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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120884
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20220812BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B66F9/06 K
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017911
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】桑原 嘉男
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕也
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 健
(72)【発明者】
【氏名】山崎 章浩
(72)【発明者】
【氏名】金子 淳一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 良平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克也
(72)【発明者】
【氏名】添田 政信
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB02
3F333CA03
3F333CA04
3F333DA02
3F333DB10
(57)【要約】
【課題】走行安定性が良く、走行体上から作業台への乗降性に優れた高所作業車を提供する。
【解決手段】
走行可能な走行体10と、走行体10に旋回可能に設けられた旋回台20と、基端部が旋回台20に上下に揺動可能に連結されて旋回台20に起伏動可能に設けられたブーム30と、ブーム30の側方に位置して基端部がブーム30の先端部に上下動可能に連結されて設けられたジブ31と、ジブ31の先端部に取り付けられた作業台50と、を有する高所作業車1であって、ジブ31は、中間部において、少なくともブーム30の起伏動面に向かう側方方向に屈曲して構成され、先端部が基端部に対して側方にずれて位置している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、前記走行体に旋回可能に設けられた旋回台と、基端部が前記旋回台に上下に揺動可能に連結されて前記旋回台に起伏動可能に設けられたブームと、前記ブームの側方に位置して基端部が前記ブームの先端部に上下動可能に連結されて設けられたジブと、前記ジブの先端部に取り付けられた作業台と、を有する高所作業車であって、
前記ジブは、中間部において、少なくとも前記ブームの起伏動面に向かう側方方向に屈曲して構成され、先端部が基端部に対して側方にずれて位置している
ことを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記ジブは、前記中間部において、前記側方方向かつ前記ブームよりも下方へ屈曲して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記ジブは、前記ブームに対して折り返されて前記基端部が前記ブームの側方に沿って延び、前記中間部が下方に延びるとともに前記ブームの下面側に延び、前記先端部が前記ブームの下方で前記ブームと重なる位置に格納されることを特徴とする請求項2に記載の高所作業車。
【請求項4】
前記ジブは、前記中間部が、前記基端部の先端で下方へ延出し、かつ、前記ブームに向かって水平方向に突出する構成であることを特徴とする請求項2に記載の高所作業車。
【請求項5】
前記ジブの先端部に、前記作業台を首振り作動させる首振り作動装置、及び、前記ブームに対する前記ジブの揺動作動に応じて前記作業台の水平状態を維持するレベリング機構を設け、前記ジブ及び前記ブームが格納された状態において、前記首振り作動装置及び前記レベリング機構が前記ブームの下方で平面視において前記ブームと重なるように位置することを特徴とする請求項3又は4に記載の高所作業車。
【請求項6】
前記走行体の前部に設けられた運転者が搭乗する運転キャビンを備え、
前記ジブ及び前記ブームは、前記ブームが前記運転キャビンの上方へ倒伏した状態で格納され、
前記ジブ及び前記ブームが格納された状態において、前記運転キャビンよりも後方に前記ジブの中間部が位置することを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体上において作業台を昇降可能に支持する高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、一般に、前後輪を有して走行可能な走行体と、この走行体上に設けられた昇降装置と、この昇降装置によって昇降される作業者搭乗用の作業台とを備え、作業台に搭乗した作業者が作業台上に設けられた操作装置を操作して昇降装置を作動させることで、作業台を所望する高所位置へ移動可能に構成されている。このような高所作業車の昇降装置には、例えば特許文献1に示す高所作業車のように、車体に対し起伏自在なロアブームと、ロアブームの先端部に枢支されロアブームに対して揺動自在なアッパブームとによって構成された屈伸ブームがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-046900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されている高所作業車の屈伸ブームは、車体の前部に設けられた運転キャビンの近傍までロアブームが倒伏し、さらにアッパブームがロアブームに折り返されてロアブームの上に重なるようにして格納される。したがって、高所作業車の全高が高くなるため、高所作業車の重心が高くなって走行安定性が低下し、かつ、車高制限によって通行できない経路を避けて走行しなければならない場合があった。また、屈伸ブームが格納された状態における作業台の位置が高くなるため作業者が作業台に搭乗しにくくなり、利便性が低下する虞があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、走行安定性を極力低下させず、作業台への乗降を容易にすることができる高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る高所作業車は、走行可能な走行体と、前記走行体に旋回可能に設けられた旋回台と、基端部が前記旋回台に上下に揺動可能に連結されて前記旋回台に起伏動可能に設けられたブームと、前記ブームの側方に位置して基端部(例えば、実施形態における基端部31a)が前記ブームの先端部に上下動可能に連結されて設けられたジブ(例えば、実施形態におけるジブ31)と、前記ジブの先端部(例えば、実施形態における先端部31b)に取り付けられた作業台と、を有する高所作業車であって、前記ジブは、中間部(例えば、実施形態における中間部31c)において、少なくとも前記ブームの起伏動面に向かう側方方向に屈曲して構成され、先端部が基端部に対して側方にずれて位置している。
【0007】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、前記ジブは、前記中間部において、前記側方方向かつ前記ブームよりも下方へ屈曲して構成されている。
【0008】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、前記ジブは、前記ブームに対して折り返されて前記基端部が前記ブームの側方に沿って延び、前記中間部が下方に延びるとともに前記ブームの下面側に延び、前記先端部が前記ブームの下方で前記ブームと重なる位置に格納される。
【0009】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、前記ジブは、前記中間部が、前記基端部の先端で下方へ延出し、かつ、前記ブームに向かって水平方向に突出する構成である。
【0010】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、前記ジブの先端部に、前記作業台を首振り作動させる首振り作動装置、及び、前記ブームに対する前記ジブの揺動作動に応じて前記作業台の水平状態を維持するレベリング機構を設け、前記ジブ及び前記ブームが格納された状態において、前記首振り作動装置及び前記レベリング機構が前記ブームの下方で平面視において前記ブームと重なるように位置する。
【0011】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、前記走行体の前部に設けられた運転者が搭乗する運転キャビンを備え、前記ジブ及び前記ブームは、前記ブームが前記運転キャビンの上方へ倒伏した状態で格納され、前記ジブ及び前記ブームが格納された状態において、前記運転キャビンよりも後方に前記ジブの中間部が位置する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る高所作業車によれば、ブームの基端部が、走行体に設けられた旋回台に連結され、ブームの先端部にジブの基端部が連結されており、このジブの中間部が少なくともブームの起伏動面に向かう側方方向に屈曲して構成され、ジブの先端部がジブの基端部に対して側方にずれて位置している。これにより、ブーム及びジブの重心位置を走行体の中心に寄せることが可能となるため、高所作業車の重心の左右バランスを良好に保つことができる。
【0013】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、ジブの中間部をブームの側方方向かつブームよりも下方へ屈曲して構成する。これにより、作業台の位置を低くすることができるので作業者が走行体から作業台へ搭乗しやすくなり、かつ、高所作業車の全高が低くなることで、高所作業車の重心をできるだけ低い位置に抑えて走行安定性の低下を軽減することができる。
【0014】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、ジブは、ブームに対して折り返されてジブの基端部がブームの側方に沿って延び、ジブの中間部が下方に延びるとともにブームの下面側に延び、さらにジブの先端部がブームの下方でブームと重なる位置に格納される。これにより、ジブが格納された状態におけるブームとジブの重心位置を走行体の中心に寄せることができるので、高所作業車の走行時における重心の左右バランスが良好となり、走行安定性の低下を軽減することができる。
【0015】
また、本発明に係る高所作業車において、好ましくは、作業台の首振り作動装置と作業台のレベリング機構とをジブの先端部に設け、ジブ及びブームが格納された状態のときに首振り作動装置及びレベリング機構がブームの下方で平面視においてブームと重なる位置となるように構成する。これにより、ジブ及びブームが格納された状態において、作業台をよりブームに接近させることができるため、作業台が高所作業車の車幅からはみ出さない範囲内で作業台の床面積をより広くすることができる。
【0016】
本発明に係る高所作業車において、好ましくは、走行体の前部に運転者が搭乗する運転キャビンが設けられており、ジブ及びブームは、ブームが運転キャビンの上方へ倒伏した状態で格納され、ジブ及びブームが格納された状態において、運転キャビンよりも後方にジブの中間部が位置する。これにより、ジブ及びブームが格納された状態において、ブームとジブの基端部とが運転キャビンにより接近する位置までブームを倒伏させることができるので、高所作業車の全高がより低くなり、高所作業車の重心をできるだけ低い位置に抑えて走行安定性の低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る高所作業車のブームが格納された状態にあるときの側面図である。
図2】上記高所作業車のブームが格納された状態にあるときの平面図である。
図3】上記高所作業車のジブの外観を示す三面図であり、(a)はジブの平面図、(b)はジブの側面図、(c)は高所作業車を後方から見たときのジブの正面図である。
図4】上記高所作業車のジブがブームに対して揺動したときの状態を示す図である。
図5図3に示したジブとは異なる形状を有するジブの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、図1及び図2を参照し、本発明の一実施形態に係る高所作業車の全体構成について説明する。図1は本実施形態に係る高所作業車1の側面図、図2は高所作業車1の平面図である。図1及び図2に示すように、高所作業車1は、トラック式の走行体10と、走行体10上に設けられた旋回台20と、この旋回台20から後方に向かって斜め上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介して基端部が軸支されたブーム30と、ブーム30の側方に位置して基端部がブーム30の先端部に上下動可能に連結されて設けられたジブ31と、ジブ31の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台(「バスケット」とも称する)50とを有して構成されている。
【0019】
走行体10は、前後輪にタイヤ車輪11を備え、前部に設けられた運転キャビン12から走行体10の運転操作が可能となっている。また、走行体10の前後左右の各箇所にはブーム30を作動させて作業台50を昇降させているときに走行体10を安定状態に支持するためのアウトリガジャッキ(単に「ジャッキ」とも称する)13が設けられている。
旋回台20は走行体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられている。走行体10の内部には油圧モータからなる旋回モータ23が設けられており、この旋回モータ23を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を上下軸まわりに旋回作動(すなわち水平旋回作動)させることができる。旋回台20の支柱21とブーム30との間には油圧シリンダからなる起伏シリンダ24が跨設されており、この起伏シリンダ24を伸縮作動させることにより、ブーム30を鉛直面内で起伏動させることができる。ブーム30は入れ子式に構成された複数のブーム部材からなっており、ブーム30の内部に設けられた油圧シリンダ(図示略)の伸縮作動によりブーム30を構成する複数のブーム部材を相対的に移動させて、ブーム30全体を長手方向に伸縮動させることができる。
【0020】
ブーム30の先端部には側方(ブームの起伏動面に向かう方向)に延設された枢支軸33が取り付けられており、この枢支軸33には第1リンク34が固設されている。第1リンク34の第1揺動軸34aにはジブ31の基端部が揺動自在に取り付けられている。ジブ31の基端部において、第1リンク34よりもややジブ31の先端側(図1において走行体10の後方側)には第2リンク35が設けられており、第2リンク35の第2揺動軸35aに、ジブ31の基端部が揺動自在に取り付けられている。第1リンク34と第2リンク35とは、アーム部材36によって連結されている。詳細には、アーム部材36の一方端が第1枢結ピン34bによって揺動自在に第1リンク34に枢結され、アーム部材36の他方端が第2枢結ピン35bによって揺動自在に第2リンク35に枢結されている。
【0021】
第2リンク35には、リンク側シリンダ連結部35cが形成されており、油圧シリンダである屈折シリンダ40の一方端(例えばシリンダチューブ側の基端部)と枢結ピン38(図2参照)によって枢結されている。ジブ31にはジブ側シリンダ連結部32が形成されており、屈折シリンダ40の他方端(例えばピストンロッドの先端部)と枢結ピンによって枢結されている。これにより、屈折シリンダ40が伸長作動したときは第1揺動軸34aを中心としてジブ31が図1中、時計回り(ブーム30とジブ31の成す角度が広がる方向)に揺動する。屈折シリンダ40が収縮作動したときは第1揺動軸34aを中心としてジブ31が図1中、反時計回り(ブーム30とジブ31の成す角度が狭まる方向)に揺動する。
【0022】
なお、図1はブーム30及びジブ31が格納された状態(以下、単に「格納状態」とも称する。)を示している。格納状態では、ブーム30とジブ31の成す角度が0゜となり、かつ、ブーム30が走行体10に設けられたブーム支持ポスト26に当接する位置まで倒伏した状態となる。さらに格納状態では、図2に示すように、平面視においてブーム30及び作業台50が走行体10の車幅からはみ出さず、かつ、これらの構成の重心が走行体10の中心線に位置するように、旋回台20によりブーム30を図2中、時計回りの方向へ若干旋回させた状態となる。
【0023】
ジブ31の先端部には、レベリング機構41及び首振り作動装置42を介して作業台50が設けられている。レベリング機構41は、図2に示すレベリング作動軸LAを軸として、ブーム30の起伏作動及びジブ31の揺動作動に応じて作業台50が水平状態を保つように作業台50を揺動させる。これにより、作業台50はレベリング中心LCを中心に水平状態が保たれる。首振り作動装置42は、首振り作動軸SAを軸として作業者による操作に応じて作業台50を揺動させる。これにより、作業台50は図1に示す首振り中心LCを中心に首振り作動する。
【0024】
作業台50は、矩形状の床板51の周囲にパイプ材で構成された柵52が立設されて箱状に形成されている。柵52の一側面(図2において走行体10の左方を向く面)には、図示せぬ乗降用扉が設けられており、この乗降用扉を開放することにより作業者が作業台50に乗降することが可能となる。作業台50上には上部操作装置55が備えられており、この上部操作装置55には旋回モータ23の回転作動、起伏シリンダ24の伸縮作動、ブーム30を伸縮させるための伸縮シリンダ(図示略)の伸縮作動、屈折シリンダ40の伸縮作動及び首振り作動装置42の回転作動の各操作を行うためのレバー類(図示せず)が備えられている。作業台50に搭乗した作業者は、これらレバー類を操作して旋回台20を旋回操作し、ブーム30を起伏及び伸縮操作し、ジブ31を屈折操作し、或いは作業台50を首振り(水平旋回)操作することで、自身が搭乗する作業台50を所望の位置及び姿勢に移動させることができる。また、走行体10の支柱21の近傍には、地上の作業者が上述した上部操作装置55と同様の操作を行うことができる下部操作装置56が設けられている。
【0025】
次に図3を参照してジブ31の形状について説明する。ここで、図3(a)はジブ31の平面図、図3(b)はジブ31の側面図、図3(c)はジブ31の正面図(走行体10の後方から見た図)である。これらの図に示すように、ジブ31は、第1リンク34(図1参照)と枢結する基端部31aと、レベリング機構41及び首振り作動装置42が設けられる先端部31bと、基端部31aと先端部31bとを連結する中間部31cとにより構成される。
【0026】
基端部31aの一方端には、図3(b)に示すように、第1リンク34の第1揺動軸34aを通すための第1軸穴p1と第2揺動軸35aを通すための第2軸穴p2とが設けられている。基端部31aの他方端の上面には屈折シリンダ40のシリンダロッドと枢結するジブ側シリンダ連結部32が設けられ、基端部31aの他方端には中間部31cが連設されている。中間部31cは、その一方端が基端部31aの他方端と接合し、前述した格納状態において他方端が下方かつブーム30側へ向かって延出し、その他方端には先端部31bが連設されている。先端部31bは、図3(a)及び図3(b)に示すように、上下方向及び左右方向において基端部31aと平行に設けられている。このように基端部31aと先端部31bとを平行にすることで、ジブ31の生産性を向上させることができる。
【0027】
図3(b)において、基端部31aの長さL1は、前述した格納状態において中間部31cとの接合部の位置が運転キャビン12よりも後方になるように定められている。これにより、ブーム30及びジブ31を前述した格納状態にすべくブーム30を倒伏させる際に、ジブ31の中間部31cが運転キャビン12の屋根に接触するのを避けることができるため、ブーム30及びジブ31を運転キャビン12の屋根により接近させることができる。すなわち、格納状態における高所作業車1の全高を低くすることができ、走行安定性の低下を軽減することができる。先端部31bの長さL2は、少なくともレベリング機構41及び首振り作動装置42を設置するためのスペースを確保できる長さに定められている。
【0028】
図3(b)において一点鎖線で示す基端部31aの中心線と先端部31bの中心線との間隔H(上下方向(車高方向)の間隔)は、前述した格納状態において、少なくとも先端部31b及び先端部31bに設けられたレベリング機構41と首振り作動装置42とが、ブーム30よりも下方に位置し、かつ、作業台50の底面がジブ31などの撓みを考慮しても走行体10に接触することがない範囲内に定められている。
【0029】
図3(a)において、二点鎖線で示す基端部31aの中心線と先端部31bの中心線との間隔W(左右方向(車幅方向)の間隔)は、前述した格納状態において、少なくとも先端部31bがブーム30の下方においてブーム30と重なる位置になるように定められている。これにより、ブーム30及びジブ31の重心位置を走行体10の中心に寄せることが可能となり、高所作業車1の重心の左右バランスを良好に保つことができる。また、図2に示すように、前述した格納状態のときに、高所作業車1の車幅方向において作業台50をブーム30により接近させることができるため、作業台50が高所作業車1の車幅からはみ出さない範囲内で作業台50の床面積をより広くすることができる。
【0030】
次に図4を参照して、ブーム30に対してジブ31が揺動したときの第1リンク34、第2リンク35、アーム部材36などの状態について説明する。この図では、ブーム30の起伏角度は水平となっており、この状態のブーム30に対して、ジブ31の角度が0゜、90゜、180゜及び250゜(最大揺動角度)揺動した4つの状態を示している。また、図4(a)はジブ31がブーム30に対して0゜のときの第1リンク34及び第2リンク35周辺の拡大図を示している。図4(b)はジブ31がブーム30に対して90゜揺動したときの第1リンク34及び第2リンク35周辺の拡大図を示している。図4(c)はジブ31がブーム30に対して180゜揺動したときの第1リンク34及び第2リンク35周辺の拡大図を示している。図4(d)はジブ31がブーム30に対して250゜揺動したときの第1リンク34及び第2リンク35周辺の拡大図を示している。なお、図の視認性の低下を避けるために、図4(a)~(d)においてブーム30の図示を省略しているが、ブーム30は水平状態を維持しているものとする。
【0031】
ブーム30及びジブ31が格納された状態においては、屈折シリンダ40は全縮状態になっており、この状態から屈折シリンダ40が伸長すると、図4(a)においてジブ31が第1揺動軸34aを軸として時計回りに揺動していくとともに、主としてアーム部材36が第1枢結ピン34bを軸として時計回りに揺動していく。そしてブーム30に対するジブ31の揺動角度が90゜となって、図4(b)においてさらに屈折シリンダ40が伸長すると、ジブ31が第1揺動軸34aを軸として時計回りに揺動していくとともに、主として第2リンク35が第2枢結ピン35bを軸として時計回りに揺動していく。
【0032】
そしてブーム30に対するジブ31の揺動角度が180゜となり、図4(c)においてさらに屈折シリンダ40が伸長すると、ジブ31が第1揺動軸34aを軸として時計回りに揺動していくとともに、引き続き、主として第2リンク35が第2枢結ピン35bを軸として時計回りに揺動していく。そしてブーム30に対するジブ31の揺動角度が250゜になると、図4(d)に示すように第2リンク35が第1リンク34に最接近してジブ31が最大揺動角度となる。
【0033】
ここで、ジブ31の揺動角度が0゜から90゜に変化するとき、ジブ31の中間部31cが、作業台50に設けられた上部操作装置55の前に立つ作業者の頭上を横切ることになる。このため、図3(a)に示す基端部31aに対する中間部31cの角度θは、作業者の身長を考慮して定めるのが望ましい。
【0034】
なお、ブーム30及びジブ31を格納した状態にするための各種アクチュエータの作動制御を自動的に行うようにしてもよい。例えば、上部操作装置55及び下部操作装置56に対する操作に応じて旋回モータ23の回転作動、起伏シリンダ24の伸縮作動、ブーム30を伸縮させるための伸縮シリンダの伸縮作動、屈折シリンダ40の伸縮作動及び首振り作動装置42の回転作動を行うコントローラにおいて、ブーム30及びジブ31の格納状態における旋回台20の旋回角度、ブーム30の伸長量及び起伏角度、ブーム30に対するジブ31の揺動角度、作業台50の首振り角度を予めメモリなどに記憶しておく。また、旋回台20の旋回角度、ブーム30の伸長量及び起伏角度、ブーム30に対するジブ31の揺動角度、作業台50の首振り角度を検出する各種検出装置を設けておく。
【0035】
上述したコントローラが作業者によって所定のスイッチ(例えば「格納スイッチ」と称する。)が操作されたことを検知すると、各種検出装置から出力される検出結果に基づいて、旋回モータ23、起伏シリンダ24、ブーム30の伸縮シリンダ、屈折シリンダ40及び首振り作動装置42といった各種アクチュエータの作動制御を行う。具体的には、コントローラは、メモリに記憶されている格納状態における旋回台20の旋回角度、ブーム30の伸長量及び起伏角度、ブーム30に対するジブ31の揺動角度、作業台50の首振り角度となるように、各種アクチュエータの作動制御を行う。
【0036】
また、図3に示したジブ31はクランク状に屈曲していたが、これ以外にも図5の斜視図に示すような形状にしてもよい。ここで、図5に示すジブ31’において、ジブ側シリンダ連結部32及び第1軸穴p1、第2軸穴p2の図示を省略している。図5に示すジブ31’では、基端部31a’及び先端部31b’の形状については図3に示した基端部31a及び先端部31bと同様であるが、中間部31c’は鉤状部材31chとパイプ部材31cpとによって構成されている。鉤状部材31chは基端部31a’の先端部分に固定され、下方へ延出する形状となっており、この下方端部にはパイプ部材31cpを挿入するための貫通孔が設けられている。パイプ部材31cpは、その一方端が鉤状部材31chの貫通孔に挿入された状態で固定され、このときパイプ部材31cpの他方端は、ジブ31’の長手方向に対して直交する方向に突出した状態となる。先端部31b’の基端部分には、パイプ部材31cpの他方端が挿入される貫通孔が設けられており、パイプ部材31cpの他方端は、先端部31b’の貫通孔に挿入された状態で固定される。
【0037】
ここで、鉤状部材31chが下方へ延出する長さと下方端部に設ける貫通孔の位置とは、図3(b)に示した間隔Hと同様の間隔が得られるように定めるとよい。また、パイプ部材31cpの長手方向における長さは、図3(a)に示した間隔Wと同様の間隔が得られるように定めるとよい。
【0038】
また、上述の実施形態で示した高所作業車1はタイヤ車輪により走行する構成であったが、タイヤ車輪により走行するものでなくてもよく、クローラ装置等により走行するものであってもよい。或いは軌道走行用車輪を備えて軌道上を走行する軌道走行用の高所作業車、更にはタイヤ車輪と軌道走行用車輪との両方を備えた軌陸両用の高所作業車等であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 高所作業車
10 走行体
20 旋回台
30 ブーム
31 ジブ
31a 基端部
31b 先端部
31c 中間部
50 作業台
図1
図2
図3
図4
図5