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特開2022-120874液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120874
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220812BHJP
   B41J 2/195 20060101ALI20220812BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B41J2/01 403
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/195
B41J2/175 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017898
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真
(72)【発明者】
【氏名】飯田 翔太郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB32
2C056EB37
2C056EC07
2C056EC11
2C056EC22
2C056EC34
2C056EC54
2C056FA10
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】ヘッドの加速中にフラッシング処理を実行する場合においても、ヘッド内の負圧を抑制し、十分な量の液体を吐出させる。
【解決手段】プリンタのCPUは、次の移動動作においてフラッシング処理を実行する場合、フラッシング領域60rと吐出領域Rとの走査方向の間隔Xが所定間隔Xt以上であるか否かを判断する。間隔Xが所定間隔Xt以上である場合、CPUは、ヘッド10の加速度をフラッシング処理を実行しない移動動作における第1加速度よりも低い第2加速度A2として、第n移動動作を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構と、
前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させる移動動作と、前記移動動作により前記ヘッドが移動中に前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出動作とを含む、記録処理と、
前記移動動作により前記ヘッドが移動するとき、前記ヘッドの加速中に、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてフラッシング領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理と、を実行し、
さらに、
前記吐出動作が実行される前記移動動作において前記フラッシング処理を実行するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、
前記第1判断処理において前記フラッシング処理を実行しないと判断された場合、前記ヘッドの加速度を第1加速度として前記移動動作を実行し、
前記第1判断処理において前記フラッシング処理を実行すると判断された場合、前記フラッシング領域と前記吐出動作において前記複数のノズルから液体が吐出される吐出領域との前記走査方向の間隔が所定間隔以上であるか否かを判断する、第2判断処理を実行し、
前記第2判断処理において前記間隔が前記所定間隔以上であると判断された場合、前記加速度を前記第1加速度よりも低い第2加速度として前記移動動作及び前記フラッシング処理を実行することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2判断処理において前記間隔が前記所定間隔以上でないと判断された場合、
前記加速度を前記第1加速度よりも低い第3加速度として前記移動動作及び前記フラッシング処理を行う第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記加速度を前記第3加速度よりも高い第4加速度として前記第1ステップと同じ方向に前記移動動作を行う第2ステップと、
を実行することを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2判断処理において前記間隔が前記所定間隔以上でないと判断された場合、
前記加速度を前記第1加速度よりも低い第3加速度として前記移動動作及び前記フラッシング処理を行う第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記第1ステップと逆の方向に前記移動動作を行う第2ステップと、
前記第2ステップの後、前記加速度を前記第3加速度よりも高い第4加速度として前記第1ステップと同じ方向に前記移動動作及び前記吐出動作を行う第3ステップと、
を実行することを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記フラッシング領域は、前記吐出領域に対して前記走査方向の一方に位置し、
前記移動動作は、前記走査方向の一方から他方に向けて前記ヘッドを移動させる正移動動作と、前記走査方向の他方から一方に向けて前記ヘッドを移動させる逆移動動作とを含み、
前記制御部は、
前記吐出動作が実行されない前記正移動動作において前記フラッシング処理を実行するか否かを判断する、第3判断処理を実行し、
前記第3判断処理において前記フラッシング処理を実行しないと判断された場合、前記加速度を第5加速度として前記正移動動作を実行し、
前記第3判断処理において前記フラッシング処理を実行すると判断された場合、前記加速度を前記第5加速度よりも低い第6加速度として前記正移動動作及び前記フラッシング処理を実行することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、
記録モードが、前記記録処理を第1速度で実行する第1モード及び前記記録処理を前記第1速度よりも高い第2速度で実行する第2モードのいずれであるかを判断する、第4判断処理を実行し、
前記第4判断処理において前記記録モードが前記第1モードであると判断された場合、前記第2判断処理を実行し、
前記第4判断処理において前記記録モードが前記第2モードであると判断された場合、前記第2判断処理を実行しないことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記吐出動作において前記複数のノズルから吐出される液体の粘度が所定粘度よりも高いか否かを判断する、第5判断処理を実行し、
前記第5判断処理において前記粘度が前記所定粘度よりも高いと判断された場合、前記第2判断処理を実行し、
前記第5判断処理において前記粘度が前記所定粘度よりも高くないと判断された場合、前記第2判断処理を実行しないことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体を貯留するタンクであって、前記ヘッドと連通しかつ前記複数のノズルから吐出される液体を前記ヘッドに供給するタンクが装着される装着部を備え、
前記制御部は、前記第5判断処理において、
前記タンクが所定のタンクでない場合、前記粘度が前記所定粘度よりも高いと判断し、
前記タンクが前記所定のタンクである場合、前記粘度が前記所定粘度よりも高くないと判断することを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、
画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させる移動動作と、前記移動動作により前記ヘッドが移動中に前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出動作とを含む、記録処理と、
前記移動動作により前記ヘッドが移動するとき、前記ヘッドの加速中に、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてフラッシング領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理と、を実行し、
さらに、
前記吐出動作が実行される前記移動動作において前記フラッシング処理を実行するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、
前記第1判断処理において前記フラッシング処理を実行しないと判断された場合、前記ヘッドの加速度を第1加速度として前記移動動作を実行し、
前記第1判断処理において前記フラッシング処理を実行すると判断された場合、前記フラッシング領域と前記吐出動作において前記複数のノズルから液体が吐出される吐出領域との前記走査方向の間隔が所定間隔以上であるか否かを判断する、第2判断処理を実行し、
前記第2判断処理において前記間隔が前記所定間隔以上であると判断された場合、前記加速度を前記第1加速度よりも低い第2加速度として前記移動動作及び前記フラッシング処理を実行することを特徴とする、制御方法。
【請求項9】
複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を、
画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録手段であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させる移動動作と、前記移動動作により前記ヘッドが移動中に前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出動作とを実行する、記録手段、及び、
前記移動動作により前記ヘッドが移動するとき、前記ヘッドの加速中に、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてフラッシング領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理を実行する手段、として機能させ、
さらに、
前記吐出動作が実行される前記移動動作において前記フラッシング処理を実行するか否かを判断する、第1判断手段として機能させ、
前記第1判断手段により前記フラッシング処理を実行しないと判断された場合、前記ヘッドの加速度を第1加速度として前記移動動作を実行する手段として機能させ、
前記第1判断手段により前記フラッシング処理を実行すると判断された場合、前記フラッシング領域と前記吐出動作において前記複数のノズルから液体が吐出される吐出領域との前記走査方向の間隔が所定間隔以上であるか否かを判断する、第2判断手段として機能させ、
前記第2判断手段により前記間隔が前記所定間隔以上であると判断された場合、前記加速度を前記第1加速度よりも低い第2加速度として前記移動動作及び前記フラッシング処理を実行する手段として機能させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドの加速中にフラッシング処理を実行する液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドの加速中に液体受けに対してノズルから液体を吐出させること(印刷前フラッシング、印刷中フラッシング)が示されている。フラッシングを実行することで、ノズル内の液体の増粘を解消し、記録処理時の吐出不良を抑制できる。また、ヘッドの移動中にフラッシングを実行することで、ヘッドの停止中にフラッシングを実行する場合に比べ、高速記録を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-199255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヘッドの加速中にフラッシング処理を実行すると、ヘッド内の動圧により負圧が発生することで、液体の吐出量が不足し、増粘抑制効果が不十分になり得る。
【0005】
本発明の目的は、ヘッドの加速中にフラッシング処理を実行する場合においても、ヘッド内の負圧を抑制し、十分な量の液体を吐出させることができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出装置は、複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、制御部と、を備え、前記制御部は、画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させる移動動作と、前記移動動作により前記ヘッドが移動中に前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出動作とを含む、記録処理と、前記移動動作により前記ヘッドが移動するとき、前記ヘッドの加速中に、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてフラッシング領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理と、を実行し、さらに、前記吐出動作が実行される前記移動動作において前記フラッシング処理を実行するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、前記第1判断処理において前記フラッシング処理を実行しないと判断された場合、前記ヘッドの加速度を第1加速度として前記移動動作を実行し、前記第1判断処理において前記フラッシング処理を実行すると判断された場合、前記フラッシング領域と前記吐出動作において前記複数のノズルから液体が吐出される吐出領域との前記走査方向の間隔が所定間隔以上であるか否かを判断する、第2判断処理を実行し、前記第2判断処理において前記間隔が前記所定間隔以上であると判断された場合、前記加速度を前記第1加速度よりも低い第2加速度として前記移動動作及び前記フラッシング処理を実行することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る制御方法は、複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録処理であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させる移動動作と、前記移動動作により前記ヘッドが移動中に前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出動作とを含む、記録処理と、前記移動動作により前記ヘッドが移動するとき、前記ヘッドの加速中に、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてフラッシング領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理と、を実行し、さらに、前記吐出動作が実行される前記移動動作において前記フラッシング処理を実行するか否かを判断する、第1判断処理を実行し、前記第1判断処理において前記フラッシング処理を実行しないと判断された場合、前記ヘッドの加速度を第1加速度として前記移動動作を実行し、前記第1判断処理において前記フラッシング処理を実行すると判断された場合、前記フラッシング領域と前記吐出動作において前記複数のノズルから液体が吐出される吐出領域との前記走査方向の間隔が所定間隔以上であるか否かを判断する、第2判断処理を実行し、前記第2判断処理において前記間隔が前記所定間隔以上であると判断された場合、前記加速度を前記第1加速度よりも低い第2加速度として前記移動動作及び前記フラッシング処理を実行することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るプログラムは、複数のノズルを有するヘッドと、前記ヘッドを走査方向に移動させる走査機構と、前記ヘッドに対して前記走査方向と交差する搬送方向に相対的に記録媒体を搬送する搬送機構と、を備えた液体吐出装置を、画像データに基づいて記録媒体に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる記録手段であって、前記搬送機構により記録媒体を前記搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、前記走査機構により前記ヘッドを前記走査方向に移動させる移動動作と、前記移動動作により前記ヘッドが移動中に前記複数のノズルから液体を吐出させる吐出動作とを実行する、記録手段、及び、前記移動動作により前記ヘッドが移動するとき、前記ヘッドの加速中に、前記画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてフラッシング領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、フラッシング処理を実行する手段、として機能させ、さらに、前記吐出動作が実行される前記移動動作において前記フラッシング処理を実行するか否かを判断する、第1判断手段として機能させ、前記第1判断手段により前記フラッシング処理を実行しないと判断された場合、前記ヘッドの加速度を第1加速度として前記移動動作を実行する手段として機能させ、前記第1判断手段により前記フラッシング処理を実行すると判断された場合、前記フラッシング領域と前記吐出動作において前記複数のノズルから液体が吐出される吐出領域との前記走査方向の間隔が所定間隔以上であるか否かを判断する、第2判断手段として機能させ、前記第2判断手段により前記間隔が前記所定間隔以上であると判断された場合、前記加速度を前記第1加速度よりも低い第2加速度として前記移動動作及び前記フラッシング処理を実行する手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヘッドの加速中にフラッシング処理を実行する場合においても、ヘッド内の負圧を抑制し、十分な量の液体を吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの全体構成を示す平面図である。
図2図1に示されているヘッドの断面図である。
図3図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図4図1のプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図5図5のS7~S9,S15を説明するための模式図である。
図6】ヘッドの速度と位置との関係を示すグラフである。
図7】本発明の第2実施形態に係るプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図8図7のS21~S23を説明するための模式図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
先ず、図1図3を参照し、本発明の第1実施形態に係るプリンタ100の全体構成、及び、プリンタ100の各部の構成について説明する。
【0012】
プリンタ100は、図1に示すように、下面に複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を保持するキャリッジ20と、キャリッジ20及びヘッド10を走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる走査機構30と、用紙1(記録媒体)を下方から支持するプラテン40と、用紙1を搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構50と、プラテン40に対して走査方向の一方に配置されたフラッシング受容部材60と、プラテン40に対して走査方向の他方に配置されたキャップ70と、カートリッジユニット80(タンク)が装着される装着部80Aと、制御装置90とを備えている。
【0013】
ノズルNは、走査方向に並ぶ4つのノズル列Nc,Nm,Ny,Nkを構成している。各ノズル列Nc,Nm,Ny,Nkは、搬送方向に並ぶ複数のノズルNで構成されている。ノズル列Ncを構成するノズルNはシアンのインク、ノズル列Nmを構成するノズルNはマゼンタのインク、ノズル列Nyを構成するノズルNはイエローのインク、ノズル列Nkを構成するノズルNはブラックのインクを、それぞれ吐出する。
【0014】
走査機構30は、キャリッジ20を支持する一対のガイド31,32と、キャリッジ20に連結されたベルト33とを含む。ガイド31,32及びベルト33は、走査方向に延びている。制御装置90の制御によりキャリッジモータ30m(図3参照)が駆動されると、ベルト33が走行し、ガイド31,32に沿ってキャリッジ20及びヘッド10が走査方向に移動する。
【0015】
プラテン40は、ヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙1が支持される。
【0016】
搬送機構50は、2つのローラ対51,52を有する。搬送方向においてローラ対51とローラ対52との間に、ヘッド10及びプラテン40が配置されている。制御装置90の制御により搬送モータ50m(図3参照)が駆動されると、ローラ対51,52が用紙1を挟持した状態で回転し、用紙1が搬送方向に搬送される。このように、搬送機構50はヘッド10に対して相対的に用紙1を搬送する。
【0017】
フラッシング受容部材60は、搬送方向においてガイド31,32の間に配置されており、その表面にフラッシング領域60rを有する。フラッシング領域60rは、搬送機構50による用紙1の搬送領域外にあり、搬送領域と走査方向に隣接する位置にある。フラッシング領域60rに向けて、後述するフラッシング処理が行われる。
【0018】
キャップ70は、上面が開口した箱状の部材であり、キャップ昇降モータ70m(図3参照)の駆動により鉛直方向に移動可能である。ヘッド10がキャップ70の上方に位置するときに、制御装置90の制御によりキャップ昇降モータ70mが駆動され、キャップ70が上方に移動されることで、キャップ70がヘッド10の下面に接触し、キャップ70とヘッド10との間に密閉空間が形成される。このとき、ヘッド10に形成された全てのノズルNがキャップ70で覆われる。このときのキャップ70の状態をキャッピング状態という。一方、キャップ70がヘッド10から離隔してノズルNを覆わない状態(キャップ70とヘッド10との間に密閉空間が形成されない状態)をアンキャッピング状態という。
【0019】
キャップ70は、チューブ及び吸引ポンプ70pを介して、廃インクタンク77と連通している。キャップ70がキャッピング状態にあるときに、制御装置90の制御により吸引ポンプ70pが駆動されると、キャップ70とヘッド10との間の密閉空間が減圧され、ノズルNからインクが強制的に排出される。排出されたインクは、キャップ70に受容され、廃インクタンク77へと流れる。
【0020】
カートリッジユニット80は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ貯留する4つのカートリッジ80c,80m,80y,80kを含む。4つのカートリッジ80c,80m,80y,80kは、それぞれ、チューブを介して、ヘッド10の各色の共通流路12a(図2参照)に連通している。
【0021】
ヘッド10は、図2に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0022】
流路ユニット12の下面に、複数のノズルN(図1参照)が形成されている。流路ユニット12の内部には、カートリッジユニット80(図1参照)に連通する共通流路12aと、ノズルN毎に個別の個別流路12bとが形成されている。個別流路12bは、共通流路12aの出口から圧力室12pを経てノズルNに至る流路である。流路ユニット12の上面には、複数の圧力室12pが開口している。
【0023】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12pを覆うように配置された金属製の振動板13aと、振動板13aの上面に配置された圧電層13bと、圧電層13bの上面に複数の圧力室12pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13cとを含む。
【0024】
振動板13a及び複数の個別電極13cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、振動板13aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13cの電位をグランド電位と駆動電位との間で変化させる。具体的には、ドライバIC14は、制御装置90からの制御信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給する。これにより、個別電極13cの電位が駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板13a及び圧電層13bにおいて個別電極13cと圧力室12pとで挟まれた部分(アクチュエータ13x)が変形することにより、圧力室12pの容積が変化する。圧力室12pの容積が増加すると、共通流路12aから個別流路12bにインクが吸い込まれ、各カートリッジ80c,80m,80y,80kから共通流路12aにインクが供給される。圧力室12pの容積が減少すると、圧力室12p内のインクに圧力が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13xは、個別電極13c毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0025】
制御装置90は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、ROM(Read Only Memory)92と、RAM(Random Access Memory)93と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94とを含む。このうち、CPU91及びASIC94が本発明の「制御部」に該当する。
【0026】
ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータ(画像データ等)を一時的に記憶する。制御装置90は、外部装置(パーソナルコンピュータ等)150と通信可能に接続されており、当該外部装置150やプリンタ100の入力部(プリンタ100の筐体の外面に設けられたスイッチやボタン)から入力されたデータに基づいて、CPU91やASIC94により記録処理等を実行する。
【0027】
記録処理において、ASIC94は、CPU91からの指令にしたがい、外部装置150等から受信した記録指令(画像データを含む。)に基づいて、ドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50mを駆動させ、搬送機構50によって用紙1を搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、走査機構30によってヘッド10を走査方向に移動させる移動動作と、移動動作によりヘッド10が移動中にノズルNからインクを吐出させる吐出動作とを行わせる。これにより、用紙1上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0028】
ASIC94は、図3に示すように、出力回路94a及び転送回路94bを含む。
【0029】
出力回路94aは、波形信号FIRE及び選択信号SINを生成し、これら信号を記録周期毎に転送回路94bに出力する。記録周期は、用紙1上に形成される画像の解像度に対応する単位距離だけ用紙1がヘッド10に対して相対移動するのに要する時間であり、1画素に対応する。
【0030】
波形信号FIREは、4つの波形データを直列化したシリアル信号である。4つの波形データは、それぞれ1記録周期におけるノズルNから吐出されるインクの液滴量が「ゼロ(吐出なし)」「小」「中」「大」に対応するものであり、パルス数が互いに異なる。
【0031】
選択信号SINは、上記4つの波形データの中から1つを選択するための選択データを含むシリアル信号であり、記録指令に含まれる画像データに基づいて、アクチュエータ13x毎、かつ、記録周期毎に生成される。
【0032】
転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。転送回路94bは、上記各信号に対応するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。
【0033】
ASIC94は、記録処理において、ドライバIC14を制御し、画素毎に、波形信号FIRE及び選択信号SINに基づいて駆動信号を生成させ、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給させる。これにより、ASIC94は、画素毎に、複数のノズルNのそれぞれから、4種類の液滴量(ゼロ、小、中、大)の中から選択された液滴量のインクを用紙Pに向けて吐出させる。
【0034】
ASIC94は、ドライバIC14、キャリッジモータ30m、搬送モータ50m、キャップ昇降モータ70m及び吸引ポンプ70pに加え、カートリッジセンサ81及び温度センサ82と電気的に接続されている。カートリッジセンサ81は、装着部80A(図1参照)に配置されており、カートリッジユニット80に設けられたICチップのデータを検知し、当該データをASIC91に出力する。温度センサ82は、ヘッド10の温度を検知し、当該温度を示すデータをASIC91に出力する。
【0035】
次いで、図4図6を参照し、CPU91が実行するプログラムについて説明する。
【0036】
当該プログラムの開始時点において、ヘッド10はキャップ70の上方に位置し(図1参照)、キャップ70はキャッピング状態にある。このとき、ヘッド10に形成された全てのノズルNがキャップ70で覆われている。
【0037】
CPU91は、先ず、図4に示すように、外部装置150等から記録指令を受信したか否かを判断する(S1)。記録指令を受信していない場合(S1:NO)、CPU91は、S1の処理を繰り返す。
【0038】
記録指令を受信した場合(S1:YES)、CPU91は、キャップ昇降モータ70mを駆動させ、キャップ70を下方に移動させることで、キャップをキャッピング状態からアンキャッピング状態に移行させる(S2:アンキャップ処理)。
【0039】
S2の後、CPU91は、n=1とする(S3)。nは、吐出動作が実行される移動動作毎に時系列順に付された番号である。
【0040】
S3の後、CPU91は、第n移動動作においてフラッシング処理を実行するか否かを判断する(S4:第1判断処理)。フラッシング処理は、画像データとは異なるフラッシングデータに基づいて、フラッシング領域60rに対してノズルNからインクを吐出させる処理をいい、移動動作によりヘッド10が移動するとき、ヘッド10の加速中に実行される。
【0041】
フラッシング領域60rは、第n移動動作でノズルNからインクが吐出される吐出領域Rに対し、走査方向の一方(図5の左側)に位置する。
【0042】
移動動作は、走査方向の一方から他方(図5の右側:方向D1)に向けてヘッド10を移動させる「正移動動作」と、走査方向の他方から一方(図5の左側:方向D2)に向けてヘッド10を移動させる「逆移動動作」とを含む。正移動動作において、ヘッド10は、フラッシング領域60rと鉛直方向に重なる位置を始点として移動を開始し、キャップ70と鉛直方向に重なる位置を終点として移動を終了する。逆移動動作において、ヘッド10は、キャップ70と鉛直方向に重なる位置を始点として移動を開始し、フラッシング領域60rと鉛直方向に重なる位置を終点として移動を終了する。
【0043】
本実施形態では、第n移動動作が正移動動作である場合であって、所定の条件(前回のフラッシング処理からの経過時間等の条件)が満たされたときに、フラッシング処理を実行する(S4:YES)と判断される。
【0044】
フラッシング処理は、ヘッド10が方向D1に移動する間に(ヘッド10を停止させることなく)実行される。具体的には、CPU91は、ヘッド10が方向D1に移動する間に、ノズル列Nc,Nm,Ny,Nk毎に、当該ノズル列がフラッシング領域60rと鉛直方向に重なるタイミングで、フラッシングデータに基づいて、ドライバIC14の駆動によりアクチュエータ13xを変形させ、当該ノズル列に属するノズルNからインクを吐出させる。吐出されたインクは、フラッシング領域60rに受容され、廃インクタンク77(図1参照)へと流れる。
【0045】
フラッシング処理を実行しない場合(S4:NO)、CPU91は、ヘッド10の加速度を第1加速度A1として第n移動動作を実行する(S5)。CPU91は、当該移動動作中、ヘッド10の速度が目標速度Vtにあるときに、吐出動作を実行する。
【0046】
図6に示すように、各移動動作において、ヘッド10の速度は、ヘッド10が始点から方向D1又は方向D2に移動する間に、ゼロから目標速度Vtに上昇する。そしてヘッド10の速度は、目標速度Vtに一定期間維持された後、目標速度Vtからゼロに下降する。加速度の大小により、ヘッド10の速度がゼロから目標速度Vtに到達するまでの時間が異なり、加速度が高いほど、当該時間が短くなる。
【0047】
フラッシング処理を実行する場合(S4:YES)、CPU91は、S1で受信した記録指令が示す記録モードが高画質モードであるか否かを判断する(S6:第4判断処理)。本実施形態において、記録モードは、高画質モード(第1モード)と、通常画質モード(第2モード)とを含む。高画質モードと通常画質モードとでは、目標速度Vt(図6参照)が互いに異なる。通常画質モードにおける目標速度Vt(第2速度)は、高画質モードにおける目標速度Vt(第1速度)よりも高い。
【0048】
記録モードが高画質モードでない(即ち、通常画質モードである)場合(S6:NO)、CPU91は、ヘッド10の加速度を第1加速度A1として第n移動動作を実行する(S5)。CPU91は、当該移動動作中、ヘッド10の速度がゼロから目標速度Vtに到達するまでの間(即ち、ヘッド10の加速中)にフラッシング処理を実行し、ヘッド10の速度が目標速度Vtにあるときに吐出動作を実行する。
【0049】
記録モードが高画質モードである場合(S6:YES)、CPU91は、図5に示すように、フラッシング領域60rと吐出領域Rとの走査方向の間隔Xが所定間隔Xt以上であるか否かを判断する(S7:第2判断処理)。
【0050】
間隔Xが所定間隔Xt以上である場合(S7:YES)、CPU91は、図6に示すように、ヘッド10の加速度を第2加速度A2として第n移動動作を実行する(S8)。第2加速度A2は、S5の第1加速度A1よりも低い。CPU91は、当該移動動作中、ヘッド10の速度がゼロから目標速度Vtに到達するまでの間(即ち、ヘッド10の加速中)にフラッシング処理を実行し、ヘッド10の速度が目標速度Vtにあるときに吐出動作を実行する。
【0051】
間隔Xが所定間隔Xt以上でない(即ち、所定値Xt未満である)場合(S7:NO)、CPU91は、図6に示すように、ヘッド10の加速度を第3加速度A3として移動動作及びフラッシング処理を行う第1ステップと、第1ステップの後、ヘッド10を停止させることなく、ヘッド10の加速度を第4加速度A2として第1ステップと同じ方向に移動動作を行う第2ステップと、を連続して実行する(S9)。第3加速度A3は、S5の第1加速度A1よりも低い。第4加速度A4は、第3加速度A3よりも高い。CPU91は、第1ステップでフラッシング処理を実行し、第2ステップにおいてヘッド10の速度が目標速度Vtにあるときに吐出動作を実行する。CPU91は、第2ステップではフラッシング処理を実行しない。
【0052】
本実施形態において、第4加速度A4は、第1加速度A1と同じであり、第2加速度A2よりも高い。第3加速度A3は、第2加速度A2よりも低い(図6参照)。
【0053】
S5、S8又はS9の後、CPU91は、S1で受信した記録指令に基づく記録処理が完了したか否かを判断する(S10)。CPU91は、n=N(N:画像データに基づいて決定される、吐出動作が実行される移動動作の数)の場合、記録処理が完了した(S10:YES)と判断する。
【0054】
記録処理が完了していない場合(S10:NO)、CPU91は、n=n+1とする(S11)。S11の後、CPU91は、処理をS4に戻す。
【0055】
記録処理が完了した場合(S10:YES)、CPU91は、次の移動動作(吐出動作が実行されない正移動動作)においてフラッシング処理を実行するか否かを判断する(S12:第3判断処理)。なお、S12の時点において、ヘッド10が正移動動作の始点(フラッシング領域60rと鉛直方向に重なる位置)に配置されていない場合、CPU91は、後述するS13,S14の前に、ヘッド10を当該始点に移動させる。
【0056】
フラッシング処理を実行しない場合(S12:NO)、CPU91は、ヘッド10の加速度を第5加速度A5として正移動動作を実行する(S13)。
【0057】
フラッシング処理を実行する場合(S12:YES)、CPU91は、ヘッド10の加速度を第6加速度A6として正移動動作及びフラッシング処理を実行する(S14)。第6加速度A6は、S13の第5加速度A5よりも低い。
【0058】
本実施形態において、第5加速度A5は、第1加速度A1と同じである。第6加速度A6は、第2加速度A2と同じである(図6参照)。
【0059】
S13又はS14の後、CPU91は、ヘッド10が正移動動作の終点(キャップ70と鉛直方向に重なる位置)にあるときに、キャップ昇降モータ70mを駆動させ、キャップ70を上方に移動させることで、キャップ70をアンキャッピング状態からキャッピング状態に移行させる(S15:キャップ処理)。
【0060】
S15の後、CPU91は、当該プログラムを終了する。
【0061】
以上に述べたように、本実施形態によれば、CPU91は、第n移動動作においてフラッシング処理を実行する場合(S4:YES)、フラッシング領域60rと吐出領域Rとの走査方向の間隔Xが所定間隔Xt以上であるか否かを判断する(S7)。そしてCPU91は、間隔Xが所定間隔Xt以上である場合(S7:YES)、ヘッド10の加速度を第2加速度A2(<第1加速度A1)として第n移動動作を実行する(S8)。当該構成によれば、ヘッド10の加速中にフラッシング処理を実行する場合においても、低い第2加速度A2でフラッシング処理を実行することで、ヘッド10内の負圧を抑制し、十分な量のインクを吐出させることができる。
【0062】
また、間隔Xが所定間隔Xt以上であるため、フラッシング処理の実行後、吐出動作の開始までに、ヘッド10の速度を目標速度Vtに到達させることができる。したがって、吐出動作を安定して実行でき、画像品質を確保できる。
【0063】
CPU91は、間隔Xが所定間隔Xt以上でない場合(S7:NO)、ヘッド10の加速度を第3加速度A3(<第1加速度A1)として移動動作及びフラッシング処理を行う第1ステップと、第1ステップの後、ヘッド10の加速度を第4加速度A4(>第3加速度A3)として第1ステップと同じ方向に移動動作を行う第2ステップと、を実行する(S9)。当該構成によれば、間隔Xが小さい場合でも、低い第3加速度A3でフラッシング処理を実行することで、ヘッド10内の負圧を抑制し、十分な量のインクを吐出させることができる。また、フラッシング処理の後、高い第4加速度A4とすることで、速やかにヘッド10の速度を目標速度Vtに到達させることができる。したがって、吐出動作を安定して実行でき、画像品質を確保できる。
【0064】
CPU91は、吐出動作が実行されない正移動動作において、フラッシング処理を実行するか否かを判断する(S12)。そしてCPU91は、フラッシング処理を実行しない場合(S12:NO)、ヘッド10の加速度を第5加速度A5として正移動動作を実行し(S13)、フラッシング処理を実行する場合(S12:YES)、ヘッド10の加速度を第6加速度A6(<第5加速度A5)として正移動動作及びフラッシング処理を実行する(S14)。この場合、吐出動作が実行されない正移動動作において、低い第6加速度A6でフラッシング処理を実行することで、ヘッド10内の負圧を抑制し、十分な量のインクを吐出させることができる。
【0065】
CPU91は、記録モードが高画質モードである場合(S6:YES)はS7を行う一方、記録モードが高画質モードでない(即ち、通常画質モードである)場合(S6:NO)はS7を行わない。この場合、画像品質よりも記録速度が優先される通常画質モードの場合に、S7を行わないことで、低い第2加速度A2でフラッシング処理が実行されることがなく、高速記録を実現できる。
【0066】
<第2実施形態>
続いて、図7及び図8を参照し、本発明の第2実施形態に係るプリンタについて説明する。
【0067】
第1実施形態では、間隔Xが所定間隔Xt以上でない場合(S7:NO)、ヘッド10の加速度を第3加速度A3(<第1加速度A1)として移動動作及びフラッシング処理を行う第1ステップと、第1ステップの後、ヘッド10の加速度を第4加速度A2(>第3加速度A3)として第1ステップと同じ方向に移動動作を行う第2ステップと、が実行される(S9)。
【0068】
第1実施形態のS9では、図5に示すように、ヘッド10が一定の方向D1に連続的に移動される。
【0069】
これに対し、第2実施形態では、間隔Xが所定間隔Xt以上でない場合(S7:NO)、ヘッド10の加速度を第3加速度A3(<第1加速度A1)として移動動作及びフラッシング処理を行う第1ステップ(S21)と、第1ステップ(S21)の後、第1ステップと逆の方向(方向D2)に移動動作を行う第2ステップ(S22)と、第2ステップ(S22)の後、ヘッド19の加速度を第4加速度A4(>第3加速度A3)として第1ステップ(S21)と同じ方向に移動動作及び吐出動作を行う第3ステップ(S23)と、が実行される。
【0070】
第2実施形態のS21~S23では、図8に示すように、ヘッド10が方向D1に移動された(第1ステップ)後、方向D2に移動され(第2ステップ)、方向D1に移動される(第3ステップ)。CPU91は、第1ステップでフラッシング処理を実行し、第3ステップにおいてヘッド10の速度が目標速度Vtにあるときに吐出動作を実行する。CPU91は、第2ステップ及び第3ステップではフラッシング処理を実行しない。
【0071】
第1ステップにおけるヘッド10の始点、第2ステップにおけるヘッド10の終点、及び、第3ステップにおけるヘッド10の始点は、フラッシング領域60rと鉛直方向に重なる位置である。第1ステップにおけるヘッド10の終点、及び、第2ステップにおけるヘッド10の始点は、第n移動動作の吐出領域Rの走査方向の一端(図8の左端)近傍と鉛直方向に重なる位置である。
【0072】
以上に述べたように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0073】
間隔Xが小さい場合でも、低い第3加速度A3でフラッシング処理を実行することで、ヘッド10内の負圧を抑制し、十分な量のインクを吐出させることができる。また、フラッシング処理の後、ヘッド10を一度正移動動作の始点(フラッシング領域60rと鉛直方向に重なる位置)に戻した後、高い第4加速度A4でヘッド10を移動させることで、速やかにヘッド10の速度を目標速度Vtに到達させることができる。したがって、吐出動作を安定して実行でき、画像品質を確保できる。
【0074】
<第3実施形態>
続いて、図9を参照し、本発明の第3実施形態に係るプリンタについて説明する。
【0075】
第1実施形態において、CPU91は、フラッシング処理を実行する場合(S4:YES)、記録モードが高画質モードであるか否かを判断し(S6)、記録モードが高画質モードである場合(S6:YES)はS7を行う一方、記録モードが高画質モードでない(即ち、通常画質モードである)場合(S6:NO)はS7を行わない。
【0076】
これに対し、第3実施形態において、CPU91は、フラッシング処理を実行する場合(S4:YES)、インクの粘度αが所定粘度αtよりも高いか否かを判断し(S31:第5判断処理)、粘度αが所定粘度αtよりも高い場合(S31:YES)はS7を行う一方、粘度αが所定粘度αtよりも高くない(即ち、インクの粘度αが所定粘度αt未満である)場合(S31:NO)はS7を行わない。
【0077】
CPU91は、S31の判断を、カートリッジセンサ81(図3参照)からの信号に基づいて行う。具体的には、CPU91は、カートリッジセンサ81からの信号が所定の信号である場合、装着部80Aに装着されたカートリッジユニット80が所定のタンクであると判断し、粘度αが所定粘度αtよりも高くない(S31:NO)と判断する。また、CPU91は、カートリッジセンサ81からの信号が所定の信号でない場合、装着部80Aに装着されたカートリッジユニット80が所定のタンクでないと判断し、粘度αが所定粘度αtよりも高い(S31:YES)と判断する。
【0078】
以上に述べたように、第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0079】
CPU91は、粘度αが高い場合(S31:YES)はS7を行う一方、粘度αが低い場合(S31:NO)はS7を行わない。粘度αが低い場合は、吐出量が不足する問題が生じ難く、ヘッド10の加速中にフラッシング処理を実行しても、十分な量のインクを吐出させることができる。そこで本実施形態では、吐出量の問題が生じ難い粘度αが低い場合に、S7を行わないことで、低い第2加速度A2でフラッシング処理が実行されることがなく、高速記録を実現できる。
【0080】
また、CPU91は、カートリッジユニット80が所定のタンクでない場合、粘度αが所定粘度αtよりも高いと判断し、カートリッジユニット80が所定のタンクである場合、粘度αが所定粘度αtよりも高くないと判断する。これは、カートリッジユニット80が所定のタンクでない場合、カートリッジユニット80内のインクの成分が所定のタンクのものと異なり、インク中の水分が蒸発して粘度αが高くなり易い傾向にあるという観点に基づく。これにより、S31の判断をより実効的に実現できる。
【0081】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0082】
上述の実施形態では、記録モードとして高画質モード及び通常画質モードを例示したが、これに限定されない。例えば、記録モードは、普通紙モード、光沢紙モード等を含んでもよい。
【0083】
第3加速度は、第1加速度よりも低い限りは、特に限定されない。例えば、第3加速度は、第2加速度と同じであってもよい。第4加速度は、第3加速度よりも高い限りは、特に限定されない。例えば、第4加速度は、第2加速度と同じであってもよい。
【0084】
第5加速度は、特に限定されず、第1加速度と異なってもよい。第6加速度は、第5加速度よりも低い限りは、特に限定されない。例えば、第5加速度が図6の第2加速度と同じで、第6加速度が図6の第3加速度と同じであってもよい。
【0085】
第3判断処理の判断対象となる移動動作として、上述の実施形態では記録完了後の移動動作を例示したが、これに限定されず、記録中の移動動作であってもよい。
【0086】
制御部は、第3判断処理を実行しなくてもよい。
【0087】
第5判断処理(S31)の判断について、上述の実施形態では、カートリッジセンサ81からの信号が所定の信号である場合、装着部80Aに装着されたカートリッジユニット80が所定のタンクであると判断し、カートリッジセンサ81からの信号が所定の信号でない場合、装着部80Aに装着されたカートリッジユニット80が所定のタンクでないと判断するが、これに限定されない。例えば、カートリッジセンサ81からの信号が所定の信号でない場合、装着部80Aに装着されたカートリッジユニット80が所定のタンクであると判断し、粘度αが所定粘度αtよりも高くないと判断してもよい。また、カートリッジセンサ81からの信号が所定の信号である場合、装着部80Aに装着されたカートリッジユニット80が所定のタンクでないと判断し、粘度αが所定粘度αtよりも高い(S31:YES)と判断してもよい。
【0088】
第5判断処理(S31)の判断を、温度センサ82(図3参照)からの信号に基づいて行ってもよい。例えば、CPU91は、温度センサ82からの信号が示す温度が所定温度以上の場合、粘度αが所定粘度αtよりも高くない(S31:NO)と判断し、温度センサ82からの信号が示す温度が所定温度未満の場合、粘度αが所定粘度αtよりも高い(S31:YES)と判断してよい。
【0089】
或いは、第5判断処理(S31)の判断を、ヘッドの環境湿度、液体の含有成分、前回の吐出からの経過時間、前回のフラッシング処理からの経過時間、等に基づいて行ってもよい。例えば、CPU91は、環境湿度が所定湿度以上の場合、粘度αが所定粘度αtよりも高くない(S31:NO)と判断し、環境湿度が所定湿度未満の場合、粘度αが所定粘度αtよりも高い(S31:YES)と判断してよい。また、含有成分の違いにより、ブラックのインクがカラーのインクよりも粘度αが高い場合、第n移動動作においてブラックのインクのみを用いた吐出動作を実行するとき、CPU91は、粘度αが所定粘度αtよりも高い(S31:YES)と判断してよい。また、CPU91は、前回の吐出からの経過時間や前回のフラッシング処理からの経過時間が所定時間以上の場合に、粘度αが所定粘度αtよりも高い(S31:YES)と判断してよい。
【0090】
上述の実施形態のヘッドは、互いに異なる種類の液体(色が異なるインク)を吐出するノズルを備えているが、これに限定されない。例えば、ヘッドは、同一種類の液体(例えば、色が同じインクのみ)を吐出するノズルを備えてもよい。
【0091】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0092】
記録媒体は、用紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0093】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【0094】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 用紙(記録媒体)
10 ヘッド
30 走査機構
50 搬送機構
60r フラッシング領域
80 カートリッジユニット(タンク)
80A 装着部
91 CPU(制御部)
94 ASIC(制御部)
100 プリンタ(液体吐出装置)
N ノズル
R 吐出領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9