(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120971
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】外接ギヤポンプのギヤ軸受構造
(51)【国際特許分類】
F04C 2/18 20060101AFI20220812BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
F04C2/18 311D
F04C15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018053
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】谷田 真裕
(72)【発明者】
【氏名】梅木 康由
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 亮宏
(72)【発明者】
【氏名】高宮 健治
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB02
3H041CC06
3H041CC20
3H041DD07
3H041DD09
3H044AA02
3H044BB02
3H044CC06
3H044CC19
3H044DD06
3H044DD08
(57)【要約】
【課題】 流体の漏れを抑止して安定した吐出量精度で流体を吐出することができる外接ギヤポンプのギヤ軸受構造を提供する。
【解決手段】 外接ギヤポンプでは、一対のギヤがポンプボディの内部に収納されている。一対のギヤの噛み合い部の一側に吸入室が形成されると共に他側には吐出室が形成される。一対のギヤの回転により流体が周方向に沿って吸入室から吐出室へと送られる。外接ギヤポンプのギヤ軸受構造では、一対のギヤの少なくとも一方の回転軸との間に潤滑液膜を形成して回転軸を回転可能に保持する円筒状のブッシュFを備えている。ブッシュFの一端P3は高圧(吐出室側)の流体に面し、他端は低圧(吸入室側)の流体に面している。ブッシュFの内周面100上に形成された排出溝107の一端(高圧側)は閉塞され、他端(低圧側)は開放されている。排出溝107はブッシュFの回転軸の方向の長さの半分以上の長さを有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプボディの内部に回転可能に収納された駆動ギヤ及び従動ギヤの噛み合い部の一側に吸入室が形成されると共に前記噛み合い部の他側に吐出室が形成され、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤの回転により流体を周方向に沿って前記吸入室から前記吐出室へと送る外接ギヤポンプのギヤ軸受構造であって、
前記駆動ギヤ又は前記従動ギヤの少なくとも一方の回転軸との間に前記流体による潤滑液膜を形成して前記回転軸を回転可能に保持する円筒状のブッシュを備えており、
前記ブッシュの一端が前記駆動ギヤ又は前記従動ギヤの少なくとも一方との間に前記流体による潤滑液膜を介して摺動接触し、かつ、前記ブッシュの他端に前記吸入室内の前記流体が導入されており、
前記ブッシュの内周面上に、前記回転軸と前記内周面との間の前記潤滑液膜を形成する前記流体を前記ブッシュの前記他端から排出する排出溝が、前記回転軸の方向に沿って形成されており、
前記排出溝は、前記ブッシュの前記一端で開放されずに閉塞され、かつ、前記ブッシュの前記他端で開放されていると共に、前記ブッシュの前記回転軸の方向の長さの半分以上の長さを有している、外接ギヤポンプのギヤ軸受構造。
【請求項2】
請求項1に記載の外接ギヤポンプのギヤ軸受構造であって、
前記内周面に前記吐出室から流体を導入する流路をさらに備えており、
前記流路の端部が前記内周面上に開口されている、外接ギヤポンプのギヤ軸受構造。
【請求項3】
請求項2に記載の外接ギヤポンプのギヤ軸受構造であって、
前記流路の前記端部が、前記回転軸に対して前記排出溝の反対側に配置されている、外接ギヤポンプのギヤ軸受構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一対のギヤにより流体を送り出す外接ギヤポンプにおけるギヤの軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、外接ギヤポンプを開示している。外接ギヤポンプは、ポンプボディ内に一対の駆動ギヤ及び従動ギヤを備える。駆動ギヤ及び従動ギヤの各外周にはギヤ歯が形成されている。駆動ギヤ及び従動ギヤは、互いに噛み合った状態で、それらの軸方向両側からサイドプレートで挟持される。駆動ギヤ及び従動ギヤの噛み合い部の一側には流体(液体)を吸入する吸入室が形成され、噛み合い部の他側には流体を吐出する吐出室が形成される。
【0003】
駆動ギヤ及び従動ギヤは、吐出室側で噛み合い始め、吸入室側で噛み合いが外れる。噛み合いが外れたギヤ歯の間に流体が入り込み、流体はギヤ歯の回転に伴ってギヤ歯とポンプボディの内面との間に保持されて周方向に沿って吐出室へと送られる。駆動ギヤ及び従動ギヤの各ギヤ軸(回転軸)は、ブッシュによって回転可能に保持される。ブッシュの内周面と回転軸の外周面との間には、ギヤポンプで送られる流体によって潤滑液膜が形成される。即ち、ギヤポンプで送られる流体が潤滑油としても機能する。特許文献1に開示された外接ギヤポンプでは、ブッシュの内周面と回転軸の外周面との間の潤滑摺動面に潤滑液膜を形成するための潤滑液を供給する潤滑液溝が、ブッシュの内周面上に形成されている。潤滑液溝は、回転軸に平行に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された外接ギヤポンプにおいて、ブッシュの一端は流体の高圧側(ギヤ側)に面し、他端は低圧側に面している。潤滑摺動面に潤滑液を供給する潤滑液溝は、ブッシュの一端で開放されると共に、他端では開放されていない。潤滑液溝によって、ブッシュの一端側から潤滑摺動面へと高圧の流体が積極的に供給される。潤滑液膜を形成する潤滑油は、ブッシュの他端の低圧側へと移動する。ブッシュの他端側で開放させないことで、潤滑油のブッシュの他端からの流体の流出を抑止してはいる。しかし、外接ギヤポンプが吐出する流体を潤滑液体として利用しているため、ギヤの回転数が上昇するなどして潤滑摺動面への潤滑油(流体)の供給量が増えるとブッシュの他端からの潤滑油(流体)の流出も増えるので、ギヤポンプの効率が低下する。また、ポンプの吐出量に精度が求められる場合は吐出量の精度も低下してしまう。本開示の目的は、流体の漏れを抑止して安定した精度で流体を吐出することのできる外接ギヤポンプのギヤ軸受構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る外接ギヤポンプのギヤ軸受構造は、ポンプボディの内部に回転可能に収納された駆動ギヤ及び従動ギヤの噛み合い部の一側に吸入室が形成されると共に前記噛み合い部の他側に吐出室が形成され、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤの回転により流体を周方向に沿って前記吸入室から前記吐出室へと送る外接ギヤポンプのギヤ軸受構造であり、前記駆動ギヤ又は前記従動ギヤの少なくとも一方の回転軸との間に前記流体による潤滑液膜を形成して前記回転軸を回転可能に保持する円筒状のブッシュを備えている。前記ブッシュの一端は前記駆動ギヤ又は前記従動ギヤの少なくとも一方との間に前記流体による潤滑液膜を介して摺動接触し、かつ、前記ブッシュの他端には前記吸入室内の前記流体が導入されている。前記ブッシュの内周面上には、前記回転軸と前記内周面との間の前記潤滑液膜を形成する前記流体を前記ブッシュの前記他端から排出する排出溝が、前記回転軸の方向に沿って形成されている。前記排出溝は、前記ブッシュの前記一端で開放されずに閉塞され、かつ、前記ブッシュの前記他端で開放されていると共に、前記ブッシュの前記回転軸の方向の長さの半分以上長さを有している。
【0007】
前記ギヤ軸受構造が、前記内周面に前記吐出室から流体を導入する流路をさらに備えており、前記流路の端部が前記内周面上に開口されていてもよい。
【0008】
ここで、前記流路の前記端部が、前記回転軸に対して前記排出溝の反対側に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る外接ギヤポンプのギヤ軸受構造によれば、流体の漏れを抑止して安定した吐出量精度で流体を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態に係るギヤ軸受構造を備えた外接ギヤポンプの断面図である。
【
図4】第一実施形態におけるブッシュの斜視図である。
【
図5】前記ブッシュを反対側から見た斜視図である。
【
図6】前記外接ギヤポンプのミッドプレートの一部(円形凸部)を示す斜視図である。
【
図7】前記外接ギヤポンプのポンプボディ内に形成される高圧供給路を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、外接ギヤポンプのギヤ軸受構造の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
実施形態に係るギヤ軸受構造を備える外接ギヤポンプ(以下、単にギヤポンプという)Pは、エンジンに液体燃料(以下、単に燃料ともいう)を送るポンプとして用いられている。ギヤポンプPでは、この燃料がギヤポンプPの各部を潤滑する潤滑液体(以下、潤滑油ともいう)としても利用される。即ち、本実施形態において燃料と潤滑油とは同じものである。以下、説明内容に応じて、燃料(ポンプによって送られる流体)及び潤滑油(潤滑を行う流体)の両方の語を用いる。
【0013】
図1及び
図2に示されるように、ギヤポンプPは、ポンプボディB内に一対のギヤGを備えている。ポンプボディBは、本実施形態では、メインボディB1、サイドプレートB2、ミッドプレートB3及びエンドプレートB4によって構成されている。メインボディB1の内部には、噛み合った状態の一対のギヤGを収納するギヤ収納室1が形成されている。ギヤ収納室1は、ギヤGの回転軸心Oに直角な断面において8字形を有している。
【0014】
ギヤGについては追って詳しく説明するが、各ギヤGの外周上には複数のギヤ歯が形成されており、ギヤ歯の先端は、ギヤ収納室1の内周面と潤滑油膜を介して摺動接触する。ギヤ収納室1のくびれ部、即ち、ギヤGの噛み合い部の一側には、外部から燃料を吸入する吸入室2Iが形成され、他側には、燃料を吐出する吐出室2Oが形成されている。ギヤポンプPは容積型ポンプであり、吐出室2O側の流路抵抗などによって、吐出室2O内の圧力PHは、吸入室2I内の圧力PLよりも高い(PL<PH)。
【0015】
メインボディB1には、上述した回転軸心Oの方向の両側から、サイドプレートB2及びミッドプレートB3がボルト3などによって固定される(サイドプレートB2側のボルトは図示せず)。ギヤGの各回転軸GSの両端は、後述する円筒状のブッシュFを介して、サイドプレートB2及びミッドプレートB3によってそれぞれ回転可能に保持される。なお、ブッシュFについても追って詳しく説明するが、各ブッシュFは、その内周面100(
図4及び
図5参照)と回転軸GSの外周面との間に形成される潤滑液膜(油膜)を利用する流体軸受(滑り軸受)を構成する。ミッドプレートB3の外側面には、リング状のエンドプレートB4が固定されている。エンドプレートB4の中央からは、一対のギヤGの一方(第一ギヤG1)の回転軸GS(GS1)が外部に延出されている。
【0016】
一対のギヤGの一方(第一ギヤG1)は、外部動力によって回転される駆動ギヤである。第一ギヤG1の回転軸GS1の端部にはスプラインが形成されており(
図7参照)、第一ギヤG1はスプラインを介して駆動源と接続される。一対のギヤGの他方(第二ギヤG2)は、第一ギヤG1の回転に伴って回転される従動ギヤである。第一ギヤG1及び第二ギヤG2は、
図2中の矢印に示されるように、互いに反対方向に回転する。第一ギヤG1及び第二ギヤG2のギヤプロフィール(ギヤ歯の形状及び数など)は同じである。吸入室2I内の燃料は、第一ギヤG1及び第二ギヤG2それぞれのギヤ歯の間に保持された状態で、周方向に沿って(ギヤ収納室1の内周面に沿って)運ばれて、吐出室2Oへと送られる。
【0017】
第一ギヤG1の回転軸GS1は、中実円柱で、第一ギヤG1を貫通するように第一ギヤG1と一体的に形成されている。回転軸GS1とサイドプレートB2との間、及び、回転軸GS1とミッドプレートB3との間には、回転軸GS1の回転を許容しつつ潤滑油の漏出を防止するオイルシールSがそれぞれ設けられている。一方、第二ギヤG2の回転軸GS2は、中空円筒であるが、やはり、第二ギヤG2を貫通するように第二ギヤG2と一体的に形成されている。回転軸GS2の両端は、ブッシュFを介してサイドプレートB2及びミッドプレートB3によってそれぞれ保持される。潤滑油は、回転軸GS2の内部を通って流通し得る。
【0018】
第一ギヤG1の回転軸GS1のミッドプレートB3側の部分は第一ブッシュF11によって保持され、そのサイドプレートB2側の部分は第二ブッシュF12によって保持されている。同様に、第二ギヤG2の回転軸GS2のミッドプレートB3側の部分は第一ブッシュF21によって保持され、そのサイドプレートB2側の部分は第二ブッシュF22によって保持されている。第一ギヤG1の第一ブッシュF11と第二ギヤG2の第一ブッシュF21とは、
図3に示されるように、第一ギヤG1と第二ギヤG2との中央における、回転軸GS(回転軸心O)に平行な対称面に対して対称に構成されている。ただし、第一ギヤG1の第一ブッシュF11と第二ギヤG2の第一ブッシュF21とは、後述する低圧側凹部101及び高圧側凹部102aの形状が若干異なる。
【0019】
対称に構成された第一ブッシュF11及びF21について、
図4及び
図5に示される第一ブッシュF11を参照しつつ以下に説明する。第一ブッシュF11は、円筒形を有しており、その外周面上に段部が形成されている。当該段部には、リング状の第二面P2が形成されている。即ち、第一ブッシュF11には第二面P2を境にして大径部と小径部とが形成されており、大径部の外径は、第一ギヤG1のギヤ外径に等しい(
図2参照)。大径部の外周面上には、回転軸GSの軸方向への摺動を容易にするための潤滑溝103が形成されている。
【0020】
第一ブッシュF11の大径部の外周面上の一部は接触平面104として形成されている。この接触平面104が第二ギヤG2の第一ブッシュF21の接触平面104と面接された状態で、第一ブッシュF11及びF21がギヤ収納室1内のミッドプレートB3側に配置されている。従って、第一ブッシュF11及びF21は、回転不能にギヤ収納室1に収納されている。接触平面104を含む平面が、第一ブッシュF11及びF21の上述した対称面である。
【0021】
第二面P2は、回転軸GS1(回転軸心O1)に対して垂直な平面であり、ミッドプレートB3(ポンプボディB)の円形凸部6(
図1参照)の第一面P1(
図6参照)と対向する。第一ブッシュF11の内周面100の内径は、第一ギヤG1の回転軸GS1の外径にほぼ等しく、内周面100と回転軸GS1との間に潤滑油膜が形成される。即ち、内周面100は、回転軸GS1の外周面と潤滑油膜を介して摺動接触する。内周面100上には、当該内周面100と回転軸GS1の外周面との間に高圧の潤滑油を供給するリセス105が開口されている。リセス105から供給される潤滑油が内周面100と回転軸GS1の外周面との間に効率よく広がるように、リセス105は内周面100上の回転軸心O1方向の中央に配置されている。
【0022】
リセス105は、ほぼ長方体形状の内部空間を有しているが、その底面は湾曲凹面として形成されている。リセス105は、放電加工又は切削加工によって形成される。上述した第二面P2上には、高圧の潤滑油のブッシュ内供給路106の入口である導入口106aが開口されている。なお、導入口106aに高圧の潤滑油を供給する高圧供給路5(
図7参照)に関しては追って詳しく説明する。第一ブッシュF11の内部には、リセス105と導入口106aとを連通するブッシュ内供給路106が形成されている。ブッシュ内供給路106のリセス105側の端部には、流路内径が狭められたオリフィス106bが形成されている。また、ブッシュ内供給路106は、第一ブッシュF11の外周面まで貫通されており、外周面上に副口106cが開口されている。ブッシュ内供給路106を第一ブッシュF11の外周面まで貫通させることで、導入口106aとリセス105とをつなぐブッシュ内供給路106を容易に形成できる。
【0023】
具体的には、まず、外周面上の副口106cが開口される位置からリセス105の近傍に向けて大径のドリルを用いてブッシュ内供給路106の一部が形成される。次いで、小径のドリルを用いてブッシュ内供給路106がリセス105の近傍(底部下方)まで延長される。さらに、極小径のドリルを用いたドリル加工又は放電加工によってオリフィス106bが形成される。また、第二面P2上の導入口106aが形成される位置からドリルを用いて残り部分が形成される。なお、導入口106a、オリフィス106b及び副口106cの形成順序は必ずしも上述した順序でなくてもよい。また、リセス105とブッシュ内供給路106とはどちらが先に形成されてもよい。
【0024】
第一ブッシュF11は、第一ギヤG1に面する第三面P3を有している。第三面P3も、回転軸GS1(回転軸心O1)に対して垂直な平面であり、第一ギヤG1の側面と潤滑油膜を介して摺動接触する。第三面P3から外周面及び接触平面104の吸入室2I側の部分にかけて、低圧側凹部101が形成されている。低圧側凹部101の湾曲凹内面は、吸入室2Iの一部である。第三面P3から外周面及び接触平面104の吐出室2O側の部分にかけて、高圧側凹部102aが形成されている。高圧側凹部102aの湾曲凹内面は、吐出室2Oの内面となる。高圧側凹部102aからは、周方向に沿ってテーパ部102bが延長されている。テーパ部102bは、第三面P3と外周面との間にテーパ面を形成する。第一ブッシュF11は、ミッドプレートB3に面する第四面P4を有している。第四面P4も、回転軸GS1(回転軸心O1)に対して垂直な平面である。
【0025】
第一ブッシュF11の内周面100上には、回転軸GS1の外周面と第一ブッシュF11の内周面100との間に形成される潤滑油膜の潤滑油を第四面P4側に排出させるための排出溝107も形成されている。排出溝107の第四面P4側の一端は、ミッドプレートB3の内部を通して吸入室2Iの低圧の潤滑油(燃料)に連通している。排出溝107による潤滑油の排出によって潤滑油を循環させることで、回転軸GS1の外周面と第一ブッシュF11の内周面100との潤滑摺動面が冷却される。排出溝107の第三面P3側の一端は、第三面P3に達しておらず、閉塞されている。一方、排出溝107の第四面P4側の他端は、第四面P4に達して開放されている。
【0026】
リセス105から第一ブッシュF11の内周面100と回転軸GSとの間に供給された高圧の潤滑油は、排出溝107の第四面P4側の端部(低圧側)から排出される。排出溝107は、回転軸GS1(回転軸心O1)に平行に形成されており、第一ブッシュF11の回転軸GS1(回転軸心O1)の方向の長さの半分以上の長さを有している。排出溝107の内面は、凹曲面として形成されている。排出溝107は、回転軸心O1に対して、リセス105の反対側に位置している。
【0027】
第二面P2上には、周方向に沿って複数(本実施形態では十二個)のスプリング収納穴108が等間隔に形成されている。スプリング収納穴108は、回転軸GS1(回転軸心O1)に平行に形成されている。各スプリング収納穴108には、コイルスプリング109が収納されている。コイルスプリング109は、スプリング収納穴108内部のスプリング座面と第二面P2と対向する第一面P1(後述する)とによって圧縮された状態でスプリング収納穴108に収納される。従って、第一ブッシュF11は、コイルスプリング109(及び潤滑油の高圧)によって第一面P1から離間する方向に付勢される。なお、
図1では、スプリング収納穴108内にコイルスプリング109は図示されていない。
【0028】
上述したように、第一ブッシュF11(F21)の第二面P2は、ポンプボディB(ミッドプレートB3)の第一面P1と対向する。第一面P1も、回転軸GS(回転軸心O)に対して垂直な平面である。
図6に示されるように、第一面P1は、ミッドプレートB3の円形凸部6の端面として形成されている。円形凸部6は、ミッドプレートB3のメインボディB1に面する表面から突出されている。円形凸部6の第一面P1上には、第一ブッシュF11の端部を収納する第一収納孔H1と第一ブッシュF21の端部を収納する第二収納穴H2とが形成されている。第一収納孔H1は、内周面上に段差(環状底面)を有する貫通孔であり、第一ギヤG1の回転軸GS1が当該貫通孔を貫通する。第二収納穴H2は、有底穴である。
【0029】
第一収納孔H1は、第一ブッシュF11の小径部を収納する。従って、第一ブッシュF11の小径部と大径部との境界である第二面P2が第一面P1と対向する。同様に、第二収納穴H2は、第一ブッシュF21の小径部を収納する。従って、第一ブッシュF21の小径部と大径部との境界である第二面P2も第一面P1と対向する。上述した圧縮状態のコイルスプリング109は、第一面P1及び第二面P2に形成されたスプリング収納穴108内の座面と当接して第一ブッシュF11及びF21を第一面P1から離間させる方向に、即ち、ギヤGに向けて付勢する。
【0030】
円形凸部6の外周面上、並びに、第一収納孔H1及び第二収納穴H2の内周面上には、潤滑油の漏出を防止するOリングを収納するシール溝7がそれぞれ形成されている。
図6には、第二面P2も第一面P1との間に高圧の潤滑油を供給する高圧供給路5も示されている。高圧供給路5については追って詳しく説明するが、本実施形態の高圧供給路5の出口端である開口端5cは、T字状に分岐され、一方の先端は第一ブッシュF11の第二面P2と対向し、他方の先端は第一ブッシュF21の第二面P2と対向する。即ち、開口端5cは、第一ブッシュF11及び第一ブッシュF21の両方の第二面P2と対向する。第一面P1と第二面P2との間に供給された高圧の潤滑油は、コイルスプリング109と共に、第一ブッシュF11及びF21を付勢する。
【0031】
以上、ミッドプレートB3側に配置される第一ブッシュF11(F21)について説明した。本実施形態では、サイドプレートB2側に配置される第二ブッシュF12(F22)は、第一ブッシュF11(F21)と一部異なっている。第二ブッシュF12(F22)の第二面P2の位置にはスプリング収納穴108及びコイルスプリング109は配置されない。また、第二ブッシュF12は第一ギヤG1に対して第一ブッシュF11とほぼ対称な形状を有しており、第二ブッシュF22は第二ギヤG2に対して第一ブッシュF21とほぼ対称な形状を有している。第二ブッシュF12(F22)の内周面100には、吐出室2Oの高圧の潤滑油(燃料)が高圧供給口4H(
図1参照)から供給される。一方、サイドプレートB2に面する第二ブッシュF12(F22)の第四面P4には、吸入室2Iの低圧の潤滑油(燃料)が低圧供給口4L(
図1参照)から供給される。第二ブッシュF12(F22)の内周面100と回転軸GSとの間に供給された高圧の潤滑油は、排出溝107の第四面P4側の端部(低圧側)から排出される。サイドプレートB2に面する第二ブッシュF22の第四面P4とミッドプレートB3に面する第一ブッシュF21の第四面P4とは、第二ギヤG2の回転軸GS2の内部を介して連通している。
【0032】
第二ブッシュF12及びF22は、ギヤ収納室1のサイドプレートB2側に収納されている。ここで、上述したように、第一ブッシュF11及びF21は第一面P1から離間する方向(
図1中左方)、即ち、一対のギヤGに向けて付勢されている。第二ブッシュF12及びF22は、それらの第二面P2がメインボディB1の段部と当接するので、それらの回転軸GS(回転軸心O)方向の位置が決まる。一対のギヤGは、付勢された第一ブッシュF11及びF21に押されて、それらの側面で第二ブッシュF12及びF22の第三面P3と潤滑油膜を介して摺動接触する。なお、上述したように、一対のギヤGは、それらの反対側の側面で付勢された第一ブッシュF11及びF21の第三面P3とも潤滑油膜を介して摺動接触している。このようにして、ギヤG、第一ブッシュF11及びF21、並びに、第二ブッシュF12及びF22の摺動状態が安定化される。
【0033】
なお、潤滑油は、上述した摺動部(ギヤG周面とポンプボディBとの間、ギヤG側面と第三面P3との間、及び、回転軸GSの外周面とブッシュFの内周面100との間)に形成される油膜を介して移動し得る。また、潤滑油は、ブッシュFとポンプボディBとの間の微小隙間を通っても移動し得る。ギヤポンプPの内部には、潤滑油(燃料)が高圧の場所と低圧の場所とがあり、潤滑油は高圧の場所から低圧の場所へと移動しようとする。ある場所に高圧の潤滑油を安定して供給すれば、その場所は高圧状態を安定して維持できる。本実施形態では、内周面100に高圧の潤滑油を安定して供給して、一対のギヤG(の回転軸GS)に作用する負荷の許容値を大きくする(即ち、許容負荷を大きくする)。許容負荷を大きくすることで、大きな負荷が作用しても摺動面の油切れなどによる焼き付きを防止できる。潤滑油膜における圧力分布を(高圧で)均一化することが許容負荷を大きくすることに寄与する。
【0034】
ここで、一対のギヤGの周方向に形成される圧力領域について
図3を参照しつつ説明する。上述したように、吐出室2O内の圧力PHは、吸入室2I内の圧力PLよりも高い(PL<PH)。従って、第一ギヤG1及び第二ギヤG2の外周に対応するギヤ収納室1の内周に沿って、吸入室2Iに面して低圧領域Lが形成される。この低圧領域Lは、上述した低圧側凹部101に対応する。一方、第一ギヤG1及び第二ギヤG2の外周に対応するギヤ収納室1の内周に沿って、吐出室2Oに面して高圧領域Hが形成される。この高圧領域Hは、上述した高圧側凹部102aに対応する。ここで、高圧側凹部102aはテーパ部102bによって周方向に拡大されている。このため、高圧領域Hは、テーパ部102bまで拡大されている。
【0035】
上述したように、燃料(潤滑油)は、ギヤGのギヤ歯の間に溜められて、周方向に運ばれる。この間、ギヤ歯間の燃料(潤滑油)の圧力は、低圧領域Lにあれば低圧であり、高圧領域Hにあれば高圧である。低圧領域Lと高圧領域Hとの間には、摺動部の潤滑油膜を介して燃料(潤滑油)の圧力が低圧から高圧へと徐々に移行する圧力移行領域Tが形成される。圧力移行領域Tは、昇圧領域とも呼べる。このように、ギヤGの外周に対応して、低圧領域L、圧力移行領域T及び高圧領域Hが区画される。
【0036】
即ち、ギヤGの外周に沿って圧力分布が形成される。この圧力分布によって、回転軸GSの外周面とブッシュFの内周面100との間の潤滑油膜にも圧力分布が形成される可能性がある。しかし、本実施形態では、上述したように、回転軸GSの外周面とブッシュFの内周面100との間には、リセス105を介して高圧の潤滑油が供給される。リセス105は、高圧領域Hに配置された排出溝107(
図3参照)とは反対側の低圧領域Lに配置されている。従って、上述した潤滑液膜の圧力分布を解消するように、低圧領域Lの潤滑油膜に高圧の潤滑油を供給することができる。特に、リセス105は、低圧領域Lにおける回転軸GSの回転先行側に配置されており、潤滑油膜に供給された高圧の潤滑油は、回転軸GSの回転によって低圧領域Lの全域に供給されやすい。
【0037】
なお、排出溝107は高圧領域Hに配置されているが、そのギヤG(第三面P3)側の端部は閉塞されている。ここで仮に、排出溝107が第三面P3側から第四面P4まで貫通していた場合、潤滑油が貫通した排出溝107を通って高圧の第三面P3(ギヤ)側から低圧の第四面P4側へと流れてしまい、ギヤポンプの効率が低下する可能性がある。しかし、本実施形態では、排出溝107の第三面P3側の端部は閉塞されており排出溝107による潤滑油(燃料)の高圧側から低圧側への漏れは抑止されている。さらに、本実施形態では、第一ブッシュF11及びF21は、第一面P1と第二面P2との間に供給された高圧の潤滑油の圧力とコイルスプリング109とによってギヤGの側面に向けて付勢されている。このため、第三面P3とギヤGの側面との間の潤滑油膜を介しての潤滑油(燃料)の高圧側から低圧側への漏れは抑止されている。従って、排出溝107は、ブッシュ内供給路106及びリセス105を介して回転軸GSと内周面100との間に供給された高圧の潤滑油を循環冷却のために排出するだけであり、ギヤポンプの効率を低下させることはない。
【0038】
一方、リセス105に高圧の潤滑油を供給するブッシュ内供給路106の入口である導入口106aは、高圧領域Hに配置されている。導入口106aから高圧の潤滑油が導入されるが、導入口106aが高圧領域Hに配置されているので、供給される潤滑油の圧力が低下することはない。また、導入口106aは、高圧領域H内における回転軸GSの回転後行側に配置されている。ここで、低圧領域L内のリセス105と高圧領域H内の導入口106aとを連通させるブッシュ内供給路106は、第一ブッシュF11(F21)の内部に形成されるために内径が小さく圧力損失の原因となり得る。しかし、リセス105を低圧領域L内の回転先行側に配置し、かつ、導入口106aを高圧領域H内の回転後行側に配置することで、ブッシュ内供給路106を直線的に極力短く形成でき、圧力損失を抑止してリセス105からより高圧の潤滑油を供給できる。
【0039】
本実施形態では、ブッシュ内供給路106が第一ブッシュF11の外周面まで貫通されており、外周面上に副口106cが開口されている。このようにすることで、ブッシュ内供給路106を直線的に形成(ドリル加工)しやすい。副口106cは高圧領域Hに配置されるので、ブッシュ内供給路106を通って供給される潤滑油の圧力が低下することはない。ブッシュ内供給路106は導入口106aとリセス105とを連通させ、副口106cに続く分岐路は必ずしも必要ない。しかし、副口106cに続く分岐路はブッシュ内供給路106の加工を容易にすることができ、圧力低下も招かないので副口106c(分岐路)を塞ぐ必要もない。
【0040】
また、ブッシュ内供給路106のリセス105側の端部に形成されたオリフィス106bは、リセス105内の潤滑油がブッシュ内供給路106に押し戻されるのを抑止する。即ち、回転軸GSの外周面とブッシュFの内周面100との間に形成される潤滑油膜の周方向の厚さの変動を抑止することができる。従って、潤滑油膜の厚さの変動を抑制して、回転軸GS及びブッシュFの許容負荷を大きくすることができる。
【0041】
次に、
図7を参照しつつ、導入口106aに高圧の潤滑油を供給する高圧供給路5について説明する。なお、高圧供給路5は、高圧の潤滑油を第一面P1と第二面P2との間にも供給する。なお、第一面P1と第二面P2との間には、コイルスプリング109による第一ブッシュF11及びF21の付勢により微小隙間が形成されるので、この微小隙間が高圧の潤滑油の貯留部として機能する。その結果、開口端5cから導入口106aへと高圧の潤滑油を安定して供給できる。高圧供給路5に高圧の潤滑油を供給するための供給ポート8が、ポンプボディB(ミッドプレートB3)の外面に設けられている。供給ポート8は、吐出室2O内の高圧(圧力PH)の燃料(潤滑油)を排出する吐出ポート9と配管(図示せず)によって接続されている。供給ポート8から円形凸部6の軸方向外側位置に向けて直線的に高圧供給路5の主路5aが形成されている。主路5aは、回転軸GS(回転軸心O)に対して直角に形成されている。
【0042】
主路5aの先端には、高圧供給路5の副路5bが接続されている(
図6も参照)。副路5bは、回転軸GS(回転軸心O)に対して平行に、即ち、第一面P1(及び第二面P2)に対して直角に形成されている。副路5bは円形凸部6を貫通し、上述したように、副路5bの先端に高圧供給路5の出口である開口端5cが形成されている。本実施形態の開口端5cは、上述したように、第一面P1上に平面的にT字状に形成されており、第一ブッシュF11の導入口106a及び第一ブッシュF21の導入口106aの両方と対向している。
【0043】
高圧供給路5を形成するには、ミッドプレートB3の外面上の供給ポート8が設けられる位置から円形凸部6の軸方向外側位置(かつ、軸方向から見て第一収納孔H1と第二収納穴H2との中央)に向けて、大径のドリルを用いて主路5a一部を形成する。次いで、中径及び小径のドリルを順に用いて主路5aを延長する。また、第一面P1から、主路5aの先端に向けて副路5bをドリル加工する。第一面P1上の副路5bの開口(即ち、開口端5c)の形状を切削加工又は放電加工によって上述したT字状に形成する。このような開口端5cの加工も、平面である第一面P1上で行えるので行いやすい。主路5a、副路5b及び開口端5cの形成順序は必ずしも上述した順序でなくてもよい。なお、内径を徐々に狭めて高圧供給路5及びブッシュ内供給路106を形成するのは、小径のドリルで長い供給路を一気に加工するのが困難であるためである。しかし、内径が徐々に狭くなる高圧供給路5によれば、圧力損失を抑止することができる。
【0044】
なお、高圧供給路5は、ポンプボディBの内部のみで開口端5cと吐出室2Oとを連通してもよい。また、高圧供給路5及びブッシュ内供給路106が、吐出室2Oから内周面100に流体(潤滑油・燃料)を導入する流路である。
【0045】
本実施形態に係るギヤ軸受構造によれば、排出溝107は、第一ブッシュF11及びF21の第三面P3側(ギヤGとの摺動接触部の潤滑液膜側/流体の低圧側)の一端で開放されずに閉塞されている。その一方で、排出溝107は、第一ブッシュF11及びF21の第四面P4側(流体の高圧側)の他端で開放されている。また、排出溝107は、第一ブッシュF11及びF21の回転軸GSの方向の長さの半分以上の長さを有している。排出溝107のギヤG側の端部が閉塞されているため、第一ブッシュF11及びF21のギヤG側(第三面P3側)から反対側(第四面P4側)への排出溝107を通した流体の移動が抑止される。従って、排出溝107が、ギヤポンプの効率を低下させることはない。
【0046】
ここで、ギヤGの回転数の上昇に従って流体の高圧側(吐出室2O側)の圧力が上昇しても、排出溝107の高圧側の一端が閉塞されているので、排出溝107を通した流体の高圧側から低圧側への移動が安定して抑止される。従って、安定した吐出量精度で流体を吐出することができる。なお、排出溝107が第一ブッシュF11及びF21の長さの半分以上の長さを有しているので、回転軸GSと内周面100との間の潤滑油を効率よく排出することができ、潤滑摺動面を効果的に冷却できる。排出溝107が第一ブッシュF11及びF21の長さの半分未満の長さであると、第三面P3側の潤滑油が十分に排出されず、潤滑摺動面を効果的に冷却できない。
【0047】
また、本実施形態のギヤ軸受構造によれば、ブッシュFの内周面100に吐出室2Oから流体(燃料・潤滑油)を導入する流路(高圧供給路5及びブッシュ内供給路106)がさらに形成されている。そして、その流路の端部(リセス105)は内周面100上に開口されている。即ち、高圧の流体が流路を介して内周面100に直接供給される。排出溝107は、流路を通して供給された高圧の流体によって形成された潤滑液膜の一部を順次排出する。排出された分の流体は上述した流路を介して補充される。従って、良好な潤滑液膜を安定的に形成させつつ、潤滑液膜を形成する流体を循環させることで潤滑摺動面を確実に冷却することができる。
【0048】
さらに、本実施形態のギヤ軸受構造によれば、上述した流路(ブッシュ内供給路106)の端部(リセス105)が、回転軸GSに対して排出溝107の反対側に配置されている。流路の端部(リセス105)から内周面100に供給された高圧の流体は潤滑摺動面全体に広がった後に反対側の排出溝107から排出される。従って、潤滑摺動面の全体に良好な潤滑液膜が形成されると共に、摺動面全体の熱を受け取った流体を排出溝107から排出することができる。このため、軸受摺動面の冷却が効果的になされ、軸受の温度上昇が抑えられる。また、潤滑油膜の膜厚変動を抑制できるので、回転軸GS及びブッシュFの許容負荷を大きくすることができる。
【0049】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0050】
例えば、上述した実施形態では、吐出室2Oから内周面100に流体を導入する流路(高圧供給路5及びブッシュ内供給路106)を介して、リセス105から内周面100に高圧の潤滑油を供給した。しかし、このような流路やリセス105が形成されなくても、高圧の潤滑油を内周面100に供給することは可能である。上述したように、潤滑油(燃料)は潤滑油膜を介して高圧の場所から低圧の場所へと移動しようとするため、高圧領域HにおけるギヤGの側面と第三面P3との間の潤滑油膜を介して内周面100に高圧の潤滑油を供給することも可能である。そして、このような場合でも、排出溝107の第三面P3側の端部は閉塞されているため、第三面P3とギヤGの側面との間の潤滑油膜を介しての潤滑油(燃料)の高圧側から低圧側への漏れは抑止されている。従って、排出溝107によってギヤポンプの効率が低下することはない。この場合も、第一ブッシュF11及びF21はギヤGの側面に向けて付勢されているので、第三面P3とギヤGの側面との間の潤滑油膜を介しての潤滑油(燃料)の移動は、過剰とならないように制御される。
【符号の説明】
【0051】
P 外接ギヤポンプ
B ポンプボディ
G ギヤ
G1 第一ギヤ(駆動ギヤ)
G2 第二ギヤ(従動ギヤ)
GS(GS1,GS2) 回転軸
F ブッシュ
F11,F21 第一ブッシュ
100 (F11,F21 第一ブッシュの)内周面
105 リセス(吐出室2Oから内周面100に流体を導入する流路の端部)
106 ブッシュ内供給路(吐出室2Oから内周面100に流体を導入する流路)
107 排出溝
2I 吸入室
2O 吐出室
5 高圧供給路(吐出室2Oから内周面100に流体を導入する流路)