお、草刈機1が作業対象地に向かうまでの移動時には、第2クラッチ233を遮断方向に起動させて草刈ナイフ部241が空転させないようにする。そして、草刈機1が作業対象地に近づくか到達した際に、第2クラッチ233を接続方向に起動させて動力伝達可能(クラッチを繋いだ)状態にし、草刈ナイフ部241を回転させる。
【0110】
草刈ナイフ部241は、その回転時において、周方向に回転可能なカバー部243と、その底部に固定された基部243を有する構造であることにより、切断前後の刈取対象物W1が基部243を回転させる回転軸に巻着して絡むことが抑制される。
【0111】
また、草刈機1は、回転数測定機及びこれと協働する負荷判定部によって、測定されたエンジン221の回転数と予め設定された回転数データとを比較し、現在が高負荷状態であるか否かを判定する。そして、刈取対象物W1の量が多い等の理由に起因する過負荷状態になると、高負荷状態と判定し、高負荷状態を通知する信号を制御部26の制御装置に送信し、同信号を受信した制御装置が第1モーター222の出力を向上させる(換言すると第1モーターによる動力アシストがなされる)。
【0112】
つまり、過負荷状態であるか否かについて、離れた場所で作業する草刈機1に近づいて確認する必要が無く、遠隔操作における機体の作業性及び利便性が良い。なお、作業部24である草刈ナイフ部241で噛み混んだ刈取対象物W1に起因して動力機構部22が急停止した場合であっても、プーリーとベルトの組み合わせによるものであるため衝撃を吸収でき、故障が生じる可能性が低減している。
【0113】
なお、草刈機1は、燃料切れによるエンジン停止状態であっても、草刈機1が帰還可能な程度にバッテリーの電力残量があれば、エンジン221と第1モーター222間の動力伝達を第1クラッチ232で遮断すると共に、第1モーター222とギヤボックス242間の動力伝達は接続させることで、ある程度の草刈作業を続行した上で、草刈機1を帰還させることもできる。
【0114】
このように、草刈機1の作用及びこれを使用した草刈方法によれば、前述した構成に基づく作用効果を奏し、比較的簡易な構造でありながら、遠隔操作で好適に使用可能なものとなっている。
【0115】
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。また、第一、第二等の言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0116】
1 草刈装置
2 草刈機
200 カウル
201 フレーム
202 ステー
203 ステー
204 スカート部
205 スカート部
21 走行手段部
21a、21b 走行構造部
211 転輪
212a、212b 起動輪
213 履帯
22 動力機構部
221 エンジン
222 第1モーター
223 第2モーター
224 第3モーター
225 バッテリー
226 第1プーリー
227 第2プーリー
228 第3プーリー
229 第4プーリー
230 第1ベルト
231 第2ベルト
232 第1クラッチ
233 第2クラッチ
24 作業部
241 草刈ナイフ部
242 ギヤボックス
243 カバー部
244 基部
245a、245b 刈刃
25 信号送受信部
26 制御部
3 コントローラー
W1 刈取対象物
W2 刈取後対象物