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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120873
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】地上設置型変圧器
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/28 20060101AFI20220812BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20220812BHJP
   H02B 1/56 20060101ALI20220812BHJP
   H02B 7/06 20060101ALI20220812BHJP
   H02B 1/04 20060101ALI20220812BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
H02B1/28 G
F16J15/06 P
H02B1/56 A
H02B7/06
H02B1/04 Z
H01F27/02 E
H01F27/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017897
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横地 智宏
【テーマコード(参考)】
3J040
5E059
5G016
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040AA15
3J040HA05
3J040HA30
5E059BB15
5E059GG03
5G016AA09
5G016CD38
5G016CH02
5G016CH09
(57)【要約】
【課題】 放圧装置を構成する部品点数を一層削減して簡素な構成とするとともに、組立調整を極力不要とすることによって、生産性の向上を図ることのできる地上設置型変圧器を提供する。
【解決手段】 変圧器装置38を収容した一方の区画室37aに換気口34a~34c、35a~35dを備え、隔壁36の一部をガスケット47,48によって構成する。他方の区画室37b内の内圧が異常に上昇した場合に、前記ガスケット47,47が隔壁36から外れるように構成することで、他方の区画室37bの内圧を一方の区画室37aへ逃がし、換気口34a~34c、35a~35dから外部へ放出することとした。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を2室に区画して一方の区画室に変圧器装置を収容設置し、当該変圧器装置の1次側は隔壁を介して前記筐体の他方の区画室に収容設置した高圧機器と接続し、前記変圧器装置の2次側は需要家側と接続する低圧分岐装置と接続して構成した地上設置型変圧器において、前記変圧器装置を収容した一方の区画室に外部との換気口を備え、前記隔壁の一部をガスケットによって構成し、前記高圧機器を収容設置した他方の区画室内の内圧が上昇した場合に、前記ガスケットが脱落するように構成したことを特徴とする地上設置型変圧器。
【請求項2】
前記変圧器装置のタンクを、前記隔壁を前記筐体内に取り付ける際に利用することを特徴とする請求項1記載の地上設置型変圧器。
【請求項3】
前記ガスケットは、これを挟み込む2重構造の外枠とともに前記隔壁の一部を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の地上設置型変圧器。
【請求項4】
前記ガスケットは、前記変圧器装置と前記筐体内側面との間に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の地上設置型変圧器。
【請求項5】
前記ガスケットは、前記2重構造の外枠間に、その一点を固定部材によって支持することによって取り付けられることを特徴とする請求項3又は請求項4の何れかに記載の地上設置型変圧器。
【請求項6】
前記外枠は、前記ガスケットに前記他方の区画室の内圧を作用させる中空部と、当該外枠を固定位置に取り付ける取付部によって構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の地上設置型変圧器。
【請求項7】
前記取付部は、固定部位を備えて構成されることを特徴とする請求項6記載の地上設置型変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市街地等、配電線地中化地域の歩道上に設置され、高圧を受電し、これを降圧して、低圧需要家へ電力を供給する地上設置型変圧器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
都市における商業地域や人通りの多い市街地等においては、従前から都市の美観維持や、災害時等における電柱の倒壊に伴う停電事故等を防ぐために、架空配電方式に代えて地中配電方式が広く採用されるようになってきている。
【0003】
そして、前記地中配電方式に使用する電気機器として、一般に高圧機器と変圧器装置および低圧分岐装置を筐体に収容した地上設置型変圧器が歩道上に設置されている。
【0004】
前記地上設置型変圧器は、一般に人通りの多い歩道上の車道側に近い位置に設置されているが、当該位置との関係上、その設置スペースが限定されるため、極力小型化され、また、塵や埃、湿気等の侵入をはじめ、悪戯等によって外部から針金等の金属類を突っ込む等、充電部に接触するのを防ぐために、換気口を残して金属性の筐体によってほぼ密閉された状態で形成されている。
【0005】
この結果、前記筐体に収容した高圧機器側において、万一短絡事故等が発生して前記高圧機器を収容した筐体の区画室内の内圧が急上昇した場合、この内圧を速やかに放出しないと筐体が内圧により損壊したり、筐体の接合部が剥離するという問題があった。
【0006】
このため、従来から例えば、実公平3-57045号公報に開示されている地上設置形電気機器(地上設置型変圧器)のように、筐体内の異常圧力を外部へ放出して、筐体の破損等を未然に防止する放圧装置が取り付けられている。
【0007】
また、本願出願人は、従来の放圧装置の構成をより簡素化し、筐体内の狭隘なスペースに設置可能な構造の安価な放圧装置を下記特許文献1によって開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-129628
【0009】
上記特許文献1において開示した地上設置形変圧器装置は、概略、次のような放圧装置を具備している。すなわち、上記特許文献1の図5ないし図7において、放圧装置Aは、ばね部材15とストッパー部材21とにより構成されており図6に示す放圧扉11の区画室2b内に位置する内側の、図5に示す上・下部に一対付設されている。
【0010】
前記ばね部材15は、特許文献1の図6に示すように、平板状の横長な板ばねからなり、その取り付けは基端を筐体2の区画室2bの第1の縦梁2b1にボルト等を用いて止着し、放圧扉11の自由端側に延出する前記板ばねの先端の自由端側は、板ばねの長さ方向にそれぞれ放圧扉11に植設した係止ピン17を抜脱不能に遊嵌することによって、放圧扉11に取り付けられている。
【0011】
ストッパー部材21は、図6,7に示すように、ばね部材15の近傍に設置され、区画室2bの第2の縦梁2b2に止着した支持板22と、この支持板22に基端を回動自在に枢着したレバー体23と、このレバー体23先端の自由端側と対向する放圧扉11の内側面に止着した係止板24と、係止板24にその長さ方向に沿って穿孔した横孔25とからなり、この横孔25にレバー体23の自由端に付設した係合ピン26を抜脱不能に遊嵌することによって、レバー体23は放圧扉11が一定角度以上開放してばね部材15の復元力(ばね圧力)が喪失しないよう支持して、放圧装置Aは構成されている。
【0012】
そして、高圧機器7を収容した区画室2b内で内部短絡事故等が発生し、区画室2bの内圧が上昇すると、内圧は区画室2bの周壁全体を押圧することになるが、当該内圧がばね部材15のばね圧力より小さい場合は、放圧扉11がほとんど開くことはない。しかし、内圧がばね部材15のばね圧力より高くなった場合は、放圧扉11を押し開いて、区画室2b内の圧力を放圧口11aから外部へ放出する。
【0013】
放圧扉11は図7に示すように、区画室2bに枢支され、蝶番等の回動部材29を中心として、ばね部材15のばね圧力に抗して筐体2の外方へ開放される。内圧の放出に際してばね部材15は、図5に示すように、その先端に穿孔した長孔16に遊嵌されている係止ピン17が放圧扉11の開放に伴い長孔16内を移動するに従い徐々に湾曲して、長孔16の端部に到達すると、ばね部材15がその基端の止着部を支点として、図7に示すように弓状に曲成する。
【0014】
また、放圧扉11の開放に伴い、ストッパー部材21のレバー体23は、図7において、その基端が枢支されている支持板22の枢支点を中心として時計方向に回動すると同時に、レバー体23の先端が、放圧扉11の係止板24に穿孔した横孔25内を係止ピン26を介して図7の右方向に移動することにより、放圧扉11の開放に追随して移動する。
【0015】
そして、レバー体23先端の係止ピン26が横孔25の端部に到達することにより、放圧扉11がそれ以上、ばね部材15の死点を越えて開放されることを防止する。
【0016】
上記特許文献1記載の放圧装置Aは以上のように構成されることにより、特許文献1の図4,6で示すように、筐体2の区画室2b内の車道側に位置する狭隘なスペースを利用して設置することができ、地上設置形変圧器装置の小型化に貢献できる。
【0017】
また、これ以前の放圧装置と比較して、その構成を簡素かつ安価に構成できる利点を有するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
然るに、上記特許文献1記載の放圧装置Aは、前述したとおり、バネ部材15とストッパー部材21が必要であり、当該バネ部材15を平板状の横長な板ばねで構成することや、当該板ばねの基端を第1の縦梁2b1にボルト止めしたり、板ばねの先端に長孔16を設けて、放圧扉11に植設した係止ピン17を遊嵌する必要がある。
【0019】
また、ストッパー部材21を、支持板22、レバー体23、係止板24から構成し、支持板22を第2の縦梁2b2に止着し、レバー体23の基端を支持板22に回動自在に枢着するとともに、その自由端に係合ピン26を付設し、かつ、係止板24を放圧扉11の内側面に止着したうえで、係止板24に横孔25を形成し、当該横孔25に前記係合ピン26を遊嵌しなければならず、特殊な形状をした多くの部材を用意する必要があり、放圧装置Aの製造コストを抑制する際の阻害要因となっていた。
【0020】
また、これら多数の部材を組み付けるために、組立調整が必要であり、少なくない労力と熟練および作業時間を要することとなり、生産性低下の原因となっていた。
【0021】
そこで、本発明は、前記種々の問題点に鑑み、放圧装置を構成する部品点数をより一層削減して簡素な構成とするとともに、組立調整を極力不要とすることによって、生産性の向上を図ることのできる地上設置型変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1記載の地上設置型変圧器は、筐体を2室に区画して一方の区画室に変圧器装置を収容設置し、当該変圧器装置の1次側は隔壁を介して前記筐体の他方の区画室に収容設置した高圧機器と接続し、前記変圧器装置の2次側は需要家側と接続する低圧分岐装置と接続して構成した地上設置型変圧器において、前記変圧器装置を収容した一方の区画室に外部との換気口を備え、前記隔壁の一部をガスケットによって構成し、前記高圧機器を収容設置した他方の区画室内の内圧が上昇した場合に、前記ガスケットが脱落するように構成したことに特徴を有する。
【0023】
請求項2記載の地上設置型変圧器は、請求項1記載の変圧器装置のタンクを、前記隔壁を前記筐体内に取り付ける際に利用することに特徴を有する。
【0024】
請求項3記載の地上設置型変圧器は、請求項1又は請求項2の何れかに記載のガスケットを挟み込む2重構造の外枠によって前記隔壁の一部を形成することに特徴を有する。
【0025】
請求項4記載の地上設置型変圧器は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のガスケットが、前記変圧器装置と前記筐体内側面の間に配置されることに特徴を有する。
【0026】
請求項5記載の地上設置型変圧器は、請求項3又は請求項4の何れかに記載のガスケットが、前記2重構造の外枠間に、その一点を固定部材によって支持することによって取り付けられていることに特徴を有する。
【0027】
請求項6記載の地上設置型変圧器は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の外枠に、前記他方の区画室の内圧を前記ガスケットに作用させる中空部と、当該外枠を固定位置に取り付ける取付部を備えて構成したことに特徴を有する。
【0028】
請求項7記載の地上設置型変圧器は、請求項6記載の取付部に固定部位を備えて構成したことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載の発明によれば、高圧機器が収容された区画室の内圧が正常なときは、当該区画室の密閉状態を維持し、当該区画室の内圧が異常に上昇したときは、当該区画室と変圧器装置が収容された区画室間の隔壁に取り付けられたガスケットが脱落することによって、高圧機器が収容された区画室の内圧を変圧器装置が収容された区画室側へ逃がし、変圧器装置が収容された区画室に備えた換気口から外部へ放出することができるので、高圧機器が収容された区画室の内圧の異常上昇によって、地上設置型変圧器の筐体が破損等することを確実に防止できる。
【0030】
請求項2記載の発明によれば、変圧器装置のタンクを前記隔壁の取り付けに利用できるので、放圧装置の部品点数を極力低減することができ、製造コストを抑制できる。
【0031】
請求項3記載の発明によれば、ガスケットは2重構造の外枠間に挟み込み、当該外枠を変圧器装置のタンクに固定することによって隔壁の一部を形成するので、放圧装置と隔壁を別途用意する必要がなくなる。
【0032】
請求項4記載の発明によれば、ガスケットが、変圧器装置と筐体内側面との間に配置されるので、筐体内のデッドスペースを有効利用して放圧装置を取り付けることができ、装置の小型化に貢献できる。
【0033】
請求項5記載の発明によれば、2重構造の外枠間に取り付けたガスケットに内圧が加わった場合に、固定部材による支持点を中心に回転することによって、2重構造の外枠間から容易に脱落させることが可能となる。
【0034】
請求項6記載の発明によれば、放圧装置の構成を簡素化することができるので、組立調整が極力不要となり、少ない労力と作業時間により放圧装置の取り付けが可能となり、生産性の向上が図れる。
【0035】
請求項7記載の発明によれば、外枠の取付部に固定部位を備えて構成したので、外枠の固定位置の自由度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の地上設置型変圧器の正面図である。
図2】本発明の地上設置型変圧器の扉を開放した状態を示す平面図である。
図3】本発明の地上設置型変圧器の右側面図である。
図4】本発明の地上設置型変圧器の背面図である。
図5】本発明の地上設置型変圧器の内部を示す正面図である。
図6】本発明の地上設置型変圧器の内部を示す左側面図である。
図7】本発明の地上設置型変圧器の内部を示す平面図である。
図8】本発明の地上設置型変圧器の低圧側を概略的に示す斜視図である。
図9】本発明の地上設置型変圧器の低圧側を構成する変圧器に放圧装置を取り付ける場合の取り付け方法を説明する斜視図である。
図10】本発明の地上設置型変圧器の低圧側を構成する変圧器に放圧装置を取り付けた場合を示す左側面図である。
図11】本発明の地上設置型変圧器の低圧側を構成する変圧器取り付けた放圧装置が作動した状態を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図10を用いて説明する。図1は本発明の地上設置型変圧器PMTを示す正面図であり、多くの場合、市街地等の歩道脇(車道との境界位置)に設置して使用される。
【0038】
図1において、31は矩形状に形成した当該地上設置型変圧器PMTの筐体(ケース)であり、32は筐体31の正面視右側に取り付けられる第1の点検扉、33は当該筐体31の正面視左側面に取り付けられる第2の点検扉を示している。
【0039】
図2は本発明の地上設置型変圧器PMTの平面図であり、前記第1の点検扉32および第2の点検扉33を開放した状態を示している。第1の点検扉32の開放する方向が歩道側となるように当該地上設置型変圧器PMTは歩道脇に設置される。
【0040】
図3は前記変圧器PMTの右側面図であり、筐体31の一部に換気口34a~34cが設けられている。図4は当該変圧器PMTの背面図であり、筐体31の一部に換気口35a~35dが設けられている。図4に示す換気口35a~35dが車道側に位置するよう、地上設置型変圧器PMTは歩道脇に設置される。
【0041】
図5は本発明の地上設置型変圧器PMTの内部構造を示す正面図であり、図6は当該変圧器PMTの内部構造を示す左側面図である。図5に示すように、本発明の地上設置型変圧器PMTは、筐体31内部が、隔壁36によって幅方向(図5の左右方向)に2室に区画されている。
【0042】
前記筐体31の一方の区画室(図5の右側)37aには、地上設置型変圧器PMTの低圧側を構成する変圧器装置38が収容設置されており、当該変圧器装置38の正面には、変圧器装置38の2次側充電部と電気的に接続された低圧分岐装置39が併設されている。
【0043】
40は低圧分岐装置39に接続した低圧側ケーブルで、図示しない低圧側の配電線を介して需要家側と接続されている。なお、41は低圧分岐装置39に接続される接地線を示している。
【0044】
前記筐体31の他方の区画室37bには、図5図6に示すように、高圧機器42が収容設置されており、当該高圧機器42は、一般に開閉器42aと高圧カットアウト42bとによって構成されている。前記高圧カットアウト42bは、変圧器装置38の高圧側と接続されており、また、開閉器42aは、高圧側ケーブル43を介して図示しない高圧側の配電線に接続されている。
【0045】
図1図2に示す第1の点検扉32を正面側から開放した場合、図5に示す変圧器装置38および低圧分岐装置39が対面に現れ、点検者は低圧側のこれら機器の整備・点検を行うことができる。また、図1図2に示す第2の点検扉33を左側方より開放すると、図6に示す高圧機器42が対面に現れ、点検者は高圧側の開閉器42aおよび高圧カットアウト42bの整備・点検を行うことができる。
【0046】
つづいて、本発明の特徴的部分である放圧装置の構成について説明する。図7は本発明の地上設置型変圧器PMTの内部を示す平面図である。本発明の放圧装置は前記筐体31内に2つの区画室37a,37bを形成する隔壁36の一部を構成するものである。
【0047】
つまり、前記隔壁36は、変圧器装置38の上部の筐体31上面との間に設置される第1の放圧装置44と、変圧器装置38の背面側の筐体31の背面との間に設置される第2の放圧装置45、および、変圧器装置38の正面側の筐体31の第1の点検扉32との間に設置される仕切板46から概略構成されている。
【0048】
当該放圧装置44,45および仕切板46の取付位置を、図8に示す変圧器装置38の概略図(斜視図)に示す。第1の放圧装置44は、変圧器装置38の正面視左端部の上部位置に取り付けられ、第2の放圧装置45は、変圧器装置38の正面視左端部の背面位置に取り付けられ、仕切板46は、変圧器装置38の正面視左端部の正面位置に取り付けられている。
【0049】
第1の放圧装置44の側方視左側と第2の放圧装置45の側方視上側の角部の隙間と、第1の放圧装置44の側方視右側と仕切板46の側方視上側の角部の隙間およびその他の隙間には後述する閉塞部材が取り付けられ、これらによって隔壁36は形成されている。
【0050】
第1の放圧装置44および第2の放圧装置45の中央には、高圧側の区画室37bの内圧が異常上昇した際に、各放圧装置44,45から脱落するガスケット47,48が取り付けられている。
【0051】
次に、前記第1の放圧装置44と第2の放圧装置45および仕切板46の構造と、これらを筐体31内に固定する方法について図9を用いて説明する。
【0052】
図9は本発明の地上設置型変圧器PMTを構成する変圧器装置38と、これに取り付けられる第1,2の放圧装置44,45および仕切板46の構造を示す要部拡大斜視図である。
【0053】
第1の放圧装置44は、矩形状をなし長手方向を横向きにして起立する2枚の薄鋼板49,50からなる外枠によって概略構成されている。2枚の薄鋼板49,50は中央位置を開口して形成される中空部51,52(52は作図上、図番で指示せず)と、その周囲の取付部53,54を有しており、2枚の薄鋼板49,50間にはガスケット47が挟持されている。
【0054】
前記ガスケット47は、2枚の薄鋼板49,50間を第1の固定部材55で固定することによって、確実に挟持されるとともに、は第1の固定部材55の1つによって支持される。
【0055】
また、2枚の薄鋼板49,50のうち、一方の薄鋼板49には、その下端位置に、変圧器装置38を正面視した場合に、左方へ突出する第2の固定部位56が取り付けられており、当該固定部位56には、第2の固定部材57を取り付ける第2の取付孔58が形成されている。
【0056】
第2の固定部材57は、変圧器装置38のタンク59の図示しない上面から上方へ向けて突出する第2のボルト60と、これに取り付けられる第2のナット61から構成されている。第2のボルト60は、タンク59の図示しない上面に載置される天板62に形成した挿入孔63内を挿通して天板62の上面から上方へ向けて突出しており、その主目的は、変圧器装置38のタンク59の上面に天板62を固定することにある。
【0057】
第2の放圧装置45は、長手方向を縦向きにして起立する2枚の薄鋼板64,65からなる外枠によって概略構成されている。当該薄鋼板64,65は、上部に上段面66a,66b、中段面67a,67b、上部下段面68a,68bと、これらをつなぐ縦短面69a,69b、傾斜面70a,70b、縦長面71a,71bを有し、下部に下部下段面72a,72bを有する平面形状となっている。
【0058】
2枚の薄鋼板64,65は中央位置を開口して形成される中空部73,74(74は作図上、図番で指示せず)と、その周囲の取付部75,76を有しており、2枚の薄鋼板64,65間にはガスケット48が挟持されている。
【0059】
前記ガスケット48は、2枚の薄鋼板64,65間を第3の固定部材78で固定することによって、確実に挟持される。
【0060】
また、2枚の薄鋼板64,65には、上部下段面68a,68bと下部下段面72a,72bの間に第4の固定部材79が取り付けられる第4の取付孔80a,80b(80bは作図上、図番で指示せず)が形成されており、第4の固定部材79は、変圧器装置38のタンク59の側面59aの縁部に止着され、側方(変圧器装置38を正面視で左方向)へ向けて突出する第4のボルト81と、これに取り付けられる第4のナット82から構成されている。
【0061】
そして、前記ガスケット48は、第4のボルト81と第4のナット82の1組によって2枚の薄鋼板64,65間に支持される。
【0062】
仕切板46は長手方向を縦向きに起立させた一枚の薄鋼板からなり、上部には上段面83が形成され、縦方向に向けて第5の固定部材84を取り付ける第5の取付孔85が形成されている。なお、第5の固定部材84は、変圧器装置38のタンク59の側面59aの縁部に止着され、側方(変圧器装置38を正面視で左方向)へ向けて突出する第5のボルト86と、これに取り付けられる第5のナット87から構成されている。
【0063】
上述の第1の放圧装置44は、変圧器装置38の天板62から上方へ向けて突出する第2のボルト60を第2の取付部位56の第2の取付孔58に挿通した後、当該第2のボルト60に第2のナット61を締着することによって、変圧器装置38の天板62の縁部上に固定される。
【0064】
また、第2の放圧装置45は、変圧器装置38のタンク59の側面59aから側方へ向けて突出する第4のボルト81を第4の取付孔80a,80bに挿通した後、当該第4のボルト81に第4のナット82を締着することによって、変圧器装置38のタンク59の側面59a縁部に固定される。
【0065】
このとき、第2の放圧装置45を構成する2枚の薄鋼板64,65の上部には、上段面66a,66bと中段面67a,67bおよび、これをつなぐ縦短面69a,69bと、中段面67a,67bと縦長面71a,71bをつなぐ傾斜面70a,70bが形成されているので、変圧器装置38の天板62および高圧側のブッシング88がタンク59の側面59aから側方へ突出していても、当該天板62は前記中段面67a,67b上に嵌め込まれる。換言すれば、ブッシング88は傾斜面70a,70bによって第2の放圧装置45を避ける格好で取り付けることが可能となり、第2の放圧装置45をタンク59の側面59aに密着固定することができる。
【0066】
また、仕切板46は、変圧器装置38のタンク59の側面59aから側方へ向けて突出する第5のボルト86を第5の取付孔85に挿通した後、当該第5のボルト86に第5のナット87を締着することによって、変圧器装置38のタンク59の側面59aの反対側の縁部に固定される。
【0067】
このとき、仕切板46の上部には、上段面83が形成されているので、変圧器装置38の天板62がタンク59の側面59aから側方へ突出していても、当該天板62は前記上段面83の上方位置に嵌め込むことが可能となり、仕切板46をタンク59の側面59aに密着固定することができる。
【0068】
図10は前記第1,2の放圧装置44,45と仕切板46を変圧器装置38のタンク59の側面59aに取り付けた状態を示す、本発明の地上設置型変圧器PMTの左断面図である。図10に示すように、第1,2の放圧装置44,45を取り付けた状態においては、第1の放圧装置44の左右方向位置および上方向位置、第2の放圧装置45の上方向位置、左方向位置および下方向位置、仕切板46の上方向位置、右方向位置および下方向位置に、これら放圧装置44,45および仕切板46では密閉しきれない隙間が生じる。
【0069】
そこで、これら隙間は、ガスケットからなる閉塞部材89a~89hによって抜脱しないように塞ぐことにより、第1,2の放圧装置44,45と仕切板46とあわせて図5に示す隔壁36を形成して、第1の区画室37aと第2の区画室37bを隔て、第2の区画室37b内を密閉空間とする。
【0070】
次に、上記のとおり構成した第1,2の放圧装置44,45を活用する場面について説明する。図5に示す高圧機器42が収容された第2の区画室37b内で内部短絡等により、区画室37b内の空気が膨張して区画室37bの内圧が異常上昇すると、区画室37bの内圧は区画室37bの周囲を形成する筐体31の内壁面を外側方向へ押圧することになる。
【0071】
これと同時に筐体31内を第1の区画室37aと第2の区画室37bに隔てる隔壁36にも押圧力が加わり、隔壁36を第1の区画室37a側へ押圧することとなる。このとき、隔壁36には図10に示す変圧器装置38のタンク59の側面59aや、第1,2の放圧装置44,45および仕切板46、閉塞部材89a~89hの全面に均一に圧力が加わる。
【0072】
ここで、第1,2の放圧装置44,45には、それぞれ2枚の薄鋼板49,50間および薄鋼板64,65間にガスケット47,48が挟持されており、その一部が中空部51,73からのぞいている。
【0073】
そのため、隔壁36に加わった内圧は、第1の放圧装置44のガスケット47と、第2の放圧装置45のガスケット48を、図11に示すように、1つの第1の固定部材55、又は、1組の第4のボルト・ナット81,82を中心に回転させ、2枚の薄鋼板49,50間または薄鋼板64,65間から脱落させ、図5に示す第1の区画室37a側を開放する。
【0074】
すると、第1の区画室37aには、図8に示すように、換気口34a~34cが筐体31の右側面に、換気口35a~35dが筐体31の背面に設けられているので、筐体31内の圧力は、図8に点線で示すように第1の区画室37a内を流れ、当該複数の換気口34a~34c,35a~35dから外部へ放出される。
【0075】
これにより、高圧機器42を収容設置した第2の区画室37b内に異常な内圧上昇が発生しても、第31の区画室37aを介して、圧力を外部へ速やかに放出することができるので、筐体31が内圧により損壊したり、筐体31の接合部が剥離するという問題の発生を確実に防止することができる。
【0076】
以上説明したように、本発明の地上設置型変圧器に付属される放圧装置は、従来の放圧装置と比較して、その部品点数を飛躍的に削減でき、構造を簡素化できるので、装置コストを低減できるとともに、設置する際の組立調整が極力不要となるので、少ない労力と作業時間により設置作業が行え、生産性の向上が図れる。
【0077】
また、第1の区画室37aと第2の区画室37bを区画する隔壁36を利用して放圧装置44,45を構成するので、放圧装置44,45を設置するスペースを別途確保する必要がなく、装置の小型化に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、隔壁によって密閉空間を形成する各種電気機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
31 筐体
32 第1の点検扉
33 第2の点検扉
34a~34c,35a,35d 換気口
36 隔壁
37a 第1の区画室
37b 第2の区画室
38 変圧器装置
39 低圧分岐装置
40 低圧側ケーブル
41 接地線
42 高圧側機器
42a 開閉器
42b 高圧カットアウト
43 高圧側ケーブル
44 第1の放圧装置
45 第2の放圧装置
46 仕切板
47,48 ガスケット
49,50,64,65 薄鋼板
51,52,73,74 中空部
53,54,75,76 取付部
55 第1の固定部材
56 第2の固定部位
57 第2の固定部材
58 第2の取付孔
59 タンク
59a タンク側面
60 第2のボルト
61 第2のナット
62 天板
63 挿入孔
66a,66b 上段面
67a,67b 中段面
68a,68b 上部下段面
69a,69b 縦短面
70a,70b 傾斜面
71a,71b 縦長面
72a,72b 下部下段面
78 第3の固定部材
79 第4の固定部材
80a,80b 第4の取付孔
81 第4のボルト
82 第4のナット
83 第5の取付孔
84 第5の固定部材
85 第5の取付孔
86 第5のボルト
87 第5のナット
88 ブッシング
89a~89h 閉塞部材
PMT 地上設置型変圧器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11