(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120790
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】電気駆動式移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/12 20060101AFI20220810BHJP
B66C 23/74 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B66C13/12 D
B66C23/74 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022005691
(22)【出願日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】10 2021 102 706.3
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr-Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーナッカー ローラント
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205GA01
3F205GA10
(57)【要約】
【課題】移動式クレーンに、従来の内燃機関の欠点を克服する代替駆動装置を装備する。
【解決手段】本発明は、駆動可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に支持された上部構造と、移動式クレーンを駆動するための電気モータとを備える移動式クレーンに関し、上部構造は、水平軸を中心に揺動可能なブームと、少なくとも1つのバラスト積層体を備えた上部構造バラストとを有するブームシステムを備える。バラスト積層体は、特にバラストプレートとして形成される1つ又は複数のバラスト要素を備える。本発明によれば、電気モータを駆動するための電気エネルギは、バラスト積層体に取り付けることができる少なくとも1つのエネルギ生成モジュールによって供給することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動可能な下部走行体(12)と、
前記下部走行体(12)上に旋回可能に支持された上部構造(14)と、
移動式クレーン(10)を駆動するための電気モータとを有し、
前記上部構造(14)が、
水平軸の周りに揺動可能なブーム(16)と、
1つ又は複数のバラスト要素(24)の少なくとも1つのバラスト積層体(22,23)を有する上部構造バラスト(20)とを有し、
前記電気モータを駆動する電気エネルギを、前記バラスト積層体(22,23)に取付可能な少なくとも1つのエネルギ生成モジュール(30)によって供給することができる
ことを特徴とする移動式クレーン(10)。
【請求項2】
前記バラスト積層体(22,23)及び前記エネルギ生成モジュール(30)の少なくとも一方が、前記上部構造の後側から見てブームシステムの外側輪郭の横方向外側に配置され、
前記上部構造バラスト(20)が、好ましくは前記ブームシステムの外側輪郭の、横方向外側の両側に配置された2つの前記バラスト積層体(22,23)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項3】
前記エネルギ生成モジュール(30)が燃料電池を備え、
燃料電池タンク(38)が、好ましくは、燃料、特に水素を前記燃料電池に供給するように設けられ、
前記燃料電池タンク(38)が、同じ若しくは別のエネルギ生成モジュール(30)内に、又は前記バラスト積層体(22,23)に取付可能なタンクモジュール内に配置される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項4】
バッテリ(34)、特に再充電可能なバッテリが、エネルギ生成モジュール及び電気モータの少なくとも一方によって発生されたエネルギを、エネルギとして供給することができる手段によって提供され、
前記バッテリ(34)は、好ましくは、同じ若しくは別のエネルギ生成モジュール内に、又はバラスト積層体に取り付けることができるバッテリモジュール内に配置される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項5】
前記エネルギ生成モジュールが、
内燃機関と、
前記電気モータのためのエネルギを生成するために前記内燃機関によって駆動可能な発電機とを備え、
前記内燃機関に燃料を供給するための燃料タンク(38)が、好ましくは、同じ若しくは別のエネルギ生成モジュール内に、又は前記バラスト積層体に取付可能なタンクモジュール内に配置される
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項6】
エネルギ生成モジュール(30)、タンクモジュール及びバッテリモジュールの少なくとも1つが、前記バラスト要素(24)及び別のモジュールの少なくとも一方への解放可能な接続のための接続要素を有し、好ましくは、前記バラスト積層体(22,23)の上部又はバラスト積層体(22,23)内に配置可能である
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項7】
全てのモジュール及び全てのバラスト要素(24)が同じ接続手段を有し、
互いに任意の所望の順序で積み重ねることができることと、それらが同じ設置面積を有することとの少なくとも一方を満たす
ことを特徴とする、請求項6に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項8】
前記エネルギ生成モジュール(30)及びバッテリモジュール(34)の少なくとも一方が、電気ラインを介して前記電気モータに接続又は接続可能である
ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項9】
前記電気ラインが、前記上部構造(14)及びそれぞれのモジュール(30)のエネルギ供給接続部の少なくとも一方に接続可能な電力ケーブルを備えることと、
前記電気ラインが、それぞれのモジュール(30)と前記上部構造(14)との間に配置された前記バラスト要素(24)に、又はその中に配置され、個々の前記バラスト要素(24)のライン部分が、好ましくは、電気接点によって互いに導電接続可能であることとの少なくとも一方である
ことを特徴とする、請求項8に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項10】
前記エネルギ生成モジュール(30)が、
前記電気モータに電力を供給する発電ユニット(32)と、
前記電気モータの電力供給を制御又は調整する制御ユニット(36)と、
好ましくは、前記発電ユニット(32)に接続されたエネルギ蓄積器(34,38)と、
冷却、加熱、及び換気の少なくとも1つを行う空調システムとを備える
ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項11】
前記電気モータによって駆動可能な油圧ポンプを有する油圧回路が設けられている
ことを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項12】
前記電気モータは、前記上部構造(14)のフレーム構造内に、又は前記上部構造(14)の外部に、特に前記上部構造(14)に解放可能に接続可能な駆動モジュール(31)に配置される
ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項13】
前記移動式クレーン(10)を駆動する少なくとも2つの電気モータが、共通の及び/又はそれぞれ別個のエネルギ生成モジュール(30)からエネルギを供給することができるように設けられ、
前記2つの電気モータは、好ましくは、前記移動式クレーン(10)を一緒に駆動するように、
又は前記移動式クレーン(10)を前記2つの電気モータのうちの1つによって駆動するように構成され、他の電気モータは、交換モータとして機能する
ことを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項14】
ブームシステムは、デリックブーム(17)及び前記ブーム(16)のラフィング平面内で揺動可能なガイイングフレーム(18)の少なくとも一方を備え、
前記エネルギ生成モジュール(30)は、好ましくは、前記ブームシステムの揺動領域の外側に完全に配置されるように配置される
ことを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【請求項15】
前記エネルギ生成モジュール(30)及び前記バラスト要素(24)の少なくとも一方が、容器寸法を有し、
好ましくは、容器接続要素、特に捩りロックコネクタによって互いに解放可能に接続可能である
ことを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の移動式クレーン(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンは、典型的には、下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に支持され、ブーム及び上部構造バラストを有する上部構造とを有する。例えばクレーンを駆動するために、又は個別のクレーン機能を動作させるために、移動式クレーンによって必要とされるエネルギの供給は、典型的には、1つ又は複数の内燃機関を介して行われる。原則として、それらは、典型的には上部構造のフレーム構造内に配置されるディーゼルエンジンである。
【0003】
従来の内燃機関の環境及び健康に関する問題のために、代替的な、より環境に優しい駆動方法の使用が望ましいであろう。
【0004】
代替駆動形態の探索をもたらす1つの課題は、ここでは、古典的かつ証明された駆動形態としてのディーゼルエンジンが、代替駆動によって容易に達成され得ない多くの利点を有することである。ディーゼル燃料は、例えば、高いエネルギ密度を有し、通常の環境条件下での通常の貯蔵中に液体状態にあり、わずかな不揮発性を有するにすぎない。貯蔵は、通常の使用分野において提供される特別な温度又は他の複雑な条件のいずれも必要としない。極端な条件下(特に低温)では、安全な操作のための適切な方法が知られており、試みられ、試験されている。燃料はさらに貯蔵が簡単であり、このための技術は成熟している。同様に、例えばパイプやホース内で輸送することも簡単であり、ポンプを使用することができる。これらの側面は、他の内燃機関にも当然当てはまり、ガソリンエンジンが列挙した事項について上回っている。
【0005】
しかし、クレーン駆動装置としての古典的な内燃機関にも、既に取り上げている環境側面に加えて、さらに多くの欠点がある。例えば、燃焼駆動装置は、排ガス規制のために複雑で空間集約的なシステムを必要とする。排ガス規制のための媒体はまた、部分的には、貯蔵及び供給に関しても要求が厳しい。エンジンの構成部品は、作動中に非常に高温になることがあるため、爆発の危険性がある領域ではさらに対策を講じる必要がある。内燃機関が特殊なガスを取り入れる場合には、内燃機関を再び停止させることができるようにするために、さらに別の措置を講じなければならない。
【0006】
電気モータによる駆動は、古典的な内燃機関に代わる環境に優しい代替手段である。しかし、電気モータが必要とする権限を発生させるために使用することができるエネルギ源は、内燃機関用の燃料よりも実質的に低いエネルギ密度を有し、安全リスクを制御するために追加の手段を備えた空間及び重量集約型の貯蔵を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この背景に対して、本発明の基礎となる目的は、最初に挙げた種類の移動式クレーンに、前述の欠点を克服する代替駆動装置を装備することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する装置によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項から及び以下の説明から、得られる。
【0009】
したがって、本発明によれば、駆動可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に支持された上部構造と、移動式クレーンを駆動するための電気モータとを備え、上部構造が、水平軸を中心に枢動可能なブームと、少なくとも1つのバラスト積層体を有する2つの上部構造バラスト要素とを有するブームシステムを備える移動式クレーン、例えば支持体を備えるクローラクレーンが提案される。バラスト積層体は、特にバラストプレートとして形成される1つ以上のバラスト要素を備える。本発明によれば、電気モータの駆動のための電気エネルギは、バラスト積層体に取り付けることができる少なくとも1つのエネルギ生成モジュールによって供給することができる。
【0010】
上部構造バラストにおけるエネルギ生成モジュールの発明に従った統合により、その重量はバラストとして同時に使用することができ、それにより、空間及び重量に関連した相乗効果が生じる。さらに、特に上部構造バラストの分野では、クレーンの動きを損なうことなくエネルギ生成モジュールで取り上げることができる十分な空間がしばしば存在する。特に、大型の移動式クレーンでは、非常に高いバラスト積層体が、それぞれのクレーン配置に適応するその高さ、したがって、その重量で使用される。したがって、上部構造バラストの1つ又は複数のバラスト積層体は、一般に、少なくとも1つの方向(特に、その高さにおいて、しかし、しばしば、後方及び/又は前方にも)に限定されない。さらに、エネルギ生成モジュールの固定のために、バラスト要素の既存及び成熟した接続及び固定システムで使用することができる。
【0011】
したがって、移動式クレーンの電気駆動装置の利点は、保管及び固定から生じる欠点を受け入れる必要なしに使用することができる。本発明による電気モータ及びエネルギ生成モジュールによる電気駆動は、古典的な内燃機関を介した駆動の代わりに、又はそれに加えて行うことができる。
【0012】
移動式クレーンの駆動を電気モータが担っている。これは、下部走行体の走行ギア(特に、クローラシャーシ又は車輪付シャーシ)を介した移動式クレーン全体の駆動、及び/又はブームシステムの調整、巻上ウインチの作動、下流に配置された発電機を介したクレーン制御のための電気の供給などの個々の又は全てのクレーン機能の動作又は駆動に関連することができる。アクチュエータを油圧制御する油圧システムは、油圧システム、特に1つ又は複数の油圧ポンプの駆動に役立つ電気モータを用いて、前述の機能の個々又は全てを制御するために設けることができる。
【0013】
しかしながら、エネルギ生成モジュールによって提供されるエネルギは、電気モータのエネルギ供給の他に、個々の又は複数のクレーン機能の直接的な電気駆動にも使用することができる。
【0014】
上部構造バラストにおけるバラスト積層体の高さは、バラスト積層体の全重心の高さによって制限されるので、エネルギ生成モジュールをバラスト積層体の最上部に取り付けることは有利である。しかしながら、クレーン構成に応じて、異なる種類のアタッチメントも考えられる。例えば、エネルギ生成モジュールは、例えば、フック接続を介して、又はバラスト要素を運ぶベースプレート/バラストマウントの下方で、側部のバラスト積層体に締結可能である。
【0015】
用語「モジュール」は、以下では、エネルギ生成モジュール及び/又はタンクモジュールの名称の略語として使用される。さらに、モジュールをバラスト積層体に取り付けることができるという特徴は、以下においても常に理解されるべきであり、その結果、モジュールは、異なるモジュールに取り付けることもできる(したがって、バラスト積層体に取り付けられたモジュールは、バラスト積層体の一部とみなすことができる)。
【0016】
可能な実施形態において、上部構造の後側から見て、ブームシステムの外側輪郭の横方向外側に、バラスト積層体及び/又はエネルギ生成モジュールが配置されることが提供される。これは、ブームシステムは、特に垂直起伏平面内で(旋回可能な上部構造に関して)揺動するだけである(すなわち、1自由度に沿ってのみ移動することができる)ので、バラスト積層体及びそれに取り付けられたエネルギ生成モジュールが、ブームシステムの移動範囲外に位置することを意味する。それによって、ブームシステム又はクレーン機能の動きが損なわれることはない。
【0017】
上部構造バラストは、好ましくは、ブームシステムの外側輪郭の両外側に配置された2つのバラスト積層体を備える。少なくとも1つのそれぞれのエネルギ生成モジュールが、好ましくは、両方のバラスト積層体に取付可能である。2つのバラスト積層体のうちの1つに取り付けられる単一のエネルギ生成モジュールを設けることができる。エネルギ生成モジュールをバラスト積層体の各々に取り付けることも同様に可能である。それらは、それぞれの1つ若しくは複数の電気モータに関連付けることができ、又は1つ若しくは複数の電気モータを一緒に供給することができる。同様に、エネルギ生成モジュールの1つを、誤動作又は別のエネルギ生成モジュールの故障の場合のための代替エネルギ源として利用可能な状態に保つことも可能である。さらに、上部構造バラストの重量は、バラスト積層体の各々にモジュールが取り付けられたときに、より均等に分配される。
【0018】
さらなる可能な実施形態においては、エネルギ生成モジュールに、好ましくは、燃料電池に燃料、特に水素を供給するために、燃料タンク、特に水素タンクを有する燃料電池が設けられる。ここでは、当然ながら、相互接続された燃料電池の積層体とすることができる。水素に加えて、メタン、ブタン、又は天然ガスなどの他の燃料も使用することができる。
【0019】
燃料タンクは、同じエネルギ生成モジュール内で燃料電池と一緒に配置することができる。しかしながら、(また)異なるエネルギ生成モジュールの燃料電池の供給を兼ねるエネルギ生成モジュール内に燃料タンクを設けることも同様に可能である。さらなる可能性は、燃料タンクを別個のタンクモジュールに収容することであり、これも同様にバラスト積層体又はエネルギ生成モジュールに取り付けることができる。
【0020】
後者の2つの場合には、異なるモジュールを接続するために、対応するタンクラインを設けなければならない。タンクラインによって接続されたモジュールが互いに隣接して配置されているか、又は互いに直接接続されている場合には、ここで有利である。モジュールは、例えば、互いに積み重ねることができる。それによって、細長いホース等を設ける必要はないが、モジュールは、むしろ、互いに直接又は短い接続片によって結合することができる対応するタンク接続部をハウジングに有することができる。特に、水素の貯蔵では、貯蔵は、安全上の危険を最小限にするために、燃料電池にできるだけ近接して行われるべきである。さらに、燃料を容易に補充できるように、燃料を収容するモジュールの外部にタンク接続部を設けることが好ましい。燃料を収容する全モジュールもまた、補充されたモジュールと交換可能であるように代替的に設計される。
【0021】
さらなる可能な実施形態において、バッテリ、特に再充電可能バッテリ(例えば、蓄電池)が、エネルギ生成モジュールによって生成されたエネルギを蓄積可能であり、及び/又は電気モータにエネルギを供給することができる手段によって提供されてもよい。バッテリは、エネルギ生成モジュール内のエネルギ発生のために設けられたエネルギ発生手段又は発電手段と一緒に配置されることが好ましい。バッテリは、異なるエネルギ生成モジュール内に、又はバラスト積層体若しくはエネルギ生成モジュールに取付可能な別個のバッテリモジュール内に、等しく配置することができる。
【0022】
バッテリは、例えば、エネルギ発生手段、例えば、エネルギ生成モジュール内に設けられた燃料電池によって充電することができる。代替的又は付加的に、それは、外部充電可能であり、対応する充電コネクタが、充電ケーブルを接続することができるように、エネルギ生成モジュール又はバッテリモジュールに設けられ得る。
【0023】
バッテリは、例えば、照明、センサの動作、制御、空調若しくは冷却などのために、燃料電池の冷却のための電源を維持するために、又はアイドリング時の移動式クレーンのエネルギ要件をカバーするために、燃料電池のスイッチオフ後のタイムラグのための短期エネルギ貯蔵装置として使用することができる。
【0024】
代替的又は付加的に、バッテリは、エネルギ生成モジュールによる電気モータの供給中に、前記機能のようなクレーン機能の動作を兼ねることもできる。したがって、燃料電池は、典型的には、通常数秒の範囲内の特定の蓄積時間を有する。クレーンオペレータがクレーン又はクレーンアクチュエータを制御するために制御コマンドを入力すると、このセットアップ時間中のバッテリによるエネルギ供給により、移動が既に開始され、燃料電池がスイッチイン(総和接続)されるか、又は起動時間後に完全に引き継がれるようにしてもよい。
【0025】
さらなる可能な実施形態において、エネルギ生成モジュールが、内燃機関と、内燃機関によって駆動され得る電気モータのためのエネルギを発生させる発電機とを備えることが提供される。それは、唯一のエネルギ生成モジュールであってもよく、又は異なる運転モードを有する2つ以上のエネルギ生成モジュールを設けることもできる。例えば、1つのエネルギ生成モジュールは、燃料電池を備え、別のエネルギ生成モジュールは、発電機を備えた内燃機関を備えることができる。好ましくは、内燃機関に燃料(特に、水素、ディーゼル、又はガソリン)を供給するために、燃料タンクが設けられる。
【0026】
燃料タンクは、好ましくは、エネルギ生成モジュール内の内燃機関と一緒に配置される。燃料タンクは、バラスト積層体又はエネルギ生成モジュールに取付可能な、異なるエネルギ生成モジュール又は別個のタンクモジュール内に等しく配置することができる。後者の2つの場合には、異なるモジュールを接続するために、対応するタンクラインを設けなければならず、上述したことは、燃料電池用の燃料タンクにも同様に適用される。
【0027】
さらなる可能な実施形態では、エネルギ生成モジュール及び/又はタンクモジュール及び/又はバッテリモジュールが、バラスト要素及び/又は異なるモジュールへの解放可能な接続のための接続手段を有することが提供される。モジュールは、バラスト積層体の頂部又はバラスト積層体内(例えば、底部又は中央部の右側)に配置可能であってもよい。接続手段は、モジュール取付上のバラスト要素で係合する突出部及び凹部を備えることができる。接続手段は、さらに、ロック可能であってもよく、又は、モジュールをバラスト要素に可逆的にロックするために、別個のロック手段が設けられてもよい。
【0028】
さらなる可能な実施形態では、全てのモジュール及び全てのバラスト要素が、同じ接続手段を有し、互いの上に任意の所望の順序で積み重ね可能であることが提供される。それにより、例えばモジュラー原則に従って柔軟に配置できるように、バラスト要素及びモジュールについてのモジュラー設計が結果として得られる。代替的又は付加的に、バッテリ要素及びモジュールは、例えば矩形の設置面積のように、同じ設置面積を有することができる。1つ又は複数のモジュールと組み合わされるバラスト積層体は、その高さ(及びその重量)のみがバラスト要素及びモジュールの配置に依存して変化するように、常に同じ横方向寸法を有する。
【0029】
バラスト要素は、独国実用新案第202008006356号明細書に準拠したデザイン又は形状を有することができ、本明細書では、その開示を明示的に参照する。
【0030】
さらなる可能な実施形態において、エネルギ生成モジュール及び/又はバッテリモジュールが、電気ラインを介して電気モータに接続され又は接続可能であることが提供される。さらに、モジュールの相互接続に応じて、例えば、エネルギ生成モジュールの燃料電池によって充電することができるバッテリが別個のバッテリモジュール内に配置される場合、個々のモジュールは、電気ラインによって互いに接続可能に接続することができる。
【0031】
さらなる可能な実施形態において、電気ラインは、上部構造及び/又はそれぞれのモジュールのエネルギ供給接続部に接続可能な電力ケーブルを備えることが提供される。それは、例えばエネルギ生成モジュールのように、それぞれのモジュールの取外し後に、モジュール又は上部構造において、格納可能又は貯蔵可能であり得る。電力ケーブルが邪魔にならないように、適切な手順で電力ケーブルを敷設することができるように、バラスト要素に、フックなどの特別なガイド又は保持要素を設けることができる。
【0032】
代替的又は付加的に、電気ラインは、それぞれのモジュールと上部構造との間に配置されたバラスト要素において又はその中に配置することができる。したがって、この電気ラインは、例えば、バラスト要素内に一体化することができ、その結果、全てのバラスト要素は、外側で又はバラスト要素内で延びるライン部を有する。バラスト要素を接続することにより、ライン部は、好ましくは、接続手段に設けることができる特殊な電気接点を介して互いに導電接続され、モジュールと上部構造との間に導電接続又は電気ラインが確立される。次いで、最も底部のバラスト要素のラインは、好ましくは、上部構造に、又は上部構造に設けられた電子機器に、又は電気モータに直接接続される。さらに、モジュールは、そのライン部を次のバラスト要素の線路部分に接続するための対応する接点を有する。
【0033】
あるいは、無線エネルギ移転、特に誘導エネルギ移転は、例えば、エネルギ生成モジュールと最も近いバラスト要素との間、及び個々のバラスト要素の間の、個々のセグメントの間で考えることもできる。したがって、モジュール及び個々の(又は全ての)バラスト要素は、エネルギ伝達のための対応する送信/受信要素(例えば、アンテナ又はコイル)を有することができる。これにより、橋渡しすべき距離が短く保たれ、効率が最大化される。
【0034】
さらなる可能な実施形態では、エネルギ生成モジュールが、電気モータに電力を供給するための発電ユニット(例えば、燃料電池又は発電機)と、電気モータの電力供給を制御/調整するための制御ユニットと、好ましくは、発電ユニットに接続されたエネルギ貯蔵部(例えば、バッテリ又は内燃機関用及び燃料電池用のそれぞれの燃料タンク)と、冷却、加熱、及び/又は換気用の空調とを備えることが提供される。さらに、除湿及び/又は硫黄などのガスを抽出するための装置を設けることができる。これらのユニットは全て、単一のモジュールに統合されている。それは、バラスト積層体及び接続された対応するライン(最も単純な場合には、電力ケーブルのみ)に取り付けられるだけでよい。したがって、移動式クレーンのエネルギ供給は、複雑でない方法で構成され、任意選択的に変更されることができる。
【0035】
さらなる可能性のある実施形態において、電気モータによって駆動可能な油圧ポンプを有する油圧回路が設けられてもよい。移動駆動及び/又はクレーンアクチュエータは、油圧回路を介して制御可能である。典型的に使用される油圧駆動装置は、それによって、例えば、クローラクレーンにおいて使用され続けることができる。移動式クレーンの転換は、特に、電気モータが上部構造に一体化されていないが、むしろ駆動モジュールとして上部構造に締結可能である場合には必要ではないであろう。接続ラインだけが相応に敷設され、必要な接続が提供される。電気モータは、さらに、油圧ポンプの駆動のみに役立つことができるか、又はさらに、1つ以上のクレーン機能のための直接的な電力供給を提供することもできる。
【0036】
さらなる可能性のある実施形態において、電気モータは、上部構造のフレーム構造内に、又は、特に、上部構造に解放可能に接続可能な駆動モジュールにおいて、外部に、配置されることが提供される。
【0037】
さらなる可能性のある実施形態において、移動式クレーンを駆動する少なくとも2つの電気モータが、共通及び/又はそれぞれ別個のエネルギ生成モジュールからエネルギを供給することができるように設けられ、電気モータは、移動式クレーンを一緒に駆動するか、又は電気モータの1つによって移動式クレーンを駆動するように構成されることが好ましく、別の電気モータは、交換用モータ(バックアップ)として働くことができるようにしてもよい。
【0038】
さらなる可能な実施形態では、ブームシステムが、ブームの起伏平面内で揺動可能なデリックブーム及び/又はガイフレームを備えることが提供される。特に、より小さな移動式クレーンでは、ブームは、したがって、上部構造において水平揺動軸を中心として揺動可能に支持されたガイニングフレーム(Aフレーム)を介して揺動可能にガイニングすることができる。あるいは、特に、より大きな移動式クレーンでは、ブームは、上部構造において水平揺動軸を中心として揺動可能に支持されたデリックブームによってガイニングすることができ、Aフレームも設けることができる。その結果、ブームシステムのこれら全ての構成要素は、共通の起伏平面内を移動する。エネルギ生成モジュールは、ブームシステムの移動領域の外側に完全に配置され、その移動上でブームシステムと衝突し得ないように配置されることが好ましい。
【0039】
さらなる可能な実施形態では、エネルギ生成モジュール及び/又はバラスト要素は、容器寸法を有し、好ましくは、容器接続要素によって互いに解放可能に接続可能であるように構成される。容器寸法は、少なくとも標準容器の長さであるが、好ましくは、標準容器の設置面積又はベース寸法である。同じ容器寸法の設置面積を有するバラストプレートの重量は、その高さを介して固定することができる。モジュール及びバラストプレートは、市販の標準容器と同じ接続部を有するので、それらを一緒に輸送することができる。さらに、これらは、バラスト要素及びモジュールの組立又は所望の構成を迅速かつ簡単に行うことができるように、実証され、堅牢な接続手段である。モジュールは、長さ、幅、及び高さに関して、完全な標準容器寸法を有することができる。
【0040】
モジュールは、バラスト要素とモジュールとの間の容器接続のために摺動し得ない。荷重破断と大量のエネルギの急激な放出に関する安全関連挙動は、さらに重要である。モジュールはまた、この場合、所定の位置にしっかりと保持される。容器接続要素は、好ましくは、バラスト要素とモジュールとを互いにロックすることができるように、捩りロックコネクタである。
【0041】
本発明のさらなる特徴、詳細及び利点は、図面を参照して以下で説明される実施形態から、得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明による移動式クレーンの1つの実施形態の全体斜視図である。
【
図3】第1の実施形態による移動式クレーンの上部構造バラストを示す斜視図である。
【
図4】第2の実施形態による上部構造及び上部構造バラストである。
【
図5】第1の実施形態によるエネルギ生成モジュールの概略図である。
【
図6】第2の実施形態によるエネルギ生成モジュールの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明による移動式クレーン10の1つの実施形態の全体を斜視図で示す。移動式クレーン10は、2つのクローラシャーシ13並びに垂直軸を中心として旋回可能に下部走行体12上に支持され、ブームシステム及び上部構造バラスト20を含む1つの上部構造14を有する下部走行体12を備える。
【0044】
ブームシステムは、ブーム16(ここでは、調整可能なフライブームを有するメインブーム)を備え、このブームは、上部構造14に関節式に揺動可能(又は潤滑可能)に接続され、デリックブーム17及びガイニングフレーム(Aフレーム18)を介してガイニングされる。デリックブーム17、好ましくはAフレーム18も同様に、上部構造14において水平軸線を中心として各々揺動可能に支持され、同じ起伏面内で揺動可能である。ブームシステムのコンポーネントは、ブーム面内の包括的なガイニングシステムを介して、部分的に調整可能に接続されている。さらに、少なくともブーム16及びデリックブーム17は、引っ張り可能な要素である。これは、これらの要素の起伏面が、移動式クレーン10の他の構成要素からその全幅で自由に保持されることを意味する。
【0045】
図2は、移動式クレーン10を背面図、すなわち後側から見た図である。上部構造バラスト20は、上部構造14の後部領域又は後部に配置され、ブームシステムのラフィング面の側部に配置され、それぞれが矩形の設置面積を有する複数の板状バラスト要素、すなわちバラストプレート備える2つのバラスト積層体22,23を備える。バラスト積層体22,23は、ここでは、それらがブームシステムの構成要素の移動領域の完全に外側に位置するように配置されている。これは、
図2の背面図で容易に認識することができ、デリックブーム17のAフレーム18とブーム16は、実質的に同じ幅を有し、したがって、全体的に一定の全幅を有する。ここで、バラスト積層体22,23の最小距離は、この全幅よりも大きい。換言すれば、Aフレーム18、デリックブーム17及びブーム16は、バラスト積層体22,23と衝突することなく自由に動くことができる。したがって、バラスト積層体22,23は、ブームシステムの動きの邪魔にならない。
【0046】
バラスト積層体22,23は、上部構造14の後方に突出するフレーム構造に接続されるバラストマウント上に配置される。さらに、上部構造14には、巻上ウインチ及び/又はガイニングウインチのような多数のクレーンアクチュエータが配置されている。
図1の実施形態では、デリックブーム17は、上部構造14とは別個のデリックバラスト21に付加的に接続されているが、これは本発明にとって重要ではない。
【0047】
ブームシステムは常に1つの自由度しか持たないので、積み重ねられたバラストプレート24の高さは関連性が低い。いずれにせよ、その空間は、そのブームシステムと共に上部構造14の旋回により自由に保たれなければならず、旋回運動は、常にブームシステムと一緒に行われる。
【0048】
移動式クレーン10は、エネルギ生成モジュール30によってエネルギ又は電力が供給される少なくとも1つの電気モータを介して本発明に従って駆動される。エネルギ生成モジュール30は、好ましくはバラスト積層体22,23の終端として、積み重ねられたバラストプレート24上に積み重ねられるか、又はこれに取り付けられる。したがって、エネルギ生成モジュール30は、通常のバラストウェイトとして作用し、すなわち、それは上部構造バラスト20の一部であり、したがって、その空間的な広がり又は高さは重要ではない。このことは、バラストウェイトとして機能し、いずれにしてもカウンタウェイトとして必要とされるので、そのウェイトにも当てはまる。エネルギ生成モジュール30は、バラストプレート24の下又はバラスト積層体22,23の中間に自然に導入することもできる。これは、電気モータが収容される上部構造14の鋼構造からの距離を短縮することになる。しかしながら、上部構造バラスト20の総重心位置、つまり移動式クレーン10の総重心位置は、それによって高くなるであろう。
【0049】
図3は、上部構造バラスト20の第1の実施形態を示しており、2つの横方向バラスト積層体22,23を有し、ここにエネルギ生成モジュール30が設けられ、そのうちの1つのそれぞれのモジュール30がバラスト積層体22,23のうちの1つの上に配置される。1つ又は複数の電気モータは、ここに示される実施形態において上部構造14のフレーム構造内に配置され、電力ケーブルのような図示しない電気ラインを介してそれぞれのモジュール30に接続される。電気エネルギがライン上をカバーしなければならない経路は、エネルギ生成モジュール30の配置のために非常に短い。これは、例えば、エネルギ生成モジュール30と上部構造14の鋼構造との間のプラグイン接続の上に延びる電力ケーブルを介して、モジュール30毎に非常に単純に行える。回線損失は小さい。スペース要件に応じて、電力ケーブルは、輸送中に、エネルギ生成モジュール30内又は鋼構造物内に格納することができる。あるいは、別々に輸送することもできる。
【0050】
別の実施形態が
図4に示されており、ここでは、1つ又は複数の電気モータは上部構造14のフレーム構造内に配置されず、上部構造14の外部で横方向に締結可能な駆動モジュール31内に配置されている。また、駆動モジュール31は、冷却等の電気モータの二次的コンポーネントを含むことができる。
【0051】
バラストプレート24は、ここに示される全ての実施形態において標準容器寸法を備える設置面積を有する。エネルギ生成モジュール30は、同一の設置面積を有し、好ましくは、標準的な容器寸法に完全に従った対応する高さによって寸法決めされる。これにより、エネルギ生成モジュール30は、市販の容器と一緒に輸送することができる。バラストプレート24の高さは、互いの上に積み重ねられたある数のバラスト要素24がエネルギ生成モジュール30の高さを発生させるように寸法を決めることができる。
【0052】
全てのバラストプレート24及びエネルギ生成モジュール30は、好ましくは、標準化された容器コネクタ手段又は接続手段を有し、したがって、公知の方法で互いに接続されかつロックされることができる。これにより、バラスト積層体22,23は、単純かつ迅速に、ある数のバラスト要素24及びモジュール30と共に、かつある配置(バラスト積層体22,23の頂部、底部、又は中央にあるエネルギ生成モジュール30)で構成又は組み立てることができる。エネルギ生成モジュール30及びバラストプレート24は、接続手段により滑ることができない。この接続手段は、特に標準コンテナと共に慣例的に使用される捩りロックコンテナであり、したがって、バラスト積層体22,23に確実に固定される。
【0053】
エネルギ生成モジュール30の2つの異なる実施形態が
図5及び
図6に示されており、それらの内部構造が概略的に示されている。
図5にかかるエネルギ生成モジュール30は、発電手段32を有し、それによって、動力を発生させ、電気モータに利用可能にすることができる。発電手段は、水素などの燃料の供給によって動力を生成する燃料電池(又は燃料電池の1つ又は複数の積層)とすることができる。あるいは、発電手段32は、下流に接続された発電機を有する内燃機関を備えることができる。
【0054】
発電手段32に加えて、好ましくは、エネルギ生成モジュール30のハウジングにある充電コネクタを介して充電することができるバッテリ34が設けられている。バッテリ34は、特に、発電手段32によって生成されたエネルギを蓄積し、電気モータに必要に応じて供給することができる(例えば、燃料電池のビルドアップ時間の間、又は電源を維持するためにそのスイッチを切った後)。しかしながら、発電手段32とバッテリ34との接続は絶対に必要というわけではない。
【0055】
エネルギ生成モジュール30は、さらに、制御ユニット36を備え、それによって、発電手段32によって発生され、かつ/又はバッテリ34に蓄えられたエネルギの電気モータへの供給を制御及び/又は調整することができる。ここで、パワーエレクトロニクスを提供することができる。これらの構成要素は全て、エネルギ生成モジュール30内で一緒に組み合わされる。発電手段32の供給(燃料電池の場合、及び内燃機関の場合、それぞれの燃料を備える)は、ここでは示されていないエネルギ生成モジュール30の外部に配置され、かつバラスト積層体22,23に又はその中に配置されたタンクモジュール内に配置され得るタンクを介して行われる。
【0056】
タンクモジュールは、エネルギ生成モジュール30と同じ寸法及び接続手段を有することが好ましい。理想的には、エネルギ生成モジュール30及びタンクモジュールは、互いに直接接続されるか、又は隣接して配置され、それぞれの燃料ラインを長くすることかつ妨害することを回避する。したがって、モジュール30の容器カバーに対応するタンクコネクタを設けることができ、このコネクタは、直接又は短いライン部品を介して相互接続することができる。
【0057】
それぞれ1つのバラスト積層体22,23上の2つのモジュール30も考えられる。この場合、1つのモジュール30をエネルギ生成モジュールとして設計し、1つのモジュール30を燃料貯蔵モジュールとして設計することができる。この場合、両者は、対応するラインを介して接続される。
【0058】
図6に示す代替実施形態では、発電手段32を供給するためのタンク38は、エネルギ生成モジュール30内に同様に一体化されている。しかしながら、その上、利用可能な燃料又は燃料の総容量を増大させるために、1つ又は複数のタンクモジュールを設けることができる。
【0059】
あるいは、電気モータの電力供給の制御/調節のための制御又はパワーエレクトロニクスも、バラスト積層体22,23に等しく取り付けることができる別個の制御モジュールに収容することができる。同様に、バッテリ34(又は追加バッテリ)は、別個のバッテリモジュール内に配置することができる。
【0060】
しかしながら、エネルギ蓄積/バッテリ34、エネルギ生成モジュール30、及びオプションとしてファンを介した燃料電池の冷却、温度制御、除湿、硫黄を抽出するためのユニット等の2次要素のようなエネルギ生成モジュール30の全ての必須構成要素は、単一のハウジング/容器内に収容される。全エネルギ生成モジュール30は、定義された最大レベルで、無制限の存続期間にわたって電源として機能する電力供給手段と考えることができる。
【0061】
本発明による移動式クレーン10は、好ましくは、燃料電池を有する少なくとも1つのエネルギ生成モジュール30を有し、同様に燃料電池及び/又は発電機を有する内燃機関のいずれかを備えることができる、さらなるエネルギ生成モジュール30を設けることができる。少なくとも2つの電気モータが設けられると有利である。したがって、冗長性が存在し、原則として、緊急動作を維持することができる。
【0062】
モジュールのハウジング(すなわち、エネルギ生成モジュール30、タンクモジュール、及び/又はバッテリモジュール)は、標準コンテナとすることができる。自由高さのために、複数のモジュールを上下に配置することも可能である。
【0063】
内燃機関を介した移動式クレーンの古典的な駆動装置では、永続的に提供される動力は、ほとんどの場合、全く必要とされない。内燃機関は、多くの時間をアイドリングモードで運転する。燃料電池を有するエネルギ生成モジュール30を使用する本発明による解決策では、燃料電池又は少なくとも複数の相互接続された燃料電池は、必要とされないときにスイッチオフすることができる。ここでは、実質的なエネルギ節約ポテンシャルが存在する。
【0064】
制御装置36は、電力管理を引き継ぐことができる。短期間のエネルギ蓄積装置(例えば、バッテリ34又は別個のバッテリモジュール)をこの電力管理に統合することもできる。燃料電池を冷却するための遅れ、照明、センサの動作、制御、空調などのアイドリング中の移動式クレーン10のエネルギ要求は、この点で考慮することができる。クレーン機能を直接(電気モータを介して迂回することなく)制御できる短期的なエネルギ貯蔵も考えられるであろう。
【0065】
燃料電池は始動時間を有する。一般に、これは数秒(例えば、約5秒)に達する。クレーンオペレータがクレーンアクチュエータの要求を入力した場合、この時点で既に移動を開始することができる。これは、オプションとして、既に作動している燃料電池からの電気エネルギと、短期間のエネルギ蓄積との総和回路からであってもよい。
【0066】
移動式クレーンは、異なる駆動方式で利用可能又は構成可能であり得る。選択可能な運転モードは、従来型及び/又は電気式であることができる。エネルギ生成モジュール30(及び他の可能なモジュール)は、電気モータへの電気的接続と同様に、問題なくバラスト積層体22,23に取り付けることができる。
【0067】
燃料電池の使用中に生成される水は、完全に純粋である。したがって、展開現場で蒸発させることが考えられる。これはまた、展開現場の床の上で行うこともできる。移動式クレーン10の機能は、従来の駆動装置を有する公知のものと同様である。特に、移動式クレーン10を展開場所の主電源に接続するケーブルは存在しない。
【0068】
それぞれの燃料用のタンクは、典型的には数百bar(例えば約700bar)の圧力により良く耐えるように円筒形であることが好ましい。
【0069】
-燃料電池の燃料のための可能なスペース要件の観察又は推定-
ディーゼルタンクに含まれるエネルギを1とみなす。このエネルギをバッテリに蓄えれば、約25倍の空間(体積)が必要になる。水素では、約16倍の空間が提供されなければならない。エネルギ生成モジュール30は、5.898×2.352×2.390m3=33.1mの内側寸法を有する20フィートの容器とすることができる。しかしながら、このような容器内に収容された円筒形のタンクでは、ディーゼル燃料の最大22,000リットル、すなわち22,000リットル/16=1,377リットルに相当する約22m3しか使用できない。したがって、3つのモジュールも考えられ、そのうちの1つがエネルギ生成モジュール30を形成し、2つがタンクモジュールを形成する。
【0070】
タンクモジュールがバラスト積層体22,23の頂部に取り付けられ又は導入されれば、全タンクモジュールの変更を介して迅速な燃料補給も可能であろう。接続は、既に知られており、試験されているコンポーネントを用いて設計することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 移動式クレーン
12 下部走行体
14 上部構造
16 ブーム
17 デリックブーム
18 ガイフレーム
20 上部構造バラスト
21 デリックバラスト
22 バラスト積層体
23 バラスト積層体
24 バラスト要素
30 エネルギ生成モジュール
31 駆動モジュール
32 発電ユニット
34 バッテリ
36 コントロールユニット
38 タンク
【外国語明細書】