(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012102
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】薄板の取り出し方法及び取り出し装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/08 20060101AFI20220107BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B65H3/08 310A
B65H3/48 320A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113656
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000139687
【氏名又は名称】株式会社安永
(74)【代理人】
【識別番号】100106378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼口 淳
(72)【発明者】
【氏名】久保 和哉
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA13
3F343FB19
3F343FC01
3F343FC29
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC02
3F343GD04
3F343JB02
3F343JD04
3F343JD28
3F343JD40
3F343KB04
3F343KB17
3F343MB14
3F343MC08
(57)【要約】
【課題】積層された状態の薄板から一番上の薄板を順次一枚ずつ取り出して次の作業エリアまで迅速かつ確実に移送する。
【解決手段】薄板収容マガジン10に収容された薄板積層体100の取り出すべき一番上の薄板とその下側の薄板の重なり部分の側方所定位置に取り出すべき薄板100の少なくとも対向する両側から気体を吹き付け、薄板収容マガジンの上方から吸着パットを取り出すべき薄板の両面に対して所定位置まで下降させ、ローダー50の吸着パット40に吸着された1枚の薄板を薄板収容マガジンから取り出し、所定位置まで移送させ、取り出された薄板の下側の薄板をその前に取り出された薄板の積層位置まで上昇させることで、薄板をこの時点で積層された薄板の一番上側の薄板として新たに取り出し準備状態とし、この新たに一番上となった薄板を同様に取り出すことを繰り返す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された状態の薄板を上から1枚ずつ取り出す薄板の取り出し方法において、
前記積層された状態の薄板を上部に開口部を有した薄板収容マガジンに収容する第1の工程と、
前記積層された薄板のうち、取り出すべき最も上側の1枚の薄板とこの下側に重なる1枚又は複数枚の薄板を分離するために、分離して取り出すべき一番上の薄板と少なくともその下側の薄板の重なり部分の側方所定位置に当該取り出すべき薄板の少なくとも対向する両側から気体を局所的に吹き付ける第2の工程と、
前記上側の1枚の薄板とこの下側に重なる1枚又は複数枚の薄板が分離した状態において前記薄板収容マガジンの開口部上方から薄板取り出し用吸着パットを備えた薄板取り出しローダーを前記取り出すべき薄板の両面に対して所定位置まで下降させることで、当該取り出すべき薄板を前記薄板取り出し用吸着パットで吸着する第3の工程と、
前記薄板取り出し用吸着パットに吸着された1枚の薄板を前記薄板収容マガジンの開口部から取り出し、前記ローダーを所定の経路で移動させて所定位置まで移送させる第4の工程と、
前記取り出された薄板の下側の薄板をその前に取り出された薄板の積層位置まで上昇させることで、当該薄板をこの時点で積層された薄板の一番上側の薄板として新たに取り出し準備状態として整える第5の工程と、
前記第5の工程において積層された薄板のうち新たに一番上の薄板となった当該薄板を前記第2の工程乃至第4の工程を繰り返すことで取り出す第6の工程とを含み、
積層された薄板のうち、所定枚数の薄板を前記第2の工程から第6の工程を繰り返すことで前記薄板収容マガジンから前記薄板を1枚ずつ取り出して必要な枚数だけ予め定められた所定位置まで順次移送することを特徴とする薄板の取り出し方法。
【請求項2】
前記取り出すべき薄板を前記薄板取り出し用吸着パットで吸着した後に、前記ローダーを前記薄板収容マガジンの開口部の開口面と同一面かそれより下側において所定時間だけ一旦停止させることを特徴とする請求項1に記載の薄板の取り出し方法。
【請求項3】
前記薄板取り出し用吸着パットに薄板を吸着した後、吸着した1枚の薄板を、前記薄板取り出し用ローダーを用いて前記薄板収容マガジンから外部に取り出す際に前記気体の吹き付け動作を所定時間一時的に停止させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄板の取り出し方法。
【請求項4】
前記第1の工程乃至第6の工程を実施可能とする構造を有する薄板の取り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば電子部品の絶縁板、微小な電子部品をワイヤボンディングで実装する基板、半導体ウェハ等の薄板であってこれらが積層された状態から一番上の薄板を一枚ずつ取り出して次の作業エリアまで薄板をハンドリングする際に有用な薄板の取り出し方法及び取り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両のモノコックフレームに利用されるプレス用鋼板の取り出に関して、積層されたシート群の形態をなした複数枚のプレス用鋼板のうち、一番上のプレス用鋼板を取り出してプレス機に供給するシート取り出し装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この場合のシート取り出し装置は、プレス用鋼板であるため、積層された状態の複数枚のシートから一番上のシートのみを取り出す際には、磁気フローターを使用することが開示されている(例えば特許文献1の段落(0002)参照)。
【0004】
一方、例えばハイブリット車等に数多く使用される電気部品や電子部品を実装するための回路基板や太陽電池に用いられる半導体ウェハなどの薄板を前記太陽電池や回路基板を製造する過程において多数枚積層させた状態で薄板収容マガジンに収容させ、吸着ノズルを備えたハンドリング装置によって、薄板収容マガジンに収容された多数枚の薄板を上から順に一枚ずつ取り出してハンドリングする薄板の取り出し装置を用いて薄板を取り出すこともこのような製品を製造する工場内で行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した車両用のプレス用鋼板が積層されたシート群から一番上のプレス用鋼板を取り出してプレス機に供給する前者のシート取り出し装置においては、取り出すシートが鋼板であるため、磁気フローターを使用して確実に1枚ずつ取り出すことが可能である。
【0007】
一方、取り出すシートが非磁性体材料の薄板から構成される後者の薄板の取り出し装置の場合、前者の磁気フローターの構造を適用することができず、積層された薄板のうち一番上の薄板を1枚だけ取り出して次の作業エリアまで移動させるにあたって、吸着ノズルを備えたローダーを用いて上記一番上の薄板のみを取り出して移動させるためのハンドリング動作を行うことが一般的に行われている。
【0008】
しかしながら、このようなハンドリング動作のみでは薄板の取り出し中に思わぬ問題が発生する場合が多い。具体的には、電子部品や電気部品を実装するための基板やこれらの部品用の絶縁板、その他の例えば半導体ウェハは、例えば洗浄工程において洗浄液が付着した状態で薄板収容マガジンに積層状態で収容させると、互いに密着した状態で積層収容される場合が生じる。
【0009】
このような状態で一番上側の薄板を1枚だけ吸着ノズル付きハンドリング装置で取り出そうとした場合、その下側の2枚目、若しくは更に3枚目以降を密着させたまま一度に吸着されて薄板収納用マガジンからまとめて取り出されてしまう現象が生じる場合がある。
【0010】
このような現象が生じると、それに気付かず薄板をかなり上昇させた状態で上から2段目以降の薄板が落下してしまったり、そのまま次なる工程にハンドリングするための移送中に2枚目以降の薄板が落下してしまったりする。
【0011】
係る事態に至ると、明らかに落下して破損した薄板は不良品として取り除いて歩留まりの低下を防止することができるが、薄板収納用マガジンからある程度上昇した段階で2枚目以降が落下して再び薄板収容マガジンに落下して元の収容状態に戻ったような場合、薄板自体に簡単に検査して除外することができない傷や内部応力などの薄板破損の原因となる要因が生じてしまう。
【0012】
また、積層されて薄板から一番上の薄板だけ順次取り出して次なる所定の作業エリアまで移動させる連続的なハンドリング動作の途中にこのようなトラブルが生じると、基準形状や基準寸法を満たした検査合格品である薄板を用いて最終製品として完成させることができず、製品としての歩留まりが低下するだけでなく、薄板の取り出し装置を再び作動させるために作業ラインを一時停止させると共に、薄板の取り出し装置のメンテナンスを特別に行わなければならず、生産効率の低下を招きコストの低減に影響を与えるようになる。
【0013】
そのため、以上のような現象が発生するのを防止し、積層した薄板を収容する薄板収容用マガジンからノズル付きハンドリング装置によって積層された状態の薄板の一番上の薄板を一枚ずつ取り出して次の工程に確実にハンドリングする薄板の取り出し方法及び取り出し装置を提供することが必要とされている。
【0014】
本発明の目的は、例えば電子部品の絶縁板、微小な電子部品をワイヤボンディングで実装する基板、例えば太陽電池等に使用する半導体ウェハ等の薄板などの様々な薄板であってこれらが積層された状態から一番上の薄板を一枚ずつ取り出して次の作業エリアまで薄板をハンドリングする際に有用な薄板の取り出し方法及び取り出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る薄板の取り出し方法は、
積層された状態の薄板を上から1枚ずつ取り出す薄板の取り出し方法において、
前記積層された状態の薄板を上部に開口部を有した薄板収容マガジンに収容する第1の工程と、
前記積層された薄板のうち、取り出すべき最も上側の1枚の薄板とこの下側に重なる1枚又は複数枚の薄板を分離するために、分離して取り出すべき一番上の薄板と少なくともその下側の薄板の重なり部分の側方所定位置に当該取り出すべき薄板の少なくとも対向する両側から気体を局所的に吹き付ける第2の工程と、
前記上側の1枚の薄板とこの下側に重なる1枚又は複数枚の薄板が分離した状態において前記薄板収容マガジンの開口部上方から薄板取り出し用吸着パットを備えた薄板取り出しローダーを前記取り出すべき薄板の両面に対して所定位置まで下降させることで、当該取り出すべき薄板を前記薄板取り出し用吸着パットで吸着する第3の工程と、
前記ローダーを所定の経路で移動させて前記薄板取り出し用吸着パットに吸着された1枚の薄板を前記薄板収容マガジンの開口部から取り出して所定位置まで移送させる第4の工程と、
前記取り出された薄板の下側の薄板をその前に取り出された薄板の積層位置まで上昇させることで、当該薄板をこの時点で積層された薄板の一番上側の薄板として新たに取り出し準備状態として整える第5の工程と、
前記第5の工程において積層された薄板のうち新たに一番上の薄板となった当該薄板を前記第2の工程乃至第4の工程を繰り返すことで取り出す第6の工程とを含み、
積層された薄板のうち、所定枚数の薄板を前記第2の工程から第6の工程を繰り返すことで前記薄板収容マガジンから前記薄板を1枚ずつ取り出して必要な枚数だけ予め定められた所定位置まで順次移送することを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る薄板の取り出し方法は、請求項1に記載の薄板の取り出し方法において、
前記取り出すべき薄板を前記薄板取り出し用吸着パットで吸着した後に、前記ローダーを前記薄板収容マガジンの開口部の開口面と同一面かそれより下側において所定時間だけ一旦停止させることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項3に係る薄板の取り出し方法は、請求項1又は請求項2に記載の薄板の取り出し方法において、
前記薄板取り出し用吸着パットに薄板を吸着した後、吸着した1枚の薄板を、前記薄板取り出し用ローダーを用いて前記薄板収容マガジンから外部に取り出す際に前記気体の吹き付け動作を所定時間一時的に停止させることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の請求項4に係る薄板の取り出し装置は、
前記第1の工程乃至第6の工程を実施可能とする構造を有する薄板の取り出し装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、例えば電子部品の絶縁板、微小な電子部品をワイヤボンディングで実装する基板、例えば太陽電池等に使用する半導体ウェハ等の薄板などの様々な薄板であってこれらが積層された状態から一番上の薄板を一枚ずつ取り出して次の作業エリアまで薄板をハンドリングする際に有用な薄板の取り出し方法及び取り出し装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる薄板の取り出し装置の全体構造を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示した薄板の取り出し装置の薄板収容マガジンに薄板を収容して薄板収容マガジンの一番に収容された薄板を取り出す際にエアブローを噴出した状態を上方から概略的に示す説明図である。
【
図3】本実施形態に係る薄板の取り出し手順を、
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)の順に示す説明図である。
【
図4】
図3に続いて本実施形態に係る薄板の取り出し手順を、
図4(d)、
図4(e)、
図4(f)の順に示す説明図である。
【
図5】
図3及び
図4に示した本実施形態における薄板の取り出し位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る薄板の取り出し方法及び取り出し装置(以下適宜単に「薄板の取り出し方法」又は「薄板の取り出し装置」とする)について図面に基づいて説明する。最初に、薄板の取り出し装置の全体構成について説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態にかかる薄板の取り出し装置の全体構造を概略的に示す図である。また、
図2は、
図1に示した薄板の取り出し装置の薄板収容マガジンに薄板を収容した上方から概略的に示した説明図である。具体的には、
図2は、
図1に示した薄板収容マガジンに収容した薄板のうち、一番上の薄板を取り出す際にエアブローを噴出した状態を上方から概略的に示す説明図である。
【0023】
なお、以上の図面は、本実施形態に係る薄板の取り出し装置を理解の容易化のために概略的に示したものであり、図面に示す各構成部品の寸法関係と実際の構成部品の寸法関係とは異なっていることを予め述べておく。また、以下の記述において取り出すべき薄板として、車両の電子部品の絶縁板を想定して説明を行う。
【0024】
本実施形態に係る薄板の取り出し装置1は、
図1及び
図2に示すように、多数枚積層された状態で供給される薄板積層体(以下密着した状態で積層された薄板及びエアブローによって分離された個々の薄板も合わせて単に「薄板100」と表記する)100を収容する薄板収容マガジン10と、薄板収容マガジン10の側方両側において互いに対向するように設けられた薄板分離用のエアブロー部20と、薄板供給マガジンの下側に設けられた薄板送り押し上げ部30と、薄板収容マガジン10の上方に設けられ、積層された薄板100のうち一番上の薄板101を薄板吸着パット40で吸着して薄板収容マガジン10からその上方に取り出すローダー50と、ローダー50で取り出した薄板101を続く作業工程エリアまでローダー50ごと移送するローダーハンドリング部60と、ローダー50の下端に備わった薄板吸着パット40の薄板吸着面の位置(高さ)や薄板収容マガジン10内に収容された薄板100のうちローダー50で取り出される最上部の薄板101の上面位置(上面の高さ)を適宜検知する位置測定センサ70と、これらの各構成要素同士の動作を制御する制御部(図面では図示せず)を有している。
【0025】
薄板収容マガジン10は、四角枠型形状を有し、その内部にこの薄板取り出しステージの前の工程から搬送されてきた薄板積層体100を水平方向にズレを生じさせることなく収容する空間を有している。
【0026】
薄板収容マガジン10の対向する2つの側壁部のうち、一方の対向する側壁部の所定位置にはエアブロー用吹き出し孔11が設けられている。それぞれのエアブロー用吹き出し孔11の設けられた位置は、水平方向に関しては、薄板収容マガジン10内に収容された薄板積層体100の対向する側部幅方向中央となっており、高さ方向に関しては、薄板の取り出し装置1において予め定められた基準位置となるエアブローノズル基準位置に対してそれぞれ同一の所定の高さに設けられている。
【0027】
より詳細には、この高さは、エアブロー用吹き出し孔11の薄板分離用エア吹き出し口を介して、積層された薄板100の最も上側の薄板(
図1乃至
図3では薄板101として示しており、以下とりあえず薄板101とする)であってローダー50の薄板吸着パット40によって吸着されて薄板収容マガジン10から取り出されるようになっている。また、エアブロー用吹き出し孔11の大きさ(内径)は、本実施形態の場合、薄板数枚程度の厚さに相当している。
【0028】
より具体的には、この高さは、エアブロー用吹き出し孔11の薄板分離用エア吹き出し口が、積層された薄板100の最も上側の薄板101とその下側の薄板102との重なり部であってローダー50の薄板吸着パット40によって吸着されて薄板収容マガジン10から取り出される位置を必ず含むようになっている。これによって、もっとも上段となった薄板とその下側の薄板との分離を確実に行うようにしている。
【0029】
なお、薄板積層体100の最も上側の薄板の位置(高さ)は、薄板が薄板収容マガジン10から1枚ずつ取り出されるごとに後述する薄板送り押し上げ部によってその下側の薄板102をその直前に取り出された薄板の取り出し前の位置まで押し上げるようになっている。これによって、薄板100(101,102,103,・・・)が1枚ずつ取り出されるごとに積層された薄板100の新たに一番上側となった次なる薄板の上面位置(高さ)が、ローダー50の薄板吸着パット40によって吸着されて薄板収容マガジン10から取り出される予め定められた位置になるようにしている。
【0030】
エアブロー部20は、エア供給部21と、エアノズル22とから構成され、エアブロー用吹き出し孔11を介して薄板収容マガジン10内の積層された薄板100の最も上側の薄板101とその下側の薄板102との重なり部に向かって薄板分離用エア90を主に吹き付けるようになっている。
【0031】
これによって、
図2に示すように積層された薄板100の最も上側の薄板101とその下側の薄板102を少なくとも分離すると共に(
図2に点線で示す矢印参照)、実際にはエアブロー用吹き出し孔11の大きさと薄板100の厚さとの関係や薄板分離用エアのエア圧との関係で最も上側の薄板101とその下側の複数枚の薄板102,103,・・・がそれぞれ互いに分離するようになっている。これは、
図1及び
図3において、元々薄板同士が密着して薄板収容マガジン10に収容された薄板積層体100の上側が分離して間隔が広まっていることからも理解できる。
【0032】
薄板送り押し上げ部30は、その上部に薄板収容マガジン10の内部空間の底部に位置し、積層された薄板100の一番下の薄板を支持しながら薄板の取り出し中に順次薄板1枚分の厚さごとに積層状態の薄板をまとめて押し上げる役目を果たしている。そのため、薄板送り押し上げ部30は、この機能を果たすべく薄板支持押し上げ板31を薄板送り押し上げ部30の上部に有している。そして、薄板送り押し上げ部30は、上述したように積層された薄板100の一番上の薄板を薄板収容マガジン10から取り出すごとに、その下側の薄板であって積層された薄板100の新たに一番上になる薄板の高さが常に一定になるように薄板吸着パット40とローダー50による薄板の1枚ずつの取り出しに同期して残りの積層された薄板を下側から押し上げるようになっている。
【0033】
以上のように、薄板送り押し上げ部30によって、1枚ずつ上側から取り出す多数の積層された薄板100の取り出し作業ごとに直前に取り出された薄板に対して次に取り出す薄板を常に同一の高さになるようにしている。
【0034】
ローダー50は、その下側面に複数個(本実施形態では4個)の薄板吸着パット40を備え、薄板吸着パット40の開口部から空気を吸い込むバキューム機能によって、薄板吸着パット40の下端部と取り出すべき薄板の上端面との間隔が所定の範囲内になったときに既にエアブロー部20で下側の薄板と分離している一番上の薄板を吸着する。ローダー50は、薄板100の取り出しの際に薄板収容マガジン10の開口部の上側から薄板吸着パット40の下端部と取り出すべき薄板の上端面との間隔が所定の範囲内になるまで下降する。
【0035】
具体的には、
図5に示すように、位置測定センサ70によって、予め定められた高さに相当するセンサ検出の許容上限位置(センサ上限値)から同じく予め定めた高さに相当するセンサ検出の許容下限位置(センサ下限値)までローダー50を下降させるように制御部(図示せず)によって制御している。
【0036】
なお、本実施形態の場合、ローダー50の下降位置をセンサ検出の許容下限位置(センサ下限値)として予め設定しておき、その位置まで下降した時にローダー50の下降を停止させる理由は、ローダー50がそれより更に下降してローダー50が積層された薄板100の最上部の薄板にその勢いのままぶつかって多数の薄板100を破損させることが無いようにするためである。
【0037】
ローダーハンドリング部60は、薄板吸着パット40で薄板100を吸着したまま上昇して薄板収容マガジン10に収容された一番上の薄板101を取り出した後、ローダー50ごとその後に続く作業エリアに薄板101を移送する役目を果たしている。
【0038】
位置測定センサ70は、
図5に示すように、エアブローノズル基準位置から薄板100の吸着面に相当する吸着パット先端41までの垂直方向の高さを計測すると共に、後の動作工程手順で説明する薄板吸着後のローダー50が上昇中に一時停止するホバーリング位置を測定してこのホバーリング位置が上限値と下限値の間の所定の範囲内に収まっているかどうかを制御部(図示せず)に伝えるようになっている。
【0039】
制御部は、上述した説明からも分かるように、薄板の取り出し装置1の各構成要素自体の動作や関連する構成要素同士の位置関係、関連する構成要素同士が干渉を生じさせないようにするための動作時間の管理などを行うようになっている。制御部の具体的な役割については、薄板の取り出し装置1の動作について説明する
図3及び
図5の動作手順において併せて説明する。
【0040】
続いて、本実施形態に係る薄板の取り出し装置を用いて薄板を取り出す動作工程を図面に基づいて説明する。なお、本図面においては薄板の取り出し装置の構成要素の中で説明の理解の容易化を図るために必要最小限の構成要素を図示している。
【0041】
図3は、本実施形態に係る薄板の取り出し手順を
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)の順に示す説明図である。また、
図4は、
図3に続いて本実施形態に係る薄板の取り出し手順を、
図4(d)、
図4(e)、
図4(f)の順に示す説明図である。また、
図5は、本実施形態における薄板の取り出し位置関係を説明する図である。
【0042】
図3(a)は、多数枚の薄板100が互いに密着して積層した薄板取り出し前の薄板積層体100を薄板収容マガジン10に収容した状態を示している。なお、
図3(a)では薄板同士の間にすき間が見られるが、最初に薄板収容マガジン10に収容された薄板同士は、実際には薄板製造プロセスにおける洗浄液等で互いに密着してブロック化した薄板積層体の形態をなしている。
【0043】
この状態においては、薄板送り押し上げ部が薄板積層体100を下側から押し上げて、薄板積層体の一番上の薄板101の上面が、
図5に示すエアブロー基準位置から所定の高さのエアブロー位置、即ちエアブロー部20の吹き出し位置に対応する位置まで上昇していることが分かる。
【0044】
なお、
図5においてエアブローノズル基準位置とエアブロー位置(センサゼロ点位置)の双方は、薄板の取り出し装置1の構造に関連して高さ方向に予め規定された定点位置である。
【0045】
また、
図3(a)の動作工程においては、まだエアブロー部20のエアノズル22から薄板分離用エア90が噴き出しておらず、そのため薄板積層体100を構成する各薄板同士も密着している(分離していない)ことを示している。
【0046】
図3(b)の動作工程は、
図3(a)の動作工程の直後において対向する2つのエアノズル22から薄板収容マガジン10のエアブロー用吹き出し孔11を介して薄板分離用エアを薄板収容マガジン10内の積層された薄板100の最も上側の薄板101とその下側の若干複数枚の薄板102,103,・・・との重なり部に向かって薄板分離用エア90を主に吹き付けていることを示している。
【0047】
これによって、例えば薄板100が絶縁板の場合、洗浄液等によってぴったりと密着していた最も上側の薄板101とその下側の適当な複数枚の薄板102,103,・・・との重なり部が剥離して両者が分離する(
図2に点線で示す薄板分離用エア90参照)。
【0048】
このように、本実施形態の場合、各薄板100の厚みとエアノズル22の内径との関係や薄板積層体100の上側の薄板同士の分離を確実に行うために、
図3(b)の動作工程において最も上側の薄板とその下側の薄板1枚のみならず複数枚が同時に分離するようになっている(
図3(b)に示す薄板参照)。
【0049】
図3(c)は、
図3(b)の動作工程の結果、薄板収容マガジン10から取り出すべき最も上側の薄板101が薄板分離用エア90によって浮き上がって
図4(d)に示す吸着パット先端下側まで近づいている状態を示している。
【0050】
なお、
図3(b)及び
図3(c)においては図示しないが、これらの間においては
図4(d)に示すローダー50が薄板収容マガジン10の上側開口部を覆って、一番上の薄板101が薄板分離用エア90で薄板収容マガジン10の開口部から外に吹き飛ばないようにしている。
【0051】
次いで、
図4(d)に示すように、ローダー50が
図3(c)において図示しない位置から更に下降してローダー50の下側に備わった薄板吸着パット40の吸着面、即ち吸着パット先端41がこの薄板101の上面に接近する。なお、ローダー50の下降は、
図5に示すように位置測定センサ70によってセンサ下限値に達するまで行われる。そして、この過程において、
図4(d)に示す状態になると、
図4(e)に示すように薄板吸着パット40において発生しているエア吸引力によって取り出すべき一番上の上の薄板101が薄板吸着パット40に吸着される。
【0052】
その後、
図4(f)に示すようにローダー50が上昇してローダーハンドリング装置によってローダー50ごと続く作業工程エリアまで移送される。なお、
図4(f)に示す状態においては、エアブロー部20による薄板分離用エア90の吹き付けを一時停止して
図4(f)に示すその後に取り出すべき新たに一番上に位置したに薄板102が薄板収容マガジン10から飛び出すのを防止する。
【0053】
この薄板分離用エアの吹き付けの一時停止は、ローダー50が先程の薄板101の移送を終えて再び元の位置まで戻り、薄板収容マガジン10の上側の開口部に位置して次に取り出すべき薄板102が薄板収容マガジン10から飛び出すのをローダー50によって阻止できる状態まで行われる。この状態において制御部のタイミング制御によって、薄板送り押し上げ部30の薄板支持押し上げ板31が、薄板100を1枚分の薄板の厚さ分だけ押し上げる。
【0054】
このエアブロー部20による薄板分離用エアの吹き付けの一時停止により、次に取り出すべき薄板102及びその更に下側の薄板であって薄板分離用エアによって互いに分離した複数枚の薄板103,104,・・・は、
図3(a)に示す状態まで戻り、
図3(a)乃至
図4(f)に示す動作工程を再び繰り返して続く薄板を薄板収容マガジン10から飛び出す。
【0055】
このようにして元々互いに密着して一体化していた薄板積層体100から1枚ずつ薄板100を薄板収容マガジン10から取り出して順次次なる作業工程エリアに薄板100を移送する。
【0056】
薄板102を薄板収容マガジン10から取り出した後は、薄板100+N(Nは3から始まる自然数)が、今度は改めて規定通りの高さに位置する一番上の薄板になるように薄板送り押し上げ部30によって押し上げられ、薄板100+Nが取り出された後、続いて薄板100+N+1が新たに規定通りの高さに位置する一番上の薄板になるようにする。このようにして、薄板1枚ずつの取り出し動作を元々の薄板積層体を構成していた薄板がほぼなくなるまで繰り返す。
【0057】
図5は、
図3(a)乃至
図4(f)におけるエアブローノズル基準位置、エアブロー位置(位置測定センサゼロ点位置)、薄板吸着パットの先端位置(薄板吸着パット40の下端の吸着面位置で
図1における吸着パット先端41の位置)、位置測定センサ上限値(ローダー50によるホバーリング位置の許容上限位置)、位置測定センサ下限値(ローダー50によるホバーリング位置の許容下限位置)をそれぞれ図示しており、この図面における上下方向の矢印で示す長さが
図3(a)乃至
図4(f)に示した上述の各位置に対応している。
【0058】
即ち、
図5は、
図3(a)乃至
図4(f)に示した上述の各位置関係の理解を容易にするために拡大して示したものであり、その具体的な高さ方向の数値は、薄板の取り出し装置1の個別的な形状や寸法関係、薄板積層体100に積層される薄板の枚数、薄板自体の形状や厚みなどの寸法によって適宜規定されるようになっている。
【0059】
なお、
図4(a)においてローダー50を下降させる際に、制御部が下降指令を行った後に吸着を開始する(真空にする)が、上述の実施形態のようにエアブローノズル基準位置から一定の高さまで一義的に下降させるオープンループ制御を行う代わりに、例えばローダー50に圧力センサを設けて吸着圧を測定しながらこの吸着圧が上がったことを検知した瞬間にその時点で薄板100が薄板吸着パット40に吸着されたと判断してローダー50の下降動作を停止してその代わりに上昇動作に転じて薄板100を薄板収容マガジン10から取り出すことで薄板取り出しに関するタクトタイムの短縮化を図っても良い。
【0060】
以上の本発明の一実施形態の説明から明らかなように、本発明によると例えば電子部品の絶縁板、微小な電子部品をワイヤボンディングで実装する基板、例えば太陽電池の基板部品となる半導体ウェハ等の薄板であってこれらが積層された状態から一番上の薄板を一枚ずつ取り出して次の作業エリアまで薄板をハンドリングする際に有用な薄板の取り出し方法及び取り出し装置を提供することができる。具体的には、上述した解決すべき課題の欄で記載した様々な問題点を本発明によると一度に解決することができる。
【0061】
本発明の一実施形態について上述の通り説明したが、本発明は、上述した実施形態にその範囲を限定されることはないことは言うまでもない。即ち、上述した実施形態とは異なる形態を有していても、本発明で特定する技術的思想の創作に当てはまる構成を有しかつその効果を発揮するものであれば、本発明の範囲内に当然に含まれるものである。
【0062】
具体的には、上述の実施形態において薄板は四角い形状の絶縁板としたが、形状自体については四角に限定されず円形やその他多角形の薄板であっても良く、また、絶縁板には限定されず例えば複雑な形状の電子部品回路基板をなす薄板や太陽電池等に使用される円形のシリコンウェハからなる薄板であっても良い。
【0063】
また、上述の実施形態においては、エアブロー部は薄板収容マガジンの外側の対向する2箇所に1組のペアとして設けていたが、
図2に示す構成においてこのようなペアを更に90度ずらした状態で追加すると共に、これに対応する薄板分離用エア吹き出し孔をそれぞれ薄板収容マガジンに追加して設け、
図2に示すような構成において平面視四角形を有する薄板の4辺それぞれに薄板分離用エアを同時に吹き付けて上下の薄板を迅速かつ確実に分離するようにしても良い。
【0064】
また、薄板収容マガジンは、上述の実施形態では四角い枠型形状を有していたが、薄板積層体が個別の薄板に分離する際に薄板同士の水平方向の位置関係にズレが生じないまま全ての薄板を拘束していれば良く、この位置関係のズレを防止するために複数本のシャフトを垂直方向に設けてこのシャフトによって薄板の外縁部分を押さえて分離した薄板の水平方向のズレを防止するようにしても良い。
【0065】
更には、薄板吸着パットの個数については、吸着後に薄板が吸着パットに対してずれることなく薄板収容マガジンから取り出して続く作業工程エリアに移送できれば適当な個数としても良い。
【0066】
また、位置測定センサについても本発明の作用を発揮すれば、レーザー位置測定センサ以外のセンサを用いても良い。また、薄板分離のためのエアブローノズルの内径についても、本発明の作用を発揮すれば適当な内径のものを使用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 薄板の取り出し装置
10 薄板収容マガジン
11 エアブロー用吹き出し孔
20 エアブロー部
21 エア供給部
22 エアノズル
30 薄板送り押し上げ部
31 薄板支持押し上げ板
40 薄板吸着パット
41 吸着パット先端
50 ローダー
60 ローダーハンドリング部
70 位置測定センサ
90 薄板分離用エア
100(101,102,103,・・・) 薄板、薄板積層体