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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120832
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】MIMOレーダセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20220810BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20220810BHJP
【FI】
G01S7/02 216
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016235
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】10 2021 201 073.3
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥール・ヒプケ
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト・レッシュ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD05
5J070AF03
5J070AK22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】正確で信頼できる方位角および仰角の推定を可能にするMIMOレーダセンサの提供
【解決手段】複数のアンテナが互いに対して第1の方向xにずれて配置されている2つのサブアレイを有し、サブアレイが方向xに垂直な第2の方向yに互いにずれており、両方のサブアレイのアンテナが方向xより方向yで強く集束し、かつサブアレイの少なくとも一方(TX)ではアンテナの少なくとも2つが方向yにも互いにずれている平面アンテナアレイと、一方のサブアレイTXのために送信信号を生成し、もう一方のサブアレイRXのアンテナの受信信号を前処理するための高周波部12と受信信号に基づいてオブジェクトの距離、相対速度、ならびに方位角および仰角を決定する評価機構14とを備え、アンテナTX1~3が方向yでも互いにずれ、少なくとも一方のサブアレイTXが方向yに延びる軸Aに対して対称的に構築されていることを特徴とするMIMOレーダセンサ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに含まれる複数のアンテナの各々が互いに第1の方向xにずれて配置されている2つのサブアレイ(TX、RX)を有しており、前記サブアレイが、前記第1の方向xに垂直な第2の方向yに互いにずれており、両方のサブアレイの前記アンテナ(TX1、TX2、TX3、RX1、RX2、RX3、RX4)がそれぞれ前記第1の方向よりも前記第2の方向yにおいてより集中しており、かつ前記サブアレイの少なくとも一方(TX)では前記アンテナの少なくとも2つが前記第2の方向yにも互いにずれている平面アンテナアレイと、
前記一方のサブアレイ(TX)の前記アンテナのために送信信号を生成し、かつもう一方のサブアレイ(RX)の前記アンテナの受信信号を前処理するための高周波部(12)と、
前記高周波部(12)を制御し、かつ前記前処理された受信信号に基づいて、測位されたオブジェクトの距離、相対速度、ならびに方位角および仰角を決定するように構成された制御および評価機構(14)とを備え、
前記アンテナ(TX1、TX2、TX3)が前記第2の方向yにも互いにずれている前記少なくとも一方のサブアレイ(TX)が、前記第2の方向yに延びる軸(A)に対して対称的に構築されていることを特徴とする、MIMOレーダセンサ。
【請求項2】
前記第1の方向xが水平方向であり、前記第2の方向yが鉛直方向である、請求項1に記載のレーダセンサ。
【請求項3】
前記アンテナが前記第2の方向yでも互いにずれている前記少なくとも一方のサブアレイ(TX)が、送信アンテナ(TX1、TX2、TX3)によって構成される、請求項1または2に記載のレーダセンサ。
【請求項4】
受信アンテナ(RX1~RX4)によって構成された前記もう一方のサブアレイ(RX)内でも、少なくとも1つのアンテナ(RX4)が、前記サブアレイのほかのアンテナに対して前記第2の方向yにずれている、請求項3に記載のレーダセンサ。
【請求項5】
前記受信アンテナの前記サブアレイ(RX)内での前記第2の方向yでのずれが、前記送信アンテナの前記サブアレイ(TX)内でのずれより大きく、かつ前記制御および評価機構(14)が、前記第1の方向xでの角度推定の際に、前記第2の方向yにずれている前記受信アンテナ(RX4)の前記信号を無視するように構成されている、請求項4に記載のレーダセンサ。
【請求項6】
対称的に構築された前記サブアレイ(TX)が、奇数の数のアンテナを有している、請求項1から5のいずれか1項に記載のレーダセンサ。
【請求項7】
前記対称的なサブアレイ(TX)の真ん中の前記アンテナだけが、前記第2の方向yにずれている、請求項6に記載のレーダセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
- それぞれに含まれる複数のアンテナの各々が互いに第1の方向xにずれて配置されている2つのサブアレイを有しており、これらのサブアレイが、第1の方向xに垂直な第2の方向yに互いにずれており、両方のサブアレイのアンテナがそれぞれ第1の方向よりも第2の方向yにおいてより集中しており、かつサブアレイの少なくとも一方ではアンテナの少なくとも2つが第2の方向yにも互いにずれている平面アンテナアレイと、
- 一方のサブアレイのアンテナのために送信信号を生成し、かつもう一方のサブアレイのアンテナの受信信号を前処理するための高周波部と、
- 高周波部を制御し、かつ前処理された受信信号に基づいて、測位されたオブジェクトの距離、相対速度、ならびに方位角および仰角を決定するよう設定された制御および評価機構とを備えた、MIMOレーダセンサに関する。
とりわけ本発明は自動車用レーダセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の運転者支援システムにおける周辺環境監視では、測位されたレーダ目標の距離間隔および相対速度と並んで、これら目標の方位角および仰角も重要である。例えば方位角についての情報は、オブジェクトを車道のある特定の車線に割り当て得るのに必要とされる。仰角についての情報は、オブジェクトが、その上もしくは下を通過可能であるかどうか、または重大な障害物であるかどうかの判断を可能にする。目標の方位角および仰角は、受信アンテナ素子の信号の振幅差および/または位相差から確定され得る。
【0003】
MIMO原理(Multiple Input Multiple Output)に基づき、受信アンテナは、例えば時分割多重においてまたは選択的に符号分割多重もしくは周波数分割多重においても、異なる送信アンテナと組み合わされる。各組合せは1つの仮想アンテナ素子に相応し、この仮想アンテナ素子の、別の1つの仮想アンテナ素子に対するずれは、加法的に、関与する受信アンテナおよび関与する送信アンテナのずれから構成される。仮想アレイは、現実の受信アレイより大きなアパーチャを有することができ、したがってより高い角度分解能を可能にする。
【0004】
角度推定のためには、異なる仮想アンテナ素子によって得られた複素振幅が、事前に測定されたアンテナ放射パターンと比較され、かつ決定論的最尤関数(DML関数)が計算され、このDML関数は、測位範囲内のすべての角度に対し、その角度が測位された目標の真の測位角度である確率を提示する。少なくとも3つの仮想アンテナ素子の振幅が使える場合、それだけでなく角度推定の品質の尺度である品質値も計算され得る。1つの測定サイクル内で、距離間隔および相対速度が同じ周波数ずれ(FMCWレーダの場合)を生じさせる2つの目標が測位される場合、角度推定は困難になる。しかしながらこの状況下でも両方の目標の測位角度が分解され得る方法が知られている。ただしこの場合、品質値を伴う角度推定には少なくとも4つのアンテナ素子の信号が必要とされる。
【0005】
独国特許出願公開第102016203160号明細書からは、冒頭に挙げた種類のMIMOレーダが知られており、このMIMOレーダでは、1つのサブアレイのアンテナが不均一な間隔をあけて配置されている。これにより、比較的少ない数の受信チャネルで大きな仮想アパーチャを達成すると同時に、角度決定における多義性が解消され得る範囲内でアレイを補充することが可能である。この文献中で説明されるレーダセンサの特異性は、送信アンテナの2つが方位角においてより多く集中しており、それにより中心の角度範囲で高い分解能が達成され、その一方でより疎密である第3の送信アンテナが外側領域をカバーしていることにある。加えてこの第3の送信アンテナは鉛直方向にも大きくずれており、これにより正確な仰角推定が可能になっている。
【0006】
国際公開第2015/188987号からは、特殊なFMCW評価方法により、時分割多重MIMOの場合に目標の相対移動によって引き起こされる測定誤差が補正される、FMCW-MIMOレーダが知られている。
【0007】
米国特許第8436763号明細書は、符号分割多重MIMOレーダに関する一例を説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016203160号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/188987号
【特許文献3】米国特許第8436763号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、より正確でより信頼できる方位角および仰角での角度推定を可能にするMIMOレーダセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は本発明により、アンテナが第2の方向yでも互いにずれている少なくとも一方のサブアレイが、第2の方向yに延びる軸に対して対称的に構築されることによって解決される。
【0011】
例えば方向xが水平方向であり、方向yが鉛直方向である場合、方向xでのサブアレイのアンテナのずれにより、方位角での角度推定が可能にされ、かつ方向yでのずれが仰角での角度推定を可能にする。しかしながらオブジェクトの仰角が0°とは違う場合、方向yでのずれは、方位角での角度推定を妨げ得る位相差を生じさせる。アンテナが水平方向に不均一な間隔をあけて配置されている場合、大きな仰角の際に発生する位相差は、一般的に、方位角での角度推定において主極大値(main maxima)と第二極大値(secondary maxima)の差を減少させる。これにより、極端な場合には、とりわけノイズのある信号では、目標の測位角度として誤って第二極大値の角度が採用されることになり得る。本発明は、この望ましくない効果が、アンテナの対称的な配置によって抑えられ得るという知見に基づいている。
【0012】
本発明の有利な形態および変形形態は従属請求項に提示されている。
一実施形態では、両方のサブアレイのアンテナが、方向xにおいて同じアパーチャを、好ましくは測位角度範囲全体が均一にカバーされるほど小さいアパーチャを有している。
【0013】
アンテナが対称的に配置される必要のないサブアレイ内でも、少なくとも1つのアンテナ素子が方向yにずれることができ、好ましくは対称的なサブアレイ内でのずれより大きな数値でずれることができる。これにより、仰角でのより高い角度分解能が可能にされる。ただし方位角での角度推定の際にはこのずれたアンテナは考慮されず、これにより、さもなければ鉛直方向でのこのアンテナの大きなずれによって引き起こされ得る系統誤差が回避される。
以下に、1つの例示的実施形態を図面に基づいてより詳しく解説する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるレーダセンサのブロック図である。
図2】本発明によるレーダセンサのアンテナアレイに関する、異なる方位角および仰角での目標のDML関数の関数グラフである。
図3】比較アレイに関する、異なる方位角および仰角での目標のDML関数の関数グラフである。
図4】本発明によるレーダセンサのアンテナアレイに関する、異なる方位角および仰角での目標のDML関数の関数グラフである。
図5】比較アレイに関する、異なる方位角および仰角での目標のDML関数の関数グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1で示したレーダセンサは基板10を有しており、基板10上では、平面アンテナアレイが2つのサブアレイTXおよびRXによって構成されている。サブアレイTXは、第1の方向x(水平方向)に互いにずれて(互いにオフセットして)配置された3つの送信アンテナTX1、TX2、およびTX3を含んでいる。サブアレイRXは、同様に方向xに互いにずれて配置された4つの受信アンテナRX1、RX2、RX3、およびRX4を含んでいる。サブアレイRXはサブアレイTXに対して第2の方向y(鉛直方向)に、これらのサブアレイが鉛直方向において互いに重ならない範囲内でずれている。サブアレイ間のスペースでは、基板上に高周波部12が配置されており、高周波部12は、示されていないマイクロ波線路を介して送信および受信アンテナと接続しており、かつ送信信号を送信アンテナに供給するために、および受信アンテナから受信信号を捉えて前処理するために用いられる。高周波部12は、例えばMMICチップ(モノリシックマイクロ波集積回路)によって構成され、かつデジタルの制御および評価機構14と接続しており、この制御および評価機構14は、高周波部12を制御し、かつ前処理された受信信号を、測位されたオブジェクトの距離、相対速度、方位角、および仰角を決定するためにデジタルで評価する。信号のデジタル化は、例えばMMICチップに組み込まれたアナログ/デジタル変換器によってか、または選択的に制御および評価機構の入力段階で行われ得る。
【0016】
送信および受信アンテナの幾何形状を明瞭にするため、基板10は、ここでは正方形グリッドで示されており、そのグリッドセルは、マイクロ波の波長の1/4の辺の長さを有している。以下では、基板上のオブジェクト間のすべての距離をこの波長の単位で提示する。すべての送信アンテナおよび受信アンテナは同じ形状を有しており、かつ10個ずつのアンテナパッチ16を2列備えたアレイアンテナとして形成されている。これらの列は鉛直方向yに延びている。個々のアンテナパッチ16の間隔は1/2であり、1つのアンテナの両方の列の間隔も1/2である。符号RX1、RX2などに帰属するガイド線は、それぞれアンテナの位相中心(黒い正方形)へと引かれている。以下では、アンテナ間の位置関係についてのすべての提示はこれらの位相中心の位置に関する。
【0017】
受信アンテナRX1、RX2、およびRX3は、鉛直方向yにおいて同じ高さで配置されている。受信アンテナRX1とRX2の水平方向の間隔は1であり、受信アンテナRX2とRX3の間隔は2である。
【0018】
受信アンテナRX4は、残り3つの受信アンテナに対し、鉛直方向yに3.5単位下にずれている。受信アンテナRX4の受信アンテナRX3に対する水平方向の間隔は1.75である。
【0019】
3つの送信アンテナTX1、TX2、およびTX3の水平方向xでの間隔は、それぞれ1.75である。TX1とTX3との間の真ん中にある送信アンテナTX2は、鉛直方向yに数値1だけ上にずれている。したがってサブアレイTXは、方向yに延びる軸Aに対して対称的である。
【0020】
鉛直方向では、受信アンテナRX4の下端が送信アンテナTX2の上端に直接繋がっており、したがって基板10の鉛直方向の寸法は、サブアレイが重ならない最小限の値を有している。水平方向では、アンテナRX1とTX1が基板の左縁で相互にアライメントされることにより、基板の寸法が最小化されている。
【0021】
3つの送信アンテナTX1、TX2、およびTX3は、時分割多重では、レーダ信号を送信するために逐次的に利用される。レーダセンサは、全体としてはいわゆるJoint-Compression-FMCWレーダとして設定されており、かつ国際公開第2015/188987号で説明された原理に基づいて働く。これにより、異なる送信アンテナのアクティブ期間を互いから隔てている期間内の測位されたレーダ目標の自己移動に基づいて起こるこの目標の間隔変化が補正される。
【0022】
レーダ目標が、0°とは異なる方位角で測位される場合、送信アンテナから目標へのおよび目標から受信アンテナに戻る信号経路は、送信および受信アンテナの各組合せに対して異なる長さを有する。したがって送信アンテナと受信アンテナの各組合せは仮想アンテナ素子に相応し、方向xでのこれら仮想アンテナ素子の位置は、信号経路のx成分によって与えられている。したがってこの仮想アンテナアレイの仮想アパーチャは、受信アンテナの現実のアパーチャより明らかに大きい。この拡張されたアパーチャに基づき、方位角がより大きな分離精度で測定され得る。
【0023】
サブアレイTX内でもサブアレイRX内でも、送信または受信アンテナのそれぞれ1つが、ほかのアンテナに対して鉛直方向yにずれているので、仰角の測定の際にも、より大きな仮想アパーチャ、したがってより大きな分離能がもたらされる。
【0024】
ただし、異なる仮想アンテナ素子間の位相ずれは、方位角だけでなく仰角にも依存するので、アンテナの鉛直方向のずれは、0°から大きく逸脱した仰角をもつ目標の場合、方位角の測定の際の系統誤差を引き起こし得る。この理由から、ここで示した例では、送信アンテナTX2の、ほかの送信アンテナに対する鉛直方向のずれは、受信アンテナRX4の、ほかの受信アンテナに対するずれより明らかに小さい。制御および評価機構14は、方位角を測定する際には受信アンテナRX1~RX3の関与で成立する仮想アンテナ素子だけを考慮するよう設定されており、つまりRX4からの信号は方位角の測定の際は無視され、これにより、受信アンテナRX4の大きなずれによって引き起こされる系統誤差は測定結果には入らない。送信アンテナTX2のずれは相対的に小さいが故に、この場合にまだある系統誤差は許容され得る。
【0025】
方位角の測定の際も仰角の測定の際も、測定原理は、異なる仮想アンテナ素子によって測定された位相または複素振幅と、与えられたアンテナアレイのアンテナ放射パターンとの相関関係を基礎とする最尤推定に基づいている。この相関関係は、目標の真の地点に相応する角度で最大値を有する決定論的最尤関数(DML関数)によって提示される。ただしこのDML関数は、レーダ目標の真の地点から明らかに逸脱する角度での第二極大値も有している。
【0026】
1つのアンテナアレイ内で送信および受信アンテナが水平方向にも鉛直方向にもずれている場合、一般的にその結果として、方位角の測定の場合に、主極大値と第二極大値との大きさの比率が目標の仰角にも依存することになる。この効果は、仰角が増大すると、主極大値の高さに対する比率において、すべての(または少なくとも幾つかの)第二極大値の高さが増大する傾向にあり、したがって、測定信号が実際には常に多かれ少なかれノイズを発していることから、第二極大値の1つが誤って主極大値と見なされることで、誤測定を生じさせ得る。ただしこの効果は、ここで説明しているアンテナアレイの場合、鉛直方向にずれた送信アンテナTX2が、ほかの両方の送信アンテナTX1とTX3との間のちょうど真ん中に配置されることで大幅に抑えられる。この対称性により、仰角が増大する場合に、主極大値に対する比率において第二極大値が、非対称的な送信サブアレイの場合ほど速くは増大しなくなる。以下に、この効果を幾つかの例に関するグラフに基づいて図解する。
【0027】
図2では、-60°~+60°の値の範囲内の方位角に対し、方位角が0°で仰角が0°(破線)または15°(実線)でのレーダ目標に関して、図1で示したアンテナアレイに対して計算されたDML関数の関数値が示されている。より大きな仰角(実線)の場合、0°での最大値が仰角0°の場合より明らかに弱く現れているが、次に高い第二極大値(±38°での)も低下しており、その一方でより大きな仰角の場合の第1の第二極大値(±19°での)は強くなっている。しかしながら全体としては、主極大値と次に高い第二極大値との間隔は、ノイズに基づく誤測定が懸念され得ないほど大きいままである。
【0028】
図3は、図1に比べて送信アンテナTX2の水平位置が(波長の単位で)0.25だけ右に変位しており、したがってサブアレイTXの対称性が崩れているアンテナアレイに関する同じDMLグラフを示している。仰角0°に関する破線の曲線が引き続き対称的である一方で、仰角15°に関する曲線(実線)では、いまや非対称性が示されている。-19°での第1の第二極大値は+19°での第1の第二極大値より大きく、その一方で±38°での第2の第二極大値ではちょうどその逆になっている。主極大値と+38°での最大の第二極大値との間隔は、ここでは図1より小さいが依然として十分である。
【0029】
図4および図5は、方位角-60°で測位されるレーダ目標に関する同じDMLグラフを示している。本発明によるアンテナアレイ(図4)の場合、仰角が15°(実線)でも、主極大値と最も高い第二極大値との間にまだ明らかな間隔が存在している(図4での破線の水平な線および矢印)。これに対し、非対称的なアンテナアレイ(図5)では、この間隔が憂慮されるほど減っており、したがって強くノイズを発する信号では誤測定が排除できなくなっている。
【0030】
図2図5の図が明らかにしているように、図3および図5での第二極大値の比較的大きな高さは、なかでも、これらの曲線の非対称性の結果である。したがって主極大値と最も高い第二最大値との十分な間隔は、大きな仰角の場合でも、一般的に送信アンテナの配置が対称的であることで達成され得る。しかしながらほかの実施形態では、送信アンテナの数が3つより多い可能性もあり、かつ偶数の数のアンテナも、鉛直方向にずれたアンテナの数も偶数である場合に限って考えられる。同様に、送信アンテナではなく受信アンテナが対称的に配置された実施形態も考えられる。
【符号の説明】
【0031】
10 基板
12 高周波部
14 制御および評価機構
16 アンテナパッチ
A (第2の)方向yに延びる軸
TX、RX サブアレイ
TX1、TX2、TX3 (送信)アンテナ
RX1、RX2、RX3、RX4 (受信)アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】