IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大平電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-単相3線式インバータ 図1
  • 特開-単相3線式インバータ 図2
  • 特開-単相3線式インバータ 図3
  • 特開-単相3線式インバータ 図4
  • 特開-単相3線式インバータ 図5
  • 特開-単相3線式インバータ 図6
  • 特開-単相3線式インバータ 図7
  • 特開-単相3線式インバータ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120754
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】単相3線式インバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220810BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021056196
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】592091057
【氏名又は名称】大平電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守男
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770BA11
5H770BA20
5H770CA06
5H770DA02
5H770DA22
5H770DA41
5H770EA01
(57)【要約】
【課題】単相3線式インバータの効率を改善する。
【解決手段】第1ないし第6のMOSFETを持つ単相3線式インバータにおいて、第5と第6のMOSFETのゲートに50%未満のデューティ比で、かつ180°の位相差で発生させたスイッチングパルスを各々加え、それら2つのスイッチングパルスとスイッチングパルスに同期して立ち上がる2つのPWMパルスとの間で互いに立ち上がりの異なるパルス同士をORロジックで合成し、OR合成された2つのパルスを商用交流の正と負の期間の2つの商用パルスとの間でAND合成し、AND合成された4つのパルスを第1ないし第4のMOSFETのゲートに加えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と前記直流電源に並列に接続された第1のMOSFETと第2のMOSFETからなる直列回路と前記直流電源に並列に接続された第3のMOSFETと第4のMOSFETからなる直列回路と前記直流電源に並列に接続された第5のMOSFETと第6のMOSFETからなる直列回路とその中点が前記第5のMOSFETと前記第6のMOSFETの中点に接続された第1の負荷と第2の負荷の直列回路と前記第1のMOSFETと前記第2のMOSFETの中点と前記第1の負荷の前記第2の負荷が接続されている端子と反対側の端子との間に挿入された第1のリアクトルと前記第3のMOSFETと前記第4のMOSFETの中点と前記第2の負荷の前記第1の負荷が接続されている端子と反対側の端子との間に挿入された第2のリアクトルと前記第1の負荷に並列に接続された第1のコンデンサと前記第2の負荷に並列に接続された第2のコンデンサと50%未満のデューティ比のスイッチングパルスを発生する第1の発振器と前記第1の発振器のスイッチングパルスに対して180°の位相差を有する前記第1の発振器と同じデューティ比のスイッチングパルスを発生する第2の発振器と前記第1の発振器のスイッチングパルスに同期して立ち上がる第1のPWM発振器と前記第2の発振器のスイッチングパルスに同期して立ち上がる第2のPWM発振器と商用交流の正の期間に相当するパルスを発生する第1の商用パルス発振器と前記商用交流の負の期間に相当するパルスを発生する第2の商用パルス発振器と前記第2の発振器の出力と前記第1のPWM発振器の出力をその入力端子に加えた第1のORロジックと前記第1の発振器の出力と前記第2のPWM発振器をその入力端子に加えた第2のORロジックと前記第1のORロジックの出力と前記第1の商用パルス発振器の出力をその入力端子に加えた第1のANDロジックと前記第2のORロジックの出力と前記第2の商用パルス発振器の出力をその入力端子に加えた第2のANDロジックと前記第1のORロジックの出力と前記第2の商用パルス発振器の出力をその入力端子に加えた第3のANDロジックと前記第2のORロジックの出力と前記第1の商用パルス発振器の出力をその入力端子に加えた第4のANDロジックとを備え、前記第1の発振器の出力を前記第6のMOSFETのゲートに加え、前記第2の発振器の出力を前記第5のMOSFETのゲートに加え、前記第1のANDロジックの出力を前記第1のMOSFETのゲートに加え、前記第2のANDロジックの出力を前記第2のMOSFETのゲートに加え、前記第3のANDロジックの出力を前記第3のMOSFETのゲートに加え、前記第4のANDロジックの出力を前記第4のMOSFETのゲートに加え、これによって前記第1の負荷と前記第2の負荷に単相3線式商用電力を供給することを特徴とする単相3線式インバータ。
【請求項2】
前記第1ないし第2の発振器と前記第1ないし第2のPWM発振器と前記第1ないし第2の商用パルス発振器と前記第1ないし第2のORロジックと前記第1ないし第4のANDロジックによって作られる信号をマイクロプロセッサのディジタル処理によって作り、それらを第1ないし第6のMOSFETのゲートに加えた請求項1記載の単相3線式インバータ。
【請求項3】
前記第1ないし第6のMOSFETをIGBTと逆並列ダイオードの組み合わせに置き換えた請求項1ないし2記載の単相3線式インバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換するインバータに関し、特に単相3線式インバータに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン車に代って電気自動車の割合が増してくるが、電気自動車のバッテリ電力を商用交流に変換して家庭で使うという商品も市販されるようになっている。しかし、現在のところ市販価格は高い。
【0003】
現在市販されている電気自動車のバッテリ電力を商用交流に変換する商品はV2Hと呼ばれているが、その製造コストが高い原因の1つに商用トランスを用いていることをあげることができる。
【0004】
商用トランスを用いる理由は単相3線方式と呼ばれる国内の規格の商用交流を従来の単相2線式交流インバータを用いて容易に作ることができるからである。この方法は公知であるが、その回路例を図7に示す。
【0005】
商用トランスを用いる方法以外にバランサ回路と呼ばれるスイッチング回路を付けて、従来の交流インバータを用いる方法が提供されている。
【0006】
商用トランスやバランサ回路を用いず、従来の単相2線式交流インバータに中性相を作るスイッチング回路を追加する方法が提供されている。
【0007】
特許文献1には、バランサ回路を用いた単相3線式インバータが開示されている。
【0008】
特許文献2には中性相を作るスイッチング回路を追加した単相3線式インバータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-79133
【特許文献2】特開平7-163153
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7に示した商用トランスを用いる方式は商用トランス自体が高価な上に、重量物であるため組立てのコストがかかる。
【0011】
特許文献1に記載されたバランサ回路を追加する方式は、2つのコンデンサで分割された電圧を安定させるために、容量の大きいコンデンサが使われ、交流出力をオフした後も中性線にコンデンサの電圧がしばらく現れるという安全上の問題がある。
【0012】
特許文献2に記載された中性相を作るスイッチング回路を追加した方式は、その請求項1に「前記中性相を除いた(中略)残り2つの相の前記電流指令を互いに180°の位相差を持つ正弦波の前記電流指令を与える」と明記されており、また、その請求項3に「前記中性相を除いた残り2つの相の前記PWM制御器へ入力される互いに180°の位相差を持つ正弦波の電圧信号を電圧指令信号発生器で発生させる」と明記されている。
【0013】
特許文献2の図2の回路において、中性相を構成する2つのMOSFETのゲートに電圧指令ゼロとなる電圧信号を送り、残り2つの出力相を構成する4つのMOSFETのゲートに180°の位相差の正弦波の電圧信号を送り、これによって負荷18と負荷19に交流電圧を供給すると解釈される。
【0014】
特許文献2の図3には中性相と残り2つの相の出力電圧の波形が示されているが、残り2つの相の出力はいずれも中性相に加える電圧信号のパルス幅を越えていない。すなわち、残りの2つの相のハイサイドまたはローサイドの各々のMOSFETのゲートに中性相のMOSFETのゲートに加えるパルスのパルス幅を超えるパルスを加えることができない。そのため、図8に示したようなスイッチングの休止期間が生じ、残り2つの相のMOSFETの利用効率が低くなり高効率を得ることが難しい。
【0015】
以上のことから本発明の目的は、単相3線式に対応した安価で、安全で高効率の単相3線式インバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上の目的を達成するために、請求項1記載の発明は直流電源と直流電源に並列接続された第1のMOSFETと第2のMOSFETからなる直列回路と、直流電源に並列接続された第3のMOSFETと第4のMOSFETからなる直列回路と、直流電源に並列接続された第5のMOSFETと第6のMOSFETからなる直列回路と、その中点が第5のMOSFETと第6のMOSFETの中点に接続された第1の負荷と第2の負荷の直列回路と、第1のMOSFETと第2のMOSFETの中点と第1の負荷の第2の負荷が接続されている端子と反対側の端子との間に挿入された第1のリアクトルと、第3のMOSFETと第4のMOSFETの中点と第2の負荷の第1の負荷が接続されている端子と反対側の端子との間に挿入された第2のリアクトルと、第1の負荷に並列に接続された第1のコンデンサと、第2の負荷に並列に接続された第2のコンデンサと、50%未満のデューティ比のスイッチングパルスを発生する第1の発振器と、第1の発振器のスイッチングパルスに対して180°の位相差を有する第1の発振器と同じデューティ比のスイッチングパルスを発生する第2の発振器と、第1の発振器のスイッチングパルスに同期して立ち上がる第1のPWM発振器と、第2の発振器のスイッチングパルスに同期して立ち上がる第2のPWM発振器と、商用交流の正の期間に相当するパルスを発生する第1の商用パルス発振器と、商用交流の負の期間に相当するパルスを発生する第2の商用パルス発振器と、第2の発振器の出力と第1のPWM発振器の出力をその入力端子に加えた第1のORロジックと、第1の発振器と第2のPWM発振器の出力をその入力端子に加えた第2のORロジックと、第1のORロジックの出力と第1の商用パルス発振器の出力をその入力端子に加えた第1のANDロジックと、第2のORロジックの出力と第2の商用パルス発振器の出力をその入力端子に加えた第2のANDロジックと、第1のORロジックと第2の商用パルス発振器の出力をその入力端子に加えた第3のANDロジックと、第2のORロジックと第1の商用パルス発振器の出力をその入力端子に加えた第4のANDロジックを備え、第1の発振器の出力を第6のMOSFETのゲートに加え、第2の発振器の出力を第5のMOSFETのゲートに加え、第1のANDロジックの出力を第1のMOSFETのゲートに加え、第2のANDロジックの出力を第2のMOSFETのゲートに加え、第3のANDロジックの出力を第3のMOSFETのゲートに加え、第4のANDロジックの出力を第4のMOSFETのゲートに加えた。
【0017】
請求項2記載の発明は、第1ないし第2の発振器と第1ないし第2のPWM発振器と第1ないし第2の商用パルス発振器と第1ないし第2のORロジックと第1ないし第4のANDロジックによって作られる信号をマイクロプロセッサのディジタル処理によって作り、それらを第1ないし第6のMOSFETのゲートに加えた。
【0018】
請求項3記載の発明は、第1ないし第6のMOSFETをIGBTと逆並列ダイオードの組合せに置き換えた。
【発明の効果】
【0019】
本発明によればシンプルで高効率で安価な単相3線式に対応したインバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】請求項1記載の発明の実施例を示す回路図である。
図2図1のMOSFETのオン状態を示すシーケンス図である。
図3図2の各期間における回路の状態を示す図である。
図4図3の各状態の電流波形を示す図である。
図5】請求項2記載の発明のマイクロプロセッサの接続例を示す回路図である。
図6】請求項3記載の発明の実施例を示す回路図である。
図7】従来方式の1例を示す回路図である。
図8】従来方式の電流波形の1例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【実施例
図1は請求項1発明の実施例を示す回路図である。
図において、14と15はそれぞれ第1と第2の発振器であり、16と17はそれぞれ第1と第2のPWM発振器であり、18と19はそれぞれ第1と第2の商用パルス発振器であり、20と21はそれぞれ第1と第2のORロジックであり、22ないし25はそれぞれ第1ないし第4のANDロジックである。1ないし6はそれぞれ第1ないし第6のMOSFETである。
図の回路を日本国内の単相3線式に応用する場合は、第1の負荷8と第2の負荷9には各々50Hzまたは60Hzの100Vが供給される。また、直流電源7には340~400Vの電圧が選ばれることが多い。第1ないし第6のMOSFETのゲートには図2に示したパルスが加えられる。
【0022】
交流周波数が50Hzの場合は、10msec毎に正負が切替る。交流電圧は10msecの間に0からスタートして、最高141Vまで上がり、再び0まで戻るのでPWMパルスの周期を25usecの周期にすれば、10msecの間に400ケのパルスを出力することになるが、交流電圧に比例した幅のパルスは0からスタートしてだんだん長くなり途中最長パルス幅になった後は再びだんだん短くなって0に戻る。
【0023】
図2には縦軸にMOSFETの符号を、横軸に交流の正と負と、パルスの順番の奇数番目と偶数番目を示した。1組の奇数と偶数でスイッチングの周期になる。パルスの中に記したアルファベットについてはAが第1の発振器の出力をBが第2の発振器の出力をCが第1のPWM発振器の出力をDが第2のPWM発振器の出力をそれぞれ表している。第1と第4のMOSFETのゲートには第1の商用パルス発振器の出力が第1と第4のANDロジックを介して加えられる。第2と第3のMOSFETのゲートには第2の商用パルス発振器の出力が第2と第3のANDロジックを介して加えられる。
【0024】
図において、第1のMOSFET1のゲートにはBとCがほぼ連続して加わる。第4のMOSFET4のゲートにはAとDがほぼ連続して加わる。いずれも中性相を構成する第5のMOSFET5と第6のMOSFET6に加わるパルス幅より長く、従来例と異なる。
【0025】
図2のCの周期をI、Aの周期からCの周期を除いた期間をII、Dの周期をIII、Bの周期からDの周期を除いた期間をIVとおくと、I~IVの期間のMOSFETの状態は図3の(1)~(4)で表わすことができる。図3はMOSFETのオン状態がわかるようにスイッチで表現したが、オフ状態でも逆方向は寄生ダイオードを通って流れる。図3において、矢印付きの実線は励磁電流を表し、矢印付きの点線は励磁エネルギの放出電流を表している。
【0026】
図3の(1)~(4)の矢印で示した電流は、いずれもリアクトル10かリアクトル11を流れているが、その電流は図4に示した波形で表わすことができる。リアクトル10を流れる電流は期間Iでは励磁電流であり、期間II~IVでは放出電流である。図8に示した従来例の電流波形に見られる休止期間は存在しない。
【0027】
図3において、MOSFET5と6に流れる電流はリアクトル10または11の励磁電流と放出電流が、または放出電流同士が互いに逆方向になるのでMOSFETのオン抵抗による損失を打消し合って効率が改善される。この点も従来例に比べて優れている。
【0028】
図5は請求項2記載の発明の実施例を示す回路図である。
図において、31はマイクロプロセッサを示しており、中に書かれているB0、B1、C0、C1、P0、P1は出力パルスを作る信号であり、C0とC1は第5と第6のMOSFETをそれぞれ50%未満のデューティで交互にオンオフする信号、B0とB1はそれぞれC0とC1の立ち上がりに同期して立ち上がるPWM信号、P0とP1は商用交流の正と負の周期の信号である。図の中に使われている記号の「|」はORを「&」はANDを表している。
図5において、(C0|B1)と(C1|B0)の信号を、C0、C1、B0、B1の4種類の信号から合成して作るのではなく、それらのパルス幅に応じたパルスとして直接発生させても良い。
【0029】
図6は請求項3記載の発明の実施例を示す回路図である。
図において、符号41~46はIGBTを表しており、符号51~56は逆並列に接続されたダイオードを表している。
【符号の説明】
【0030】
1、2、3、4、5、6 MOSFET
7 直流電源
8、9 負荷
10、11 リアクトル
12、13 コンデンサ
14、15 スイッチングパルス発振器
16、17 PWMパルス発振器
18、19 商用パルス発振器
20、21 ORロジック
22、23、24、25 ANDロジック
31 マイクロプロセッサ
41、42、43、44、45、46 IGBT
51、52,53,54,55,56 ダイオード
101、102,103,104,105,106 MOSFET
107 直流電源
108、109 負荷
110、111 リアクトル
112 コンデンサ
113 商用トランス
114 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8