(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121045
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】オゾン発生器用のオゾンガス検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220812BHJP
C01B 13/11 20060101ALI20220812BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G01N27/416 311L
C01B13/11 H
G01N27/26 371A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018179
(22)【出願日】2021-02-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】518411578
【氏名又は名称】アイディーディーエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】原田 英知
【テーマコード(参考)】
4G042
【Fターム(参考)】
4G042AA06
4G042CA01
4G042CB29
4G042CC23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オゾンガスの濃度を電気化学式センサによりより正確に算出するオゾンガス検出装置を提供する。
【解決手段】放電式オゾン発生器用のオゾンガス検出装置100が、吸気口付近に配置されたフィルタ102、排気口付近に配置されたファン105、オゾン濃度を測定する第1のセンサ103、および補正用の第2のセンサ104、を有するガス通路101と、入出力手段107/108を有し、第1のセンサ103と第2のセンサ104に接続された制御手段106であって、制御手段はプログラムが記録された記録手段109を備え、制御手段106は以下のように実行される:第2のセンサ104で得た値を用いて第1のセンサ103で得たオゾン濃度から補正値を生成するように構成され;かつ補正された前記オゾン濃度を基に、オゾン濃度に関する所定の情報を前記出力手段を介してユーザに伝達するように構成される、制御手段を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン発生器用のオゾンガス検出装置であって、
吸気口付近に配置されたフィルタ、排気口付近に配置されたファン、オゾン濃度を測定する第1のセンサ、および補正用の第2のセンサ、を有するガス通路と、
入出力手段を有し、かつ前記第1のセンサと前記第2のセンサに接続された制御手段であって、前記制御手段はプログラムが記録された記録手段を備え、前記制御手段は前記プログラムによって以下のように実行される:
前記第2のセンサで得た値を用いて前記第1のセンサで得たオゾン濃度から補正値を生成するように構成され;かつ
補正された前記オゾン濃度を基に、オゾン濃度に関する所定の情報を前記出力手段を介してユーザに伝達するように構成される、
制御手段、
を備える、オゾンガス検出装置。
【請求項2】
放電式オゾン発生器用の、請求項1に記載のオゾンガス検出装置。
【請求項3】
前記ガス通路は、ステンレススチール(SUS)、テフロン、およびポリプロピレンから成る群から選択された材料により作成され、
前記フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により作成され、かつ
前記第1および第2のセンサは、各々のセンサ部分のみが前記ガス通路から露出するように構成され、各々のセンサはソケットを介して取り外し可能に基板に接続される、
請求項1に記載の、オゾンガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン発生器用のオゾンガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは極めて強い酸化力を有し、脱臭、菌やウイルスの不活化など、多くの用途に使われている。オゾンの生成には、紫外線照射法、放射線照射法、プラズマ放電法、無声放電法、および水の電気分解などがある。また、オゾンガスの検出手段には、金属酸化物半導体による電気化学式センサを用いたガス検出器などがある。
【0003】
例えば、特許文献1のオゾンガス検出手段は、電気化学式センサを用いて、紫外線照射法により得たオゾンのガス濃度を検出するものであり、ガス接触面を構成する部材をヒータによって加熱することにより、ガス接触面に結露が生じるのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オゾンを生成させた場合には、副生成物として窒素酸化物が生成される場合がある。そして、オゾン検出用の電気化学式センサ(electrochemical sensor)は窒素酸化物、特に二酸化窒素に対して高い交差感受性(cross‐sensitivity)を示す。
【0006】
このため、何等かの手段により生成したオゾンを電気化学式センサで検出した場合、二酸化窒素の含有量分だけ実際のオゾン濃度よりも高く検出されてしまう。オゾンガスは所定の濃度であれば消臭、菌・ウイルスの殺菌等に効果があるが、高濃度のオゾンは人体に有害であるため、正確なオゾン濃度の検出が要求される。
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、生成したオゾンを電気化学式センサにより正確に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有することを特徴とする。
【0009】
[1]オゾン発生器用のオゾンガス検出装置100であって、
吸気口付近に配置されたフィルタ102、排気口付近に配置されたファン105、オゾン濃度を測定する第1のセンサ103、および補正用の第2のセンサ104、を有するガス通路101と、
入出力手段107/108を有し、かつ前記第1のセンサ103と前記第2のセンサ104に接続された制御手段106であって、前記制御手段106はプログラムが記録された記録手段109を備え、前記制御手段106は前記プログラムによって以下のように実行される:
前記第2のセンサ104で得た値を用いて前記第1のセンサ103で得たオゾン濃度から補正値を生成するように構成され;かつ
補正された前記オゾン濃度を基に、オゾン濃度に関する所定の情報を前記出力手段108を介してユーザに伝達するように構成される、
制御手段106、
を備える、オゾンガス検出装置。
【0010】
[2]放電式オゾン発生器用の、上記[1]に記載のオゾンガス検出装置。
【0011】
[3]前記ガス通路101は、ステンレススチール(SUS)、テフロン、およびポリプロピレンから成る群から選択された材料により作成され、
前記フィルタ102は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により作成され、かつ
前記第1および第2のセンサ103/104は、各々のセンサ部分のみが前記ガス通路101から露出するように構成され、各々のセンサはソケットを介して取り外し可能に基板に接続される、
上記[1]に記載の、オゾンガス検出装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生成したオゾンを電気化学式センサにより正確に検出することができる。特に、無声放電法はオゾンを大量に生成することができ、また電気化学式センサはセンサ装置の小型化に適しているものの、副生成物である二酸化窒素が高い交差感受性を有していることにより、無声放電法と電気化学式センサは組合わせて使用することが困難であった。本発明によれば、無声放電法と電気化学式センサを併用して、大量に生成したオゾンガスの濃度を小型な検出装置で正確に検出することができ、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るオゾンガス検出装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るプログラムのフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願に係るオゾンガス検出装置を実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係るオゾンガス検出装置が限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0015】
(実施形態)
[1.オゾンガス検出装置の構成]
図1を用いて、実施形態に係るオゾンガス検出装置100の構成について説明する。
図1に示すように、オゾンガス検出装置100は、ガス通路101、制御装置106、および電源110を有する。なお、制御装置106は、各種プログラムを記憶した記憶手段109、制御装置106のユーザ等から各種操作を受け付ける入力手段107(例えば、キーボードやマウス等)、および各種情報を出力表示するための出力手段108(例えば、ランプ、アラーム、警告メッセージを読み上げるための音声出力、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0016】
制御装置106は、第1のセンサ103、第2のセンサ104、ファン105、電源装置110と接続する。また、制御装置106は、通信手段(不図示)を介して、ネットワークNWと有線または無線で接続され、通信端末111またはオゾンガス生成装置112との間で情報の送受信を行ってもよい。通信端末111を用いて制御装置106と情報の送受信を行う場合は、通信端末111が入力手段107および出力手段108の機能を代替えしてもよい。通信端末111は、スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ(いわゆる、ノートパソコン)、または、デスクトップ型コンピュータなどとして実現されてもよい。
【0017】
制御装置106の記憶手段109は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。実施形態に係る記憶手段109は、後述する所定のプログラムを記憶し、制御装置106が有する演算処理装置(不図示)によって処理が実行される。
【0018】
ガス通路101は、その内部に、吸入口(inlet)、吸気口付近に配置されたフィルタ102、オゾン濃度を測定する第1のセンサ103、補正用の第2のセンサ104、排気口付近に配置されたファン105、および排気口(outlet)を備える。
【0019】
ガス通路101またはガス通路の内面は、ガスを吸収しにくい材料を使用して作成される。ガスを吸収しにくい材料として、ステンレススチール(SUS)、テフロン、およびポリプロピレンから成る群から選択された材料により作成することが好ましい。
【0020】
フィルタ102は、フィルタが測定対象のオゾンガスを吸収しないようにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により作成することが好ましい。また、ファン105は排気口付近に配置される。ファン105を吸気口ではなく排気口に設置するのは、ファン自体がオゾンを吸収することにより、検体である気体のオゾン濃度がセンサ到達前に下る事を防ぐためである。電気化学式センサは風圧に弱いため、流路内の風速が可能な限り小さくなるように制御装置106によって制御される。
【0021】
第1のセンサ103はオゾン測定用のセンサであり、第2のセンサ104は補正用のセンサである。各々のセンサは、そのセンサ部分のみがガス通路から露出するように構成され、かつソケットを介して取り外し可能に基板に接続される。
図1中、第1のセンサ103、第2のセンサ104は、ガス通路101に対し上流、下流に位置するように便宜的に配置されているが、ガス通路101の内部に配置されるものであれば、第1のセンサ103と第2のセンサ104の配置順序や位置的関係はユーザが任意に調整してよい。
【0022】
(第1および第2のセンサ103、104)
特に限定されるべきものではないが、本発明者は、第1のセンサ103、第2のセンサ104として、電気化学式センサを使用した。本願発明で用いる電気化学式センサは、一般的なアンペロメトリー(amperometric)ガスセンサであり、ガスの体積分率に比例した電流を発生させる電気化学式センサである。電気化学式センサには、ガスを測定するための作動電極(working electrode)、電気化学セルの回路を完成させるための対極(counter-electrode)、および基準電極(reference electrode)を備える。作動電極は、対象ガスの反応を最適化するように選択された金属触媒であり、対象ガスはキャピラリ拡散障壁を通って金属触媒と電気化学的に反応する。該反応によって生じた電子は、反応したガス量に応じて外部回路を通り対極に到達する。作動電極の電流はセンサの出力信号となる。作動電極の電流とガス濃度の関係は、線形である。対極は、後半の半電池として機能して、作動電極の反応に関与する電子と等しい数の電子が電解質中において入出することを可能にする。基準電極は上記2電極間の設計上の安定性を確保するように機能する。第1のセンサ103として、オゾン検出センサ、第2のセンサとして、二酸化窒素検出センサを用いた。
【0023】
以下の表1から理解されるように、オゾン検出センサ、二酸化窒素検出センサはそれぞれの気体分子に対し交差感受性を示す。
【0024】
【0025】
表1は、各種センサと各種ガスの感度の比を例示的に説明する表である。表1は、縦軸にガスの種類、横軸に電気化学式センサの種類を示す。第1のセンサ103はオゾン検出センサであり、オゾン5ppm、二酸化窒素10ppmが存在する場合に、オゾン:二酸化窒素=1:1の比で検出する。つまり、第1のセンサ103は、オゾンガスの感度が1倍であるときに、二酸化窒素の感度が0.5倍で検出される。
【0026】
また、第2のセンサ104は二酸化窒素検出センサであり、オゾン5ppm、二酸化窒素10ppmが存在する場合に、オゾン:二酸化窒素=1:2の比で検出する。つまり、第2のセンサ104は、オゾン、二酸化窒素の感度が共に1倍で検出される。
【0027】
なお、上記表1は電気化学式センサの一例を示す表および式であり、この実施形態により本願に係るオゾンガス検出装置が限定されるものではない。交差感受性の比は製品のバージョンやセンサメーカーにより異なるのが一般的である。
【0028】
従って、以下の連立方程式を解くことによって、実際のオゾン濃度(Od)を算出することができる。
【0029】
【0030】
上記連立方程式から、以下の式を導くことができる。
【0031】
【0032】
ここで、MOは第1のセンサ103によって測定されたオゾン濃度であり、MNは第2のセンサ104によって測定された二酸化窒素濃度である。Odは実際のオゾン濃度であり、Ndは実際の二酸化窒素濃度である。αは、第1のセンサ103の交差感受性の特定の比に基づく係数である。βは、第2のセンサ104の交差感受性の特定の比に基づく係数である。係数α、βの値は、製品のバージョンやセンサメーカーにより変動する。
【0033】
(制御装置106)
図1の説明に戻って、制御装置106は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、制御装置106内部の記憶手段109に記憶されている所定のプログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0034】
[2.制御装置106が実行するプログラム処理のフロー]
図2は、制御装置106が実行するプログラム処理の手順を示す。まず、処理が開始されると、ステップS1001において、制御装置106は第1のセンサ103からオゾン濃度の測定値が得られたか否かを判定する。オゾン濃度の測定値が得られていない場合には、ステップS1001の判定を繰り返す。
【0035】
オゾン濃度の測定値が得られた場合には、ステップS1002において、第2のセンサ104から二酸化窒素濃度の測定値が得られたか否かを判定する。二酸化窒素の測定値が得られていない場合には、ステップS1002の判定を繰り返す。
【0036】
二酸化窒素の測定値が得られた場合には、ステップS1003において、制御装置106は上述した連立方程式から実際のオゾン濃度(Od)を算出する補正の処理を実行する。
【0037】
次に、ステップS1004において、制御装置106はステップS1003で得た補正値を基に、ユーザによって予め自由に設定された閾値に基づき、補正値が閾値を超えたと判定した場合には、オゾン濃度に関する所定の情報を出力手段108を介してユーザに伝達する(ステップS1005)。なお、ユーザによって予め設定される閾値は、入力手段107を介して記憶手段109に予め記憶されている。また、制御装置106が閾値に達していないと判定した場合には、ステップS1003の処理に戻る。なお、所定の情報とは、出力手段108を介して出力される情報であり、ランプ表示、アラーム表示、警告メッセージを読み上げる音声出力、液晶ディスプレイへの表示等を介した、何等かの警告情報であってもよい。
【0038】
ユーザによって設定されるオゾン濃度の閾値は、入力手段107またはユーザの通信端末111を介して、ユーザが任意に変更することができる。
【0039】
以上、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の行に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0040】
[3.その他]
また、上記実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0041】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0042】
また、上述してきた実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
100 オゾンガス検出装置
103 第1のセンサ
104 第2のセンサ
106 制御手段