(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121077
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】洗掘防止構造体
(51)【国際特許分類】
E02B 3/08 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
E02B3/08 301
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018236
(22)【出願日】2021-02-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391047190
【氏名又は名称】岡三リビック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(71)【出願人】
【識別番号】593033980
【氏名又は名称】トワロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】坂本 茂
(72)【発明者】
【氏名】小浪 岳治
(72)【発明者】
【氏名】日名 敏泰
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和隆
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA05
2D118AA11
2D118BA01
2D118BA05
2D118BA07
2D118CA03
2D118GA32
2D118GA51
2D118HD01
(57)【要約】
【課題】吸出し防止機能を有する吸出し防止層の上部を、波力分散機能を有する被覆層で被覆した構造によって、高い洗掘防止効果を発揮可能な洗掘防止構造体を提供すること。
【解決手段】本発明の洗掘防止構造体1は、布団篭10内に中詰材20を充填してなり、布団篭10は篭本体11と内篭12を備え、篭本体11は底面網11bと側面網11aと蓋面網11cとからなり、内篭12は底面パネル12bと側面パネル12aと蓋面パネル12cとからなり、内篭12の網目寸法は篭本体11の網目寸法より小さく、中詰材20は粗粒材21と細粒材22とからなり、内篭12内に充填した細粒材22によって吸出し防止層Laを構成し、篭本体11内における蓋面パネル12c上に充填した粗粒材21によって被覆層Lbを構成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布団篭内に中詰材を充填してなる、洗掘防止構造体であって、
前記布団篭は、篭本体と、前記篭本体内に構成した内篭と、を備え、
前記篭本体は、底面網と、4面の側面網と、蓋面網と、からなり、
前記内篭は、前記底面網の内面に付設した底面パネルと、前記4面の側面網の内面の下部に付設した4面の側面パネルと、前記4面の側面パネルの上部を被覆した蓋面パネルと、からなり、
前記内篭の網目寸法は、前記篭本体の網目寸法より小さく、
前記中詰材は、粗粒材と、前記粗粒材より粒径の小さい細粒材と、からなり、
前記内篭内に充填した前記細粒材によって、吸出し防止層を構成し、
前記篭本体内における前記蓋面パネル上に充填した前記粗粒材によって、前記吸出し防止層を被覆する被覆層を構成したことを特徴とする、
洗掘防止構造体。
【請求項2】
前記内篭が、格子状の樹脂製ジオグリッドからなることを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止構造体。
【請求項3】
前記粗粒材の粒径が100mm~300mmの範囲内にあり、前記細粒材の粒径が20mm~100mmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗掘防止構造体。
【請求項4】
前記底面網、前記側面網、及び前記蓋面網が、枠体の内部に菱形金網を展設してなる金網パネルであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗掘防止構造体。
【請求項5】
前記菱形金網が、亜鉛アルミ合金メッキ鋼線を樹脂被覆した線材からなることを特徴とする、請求項4に記載の洗掘防止構造体。
【請求項6】
対向する2枚の前記側面網を連結する拘束線材を備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の洗掘防止構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗掘防止構造体に関し、特に、吸出し防止機能を有する吸出し防止層の上部を、波力分散機能を有する被覆層で被覆した構造によって、高い洗掘防止効果を発揮可能な洗掘防止構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
防波堤や消波ブロック等の水中又は水辺に設置する構造物において、躯体が水流の抵抗体となることで、その周囲に渦流を発生して、基礎周辺の土砂が洗掘されることが知られている。基礎が洗掘を受けると、構造物の安定性が損われ、構造物の沈下、傾斜、倒壊等の被害をもたらすおそれがある。
特許文献1及び2には、金網パネルを函状に組んでなる布団篭を、構造物の基礎下に敷設したり、基礎の周辺に配置して基礎を被覆する、洗掘防止技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-4244号公報
【特許文献2】実開平1-120519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗掘防止構造体を、防波堤等の波力が大きい場所に設置する場合、波力を有効に分散して低減させるために、中詰材に割栗石などの粒径の大きな石を採用して、占有体積当たりの空隙率を大きく設計している。
しかし、中詰材の粒径を大きくすると、水底の砂の粒径との差が大きくなるため、中詰材の空隙を通して底面直下の砂が吸い出され、洗掘防止構造体の沈下や傾斜を引き起こすおそれがある。
洗掘防止構造体が沈下すると、洗掘防止構造体の配列が乱れて、当初設計上の洗掘防止機能を確保できなくなったり、枠体の変形や金網の破損等によって、本来の洗掘防止機能を損なうことが考えられる。
また、洗掘防止構造体を消波ブロック等の基礎としている場合には、上部の消波ブロック同士の噛み合わせが悪くなり、散乱や折損を引き起こすおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の洗掘防止構造体は、布団篭内に中詰材を充填してなり、布団篭は、篭本体と、篭本体内に構成した内篭と、を備え、篭本体は、底面網と、4面の側面網と、蓋面網と、からなり、内篭は、底面網の内面に付設した底面パネルと、4面の側面網の内面の下部に付設した4面の側面パネルと、4面の側面パネルの上部を被覆した蓋面パネルと、からなり、内篭の網目寸法は、篭本体の網目寸法より小さく、中詰材は、粗粒材と、粗粒材より粒径の小さい細粒材と、からなり、内篭内に充填した細粒材によって、吸出し防止層を構成し、篭本体内における蓋面パネル上に充填した粗粒材によって、吸出し防止層を被覆する被覆層を構成したことを特徴とする。
【0006】
本発明の洗掘防止構造体は、内篭が、格子状の樹脂製ジオグリッドからなっていてもよい。
【0007】
本発明の洗掘防止構造体は、粗粒材の粒径が100mm~300mmの範囲内にあり、細粒材の粒径が20mm~100mmの範囲内にあってもよい。
【0008】
本発明の洗掘防止構造体は、底面網、側面網、及び蓋面網が、枠体の内部に菱形金網を展設してなる金網パネルであってもよい。
【0009】
本発明の洗掘防止構造体は、菱形金網が、亜鉛アルミ合金メッキ鋼線を樹脂被覆した線材からなっていてもよい。
【0010】
本発明の洗掘防止構造体は、対向する2枚の側面網を連結する拘束線材を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗掘防止構造体は、空隙率の大きい被覆層によって波力を効果的に分散して水底の洗堀を防止しつつ、底面の直下から水中に吸引される砂を細粒材の空隙内に捕捉することで、洗掘防止機能と吸出し防止機能とを両立することができる。
また、被覆層内の空隙を魚介類の生息空間とすることで、漁礁機能を発揮することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本発明に係る洗掘防止構造体の使用状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の洗掘防止構造体について詳細に説明する。
【実施例0014】
[洗掘防止構造体]
<1>全体の構成(
図1)。
洗掘防止構造体1は、水底又は水辺の地盤の洗掘を防止する構造体である。
本例では、洗掘防止構造体1を消波ブロックの基礎に敷設する実施例について説明する。洗掘防止構造体1はこの他、岸壁、防波堤、風力発電設備等の基礎に設置してもよい。
洗掘防止構造体1は、布団篭10の内部に中詰材20を充填してなる。
洗掘防止構造体1は、布団篭10の構造と中詰材20の種類の組合せによって、水底の砂の吸出しを防止する吸出し防止層Laと、波力分散機能と吸出し防止層Laの抑え込み機能を有する被覆層Lbの二層構造を構成する。
本例では洗掘防止構造体1のサイズを、幅2m×長さ3m×高さ1mとする。
【0015】
<2>布団篭(
図2)。
布団篭10は、内部に中詰材20を収容する函体である。
布団篭10は、篭本体11と、篭本体11内に構成した内篭12と、を備える。
内篭12の網目寸法は、篭本体11の網目寸法より小さい。
本例では、篭本体11の菱形金網の網目寸法が150mm、内篭12のジオグリッドの網目寸法は1辺40mmである。
ここで菱形金網の網目寸法とは、列線で囲まれた空間四辺形の一辺の長さを意味し、ジオグリッドの網目寸法とは、目合いではなくストランドで囲まれた空間四辺形の一辺の長さを意味する。
【0016】
<2.1>篭本体。
篭本体11は、金網からなる函体である。
篭本体11は、4面の側面網11aと、底面網11bと、蓋面網11cと、を函状に組んでなる。
本例では、側面網11a、底面網11b、及び蓋面網11cがそれぞれ、矩形の枠線の内側に菱形金網を展設してなる、金網パネルである。
ただし、4面の側面網11aは必ずしも独立の部材である必要はなく、例えば篭本体11の幅方向両側の2枚の側面網11aを、底面網11bに対して折り畳み可能に連結した3面一体構造としてもよい。
本例では、各枠線及び菱形金網の素材として、亜鉛アルミ合金めっき鋼線をポリエチレンアイオノマー樹脂で被覆した線材(IR被覆めっき鋼線)を採用する。
ただし、枠線等の素材はこれに限らず、例えば亜鉛アルミ合金めっき鉄線、亜鉛めっき鉄線等であってもよい。
【0017】
<2.2>内篭。
内篭12は、細粒材22を収容する函体である。
内篭12は、側面網11aの内面の下部に付設した側面パネル12aと、底面網11bの内面に付設した底面パネル12bと、4面の側面パネル12aの上部を被覆する蓋面パネル12cと、からなる。
側面パネル12aは、篭本体11の各側面網11aと略同幅であって、高さは側面網11aより小さい。本例では、側面パネル12aの高さが、側面網11aの半分である。
底面パネル12b及び蓋面パネル12cは、篭本体11の底面網11b及び蓋面網11cと略同幅同長さである。
【0018】
<2.2.1>内篭の材料。
本例では内篭12の材料として、樹脂製のジオグリッドを採用する。
ジオグリッドとは、引張抵抗のある構成要素を格子状に連結してシート状に構成してなる土木資材である。ジオグリッドは、高い強度、優れたクリープ特性、耐候性、耐衝撃性、耐摩擦性等を兼ね備えた部材であり、本発明の内篭12の材料として好適である。
本例ではジオグリッドとして、高強度ポリエステル樹脂(PET)製の繊維からなる芯材を、ポリプロピレン樹脂(PP)で被覆することで格子状に構成した製品を採用する。このような製品として、例えば岡三リビック株式会社製の『TRIGRID(登録商標)』等がある。
以上のように、内篭12の材料はジオグリッドが最適であるが、これに限られず、例えば篭本体11の網目寸法より網目寸法が小さい金網からなってもよい。
【0019】
<2.3>連結材。
連結材13は、篭本体11の側面網11a、底面網11b、及び蓋面網11cを相互に連結する部材である。
本例では、連結材13として硬鋼線をコイル状に巻いてなる連結コイルを採用する。
例えば、隣接する2枚の側面網11aの縦線材に連結コイルを巻き付けることで、2枚の側面網11aを簡易かつ確実に連結することができる。
なお、連結材13はコイル材に限られず、番線やクリップなど他の公知の連結手段であってもよい。
【0020】
<2.4>拘束線材。
拘束線材14は、篭本体11の側面網11a間を拘束する部材である。
本例では、対向する2枚の側面網11aの間を拘束線材14で連結する。
詳細には、2本の拘束線材14を、内篭12の蓋面パネル12c上に沿って平面視十字型に配置し、対向する側面網11a同士を連結する。
4面の側面網11aを拘束線材14で相互に拘束することによって、中詰材20の充填による側面網11aの孕み出しを防ぐことができる。
本例では、拘束線材14として、両端に側面網11aの網目に掛止する鉤状部を備えたIR被覆めっき鋼線を採用する。
ただし拘束線材14はこれに限らず、例えば繊維製ロープ、ワイヤロープ等であってもよい。要は所定の強度及び耐候性を備えた素材からなり、側面網11a間を拘束して補強可能な構成であればよい。
【0021】
<3>中詰材。
中詰材20は、布団篭10内に充填する塊状又は粒状の部材である。
中詰材20は、粗粒材21と、粗粒材21より粒径の小さい細粒材22と、の組合せからなる。
ここで、「粒径が小さい」とは、粗粒材21と細粒材22がそれぞれの粒度範囲を有し、少なくとも細粒材22の粒度範囲の下限が、粗粒材21の粒度範囲の下限より小さいことを意味する。
【0022】
<3.1>粗粒材。
粗粒材21は、篭本体11内の蓋面パネル12c上に充填する中詰材である。
本例では粗粒材21として、粒径200mmの割栗石を採用する。
粗粒材21の粒径はこれに限らず、細粒材22より粒径が大きく、かつ篭本体11の金網の目合より大きな粒度範囲内にあればよいが、粒径100mm~300mmの範囲にあるとより好適である。
また、粗粒材21の種類は割栗石に限らず、単粒度砕石、岩砕、コンクリート塊やレンガ塊などの再生砕石等であってもよい。
篭本体11内に充填した粗粒材21によって、被覆層Lbを構成する。
被覆層Lbは、粒径の大きい粗粒材21によって粗粒材21内に大きな空隙を確保できるため、水中の波力エネルギーを粗粒材21間で順次分散させて吸収することで、周辺の洗掘を起こさない水準まで低減させることができる。
【0023】
<3.2>細粒材。
細粒材22は、内篭12内に充填する中詰材20である。
本例では細粒材22として、粒径50mmの砕石を採用する。
細粒材22の粒径はこれに限らず、粗粒材21より粒径が小さく、かつ内篭12のジオグリッドの目合より大きな粒度範囲内にあればよいが、粒径20mm~100mmの範囲にあるとより好適である。
これは、20mmより細粒化すると捕獲する網材のコストや強度面から非合理であり、かつ100mmより粗粒化すると、細粒材22同士の噛み合わせ力が強くなり重機ではなく手詰め作業が必要となるためである。
また、細粒材22の種類は砕石に限らず、割栗石、玉石、再生砕石等であってもよい。
内篭12内に充填した細粒材22によって、吸出し防止層Laを構成する。
吸出し防止層Laは、底面網11b下部の砂が水流によって海底から吸引される際に、水のみを排出して、砂を細粒材22の隙間の小さな空隙内に捕捉することで、砂の吸出しを防止することができる。
【0024】
<4>洗掘防止構造体の製作方法。
本発明の洗掘防止構造体1は、例えば以下のような手順で製作する。
篭本体11は、底面網11bの幅方向両側に2面の側面網11aを展開可能に連結した本体部と、残り2面の側面網11aと、蓋面網11cと、の4点から構成される。
底面網11bに内篭12の底面パネル12bを取付ける。取付けにはCリングや番線などを用いる。同様に、各側面網11aの下部に側面パネル12aを取付ける。
本体部の2面の側面網11aを立てて断面視コの字状に組立て、連結材13によって他の2面の側面網11aを連結する。
これによって、蓋面網11cのない篭本体11内に、蓋面パネル12cのない内篭12が構成される。
内篭12の内部に細粒材22を充填する。本例では細粒材22が粒径100mm以下の砕石であるため、重機を用いて充填することができる。このため、全ての中詰材を手込めする従来技術と比較して作業性が高い。
細粒材22の充填後、4面の側面パネル12aの上部を蓋面パネル12cで被覆して、Cリング等で固定する。
篭本体11内に2本の拘束線材14を平面視十字型に配して、対向する側面網11a同士を連結する。
蓋面パネル12c上に粗粒材21を手込めする。
粗粒材21の充填後、4面の側面網11aの上部を蓋面網11cで被覆して、連結材13で連結する。
【0025】
<5>吸出し防止層と被覆層の機能。
仮に洗掘防止構造体1が、吸出し防止層のみからなる場合、粒径の小さい細粒材22によって砂の吸出しを捕捉できる反面、細粒材22の空隙率が小さいため、波力を十分に分散して低減させることができず、底面の周辺に渦流を発生して洗掘を惹起するおそれがある。
また、洗掘防止構造体1が、被覆層のみからなる場合、波力の分散効果には優れる反面、水底の砂の粒径と粗粒材21の粒径の差が大きいため、粗粒材21の空隙を通して水底の砂が吸い出されるおそれがある。
これに対し、本発明の洗掘防止構造体1は、吸出し防止層Laと被覆層Lbの組み合わせにより、中詰材20の粒径を底面から段階的に大きくする構造であるため、洗掘防止構造体1直下からの砂の吸出しと洗掘防止構造体1の周辺の洗掘とを同時に防ぐことができる。
また、空隙率の高い被覆層Lbを魚介類の生息空間として利用することで、漁礁機能を発揮することもできる(
図3)。