(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121071
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】選択装置、選択方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220812BHJP
G06N 3/04 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G06T7/00 300B
G06T7/00 350B
G06N3/04 154
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018222
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】三橋 亮太
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096FA32
5L096GA51
5L096JA11
5L096JA16
5L096KA13
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】クラスごとの識別精度に応じて、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組み合わせを選択することができる選択装置、選択方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】三つ以上の識別器からなる識別器群に含まれる識別器を組み合わせて構成される複合識別器について、前記識別器のそれぞれが、評価用画像を複数のクラスに識別した識別結果に基づいて、前記識別器のそれぞれを評価した評価結果を取得する評価結果取得部と、前記複合識別器に要求される要求条件であって、クラスごとに指定された識別精度を含む要求条件を取得する要求条件取得部と、前記評価結果及び前記要求条件に基づいて、前記複合識別器を構成する識別器を前記識別器群から選択する選択部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三つ以上の識別器からなる識別器群に含まれる識別器を組み合わせて構成される複合識別器について、前記識別器のそれぞれが、評価用画像を複数のクラスに識別した識別結果に基づいて、前記識別器のそれぞれを評価した評価結果を取得する評価結果取得部と、
前記複合識別器に要求される要求条件であって、クラスごとに指定された識別精度を含む要求条件を取得する要求条件取得部と、
前記評価結果及び前記要求条件に基づいて、前記複合識別器を構成する識別器を前記識別器群から選択する選択部と、
を備える選択装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記評価結果に基づいて前記識別器のそれぞれについて識別精度に応じた順位を決定し、前記決定した順序に沿って複数の前記識別器を選択し、前記選択した複数の前記識別器からなる前記識別器の組合せの候補を抽出し、前記抽出した組合せの候補を構成要素とする前記複合識別器による識別結果に基づいて、前記複合識別器が前記要求条件を満たすか否かを判定し、前記判定した判定結果に基づいて、前記複合識別器を構成する識別器を前記識別器群から選択する、
請求項1に記載の選択装置。
【請求項3】
前記評価結果取得部は、クラス全体の識別精度の平均値を、前記評価結果として取得し、
前記選択部は、前記平均値に基づいて、前記順位を決定する、
請求項2に記載の選択装置。
【請求項4】
前記評価結果取得部は、前記識別器のそれぞれが識別に使用したメモリ容量を、前記評価結果として取得し、
前記要求条件取得部は、前記複合識別器が識別に使用可能なメモリ容量の上限値を、前記要求条件として取得し、
前記選択部は、前記要求条件に示されたメモリ容量を超えない範囲にて前記順位に沿った複数の識別器を選択する、
請求項2又は請求項3に記載の選択装置。
【請求項5】
前記要求条件取得部は、前記複合識別器を構成する識別器の個数の下限値nを、前記要求条件として取得し、nは任意の自然数であり、
前記選択部は、前記順位に沿ってm個の識別器を選択し、mは(m>n)を満たす自然数であり、前記選択したm個の識別器から、n数の識別器を選択し、選択したn個の識別器に、残りの(m-n)個の識別器のうちの少なくとも一つの識別器を加えた前記識別器の組合せの候補を抽出する、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の選択装置。
【請求項6】
前記要求条件取得部は、前記複合識別器による識別に要する実行時間の下限値を、前記要求条件として取得し、
前記選択部は、前記複合識別器を構成する前記識別器の組合せの候補を抽出し、前記抽出した組合せからなる前記複合識別器による識別に要した時間が、前記要求条件における実行時間を下回るものを、前記複合識別器を構成する識別器の組合せとして選択する、
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の選択装置。
【請求項7】
選択装置に係るコンピュータ装置による選択方法であって、
評価結果取得部が、三つ以上の識別器からなる識別器群に含まれる識別器を組み合わせて構成される複合識別器について、前記識別器のそれぞれが、評価用画像を複数のクラスに識別した識別結果に基づいて、前記識別器のそれぞれを評価した評価結果を取得し、
要求条件取得部が、前記複合識別器に要求される要求条件であって、クラスごとに指定された識別精度を含む要求条件を取得し、
選択部が、前記評価結果及び前記要求条件に基づいて、前記複合識別器を構成する識別器を前記識別器群から選択する、
選択方法。
【請求項8】
選択装置に係るコンピュータ装置を、
三つ以上の識別器からなる識別器群に含まれる識別器を組み合わせて構成される複合識別器について、前記識別器のそれぞれが、評価用画像を複数のクラスに識別した識別結果に基づいて、前記識別器のそれぞれを評価した評価結果を取得する評価結果取得手段、
前記複合識別器に要求される要求条件であって、クラスごとに指定された識別精度を含む要求条件を取得する要求条件取得手段、
前記評価結果及び前記要求条件に基づいて、前記複合識別器を構成する識別器を前記識別器群から選択する選択手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択装置、選択方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディープラーニングに代表される機械学習技術を利用した識別技術が急速に発展している。このような機械学習技術を利用した技術開発においては、機械学習技術に深い知見を持つ開発者やエンジニア等の専門家による知見に基づく調整が必要不可欠である。例えば、特許文献1、及び特許文献2には、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを最適化し機械学習の開発を効率的に進めるための技術が記載されている。
【0003】
ここで、機械学習技術の導入先である工場等の作業従事者、すなわち非専門家にとって、機械学習のための識別モデルの細かな調整を実施することは困難である。しかし、導入先が持つ課題を深く理解しており、導入先での細かな調整が求められる場合が多く存在する。したがって、専門家を介さずとも、非専門家がモデルを案件ごとに特化し、識別モデルの細かな調整を実施することができるシステムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-91083号公報
【特許文献2】特開2019-106112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1には、与えられた複数の弱識別器から全クラスの平均識別精度が最も高い弱識別器の組み合わせを決定する技術が記載されている。しかし、特許文献1では、平均識別精度や実行時間及びメモリ条件を指定することができない。特許文献2には、平均識別精度と実行時間及びメモリ条件を指定する技術が記載されている。しかし、クラスごとの識別精度を指定することができない。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、クラスごとの識別精度に応じて、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組み合わせを選択することができる選択装置、選択方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の選択装置は、三つ以上の識別器からなる識別器群に含まれる識別器を組み合わせて構成される複合識別器について、前記識別器のそれぞれが、評価用画像を複数のクラスに識別した識別結果に基づいて、前記識別器のそれぞれを評価した評価結果を取得する評価結果取得部と、前記複合識別器に要求される要求条件であって、クラスごとに指定された識別精度を含む要求条件を取得する要求条件取得部と、前記評価結果及び前記要求条件に基づいて、前記複合識別器を構成する識別器を前記識別器群から選択する選択部と、備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の選択方法は、選択装置に係るコンピュータ装置による選択方法であって、評価結果取得部が、三つ以上の識別器からなる識別器群に含まれる識別器を組み合わせて構成される複合識別器について、前記識別器のそれぞれが、評価用画像を複数のクラスに識別した識別結果に基づいて、前記識別器のそれぞれを評価した評価結果を取得し、要求条件取得部が、前記複合識別器に要求される要求条件であって、クラスごとに指定された識別精度を含む要求条件を取得し、選択部が、前記評価結果及び前記要求条件に基づいて、前記複合識別器を構成する識別器を前記識別器群から選択することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のプログラムは、選択装置に係るコンピュータ装置を、三つ以上の識別器からなる識別器群に含まれる識別器を組み合わせて構成される複合識別器について、前記識別器のそれぞれが、評価用画像を複数のクラスに識別した識別結果に基づいて、前記識別器のそれぞれを評価した評価結果を取得する評価結果取得手段、前記複合識別器に要求される要求条件であって、クラスごとに指定された識別精度を含む要求条件を取得する要求条件取得手段、前記評価結果及び前記要求条件に基づいて、前記複合識別器を構成する識別器を前記識別器群から選択する選択手段、として機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クラスごとの識別精度に応じて、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組み合わせを選択することができる。したがって、機械学習技術に関して専門家ではない工場等の作業従事者等であっても、現場で扱っている識別対象を識別する精度が向上するように調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る選択装置20が適用される選択システム1の構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る画像情報120の構成の例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る識別器情報121の構成の例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る評価結果情報220の構成の例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る複合識別器情報221の構成の例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る要求条件の例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る出力装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る選択装置20が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の選択システム1及び選択装置20について図面を参照しながら説明する。
【0013】
選択システム1は、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを選択するシステムである。アンサンブル識別器は、「複合識別器」の一例であり、複数の識別器による識別結果を用いて、識別を行うモデルである。アンサンブル識別器を構成する弱識別器は、「識別器」の一例であり、機械学習の技術を用いて識別を行う機械学習モデルである。
【0014】
弱識別器は、任意の機械学習モデルであってよく、例えば、教師あり学習のモデルであってもよいし、教師なし学習のモデルであってもよい。弱識別器は、任意の機械学習の手法が適用されてよい。任意の機械学習とは、例えば、SVM(サポートベクトルマシン)、k平均法(k-means)、改良されたk平均法であるk-means++、ニューラルネットワーク(多クラス識別を実施する畳み込みニューラルネットワーク)、決定木などである。
【0015】
アンサンブル識別器を構成する複数の弱識別器(「識別器群」の一例)には、互いに異なる内容を学習させたモデルが用いられる。互いに異なる内容を学習した複数の弱識別器による識別結果を用いて総合的に識別することにより、アンサンブル識別器にて様々な識別対象を精度よく識別することが可能となる。例えば、アンサンブル識別器は、多数決により識別結果を決定する。アンサンブル識別器は、多くの弱識別器によって識別された結果を、そのアンサンブル識別器の識別結果として出力する。これにより、個々の弱識別器が識別対象によっては誤った識別をしてしまう場合であっても、他の多数の弱識別器により正しい識別が行われる場合には、アンサンブル識別器は正しい識別結果を出力することが可能となる。或いは、アンサンブル識別器は、弱識別器による識別結果を重みづけした結果を用いて識別結果を決定するようにしてもよい。これにより、多くの弱識別器が識別対象によっては誤った識別をしてしまう場合であっても、特定の高精度な弱識別器により正しい識別が行われる場合には、アンサンブル識別器は正しい識別結果を出力することが可能となる。このような工夫により、アンサンブル識別器は、様々な識別対象に対して、正しく識別することができる。したがって、識別の精度を向上させることが可能である。
【0016】
また、本実施形態では、識別対象に応じて、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せが決定される。例えば、識別対象に応じて、その識別対象を精度よく識別することができるように、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せが決定される。
【0017】
アンサンブル識別器による識別対象は、画像である。アンサンブル学習器は、例えば、画像に示された文字を識別する。以下の説明では、アンサンブル識別器による識別の対象となる画像を、対象画像という。対象画像は、例えば、様々な種別(漢字や平仮名、片仮名、変体仮名等)の文字が、様々な書体(楷書体、行書体、草書体等)で示された画像である。アンサンブル識別器は、入力された対象画像について、対象画像に示された文字を識別し、識別結果を出力する。
【0018】
なお、ここでは、アンサンブル識別器が画像に示された文字である場合を説明したが、これに限定されることはない。アンサンブル識別器は、例えば、画像に示された動物や植物を識別するものであってもよい。この場合、対象画像には、動物や植物が示されている。
【0019】
本実施形態では、アンサンブル識別器による識別の精度(識別精度)を評価する。評価は、例えば、評価用の画像(評価用画像という)を用いて行う。評価用画像には、対象画像と同様に、様々な種別(漢字や平仮名、片仮名、変体仮名等)の文字が、様々な書体(楷書体、行書体、草書体等)で示されている。そして、評価用画像には、画像に示された文字のクラスの識別結果(正解値)がラベリング(対応付け)されている。
【0020】
具体的に、アンサンブル識別器は、画像に示された文字が「橋」であるか、「喬」であるか、の2クラスを識別するモデルである場合、「橋」の文字が示された評価用画像には、「橋」であることがラベリングされている。この場合、「喬」の文字が示された評価用画像には、「喬」であることがラベリングされている。また、「僑」の文字が示された評価用画像には、「橋」及び「喬」の何れでもないことがラベリングされている。
【0021】
図1は、実施形態に係る選択装置20が適用される選択システム1の構成の例を示すブロック図である。選択システム1は、例えば、出力装置10と、選択装置20とを備える。選択システム1では、出力装置10から出力された弱識別器による識別を評価した評価結果に基づいて、ユーザが、アンサンブル識別器に要求する条件を充足するように、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを選択する。
【0022】
出力装置10は、アンサンブル学習器を評価した評価結果を出力するコンピュータ装置である。ここでの評価結果は、アンサンブル学習器による識別を種々の観点から評価した結果である。出力装置10は、例えば、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。
【0023】
通信部11は、例えば、汎用の通信用IC(Integrated Circuit)などによって実現される。通信部11は、選択装置20と通信を行う。記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)、或いはこれらの組合せによって実現される。記憶部12は、出力装置10の各構成要素を実現するためのプログラム、プログラムを実行する際に用いられる変数、及び各種の情報を記憶する。記憶部12は、例えば。画像情報120と、識別器情報121とを記憶する。
【0024】
図2には、画像情報120の構成の例が示されている。画像情報120は、評価用画像に関する情報である。画像情報120は、画像ごとに作成される。画像情報120は、例えば、画像情報IDと、画像と、クラスなどの項目を備える。画像情報IDは、評価用画像を任意に識別する識別情報である。画像は、評価用画像の内容を示す情報であり、例えば、画素ごとのRGB値を示す情報や画像ファイルのファイル名称を示す情報である。クラスは、評価用画像に対応付けられた文字の正しい識別結果を示す情報である。
【0025】
図3には、識別器情報121の構成の例が示されている。識別器情報121は、弱識別器に関する情報である。識別器情報121は、例えば、識別器情報ID、構成、内部パラメータなどの項目を備える。識別器情報IDは、弱識別器を一意に識別する識別情報である。構成は、弱識別器の構成を示す情報であり、例えば、弱識別器がニューラルネットワークを用いたモデルであれば、入力層や中間層及び出力層などの構成や畳み込みの有無などを示す情報である。内部パラメータは弱識別器の内部パラメータの設定値であり、例えば、弱識別器がニューラルネットワークを用いたモデルであれば、重み係数やバイアス値などを示す情報である。
【0026】
図1の説明に戻り、制御部13は、出力装置10が備えるハードウェアとしてのCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のProcessing Unit(プロセッシングユニット)が記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、機能が実現される。
【0027】
制御部13は、例えば、取得部130と、識別部131と、評価部132と、装置制御部133とを備える。取得部130は、評価用画像の画像情報を取得する。ここで取得部130が取得する画像情報は、例えば、記憶部12に記憶された画像情報120である。或いは、取得部130は、通信部11を介して外部から入力された画像情報を取得するように構成されてもよい。取得部130は、取得した画像情報を、識別部131に出力する。
【0028】
識別部131は、弱識別器のそれぞれに評価用画像を識別させる。ここでの弱識別器は、アンサンブル識別器の構成要素となる複数の識別器である。識別部131は、例えば、記憶部12に記憶された識別器情報121に基づいて、識別器を生成し、生成した識別器に画像情報を入力して得られた出力を、識別結果とする。識別結果は、画像に識別対象が示されているか、否かを示す二値の情報である。或いは、識別結果は、画像に識別対象が示されている確率を示す情報である。識別部131は、識別結果を、評価部132に出力する。
【0029】
評価部132は、識別結果を用いて弱識別器による識別を評価する。評価部132は、例えば、弱識別器による識別について、以下の評価項目について評価する。具体的には、以下の評価項目について、それぞれの評価項目に対応付けられた指標を算出する。
【0030】
(評価項目1)クラス全体の識別精度の統計値
(評価項目2)クラスごとの識別精度
(評価項目3)メモリ容量
(評価項目4)実行時間
【0031】
(評価項目1)は、クラスごとの識別精度のそれぞれを用いて算出可能な統計量であり、例えば、クラス全体の識別精度の平均値である。クラス全体の識別精度の統計量は、例えば、クラスごとの識別精度の平均値、最頻値、最大値、最小値、分散値などである。
【0032】
アンサンブル識別器が導入される現場が持つ課題の例として、識別するクラスの重要度が挙げられる。一般的に、どのクラスに対しても高い識別精度を有するモデルが優秀な識別器であると考えられており、全てのクラスに対する識別精度の平均値(平均識別精度)を、モデルの優秀さの度合いを示す指標として用いられる場合がほとんどである。しかしながら、導入先では、特定のクラスにおける識別精度を重要視し、それ以外のクラスに対してはそこまで高い識別精度を求めない場合がある。つまり、平均識別精度を用いて、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを決定する手法では、上記のような状況を考慮できない。この対策として、本実施形態では、(評価項目2)を、評価指標として用いる。
【0033】
(評価項目2)は、画像のクラスごとに、その画像を正しく識別できた度合を示す指標である。例えば、クラスごとの識別精度は、特定のクラスに属する画像について、弱識別器が識別した画像の総数に対する、正しく識別できた真陽性である画像の数の割合を百分率にて示した値である。例えば、評価画像のうちクラスC1に分類された画像が100枚であり、その100枚の画像を識別した結果、90枚の画像について正しく識別できた場合には、識別精度は90%となる。なお、識別精度は、真陽性を示す指標に限定されることはなく、例えば、偽陽性、真陰性、偽陽性、或いはこれらの組合せを示す指標であってよいのは勿論である。
【0034】
また、導入先の現場が持つ課題の例として、メモリ容量が挙げられる。導入先のPCなどのコンピュータ装置は、開発元のPCよりも、メモリ容量が限られていることがほとんどである。開発元にて開発した識別器が、メモリ容量が大きすぎて導入先のPCに搭載できない場合があり得る。この場合、再度、開発元にて専門家が識別器のメモリ容量を削減して作成しなおし、再度、導入をする必要がある。このような作り直しに係る作業は非常に冗長な作業である。この対策として、本実施形態では、予め、導入先にて許容されるメモリ容量を、後述する要求条件として取得し、取得した要求条件を満たす弱識別器を選択することができるように、次に説明する(評価項目3)を、評価指標として用いる。
【0035】
(評価項目3)は、弱識別器が識別に要した時間である。メモリ容量は、識別対象とした評価画像のクラスごとに算出されてもよいし、評価画像のクラスごとに算出されてもよい。識別するごとに、その識別に要したメモリ容量が変動する場合には、クラスごとの、或いは全ての評価画像のそれぞれの識別に要したメモリ容量の統計量(例えば、平均値)が、メモリ容量として算出される。
【0036】
また、導入先の現場が持つ課題の例として、識別精度と実行時間との関係が挙げられる。識別精度と実行時間とは、トレードオフの関係にあり、高精度な識別を求める際には複数の弱識別器の処理が必要なため実行時間がかかる。一方、実行時間を短縮するには少ない弱識別器で処理を行う必要があるため、識別精度が低くなる傾向にある。識別精度と実行時間のどちらを優先するかは、導入先に依存する。このため、導入先の作業従事者が、識別精度と実行時間の何れを優先させるかを、任意に設定できるシステムが求められる。この対策として、本実施形態では、次に説明する(評価項目4)を、評価指標として用いる。
【0037】
(評価項目4)は、弱識別器が識別に要した時間である。実行時間は、識別対象とした評価画像のクラスごとに算出されてもよいし、評価画像のクラスごとに算出されてもよい。識別するごとに、その識別に要した実行時間が変動する場合には、クラスごとの、或いは全ての評価画像のそれぞれの識別に要した時間の統計量(例えば、平均値)が、実行時間として算出される。
【0038】
評価部132は、上述した評価項目の全部又は一部について、その評価項目に対応付けられた指標を算出し、算出した指標値を選択装置20に出力する。ここで算出された指標値は、「評価情報」の一例である。
【0039】
装置制御部133は、出力装置10を統合的に制御する。例えば、装置制御部133は、評価部132によって算出された指標値を、通信部11を介して、選択装置20に送信する。装置制御部133は、通信部11によって受信された評価用画像を示す情報を、記憶部12の画像情報120として記憶させる。装置制御部133は、通信部11によって受信された弱識別器を示す情報を、記憶部12の識別器情報121として記憶させる。
【0040】
選択装置20は、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを選択するコンピュータ装置である。選択装置20は、出力装置10から弱識別器による識別を評価した評価結果を受信する。また、選択装置20は、ユーザによる操作などによって入力された要求条件を取得する。要求条件は、アンサンブル識別器を用いた識別について、ユーザが要求する条件であり、例えば、識別精度、実行時間、メモリ容量などの評価指標について、どの程度の指標値を要求するかを示す情報である。選択装置20は、評価結果、及び、要求条件に基づいて、ユーザにとって最適な、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを選択する。
【0041】
選択装置20は、例えば、通信部21と、記憶部22と、制御部23と、表示部24と、入力部25とを備える。
【0042】
通信部21は、例えば、汎用の通信用ICなどによって実現される、外部の装置と通信を行う機能部である。通信部21は、例えば、出力装置10と通信を行う。表示部24は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置を含み、制御部23にしたがった画像を表示装置に表示する。入力部25は、例えば、マウスやキーボードなどの入力装置を含み、入力装置に入力された情報を取得し、取得した情報を制御部23に出力する。
【0043】
記憶部22は、例えば、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置、或いはこれらの組合せによって実現される。記憶部22は、選択装置20の各構成要素を実現するためのプログラム、プログラムを実行する際に用いられる変数、及び各種の情報を記憶する。記憶部22は、例えば、評価情報220と、複合識別器情報221とを記憶する。
【0044】
図4は、評価情報220の構成の例を示す図である。評価情報220は、出力装置10から出力された、弱識別器の識別を評価した評価結果を示す情報である。評価情報220は、弱識別器ごとに生成される。評価情報220は、例えば、評価情報IDと、入力画像と、識別器と、識別精度と、実行時間と、メモリ容量などの項目を備える。評価情報IDは、評価結果を一意に識別する識別情報である。入力画像は、評価する際に弱識別器に入力された評価用画像を示す情報である。識別器は、評価の対象とした弱識別器を示す情報であり、例えば、評価の対象とした弱識別器の識別器情報IDである。
【0045】
識別精度は、弱識別器による識別の識別精度を示す情報である。識別精度は、上述した(評価項目1)、及び(評価項目2)などに相当する指標値である。識別精度は、クラスごとに算出され、クラスごとの評価指標が示される。
【0046】
メモリ容量は、弱識別器による識別に要したメモリ容量を示す情報である。メモリ容量は、上述した(評価項目3)に相当する指標値である。この図の例では、メモリ容量がクラスごとに算出され、クラスごとの実行時間が示されている。
【0047】
実行時間は、弱識別器による識別に要した時間を示す情報である。実行時間は、上述した(評価項目4)に相当する指標値である。この図の例では、実行時間がクラスごとに算出され、クラスごとの実行時間が示されている。
【0048】
複合識別器情報221は、アンサンブル識別器に関する情報である。ここでのアンサンブル識別器は、選択装置20によって選択された弱識別器を組合せて生成されたものである。複合識別器情報221は、選択装置20によって選択された弱識別器を組合せ、つまり、アンサンブル識別器ごとに生成される。複合識別器情報221は、例えば、複合識別器情報ID、入力画像、構成、識別精度、実行時間、及びメモリ容量などの項目を備える。複合識別器情報IDは、複合識別器を一意に識別する識別情報である。入力画像は、複合識別器に入力させた画像を示す情報である。構成は、複合識別器の構成を示す情報である。識別精度は、複合識別器に入力画像の項目にて特定される画像を識別した場合における識別精度である。実行時間は、複合識別器が、入力画像の項目にて特定される画像の識別に要した時間である。メモリ容量は、複合識別器が、入力画像の項目にて特定される画像の識別に要したメモリ容量である。
【0049】
図1の説明に戻り、制御部23は、選択装置20が備えるハードウェアとしてのCPU、GPU等のProcessing Unitが記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、機能が実現される。
【0050】
制御部23は、例えば、評価結果取得部230と、要求条件取得部231と、第1選択部232と、複合識別部233と、第2選択部234と、装置制御部235とを備える。評価結果取得部230は、出力装置10によって出力された、弱識別器による識別を評価した評価結果を取得する。評価結果取得部230は、取得した評価結果を、第1選択部232に出力する。
【0051】
要求条件取得部231は、要求条件を取得する。要求条件は、アンサンブル識別器を用いた識別について、ユーザが要求する条件であり、例えば、識別精度、実行時間、メモリ容量などの評価指標について、どの程度の指標値を要求するかを示す情報である。要求条件取得部231は、例えば、ユーザによる操作などによって入力された要求条件を、入力部25を介して取得する。要求条件取得部231は、取得した要求条件を、第1選択部232に出力する。
【0052】
第1選択部232は、ユーザの要求条件に沿って、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せの候補を選択する。第1選択部232は、以下の方法にて、弱識別器の組合せの候補を選択する。
【0053】
(選択方法1)弱識別器の順位を決定する。
(選択方法2)使用可能な弱識別器を決定する。
(選択方法3)使用可能な弱識別器の個数の下限値を決定する。
(選択方法4)アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せの候補を決定する。
【0054】
(選択方法1)では、第1選択部232は、評価結果に基づいて、弱識別器の順位を決定する。例えば、第1選択部232は、クラス全体の平均識別精度が高い順に、弱識別器の順位を決定する。評価用画像は、弱識別器に学習させた学習用画像に含まれない画像である。評価用画像を識別した識別精度が高いほど、未学習の画像に対する識別能力、つまり汎化性能が高い。第1選択部232は、例えば、この汎化性能が高い順に、弱識別器を順位付けする。
【0055】
(選択方法2)では、第1選択部232は、(選択方法1)にて決定した順位と、評価結果における弱識別器のメモリ容量と、要求条件において指定されたメモリ容量の上限値とに基づいて、使用可能な弱識別器の個数の上限値を決定する。第1選択部232は、例えば、順位の高い弱識別器から順に弱識別器を選択し、選択した弱識別器において識別に要するメモリ容量を加算していく。第1選択部232は、加算したメモリ容量が、要求条件において指定されたメモリ容量の上限値を超えない範囲において、最も多くの数の弱識別器を選択する。第1選択部232は、このようにして選択した弱識別器を、アンサンブル識別器において使用可能な識別器とする。
【0056】
(選択方法3)では、第1選択部232は、例えば、ユーザの入力操作などにより指定された個数を、アンサンブル識別器において使用可能な識別器の下限値とする。ここでの、下限値は、ユーザに提示するアンサンブル識別器を選択する際に設定されるパラメータとして用いられる。尚、ここで決定する使用可能な識別器の下限値は、(選択方法2)において選択された弱識別器の個数より小さい値である。
【0057】
(選択方法4)では、第1選択部232は、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せの候補を決定する。(選択方法2)にて選択された弱識別器の個数をm個とする。(選択方法3)にて決定された個数をn個とする。ただし、mとnは、m>nの関係となる自然数である。第1選択部232は、(選択方法2)にて選択されたm個の弱識別器から、n個の弱識別器を選択する。例えば、第1選択部232は、例えば、(選択方法1)にて決定された順位が高い順に、n数の弱識別器を選択する。第1選択部232は、n個の弱識別器に、残りの(m-n)個の弱識別器のうち少なくとも一つの弱識別器を用いて取り得る全ての組合せを抽出する。第1選択部232は、抽出した全ての組合せを、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せの候補とする。第1選択部232は、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せの候補を示す情報を、複合識別部233に出力する。
【0058】
複合識別部233は、第1選択部232により選択された弱識別器の組合せのそれぞれを構成要素とするアンサンブル識別器に評価用画像を識別させる。複合識別部233は、例えば、アンサンブル識別器に、評価用画像の画像情報を入力して得られた出力を、そのアンサンブル識別器による識別結果とする。複合識別部233は、アンサンブル識別器の識別結果を用いて、アンサンブル識別器による識別を評価する。具体的には、アンサンブル識別器による識別について、そのクラスごとの識別精度、クラス全体の識別精度の平均値、メモリ容量、実行時間などを算出する。複合識別部233は、算出結果を、複合識別器情報221に記憶させる。
【0059】
第2選択部234は、複合識別器情報221、及び要求条件に沿って、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを、決定する。第2選択部234は、例えば、複合識別器情報221に対応付けられたアンサンブル識別器ごとに、クラスごとの識別精度が、要求条件にて示されたクラスごとの識別精度を満たすか否かを判定し、要求条件にて示されたクラスごとの識別精度を満たすアンサンブル識別器を抽出する。
【0060】
また、第2選択部234は、要求条件にてクラス全体における識別精度の平均値が指定された場合には、クラスごとの識別精度を満たすアンサンブル識別器のそれぞれについて、クラス全体の識別精度が、要求条件にて示されたクラスごとの識別精度の平均値を満たすか否かを判定し、要求条件にて示されたクラス全体の識別精度の平均値を満たすアンサンブル識別器を抽出する。
【0061】
また、第2選択部234は、要求条件にて識別に要する実行時間の下限値が指定された場合には、クラスごとの識別精度及びクラス全体の識別精度の平均値を満たすアンサンブル識別器のそれぞれについて、その識別に要する実行時間が、要求条件にて示された実行時間を満たすか否かを判定し、要求条件にて示された実行時間を満たすアンサンブル識別器を抽出する。
【0062】
このようにして、第2選択部234は、要求条件にて指定された、クラスごとの識別精度、クラス全体の識別精度の平均値、及び実行時間を満たすアンサンブル識別器を抽出する。第2選択部234は、抽出したアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを、ユーザに提供するアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せとして決定する。
【0063】
第2選択部234は、ユーザに提供するアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを、表示部24に表示する。これにより、ユーザに、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを認識させることができる。
【0064】
この場合において、第2選択部234は、アンサンブル識別器を構成するそれぞれの弱識別器について、その識別精度や実行時間等を、表示部24にするようにしてもよい。或いは、第2選択部234は、ユーザに提供するアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを決定する過程を、表示部24に表示するようにしてもよい。
【0065】
この場合、第2選択部234は、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを決定する過程において、ユーザと対話しながら、その組合せを決定するようにしてもよい。例えば、第2選択部234は、まず、要求条件にて示されたクラスごとの識別精度を満たすアンサンブル識別器を抽出し、その抽出したアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを、確認メッセージと共に、表示部24に表示する。確認メッセージには、表示したアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せについて、さらに、他の条件、すなわち、クラス全体の識別精度の平均値や、実行時間による絞り込みを行うか否かを確認するメッセージである。
【0066】
確認メッセージを視認したユーザは、キーボードなどを用いた入力操作により、絞り込みを行うか否かを指示する。第2選択部234は、入力部25を介してユーザからの指示を示す情報を取得し、その指示に応じる。具体的には、第2選択部234は、絞り込みを指示された場合、他の条件による絞りこみを実行する。絞り込みを実行するか否かをユーザに確認することにより、要求条件におけるクラス全体の識別精度の平均値や、実行時間などの条件が、必須条件なのか、譲歩可能な条件なのかをユーザから確認することができる。このため、ユーザの真の要求に沿って、より適切なアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを選択することが可能である。
【0067】
装置制御部235は、選択装置20を統合的に制御する。例えば、装置制御部235は、評価結果取得部230によって取得された評価結果を、記憶部22の評価情報220として記憶させる。装置制御部235は、複合識別部233によって導出されたアンサンブル識別器による識別結果を、記憶部22の複合識別器情報221として記憶させる。また、装置制御部235は、第2選択部234による選択結果を、表示部24に表示させる。
【0068】
図6は、実施形態の表示部24に表示される画像の表示例が示されている。表示部24には、要求条件を入力するための画面の例が表示されている。この図の例に示すように、例えば、要求条件は、クラスごとの識別精度、メモリ容量、実行時間、クラス全体の平均識別精度、及び、最低限使用する弱識別器の個数などの項目を備える。クラスごとの識別精度は、ユーザが要求するアンサンブル識別器におけるクラスごとの識別精度の下限値である。メモリ容量は、ユーザが要求するアンサンブル識別器におけるメモリ容量の上限値である。実行時間は、ユーザが要求するアンサンブル識別器における実行時間の上限値である。クラス全体の平均識別精度は、ユーザが要求するアンサンブル識別器におけるクラス全体の平均識別精度の下限値である。最低限使用する弱識別器の個数は、ユーザが要求するアンサンブル識別器において最低限使用する弱識別器の個数である。
【0069】
ここで、選択システム1において行われる処理の流れを、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、実施形態に係る出力装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図8は、実施形態に係る選択装置20が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0070】
図7に示すように、出力装置10は、弱識別器の識別器情報121を取得する(ステップS1)。また、出力装置10は、評価用画像の画像情報120を取得する(ステップS2)。出力装置10は、識別を実施する(ステップS3)。出力装置10は、ステップS1にて取得した識別器情報121に対応する弱識別器に、ステップS2にて取得した画像情報を入力し、弱識別器から出力された識別結果を、入力した評価用画像における識別結果とする。出力装置10は、弱識別器の評価に用いる全ての評価用画像について、弱識別器に識別させたか否かを判定し(ステップS4)、全ての評価用画像について識別を実施した場合には、ステップS5に進む。一方、出力装置10は、全ての評価用画像について識別を実施していない場合には、ステップS2に戻って評価用画像の識別を繰り返す。
【0071】
出力装置10は、評価を実施する(ステップS5)。出力装置10は、評価用画像について識別を実施した結果に基づいて、クラスごとの識別精度、クラス全体の平均識別精度、実行時間、及びメモリ容量などを算出することによって、弱識別器の識別を評価する。出力装置10は、評価結果を選択装置20に送信する(ステップS6)。出力装置10は、評価の対象とする全ての弱識別器について、評価を実施するか否かを判定し(ステップS7)、全ての弱識別器について評価を実施した場合には、処理を終了する。一方、出力装置10は、全ての識別器について評価を実施していない場合には、ステップS1に戻って弱識別器の評価を繰り返す。
【0072】
なお、
図7のフローでは、ステップS6において弱識別器を評価する度にその評価結果を選択装置20に送信する場合の例を説明したが、これに限定されることはない。出力装置10は、評価の対象とする全ての弱識別器について、評価を実施した後に、まとめて評価結果を選択装置20に送信するようにしてもよい。
【0073】
図8に示すように、選択装置20は、弱識別器の評価結果を、出力装置10から取得する(ステップS10)。また、選択装置20は、ユーザの要求条件を、入力部25などを介して取得する(ステップS11)。選択装置20は、弱識別器の順位を決定する(ステップS12)。選択装置20は、ステップS10にて取得した評価結果における弱識別器ごとのクラス全体の平均識別精度を用いて、例えば、その平均識別精度が高い順に弱識別器の順位を決定する。
【0074】
選択装置20は、アンサンブル識別器に使用可能な弱識別器を決定する(ステップS13)。選択装置20は、ステップS12にて決定した順位の高い順に、要求条件にて指定されたメモリ容量を超えない範囲で、最も多くの弱識別器を選択する。選択装置20は、選択した弱識別器を、アンサンブル識別器に使用可能な弱識別器とする。
【0075】
選択装置20は、アンサンブル識別器に使用可能な弱識別器の個数の下限値を決定する(ステップS14)。選択装置20は、例えば、ユーザの操作入力により指示された値、或いは、予め決定された値を、アンサンブル識別器に使用可能な弱識別器の個数の下限値とする。
【0076】
選択装置20は、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せの候補を決定する(ステップS15)。選択装置20は、ステップS13にて選択したm個から、ステップS14にて選択したn個の弱識別器を選択する。選択装置20は、選択したn個の弱識別器に、残りの(m-n)個の弱識別器のうちの少なくとも一つの弱識別器を追加してなる全ての組合せを、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せの候補とする。
【0077】
選択装置20は、アンサンブル識別を実施する(ステップS16)。選択装置20は、ステップS14にて決定した、弱識別器の組合せの候補を構成要素とするアンサンブル識別器に、評価用画像を入力し、アンサンブル識別器から出力された識別結果を、入力した評価用画像における識別結果とする。選択装置20は、アンサンブル識別器の評価に用いる全ての評価用画像について、識別を実施する。
【0078】
選択装置20は、評価を実施する(ステップS17)。選択装置20は、ステップS15にて実施した識別の結果に基づいて、クラスごとの識別精度、クラス全体の平均識別精度、実行時間、及びメモリ容量などを算出することによって、アンサンブル識別器の識別を評価する。
【0079】
選択装置20は、ステップS15にて決定した全ての弱識別器の組合せの候補を構成要素とするアンサンブル識別器について、評価を実施したか否かを判定し(ステップS18)、全てのアンサンブル識別器について評価を実施した場合には、ステップS18に進む。一方、出力装置10は、全てのアンサンブル識別器について評価を実施していない場合には、ステップS16に戻って、別の組合せによるアンサンブル識別器の評価を繰り返す。
【0080】
選択装置20は、評価結果に基づいて、アンサンブル識別器が、要求条件を満たすか否かを判定する(ステップS19~S22)。ステップS19では、選択装置20は、アンサンブル識別器におけるメモリ容量が、要求条件を満たすか否かを判定する。ステップS20では、選択装置20は、アンサンブル識別器におけるクラスごとの識別精度が、要求条件を満たすか否かを判定する。ステップS21では、選択装置20は、アンサンブル識別器におけるクラス全体の平均識別精度が、要求条件を満たすか否かを判定する。ステップS22では、選択装置20は、アンサンブル識別器における実行時間が、要求条件を満たすか否かを判定する。
【0081】
選択装置20は、アンサンブル識別器が要求条件を満たす場合、そのアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを、ユーザに提示するアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組合せを決定する(ステップS23)。選択装置20は、ステップS14にて決定した全ての弱識別器の組合せの候補を構成要素とするアンサンブル識別器について、要求条件を満たすか否かの確認を行ったか否かを判定し(ステップS24)、全てのアンサンブル識別器について要求条件の確認を実施した場合には、処理を終了する。一方、出力装置10は、全てのアンサンブル識別器について要求条件を満たすか否かの確認を実施していない場合には、ステップS19に戻って、別の組合せによるアンサンブル識別器が要求条件を満たすか否かの確認を行う。
【0082】
なお、
図8のフローでは、ステップS16~S18において全てのアンサンブル識別器を評価した後に、ステップS19~S24において全てのアンサンブル識別器について要求条件を満たすか否かを判定する流れを説明したが、これに限定されることはない。選択装置20は、個々のアンサンブル識別器に識別を実行させてその評価を実施する度に、そのアンサンブル識別器が要求条件を満たすか否かを確認するようにしてもよい。
【0083】
また、
図8のフローでは、ステップS19~S24において要求条件を満たすアンサンブル識別器が存在しなかった場合、ステップS14に戻り、使用可能な弱識別器の個数の下限値を変更した後、再度、ステップS15~S24を実行して、要求条件を満たすアンサンブル識別器が存在するまで処理を繰り返し実行するようにしてもよい。
【0084】
以上説明したように、実施形態の選択装置20は、評価結果取得部230と、要求条件取得部231と、第2選択部234(選択部の一例)とを備える。評価結果取得部230は、評価結果を取得する。評価結果は、弱識別器のそれぞれが、評価用画像を複数のクラスに識別した識別結果に基づいて評価した結果であり、三つ以上の弱識別器(識別器の一例)のそれぞれを評価した評価結果である。弱識別器はアンサンブル識別器(複合識別器の一例)の構成要素となり得る識別器である。要求条件取得部231は、要求条件を取得する。要求条件は、アンサンブル識別器に要求される要求条件であって、クラスごとに指定された識別精度を含む要求条件である。第2選択部234は、評価結果と要求条件とに基づいて、アンサンブル識別器を構成する弱識別器を選択する。
【0085】
これにより、実施形態の選択装置20は、クラスごとに指定された識別精度を含む要求条件を取得することができる。このため、クラスごとに指定された識別精度を満たすようにアンサンブル識別器を構成する弱識別器の組み合わせを選択することができる。すなわち、クラスごとの識別精度に応じて、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の組み合わせを選択することができる。
【0086】
また、実施形態の選択装置20では、第1選択部232(選択部の一例)と、複合識別部233(選択部の一例)と、を更に備える。第1選択部232は、評価結果に基づいて弱識別器のそれぞれの識別精度に応じた順位を決定する。第1選択部232は、決定した順序に沿って複数の弱識別器を選択する。第1選択部232は、選択した複数の弱識別器から識別器の組合せの候補を抽出する。複合識別部233は、抽出した組合せの候補を構成要素とするアンサンブル識別器による識別を実行する。第2選択部234は、アンサンブル識別器が要求条件を満たすか否かを判定した判定結果に基づいて、アンサンブル識別器を構成する弱識別器を選択する。
【0087】
これにより、実施形態の選択装置20では、識別精度に応じた順位に沿って選択した弱識別器を組合せて、汎化性のあるアンサンブル識別器を候補とすることができる。このため、汎化性のある弱識別器を組み合わせたアンサンブル識別器に絞り込んでから、そのアンサンブル識別器の識別精度を評価していくことができ、要求条件を満たす弱識別器の組み合わせを、効率よく選択することが可能となる。
【0088】
また、実施形態の選択装置20では、評価結果取得部230は、クラス全体の識別精度の平均値を、評価結果として取得する。第1選択部232は、クラス全体の識別精度に基づいて、順位を決定する。これにより、実施形態の選択装置20では、様々な要求条件に対応することが可能な弱識別器を組み合わせたアンサンブル識別器に絞り込んでから、そのアンサンブル識別器の識別精度を評価していくことができ、要求条件を満たす弱識別器の組み合わせを、効率よく選択することが可能となる。
【0089】
また、実施形態の選択装置20では、評価結果取得部230は、弱識別器のそれぞれが識別に使用したメモリ容量を、評価結果として取得する。要求条件取得部231は、アンサンブル識別器が識別に使用可能なメモリ容量の上限値を、要求条件として取得する。第1選択部232は、要求条件に示されたメモリ容量を超えない範囲にて、順位に沿った複数の弱識別器を選択する。これにより、実施形態の選択装置20では、要求条件において許容されるメモリ容量の範囲内で、汎化性のある弱識別器を組み合わせたアンサンブル識別器を候補とすることができる。したがって、要求条件を満たす弱識別器の組み合わせを、効率よく選択することが可能となる。
【0090】
また、実施形態の選択装置20では、要求条件取得部231は、アンサンブル識別器を構成する弱識別器の個数の下限値nを、要求条件として取得する。第1選択部232は、順位に沿って選択されたm個の弱識別器から、n個の弱識別器を選択する。第1選択部232は、n個の弱識別器に、残りの(m-n)個の弱識別器のうちの少なくとも一つの弱識別器を加えた組合せを、アンサンブル識別器の候補とする。これにより、実施形態の選択装置20では、アンサンブル識別器の候補を、n個の弱識別器に残りの(m-n)個の弱識別器を加える組合せに絞り込むことができ、全ての組合せを試す場合と比較して効率よく、要求条件を満たす弱識別器の組み合わせを選択することが可能となる。
【0091】
また、実施形態の選択装置20では、要求条件取得部231は、アンサンブル識別器による識別に要する実行時間の上限値を、要求条件として取得する。第2選択部234は、弱識別器の組合せの候補を抽出し、抽出した組合せからなるアンサンブル識別器による識別に要した時間が要求条件における実行時間を下回るものを、アンサンブル識別器を構成する識別器の組合せとして選択する。これにより、実施形態の選択装置20では、要求条件として実行時間の上限値が指定された場合には、実際に識別を実行させた結果に基づいて、要求条件を満たすアンサンブル識別器を選ぶことができる。このため、確実に要求条件を満たす弱識別器の組み合わせを選択することが可能となる。
【0092】
なお、上述した実施形態では、評価結果におけるクラス全体の平均識別精度に基づいて、弱識別器の順位を決定する場合を例示して説明した。しかしながら、これに限定されることはない。例えば、第1選択部232は、評価結果におけるクラスごとの識別精度に基づいて弱識別器の順位を決定するようにしてもよい。この場合、例えば、第1選択部232は、要求条件にて指定されたクラスごとの識別精度に基づいて、最も高い精度が要求されるクラスを特定する。要求条件取得部231は、評価結果に基づいて、特定したクラスにおける識別精度の高い順に、弱識別器の順位を決定するようにしてもよい。これにより、要求条件にて、最も高い精度が求められているクラスにおける識別精度が高くなるアンサンブル識別器を選択することが可能となる。
【0093】
また、上述した実施形態では、最低限使用可能な弱識別器の個数が要求条件において指定される場合を例示して説明した。しかしながら、これに限定されることはない。例えば、第1選択部232は、要求条件にて要求されたメモリ容量に基づいて、最低限使用可能な弱識別器の個数を決定するようにしてもよい。この場合、例えば、第1選択部232は、評価結果を用いて、予め、弱識別器のそれぞれが識別に使用するメモリ容量の平均値を算出しておく。第1選択部232は、要求条件にて要求されたメモリ容量のうちの所定の割合(例えば、50%など)を平均値で除算した値を整数に丸めた値を、最低限使用可能な弱識別器の個数とするようにしてもよい。これにより、要求条件にて許容されたメモリ容量のうちの所定の比率を、汎用性のある弱識別器とし、残りのメモリ容量にその他の弱識別器を組み合わせてアンサンブル識別器の候補とすることができる。
【0094】
上述した実施形態における選択システム1、及び選択装置20の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0095】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1…選択システム
10…出力装置
20…選択装置
21…通信部
22…記憶部
23…制御部
230…評価結果取得部
231…要求条件取得部
232…第1選択部(選択部)
233…複合識別部(選択部)
234…第2選択部(選択部)
235…装置制御部
24…表示部
25…入力部