(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120813
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】超薄型銅箔とその作製方法
(51)【国際特許分類】
C25D 1/04 20060101AFI20220810BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20220810BHJP
C25D 3/38 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
C25D1/04 311
C25D7/06 A
C25D3/38 101
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011775
(22)【出願日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】202110161499.4
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521222176
【氏名又は名称】広東嘉元科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】叶 銘
(72)【発明者】
【氏名】廖 平元
(72)【発明者】
【氏名】劉 少華
(72)【発明者】
【氏名】謝 基賢
(72)【発明者】
【氏名】李 伝錚
(72)【発明者】
【氏名】古 明煌
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AA19
4K023AB20
4K023BA06
4K023CB08
4K023CB42
4K023DA02
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA08
4K024AA15
4K024AB02
4K024BA09
4K024BB11
4K024CA01
4K024CA02
4K024CA03
4K024CA04
4K024CA06
4K024DA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】超薄型銅箔の多様化、高性能化に対応するため、超薄型銅箔の厚みが薄く、性能が良い超薄型銅箔及びその作製方法を提供する。
【解決手段】シクロヘキサノール六リン酸と2-チオウラシルを有機層として金属箔担体に吸着した後、この有機層の上に希土類元素PrとNdを含むタングステン-ニッケル合金を成膜させて、3回の浸漬銅により超薄型銅箔を製造する。本発明の浸漬銅電解液にはリグニンスルホン酸ナトリウムとキトサンオリゴ糖の複合添加剤が含まれており、この浸漬銅電解液は合金層の希土類元素Pr、Ndの作用で超薄型銅箔の軽量化の均一成膜を実現し、超薄型銅箔が4μmの限界を突破して3.5μmの超軽量化を実現し、しかも引張性能が510MPaと高く、伸び率が最大10%に達し、軽量化の超薄型銅箔に優れた性能を与えている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)金属箔担体の表面に有機層を吸着させるステップ(1)であって、
シクロヘキサノール六リン酸と2-チオウラシルの混合水溶液に前記金属箔担体を浸漬して吸着させ、有機層吸着用担体を得て、
(2)吸着した前記有機層の表面に合金層を成膜するステップ(2)であって、
電流密度が25~30A/dm2、電解液の温度が48~50℃、pHが4.5~5.0で、前記有機層の表面に前記合金層を成膜させ、
前記電解液は、希土類元素のPrとNdを含むタングステン-ニッケル電解液であり、
(3)前記合金層の表面に超薄型銅箔層を成膜するステップ(3)であって、
成膜電解液は、リグニンスルホン酸ナトリウムとキトサンオリゴ糖を含む硫酸銅電解液であり、
前記シクロヘキサノール六リン酸の濃度が1~15g/Lであり、前記2-チオウラシルの濃度が1~8g/Lであり、
前記希土類元素のPrとNdを含む前記タングステン-ニッケル電解液には、硫酸ニッケルの濃度が20~35g/Lで、タングステン酸ナトリウムの濃度が20~35g/Lで、前記希土類元素Prの濃度が0.05~0.06g/Lで、Ndの濃度は0.03-0.04g/Lであり、
前記ステップ(3)の前記成膜電解液中の前記リグノスルホン酸ナトリウムの濃度は0.1~0.2g/L、前記キトサンオリゴ糖の濃度は10~25g/Lである、
というステップを含むこと、を特徴とする超薄型銅箔の作製方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)の浸漬吸着を室温で70~75秒間行うこと、を特徴とする請求項1に記載の超薄型銅箔の作製方法。
【請求項3】
前記金属箔が銅箔であること、を特徴とする請求項1に記載の超薄型銅箔の作製方法。
【請求項4】
前記ステップ(3)には、前記超薄型銅箔層は3回成膜で、第1回成膜電解液のCu2+濃度が65~68g/Lで、硫酸濃度が145~150g/Lで、第2回成膜電解液のCu2+濃度が20~30g/Lで、硫酸濃度が110~120g/Lで、第3回成膜電解液のCu2+濃度が60~65g/Lで、硫酸濃度が120~130g/Lで行うこと、を特徴とする請求項1に記載の超薄型銅箔の作製方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の作製方法により作製された超薄型銅箔である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超薄型銅箔の作製の技術分野に関し、特に超薄型銅箔とその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超薄型銅箔の生産技術は微細化、専門化の程度が高く、各環節の制御基準が高い製造技術である。電子製品の高集積化、小型化の進展に伴う、プリント基板は多層化、高集積化の方向に発展し、プリント配線パターンの線幅とピッチもますます微細化の方向に発展する。そのため、配線基板の信頼性性能に対してより高い要求が出されている。例えば、微細配線に要求される薄型化銅箔は、より高い剥離性を有し、配線をエッチングする際に発生する「サイドエッチ」現象を効果的に低減または回避することができる。したがって、剥離可能な超薄型銅箔は、高品位、多層、薄型、高密度のプリント基板に広く使用され、特に近年では、リチウムイオン電池の普及により、この超薄型銅箔の開発に広い市場空間が提供されることになる。
【0003】
超薄型銅箔はリチウム電池で負極活物質の担体と負極電子流の収集と輸送体の両方として機能し、銅箔の厚さが薄いほど電池のエネルギー向上作用が大きい。エネルギー密度が260wh/kgのリチウム電池を例にとると、1kwhの電気量に対するセルの総質量は約3.85kgである、主流の8μm銅箔の15%重量占有率で計算すると、銅箔の重量は約0.58kgであり、銅箔の厚さを6μmまで下げると、総面積を変えずに銅箔の重量は25%減少し、50%気孔率銅箔技術を重ねると、換算したエネルギー密度は287wh/kgに上昇し、8μm銅箔よりも携帯電力が多くなる。しかし、6μm以下の銅箔は加工が難しいため、国内メーカーの超薄型銅箔製品は、引張強度が300~450MPa、伸び率が3%以上、表面粗さRzが2μm以下であることを実現できる6~9μmが主流となっている。
【0004】
既存の超薄型銅箔の厚さは要求を満たすことができず、引張強度と伸び率は悪いが、現在、研究開発チームは6μm未満、最低4μmの超薄型銅箔製品を試作したが、銅箔の表面粗さRaは0.35μm未満、引張性能は最大408MPa、伸び率は最大9.5%に達し、超薄型銅箔の各性能面での突破を実現した。しかし、薄型化、軽量化、コストダウン、効率化の要求のうち、銅箔のさらなる軽量化は、現在、銅箔業界の発展のための重要な方向性となっている。超薄型銅箔の厚さをいかに薄くし、かつ多様な生産ニーズに対応できるような大きな性能ブレークスルーを実現するか、これが超薄型銅箔の開発を達成するための重要かつ難しい問題なのである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、先行技術の上記問題点を解決し、超薄型銅箔の多様化、高性能化に対応するため、超薄型銅箔の厚みが薄く、性能が良い超薄型銅箔及びその作製方法を提供することである。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の解決策を提供する。
【0007】
本発明は、以下のステップを含む超薄型銅箔の作製方法を提供する。
(1)金属箔担体の表面に有機層を吸着させる(ステップ(1)):
シクロヘキサノール六リン酸と2-チオウラシルの混合水溶液に金属箔担体を浸漬して吸着させ、有機層吸着用担体を得る。
(2)吸着した有機層の表面に合金層を成膜する(ステップ(2)):
電流密度が25~30A/dm2、電解液温度が48~50℃、pHが4.5~5.0で、有機層の表面に合金層を成膜させ、
前記電解液は、希土類元素のPrとNdを含むタングステン-ニッケル電解液である。
(3)合金層の表面に超薄型銅箔層を成膜する(ステップ(3)):
成膜電解液は、リグニンスルホン酸ナトリウムとキトサンオリゴ糖を含む硫酸銅電解液である。
さらに、前記シクロヘキサノール六リン酸の濃度が1~15g/Lであり、前記2-チオウラシルの濃度が1~8g/Lである。
【0008】
さらに、ステップ(1)の浸漬吸着を室温で70~75秒間行うことである。
【0009】
さらに、前記金属箔が銅箔である。
【0010】
さらに、前記希土類元素のPrとNdを含むタングステン-ニッケル電解液には、硫酸ニッケルの濃度が20~35g/Lで、タングステン酸ナトリウムの濃度が20~35g/Lで、希土類元素Prの濃度が0.05~0.06g/Lで、Ndの濃度は0.03-0.04g/Lである。
【0011】
さらに、ステップ(3)の成膜電解液中のリグノスルホン酸ナトリウムの濃度は0.1~0.2g/L、キトサンオリゴ糖の濃度は10~25g/Lである。
【0012】
さらに、前記ステップ(3)には、超薄型銅箔層は3回成膜で、第1回成膜電解液のCu2+濃度が65~68g/Lで、硫酸濃度が145~150g/Lで、第2回成膜電解液のCu2+濃度が20~30g/Lで、硫酸濃度が110~120g/Lで、第3回成膜電解液のCu2+濃度が60~65g/Lで、硫酸濃度が120~130g/Lで行うことである。
【0013】
また、本発明は、上記の作製方法により作製された超薄型銅箔を提供するものである。
【0014】
本発明は、以下の技術的効果を開示している。
【0015】
本発明は、まず清浄な35μmの銅箔担体の上にシクロヘキサノール六リン酸及び2-チオウラシルを原料とする有機層を吸着させてから、その有機層の上に希土類元素PrとNdを含むタングステン-ニッケル合金を成膜する。希土類元素PrとNdの導入により銅箔の剥離強度が向上し、超薄型銅箔表面の結晶粒を微細化することができる。同時にシクロヘキサノール六リン酸はチオフェンと一緒に有機層として機能するため、有機層自体が良好な剥離ポテンシャルを有し、合金層と複合した場合、わずかな希土類元素PrとNdの添加量で優れる剥離効果を実現できる。これにより、剥離剤の吸着が少ないと剥離しにくく、吸着が多いと導電性が悪くなり、その後の電着ステップに影響を及ぼすという問題を効果的に解決することができる。
【0016】
現在、リグニンスルホン酸ナトリウムは工業的に分散剤や湿潤剤として広く使用されているが、本発明には、リグニンスルホン酸ナトリウムとキトサンオリゴ糖を複合添加剤として硫酸銅電解液に添加することを創造的に行い、合金層中の極めて少量の希土類元素Pr、Ndによって超薄型銅箔の軽量化の均一成膜を実現し、超薄型銅箔が4μmの限界を突破して3.5μmの超軽量化を実現し、かつ引張性能が510MPaと高く、伸び率が最高10%に達し、軽量化超薄型銅箔に優れた性能を与えている。
【0017】
本発明の調製方法は安定的かつ制御可能であり、複合銅箔は優れた剥離強度を有し、調製された超薄型銅箔は、主流の超薄型銅箔8μm、6μm、4μmの限界を突破し、引張特性、伸度等の面で優れた性能を反映しながら、3.5μmの超薄効果を達成でき、超薄型銅箔の開発、超薄型銅箔の開発を依存する多くの産業に大きな意義を持っている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の様々な例示的な実施形態を詳細に説明するが、この詳細な説明は、本発明の限定とみなされるべきではなく、本発明の特定の局面、特徴および実施形態のより詳細な説明として理解されるべきである。
【0019】
本発明に記載された用語は、特定の実施形態を説明することのみを意図しており、本発明を限定することを意図していないことを理解することができる。さらに、本発明における数値の範囲に関しては、その範囲の上限と下限の間の各中間値も具体的に開示されていると理解される。また、記載された範囲内の任意の記載値または中間値と、記載された範囲内の他の記載値または中間値との間の各小範囲も、本発明に含まれる。これらの小さい範囲の上限と下限は、独立して範囲に含めたり除外したりすることができる。
【0020】
特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明で説明する分野の通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明では、好ましい方法および材料のみを説明するが、本明細書に記載したものと類似または同等の任意の方法および材料も、本発明の実施または試験に使用することができる。本明細書で言及するすべての文献は、当該文献に関連する方法および/または材料を開示し、説明する目的で参照により組み込まれるものである。本仕様書と組み込まれた文献が矛盾する場合、本仕様書の内容が優先されるものとする。
【0021】
本発明の明細書の具体的な実施の形態には、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、多くの改良や変更を加えることができることは当業者にとって明らかである。本発明の明細書から得られる他の実施形態は、当業者にとって明らかである。本発明の明細書および実施形態は、あくまで例示に過ぎない。
【0022】
本明細書で使用される用語「含む」、「有する」、「ある」等などについては、いずれも開放的な用語であり、含むがこれに限定されないことを意味する。本発明で使用する「部」は、特に断らない限り、質量部で表す。
【実施例0023】
(1)銅箔担体の表面に有機層を吸着させる:
厚さが35μmの銅箔を成膜担体とし、担体を酸洗処理を行い、担体表面の酸化物及び不純物を除去した後、洗浄処理後の担体銅箔をシクロヘキサノール六リン酸及び2-チオウラシルの混合水溶液〔シクロヘキサノール六リン酸の濃度が1g/Lで、2-チオウラシル濃度が1g/Lである〕に浸漬し、室温で70s浸漬処理し、取り出した後、脱イオン水で洗い、有機層を吸着する担体を得る。
【0024】
(2)担体に吸着した有機層の上に合金層を成膜させる:
タングステン-ニッケル合金電解液の調製;電解液中の硫酸ニッケルの濃度が20g/Lで、タングステン酸ナトリウム濃度が35g/Lで、希土類元素Prの添加量が0.05g/L、Ndの添加量は0.03g/Lで、電解液のphが4.5である。
成膜プロセスパラメータ;電流密度が25A/dm2で、電解液温度が48℃で、成膜時間は5sである。
【0025】
(3)合金層の表面に超薄型銅箔層は3回で成膜する:
初回浸漬銅プロセスパラメータ;電解液中のCu2+の濃度が65g/Lで、硫酸の濃度が145g/Lで、リグニンスルホン酸ナトリウムの濃度が0.1g/Lで、キトサンオリゴ糖の濃度が10g/Lで、電解液の温度が45℃である。電流密度が10A/dm2で、成膜時間8sである。
第二回浸漬銅プロセスパラメータ;電解液には、Cu2+の濃度が20g/Lで、硫酸の濃度が110g/Lで、リグニンスルホン酸ナトリウムの濃度が0.1g/Lで、キトサンオリゴ糖の濃度が10g/Lで、電解液温度が48℃である。電流密度が20A/dm2で、成膜時間が8sである。
第三回浸漬銅プロセスパラメータ;電解液には、Cu2+の濃度が60g/Lで、硫酸の濃度が125g/Lで、リグニンスルホン酸ナトリウムの濃度が0.1g/Lで、キトサンオリゴ糖の濃度が10g/Lで、電解液温度が45℃である。電流密度が10A/dm2で、成膜時間が10sである。