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特開2022-120759印刷装置及びインクジェットによる印刷方法
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  • 特開-印刷装置及びインクジェットによる印刷方法 図1
  • 特開-印刷装置及びインクジェットによる印刷方法 図2
  • 特開-印刷装置及びインクジェットによる印刷方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120759
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】印刷装置及びインクジェットによる印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220810BHJP
   F26B 13/14 20060101ALI20220810BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
F26B13/14
F26B25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075480
(22)【出願日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2021017762
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150348
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】東 広樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】桑原 正人
【テーマコード(参考)】
2C056
3L113
【Fターム(参考)】
2C056EB30
2C056EC14
2C056EC29
2C056HA28
2C056HA29
2C056HA41
2C056HA44
2C056HA46
3L113AA02
3L113AB01
3L113AB06
3L113AC08
3L113AC10
3L113BA30
3L113CA04
3L113CB05
3L113CB06
3L113DA24
(57)【要約】
【課題】上流側インクジェットヘッドによって付着したインクを十分に乾燥させながらも下流側インクジェットヘッドの結露を防ぐことにより、印刷品質のよい印刷を行えるようにする。
【解決手段】上流側のインクジェットヘッド5a,5bと下流側のインクジェットヘッド5c,5dとの間に、上流側のインクジェットヘッド5a,5bによって表面に印刷された印刷用紙Pをその裏面側から加熱して乾燥させる加熱プレート11を設け、加熱プレート11と下流側のインクジェットヘッド5c,5dとの間に加熱プレート11で加熱された印刷用紙Pをその裏面側から冷却する冷却プレート16を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物を巻き出す巻出し部と、
上記巻出し部から巻き出された上記被印刷物を巻き取る巻取り部と、
上記巻出し部から巻き出されてきた上記被印刷物の表面側に印刷する複数のインクジェットヘッドと、
上流側のインクジェットヘッドと下流側のインクジェットヘッドとの間に設けられ、上流側のインクジェットヘッドによって表面に印刷された被印刷物を該被印刷物の裏面側から加熱して乾燥させる加熱部と、
上記加熱部と下流側のインクジェットヘッドとの間に設けられ、上記加熱部で加熱された被印刷物を該被印刷物の裏面側から冷却する冷却部とを備えている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
上記加熱部と上記冷却部との間に設けられた第1温度センサと、
上記冷却部の後方に設けられた第2温度センサと、
上記第1温度センサ及び上記第2温度センサの検出温度に基づいて上記加熱部及び上記冷却部の温度をそれぞれ調整する制御装置とを備えている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置において、
上記加熱部は、上記被印刷物の裏面側に接しながら該被印刷物を加熱する加熱プレートよりなり、
上記冷却部は、上記被印刷物の裏面側に接しながら該被印刷物を冷却する冷却プレートよりなる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の印刷装置において、
上記加熱部と上記冷却部との間に、両者間の影響を抑制する影響抑制部を備えている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置において、
上記影響抑制部が、上記加熱部と上記冷却部との間に気流を作るための送風装置、または吸引装置である印刷装置。
【請求項6】
請求項4に記載の印刷装置において、
上記影響抑制部が、上記加熱部と上記冷却部との間を遮断する隔壁である印刷装置。
【請求項7】
被印刷物を巻き出す巻出し工程と、
上記巻出し工程で巻き出されてきた上記被印刷物の表面側に上流側のインクジェットヘッドによって印刷する上流側印刷工程と、
上記上流側のインクジェットヘッドによって表面に印刷された被印刷物を加熱部によって該被印刷物の裏面側から加熱する加熱工程と、
上記加熱工程の直後に、加熱された被印刷物を冷却部によって冷却する冷却工程と、
上記冷却工程の後に、下流側のインクジェットヘッドによって上記被印刷物を印刷する下流側印刷工程と、
上記下流側印刷工程を経た上記被印刷物を巻き取る巻取り工程とを含む
ことを特徴とするインクジェットによる印刷方法。
【請求項8】
請求項6に記載のインクジェットによる印刷方法において、
上記加熱工程において加熱された上記被印刷物の温度を測る第1測定工程と、
上記冷却工程において冷却された上記被印刷物の温度を測る第2測定工程と、
上記第1測定工程及び上記第2測定工程で得られた温度から、上記加熱部及び上記冷却部の温度をそれぞれ調整する温度調整工程とを含む
ことを特徴とするインクジェットによる印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の印刷装置及び印刷方法に関し、特に印刷及び乾燥を並行して行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被印刷物を巻き出す巻出し部と、この巻出し部から巻き出された被印刷物を巻き取る巻取り部と、巻出し部から巻き出されてきた被印刷物の表面側に印刷する複数のインクジェットヘッドとを備え、複数のインクジェットヘッドを2グループに分けて、両者間で被印刷物を加熱する印刷装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1のように、被付着物に付着した第1の液体を乾燥させる第1の乾燥装置と、この第1の乾燥装置が第1の液体を乾燥させた後に被付着物に付着した、導電体を含有する第2の液体を乾燥させる第2の乾燥装置とを備え、第1の乾燥装置は、誘電加熱装置である乾燥システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6657946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような乾燥システムでは、第1の乾燥装置によって被付着物が加熱されると、第2の液体を噴射するインクジェットヘッドと被付着物との間に温度差が開き、被付着物に付着する第1の液体や空気中の水分によって、第2の液体を噴射するインクジェットヘッドが結露するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上流側インクジェットヘッドによって付着したインクを十分に乾燥させながらも下流側インクジェットヘッドの結露を防ぐことにより、印刷品質のよい印刷を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、被印刷物を加熱した後すぐに強制的に冷却して下流側インクジェットヘッドにおける結露を防ぐようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、
被印刷物を巻き出す巻出し部と、
上記巻出し部から巻き出された上記被印刷物を巻き取る巻取り部と、
上記巻出し部から巻き出されてきた上記被印刷物の表面側に印刷する複数のインクジェットヘッドと、
上流側のインクジェットヘッドと下流側のインクジェットヘッドとの間に設けられ、上流側のインクジェットヘッドによって表面に印刷された被印刷物を該被印刷物の裏面側から加熱して乾燥させる加熱部と、
上記加熱部と下流側のインクジェットヘッドとの間に設けられ、上記加熱部で加熱された被印刷物を該被印刷物の裏面側から冷却する冷却部とを備えている。
【0009】
上記の構成によると、加熱部で上流側のインクジェットヘッドによるインクが加熱されて蒸発した後、冷却部ですぐに冷やされるので、下流側インクジェットヘッドとの間の温度差が低減され、下流側インクジェットヘッドが結露しない。また、強制的に被印刷物を冷やしているので、加熱された被印刷物を冷やすために長い搬送距離を確保する必要がない。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記加熱部と上記冷却部との間に設けられた第1温度センサと、
上記冷却部の後方に設けられた第2温度センサと、
上記第1温度センサ及び上記第2温度センサの検出温度に基づいて上記加熱部及び上記冷却部の温度をそれぞれ調整する制御装置とを備えている。
【0011】
上記の構成によると、第1温度センサによって加熱部による加熱の程度を検知でき、第2温度センサによって冷却部による冷却の程度を検知できるので、リアルタイムに最適な温度調整を行うことができ、それにより、下流側インクジェットヘッドの結露がより確実に防止される。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記加熱部は、上記被印刷物の裏面側に接しながら該被印刷物を加熱する加熱プレートよりなり、
上記冷却部は、上記被印刷物の裏面側に接しながら該被印刷物を冷却する冷却プレートよりなる。
【0013】
上記の構成によると、加熱プレートが被印刷物の裏面に当接しながら被印刷物を効率よく加熱できる。また、冷却プレートが被印刷物の裏面に当接しながら被印刷物を効率よく冷却できる。さらに、接触式プレートであるため、温風及び冷風のように互いに干渉して悪影響を与えることは発生しにくい。
【0014】
第4の発明では、上記加熱部と上記冷却部との間に、両者間の影響を抑制する影響抑制部を備えていることを特徴とする印刷装置よりなる。
【0015】
上記の構成によると、上記加熱部と上記冷却部との間の影響を抑制できるため、例えば、加熱部が冷却部に悪影響を与えたり、冷却部が加熱部に悪影響を与えたりすることを抑制できる。
【0016】
第5の発明では、上記影響抑制部が、上記加熱部と上記冷却部に気流を作るための送風、または吸引装置である印刷装置よりなる。
【0017】
上記の構成によると、上記加熱部と上記冷却部との間に気流を作ることにより、両者間の影響を抑制することが容易である。
【0018】
第6の発明では、上記影響抑制部が、上記加熱部と上記冷却部との間を遮断する隔壁である印刷装置よりなる。
【0019】
上記構成によると、上記加熱部と上記冷却部との間の影響を物理的に隔壁で遮断できるため、両者間の影響を抑制することが容易である。
【0020】
第7の発明では、
被印刷物を巻き出す巻出し工程と、
上記巻出し部から巻き出されてきた上記被印刷物の表面側に上流側のインクジェットヘッドによって印刷する上流側印刷工程と、
上記上流側のインクジェットヘッドによって表面に印刷された被印刷物を加熱部によって該被印刷物の裏面側から加熱する加熱工程と、
上記加熱工程の直後に、加熱された被印刷物を冷却部によって冷却する冷却工程と、
上記冷却工程の後に、下流側のインクジェットヘッドによって上記被印刷物を印刷する下流側印刷工程と、
上記下流側印刷工程を経た上記被印刷物を巻き取る巻取り工程とを含む構成とする。
【0021】
上記の構成によると、加熱部で上流側のインクジェットヘッドによるインクが加熱されて蒸発した後、冷却部ですぐに冷やされるので、下流側インクジェットヘッドとの間の温度差が低減され、下流側インクジェットヘッドが結露しない。また、強制的に被印刷物を冷やしているので、加熱された被印刷物を冷やすために長い搬送距離を確保する必要がない。
【0022】
第8の発明では、第7の発明において、
上記加熱工程において加熱された上記被印刷物の温度を測る第1測定工程と、
上記冷却工程において冷却された上記被印刷物の温度を測る第2測定工程と、
上記第1測定工程及び上記第2測定工程で得られた温度から、上記加熱部及び上記冷却部の温度をそれぞれ調整する温度調整工程とを含む。
【0023】
上記の構成によると、第1測定工程によって加熱部による加熱の程度を検知でき、第2測定工程によって冷却部による冷却の程度を検知できるので、リアルタイムに最適な温度調整を行うことができ、それにより、下流側インクジェットヘッドの結露がより確実に防止される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、上流側インクジェットヘッドによって付着したインクを十分に乾燥させながらも下流側インクジェットヘッドの結露を防ぐことにより、印刷品質のよい印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の概略を示す正面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置の概略を示す正面図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る印刷装置の概略を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施形態]
以下、本発明を適応した第1の実施形態を図1に基づいて説明する。
【0027】
図1は本発明の実施形態のインクジェット方式の印刷装置1を示し、この印刷装置1は、被印刷物としての印刷用紙Pを巻き出す巻出し部2を備えている。この巻き出し部2は、印刷用紙Pのロールを回転可能に支持するように構成されている。印刷用紙Pは、例えば紙素材よりなるが、被印刷物としてインクで印刷可能な各種フィルムを用いてもよい。
【0028】
また、印刷装置1は、巻出し部2から巻き出された印刷用紙Pを巻き取る巻取り部3を最下流側に備えている。巻出し部2は、印刷されていない紙のロールを回転可能に取付できるようになっている。巻取り部3は、例えば、図示しない電動モータ等よりなる駆動装置によって、例えば、印刷用紙が10~100m/minの搬送速度となるように駆動される。図1では、簡略化して図示しているが、実際には、巻き出し部2から巻き出された印刷用紙Pは、適宜設けられた複数のガイドローラにガイドされながら、巻取り部3に巻き取られるようになっている。巻取り部3に巻き取られた印刷用紙は、一巻きのロールとして取り出される。
【0029】
図1では省略しているが、巻き出し部2から巻き出された印刷用紙Pは、公知のコロナ処理装置によってコロナ処理されていてもよい。
【0030】
また、コロナ処理された印刷用紙Pは、図示しないプレヒート部において、プレヒート処理が行われるようにしてもよい。
【0031】
そして、印刷用紙Pは、図示しないガイドローラにガイドされ、インクジェット方式の、最も上流側のインクジェットヘッド5a,5bと、下流側のインクジェットヘッド5c,5dによって印刷されるようになっている。インクジェットヘッドの個数や配置は特に限定されない。本実施形態では、4色のインクジェットヘッドが2つずつ配置されているが、上流側と下流側とで、1つと3つ又は3つと1つに分かれて配置されてもよいし、5つ以上のインクジェットヘッドを上流側と下流側とで適宜分割してもよい。
【0032】
印刷装置1は、上流側のインクジェットヘッド5a,5bで表面側に印刷された印刷用紙Pを加熱するインクジェット間乾燥部10によって加熱されるようになっている。
【0033】
インクジェット間乾燥部10は、印刷用紙Pの裏面側に接触して加熱する加熱部としての加熱プレート11を備えている。加熱プレート11は、例えば、内部にウォータージャケットを備えた金属プレートよりなり、温調機12で加熱された水、オイル等よりなる熱媒体が循環するようになっている。この熱媒体により、加熱プレート11自体は、約30~100℃に加熱可能に構成されている。
【0034】
なお、加熱部は、電熱線を含むヒータ加熱、電磁波による加熱、2.5~4μm程度の中赤外線(MIR)の赤外線加熱等他の加熱方式でもよい。
【0035】
インクジェット間乾燥部10は、さらに印刷用紙Pを上方から乾燥させる乾燥機14を備えていてもよい。乾燥機14は、熱風乾燥などで方式は特に限定されないが、加熱プレート11による乾燥を補助するものであり、例えば、加熱プレート11の上方にその吐出口13が設けられ、吐出口13から離れた位置に設けた排出口15からインクの蒸気を含む空気を排気可能となっている。加熱プレート11で印刷用紙Pを加熱して乾燥させるだけでなく、インクジェット間乾燥部10で加熱及び排気することで、より効率よくインクの乾燥が行われる。
【0036】
そして、本実施形態の特徴として、加熱プレート11と下流側のインクジェットヘッド5c,5dとの間には、加熱プレート11で加熱された印刷用紙Pを、この印刷用紙Pの裏面側から冷却する冷却部としての冷却プレート16が設けられている。冷却プレート16は、例えば、内部にウォータージャケットを備えた金属プレートよりなり、チラー17で冷却された水、オイル等よりなる熱媒体が循環するようになっている。この熱媒体により、冷却プレート16で15℃以上35℃以下に冷却可能に構成されている。
【0037】
なお、冷却部に関しては、印刷用紙Pの表側から冷風など他の冷却方式で冷却してもよい。
【0038】
加熱プレート11と冷却プレート16との間には、例えば赤外線温度センサよりなる第1温度センサ18が設けられている。この第1温度センサ18は、加熱プレート11で加熱された印刷用紙Pの温度を裏面から計測可能となっている。
【0039】
また、冷却プレート16の後方には、例えば赤外線温度センサよりなる第2温度センサ19が設けられている。この第2温度センサ19は、冷却プレート16で加熱された印刷用紙Pの温度を表面から計測可能となっている。なお、第2温度センサ19は、印刷用紙Pの温度を裏面から計測できるようにしてもよい。
【0040】
これら第1温度センサ18及び第2温度センサ19の検出値は、制御装置20に送信され、この制御装置20が温調機12及びチラー17を制御して加熱プレート11及び冷却プレート16の温度をそれぞれ調整するようになっている。
【0041】
例えば、上流側のインクジェットヘッド5a,5bと下流側のインクジェットヘッド5c,5dとの間の搬送距離が750mmだけ離れていた場合に、加熱プレート11が260mm、冷却プレートが260mmとして、上流側又は下流側のインクジェットとの間にそれぞれ75mm隙間が空けられ、加熱プレート11と冷却プレート16との間に80mmの隙間が空けられていればよい。このように、インクジェット間乾燥部10のスペースは、最小限に抑えられている。
【0042】
そして、最下流側に、インクジェットヘッド5a~5dによって印刷された印刷用紙Pを加熱して乾燥させる、熱ロール21が設けられている。熱ロール21は、例えば、外径600mm程度のもので、30~100℃程度に加熱されており、巻き付いた印刷用紙Pを加熱してインクを乾燥させる役割を果たす。
【0043】
-インクジェットによる印刷方法-
上記印刷装置1を用いて印刷用紙Pにインクジェットによって印刷を行う方法について説明する。
【0044】
まず、巻出し工程で、印刷用紙Pを巻き出す。これは、巻取り工程において、駆動装置を駆動して印刷用紙Pを巻き取ることによって開始される。例えば、インクの塗布量がウエット状態で10g/mのときに、搬送速度は約50m/minとなる。
【0045】
次いで、コロナ処理工程で印刷用紙Pの表面にコロナ処理が行われる。このコロナ処理は省略してもよい。
【0046】
次いで、プレヒート工程で、印刷用紙Pが通常の含水率よりも低い含水率に予め乾燥させられてもよい。
【0047】
次いで、上流側印刷工程で、インクジェットヘッド5a,5bによって、印刷用紙Pに対して所定のインク(例えば、ブラック、シアン)が塗布される。
【0048】
次いで、加熱工程において、上流側のインクジェットヘッド5a,5bによって印刷された印刷用紙Pが裏面側から加熱プレート11により、例えば70℃~80℃に加熱される。この加熱工程において、乾燥機14により補助的に印刷用紙Pが加熱されると共に、蒸発した蒸気が排気される。加熱後の印刷用紙Pは、第1測定工程において、第1温度センサ18によって裏面側から温度測定され、その測定結果が制御装置20に送られる。制御装置20は、この測定結果が高すぎたり低すぎたりすると、温調機12の熱媒体の温度を自動で調整してもよい。
【0049】
次いで、加熱工程の直後に冷却工程において、加熱された印刷用紙Pが冷却プレート16によって15℃以上35℃以下に冷却される。冷却後の印刷用紙Pは、第2測定工程において、第2温度センサ19によって表面側から温度測定され、その測定結果が制御装置20に送られる。制御装置20は、この測定結果が高すぎたり低すぎたりすると、チラー17の熱媒体の温度を自動で調整してもよい。
【0050】
次いで、下流側のインクジェットヘッド5c,5dによって印刷用紙Pの表面側に例えば、マゼンダ、イエローの印刷が行われる。このとき、すでに冷却プレート16によって印刷用紙Pが15℃以上35℃以下に冷やされているので、下流側のインクジェットヘッド5c,5dに結露が生じない。また、加熱工程においてすでに上流側のインクジェットヘッド5a,5bから吐出したインクが十分に乾燥させられているので、印刷用紙Pにおいて下流側のインクジェットヘッド5c,5dから吐出したインクが混じったり滲んだりすることはない。
【0051】
そして、最終乾燥工程において、熱ロール21の外周で約60℃に加熱される。これにより、印刷用紙Pのインクは、ほぼ完全に乾燥させられる。
【0052】
そして、巻取り工程において、印刷用紙Pは、インクが十分に乾燥した状態で巻取り部3に巻き取られる。本実施形態では、十分に乾いていない印刷面がローラに触れることはないので、ローラが汚れず、仕上がりのきれいな印刷が行われる。
【0053】
本実施形態では、下流側のインクジェットヘッド5c,5dの手前で、加熱後の印刷用紙Pを強制的に冷やしているので、加熱された印刷用紙Pを冷やすために長い搬送距離を確保する必要がない。
【0054】
また、第1温度センサ18によって加熱プレート11による加熱の程度を検知でき、第2温度センサ19によって冷却プレート16による冷却の程度を検知できるので、リアルタイムに最適な温度調整を行うことができ、それにより、下流側インクジェットヘッド5c,5dの結露がより確実に防止される。
【0055】
なお、隔壁24、または送風装置22は、それぞれを印刷装置1に備えつけてもよいし、組み合わせて備え付けてもよい。適宜選択すればよい。
【0056】
したがって、本実施形態に係る印刷装置1によると上流側インクジェットヘッド5a,5bによって付着したインクを十分に乾燥させながらも下流側インクジェットヘッド5c,5dの結露を防ぐことにより、印刷品質のよい印刷を行うことができる。
[第2の実施形態]
【0057】
以下、本発明適応した第2の実施形態を図2に基づいて説明する。
なお、本実施形態は第1の実施形態に影響抑制部としての送風装置を追加した構成であるため、同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0058】
図2に示すように、本実施形態においては、加熱プレート11と冷却プレート16との間に、送風装置22を設けている。送風装置22としては、エアーファン、エアーブロー等が例示できる。送風装置22は、加熱プレート11及び冷却プレート16の間に風向23の気流を生じさせることにより、加熱プレート11で温められた空気が冷却プレート16に悪影響を与えたり、冷却プレート16で冷やされた空気が加熱プレート11に悪影響を与えたりすることを抑制できる。具体的には、加熱プレート11により加熱された空気が冷却プレート16により急激に冷やされることにより、温度センサ18、冷却プレート16、印刷用紙P、その他の装置に結露を生じさせる等の悪影響を抑制することができる。
[第3の実施形態]
【0059】
以下、本発明適応した第3の実施形態を図3に基づいて説明する。
なお、本実施形態は第1の実施形態に影響抑制部としての隔壁を追加した構成であるため、同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0060】
図3に示すように、本実施形態においては、加熱プレート11と冷却プレート16との間に隔壁24を設けている。隔壁24としては、プラスチック板、エアークッションシート、アルミ合金製の板、コンクリート製の板、ガラス板、石膏ボード等が例示できる。隔壁24は、加熱プレート11及び冷却プレート16の間を物理的に遮断することにより、加熱プレート11で温められた空気が冷却プレート16に悪影響を与えたり、冷却プレート16で冷やされた空気が加熱プレート11に悪影響を与えたりすることを抑制できる。具体的には、加熱プレート11により加熱された空気が冷却プレート16により急激に冷やされることにより、温度センサ18、冷却プレート16、印刷用紙Pその他の装置に結露を生じさせる等の悪影響を抑制することができる。
【0061】
(その他の実施形態)
本発明は、上記第1~第3の実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0062】
すなわち、加熱プレート11及び冷却プレート16に対し、静電気帯電や吸引などの方法で印刷用紙Pを密着させて温度を伝達させやすくしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、4色のインクジェットヘッド5a,5b,5c,5dを2つずつ配置し、その間に加熱プレート11及び冷却プレート16を配置しているが、各インクジェットヘッド5a,5b,5c,5dの間にそれぞれ加熱プレート11及び冷却プレート16を配置してもよい。
【0064】
また、用途によっては、インクジェットヘッド5aとインクジェットヘッド5b,5c,5dとに分離し、インクジェットヘッド5aとインクジェットヘッド5b,5c,5dとの間に加熱プレート11及び冷却プレート16を配置してもよいし、インクジェットヘッド5a-加熱プレート11及び冷却プレート16-インクジェットヘッド5b,5c-加熱プレート11及び冷却プレート16-インクジェットヘッド5dの順に配置することも可能である。さらには、インクジェットヘッドを5組以上有してもよい。要は、加熱プレート11及び冷却プレート16が、上流側のインクジェットヘッドと下流側のインクジェットヘッドとの間に設けられる構成であれば、いかなる構成であってもよい。
【0065】
また、第2の実施形態において、影響抑制部として送風装置22を用いたが、吸入装置を用いても良い、要は、加熱プレート11及び冷却プレート16の間に風向23の気流を生じさせることにより、加熱プレート11で温められた空気が冷却プレート16に悪影響を与えたり、冷却プレート16で冷やされた空気が加熱プレート11に悪影響を与えたりすることを抑制できる構成であれば、特に限定されない。また、気流の風向についても、かかる効果を生じさせる風向であれば、特に限定されない。また、風向や気流の強度を変化・調整できる構成としても良い。
【0066】
また、影響抑制部として送風装置22および隔壁24を組み合わせて用いても良い。
【0067】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 印刷装置
2 巻出し部
3 巻取り部
5a,5b 上流側インクジェットヘッド
5c,5d 下流側インクジェットヘッド
10 インクジェット間乾燥部
11 加熱プレート
12 温調機
13 吐出口
14 乾燥機
15 排出口
16 冷却プレート
17 チラー
18 第1温度センサ
19 第2温度センサ
20 制御装置
21 熱ロール
22 送風装置
23 風向
24 隔壁












図1
図2
図3