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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121018
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20220812BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28D9/02
F28F3/08 301
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018140
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 祐志
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA17
3L103AA27
3L103DD15
3L103DD55
3L103DD57
(57)【要約】
【課題】連通路周縁部での応力集中による伝熱プレートの損傷を防ぎつつ、連通路付近での圧力損失の増大を抑制可能なプレート式熱交換器を提供する。
【解決手段】本発明は、伝熱プレート間に形成される複数の流路空間と伝熱プレートの貫通孔が連なった連通路とを有する熱交換器本体を備え、連通路周縁部において、二つの伝熱プレートの孔周縁部同士が互いに重なる流入阻止部と、二つの伝熱プレートの孔周縁部同士が間隔をあけた流入許容部とが、交互に配置され、流入許容部は、二つの孔周縁部の対向する位置から突出して先端部同士を当接させた二つの凸部により構成される複数の間隔維持部を有し、この流入許容部の隣の流入阻止部は、各間隔維持部の位置と異なる位置に周縁部貫通孔を有し、連通路と周縁部貫通孔と間隔維持部に支持される二つの孔周縁部の間の空間とがそれぞれ連通している、ことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが貫通孔を有し且つ所定方向に重ね合わされる複数の伝熱プレートを有し、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートの互いの当接部同士がろう付けされている熱交換器本体を備え、
前記熱交換器本体は、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートのプレート間のそれぞれに形成され且つ流体が流通可能な複数の流路空間と、各伝熱プレートの前記貫通孔が前記所定方向に連なることで形成される連通路と、を有し、
前記熱交換器本体における前記連通路の周縁部において、
前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートにおける前記貫通孔の孔周縁部同士が互いに重なった状態で前記所定方向と直交する仮想面に沿って広がることで、前記連通路から当該二つの伝熱プレートのプレート間に形成される前記流路空間への前記流体の流入を阻止する流入阻止部と、
前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートの前記孔周縁部同士が前記所定方向に間隔をあけていることで、前記連通路から当該二つの孔周縁部の間の空間を通じて当該二つの伝熱プレートのプレート間に形成される前記流路空間への前記流体の流入を許容する流入許容部とが、
前記所定方向に交互に配置され、
前記流入許容部は、該流入許容部を構成する前記間隔をあけた二つの孔周縁部の該間隔を維持するための複数の間隔維持部であって、前記連通路の周方向に間隔をあけて配置される複数の間隔維持部を有し、
これら複数の間隔維持部のそれぞれは、当該流入許容部を構成する前記間隔をあけた二つの孔周縁部の対向する位置から互いに接近する方向に突出し且つ突出方向の先端部同士を当接させた二つの凸部を有し、
前記複数の間隔維持部を有する流入許容部と前記所定方向に隣り合う前記流入阻止部は、前記所定方向から見て各間隔維持部の配置された位置と異なる位置において当該流入阻止部を構成する前記重なった状態の二つの孔周縁部を前記所定方向に貫通する少なくとも一つの周縁部貫通孔を有し、
前記連通路と前記少なくとも一つの周縁部貫通孔とが連通すると共に、該少なくとも一つの周縁部貫通孔と前記間隔をあけた二つの孔周縁部の間の空間とが連通している、プレート式熱交換器。
【請求項2】
前記熱交換器本体における前記連通路の周縁部において、前記流入阻止部を介して前記所定方向に並ぶ複数の流入許容部における該所定方向の両端に位置する二つの流入許容部のうちの少なくとも一方は、前記複数の間隔維持部を有する、請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記流入阻止部の前記少なくとも一つの周縁部貫通孔は、前記所定方向から見て、前記周方向に隣り合う二つの間隔維持部の間に位置するように、該流入阻止部に配置されている、請求項1又は2に記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記少なくとも一つの周縁部貫通孔を有する流入阻止部は、該流入阻止部を構成する前記孔周縁部の内周縁から外側に所定間隔をあけた位置で前記連通路を囲むシール部を有し、
該シール部は、前記重なった状態の二つの孔周縁部における該シール部と対応する部位同士を液密状態で接続し、
前記少なくとも一つの周縁部貫通孔は、前記二つの孔周縁部の各内周縁と前記シール部との間に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレート式熱交換器。
【請求項5】
前記複数の間隔維持部のそれぞれは、前記所定方向から見て、当該複数の間隔維持部を有する流入許容部を構成する二つの孔周縁部における各内周縁と前記シール部との間に配置されている、請求項4に記載のプレート式熱交換器。
【請求項6】
前記所定方向において、重ね合わされた前記複数の伝熱プレートのうちの両端にある二つの伝熱プレートのそれぞれの外側の面は、前記熱交換器本体の表面に含まれ、
前記複数の伝熱プレートのそれぞれは、同じ厚さを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のプレート式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の伝熱プレートが重ね合わされたプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の伝熱プレートが重ね合わされたプレート式熱交換器が知られている(特許文献1参照)。このプレート式熱交換器は、図7に示されるように、重ね合わされた複数の伝熱プレート101を備える。各伝熱プレート101は、矩形状であり、四隅に貫通孔102を有する。また、各伝熱プレート101の両面には、熱交換効率を向上させるために複数の凸部101a及び複数の凹部101bが形成され、隣り合う伝熱プレート101の凸部101a同士が当接することによって、隣り合う二つの伝熱プレート101のプレート間(以下、単に「プレート間」とも称する。)に流体が流通可能な流路(流路空間)103、104が形成される。これら複数の伝熱プレート101を備えるプレート式熱交換器100において、隣り合う二つの伝熱プレート101の当接部同士は、ろう付けされている。
【0003】
この重ね合わされた複数の伝熱プレート101において、流体が各プレート間に形成された流路103、104を流通することによって、熱交換が行われる。具体的に、重ね合わされた複数の伝熱プレート101では、各プレート間に第一流体が流通可能な第一流路103と、第二流体が流通可能な第二流路104とが、伝熱プレート101の重ね合わせ方向に交互に形成され、第一流体と第二流体とが各流路103、104を流通したときに第一流路103と第二流路104とを隔てる伝熱プレート101を通じて熱交換する。
【0004】
また、プレート式熱交換器100では、図7及び図8に示すように、各伝熱プレート101の貫通孔102が重ね合わせ方向に連なることで、第一流路103のみと連通する第一連通路105と、第二流路104のみに連通する第二連通路106とが形成されている。第一連通路105は、プレート式熱交換器100の外部から第一流体を各第一流路103に流入させ、又は、各第一流路103から第一流体を前記外部に流出させる。また、第二連通路106は、前記外部から第二流体を各第二流路104に流入させ、又は、各第二流路104から第二流体を前記外部に流出させる。
【0005】
以上のように構成されるプレート式熱交換器100では、二流体(第一流体、第二流体)が断続的に流通する場合、内部で圧力変化(圧力の上昇と下降と)が繰り返され、ろう付接合部(隣り合う伝熱プレート101の当接部同士がろう付けされた部位)において応力集中が生じ、特に、各流路103、104に流体を流入させる側の連通路105、106に最も近い凸部101a同士のろう付接合部110での応力集中が顕著になる。その結果、このろう付接合部110において疲労破壊によるプレート貫通割れが生じ、第一流体と第二流体との混合(二液混合)が生じ易くなる。
【0006】
そこで、図9図11に示すように、隣り合う伝熱プレート101において連通路105、106から流路(流路空間)103、104への流体の入り口となる部位、詳しくは、重ね合わせ方向に間隔をあけて対向する伝熱プレート101の孔周縁部107に相手側の孔周縁部107に向けて突出する凸部108をそれぞれ設け、これら二つの凸部108の先端部同士を当接させることによって、対向する孔周縁部107同士を支持させ、これにより、上述の連通路105、106に最も近い凸部101a同士のろう付接合部110での応力集中を抑えることが考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2015-513656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、プレート式熱交換器100の連通路105、106の周縁部において、例えば、第一連通路105から第二流路104への第一流体の流入を阻止する部位(積層された状態の二つの孔周縁部107)では、液密性を確保するために(流体の流入を確実に防ぐために)一定以上の幅βが必要となるため、各伝熱プレート101の伝熱部の面積を変えずに(減らさずに)孔周縁部107に凸部108が形成される部位を確保すると、図8に示す凸部108のない構成に比べて連通路105の径(流路断面積)が小さくなる(図9参照)。
【0009】
これにより、伝熱プレート101の孔周縁部107に凸部108を設けたプレート式熱交換器では、流通抵抗が増加、即ち、圧力損失が大きくなる。
【0010】
そこで、本発明は、連通路周縁部での応力集中に起因する伝熱プレートの損傷を防ぎつつ、連通路付近での圧力損失の増大を抑えることができるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプレート式熱交換器は、
それぞれが貫通孔を有し且つ所定方向に重ね合わされる複数の伝熱プレートを有し、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートの互いの当接部同士がろう付けされている熱交換器本体を備え、
前記熱交換器本体は、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートのプレート間のそれぞれに形成され且つ流体が流通可能な複数の流路空間と、各伝熱プレートの前記貫通孔が前記所定方向に連なることで形成される連通路と、を有し、
前記熱交換器本体における前記連通路の周縁部において、
前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートにおける前記貫通孔の孔周縁部同士が互いに重なった状態で前記所定方向と直交する仮想面に沿って広がることで、前記連通路から当該二つの伝熱プレートのプレート間に形成される前記流路空間への前記流体の流入を阻止する流入阻止部と、
前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートの前記孔周縁部同士が前記所定方向に間隔をあけていることで、前記連通路から当該二つの孔周縁部の間の空間を通じて当該二つの伝熱プレートのプレート間に形成される前記流路空間への前記流体の流入を許容する流入許容部とが、
前記所定方向に交互に配置され、
前記流入許容部は、該流入許容部を構成する前記間隔をあけた二つの孔周縁部の該間隔を維持するための複数の間隔維持部であって、前記連通路の周方向に間隔をあけて配置される複数の間隔維持部を有し、
これら複数の間隔維持部のそれぞれは、当該流入許容部を構成する前記間隔をあけた二つの孔周縁部の対向する位置から互いに接近する方向に突出し且つ突出方向の先端部同士を当接させた二つの凸部を有し、
前記複数の間隔維持部を有する流入許容部と前記所定方向に隣り合う前記流入阻止部は、前記所定方向から見て各間隔維持部の配置された位置と異なる位置において当該流入阻止部を構成する前記重なった状態の二つの孔周縁部を前記所定方向に貫通する少なくとも一つの周縁部貫通孔を有し、
前記連通路と前記少なくとも一つの周縁部貫通孔とが連通すると共に、該少なくとも一つの周縁部貫通孔と前記間隔をあけた二つの孔周縁部の間の空間とが連通している。
【0012】
かかる構成によれば、間隔をあけて対向する孔周縁部を間隔維持部によって支持することで連通路内での圧力変化等によってろう付けされた部位等で発生する応力を抑え、これにより、連通路の周縁部での応力集中に起因する伝熱プレートの損傷を防ぎつつ、流入阻止部に周縁部貫通孔を設け、外部から供給された流体がプレート間の流路空間に流れ込むまでの該流体が流れる領域(連通路及び周縁部貫通孔)の流路断面積を確保することで該領域での流通抵抗を抑え、これにより、連通路付近での圧力損失も抑えることができる。
【0013】
前記プレート式熱交換器では、
前記熱交換器本体における前記連通路の周縁部において、前記流入阻止部を介して前記所定方向に並ぶ複数の流入許容部における該所定方向の両端に位置する二つの流入許容部のうちの少なくとも一方は、前記複数の間隔維持部を有してもよい。
【0014】
重ね合わされた複数の伝熱プレートを備えるプレート式熱交換器では、流体が流通したときに、重ね合わせ方向の最も外側(端)の伝熱プレートが圧力の影響を受け易い。このため、上記構成のように、所定方向に並ぶ複数の流入許容部における該所定方向の端の流入許容部が複数の間隔維持部を有することで、連通路の周辺部での応力集中に起因する伝熱プレートの損傷が効果的に防がれる。
【0015】
また、前記プレート式熱交換器では、
前記流入阻止部の前記少なくとも一つの周縁部貫通孔は、前記所定方向から見て、前記周方向に隣り合う二つの間隔維持部の間に位置するように、該流入阻止部に配置されてもよい。
【0016】
このように、周縁部貫通孔が周方向に隣り合う二つの間隔維持部の間に位置することで、流入阻止部を構成する二つの孔周縁部における連通路から離れる方向の寸法が該方向に間隔維持部と周縁部貫通孔とが並ぶ場合等より抑えられ、これにより、連通路を広げて(流路断面積を大きくして)連通路付近での圧力損失を抑えることができる。
【0017】
また、前記プレート式熱交換器では、
前記少なくとも一つの周縁部貫通孔を有する流入阻止部は、該流入阻止部を構成する前記孔周縁部の内周縁から外側に所定間隔をあけた位置で前記連通路を囲むシール部を有し、
該シール部は、前記重なった状態の二つの孔周縁部における該シール部と対応する部位同士を液密状態で接続し、
前記少なくとも一つの周縁部貫通孔は、前記二つの孔周縁部の各内周縁と前記シール部との間に配置されてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、周縁部貫通孔を通過する流体の該周縁部貫通孔を有する流入阻止部を通じた流路空間(該流入阻止部を構成する二つの伝熱プレートのプレート間の流路空間)への流入が確実に防がれる。
【0019】
この場合、
前記複数の間隔維持部のそれぞれは、前記所定方向から見て、当該複数の間隔維持部を有する流入許容部を構成する二つの孔周縁部における各内周縁と前記シール部との間に配置されていることが好ましい。
【0020】
このように、間隔維持部が流入許容部を構成する二つの孔周縁部においてシール部より連通路側に配置されることで、連通路内の圧力変化等によって該間隔維持部およびその付近に応力が生じ易くなるが、該部位が損傷したとしてもシール部より連通路側であるため、流入阻止部を通じた流路空間(該流入阻止部を構成する二つの伝熱プレートのプレート間の流路空間)への流体の流入が防がれる。
【0021】
また、前記プレート式熱交換器では、
前記所定方向において、重ね合わされた前記複数の伝熱プレートのうちの両端にある二つの伝熱プレートのそれぞれの外側の面は、前記熱交換器本体の表面に含まれ、
前記複数の伝熱プレートのそれぞれは、同じ厚さを有してもよい。
【0022】
このように、流路空間を形成する伝熱プレートが熱交換器本体の表面を構成する、即ち、熱交換器本体において伝熱プレートの外側に厚板状の補強部材等を配置しない領域を有する構成とすることで、温度変化による伝熱プレートの伸縮を吸収でき、これにより、温度変化に起因する伝熱プレートの損傷を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上より、本発明によれば、連通路周縁部での応力集中に起因する伝熱プレートの損傷を防ぎつつ、連通路付近での圧力損失の増大を抑えることができるプレート式熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施形態に係るプレート式熱交換器の斜視図である。
図2図2は、前記プレート式熱交換器の分解斜視図である。
図3図3は、前記プレート式熱交換器が備える熱交換器本体の連通路周縁部を伝熱プレートの積層方向から見た拡大図である。
図4図4は、図3のIV-IV線位置における切断面の端面図である。
図5図5は、図3のV-V線位置における切断面の端面図である。
図6図6は、他実施形態における連通路周縁部を伝熱プレートの積層方向から見た拡大図である。
図7図7は、従来のプレート式熱交換器の連通路位置における横断面図である。
図8図8は、前記従来のプレート式熱交換器の連通路周縁部を伝熱プレートの積層方向から見た拡大図である。
図9図9は、従来の他のプレート式熱交換器の連通路周縁部を伝熱プレートの積層方向から見た拡大図である。
図10図10は、図9のX-X線位置における切断面の端面図である。
図11図11は、図9のXI-XI線位置における切断面の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、図1図5を参照しつつ説明する。
【0026】
本実施形態に係るプレート式熱交換器(以下、単に「熱交換器」とも称する。)は、図1及び図2に示すように、複数の伝熱プレート3を有する熱交換器本体2と、流体A、Bを熱交換器本体2に流入させ又は熱交換器本体2から流出させる筒状のノズル5と、を備える。この熱交換器1は、複数(本実施形態の例では、四つ)のノズル5を備える。
【0027】
詳しくは、熱交換器本体2は、所定方向に重ね合わされた複数の伝熱プレート3と、複数の伝熱プレート3全体を前記所定方向の両外側から挟み込む複数の補強プレート4A、4Bと、を有する。本実施形態の熱交換器本体2では、重ね合わされた複数の伝熱プレート3において隣り合う二つの伝熱プレート3の互いの当接部同士がろう付け(ブレージング)されている。この熱交換器本体2では、重ね合わされた複数の伝熱プレート3のうちの隣り合う二つの伝熱プレート3のプレート間のそれぞれに、流体A、Bの流通可能な流路Rが形成されている。即ち、熱交換器本体2は、流体A、Bの流通可能な複数の流路Rを有する。
【0028】
本実施形態の熱交換器本体2は、三つ以上の矩形状の伝熱プレート3を備え、これら三つ以上の伝熱プレート3は、二種類の伝熱プレート3a、3bを含む。熱交換器本体2では、これら二種類の伝熱プレート3a、3bが交互に重ね合わされている。以下の説明では、伝熱プレート3が重ね合わされる方向(所定方向)を直交座標系のX軸方向とし、伝熱プレート3の短辺方向を直交座標系のY軸方向とし、伝熱プレート3の長辺方向を直交座標系のZ軸方向とする。
【0029】
複数の伝熱プレート3のそれぞれは、X軸方向と直交する方向に広がり且つX軸方向に厚みを有する板状の伝熱部31と、伝熱部31の外周縁の全域から該伝熱部31と面交差する方向に延出する環状の嵌合部32と、を備える。伝熱プレート3は、例えば、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属プレート(薄板)がプレス成型されることによって形成されている。
【0030】
伝熱部31は、X軸方向から見てZ軸方向に長尺な矩形状であり、両面のそれぞれに配置される複数の凹部35及び複数の凸部36と、複数の貫通孔311と、を有する。本実施形態の伝熱部31は、四つの貫通孔311を有する(図2参照)。これら四つの貫通孔311は、それぞれ円形の孔であり、伝熱部31の四隅に配置されている。
【0031】
以上のように構成される複数の伝熱プレート3のそれぞれは、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3のうちの一方の伝熱プレート3a、3bの嵌合部32が、他方の伝熱プレート3b、3aの嵌合部32に外嵌されるようにX軸方向に重ね合わされることで、熱交換器本体2を構成している。このとき、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3a、3bの各伝熱部31の対向する面に形成されている凸部36同士がそれぞれ当接することにより、該二つの伝熱プレート3a、3bのプレート間に流体A、Bの流通可能な流路(流路空間)Rが形成される(図4及び図5参照)。
【0032】
この熱交換器本体2では、外嵌された嵌合部32同士、及び、伝熱部31における互いの当接部(凸部36等)同士が、例えば、銅ろう等のろう材によってろう付けされており、隣り合う二つの伝熱プレート3のプレート間は、貫通孔311を除いて密封されている。
【0033】
これにより、熱交換器本体2では、第一流体AをZ軸方向に流通させる流路R(第一流路Ra)が、隣り合う二つの伝熱プレート3b、3aのプレート間に形成され、第二流体BをZ軸方向に流通させる流路R(第二流路Rb)が、隣り合う二つの伝熱プレート3a、3bのプレート間に形成される。また、熱交換器本体2において、各貫通孔311がX軸方向に連なることで連通路Pを形成する。具体的に、熱交換器本体2では、対応する(X軸方向から見て重なる位置の)貫通孔311がX軸方向に連なることで、それぞれがX軸方向に延びる第一流入路(連通路)Pa1、第一流出路(連通路)Pa2、第二流入路(連通路)Pb1、及び第二流出路(連通路)Pb2が形成されている。
【0034】
第一流入路Pa1は、熱交換器本体2の各流路Ra、Rbのうちの第一流路Raのみと連通し、熱交換器本体2の外部から供給された第一流体Aを各第一流路Raに案内する。また、第一流出路Pa2は、熱交換器本体2の各流路Ra、Rbのうちの第一流路Raのみと連通し、各第一流路Raを流れた第一流体Aを熱交換器本体2の外部に案内する。また、第二流入路Pb1は、熱交換器本体2の各流路Ra、Rbのうちの第二流路Rbのみと連通し、熱交換器本体2の外部から供給された第二流体Bを各第二流路Rbに案内する。また、第二流出路Pb2は、熱交換器本体2の各流路Ra、Rbのうちの第二流路Rbのみと連通し、各第二流路Rbを流れた第二流体Bを熱交換器本体2の外部に案内する。
【0035】
複数の補強プレートは、複数の伝熱プレート3に対してX軸方向の一方側から重ね合わされる第一補強プレート4Aと、複数の伝熱プレート3に対してX軸方向の他方側から重ね合わされる第二補強プレート4Bと、を含む。即ち、熱交換器本体2は、複数の伝熱プレート3をX軸方向の外側から挟み込む少なくとも一対の補強プレート4A、4Bを備える。
【0036】
本実施形態の熱交換器本体2では、複数の伝熱プレート3におけるX軸方向の一方側においてZ軸方向に間隔をあけて二つの第一補強プレート4Aが配置され、複数の伝熱プレート3におけるX軸方向の他方側においてZ軸方向に間隔をあけて二つの第二補強プレート4Bが配置されている。即ち、本実施形態の熱交換器本体2は、二対の補強プレート4A、4Bを有する。
【0037】
これら二つの第一補強プレート4Aのそれぞれは、伝熱プレート3の各貫通孔311と対応する位置(具体的には、X軸方向から見て重なる位置)に貫通孔41Aを有する。
【0038】
複数のノズル5は、熱交換器本体2の各連通路(第一流入路Pa1、第一流出路Pa2、第二流入路Pb1、第二流出路Pb2)と対応する位置に配置される。本実施形態の熱交換器では、四つのノズルが、二つの第一補強プレート4Aにおける各貫通孔41Aと対応する位置からX軸方向の一方側に延びている。各ノズル5は、X軸方向に延びる中空部Sを囲む筒状であり、該中空部Sは、対応する連通路P(具体的には、第一流入路Pa1、第一流出路Pa2、第二流入路Pb1、第二流出路Pb2)と連通する。
【0039】
以上のように構成される熱交換器1(熱交換器本体2)の連通路Pの周縁部(連通路周縁部)6では、図3図5に示すように、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3の各孔周縁部310(貫通孔311の周縁部)によって構成される流出入許容部7と流出入阻止部8とがX軸方向に交互に配置されている。即ち、連通路周縁部6は、複数の流出入許容部7と、複数の流出入阻止部8と、を有している。
【0040】
本実施形態の熱交換器1(熱交換器本体2)では、流出入許容部7の一部を構成する部材(部位)と、該流出入許容部7と隣り合う流出入阻止部8の一部を構成する部材(部位)とが、共通の部材(部位)によって構成されている。
【0041】
具体的には、流出入許容部7を構成する二つの伝熱プレート3(孔周縁部310)のうちの流出入阻止部8側の伝熱プレート3(孔周縁部310)が、流出入阻止部8を構成する二つの伝熱プレート3(孔周縁部310)のうちの流出入許容部7側の伝熱プレート3(孔周縁部310)である。
【0042】
より具体的には、連通路周縁部6において、X軸方向に隣り合う二つの流出入許容部7A、7Bのうちの一方の流出入許容部7Aを構成する二つの孔周縁部310のうちの他方の流出入許容部7B側の孔周縁部310と、前記二つの流出入許容部7A、7Bのうちの他方の流出入許容部7Bを構成する二つの孔周縁部310のうちの一方の流出入許容部7A側の孔周縁部310とが重なることによって、これら二つの流出入許容部7A、7Bの間の流出入阻止部8が構成されている。また、連通路周縁部6において、X軸方向に隣り合う二つの流出入阻止部8A、8Bのうちの一方の流出入阻止部8Aを構成する二つの孔周縁部310のうちの他方の流出入阻止部8B側の孔周縁部310と、前記二つの流出入阻止部8A、8Bのうちの他方の流出入阻止部8Bを構成する二つの孔周縁部310のうちの一方の流出入阻止部8A側の孔周縁部310とが間隔をあけて対向することによって、これら二つの流出入阻止部8A、8Bの間の流出入許容部7が構成されている。即ち、本実施形態の連通路周縁部6において、流出入許容部7と流出入阻止部8とが隣り合うとは、相手側の孔周縁部310(伝熱プレート3)を共有した状態で隣り合っていることをいう。
【0043】
また、本実施形態の熱交換器1における四つの連通路P(第一流入路Pa1、第一流出路Pa2、第二流入路Pb1、第二流出路Pb2)の各連通路周縁部6は、同じ構成である。このため、以下では、第一流入路Pa1の周縁部6の構成を示す図3図5を参照しつつ、各連通路周縁部6の構成について説明する。
【0044】
複数の流出入許容部7のそれぞれは、連通路周縁部6において、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3の孔周縁部310同士がX軸方向に間隔をあけている部位である。これら複数の流出入許容部7のそれぞれは、該流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310の間の空間S1を通じて、連通路P(図3図5に示す例では、第一流入路Pa1)から、該孔周縁部310を含む二つの伝熱プレート3のプレート間に形成される流路R(流路空間:図3図5に示す例では、第一流路Ra)への流体(図3図5に示す例では、第一流体A)の流入を許容する、又は、該流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310の間の空間S1を通じて、該孔周縁部310を含む二つの伝熱プレート3のプレート間に形成される流路Rから連通路Pへの流体A、Bの流出を許容する。
【0045】
各流出入許容部7は、該流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310の間隔を維持するための複数の間隔維持部71を有する。これら複数の間隔維持部71は、流出入許容部7において連通路Pの周方向(以下、単に「周方向」と称する。)に間隔をあけて配置されている。本実施形態の複数の間隔維持部71は、周方向に等間隔に配置されており、これら複数の間隔維持部71のそれぞれは、同じ形状を有する。また、連通路周縁部6において流出入阻止部8を介してX軸方向に並ぶ複数の流出入許容部7は、複数の間隔維持部71を周方向の同じ位置にそれぞれ有している。
【0046】
これら複数の間隔維持部71のそれぞれは、流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310の対向する位置から互いに接近する方向に突出し且つ突出方向の先端部同士を当接させた二つの凸部72を有する。各凸部72は、板状の孔周縁部310の一部によってそれぞれ構成されている。本実施形態の各凸部72は、プレス成型によってそれぞれ形成されている。
【0047】
また、各凸部72は、孔周縁部310の内周縁310aを含む位置に形成されている。即ち、各間隔維持部71も、孔周縁部310の内周縁310aを含む位置に形成されている。これら間隔維持部71では、二つの凸部72の先端部同士が接続されており、本実施形態の間隔維持部71では、二つの凸部72の先端部同士は、ろう付けされている。
【0048】
また、流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310のそれぞれは、周方向に間隔をあけて配置される複数の凸部72のうちの隣り合う二つの凸部72間に、X軸方向に貫通する貫通孔83を有する。本実施形態の流出入許容部7を構成する孔周縁部310は、周方向に隣り合う凸部72の間のそれぞれに貫通孔83を有する。即ち、該孔周縁部310は、複数の貫通孔83を有する。この貫通孔83は、後述する流出入阻止部8の周縁部貫通孔82の一部を構成する。
【0049】
複数の流出入阻止部8のそれぞれは、連通路周縁部6において、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3の孔周縁部310同士が互いに重なった状態でX軸方向と直交する仮想面(Y軸方向とZ軸方向とを含む面)Kに沿って広がる部位である。これら複数の流出入阻止部8のそれぞれは、連通路P(図3図5に示す例では、第一流入路Pa1)から該流出入阻止部8を構成する孔周縁部310を含む二つの伝熱プレート3のプレート間に形成される流路R(流路空間:図3図5に示す例では、第二流路Rb)への流体(図3図5に示す例では、第一流体A)の流入を阻止する、又は、該流出入阻止部8を構成する孔周縁部310を含む二つの伝熱プレート3のプレート間に形成される流路Rから連通路Pへの流体A、Bの流出を阻止する。
【0050】
各流出入阻止部8は、該流出入阻止部8を構成する孔周縁部310の内周縁310aから外側に所定間隔αをあけた位置で連通路Pを囲むシール部81を有する。このシール部81では、重なった状態の二つの孔周縁部310における該シール部81と対応する部位同士が液密状態で接続されている。本実施形態のシール部81では、周方向の各位置の幅(連通路Pの径方向の寸法)が一定又は略一定であり、重なった状態の孔周縁部310がろう付けによって接続されている。また、シール部81は、X軸方向から見て、各間隔維持部71より外側(連通路Pの径方向外側)に配置されている。
【0051】
ここで、本実施形態の連通路周縁部6では、X軸方向に隣り合う二つの流出入許容部7によって流出入阻止部8が構成されているため、流出入阻止部8を構成する孔周縁部310同士を液密状態で接続しているシール部81は、前記二つの流出入許容部7における相手側の孔周縁部310同士を液密状態で接続していることになる。
【0052】
この流出入阻止部8は、X軸方向から見て流出入許容部7の各間隔維持部71の配置された位置と異なる位置において当該流出入阻止部8(詳しくは、該流出入阻止部8を構成する二つの孔周縁部310)をX軸方向に貫通する少なくとも一つの周縁部貫通孔82を有する。この少なくとも一つの周縁部貫通孔82は、X軸方向から見て隣り合う間隔維持部71(凸部72)の間に配置されている。また、少なくとも一つの周縁部貫通孔82は、流出入阻止部8において、該流出入阻止部8を構成する二つの孔周縁部310の各内周縁310aとシール部81との間に配置されている。
【0053】
具体的に、周縁部貫通孔82は、流出入阻止部8において、隣り合う二つの間隔維持部71と孔周縁部310の内周縁310aとシール部81とに囲まれた領域に配置されており、X軸方向から見て、これら間隔維持部71と内周縁310aとシール部81とに沿った形状(図3に示す例では、環状扇形)である。
【0054】
本実施形態の流出入阻止部8は、X軸方向から見て隣り合う間隔維持部71(凸部72)の間のそれぞれに周縁部貫通孔82を有する。即ち、流出入阻止部8は、複数の周縁部貫通孔82を有する。そして、これら複数の周縁部貫通孔82のそれぞれは、流出入阻止部8において、該流出入阻止部8を構成する二つの孔周縁部310の各内周縁310aとシール部81との間に配置されている。
【0055】
ここで、本実施形態の連通路周縁部6では、X軸方向に隣り合う二つの流出入許容部7によって流出入阻止部8が構成されているため、該流出入阻止部8の複数の周縁部貫通孔82のそれぞれは、前記二つの流出入許容部7のうちの一方の流出入許容部7の孔周縁部310の貫通孔83と、他方の流出入許容部7の孔周縁部310の貫通孔83と、によって構成されている。
【0056】
また、本実施形態の連通路周縁部6では、X軸方向に隣り合う二つの流出入許容部7によって流出入阻止部8が構成されているため、各流出入許容部7の間隔維持部71を構成する凸部72が流出入阻止部8にも形成されていることになる。詳しくは、流出入阻止部8を構成する二つの孔周縁部310のそれぞれは、周方向の同じ位置において互いに離間する方向に突出する凸部72を有し、これら二つの凸部72は、該凸部72を有する流出入阻止部7と隣り合う流出入阻止部7の対向する位置から突出する凸部72と先端同士を当接させている。
【0057】
以上の熱交換器1によれば、間隔をあけて対向する孔周縁部310を間隔維持部71によって支持することで連通路P内での圧力変化等によるろう付けされた部位等での応力の発生が抑えられ、これにより、連通路周縁部6での応力集中に起因する伝熱プレート3の損傷が防がれる。さらに、流出入阻止部8に周縁部貫通孔82が設けられ、外部から供給された流体A、Bがプレート間の流路(流路空間)Rに流れ込むまでの該流体A、Bが流れる領域(連通路P及び周縁部貫通孔82)の流路断面積が確保されることで該領域での流通抵抗が抑えられる。即ち、外部から供給された流体A、Bがプレート間の流路Rに流れ込む際に、連通路Pから流れ込むだけではなく、周縁部貫通孔82を通じても流れ込むことができ、これにより、流路断面積が確保されて流通抵抗が抑えられる。その結果、連通路P付近での圧力損失も抑えられる。
【0058】
また、本実施形態の熱交換器1では、流出入阻止部8の各周縁部貫通孔82は、周方向に隣り合う二つの間隔維持部71の間にそれぞれ位置するように、該流出入阻止部8に配置されている。このように、周縁部貫通孔82が周方向に隣り合う二つの間隔維持部71の間に位置することで、流出入阻止部8を構成する二つの孔周縁部310における連通路Pから離れる方向の寸法が該方向に間隔維持部71と周縁部貫通孔82とが並ぶ場合等より抑えられる。これにより、連通路Pを広げて(流路断面積を大きくして)連通路P付近での圧力損失を抑えることができる。又は、各伝熱プレート3の伝熱部31における凹部35及び凸部36の配置される領域を広げて熱交換器1の熱交換効率を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態の熱交換器1では、複数の周縁部貫通孔82を有する流出入阻止部8が、該流出入阻止部8を構成する孔周縁部310の各内周縁310aから外側に間隔(所定間隔)αをあけた位置で連通路Pを囲むシール部81を有する。このシール部81は、重なった状態の二つの孔周縁部310における該シール部81と対応する部位同士を液密状態で接続している。そして、複数の周縁部貫通孔82のそれぞれは、二つの孔周縁部310の各内周縁310aとシール部81との間に配置されている。このため、周縁部貫通孔82を通過する流体A、Bの該周縁部貫通孔82を有する流出入阻止部8を通じた流路R(該流出入阻止部8を構成する二つの伝熱プレート3のプレート間の流路空間)への流入が確実に防がれる。即ち、周縁部貫通孔82の周縁部から流出入阻止部8を構成する二つの孔周縁部310間に流体A、Bが浸入しても、シール部81によって流路R側への浸入が確実に防がれる。
【0060】
しかも、本実施形態の熱交換器1では、複数の間隔維持部71のそれぞれが、X軸方向から見て、当該複数の間隔維持部71を有する流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310における各内周縁310aとシール部81との間に配置されている。このように、間隔維持部71が流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310においてシール部81より内側(連通路P側)に配置されることで、連通路P内の圧力変化等の影響を受けやすくなる、即ち、前記圧力変化等によって該間隔維持部71およびその付近に応力が生じ易くなるが、該部位が損傷したとしてもシール部81より内側であるため、流出入阻止部8を通じた流路R(該流出入阻止部8を構成する二つの伝熱プレート3のプレート間の流路空間)への流体A、Bの流入が防がれる。
【0061】
また、この場合、連通路周縁部6における流路側の部位(図3における右側の部位)において、周縁部貫通孔82を通過した流体A、Bが流路Rに流れ込む方向(流通経路上)に間隔維持部71が配置されていないため、流体A、Bの流れが間隔維持部71の影響を受けない若しくは受け難い。これによっても、熱交換器1の連通路P付近での圧力損失が抑えられる。
【0062】
また、本実施形態の熱交換器本体2では、X軸方向において、重ね合わされた複数の伝熱プレート3のうちの両端にある二つの伝熱プレート3のそれぞれの外側の面は、熱交換器本体2の表面に含まれている。より詳しくは、前記両端の伝熱プレート3の各外側の面において、Z軸方向に間隔をあけて配置される二つの第一補強プレート4A間、又は二つの第二補強プレート4B間の領域は、熱交換器本体2の表面に含まれている。このように、流路Rを形成する伝熱プレート3が熱交換器本体2の表面を構成する、即ち、熱交換器本体2において伝熱プレート3の外側に厚板状の補強部材等を配置しない領域を有する構成とすることで、温度変化による伝熱プレート3の伸縮を吸収でき、これにより、温度変化に起因する伝熱プレート3の割れ等の損傷を防ぐことができる。詳しくは、以下の通りである。
【0063】
熱交換器1が内部を流れる流体A、Bによって加熱されると伝熱プレート3等の熱交換器1を構成する各部材が延び、前記流体によって冷却されると前記各部材が縮もうとする。このとき、補強プレート(伝熱プレート3より厚い板状の部材)がX軸方向の両側に配置されている(詳しくは、X軸方向の端の伝熱プレート3の表面に取り付けられている)と、板厚の差により、補強プレートは、伝熱プレート3より温度上昇(又は下降)し難いため延び(又は縮み)が遅く、これにより、補強プレートより温度上昇(又は下降)の早い伝熱プレート3が延びよう(又は縮もう)としても補強プレートによって拘束されているため前記延び(又は縮み)が抑えられて応力が発生し、伝熱プレート3に割れ等が生じる。しかし、熱交換器1のX軸方向の両側に補強プレートがなければ、X軸方向の端に配置された伝熱プレート3が延びよう(又は縮もう)としたときに前記拘束がないため延びる(又は縮む)ことができ、これにより、伝熱プレート3における応力の発生が抑えられ、その結果、温度変化に起因する割れ等の損傷が防がれる。
【0064】
尚、本発明のプレート式熱交換器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0065】
上記実施形態の熱交換器1では、複数の連通路周縁部6のそれぞれが同じ構成であるが、この構成に限定されない。複数の連通路周縁部6のうちの少なくとも一つの連通路周縁部6が上記実施形態と同様の構成、即ち、流出入許容部(流入許容部)7が間隔維持部71を有し、且つ、流出入阻止部(流入阻止部)8が周縁部貫通孔82を有する構成であればよい。尚、複数の連通路周縁部6において、少なくとも、第一流体A及び第二流体Bが熱交換器1の内部を流通するときに連通路Pから各流路R(各第一流路Ra又は各第二流路Rb)に流れ込む側の連通路周縁部6が、上記実施形態と同様の構成であることが好ましい。
【0066】
流出入阻止部8が有する周縁部貫通孔82の具体的な数、形状、配置は限定されない。
【0067】
例えば、上記実施形態の連通路周縁部6の流出入阻止部8では、周縁部貫通孔82は、周方向に間隔をあけて配置される複数の間隔維持部71の各間隔維持部71間にそれぞれ配置されているが、この構成に限定されない。周縁部貫通孔82は、複数の間隔維持部71間のうちの一部の間隔維持部71間に配置されていてもよい。この場合、一又は複数の周縁部貫通孔82は、円周状に延びる流出入阻止部8における連通路Pから伝熱プレート3の中央部(伝熱プレート3の伝熱部31において熱交換が主に行われる領域)に向かう側に配置されることが好ましい。これにより、連通路周縁部6における圧損が好適に抑えられる。
【0068】
また、共通の流出入阻止部8に配置される複数の周縁部貫通孔82は、それぞれ同じ形状であるが、異なる形状の周縁部貫通孔82を含んでいてもよい。
【0069】
また、上記実施形態の周縁部貫通孔82は、X軸方向から見て、間隔維持部71と内周縁310aとシール部81とに沿った形状(図3に示す例では、環状扇形)であるが、この形状に限定されない。例えば、周縁部貫通孔82は、図6に示すような円形等であってもよい。即ち、周縁部貫通孔82の数、形状、大きさ等は、熱交換器1において熱交換される流体の種類や運転条件等によって異なる。
【0070】
また、上記実施形態の熱交換器1の連通路周縁部6では、複数の流出入許容部7のそれぞれが複数の間隔維持部71を有し、複数の流出入阻止部8のそれぞれが複数の周縁部貫通孔82を有しているが、この構成に限定されない。複数の流出入許容部7のうちの一部の流出入許容部7が複数の間隔維持部71を有する構成でもよい。また、複数の流出入阻止部8のうちの一部の流出入阻止部8が少なくとも一つの周縁部貫通孔82を有する構成でもよい。
【0071】
また、上記実施形態の連通路周縁部6の各流出入許容部7では、複数の間隔維持部71の形状(即ち、間隔維持部71を構成する各凸部72の形状)は、それぞれ同じであるが、異なる形状の間隔維持部71(凸部72)を含んでいてもよい。
【0072】
また、重ね合わされた複数の伝熱プレート3を備える熱交換器1では、流体A、Bが流通したときに、重ね合わせ方向(X軸方向)の最も外側(端)の伝熱プレート3が圧力の影響を受け易い。このため、連通路周縁部6において、流出入阻止部8を介してX軸方向に並ぶ複数の流出入許容部7における該X軸方向の両端に位置する二つの流出入許容部7のうちの少なくとも一方が複数の間隔維持部71を有していれば、連通路Pの周辺部での応力集中に起因する伝熱プレート3の損傷が効果的に防がれる。この場合、周縁部貫通孔82は、少なくとも間隔維持部71を有する流出入許容部7と隣り合う流出入阻止部8に配置されていればよい。即ち、連通路周縁部6において複数の流出入許容部7のうちの一部の流出入許容部7だけが間隔維持部71を有する構成では、複数の流出入阻止部8のうちの少なくとも前記流出入許容部(間隔維持部71を有する流出入許容部)7と隣り合う流出入阻止部8が、周縁部貫通孔82を有していればよい。この場合、間隔維持部71を有していない流出入許容部7を構成する孔周縁部310は、間隔維持部71がない分、内径を大きくする(該部位の連通路Pの内径を大きくする)ことで圧損が抑えられる。
【0073】
また、上記実施形態の熱交換器本体2では、伝熱部31の凹部35及び凸部36の配置パターンの異なる二種類の伝熱プレート3が重ね合わされているが、この構成に限定されない。熱交換器本体2では、伝熱部31に配置された凹部35及び凸部36の配置パターンの異なる三種類以上の伝熱プレート3が重ね合わされる構成でもよい。また、熱交換器本体2において一種類の伝熱プレート3が重ね合わされる構成でもよい。
【0074】
また、上記実施形態の熱交換器本体2は、複数の伝熱プレート3と、補強プレート4A、4Bとを有しているが、補強プレート4A、4Bを有していなくてもよい。即ち、熱交換器本体2は、伝熱プレートのみで構成されていてもよい。この場合、各ノズル5は、X軸方向の最も外側の伝熱プレート3の貫通孔311と該ノズル5の中空部Sとが連通するように前記最も外側の伝熱プレート3の各孔周縁部310にそれぞれ接続される。
【0075】
また、上記実施形態の熱交換器本体2のX軸方向の一方の端部に、二つの第一補強プレート4AがZ軸方向に間隔をあけて配置され、熱交換器本体2のX軸方向の他方の端部に、二つの第二補強プレート4BがZ軸方向に間隔をあけて配置されているが、この構成に限定されない。熱交換器本体2のX軸方向の各端部に、伝熱プレート3の伝熱部31全体を覆う一つの補強プレートがそれぞれ配置された構成でもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…プレート式熱交換器、2…熱交換器本体、3、3a、3b…伝熱プレート、31…伝熱部、310…孔周縁部、310a…内周縁、311…貫通孔、32…嵌合部、35…凹部、36…凸部、4A…第一補強プレート(補強プレート)、41A…貫通孔、4B…第二補強プレート(補強プレート)、5…ノズル、6…連通路周縁部(連通路の周縁部)、7、7A、7B…流出入許容部(流入許容部)、71…間隔維持部、72…凸部、8、8A、8B…流出入阻止部(流入阻止部)、81…シール部、82…周縁部貫通孔、83…貫通孔、100…プレート式熱交換器、101…伝熱プレート、101a…凸部、101b…凹部、102…貫通孔、103…第一流路、104…第二流路、105…第一連通路、106…第二連通路、107…孔周縁部、108…凸部、110…ろう付接合部、A…第一流体(流体)、B…第二流体(流体)、K…仮想面、P…連通路、Pa1…第一流入路(連通路)、Pa2…第一流出路(連通路)、Pb1…第二流入路(連通路)、Pb2…第二流出路(連通路)、R…流路(流路空間)、Ra…第一流路(流路空間)、Rb…第二流路(流路空間)、S…中空部、S1…空間、α…所定間隔、β…幅
図1
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