(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120808
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルム形成用組成物、その製造方法、およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20220810BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220810BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
C08G73/10
B32B27/34
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010429
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0016993
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヒュン ジュ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC02
4F071AC12
4F071AE19
4F071AF30Y
4F071AF34Y
4F071AG28
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4F071AH12
4F071AH16
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4F100AK49A
4F100AR00C
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EH462
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4F100EJ422
4F100GB48
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4J043PA02
4J043PC145
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4J043RA05
4J043SA06
4J043SA54
4J043SB01
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4J043TA71
4J043TB01
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB162
4J043UB401
4J043VA041
4J043VA042
4J043XA16
4J043XB27
4J043YA06
4J043ZB11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低い黄色度、低いヘイズ、および常温安定性を同時に実現することができるポリイミドフィルム形成用組成物、その製造方法、ポリイミドフィルムおよびそれを含む積層体を提供する。
【解決手段】芳香族ジアミンおよび二無水物から誘導された単位を含むポリアミック酸またはポリイミドと、アミド系溶媒と、炭化水素系溶媒とを含み、下記式を満たす、ポリイミドフィルム形成用組成物とする。
1,000≦V
PI≦3,500
式中、VPIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が20重量%である際のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミンおよび二無水物から誘導された単位を含むポリアミック酸またはポリイミドと、アミド系溶媒と、炭化水素系溶媒とを含み、
下記式1を満たす、ポリイミドフィルム形成用組成物。
[式1]
1,000≦VPI≦3,500
前記式1中、
VPIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が20重量%である際のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で25℃、52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準に測定された粘度(単位、cp)である。
【請求項2】
前記アミド系溶媒は、
ジメチルプロピオンアミドを含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項3】
前記炭化水素系溶媒は、
環状炭化水素系溶媒である、請求項1または2に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項4】
前記炭化水素系溶媒は、
トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、またはこれらの組み合わせである、請求項3に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項5】
前記炭化水素系溶媒は、
前記アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の総重量に対して5~60重量%で含まれる、請求項1から4の何れか一項に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項6】
前記炭化水素系溶媒は、
前記アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の総重量に対して25~60重量%で含まれる、請求項1から5の何れか一項に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項7】
前記ポリイミドフィルム形成用組成物の固形分は、
前記ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して10~40重量%で含まれる、請求項1から6の何れか一項に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項8】
アミド系溶媒下で、芳香族ジアミンと二無水物を反応させてポリアミック酸を製造するステップと、
下記式1を満たすように炭化水素系溶媒を追加投入して反応させるステップと
を含む、ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
[式1]
1,000≦VPI≦3,500
前記式1中、
VPIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が20重量%である際のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で25℃、52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準に測定された粘度(単位、cp)である。
【請求項9】
請求項1から7の何れか一項に記載のポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布する塗布ステップと、
前記ポリイミドフィルム形成用組成物を乾燥および加熱して硬化させる硬化ステップと
を含む、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記硬化ステップは、
30~70℃で乾燥後、80~300℃で加熱して行われる、請求項9に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記塗布ステップの以後、
常温で放置するステップをさらに含む、請求項9または10に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1から7の何れか一項に記載のポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布後に硬化させて得るポリイミドフィルム。
【請求項13】
前記ポリイミドフィルムは、
ASTM E313に準じた黄色度(YI)が2.5以下である、請求項12に記載のポリイミドフィルム。
【請求項14】
前記ポリイミドフィルムは、
ASTM D1003に準じたヘイズが0.1以下である、請求項12または13に記載のポリイミドフィルム。
【請求項15】
厚さが1~500μmである、請求項12から14の何れか一項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項16】
基板の一面に形成される、請求項12から15の何れか一項に記載のポリイミドフィルムを含む積層体。
【請求項17】
前記基板の少なくとも1つの他面に、
ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層から選択される1つ以上のコーティング層をさらに含む、請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
請求項12から15の何れか一項に記載のポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項19】
請求項12から15の何れか一項に記載のポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルム形成用組成物、その製造方法、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(liquid crystal displayまたは有機発光表示装置(organic light emitting diode display)などの薄型表示装置に代表されるディスプレイ装置は、スマートフォン、タブレットPCだけでなく、最近の各種ウェアラブル機器に至るまで、携帯性を特徴とする各種スマート機器を含む。かかるスマート機器は、スクラッチまたは外部衝撃からディスプレイパネルを保護するために、ディスプレイパネル上にディスプレイ装置用カバーウィンドウが備えられている。かかるディスプレイ装置用カバーウィンドウとして、従来は強化ガラスを用いたが、柔軟性を付与するために、最近はポリイミドに代表されるプラスチックフィルムなどに代替されている。
【0003】
近年、各種スマート機器に柔軟性およびフレキシブル性が求められ、さらには折り畳めるフォルダブル特性まで求められるなど、柔軟性に対する要求性能は次第に高度化されている。
【0004】
一方、スマート機器の最外面ウィンドウ基板に適用するためには、ディスプレイ視野角を確保するための透過率、低い屈折率、位相遅延などの優れた光学的物性が必須である。しかし、通常のポリイミドの色は、褐色または黄色を帯びる。これは、ポリイミドの分子内(intra molecular)および分子間(inter molecular)相互作用による電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)が主な原因である。これは、ポリイミドフィルムの光透過率を低下させ、複屈折を高めて狭い視野角の問題を生じさせる。関連の先行技術として、KR10-2015-0046463Aには、無色透明でありながらも複屈折および位相差特性を改善するために、多様な二無水物およびジアミン化合物を用いてポリアミック酸溶液を製造し、それを用いてポリイミドフィルムを製造する方法が開示されている。
【0005】
また、ポリイミドなどのプラスチックフィルムをフォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置に適用可能にするためには、機械的物性の向上が求められる。このために、リジッド(rigid)な構造の単量体を多量用いる方法が提案された。しかし、この場合、黄色度が増加するか、またはガラスなどの基板に対する接着力の減少を示す。
【0006】
したがって、上述した要求性能を満たし、高価の強化ガラスを代替することができる、カバーウィンドウに適用可能な素材に対する開発は依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】KR10-2015-0046463A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、高度化されたカバーウィンドウの要求性能を満たすことができるポリイミドフィルム形成用組成物、その製造方法、およびその用途を提供する。
他の実施形態は、低い黄色度、低いヘイズ、および常温安定性を同時に実現することができるポリイミドフィルムおよびそれを含む積層体を提供する。
【0009】
また他の実施形態は、上述した物性を実現するためのポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法およびポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
さらに他の実施形態は、強化ガラスなどを代替するカバーウィンドウおよびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、一実施形態は、芳香族ジアミンおよび二無水物から誘導された単位を含むポリアミック酸またはポリイミドと、アミド系溶媒と、炭化水素系溶媒とを含み、下記式1を満たす、ポリイミドフィルム形成用組成物が提供される。
【0011】
[式1]
1,000≦VPI≦3,500
【0012】
[前記式1中、
VPIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が20重量%である際のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で25℃、52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準に測定された粘度(単位、cp)である。]
【0013】
また、一実施形態は、上述したポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法が提供され、その製造方法は、具体的に、アミド系溶媒下で、芳香族ジアミンと二無水物を反応させてポリアミック酸を製造するステップと、前記式1を満たすように炭化水素系溶媒を追加投入して反応させるステップとを含んでもよい。
【0014】
また、一実施形態は、上述したポリイミドフィルム形成用組成物を用いたポリイミドフィルムの製造方法が提供され、その製造方法は、具体的に、本発明に係るポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布する塗布ステップと、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を乾燥および加熱して硬化させる硬化ステップとを含んでもよい。
【0015】
また、一実施形態は、上述したポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布後に硬化させて得たポリイミドフィルムおよびそれを含む積層体が提供される。
【0016】
また、一実施形態は、上述したポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびフレキシブルディスプレイパネルが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本開示によると、ポリアミック酸と混合溶媒のインタラクション(interaction)を阻害させ、硬化時に分子間のパッキング密度を顕著に減少させることができる。そこで、無色透明な性能が低下せず、且つ、優れた光学的物性を実現するとともに、向上した接着性を有するポリイミドフィルムを提供することができる。また、柔軟で且つ曲げ特性に優れており、フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウに適用することができる。
【0018】
本開示によると、ポリイミドフィルムの短所である分子間相互作用を効率的に制御することで、優れた接着性を有しながらも、従来のポリイミドフィルムと同等レベルの光学的物性を発現することができる。このため、ディスプレイパネルのカバーウィンドウとして使用する際、視認性の問題となるムラ(mura)現象、特に位相差による虹ムラ(rainbow mura)を効果的に抑制しており、それを含むディスプレイパネルの信頼度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムを常温で放置した後に撮影した写真である。
【
図2】実施例2のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムを常温で放置した後に撮影した写真である。
【
図3】実施例3のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムを常温で放置した後に撮影した写真である。
【
図4】実施例4のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムを常温で放置した後に撮影した写真である。
【
図5】実施例5のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムを常温で放置した後に撮影した写真である。
【
図6】実施例6のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムを常温で放置した後に撮影した写真である。
【
図7】比較例1のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムを常温で放置した後に撮影した写真である。
【
図8】比較例3のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムを常温で放置した後に撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のポリイミドフィルム形成用組成物、その製造方法、およびその用途について詳しく説明する。但し、これは、特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限しようとするものではない。
【0021】
また、本発明の説明で用いられる技術用語および科学用語は、他の定義がない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有する。
【0022】
本発明を記述する明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0023】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」または「上部に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含む。
【0024】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味する。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味し、AおよびBの中から択一された態様を意味し得る。
【0025】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「置換された」とは、化合物中の水素原子が置換基で置換されたことを意味し、例えば、前記置換基は、重水素、ハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1~C30アルキル基、C2~C30アルケニル基、C2~C30アルキニル基、C6~C30アリール基、C1~C30アルコキシ基、C3~C30ヘテロアルキル基、C3~C30シクロアルキル基、C3~C30ヘテロシクロアルキル基、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。ここで、前記シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基は、部分的に不飽和されたものであってもよい。
【0026】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、重合体は、オリゴマーを含み、ホモポリマーおよび共重合体を含む、前記共重合体は、交互重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらを全て含む。
【0027】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、ポリアミック酸は、アミック酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、ポリイミドは、イミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味する。
【0028】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ムラ現象」は、特定の角度で引き起こされ得る光による全ての歪み現象を包括する意味として解釈されてもよい。例えば、ポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置において、画面が黒く見えるブラックアウト現象、ホットスポット現象、または虹ムラを有するレインボー現象など、光による歪みが挙げられる。
【0029】
以下、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物を説明する。
従来、ポリイミドフィルムに機能性を付与し、且つ、光学的物性および機械的物性を増加させるために、多様な構造の単量体を組み合わせたり変更したりする試みは多かった。しかし、機械的物性および光学的物性は、互いにトレードオフ(trade-off)関係にあり、かかる試みは、機械的物性が良くなるとしても、機能性が低下したり光学的物性が劣化したりする、極めて一般的な結果を得るしかなかった。そこで、優れた機械的物性、機能性、および光学的物性を同時に付与可能な新しい試みが必要である。本発明の発明者らは、ポリイミドフィルムを形成するための組成物(以下、ポリイミドフィルム形成用組成物ともいう)の溶媒条件を変更することで、具体的に、ポリアミック酸(以下、ポリイミド前駆体ともいう)および/またはポリイミドの重合溶媒として用いることができず、ポリイミドとの親和性がない無極性溶媒を適用することで、これらの物性を同時に改善可能であることを確認した。
【0030】
前記無極性溶媒を適用することで、ポリイミドフィルムの光学的物性、機能性、および機械的物性が同時に改善されることができ、特に、既存の光学用接着フィルムと同等なレベル以上の接着性を有し、且つ、改善された黄色度を有し、光による歪み現象が顕著に低減されたポリイミドフィルムを提供することができる。これにより、一実施形態に係るポリイミド形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムは、フォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置に適用可能な新しい基板素材またはカバーウィンドウ素材に適用することができ、前記ポリイミドフィルムは、優れた視認性を有することで、ユーザの目の疲労感を最小化させることができる。
【0031】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、ポリアミック酸および/またはポリイミドと、極性溶媒と、無極性溶媒とを含んでもよい。前記極性溶媒は、親水性溶媒であってもよく、例えば、ポリアミック酸および/またはポリイミドと親和性があってもよく、例えば、アミド系溶媒であってもよい。また、前記無極性溶媒は、ポリアミック酸および/またはポリイミドと親和性がほぼなくてもよく、例えば、炭化水素系溶媒であってもよい。
【0032】
特定の理論に拘るものではないが、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を用いることで、重合体と重合体との間の分子間相互作用(intermolecular interaction)および/または重合体と溶媒との間の相互作用を効果的に阻害させることができ、硬化時に分子間のパッキング密度が顕著に低下して目的とする優れた光学的物性および機械的物性が同時に向上することができる。
【0033】
そこで、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、単にポリアミック酸の重合ステップでの混合溶液とは異なる分子間挙動および相互作用を示すことができる。例えば、ポリアミック酸を重合するステップにおいて、前記炭化水素系溶媒を含む場合、重合を妨害する要因として作用して高分子量のポリアミック酸を得ることができない。これに対し、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物においては、十分な高分子量のポリアミック酸および/またはポリイミドを得た後、炭化水素系溶媒が混合されることで、重合体間の分子間相互作用および/または重合体と溶媒との強い相互作用を弱化させる触媒の役割をすることができ、その後の硬化時に目的とする光学的物性を得ることができる。
【0034】
具体的に、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、芳香族ジアミンおよび二無水物から誘導された単位を含むポリアミック酸またはポリイミドと、アミド系溶媒と、炭化水素系溶媒とを含み、下記式1を満たすことができる。特定の理論に拘るものではないが、かかる条件を満たすポリイミドフィルム形成用組成物は、コーティング層、すなわち、ポリイミドフィルムのパッキング密度を阻害し無定形(amorphous)にして光学的物性が向上するものであってもよい。
【0035】
[式1]
1,000≦VPI≦3,500
【0036】
[前記式1中、
VPIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、固形分含量が20重量%である際のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で25℃、52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準に測定された粘度(単位、cp)である。ここで、前記固形分は、前記ポリアミック酸および/または前記ポリイミドであってもよい。]
【0037】
これにより、黄色度が2.5以下、ヘイズが0.1以下の光学的物性を同時に満たすポリイミドフィルムを提供することができる。また、一実施形態によると、向上した黄色度の実現はいうまでもなく、ガラスなどのような基板に対する優れた接着力を示しており、向上した耐飛散性を有するという点で、その効果が注目するに値する。さらに、前記ポリイミドフィルムは、向上した接着力はいうまでもなく、優れた機械的物性を有することができる。
【0038】
より具体的に、芳香族ジアミンおよび二無水物から誘導された単位を含むポリアミック酸と、アミド系溶媒とを含むポリアミック酸溶液に、前記式1を満たすように炭化水素系溶媒を混合してもよい。ここで、前記アミド系溶媒と炭化水素系溶媒を順次用いることで、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸と溶媒のインタラクションをさらに適切な範囲に調節することができる。ここで、前記調節は、阻害を意味し得る。
【0039】
前記アミド系溶媒は、アミドモイエティを含む化合物を意味する。前記アミド系溶媒は、芳香族または脂肪族であってもよいが、例えば、脂肪族であってもよい。また、例えば、前記アミド系溶媒は、環式化合物または鎖式化合物であってもよく、具体的に、2~15の炭素数を有してもよく、例えば、3~10の炭素数を有してもよい。
【0040】
前記アミド系溶媒は、N,N-ジアルキルアミドモイエティを含んでもよく、ジアルキル基は、それぞれ独立して存在するか、互いに縮合して環を形成するか、または前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基が分子内の他の置換基と縮合して環を形成してもよく、例えば、前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基がアミドモイエティのカルボニル炭素に連結されたアルキル基と縮合して環を形成してもよい。ここで、前記環は、4~7員環であってもよく、例えば、5~7員環であってもよく、例えば、5員または6員環であってもよい。前記アルキル基は、例えば、C1~C10アルキル基、例えば、C1~C8アルキル基、例えば、メチルまたはエチルなどであってもよい。
【0041】
より具体的に、前記アミド系溶媒は、ポリアミック酸重合に一般的に用いられるものであれば制限されないが、例えば、ジメチルプロピオンアミド、ジエチルプロピオンアミド、ジメチルアセチルアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、エチルピロリドン、オクチルピロリドン、またはこれらの組み合わせであってもよく、具体的には、ジメチルプロピオンアミドを含んでもよい。
【0042】
前記炭化水素系溶媒は、前述したように無極性分子であってもよい。
前記炭化水素溶媒は、炭素および水素からなる化合物であってもよい。例えば、前記炭化水素系溶媒は、芳香族または脂肪族であってもよく、例えば、環式化合物または鎖式化合物であってもよいが、具体的には、環式化合物であってもよい。ここで、前記炭化水素溶媒が環式化合物である場合、単環または多環を含んでもよく、前記多環は縮合環または非縮合環であってもよいが、具体的には単環であってもよい。
【0043】
前記炭化水素系溶媒は、3~15の炭素数を有してもよく、例えば、6~15の炭素数を有してもよく、例えば、6~12の炭素数を有してもよい。
前記炭化水素系溶媒は、置換または非置換のC3~C15シクロアルカン、置換または非置換のC6~C15芳香族化合物、またはこれらの組み合わせであってもよい。ここで、前記シクロアルカンは、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、またはこれらの組み合わせであってもよく、前記芳香族化合物は、ベンゼン、ナフタレン、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0044】
前記炭化水素系溶媒は、少なくとも1つのC1~C5アルキル基で置換または非置換のシクロアルカン、少なくとも1つのC1~C5アルキル基で置換または非置換の芳香族化合物、またはこれらの組み合わせであってもよく、ここで、前記シクロアルカンおよび芳香族化合物は、それぞれ前述したとおりである。
【0045】
前記C1~C5アルキル基は、例えば、C1~C3アルキル基、例えば、C1またはC2アルキル基であってもよく、より具体的に、メチル基であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
また、前記炭化水素系溶媒は、必要に応じて酸素をさらに含んでもよい。例えば、前記炭化水素系溶媒が酸素を含む場合、ケトン基やヒドロキシ基を含んでもよく、例えば、シクロペンタノン、クレゾール、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0047】
具体的に、前記炭化水素系溶媒は、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、クレゾール、またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
より具体的に、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、ジメチルプロピオンアミドを含むアミド系溶媒と、トルエン、ベンゼン、およびシクロヘキサンなどから選択される炭化水素系溶媒と、を含む混合溶媒を含んでもよい。
【0049】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物において、前記芳香族ジアミンは、当該分野で通常用いられるものであれば制限されずに用いられてもよい。その非限定的な一例としては、p-PDA(p-フェニレンジアミン)、m-PDA(m-フェニレンジアミン)、4,4’-ODA(4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ODA(3,4’-オキシジアニリン)、BAPP(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン)、TPE-Q(1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TPE-R(1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、BAPB(4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル)、BAPS(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、m-BAPS(2,2-ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、HAB(3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル)、TB(3,3’-ジメチルベンジジン)、m-TB(2,2’-ジメチルベンジジン)、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、APB(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、1,4-ND(1,4-ナフタレンジアミン)、1,5-ND(1,5-ナフタレンジアミン)、DABA(4,4’-ジアミノベンズアニリド)、6-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、および5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールなどから選択される1つまたは2つ以上が挙げられる。
【0050】
また、前記芳香族ジアミンは、全光線透過率が高く、ヘイズが低いフィルムを提供するという面で、フッ素系芳香族ジアミンを含んでもよい。ここで、前記フッ素系芳香族ジアミンの具体的な態様としては、TFMB(2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)などが挙げられ、これを単独で用いるか、または他の公知の芳香族ジアミンと混合して用いてもよいことはいうまでもない。
【0051】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物において、前記二無水物は、当該分野で通常用いられるものであれば制限されずに用いられてもよい。その非限定的な一例としては、PMDA(ピロメリット酸二無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(4,4’-オキシジフタル酸無水物)、BPADA(4,4’-(4,4’-イソプロピルビフェノキシ)ビフタル酸無水物)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、6FDA(2,2-ビス-(3,4-ジカルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物)、TMHQ(p-フェニレンビストリメリット酸モノエステル無水物)、ESDA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物)、NTDA(ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)、およびTMEG(エチレングリコールビス(アンヒドロ-トリメリテート)などから選択される1つまたは2つ以上が挙げられる。
【0052】
また、一実施形態に係る前記二無水物は、TMEG(エチレングリコールビス(アンヒドロ-トリメリテート)を含んでもよく、これにより、フィルムの機械的強度を増加させるためにリジッドな構造の単量体を導入しなくても良好な機械的物性を実現することができる。また、これより製造されたポリアミック酸と溶媒のインタラクションを効果的に阻害して硬化時に分子間のパッキング密度を顕著に下げ、目的とする光学的物性に卓越した利点を提供することができる。また、前記二無水物は、必要に応じて、PMDA(ピロメリット酸二無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(4,4’-オキシジフタル酸無水物)、BPADA(4,4’-(4,4’-イソプロピルビフェノキシ)ビフタル酸無水物)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、6FDA(2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物)、TMHQ(p-フェニレンビストリメリット酸モノエステル無水物)、ESDA(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物)、およびNTDA(ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)などから選択される1つまたは2つ以上と混合して用いてもよく、これに制限されるものではない。
【0053】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物において、前記二無水物は、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene Dianhydride)(BPAF)などのようなリジッドな構造の単量体をさらに含んでもよい。
【0054】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物において、前記二無水物は、必要に応じて、環状脂肪族二無水物をさらに含んでもよいことはいうまでもない。
【0055】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、上記で例示された芳香族ジアミンおよび二無水物から誘導された単位を含むポリアミック酸および/またはポリイミドを含む。
【0056】
前記ポリアミック酸および/またはポリイミドは、10,000~80,000g/mol、または10,000~70,000g/mol、または10,000~60,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0057】
前記ポリアミック酸および/またはポリイミドが通常のアミド系溶媒単独に溶解される場合、溶液の粘度は4,000cp以上、または5,000cp以上、または7,000cp以下の範囲であってもよい。ここで、前記溶液の粘度は、溶液の総重量に対して、固形分含量が20重量%である際の粘度を意味する。ここで、固形分は、前記ポリアミック酸および/またはポリイミドであってもよい。
【0058】
その反面、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、20重量%の高含量の固形分を含むとしても、組成物の粘度を顕著に下げることができ、これにより、高固形分の低粘度で薄膜コーティング工程に適用することができる。通常、薄膜コーティングを行うためには、15重量%以上(組成物の総重量に対して)の高い固形分含量が求められるが、ポリイミドの場合、固形分の濃度が高くなるほど、粘度も高くなる傾向がある。ここで、薄膜コーティング工程において高分子の流れが良くないと、気泡の発生およびコーティングにムラが発生する。しかし、本発明を適用すると、かかる薄膜コーティング工程の不良を効果的に防止することができるため、さらに向上した光学的物性を実現することができる。それのみならず、上述したようにアミド系溶媒単独に溶解される場合、高い粘度により固形分の濃度を高めることが難しいため工程効率性を減少させたが、一実施形態によると、かかる問題を招かず、且つ、高い固形分含量を有するポリイミドフィルム形成用組成物として用いることができるため商業的にも有利である。
【0059】
前記ポリイミドフィルム形成用組成物の固形分含量は、ポリイミドフィルム形成用組成物の総重量を基準に40重量%以下、または35重量%以下、または10~30重量%の範囲を満たしてもよい。
【0060】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物の粘度(VPI)は3,000cp以下、または2、500cp以下、または1,000~2,000cpを満たしてもよい。
【0061】
一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、前記炭化水素系溶媒を5~60重量%で含んでもよい。ここで、前記重量%は、溶媒の総重量を基準とし、基準となる前記溶媒の総重量は、前記アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の総重量の和を意味する。
【0062】
また、さらに改善された黄色度およびヘイズを実現するという面で、前記炭化水素系溶媒を15重量%以上、または25重量%以上で含んでもよい。また、前記炭化水素系溶媒を25~60重量%で含む場合、その効果とともに、ガラスなどの基板との接着力をさらに顕著に向上させることができる。
【0063】
また、一実施形態においては、上述したポリイミドフィルム形成用組成物を用いて製造された成形体を提供する。
一実施形態に係る成形体の第1態様は、ポリイミドフィルムであってもよい。
また、一実施形態に係る成形体の第2態様は、前記ポリイミドフィルムを含む積層体であってもよい。
【0064】
また、一実施形態に係る成形体の第3態様は、前記ポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置用カバーウィンドウであってもよい。
また、一実施形態に係る成形体の第4態様は、前記ポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルであってもよい。
【0065】
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が2.5以下、または2.0以下、または1.85以下を満たしてもよい。
【0066】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、上述した黄色度を満たすとともに、ASTM D1003に準じたヘイズが0.1以下、0.08以下、または0超過0.05未満であってもよい。
【0067】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、上述した黄色度、およびヘイズなどの優れた光学的物性を満たすとともに、光による歪み現象を顕著に低減させる。
【0068】
前記物性を全て満たすための本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは次のように例示することができるが、これに制限されるものではない。
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、前記芳香族ジアミンおよび二無水物から誘導された単位を含み、前記芳香族ジアミンおよび二無水物は、1:0.9~1:1.1のモル比で混合して重合してもよい。ここで、一実施形態に係るポリアミック酸溶液を製造した後に投入される炭化水素系溶媒は、前記ポリイミドフィルムの向上した光学的物性に利点を提供する。また、組成物の粘度を顕著に下げて工程上の利点を提供する。
前記炭化水素系溶媒は、例えば、トルエン、ベンゼン、およびシクロヘキサンなどから選択されてもよい。
【0069】
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)などのフッ素系芳香族ジアミンおよびTMEG(エチレングリコールビス(アンヒドロ-トリメリテート)から誘導された単位を含んでもよく、ガラスなどの基板に塗布されて熱硬化されてもよい。また、化学硬化法、赤外線硬化法、バッチ式硬化法、連続式硬化法などの公知の多様な方法に代替されるか、または異種の硬化方式が適用されてもよい。
【0070】
前記ポリイミドフィルムを形成するための塗布方法は、当該分野で通常用いられるものであれば制限されずに用いられてもよく、その非限定的な一例としては、ナイフコーティング(knife coating)、ディップコーティング(dip coating)、ロールコーティング(roll coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、リップダイコーティング(lip die coating)、スライドコーティング(slide coating)、およびカーテンコーティング(curtain coating)などが挙げられ、これに対して同種または異種を1回以上順次適用可能であることはいうまでもない。
【0071】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、ガラスなどの基板との接着力が5gf/in以上であってもよく、または10gf/in以上、または15gf/in以上であってもよい。
【0072】
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、分子間密集度が減少し、それをフレキシブルディスプレイのカバーウィンドウなどに適用する場合、画面歪みを引き起こさないためさらに好ましい。また、本発明によると、前述したように、リジッドな構造的特徴を有するバルキー(bulky)な構造の9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)などを用いなくても、かかる現象を改善することを見出し、目的とする光学的物性が顕著な透明ポリイミドフィルムを提供することができる。
【0073】
一実施形態に係るポリイミドフィルムをなすポリイミドの重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、10,000g/mol以上、20,000g/mol以上、または25,000~80,000g/molであってもよい。また、ガラス転移温度は、制限されるものではないが、100~400℃、より具体的に、100~380℃であってもよい。前記範囲では、光学的物性に優れ、機械的強度に優れ、カールの発生が少ないフィルムを提供することができるため好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0074】
また、一実施形態に係る積層体は、基板上に形成された本発明のポリイミドフィルムを含んでもよい。ここで、前記積層体は、互いに異なる組成の単量体を含むポリイミドフィルム形成用組成物を用いて、少なくとも2層以上のコーティング層、すなわち、ポリイミドフィルムが形成されてもよい。
【0075】
必要に応じて、前記積層体は、ポリイミドフィルムまたは基板の少なくとも1つの他面に機能性コーティング層をさらに含んでもよい。前記機能性コーティング層の非限定的な一例としては、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層などが挙げられ、少なくとも1つまたは2つ以上の機能性コーティング層を備えてもよい。
【0076】
飛散を防止するために、前記成形体は、基板の一面に一実施形態に係るポリイミドフィルムを含み、前記基板の少なくとも1つの他面にハードコーティング層を含んでもよい。
【0077】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物を用いて製造された成形品の具体的な一例としては、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ、保護膜または絶縁膜を含むプリント配線板、フレキシブル回路基板などが挙げられ、これに制限されない。また、強化ガラスを代替可能な保護フィルムに適用することができ、向上した光学的物性によりディスプレイを含めて多様な産業分野にその応用の幅が広いという長所がある。
【0078】
低いヘイズはいうまでもなく、低い黄色度のような優れた光学的物性により、具体的に、フレキシブルディスプレイパネルなどのカバーウィンドウとして用いることができる。一実施形態に係るポリイミドフィルムを含むカバーウィンドウは、優れた光学的物性を有するだけでなく、多様な角度においても十分な位相差を示すことで広い視野角を確保することができる。
【0079】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物を用いて製造された成形品の具体的な一例としては、上述したカバーウィンドウを含むフレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置などが挙げられ、これに制限されない。この際、前記カバーウィンドウは、フレキシブルディスプレイ装置の最外面ウィンドウ基板として用いられてもよい。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。
【0080】
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、厚さが1~500μm、または10~250μm、または10~100μmに形成されてもよい。
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムは、目的に応じて、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層などから選択される1つまたは2つ以上の機能性コーティング層をさらに含んでもよい。この際、前記機能性コーティング層の厚さは1~500μm、または2~450μm、または2~200μmであってもよい。
【0081】
上述した本発明のカバーウィンドウを含むディスプレイ装置は、表示される表示品質に優れるだけでなく、耐飛散性はいうまでもなく、光による歪み現象が顕著に低減されることで、優れた視認性によりユーザの目の疲労感を最小化させることができる。特に、ディスプレイ装置の画面サイズが大きくなるにつれ、側面から画面を見る場合が多くなるが、本発明に係るポリイミドフィルムをディスプレイ装置に適用する場合、側面から見ても視認性に優れるため、大型ディスプレイ装置に有用に適用することができる。
【0082】
また、上述した一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒下で、芳香族ジアミンと二無水物を反応させてポリアミック酸を製造するステップと、前記式1を満たすように炭化水素系溶媒を追加投入して反応させるステップとを含む製造方法により製造されてもよい。
【0083】
また、一実施形態は、上述したポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
一実施形態において、黄色度(YI)が2.5以下、ヘイズが0.1以下の物性を同時に満たすことができるフィルムが製造されるのであれば、製造方法は制限されず、後述の方法は一例として具体的に例示するものにすぎず、前記物性を満たすフィルムが製造されるのであれば、後述の方法に制限されない。
【0084】
具体的に、一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミドフィルム形成用組成物をガラスなどの基板上に塗布した後、熱硬化するか、または乾燥および熱硬化して製造されてもよい。より具体的に、アミド系溶媒下で、芳香族ジアミンおよび二無水物から誘導された単位を含むポリアミック酸溶液を製造した後、前記式1を満たすように炭化水素系溶媒を追加投入して製造されたポリイミドフィルム形成用組成物を製造するステップと、前記ポリイミドフィルム形成用組成物をガラスなどの基板上に塗布する塗布ステップと、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を硬化させる硬化ステップとを含んでもよい。
【0085】
前記硬化ステップは、乾燥および熱硬化により行われてもよい。
前記乾燥は30~70℃、または35~65℃、または40~55℃で行われてもよい。
前記熱硬化は80~300℃、または100~280℃、または150~250℃で行われてもよい。
【0086】
前記熱硬化は、80~100℃で1分~2時間、または100超過~200℃で1分~2時間、または200超過~300℃で1分~2時間行われてもよく、これらから選択される2以上の温度条件下で段階的な熱硬化が行われてもよい。また、熱硬化は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われてもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0087】
前記硬化ステップは、化学的硬化により行われてもよい。
前記化学的硬化は、イミド化触媒を用いて行われてもよく、前記イミド化触媒の非限定的な一例として、前記イミド化触媒としては、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)、およびβ-キノリン(β-quinoline)などから選択される何れか1つまたは2つ以上を用いてもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0088】
一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法において、必要に応じて、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布した後、常温で放置する放置ステップをさらに含んでもよい。前記放置ステップにより、フィルム表面の光学的物性をさらに安定的に維持させることができる。特定の理論に拘るものではないが、従来のポリイミドフィルム形成用組成物は、硬化前にかかる放置ステップが行われると、溶媒が空気中の水分を吸収し、内部に水分が広がり、ポリアミック酸および/またはポリイミドと衝突して、フィルム表面から白濁が発生し、凝集現象が発生してコーティング不均一性が発生し得る(
図7および
図8参照)。これに対し、本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、空気中に長時間放置されるとしても、白濁現象および凝集現象がなく、向上した光学的物性を有するフィルムを確保可能であるという長所を実現することができる(
図1~
図6参照)。
【0089】
前記放置ステップは、常温および/または高湿条件で行われてもよい。ここで、前記常温は、40℃以下であってもよく、例えば、30℃以下であってもよく、例えば、25℃以下であってもよく、より具体的には、15~25℃であってもよく、例えば、20~25℃であってもよい。また、前記高湿とは、例えば50%以上、例えば60%以上、例えば70%以上、例えば80%以上の相対湿度であってもよい。
前記放置するステップは、1分から3時間、例えば、10分から2時間、例えば、20分から1時間行われてもよい。
【0090】
また、一実施形態に係るポリイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミック酸溶液に、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などから選択される1つまたは2つ以上の添加剤を混合してポリイミドフィルムを製造してもよい。
【0091】
前記基板は、当該分野で通常用いられるものであれば制限されずに用いられてもよく、その非限定的な一例としては、ガラス;ステンレス;またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、2酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロハン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリトリフルオロエチレンなどのプラスチックフィルム;などを用いてもよいが、これに制限されない。
【0092】
以下、具体的な説明のために一実施例を挙げて説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
下記の実施例において、物性は次のように測定した。
【0093】
<粘度(VPI)>
粘度は、平板レオメータ(Plate rheometer(モデル名:LVDV-III Ultra、Brookfield製造))でポリイミドフィルム形成用組成物(固形分の濃度:20重量%)0.5ulを容器に入れ、スピンドルを下げ、rpmを調節してトルクが80%となる時点で2分間待機した後、トルクの変化がないときの粘度値を測定した。この際、前記粘度は、52Zスピンドルを用いて、25℃の温度条件で測定した。単位はcpである。
【0094】
<黄色度(YI)>
ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて測定した。
【0095】
<ヘイズ(haze)>
ASTM D1003の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて測定した。単位は%である。
【0096】
<重量平均分子量>
0.05M LiClを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCはWaters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Refractive Index detectorを用い、ColumnはOlexis、Polypore、およびmixed Dカラムを連結し、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を用いた。この際、35℃、1mL/minのフローレート(flow rate)で分析した。
【0097】
[実施例1]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)133.5gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)39gを溶解させた。これに、TMEG100(エチレングリコールビス(アンヒドロ-トリメリテート)50gを50℃の温度で添加し、溶解させつつ撹拌した。6時間の撹拌後、25℃でトルエン(Toluene)133.5gを投入し、18時間撹拌した。その後、固形分含量が20重量%となり、組成物中のトルエンの含有量がDMPAおよびトルエンの全体重量に対して50重量%(すなわち、DMPA:Toluene=50重量%:50重量%)となるようにDMPAおよび/またはトルエンを添加した。製造されたポリイミドフィルム形成用組成物の粘度は、下記表2に示した。
【0098】
[実施例2~実施例7]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
DMPAおよびトルエンの全体重量に対してトルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすようにDMPAおよび/またはトルエンを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法によりポリイミドフィルム形成用組成物を製造した。製造されたポリイミドフィルム形成用組成物の粘度は、下記表2に示した。
【0099】
[実施例8]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌器内にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)82.7gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)21.3gを溶解させた。これに、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)20gを50℃の温度で添加し、溶解させつつ撹拌した。6時間の撹拌後、25℃でトルエン(Toluene)87gを投入し、18時間撹拌した。その後、固形分含量が20重量%となり、組成物中のトルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすようにDMPAおよび/またはトルエンを添加した。
【0100】
[実施例9]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌器内にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)80.9gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)20.43gを溶解させた。これに、ODPA(4,4’-オキシジフタル酸無水物)20gを50℃の温度で添加し、溶解させつつ撹拌した。6時間の撹拌後、25℃でトルエン(Toluene)80.9gを投入し、18時間撹拌した。その後、固形分含量が20重量%となり、組成物中のトルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすようにDMPAおよび/またはトルエンを添加した。
【0101】
[実施例10]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌器内にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)64.3gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)12.15gを溶解させた。これに、BPADA(4,4’-(4,4’-イソプロピルビフェノキシ)ビフタル酸無水物)20gを50℃の温度で添加し、溶解させつつ撹拌した。6時間の撹拌後、25℃でトルエン(Toluene)64.3gを投入し、18時間撹拌した。その後、固形分含量が20重量%となり、組成物中のトルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすようにDMPAおよび/またはトルエンを添加した。
【0102】
[実施例11]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌器内にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)143gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、6FAPB(1,4-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)benzene)36.5gを溶解させた。これに、20gのTMEG100を50℃の温度で添加し、溶解させつつ撹拌した。6時間の撹拌後、25℃でトルエン(Toluene)143gを投入し、18時間撹拌した。その後、固形分含量が20重量%となり、組成物中のトルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすようにDMPAおよび/またはトルエンを添加した。
【0103】
[実施例12]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌器内にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)76.5gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、6FODA(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenyl ether)41gを溶解させた。これに、20gのTMEG100を50℃の温度で添加し、溶解させつつ撹拌した。6時間の撹拌後、25℃でトルエン(Toluene)76.5gを投入し、18時間撹拌した。その後、固形分含量が20重量%となり、組成物中のトルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすようにDMPAおよび/またはトルエンを添加した。
【0104】
[比較例1]
窒素気流が流れる撹拌器内にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)267gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)39gを溶解させた。これに、TMEG100(エチレングリコールビス(アンヒドロ-トリメリテート)50gを50℃の温度で添加し、6時間溶解させつつ撹拌した。その後、固形分含量が20重量%となるようにDMPAを添加した。製造されたポリイミドフィルム形成用組成物の粘度は、下記表2に示した。
【0105】
[比較例2]
DMPAおよびトルエンの全体重量に対してトルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすようにDMPAおよび/またはトルエンを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法によりポリイミドフィルム形成用組成物を製造した。製造されたポリイミドフィルム形成用組成物の粘度は、下記表2に示した。
【0106】
[比較例3]
窒素気流が流れる撹拌器内にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)294.3gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)31.2gを溶解させた。前記TFMB溶液に、TMEG100(エチレングリコールビス(アンヒドロ-トリメリテート)20gおよびBPAF(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene Dianhydride))22.35gを50℃の温度で添加し、6時間溶解させつつ撹拌した。その後、固形分含量が20重量%となるようにDMPAを添加した。
【0107】
[比較例4]
前記比較例1において、DMPAの代わりにDEF(N,N-dietyhlformamide)を用い、DEFおよびトルエンの全体重量に対してトルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすようにDEFおよび/またはトルエンを添加したことを除いては、比較例1と同様の方法によりポリイミドフィルム形成用組成物を製造した。製造されたポリイミドフィルム形成用組成物の粘度は、4,000cpに確認された。
【0108】
【0109】
<フィルム形成性および光学的特性の評価>
ガラス基板(1.0T)の一面に、前記実施例1~12および比較例1~4のポリイミドフィルム形成用組成物をそれぞれ#20メイヤーバー(meyer bar)で塗布し、窒素雰囲気下で、50℃で1分間乾燥した。その後、230℃で10分間加熱してコーティング層を形成し、その物性を測定して下記表2に示した。
【0110】
【0111】
前記表1および表2を参照すると、本発明に係るポリイミドフィルム形成用組成物は、1,000~3,500cpの粘度を有し、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を含むことで、フレキシブルディスプレイのカバーフィルムとして用いるのに十分な厚さを有する膜を形成可能であることを確認することができる。
【0112】
これに対し、比較例2により製造されたポリイミドフィルム形成用組成物は、初期の重合固形分が高いため、溶液の粘度が制御できないほど高くなって重合が不可であった。また、比較例4により製造されたポリイミドフィルム形成用組成物は、固形分と対比して粘度が高く、気泡が除去されないため工程上の不利があり、コーティング表面が不均一に製造された。そこで、硬化後のコーティング層の表面が多少粗くて不良に評価し、ポリイミドフィルムの製造に適していないことを確認することができる。さらに、比較例4のポリイミドフィルム形成用組成物は、コーティング後の表面が粗くて光学的物性が顕著に低下することも確認した。
【0113】
一方、本発明に係るポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムは、顕著に改善された黄色度を示すことはいうまでもなく、優れた光学的特性を実現することを確認することができた。また、画面の歪み現象を改善するとともに、柔軟で、且つ、曲げ特性に優れており、フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウとして有用に適用することができる。
また、本発明に係るポリイミドフィルムは、優れた接着力を示すため、優れた耐飛散性を有することを確認することができる。
【0114】
これに対し、比較例1により製造されたポリイミドフィルム形成用組成物は、熱硬化時に分子間のパッキング密度が増加し、これより製造されたポリイミドフィルムの黄色度およびヘイズ値が大きい。しかし、本発明の実施例のフィルムは、比較例1のフィルムに比べて黄色度およびヘイズ値が小さいため、優れた透明性を有することを確認することができる。
【0115】
<常温安定性の評価>
ガラス基板(1.0T)の一面に、前記実施例1~12および比較例1~4のポリイミドフィルム形成用組成物をそれぞれ#20メイヤーバー(meyer bar)で塗布し、50℃で1分間乾燥した。その後、温度24℃、湿度80%で30分間放置した後、ポリイミドフィルムの写真を撮影した。
【0116】
図1~
図8は、それぞれ、前記条件で、実施例1~6、比較例1、および比較例3のポリイミドフィルム形成用組成物から製造された後に放置されたフィルムを撮影した写真である。
【0117】
図1~
図8を参照すると、実施例1~6のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムは、白濁現象および凝集現象が発生しなかったが、比較例1および3のポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリイミドフィルムは、表面から白濁現象が発生するかまたは凝集現象が発生することを確認することができる。かかる結果から、一実施形態に係るポリイミドフィルム形成用組成物から製造されたフィルムは、高湿条件においても、比較例に比べて常温安定性に優れており、これにより、優れたコーティング性、光学的特性、および生産性を確保可能であることを確認した。
【0118】
以上、限定された実施形態により本明細書を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0119】
よって、本発明の思想は、説明された実施形態に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。