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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120927
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】水路再生用構造体
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/04 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
E03F5/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017986
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】599005240
【氏名又は名称】株式会社ニッコン
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(71)【出願人】
【識別番号】501433206
【氏名又は名称】佐々木 孝
(71)【出願人】
【識別番号】594149240
【氏名又は名称】増田 広利
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 孝
(72)【発明者】
【氏名】増田 広利
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CA02
2D063CA42
2D063CB25
(57)【要約】
【課題】幅方向の位置調整が容易でかつ施工後のずれ防止を図り得る水路再生用構造体を提供する。
【解決手段】既設水路の上部領域を切断して除去した後、その切断面上に設置することで、当該水路を再生するための水路再生用構造体であって、前記既設水路の切断面上に設置可能な形状を成す枠本体1と、前記枠本体1に一体的に配設され、既設水路の切断面に対する高さ及び水平を調整する着脱可能な高さ調整ボルト9と、を具備し、前記枠本体1の長さ方向の両側面又はいずれか一方の側面には、前記側面の長さ方向にわたって連続する凹溝11,13が備えられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設水路の上部領域を切断して除去した後、その切断面上に設置することで、当該水路を再生するための水路再生用構造体であって、
前記既設水路の切断面上に設置可能な形状を成す枠本体と、
前記枠本体に一体的に配設され、既設水路の切断面に対する高さ及び水平を調整する着脱可能な高さ・水平調整機構と、を具備し、
前記枠本体の長さ方向の両側面又はいずれか一方の側面には、前記側面の長さ方向にわたって連続する凹溝が備えられていることを特徴とする水路再生用構造体。
【請求項2】
前記凹溝は、前記枠本体の側面と、前記側面から水平方向に連続して形成される底面と、前記底面から昇り傾斜状に連続して形成される突条部の内側側面と、で構成されており、
前記内側側面は、前記枠本体の側面上端よりも低く形成されており、
前記底面は、その端面が下り傾斜状に連続して形成された第一のテーパ端面を有し、
前記突条部は、その長さ方向の端面が、前記第一のテーパ端面に向けて下り傾斜状に形成された第二のテーパ端面を有することを特徴とする請求項1に記載の水路再生用構造体。
【請求項3】
前記枠本体における長さ方向の端面には、表面から裏面にわたって連続した半割状溝部が形成されており、
前記半割状溝部は、隣り合う枠本体同士を、既設水路の切断面上に配設して端面同士を突き合わせた際に、対向して一つの連結材料注入孔を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の水路再生用構造体。
【請求項4】
前記枠本体は、前記切断面上に当接する一方の設置領域と他方の設置領域とのそれぞれの幅方向の設置幅が異なっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水路再生用構造体。
【請求項5】
前記高さ・水平調整機構は、前記枠本体の所定位置にて、前記枠本体の表面から裏面にわたって貫通して設けられたボルト配設孔と、
前記ボルト配設孔に上下移動自在に配設され、前記枠本体を上下移動させて高さ及び水平を調整可能な高さ調整ボルトと、を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水路再生用構造体。
【請求項6】
前記ボルト配設孔は、高さ及び水平調整した高さ調整ボルトを取り外した後、差し筋を組み込んで埋められていることを特徴とする請求項5に記載の水路再生用構造体。
【請求項7】
前記高さ調整ボルトは、ボルト頭部が平面視で略四角形状であって、かつ前記ボルト頭部と雄ネジ部とが略同径であることを特徴とする請求項5又は6に記載の水路再生用構造体。
【請求項8】
前記雄ネジ部の先端には、円柱部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の水路再生用構造体。
【請求項9】
前記円柱部は、前記雄ネジ部よりも小径であることを特徴とする請求項8に記載の水路再生用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路の側方に沿って備えられる縦断溝(水路)上や、道路を横断して備えられる横断溝(水路)上、あるいは工場内の排水路(水路)上などに配設され、コンクリート製の蓋、グレーチング、鋳物製蓋、アルミ鋳物製蓋、ステンレス鋳物製蓋等の蓋部材を一個乃至複数個組み込んで用いられる水路再生用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、既設のコンクリート製U字型側溝などの水路において、その経年変化に伴う老朽化(劣化)が進んだ場合には、既設のU字型側溝全体を掘り出して除去した後、新たなU字型側溝ブロックに取り替えるといった改修工法が採用されている。しかし、かかる改修工法では、その工事期間中、迂回路を設けて、その改修箇所における側溝機能を確保しなければならず、そのための手間や時間がかかるため、工事期間の短縮化や工事費用の低コスト化には一定の限界があった。
【0003】
ところで、コンクリート製U字型側溝等の水路全般のうち、老朽化(劣化)が進み易い箇所について考察すると、それは、車両通行時の負荷並びに振動による影響、或いは、風雨に直接さらされることによる風化などの影響を直接受け易い箇所、即ち、当該U字型側溝等の水路上部領域である。
そこで、現在、コンクリート製U字型側溝等の水路の改修方法として、既存の蓋部材の撤去と共に、老朽化(劣化)した既設のU字型側溝の上部領域のみを切断若しくはハツリにより除去し、その除去後に残存した既設側溝の切断面(ハツリ面)上に、グレーチング蓋やコンクリート蓋などの各種の蓋部材を設置可能な水路再生用構造体(水路再生用ブロックともいう。)を設置する技術が本出願人からも種々提案されている(特許文献1参照)。
水路再生用構造体は、例えば、全体が直方体形状で、その中央が矩形に刳り貫かれた中空の枠形状を成す枠本体が形成され、中空の刳り貫き領域には、蓋部材を設置可能な蓋部材設置面が水平方向で内方に向けて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-187389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の水路再生用構造体及びその工法によれば、除去後に残存した既設側溝の切断面(ハツリ面)上に、高さ調整ボルトを備えた水路再生用構造体を配設し、高さ調整ボルトにより、水路再生用構造体の高さ及び水平を調整する技術が開示されている。
【0006】
すなわち、除去後に残存する既設側溝の切断面は平坦な面ではない。この切断面を別途平坦な面とする技術的工程を経ることは、時間的・費用的にも多大なコストを要するとともに、熟練した技術も必要となってくる。
【0007】
そこで、切断面を別途平坦な面とする技術的手段を講じることなく、長さ方向で隣り合う水路再生用構造体の高さ及び水平を調整するため特許文献1が提案されている。
特許文献1では、高さ調整ボルトによってそれぞれの水路再生用構造体の高さ及び水平を微調整することにより、切断面の面状態が平坦ではなくとも、長さ方向で隣り合うそれぞれの水路再生用構造体の高さ及び水平を均一にする(段差が生じないようにする)ことができる。
【0008】
この特許文献1の工法を採用することにより工期の短縮化・工事費用の低コスト化及び施工容易化など種々のメリットを講じているが、それぞれの水路再生用構造体の幅方向(左右方向)の位置ずれを調整する必要もある。
しかし、現在は、設置作業者が、隣り合って設置される水路再生構造体の幅方向の位置合わせをすることによって幅方向の位置調整を図っているが、特に幅方向位置合わせの目印となるものもなかったため、熟練者の腕次第ということになる。
そこで、さらに簡易に幅方向の位置合わせが可能な水路再生用構造体の提供により先の特許文献1の工法を向上させたいとのニーズが出ている。
また、特に、横断溝のような場合、施工後の水路再生用構造体上を自動車などの車両が行き来することから経年において、舗装面と水路再生用構造体との境界領域にずれが生じてくることも考えられる。そこで、施工後にずれの生じにくい構造を備えた水路再生用構造体の提供が望まれている。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決するためになされており、その目的は、幅方向の位置調整が容易でかつ施工後のずれ防止を図り得る水路再生用構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、第1の本発明は、既設水路の上部領域を切断して除去した後、その切断面上に設置することで、当該水路を再生するための水路再生用構造体であって、
前記既設水路の切断面上に設置可能な形状を成す枠本体と、
前記枠本体に一体的に配設され、既設水路の切断面に対する高さ及び水平を調整する着脱可能な高さ・水平調整機構と、を具備し、
前記枠本体の長さ方向の両側面又はいずれか一方の側面には、前記側面の長さ方向にわたって連続する凹溝が備えられていることを特徴とする水路再生用構造体としたことである。
【0011】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記凹溝は、前記枠本体の側面と、前記側面から水平方向に連続して形成される底面と、前記底面部から昇り傾斜状に連続して形成される突条部の内側側面と、で構成されており、
前記内側側面は、前記枠本体の側面上端よりも低く形成されており、
前記底面は、その端面が下り傾斜状に連続して形成された第一のテーパ端面を有し、
前記突条部は、その長さ方向の端面が、前記第一のテーパ端面に向けて下り傾斜状に形成された第二のテーパ端面を有することを特徴とする水路再生用構造体としたことである。
【0012】
第3の本発明は、第1の本発明又は第2の本発明において、前記枠本体における長さ方向の端面には、表面から裏面にわたって連続した半割状溝部が形成されており、
前記半割状溝部は、隣り合う枠本体同士を、既設水路の切断面上に配設して端面同士を突き合わせた際に、対向して一つの連結材料注入孔を構成することを特徴とする水路再生用構造体としたことである。
【0013】
第4の本発明は、第1の本発明乃至第3の本発明のいずれかにおいて、前記枠本体は、前記切断面上に当接する一方の設置領域と他方の設置領域とのそれぞれの幅方向の設置幅が異なっていることを特徴とする水路再生用構造体としたことである。
【0014】
第5の本発明は、第1の本発明乃至第4の本発明のいずれかにおいて、前記高さ・水平調整機構は、前記枠本体の所定位置にて、前記枠本体の表面から裏面にわたって貫通して設けられたボルト配設孔と、
前記ボルト配設孔に上下移動自在に配設され、前記枠本体を上下移動させて高さ及び水平を調整可能な高さ調整ボルトであることを特徴とする水路再生用構造体としたことである。
【0015】
第6の本発明は、第5の本発明において、前記ボルト配設孔は、高さ及び水平調整した高さ調整ボルトを取り外した後、差し筋を組み込んで埋められていることを特徴とする水路再生用構造体としたことである。
【0016】
第7の本発明は、第5の本発明又は第6の本発明において、前記高さ調整ボルトは、ボルト頭部が平面視で略四角形状であって、かつ前記ボルト頭部と雄ネジ部とが略同径であることを特徴とする水路再生用構造体としたことである。
【0017】
第8の本発明は、第7の本発明において、前記雄ネジ部の先端には、円柱部が形成されていることを特徴とする水路再生用構造体としたことである。
【0018】
第9の本発明は、第8の本発明において、前記円柱部は、前記雄ネジ部よりも小径であることを特徴とする水路再生用構造体としたことである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、幅方向の位置調整が容易でかつ施工後のずれ防止を図り得る水路再生用構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明水路再生用構造体の第一実施形態を示す全体斜視図である。
図2図1の部分拡大斜視図である。
図3図2にて仮想円で囲んだ領域の拡大図である。
図4】上部領域を切除した後の既設側溝上に複数個の水路再生用構造体を側溝の長さ方向に位置合わせをして仮設した状態を部分的に示す平面図である。
図5】上部領域を切除した後の既設側溝上に水路再生用構造体を仮設した状態を示す概略正面図である。
図6】水路再生用構造体を仮設した際に、隣り合う水路再生用構造体の向かい合うそれぞれの第一のテーパ端面と第二のテーパ端面とによって凹溝から外方へと連続して続く掃き出し通路が形成されていることを示す部分拡大図であって、(a)は掃き出し通路を側面から見た状態の概略部分拡大図、(b)は掃き出し通路を平面から見た状態の概略部分拡大図である。
図7】道路横断溝上に水路再生構造体を配設した状態を示す概略平面図である。
図8】水路再生後の水路再生構造体を示す概略正面図である。
図9図8にて仮想円にて囲んだ領域の拡大図である。
図10】水路再生後の完成状態で高さ調整ボルト位置にて断面した状態を示し、(a)は概略断面図、(b)は(a)にて仮想円で囲んだ領域の拡大図である。
図11】本実施形態において用いられる高さ調整ボルトの概略斜視図である。
図12】他の実施形態で、(a)は部分拡大断面図、(b)は高さ調整ボルトを取り出して無収縮モルタルで埋設した状態を示す部分拡大断面図である。
図13】他の実施形態で、高さ調整ボルトを取り外した後、差し筋を入れて無収縮モルタルで埋設した状態を示す部分拡大断面図である。
図14】第一注入孔から注入空間へと無収縮モルタルを注入する形態を示す概略断面図である。
図15】水路再生用構造体を配設する工程の概略であって、(a)は上部領域を切除した後の既設側溝上に水路再生用構造体を仮設した状態を示す概略正面図、(b)は第一注入孔から注入空間へと無収縮モルタルを注入する状態を示す概略正面図、(c)は第二注入孔から無収縮モルタルを注入する状態を示す概略正面図である。
図16】水路再生用構造体の幅方向の左右の端縁と切除した既設水路の上部領域の幅方向内側の壁面との間に空間が形成されない形態であって、第一注入孔から注入空間へと無収縮モルタルを注入する形態を示す概略正面図である。
図17】水路再生用構造体の幅方向の左右の端縁と切除した既設水路の上部領域の幅方向内側の壁面との間に形成された空間から注入空間へと無収縮モルタルを注入する形態を示す概略正面図である。
図18】本発明水路再生用構造体の第二実施形態を示す部分拡大斜視図である。
図19】第二実施形態の水路再生用構造体を上部領域を切除した後の既設側溝上に配設した状態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る水路再生用構造体(水路再生用ブロック)について、添付図面を参照して説明する。
本実施形態では、既設の現場打ちされたコンクリート製U字型水路(以下、単に既設水路ともいう。)の上部領域を切断若しくはハツリ(例えば、削り取ったり、そぎ落とす作業)により除去した後、その切断面(ハツリ面)上に設置することで、当該既設水路を新設同様に再生するための水路再生用構造体を想定する。
なお、本発明において対象となる水路は、縦断溝、横断溝,排水路等の古くなった水路上部領域を切除し、その切除後の既設水路上部に配設するとともに、モルタルなどの連結材料を介して一体に固定した後に所定の蓋を配設する既設水路の上部を切除したものの他、施行現場にて現場打ちされた水路や、施行現場に新たに組み込まれるコンクリート二次成形品の水路にも利用可能である。
【0022】
「第一実施形態」
本実施形態の水路再生用構造体は、既設水路100の切断面101上に設置可能な形状を成す枠本体1と、枠本体1に一体的に配設され、既設水路100の切断面101に対する高さ調整及び水平調整をする着脱可能な高さ・水平調整機構と、を具備している。
【0023】
枠本体1は、例えば図1に示すように、全体が直方体形状を成すと共に、その中央(刳り貫き部とも言う)が矩形に刳り貫かれた中空の枠形状を成し、枠本体1の長さ方向(図中符号L1で示す方向)の両側面には、それぞれの側面の長さ方向にわたって連続する左右の凹溝11,13が一体に備えられている。また、本実施形態の枠本体1の表面1aと裏面1bとは互いに平行に構成されている。
枠本体1の形状や大きさについては、例えば、既設水路100の上部領域の形状や大きさ、或いは、水路再生用構造体の使用目的や使用環境に応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0024】
枠本体1には、その中央領域を貫通させるとともに、グレーチング蓋やコンクリート蓋などの各種の蓋部材を設置可能な蓋部材設置面3が形成されており、蓋部材設置面3は、枠本体1の中央において互いに平行な位置関係で対向した部位を、それぞれ一部突出させて構成されている。すなわち、枠本体1の中央には、その枠本体1の裏面1b寄りの部位を他の部位よりも突出させた段差部1cが、当該枠本体1に沿って互いに平行な位置関係で対向して延在されており、これら段差部1cの上面(枠本体1の裏面1bとは反対側の面)に、枠本体1の表面1a及び裏面1bと平行に延在する設置平面3aと、設置平面3aから下り勾配を成して連続した設置傾斜面3bと、を含む蓋部材設置面3が構成されている。
【0025】
枠本体1には、蓋部材設置面3から枠本体1の裏面1bに亘って貫通し、枠本体1の裏面1bと既設水路100の切断面101との間に、無収縮モルタルなどの連結材料を注入するための第一注入孔5が形成されている。
【0026】
枠本体1の四隅には、ボルト配設孔7が設けられている。ボルト配設孔7は、枠本体1を既設水路100の切断面101上に設置した状態において、その表面1a側から高さ調整ボルト9を直接操作するために、枠本体1の表面1a側に、ボルト配設孔7の一部を拡大させて構成された操作用拡大孔7aを有している。例えば、その全体が円筒形状を成すボルト配設孔7を想定すると、操作用拡大孔7aは、ボルト配設孔7のうち、図示しない金属製ナットが埋設された螺合位置の径R4よりも枠本体1の表面1a側の部分を多少拡大(拡径)させた径R5をもって構成されている。
【0027】
高さ・水平調整機構は、枠本体1の所定位置にて、枠本体11の表面1aから裏面にわたって貫通して設けられたボルト配設孔7に配設され、枠本体1を上下移動させて高さ及び水平を調整可能な高さ調整ボルト9を想定している。なお、図示してはいないが、ボルト配設孔7内には、高さ調整ボルト9が螺合する内面に雌ネジを形成した金属製ナットが内装されている。
【0028】
本実施形態においては、図10乃至図12に示す形態の高さ調整ボルト9を採用することも可能で、このような形態の高さ調整ボルト9を採用することにも本実施形態特有の技術的特徴を有している。
【0029】
図10乃至図12に示す高さ調整ボルト9は、例えば、本実施形態では、ボルト頭部9aが平面視略四角形状であって、かつボルト頭部9aと雄ネジ部9bとが略同径、あるいはボルト頭部9aの径R1が雄ネジ部9bの径R2よりもわずかに小径である形態のボルトを想定している(図10参照)。ボルト頭部9aは本実施形態に限定解釈されず本発明の範囲内で他の形態を適宜選択可能である。
【0030】
ボルト頭部9aの径が雄ネジ部9bの径よりも径が大きく形成されている従来の一般的なボルトであると、操作用拡大孔7aは、金属製ナットが埋設される螺合位置の径R4よりも大きく形成しなければならない。
本実施形態で採用する高さ調整ボルト9によれば、ボルト頭部9aの径R1が雄ネジ部9bの径R2よりもわずかに小径に構成されているものであるため、操作用拡大孔7aの径R5は、操作用治具が入り、左右方向に回動可能な程度の孔径でよいことから、操作用拡大孔7aを大きく形成する必要がなく、枠本体1の強度を向上させることができる。
【0031】
雄ネジ部9bの先端には、円柱部9cが形成されており、円柱部9cは、雄ネジ部9bよりも小径である(図10参照。)。円柱部9cの径R3は、雄ネジ部9bの径R2よりも小径であるため、ボルト配設孔7aに対して遊びをもって挿入可能である。
従って、円柱部9cが、高さ調整ボルト9のボルト配設孔7への螺合時におけるガイドとして機能する。
【0032】
また、本実施形態においては、枠本体1の両側に凹溝11,13を設けた点にも技術的特徴を有している。
【0033】
凹溝11,13は、枠本体1の側面15,15と、側面15,15からそれぞれ水平方向に連続して形成される段差条部16の面部17,17と、この面部17,17から昇り傾斜状に連続して一体に形成される突条部19,19の内側側面19a,19aと、で構成されている(図3図5及び図8参照。)。本実施形態では、この段差条部16上の面部17,17を底面と称する。
【0034】
枠本体1の側面15は、側面15の上端から下端に向けて僅かに傾斜したテーパ状に形成されて底面(段差条部16の面部)17に至っている。
【0035】
底面17は、同一幅で、かつ枠本体1長さと同一長さをもって形成されている。
底面17は、その長さ方向の両端面が下り傾斜状に連続して形成された第一のテーパ端面21を有している。すなわち、第一のテーパ端面21は、段差条部16の端面に形成されている(図3及び図5参照。)。
【0036】
突条部19は、底面17から昇り傾斜状に形成された内側側面19aと、その内側側面19aから水平方向に連続して形成された頂面部19bと、頂面部19bから鉛直方向で下方に連続して形成される外側側面19cと、を備え、枠本体1の側面15の上端よりも低く形成されている(図3図5及び図8参照。)。また、突条部19は、その両端19fが、枠本体1の両端1dよりも内側に入り込むように全体長さとして短く形成されている(図3参照。)。外側側面19cは、その端部が段差条部16の側面と連続して一体の面部を形成している(図3参照。)。
【0037】
突条部19は、その長さ方向の両端面19fが、第一のテーパ端面21に向けて下り傾斜状に形成された第二のテーパ端面23を有している。この第二のテーパ端面21は、それぞれ第一のテーパ端面(段差条部16の端面)21との間に平坦面25を残して設けられている(図3及び図5参照。)。
【0038】
本実施形態の水路再生用構造体によれば、隣り合う水路再生用構造体の凹溝11,11・13,13同士を突き合わせ、凹溝11,11・13,13同士を連通状にすれば、隣り合う水路再生用構造体同士の幅方向の位置調整が簡単に行い得る。
【0039】
第一のテーパ端面21と第二のテーパ端面23とによると、隣り合う水路再生用構造体の凹溝11,11・13,13同士を突き合わせた際に、次のような構造が形成されることとなる。すなわち、水路再生用構造体を既設水路100上の長さ方向に並べて仮設し、それぞれの高さ・水平調整及び幅方向の位置調整を行うことにより、隣り合う水路再生用構造体の第一のテーパ端面21,21同士が突き合わされ、かつ第二のテーパ端面23,23同士も対向して位置することとなる。
これにより、突き合わされた第一のテーパ面21,21同士によって、V字形状の連続溝27が形成される。また、対向する第二のテーパ面23,23は、それぞれが連続溝27方向に向かって下り傾斜状に位置する。
【0040】
上記した水路再生用構造体を用いた水路再生方法について、添付図面を参照して説明する。
本実施形態の水路再生方法では、切断(ハツリ)が施された既設水路(U字型側溝)100の上部領域に、上記した水路再生用構造体を設置することで、水路を新設同様に再生する場合を想定し、かかる水路再生に要する各工程について、その工程順に沿って説明する。
【0041】
老朽化(劣化)した既設水路100の上部領域を、例えばカッター等の切断装置(図示しない)を用いて、切断若しくはハツリ(例えば、削り取ったり、そぎ落とす作業)により除去する。
【0042】
その除去後に残存した既設水路100の切断面101上の長さ方向に、既存の吊り下げ装置などを用いて、枠本体1を所定数量設置する。
このとき、隣り合う水路再生用構造体同士の幅方向(横方向)の位置合わせ調整を行う。幅方向の位置合わせ調整は、隣り合う水路再生用構造体の凹溝11,11・13,13同士を突き合わせて連通状にすることによって簡易に行うことができる(図4)。
【0043】
枠本体1を既設水路100の切断面101上に設置した状態において、枠本体1の表面1a側から高さ調整ボルト9を操作し、高さ調整ボルト9の先端の円柱部9cを枠本体1の裏面1bから突没させることで、既設水路100の切断面101に対する枠本体1の高さ及び水平を調整する。
この場合、既設水路100の上部領域に残留した切断面101の平滑度について、高い均し精度が要求されることはないので、切断作業(ハツリ作業)を短時間で終わらせることができ、周辺環境に対する騒音・振動・粉塵などの影響を小さくすることができる。
そして次に、枠本体1の裏面1bと既設水路100の切断面101との間に所定の連結材料(無収縮モルタル)を注入可能な注入空間104を構成する。
【0044】
所定の型枠500によって注入空間104を覆うことで、当該注入空間104の内部を密封し、その状態において、各種の蓋部材を設置可能な蓋部材設置面3から枠本体1の裏面1bに亘って貫通した第一注入孔5を介して、枠本体1の裏面1bと既設水路100の切断面101との間に構成された注入空間104に、所定の連結材料を注入する(図14)。
【0045】
このとき、高さ・水平調整後の各ボルト配設孔7にも、同様の連結材料(無収縮モルタル)を注入することが好ましい。これにより、各枠本体1の表面1aを平坦面とすることができるため、見映えが良くなると共に、通行の障害となり得る凹凸の存在を完全に無くすることができる(図10)。
また、注入空間104への連結材料(無収縮モルタル)の注入では、第一注入孔5内に、当該連結材料(無収縮モルタル)が少し盛り上がってきたことを確認した段階で、その注入作業を終了すればよい(図14)。かかる段階で注入作業を終了することで、連結材料(無収縮モルタル)を注入空間104に隙間無く充填させることができる。
【0046】
また、本実施形態では次のような構成を採用した点にも特徴を有している。
【0047】
枠本体1における長さ方向の両端面には、表面1aから裏面1bにわたって連続した半割状溝部8が形成されている(図1乃至図6図8図15図17及び図18)。
半割状溝部8は、本実施形態では、断面視で半円の溝で、表面1aから裏面1bにわたって連続して刻設されている。
【0048】
半割状溝部8は、隣り合う枠本体1,1同士を、既設水路100の切断面101上に配設し、それぞれの端面同士を突き合わせた際に、対向して一つの連結材料注入孔(第二注入孔)10を構成する。
この第二注入孔10は、第一注入孔5とともに、無収縮モルタル200などの連結材料を注入するための孔として機能する。
第二注入孔10は、第一注入孔5よりも孔径が大きくなるように、それぞれの半割状溝部を構成するようにしている。
【0049】
本実施形態では、半割状溝部8を、枠本体1の前後の端面にそれぞれ2つずつ形成しており、それぞれの半割状溝部8は、図1及び図4に示すように、枠本体1の長さ方向でボルト配設孔7と同一線上に設けられている。
また、それぞれの半割状溝部8は、第一注入孔5よりも幅方向で側面方向寄りに形成されている。
【0050】
半割状溝部8を設けることにより次のような特有の作用効果が発揮される。
連結材料(例えば無収縮モルタル)は、第一注入孔5から注入空間104内に向けて注入されるが、第一注入孔5のみからでは連結材料が注入空間104内に十分に充填されるまでかなりの時間を要してしまう。特に、注入空間104における高さ調整ボルト9を配設する領域にまで連結材料が行き届くには時間を要してしまう。そこで、向かい合う半割状溝部8,8同士によって形成される第二注入孔10からも連結材料が注入空間104に注入されればこのような課題は有効に解決される。
【0051】
なお、半割状溝部8の形態は本実施形態に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能であって、例えば、断面視で三角形状、矩形状など種々の形態が採用可能である。また、隣り合う枠本体1,1の半割状溝部8,8同士を突き合わせて形成される第二注入孔10の孔径も任意である。
【0052】
なお、図11に示すように、水路再生後、例えば、高さ調整ボルト9を取り外し、そのボルト取り外し後のボルト配設孔7に無収縮モルタル200を注入して埋設してもよく、あるいは、図12に示すように、ボルト取り外し後のボルト配設孔7に差し筋300を組み込み、その後、無収縮モルタル200を注入して埋設してもよく、本発明の範囲内である。
【0053】
本実施形態によれば、さらに次のような作用効果を奏する。
【0054】
上部を切除した既設水路領域(既設水路の幅方向両側の外面間にわたる幅方向領域)W1は、新たに配設される水路再生用構造体を舗装面と一体に固着するためにアスファルトなどを注入する隙間(空間)103,103を両側に有するため、配設される水路再生用構造体の幅W2よりも大きく(広く)形成される(図4)。従って、水路再生用構造体の幅方向の左右の端縁と切除した既設水路100の上部領域の幅方向内側の壁面との間には、アスファルトなどを注入する空間103,103が形成されている(図4及び図14)。
水路再生用構造体を長さ方向に連続して複数個設置(仮設)した際に、切除した既設水路100の上部領域内で、隣り合う水路再生用構造体との間で幅方向のずれが生じ得ることもある。しかし、本実施形態の水路再生用構造体によれば、隣り合う水路再生用構造体の凹溝11,11・13,13同士を突き合わせて位置合わせをすれば幅方向の位置調整が簡単に行い得るため、熟練者でなくとも簡易確実に幅方向の位置合わせ調整がなし得る(図4)。
さらに、図示はしないが、隣り合う水路再生用構造体の凹溝11(13)にわたって嵌る棒材などの簡易な治具を用意しておけばさらに幅方向の位置合わせが簡易かつ確実に行い得る。
【0055】
さらに、例えば、図7に示すような道路を横切るように配設される横断溝の場合、自動車などの車両の通行量によって舗装面と水路再生用構造体との境界部分に剥離が生じ、その結果、舗装面と水路再生用構造体との間に隙間が生じてしまう虞があった。図中、符号400は蓋部材を示す。
本実施形態の水路再生用構造体を横断溝の再生用として採用すれば、凹溝11(13)が枠本体1よりも低く形成されているため、舗装面が水路再生用構造体の突条部19を跨ぐようにして凹溝11(13)に入り込んで固着されるため、舗装面と水路再生用構造体との境界部分が離れて隙間を形成する虞もない(図8を参照。図8では歩道と車道との間に配設する形態を説明するが、図中「歩道側」を「車道側」とすることで図7に示す横断溝にも参照可能である。)。
【0056】
また、水路再生用構造体を既設水路100上の長さ方向に並べて仮設し、高さ調整ボルト9にてそれぞれの高さ・水平調整を行い、凹溝11,11・13,13同士を突き合わせて幅方向の位置調整を行うことにより、隣り合う水路再生用構造体の第一のテーパ端面21,21同士が突き合わされ、かつ第二のテーパ端面23,23同士も対向して位置することとなる。
これにより、突き合わされた第一のテーパ面21,21同士によって、V字形状の連続溝27が形成され、対向する第二のテーパ面23,23は、それぞれが連続溝27方向に向かって下り傾斜状に位置する(図6)。
現場の施工状況や天候によっては、仮設状態のままで現場に一定期間置いておくこともあり得る。このような場合、例えば、翌日などに施工を再開するような場合、凹溝11(13)にゴミや埃、あるいは雨水などが溜まっていることもあり得る。
本実施形態によれば、このような状況下であっても、凹溝11(13)にたまったゴミや埃、雨水などを、連続溝27の方向に掃き出すことにより、連続溝27から外方に効率よく排出できる。また、凹溝11(13)から連続溝27内に入らず、平坦面25方向に掃き出されても、それぞれの平坦面25の側方に位置する第二のテーパ端面23に沿って外方に効率よく排出できる。
【0057】
また、本実施形態の水路再生用構造体の施工手順の他の実施形態を図15乃至図17に基づいて説明する。
【0058】
図15は、第一注入孔5と第二注入孔10とから連結材料(無収縮モルタル)200を注入する実施の形態を示す工程図を示す。
このように第一注入孔5とともに第二注入孔10からも連結材料を注入するようにすることにより注入空間104内への連結材料の充填に要する時間が短縮される。よって、作業時間及び作業労力の大幅な軽減が図れる。その他の工程については第一実施形態と同じであるため説明は省略する。
【0059】
図16は、水路再生用構造体の幅方向の左右の端縁と、切除した既設水路100の上部領域の幅方向内側の壁面との間に空間を形成していない施工形態である。この施工形態において、連結材料(無収縮モルタル)200は、第一注入孔5のみから注入充填させるものであってもよいが、第一注入孔5とともに第二注入孔10からも注入充填させることも可能である。
【0060】
図17は、水路再生用構造体の幅方向の左右の端縁と、切除した既設水路100の上部領域の幅方向内側の壁面との間に形成される空間103と、枠本体1の裏面1bと切除した既設水路100の上部領域との間の注入空間104との間に型枠500を配設せずに空間103と注入空間104とのを連通状態とする。
そして、水路再生用構造体の幅方向の左右の端縁と、切除した既設水路100の上部領域の幅方向内側の壁面との間に形成される空間103から連結材料(無収縮モルタル)200を注入し、注入空間104とともに、水路再生用構造体の幅方向の左右の端縁と、切除した既設水路100の上部領域の幅方向内側の壁面との間に形成される空間103にも連結材料200を注入充填する実施の一形態である。
【0061】
なお、上記図15乃至図17に示す施工手順においても第一実施形態にて説明した図10乃至図12に示す高さ調整ボルト9を採用することは可能で本発明の範囲内である。
【0062】
「第二実施形態」
図18及び図19は本発明水路再生用構造体の第二実施形態を示す部分拡大図である。
本実施形態では、枠本体1の形態が第一実施形態と異なっている。
【0063】
本実施形態において、枠本体1は、切断面101上に当接する一方の設置領域と他方の設置領域とのそれぞれの幅方向の設置幅が異なっている。
本実施形態では、歩道側あるいは民地側に位置する設置領域A1が薄肉(細幅)で、車道側に位置する設置領域A2が厚肉(太幅)に形成されている。
従って、本実施形態によれば、設置領域A1に対する表面側の領域A3も薄肉(細幅)で、設置領域A2に対する表面側の領域A4も厚肉(太幅)に形成されている。
その他の形態及び作用効果は第一実施形態と同じであるため、第一実施形態の説明を援用してここでの説明は省略する。
なお、本実施形態においても、図10乃至図12に示す形態の高さ調整ボルト9を採用することは可能で本発明の範囲内である。
【0064】
例えば、歩道や民地に沿って配設された既設側溝などの既設水路にあっては、歩道側(民地側)の上部領域に対して車道側の上部領域を厚肉に形成されているものがある。
このような場合、本実施形態の水路再生用構造体によれば、歩道側あるいは民地側に位置する設置領域A1が薄肉(細幅)で、車道側に位置する設置領域A2が厚肉(太幅)に形成されている(表面側の領域もA3>A4の関係を有している)ため、上述したような形態の既設水路の切断面(切断した上部領域)に水路再生用構造体を設置するにあたり、歩道側(民地側)と車道側とが一見して識別できるため設置がスムーズに行い得る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、上記例示した縦断溝、横断溝、排水路に限定解釈して利用されるものではなく、広く水路一般に利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 枠本体
9 高さ調整ボルト
11,13 凹溝
21 第一のテーパ端面
23 第二のテーパ端面
A1,A2 設置領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19