(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120909
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】センサ構造及びその分解方法
(51)【国際特許分類】
G01P 1/02 20060101AFI20220812BHJP
G01P 3/487 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G01P1/02
G01P3/487 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017958
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】手塚 俊文
(57)【要約】
【課題】本発明は、センサの分解時に、内部の基板を損傷しないようにすることである。
【解決手段】本発明によるセンサ構造及びその分解方法は、筒状ケース(10)内に設けられた基板(16)と、前記基板(16)の先端に接続されたセンサ部(13)と、前記基板(16)の後端に接続されたケーブルリード線(11)と、前記基板(16)の周囲に設けられた第1充填剤(20)と、前記第1充填剤(20)と前記筒状ケース(10)との間に充填された第2充填剤(6)とを備え、前記第1充填剤(20)は、前記第2充填剤(6)よりも柔軟であることを特徴とするセンサ構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケース(10)内に設けられた基板(16)と、前記基板(16)の先端に接続されたセンサ部(13)と、前記基板(16)の後端に接続されたケーブルリード線(11)と、前記基板(16)の周囲に設けられた第1充填剤(20)と、前記第1充填剤(20)と前記筒状ケース(10)との間に充填された第2充填剤(6)とを備え、
前記第1充填剤(20)は、前記第2充填剤(6)よりも柔軟であることを特徴とするセンサ構造。
【請求項2】
前記第1充填剤(20)は、シリコーンポッティング剤よりなり、前記第2充填剤(6)は、モールド剤よりなることを特徴とする請求項1記載のセンサ構造。
【請求項3】
前記筒状ケース(10)の先端に設けられたセンサ部(13)は、磁気センサよりなることを特徴とする請求項1又は2記載のセンサ構造。
【請求項4】
筒状ケース(10)内に設けられた基板(16)と、前記基板(16)の先端に接続されたセンサ部(13)と、前記基板(16)の後端に接続されたケーブルリード線(11)と、前記基板(16)の周囲に設けられた第1充填剤(20)と、前記第1充填剤(20)と前記筒状ケース(10)との間に充填された第2充填剤(6)とを備え、
前記第1充填剤(20)は、前記第2充填剤(6)よりも柔軟であると共に、前記第2充填剤(6)を破壊した後に、前記第1充填剤(20)を前記基板(16)から除去することを特徴とするセンサ構造の分解方法。
【請求項5】
前記第1充填剤(20)は、シリコーンポッティング剤よりなり、前記第2充填剤(6)は、モールド剤よりなることを特徴とする請求項4記載のセンサ構造の分解方法。
【請求項6】
前記筒状ケース(10)の先端に設けられたセンサ部(13)は、磁気センサよりなることを特徴とする請求項4又は5記載のセンサ構造の分解方法。
【請求項7】
前記第2充填剤(6)を除去する前に、前記筒状ケース(10)を除去することを特徴とする請求項4ないし請求項6の何れか1項に記載のセンサ構造の分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ構造及びその分解方法に関し、特に、鉄道の速度検出に好適なセンサ構造の内部の状態を調査する時に、内部部品を傷付けることのないようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のセンサとしては、例えば、特許文献1の半導体圧力検出装置及びその製造方法を挙げることができる。
すなわち、図示しない特許文献1の各図に示されているように、台座上に圧力センサ2を設け、この圧力センサの上面にシリコンを設け、このシリコンの上部に金型を介してモールド樹脂が形成されている。
【0003】
また、
図2で示される従来構成は、本出願人が製作していたため、その内容を示す文献等は開示していない。
図2において、符号1で示されるものは、断面でみて、ほぼカップ型をなすと共にフランジ1aを有する外側ケースであり、この外側ケース1の頂部開口1bには、ケーブル8を内設したケーブルグランド9が設けられている。
【0004】
前記外側ケース1内には、筒状ケース10が挿入配設されており、前記ケーブル8に接続されたケーブルリード線11は、前記頂部開口1bを介して前記筒状ケース10内に垂下している。
前記筒状ケース10の下部開口10a内には、検出マグネット12を有する磁気センサ13が設けられている。
【0005】
前記磁気センサ13には、一対の電極14が植立した状態で設けられており、前記ケーブルリード線11の端部11aと前記各電極14との間には、各種電子部品15を一面に有する基板16が保持されている。また、前記センサ部13から僅かに離間した位置には、磁性歯車30が配設され、このセンサ部13は回転する磁性歯車30の凹凸を検出して鉄道の速度を検出するように構成されている。
前記ケーブルリード線11と基板16と各電極14とは、図示していないが、互いに電気的な導通を計ることができるように構成されている。
【0006】
前記フランジ1aの下部には、Oリング17、及びシリコーンポッティング18が設けられ、前記Oリング17は、前記外側ケース1を図示しない相手方に装着する場合に用いられ、前記シリコーンポッティング18は、前記外側ケース1と前記筒状ケース10との間の防水に用いられている。
さらに、前記筒状ケース10内には、前記基板16を固定するための、比較的硬質のモールド剤6が充填されている。
尚、このモールド剤6は、筒状ケース10内に充填する時には、溶融状であるが、一定時間経過後に固化した後には、強い衝撃を与えても容易には破壊されない硬い状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のセンサ構造は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1の構成は、シリコン樹脂で圧力センサを保護し、型を用いて、台座上のセンサ全体を一部を残した状態でモールドしていた。
そのため、圧力センサの保護はできるが、圧力センサを取り出して性能をチェックすることは想定されていなかった。
【0009】
また、
図2に開示された従来構成においては、例えば、定期点検又は故障の場合、前記モールド剤6を除去した後に、基板16のチェックを行うステップになっているが、このモールド剤6は、鉄道用のセンサとする場合には、耐振動特性の基準を達成するために、最も硬くしなければならなかった。
そのため、検査時には、このモールド剤6を砕いて除去しなければならず、このモールド剤6が基板16及び電子部品15に強固に直接固着しているため、基板16及び電子部品15が損傷を受けることがあり、無事に点検や交換を行うことは極めて困難であった。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、センサ構造の内部の状態を調査する時に、内部部品を傷付けることのないようにしたセンサ構造及びその分解方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるセンサ構造は、筒状ケース内に設けられた基板と、前記基板の先端に接続されたセンサ部と、前記基板の後端に接続されたケーブルリード線と、前記基板の周囲に設けられた第1充填剤と、前記第1充填と前記センサケースとの間に充填された第2充填剤とを備え、前記第1充填剤は、前記第2充填剤よりも柔軟である構成であり、また、前記第1充填剤は、シリコーンポッティング剤よりなり、前記第2充填剤は、モールド剤よりなる構成であり、また、前記筒状ケースの先端に設けられたセンサ部は、磁気センサよりなる構成であり、また、本発明によるセンサ構造の分解方法は、センサケース内に設けられた基板と、前記基板の先端に接続されたセンサ部と、前記基板の後端に接続されたケーブルリード線と、前記基板の周囲に設けられた第1充填剤と、前記第1充填剤と前記筒状ケースとの間に充填された第2充填剤とを備え、前記第1充填剤は、前記第2充填剤よりも柔軟であると共に、前記第2充填剤を破壊した後に、前記第1充填剤を前記基板から除去する方法であり、また、前記第1充填剤は、シリコーンポッティング剤よりなり、前記第2充填剤は、モールド剤よりなる方法であり、また、前記筒状ケースの先端に設けられたセンサ部は、磁気センサよりなる方法であり、また、前記第2充填剤を除去する前に、前記筒状ケースを除去する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるセンサ構造及びその分解方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、筒状ケース内に設けられた基板と、前記基板の先端に接続されたセンサ部と、前記基板の後端に接続されたケーブルリード線と、前記基板の周囲に設けられた第1充填剤と、前記第1充填剤と前記筒状ケースとの間に充填された第2充填剤とを備え、前記第1充填剤は、前記第2充填剤よりも柔軟であることにより、第2充填剤を分解する時の衝撃は第1充填剤で吸収されて基板等の損傷を防止することができる。また、第2充填剤を除去後は、第1充填剤は基板から簡単に人手で除去でき、センサ自体が損傷を受けることは皆無となる。
また、前記第1充填剤は、シリコーンポッティング剤よりなり、前記第2充填剤は、モールド剤よりなることにより、前述の効果を裏付けとなる。
また、前記センサ部は、磁気センサよりなることにより、例えば、鉄道車両用の回転検出として用いた場合に、有効なセンサとなり、鉄道車両で決められた定期点検で分解した場合でも、再組立てが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態によるセンサ構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるセンサ構造及びその分解方法は、センサ構造の内部の状態を調査する時に、内部部品を傷付けることなくモールド剤を分解させることができるようにすることである。
【実施例0015】
以下、図面と共に本発明によるセンサ構造及びその分解方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、
図2の従来構成と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
図1において、符号1で示されるものは、断面でみて、ほぼカップ型をなすと共にフランジ1aを有する外側ケースであり、この外側ケース1の頂部開口1bには、ケーブル8を内設したケーブルグランド9が設けられている。
【0016】
前記外側ケース1内には、筒状ケース10が挿入配設されており、前記ケーブル8に接続されたケーブルリード線11は、前記頂部開口1bを介して前記筒状ケース10内に垂下している。
前記筒状ケース10の下部開口10a内には、検出マグネット12を有する磁気センサ13が設けられている。
【0017】
前記磁気センサ13には、一対の電極14が植立した状態で設けられており、前記ケーブルリード線11の端部11aと前記各電極14との間には、各種電子部品15を一面に有する基板16が保持されている。尚、前記基板16と前記センサ部13とは、前記電極14を介して電気機械的に接続され、前記センサ部13は前記基板16の先端に、接続されていることになる。
前記ケーブルリード線11と基板16と各電極14とは、図示していないが、互いに電気的な導通を計ることができるように構成されている。
【0018】
前記フランジ1aの下部には、Oリング17、及びシリコーンポッティング18が設けられ、前記Oリング17は、前記外側ケース1を図示しない相手方に装着する場合に用いられ、前記シリコーンポッティング18は、前記外側ケース1と前記筒状ケース10との間の防水に用いられる。
【0019】
前記基板16の表面16a全体には、シリコーンポッティング等の比較的、柔らかい材料からなる第1充填剤20が塗布、塗り付け及びベタ付け等の手段によって設けられている。前記第1充填剤20は、前記基板16の両面を覆うように設けられ、電子部品15及びそのパターン(図示せず)を全て覆った状態で形成されている。
【0020】
前記基板16に対して、前記第1充填剤20が設けられている前述の状態で、前記筒状ケース10内には、全ての空間に対してモールド剤からなる第2充填剤6が充填されている。
前記第1充填剤20は、前記第2充填剤6よりも、冷却固化した場合、十分に柔らかく、柔軟に構成されている。
従って、定期的検査時、故障時等において、センサを分解する場合、まず、外側ケース1及び筒状ケース10を除去後、モールド剤からなる第2充填剤6を図示しない分解機によって分解除去すると、前記基板16は前記第1充填剤20のみが残った状態となる。
【0021】
前述の状態下で、前記第1充填剤20を手で除去することにより、前記基板16は、全ての表面16aが露出した状態となる。
この状態で、基板16を外部に搬出するか、又は、基板16を筒状ケース10内に保持したままの状態で、前記基板16の各電子部品の検査を行うことができる。
また、前述の検査終了後、基板16に異常がない場合、第1、第2充填剤20、6を元通りに充填することにより、センサ全体は元通りのセンサ構造となる。
尚、基板16に異常が見つかった場合には、前記基板16を新品と交換する必要があるが、一部の電子部品の交換のみでも復帰が可能となる。また、前記第1、第2充填剤20、6が設けられている状態で、外部から衝撃が加わった場合でも、この衝撃は前記第1充填剤20で吸収され、基板16等の損傷は発生しない構成である。
本発明によるセンサ構造及びその分解方法は、基板の表面を覆う第1充填剤を、筒状ケース内に充填するモールド剤からなる第2充填剤よりも柔らかい材質とすることにより、外部からの衝撃を基板側へ伝達しないようにし、センサの分解時における基板の損傷を防止すると共に、分解を安全に、かつ、迅速に行うことができる。