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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121063
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018205
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下野 貴裕
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA05
3E013BA19
3E013BA20
3E013BB12
3E013BC12
3E013BC14
3E013BD12
3E013BD15
3E013BE01
3E013BF03
3E013BF08
3E013BF23
3E013BF35
(57)【要約】
【課題】密封可能な包装袋において、内容物の油分、水分を吸収可能であり、かつ電子レンジによる内容物の加熱の際の、自動通蒸機構を有する包装袋の提供を課題とする。
【解決手段】内容物を内部に収納し、密封可能な包装袋において、包装袋は、積層体を製袋して構成されており、積層体は、外側から順に少なくとも、プラスチックフィルムからなる基材層、隠蔽層、オレフィン系樹脂中間層、紙または不織布層、最内層のオレフィン系樹脂層から構成されており、積層体には、通蒸のための傷加工Aと、吸水、吸油のための傷加工Bが設けられており、傷加工Aは、プラスチックフィルムからなる基材層、及び隠蔽層に両者を貫通する傷加工、並びに紙または不織布層への傷加工とからなり、傷加工Bは、紙または不織布層、及び最内層のオレフィン系樹脂層への、両者を貫通する傷加工からなることを特徴とする包装袋。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を内部に収納し、密封可能な包装袋において、
包装袋は、積層体を製袋して構成されており、
積層体は、外側から順に少なくとも、プラスチックフィルムからなる基材層、隠蔽層、オレフィン系樹脂中間層、紙または不織布層、最内層のオレフィン系樹脂層から構成されており、
積層体には、通蒸のための傷加工Aと、吸水、吸油のための傷加工Bが設けられており、
前記傷加工Aは、プラスチックフィルムからなる基材層、及び隠蔽層に両者を貫通する傷加工、並びに紙または不織布層への傷加工とからなり、
前記傷加工Bは、紙または不織布層、及び最内層のオレフィン系樹脂層への、両者を貫通する傷加工からなることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記隠蔽層は、印刷インキによって層形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記オレフィン系樹脂中間層は、溶融したオレフィン系樹脂を押出機によって層形成
し積層したものであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料に係るものである。特にプラスチックフィルムを基材とした積層体からなる包装袋に関するものであって、食品包装などの用途に用いられる包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装材料の一種である包装袋は、プラスチックフィルムを基材とする単体または積層体から構成されるものが広く普及しており、さまざまな形態のものが、幅広い用途に用いられており、現代生活にとっては不可欠なものとなっている。
【0003】
例えばプラスチックフィルムが耐水性に優れることから、液体容器としても用いられ、飲料のほかレトルト食品などの食品分野でも広く用いられているほか、日用品やトイレタリーの分野でも、さまざまな商品がスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアの商品棚をにぎわしている。液体容器のほかにも、様々な用途展開がなされている。
【0004】
包装袋の利点は、缶や瓶などの他の容器に比べて、価格が安いことや、要求品質によってきめ細かい材料設計で対応できる点、あるいは内容物充填前、及び流通や保管においても軽量で省スペースであることが挙げられる。また包装袋は、廃棄物を減らすという観点からは環境適応型であるといえる。
【0005】
また外側から見える層への高精細の印刷によって、商品のイメージアップを図ることができ、内容物に関する必要な情報を表示することが可能であり、バーコードの印刷などは、商品の流通やマーケティング情報の源泉ともなっている。
【0006】
特に内容物として例えば食品を収納する場合には、内容物に応じて、例えば吸油性や吸水性が必要な場合もあり、ほかにも電子レンジ適性、またそれに関連した通蒸性が必要とされる場合などがあって、それぞれの要求品質に対応した、きめ細かい材料設計が求められている。
【0007】
例えば特許文献1には、吸水、吸油機能を有する包装袋の提案がなされているが、シーラント層が不織布であるため、製袋した際のシール部の密着性が劣り、耐衝撃性などにおいて問題が発生する恐れがある。
【0008】
また特許文献2には、包装袋において、内外を貫通する蒸発水分調整穴が設けてあるが、貫通孔であるため異物や昆虫が混入する恐れがあり、また内容物の水分や油分が漏出する恐れもあり、実用上の問題が発生する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3770704号公報
【特許文献2】特開昭62-275415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、密封可能な包装袋において、内容物の油分、水分を吸収可能であり、かつ電子レンジによる内容物の加熱の際の、自動通
蒸機構を有する包装袋の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
内容物を内部に収納し、密封可能な包装袋において、
包装袋は、積層体を製袋して構成されており、
積層体は、外側から順に少なくとも、プラスチックフィルムからなる基材層、隠蔽層、オレフィン系樹脂中間層、紙または不織布層、最内層のオレフィン系樹脂層から構成されており、
積層体には、通蒸のための傷加工Aと、吸水、吸油のための傷加工Bが設けられており、
前記傷加工Aは、プラスチックフィルムからなる基材層、及び隠蔽層に両者を貫通する傷加工、並びに紙または不織布層への傷加工とからなり、
前記傷加工Bは、紙または不織布層、及び最内層のオレフィン系樹脂層への、両者を貫通する傷加工からなることを特徴とする包装袋である。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、
前記隠蔽層は、印刷インキによって層形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、
前記オレフィン系樹脂中間層は、溶融したオレフィン系樹脂を押出機によって層形成し積層したものであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の包装袋である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、密封可能な包装袋において、内容物の油分、水分を吸収可能であり、かつ電子レンジによる内容物の加熱の際の、自動通蒸機構を有する包装袋の提供が可能である。
【0015】
包装袋を構成する積層体は、外側から順に少なくとも、プラスチックフィルムからなる基材層、隠蔽層、オレフィン系樹脂中間層、紙または不織布層、最内層のオレフィン系樹脂層から構成されていることによって、包装袋は可撓性を有し、必要な機械的強靭性、一定の耐熱性を具備することができる。また、最内層のオレフィン系樹脂層によって、これを内容物に直接接触する面とすることができ、また製袋の際のシーラント層とすることができる。
【0016】
積層体には、通蒸のための傷加工A、すなわちプラスチックフィルムからなる基材層、及び隠蔽層に両者を貫通する傷加工、並びに紙または不織布層への傷加工が設けられている。
【0017】
また吸水、吸油のための傷加工B、すなわち紙または不織布層、及び最内層のオレフィン系樹脂層に、両者を貫通する傷加工が設けられている。
【0018】
したがって、傷加工Bによって、包装袋は内容物の油分、水分の吸収機能を備え、また傷加工Aによって電子レンジによる内容物の加熱の際の、自動通蒸機構をも備える包装袋とすることができる。
【0019】
また、この積層体の、オレフィン系樹脂中間層には、傷加工は施されていないことから、製袋された包装袋は、加熱調理前には密閉性を確保することができる。
【0020】
電子レンジで加熱調理が行われた際には、このオレフィン系樹脂中間層が破断して、通蒸機構の一部として機能する。すなわち、傷加工A、及び傷加工Bの貫通孔に加えて、破断したオレフィン系樹脂中間層によって、包装袋内部と外部がつながって、内部で発生した水蒸気を外部に排出することが可能になる。
【0021】
また、特に請求項2に記載の発明によれば、隠蔽層によって、内容物に由来する水分、油分の積層体への吸収が行われる際には、外観に及ぼす影響を覆い隠すことが可能である。この隠蔽層が、印刷インキによって層形成されたものである場合には、既知の印刷手法を用いるなどしてより生産性良く層形成を行うことができる。
【0022】
また、特に請求項3に記載の発明によれば、オレフィン系樹脂中間層は、溶融したオレフィン系樹脂を押出機によって層形成したものであることによって、生産性よく層形成することが可能であるとともに、この層は包装袋の密封を可能にする。また、紙もしくは不織布層に吸い上げられた、内容物由来の水分、油分を隠蔽層とで目止めすることができ、外観への影響をなくすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明に係る包装袋を構成する積層体の一実施態様を説明するための、部分断面模式図であり、また実施例1の評価用包装袋を構成する積層体を説明するための、部分断面模式図である。
図2図2は、比較例1の評価用包装袋を構成する積層体を説明するための、部分断面模式図である。
図3図3は、比較例2の評価用包装袋を構成する積層体を説明するための、部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0025】
図1は、本発明に係る包装袋を構成する積層体の一実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【0026】
本発明は、積層体(10)からなる包装袋に関するものであって、内容物を内部に収納し、密封可能な包装袋である。
【0027】
特に内容物として例えば食品を収納可能であって、内容物からにじみ出てくる水分、油分を吸い取ることが可能で、ほかにも電子レンジでの加熱調理適性、またそれに関連した自動通蒸性を有するものである。
【0028】
包装袋は、積層体(10)を製袋して構成されており、積層体(10)は、外側から順に少なくとも、プラスチックフィルムからなる基材層(1)、隠蔽層(2)、オレフィン系樹脂中間層(3)、紙または不織布層(4)、最内層のオレフィン系樹脂層(5)から構成されている。
【0029】
基材層を構成することのできるプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートを
プラスチックフィルムからなる基材層(1)とする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。
【0030】
これらのプラスチックフィルムは、製膜において延伸工程を経て製造され、供給されるものがあり、機械的強度やフィルムの厚さの精度において優れており、したがって延伸したプラスチックフィルムは、好ましく用いられる。
【0031】
またプラスチックフィルムは、接着剤層等を介して他の層と積層して積層体(10)とすることができる。積層体(10)の層構成やその材料、厚さなどは、包装袋に要求される要求品質によって、適宜設計することができる。
【0032】
隠蔽層(2)は、可視光を遮蔽して包装袋の内容物を外側から不可視にするための層である。例えば、内容物由来の水分や油分が積層体(10)に滲みだした場合には、その部分が濡れ色になって変色して見えるなど、外観において見苦しい状態になる場合があって、隠蔽層(2)を設けることによって、滲みだしを目止めして外側から不可視とすることができる。
【0033】
隠蔽層(2)は、その材料構成、層形成に特段の制約を設けるものではなく、例えば不透明な印刷インキ層とすることができる。印刷インキ層は、例えば合成樹脂成分に不透明顔料を分散した状態で層形成されている。したがって少なくとも可視光の領域においては不透明な層である。
【0034】
不透明なこの隠蔽層(2)が、既知の印刷手法を用いて、印刷インキによって層形成されたものである場合には、より精度良く、また生産性良く層形成を行うことができる。印刷手法のほか、既知のコーティング手法を用いることも可能である。
【0035】
ちなみに隠蔽層(2)として、アルミニウムなどの金属箔、あるいは金属蒸着膜も不透明であって隠蔽性に効果があるが、内容物および包装袋に電子レンジによる加熱が行われる場合には、高周波によるスパークなどが発生するために不適当である。
【0036】
オレフィン系樹脂中間層(3)は、オレフィン系樹脂を用いて形成される層であって、例えば溶融したオレフィン系樹脂を押出機によって層形成することができる。溶融したオレフィン系樹脂を押出機によって層形成したものであることによって、生産性よく層形成することが可能である。
【0037】
また押出機による層形成と同時に、この層の表裏から、図1に示すプラスチックフィルムからなる基材層(1)と隠蔽層(2)、及び紙または不織布層(4)と最内層のオレフィン系樹脂層(5)とで挟み込んでこれらを一体化させ、積層体とすることも可能である。
【0038】
このオレフィン系樹脂中間層(3)は、積層体(10)の中間に位置しており、傷加工A(6)及び傷加工B(7)の対象にはなっていないために、包装袋の内側と外側を隔てることが可能であり、包装袋の密封を可能とするものである。
【0039】
オレフィン系樹脂は、例えばポリプロピレン、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン、超高分子ポリエチレンなどの総称であって、以下の特徴を有する。
【0040】
・比重が1以下であって軽い。
・柔軟性がある。
・耐薬品性に優れる。
・衝撃を吸収する。
・耐熱性が比較的低い。
・汎用樹脂であって、入手が容易で比較的低価格である。
・製膜が容易である。
・人体にとって安全な物質である。
【0041】
これらの特徴を生かして、本発明による包装袋を構成する積層体の、オレフィン系樹脂中間層(3)として効果的に設けられる。
【0042】
積層体には、通蒸のための傷加工A(6)と、吸水、吸油のための傷加工B(7)が設けられている。
【0043】
傷加工A(6)は、プラスチックフィルムからなる基材層(1)、及び隠蔽層(2)に両者を貫通する傷加工、並びに紙または不織布層(4)への傷加工とからなる。
【0044】
傷加工A(6)によって、電子レンジによる内容物の加熱の際の、自動通蒸機構をも備える包装袋とすることができる。これは、内容物が加熱され、水蒸気が発生し、包装袋の体積膨張が起こり、さらに包装袋内部の内圧の上昇により、オレフィン系樹脂中間層(3)が破断して、傷加工A(6)とともに、発生した水蒸気の通り道となって、内部の水蒸気を外に排出する、自動通蒸機構として作用するものである。
【0045】
傷加工A(6)の形成方法は、特段の制約を設けるものではないが、例えばレーザー光の照射によって設けることができる。
【0046】
傷加工B(7)は、紙または不織布層(4)、及び最内層のオレフィン系樹脂層(5)に、両者を貫通する傷加工として設けられている。
【0047】
傷加工B(7)によって、包装袋は収納された内容物に含まれる油分、水分の吸収機能を備えることができる。
【0048】
傷加工B(7)の形成方法には、特段の制約を設けるものではないが、例えば刃物を用いた加工が可能であり、あるいはレーザー光の照射によっても形成することができる。
【0049】
内容物に含まれる余分な油分、水分は、傷加工B(7)のうち最内層のオレフィン系樹脂層(5)の傷加工を経て、紙または不織布層(4)への傷加工B(7)に達し、吸収される。
【0050】
これによって、例えば内容物が食品の場合に、含まれる余分な油分や水分を吸収し、食味や食感が低下することを回避することができ、より良好な状態で食用に供することが可能になる。
【0051】
一般に紙または不織布層(4)に油分や水分が吸収された場合には、その部分が濡れ色となって外観に好ましくない影響を与えるが、本発明による包装袋を構成する積層体(10)においては、オレフィン系樹脂中間層(3)を介して、その外側に隠蔽層(2)が設けてあるために、包装袋外側からは、不可視である。
【0052】
最内層のオレフィン系樹脂層(5)はまた、積層体を製袋してする際のシーラント層として効果的である。
【0053】
シーラント層を有する積層体(10)は、2枚の積層体をシーラント層同士が対向するように重ねて、例えば加熱、加圧してヒートシールすることによって互いを接着させ、包装袋本体に製袋することが可能である。
【0054】
シーラント層の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を使用することができる。
【0055】
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0056】
シーラント層の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、積層体上に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、積層体(10)の表面にシーラント層を形成することも可能である。
【0057】
このようにして本発明によれば、密封可能な包装袋において、内容物の油分、水分を吸収可能であり、かつ電子レンジによる内容物の加熱の際の、自動通蒸機構を有する包装袋の提供が可能である。
【実施例0058】
以下本発明を、実施例及び比較例によって更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0059】
評価用サンプルとして包装袋を作成し、以下の項目、試験方法で評価を行った。
【0060】
1.製品外観
評価用包装袋は積層体を15cm×15cmのサイズに合掌袋化して、内容物として冷凍チャーハン100gを充填して密封したものを、一時間放置して包装袋の外観を目視で観察して評価した。
評価は10名で行い、5段階評価とし、平均点を算出した。
(劣る)1←→5(優)。
また観察された不具合については、×として、評価結果に表記した。
【0061】
2.レンジアップ後の製品ベタつき
評価用包装袋は積層体を15cm×15cmのサイズに合掌袋化して、内容物として冷凍チャーハン100gを充填して密封したものを、電子レンジで加熱調理した。
電子レンジ庫内から取り出し、内容物のベタつき感と、包装袋表面からの外観を目視で観察して評価した。
評価は10名で行い、5段階評価とし、平均点を算出した。
(劣る)1←→5(優)。
また観察された不具合については、×として、評価結果に表記した。
【0062】
3.輸送試験
評価用包装袋は積層体を15cm×15cmのサイズに合掌袋化して、内容物として冷凍チャーハン100gを充填して密封したものを、段ボール箱に20個収納した。
振動試験機を用いて、評価用サンプルの破損数、包装袋からの漏れ出しの有無を観察して評価した。振動試験の条件は下記の通りである。
25℃環境において、垂直加振5~50Hz 0.75G 120分。
また観察の結果不具合とした現象については、×として、評価結果に表記した。
【0063】
4.落下試験
評価用包装袋は積層体を15cm×15cmのサイズに合掌袋化して、内容物として冷凍チャーハン100gを充填して密封したものを、段ボール箱に20個収納した。
輸送試験と同様の振動試験を行った後に、落下試験を行った。
落下試験の条件は下記のとおりである。
25℃環境において、80cmの高さより落下を10回繰り返したのち、評価用サンプルの破損数を観察、評価した。
また観察の結果不具合とした現象については、×として、評価結果に表記した。
【0064】
<実施例1>
図1は、本発明に係る包装袋を構成する積層体の一実施態様を説明するための、部分断面模式図であり、また実施例1の評価用包装袋を構成する積層体を説明するための、部分断面模式図である。
【0065】
評価用包装袋を構成する積層体の層構成は下記のとおりである。
包装袋外側から、
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/白色印刷インキ層/押し出しポリエチレン樹脂中間層(厚さ39μm)/純白紙層(30g/m)/最内層のポリエチレン樹脂層(押し出し 厚さ30μm)。
傷加工は、下記のとおりである。
傷加工A:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)及び白色印刷インキ層を貫通して設けた。並びに純白紙層(30g/m)を貫通して設けた。
傷加工B:純白紙層(30g/m)及び最内層のポリエチレン樹脂層(押し出し 厚さ30μm)を貫通して設けた。
この構成は、本発明による包装袋を構成する積層体に関する規定の範囲を満足するものである。
【0066】
<比較例1>
図2は、比較例1の評価用包装袋を構成する積層体を説明するための、部分断面模式図である。
【0067】
評価用包装袋を構成する積層体の層構成は下記のとおりである。
包装袋外側から、
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/白色印刷インキ層/押し出しポリエチレン樹脂中間層(厚さ39μm)/不織布層(30g/m)。
傷加工は、下記のとおりである。
傷加工A:設けていない。
傷加工B:設けていない。
この構成は、本発明による包装袋を構成する積層体に関する規定の範囲を逸脱するものである。
【0068】
<比較例2>
図3は、比較例2の評価用包装袋を構成する積層体を説明するための、部分断面模式図である。
【0069】
評価用包装袋を構成する積層体の層構成は下記のとおりである。
包装袋外側から、
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/白色印刷インキ層/押し出しポリエチレン樹脂中間層(厚さ39μm)/最内層のポリエチレン樹脂層(押し出し 厚さ30μm)。
傷加工は、下記のとおりである。
傷加工C: ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)及び白色印刷インキ層及び純白紙層(30g/m)及び最内層のポリエチレン樹脂層(押し出し 厚さ30μm)を貫通して設けた。すなわち、傷加工Cは積層体を構成するすべての層を貫通して設けたものである。
傷加工B:純白紙層(30g/m)及び最内層のポリエチレン樹脂層(押し出し 厚さ30μm)を貫通して設けた。
この構成は、本発明による包装袋を構成する積層体に関する規定の範囲を逸脱するものである。
【0070】
評価結果を、表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示す結果から明らかなように、本発明による実施例1においては、評価項目すべてについて、良好な数値、観察結果が得られており、観察の結果不具合として比較例1または比較例2において表記した現象もみられなかった。
【0073】
各評価項目ごとに、評価結果を考察する。
外観については、本発明による実施例1は比較例1と並んで4.3点であって、高得点である。これは、積層体中にオレフィン系樹脂中間層を有しており、この層には傷加工をしていないために、包装袋の内外を隔てるバリア層として機能しており、内容物である冷凍チャーハンの油分の滲みだしが見られなかったことによるものである。一方、積層体を貫通する傷加工Cを設けた比較例2は、この貫通孔からの油分の滲みだしが、包装袋の外観を悪くしている結果である。
【0074】
ベタつきについては、実施例1、比較例1、比較例2とも大きな差異は見られなかった。これはいずれも、加熱調理中に、通蒸が行われ内容物のベタつき感は見られない結果になったものである。しかしながら、比較例1においては、傷加工による自動通蒸機構は備えていないために、合掌貼りのセンターシール部が、成行きで破袋して通蒸する結果となり、外観面では劣る結果となったものである。
【0075】
輸送試験については、実施例1、比較例1、比較例2ともに評価用サンプルの破損は見られなかった。しかしながら、比較例2において、油漏れが観察されており、外観面で劣る結果である。これは、前述の外観の評価と同様の油の滲みだし原因であると考えられる。
【0076】
落下試験については、比較例2において、評価用サンプルの破損が見られた。これは、傷加工Cが破れの起点となって、包装袋の破れが発生したものであって、比較例2において積層体の機械的強度が弱い結果である。また、比較例1においては、評価用サンプルの破損は見られないものの、合掌貼りのセンターシール部が、シール抜けする現象があり、これは比較例2においては、シーラント層が不織布からなるために、シール強度が脆弱であることによると考えられる。
【0077】
このようにして、本発明によれば、密封可能な包装袋において、内容物の油分、水分を
吸収可能であり、かつ電子レンジによる内容物の加熱の際の、自動通蒸機構を有する包装袋の提供が可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0078】
1・・・プラスチックフィルムからなる基材層
2・・・隠蔽層
3・・・オレフィン系樹脂中間層
4・・・紙または不織布層
5・・・最内層のオレフィン系樹脂層
6・・・傷加工A
7・・・傷加工B
8・・・不織布
9・・・傷加工C
10・・・積層体
図1
図2
図3