(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121078
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】サセプタ、成膜装置および基板成膜方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20220812BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20220812BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/42
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018237
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】横山 雄一
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA10
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA37
4K030FA10
4K030GA02
4K030GA06
4K030JA03
4K030KA46
5F045AA06
5F045AB06
5F045AC01
5F045AC07
5F045AE23
5F045AF02
5F045DP03
5F045DP28
5F045EM02
5F045EM09
(57)【要約】
【課題】1回の成膜操作によるSiC成膜量が100μm以上でもSiCが成膜された基板(ウエハ)単体での回収が可能なサセプタ、成膜装置および基板成膜方法を提供する。
【解決手段】SiCを成膜するSiC基板が収容されるサセプタ100であって、
平面部111aを有し平面部外周の直径が基板の外径以上である基板収容部111と、該基板
収容部を囲むと共に平面部の外周端から垂直方向に延びる壁部112aと壁部上端から平面部の外側方向へ水平に延びる上面部112bとから成る周縁部112とで構成されたSiCのサセプタ本体110と、サセプタ本体の基板収容部に収容されると共に基板の平面形状と同一若しくは略同一の平面形状を有する基部121と基部の外周縁に沿って立設されかつ基板を支持するリング状基板受け部122とで構成された炭素製の基板受け部材120を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素を成膜する炭化珪素基板が収容されるサセプタにおいて、
平面部を有し当該平面部外周の直径が上記基板の外径以上である基板収容部と、当該基板収容部を囲むと共に上記平面部の外周端から垂直方向に延びる壁部と当該壁部の上端から上記平面部の外側方向へ水平に延びる上面部とから成る周縁部とで構成された炭化珪素製のサセプタ本体と、
サセプタ本体の上記基板収容部に収容されると共に、上記基板の平面形状と同一若しくは略同一の平面形状を有する基部と当該基部の外周縁に沿って立設されかつ上記基板を支持するリング状基板受け部とで構成された炭素製の基板受け部材、
を備えることを特徴とするサセプタ。
【請求項2】
上記リング状基板受け部の幅寸法が1mm~1.5mmであることを特徴とする請求項1に記載のサセプタ。
【請求項3】
上記リング状基板受け部の高さ寸法が0.5mm~1mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のサセプタ。
【請求項4】
上記周縁部の壁部上端に、当該周縁部の上面部から上記平面部の内側方向へ水平に張り出すリング状庇部が設けられ、かつ、リング状庇部における開口部の直径が上記基板の外径以上であると共に、リング状庇部の上記平面部側端部と当該平面部との間の垂直方向における長さが、上記リング状基板受け部により支持された基板上面と上記平面部との間の垂直方向における長さより大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項5】
上記平面部外周の直径と上記基板の外径との差が1.0mm~1.4mmであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項6】
上記リング状庇部における開口部の直径と上記基板の外径との差が0.4mm~0.6mmであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項7】
上記リング状庇部の厚さが0.5mm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項8】
上記リング状庇部の平面部側端部と上記リング状基板受け部により支持された基板上面間における垂直方向の長さが0.3mm以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項9】
化学気相蒸着法により炭化珪素基板に炭化珪素を成膜する装置であって、請求項1~8のいずれかに記載のサセプタを備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
サセプタが固定される円筒状の回転ステージを成膜室内に備え、請求項1~8のいずれかに記載のサセプタにおけるサセプタ本体の背面側に突起部が設けられると共に、上記回転ステージの筒状上端部に設けられた凹部に上記突起部を嵌合させてサセプタが回転ステージに固定されていることを特徴とする請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載のサセプタに炭化珪素基板を収容する基板収容工程と、
上記基板収容工程後、上記サセプタを回転させつつ上記基板に炭化珪素を成膜する成膜工程と、
を有することを特徴とする基板成膜方法。
【請求項12】
上記基板に成膜される炭化珪素の膜厚が100μm以上であることを特徴とする請求項11に記載の基板成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サセプタ、成膜装置および基板成膜方法に係り、特に、炭化珪素のエピタキシャル膜を成膜することのできる成膜装置、当該成膜装置に備えることのできるサセプタおよび当該サセプタを用いる基板成膜方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は珪素(Si)と炭素で構成される化合物半導体材料であり、絶縁破壊電界強度がSiの10倍、バンドギャップがSiの3倍と優れているだけでなく、デバイス作製に必要なp型、n型の制御が広い範囲で可能であることから、Siの限界を超えるパワーデバイス用材料として期待されている。更に、SiCは、薄い膜厚でも高い耐電圧が得られるため、SiCの膜厚を薄くすることで、ON抵抗が小さく、低損失の半導体を得ることが可能となる。
【0003】
しかし、広く普及するSi半導体に較べ、SiC半導体は、大面積のSiC半導体基板を製造することが難しく、その製造工程も複雑であることから、Si半導体と比較して大量生産が難しく、高価であった。
【0004】
そこで、SiC半導体のコストを下げる様々な工夫がなされており、例えば、特許文献1には、単結晶SiC基板と多結晶SiC基板を貼り合わせてSiC半導体基板を製造する方法が開示されている。すなわち、単結晶SiC基板と多結晶SiC基板を貼り合わせ、その後、上記単結晶SiC基板を薄膜化することで、SiC半導体に供される半導体基板の製造方法が記載されている。因みに、SiC半導体基板のデバイス活性層は薄膜化された単結晶SiC基板が機能し、下部の機械的支持部、放熱部分は多結晶SiC基板がその役割を受け持つ構造となり、SiC半導体基板全体が単結晶SiCで構成された基板と同等に扱うことが可能となる。更に、特許文献1には、単結晶SiC基板と多結晶SiC基板を貼り合わせる前に単結晶SiC基板に水素イオン注入層を形成し、水素イオン注入層が形成された単結晶SiC基板と多結晶SiC基板を貼り合わせた後、350℃以下の温度で熱処理を行うことで、上記水素イオン注入層を単結晶SiC基板の剥離面にして単結晶SiC基板を薄膜化する方法も記載されている。この方法によれば、1枚の単結晶SiC基板を繰返して利用できる利点を有する。
【0005】
そして、1枚の単結晶SiC基板から貼り合わせ基板(すなわち、単結晶SiC基板と多結晶SiC基板を貼り合わせた貼り合わせ基板)が繰り返し複数作製されるようにすることで、SiC半導体基板の更なるコスト削減を図ることが可能となる。
【0006】
ところで、多結晶SiC基板に貼り合わされてSiC半導体基板の製造に用いられる単結晶SiC基板は、SiC半導体基板のデバイス活性層として機能させる必要があることから、高純度、低欠陥、均一性等、高品質であることが要求される。このため、昇華法等で作製されたSiCのバルク単結晶を加工して得たSiC単結晶ウエハを用い、通常、化学気相蒸着法(CVD法)によりウエハ上にSiCのエピタキシャル膜を成長させて単結晶SiC基板は製造されている。すなわち、常圧または減圧に保持された成膜室の内部に、上記ウエハ(基板)を収容し、ウエハを加熱しながら、成膜の原料となるガス(以下「原料ガス」と略称する場合がある)を成膜室内に供給すると、ウエハ表面で原料ガスの熱分解反応および水素還元反応が起こり、ウエハ上にSiCのエピタキシャル膜が成膜される(特許文献2参照)。また、SiCのエピタキシャル膜を高い歩留まりで安定的に製造するには、均一に加熱されたウエハ表面に新たな原料ガスを次々に接触させて気相成長の速度を向上させる必要がある。このため、ウエハを高速回転させながらエピタキシャル成長させることが行われている。
【0007】
そして、エピタキシャル膜が成長(成膜)される上記ウエハを均熱化するため、該ウエハを収容する
図14に示すサセプタ10が用いられる。すなわち、
図14に示すエピタキシャル成長装置1000を用いてウエハ(基板)上にエピタキシャル膜を成膜する場合、サセプタ10の基板収容部11に基板(ウエハ)1を収容し、然る後、成膜室1100に設けられた円筒状の回転ステージ1400上端にサセプタ10を固定してなされている。尚、上記サセプタ10の材質については、化学気相蒸着法における処理条件に耐性があり、SiCエピタキシャル膜中へのコンタミネーションの要因とならないことが求められることからSiC製のサセプタが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-117533号公報
【特許文献2】特開2018-046149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、
図14に示すサセプタ10と、該サセプタ10の基板収容部11に収容された基板(ウエハ)1との間には少なからず隙間が存在する。このため、上記隙間にエピタキシャル膜の原料ガスが入り込むことがあり、これに起因して、SiCのエピタキシャル膜を成長させた場合、基板(ウエハ)1の裏面(サセプタ10側の面)とサセプタ10の基板収容部11上にもエピタキシャル膜が形成されることがあった。
【0010】
特に、1枚の単結晶SiC基板から貼り合わせ基板が繰り返し複数作製できるようにするため、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μm以上と大きくした場合、その分、隙間に入り込む原料ガスの量も増大し、基板(ウエハ)1の裏面とサセプタ10の基板収容部11にSiCエピタキシャル膜が厚く形成され、この結果、隙間に形成されたSiCエピタキシャル膜を介しSiC単結晶ウエハ(基板)1がSiC製のサセプタ10に固着してしまうことがあった。
【0011】
そして、SiC単結晶ウエハ1がサセプタ10に固着してしまうと、ウエハ単体での回収が困難になるため、単結晶SiC基板の収率が低下する問題があり、更に、サセプタ10を新たなものに交換する必要があるためコスト増となる問題も存在した。
【0012】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μm以上と大きくした場合でも、SiC単結晶ウエハ(基板)がSiC製サセプタに固着し難いサセプタ構造と、当該サセプタを備える成膜装置および基板成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、上記課題を解決するため、本発明者が、SiC単結晶ウエハ(基板)の平面形状と同一形状を有する基部と、当該基部の外周縁に沿って立設されたリング状基板受け部とで構成される炭素製の基板受け部材を試作し、この炭素製基板受け部材を、SiC製サセプタの基板収容部に収容してその効果を確認したところ、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μm以上と大きくした場合でも、SiC単結晶ウエハ(基板)がSiC製サセプタに固着し難いことを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されたものである。
【0014】
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
SiCを成膜するSiC基板が収容されるサセプタにおいて、
平面部を有し当該平面部外周の直径が上記基板の外径以上である基板収容部と、当該基板収容部を囲むと共に上記平面部の外周端から垂直方向に延びる壁部と当該壁部の上端から上記平面部の外側方向へ水平に延びる上面部とから成る周縁部とで構成されたSiC製のサセプタ本体と、
サセプタ本体の上記基板収容部に収容されると共に、上記基板の平面形状と同一若しくは略同一の平面形状を有する基部と当該基部の外周縁に沿って立設されかつ上記基板を支持するリング状基板受け部とで構成された炭素製の基板受け部材、
を備えることを特徴とするサセプタ。
【0015】
また、本発明に係る第2の発明は、
第1の発明に記載のサセプタにおいて、
上記リング状基板受け部の幅寸法が1mm~1.5mmであることを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載のサセプタにおいて、
上記リング状基板受け部の高さ寸法が0.5mm~1mmであることを特徴とし、
第4の発明は、
第1の発明~第3の発明のいずれかに記載のサセプタにおいて、
上記周縁部の壁部上端に、当該周縁部の上面部から上記平面部の内側方向へ水平に張り出すリング状庇部が設けられ、かつ、リング状庇部における開口部の直径が上記基板の外径以上であると共に、リング状庇部の上記平面部側端部と当該平面部との間の垂直方向における長さが、上記リング状基板受け部により支持された基板上面と上記平面部との間の垂直方向における長さより大きいことを特徴とし、
第5の発明は、
第1の発明~第4の発明のいずれかに記載のサセプタにおいて、
上記平面部外周の直径と上記基板の外径との差が1.0mm~1.4mmであることを特徴とし、
第6の発明は、
第1の発明~第5の発明のいずれかに記載のサセプタにおいて、
上記リング状庇部における開口部の直径と上記基板の外径との差が0.4mm~0.6mmであることを特徴とし、
第7の発明は、
第1の発明~第6の発明のいずれかに記載のサセプタにおいて、
上記リング状庇部の厚さが0.5mm以下であることを特徴とし、
第8の発明は、
第1の発明~第7の発明のいずれかに記載のサセプタにおいて、
上記リング状庇部の平面部側端部と上記リング状基板受け部により支持された基板上面間における垂直方向の長さが0.3mm以下であることを特徴とする。
【0016】
次に、本発明に係る第9の発明は、
化学気相蒸着法によりSiC基板にSiCを成膜する成膜装置において、
第1の発明~第8の発明のいずれかに記載のサセプタを備えることを特徴とし、
第10の発明は、
第9の発明に記載の成膜装置において、
サセプタが固定される円筒状の回転ステージを成膜室内に備え、第1の発明~第8の発明のいずれかに記載のサセプタにおけるサセプタ本体の背面側に突起部が設けられると共に、上記回転ステージの筒状上端部に設けられた凹部に上記突起部を嵌合させてサセプタが回転ステージに固定されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る第11の発明は、
基板成膜方法において、
第1の発明~第8の発明のいずれかに記載のサセプタにSiC基板を収容する基板収容工程と、
上記基板収容工程後、上記サセプタを回転させつつ上記基板にSiCを成膜する成膜工程と、
を有することを特徴とし、
第12の発明は、
第11の発明に記載の基板成膜方法において、
上記基板に成膜されるSiCの膜厚が100μm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るサセプタによれば、
SiC基板の平面形状と同一若しくは略同一の平面形状を有する基部と当該基部の外周縁に沿って立設されたリング状基板受け部とで構成された炭素製の基板受け部材が、SiC製サセプタ本体の基板収容部に収容され、基板受け部材のリング状基板受け部により支持された基板とサセプタ本体の基板収容部とは非接触の状態になっている。
【0019】
そして、上記基板受け部材のリング状基板受け部により支持された基板と当該リング状基板受け部との隙間、および、基板受け部材の基部とサセプタ本体の基板収容部との隙間にSiCの原料ガスが入り込んでこれ等隙間にSiCのエピタキシャル膜が形成され、形成されたSiCのエピタキシャル膜を介し基板と基板受け部材のリング状基板受け部が固着し、形成されたSiCのエピタキシャル膜を介し基板受け部材の基部とサセプタ本体の基板収容部が固着したとしても、上記基板受け部材はSiCと異なる炭素で構成されているため、SiCのエピタキシャル膜を介した基板と上記リング状基板受け部との固着力、および、SiCのエピタキシャル膜を介した上記基部と基板収容部との固着力は低減され、特に、上記リング状基板受け部と基板との接触面積が小さいことからその固着力は著しく低減されている。
【0020】
このため、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μm以上と大きくした場合でも、SiCが成膜された基板単体での回収が可能なことから単結晶SiC基板の収率を増大でき、かつ、サセプタの交換が不要になることからコスト低減も図れる効果を有する。
【0021】
また、リング状庇部が設けられた本発明に係るサセプタによれば、
上記効果に加え、サセプタからの基板の飛び出しが回避されるため、単結晶SiC基板の収率を更に増大できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るサセプタの断面図。
【
図2】本発明に係るサセプタの構成部品である基板受け部材の概略斜視図。
【
図3】
図3(A)は基板受け部材が収容される前の第一実施形態に係るサセプタ本体の断面図、
図3(B)は上記
図3(A)の平面図。
【
図4】サセプタ本体の背面側に突起部が設けられかつ基板(ウエハ)がリング状基板受け部により支持された状態を示す第一実施形態の変形例に係るサセプタの断面図。
【
図5】第一実施形態の変形例に係るサセプタを用いて化学気相蒸着法により基板(ウエハ)にエピタキシャル膜を成膜する成膜装置(エピタキシャル成長装置)の断面図。
【
図6】リング状基板受け部により支持された基板(ウエハ)にエピタキシャル膜が成膜された状態を示す第一実施形態の変形例に係るサセプタの断面図。
【
図7】基板(ウエハ)がリング状基板受け部により支持されかつ基板収容部にSiCのエピタキシャル膜が付着した状態を示す第一実施形態の変形例に係るサセプタの断面図。
【
図8】サセプタ本体の背面側に突起部が設けられかつ基板(ウエハ)がリング状基板受け部により支持された状態を示す第二実施形態に係るサセプタの断面図。
【
図9】第二実施形態に係るサセプタを用いて化学気相蒸着法により基板(ウエハ)にエピタキシャル膜を成膜する成膜装置(エピタキシャル成長装置)の断面図。
【
図10】リング状基板受け部により支持された基板(ウエハ)にエピタキシャル膜が成膜された状態を示す第二実施形態に係るサセプタの断面図。
【
図11】基板(ウエハ)がリング状基板受け部により支持された第二実施形態に係るサセプタの寸法を示す説明図。
【
図13】複数の基板収容部を有する従来例に係るサセプタの概略斜視図。
【
図14】従来例に係るサセプタを用いて化学気相蒸着法により基板(ウエハ)にエピタキシャル膜を成膜する成膜装置(エピタキシャル成長装置)の断面図。
【
図15】
図15(A)は基板収容部に基板(ウエハ)が収容された状態を示す従来例に係るサセプタの断面図、
図15(B)は基板収容部に収容された基板(ウエハ)上方側から供給される原料ガスの流れを示す説明図、
図15(C)は基板(ウエハ)にエピタキシャル膜が成膜された状態を示す従来例に係るサセプタの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、従来例に係るサセプタと対比しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は実施形態によって何ら限定されるものではない。
【0024】
1.従来例に係るサセプタ
(1)サセプタの構成
従来例に係るサセプタ10は、
図12(A)~(B)に示すようにSiC基板を収容する基板収容部11と、当該基板収容部11の外周を囲むように設けられた周縁部12とで構成されている。
【0025】
すなわち、従来例に係るサセプタ10は、SiC基板(図示せず)が収容される平面部11aを有し当該平面部11a外周の直径がSiC基板の外径以上である基板収容部11と、当該基板収容部11を囲むと共に上記平面部11aの外周端から垂直方向に延びる壁部12aと当該壁部12aの上端から上記平面部11aの外側方向へ水平に延びる上面部12bとから成る周縁部12とで構成される。また、上記基板収容部11の平面部11aは、
図12(A)~(B)に示すように周縁部12の上面部12bより凹んだ円形状であり、上面部12bは所定の幅を有する平面状である。尚、従来例に係るサセプタ10としては、
図13に示すように複数の基板収容部11を有するものも知られている。
【0026】
(2)サセプタを用いた成膜装置
図14は、従来例に係るサセプタ10を用いて化学気相蒸着法によりSiC基板(ウエハ)1にSiCのエピタキシャル膜を成膜する成膜装置(エピタキシャル成長装置)の断面図である。エピタキシャル成長装置1000は、成膜室1100を形成するボックス型の断熱材1200と、原料ガスを成膜室1100へ導入する原料ガス導入口1300と、基板収容部11の平面部11aにSiC基板1が収容されたサセプタ10を固定して回転させる回転ステージ1400を少なくとも備える。
【0027】
上記エピタキシャル成長装置1000を用いてSiC基板1にSiCのエピタキシャル膜を成長させる手順を説明すると、エピタキシャル成長装置1000の成膜室1100内において、SiC基板1はサセプタ10における基板収容部11の平面部11aに収容される。または、SiC基板1を収容したサセプタ10が、エピタキシャル成長装置1000の成膜室1100へセットされる。その後、成膜室1100内の温度を指定温度まで上昇させる。温度上昇後にSiC基板1が収容されたサセプタ10は、矢印Aで示す回転のように回転ステージ1400により回転し、原料ガス導入口1300から矢印Bで示す方向に成膜室1100へ導入される原料ガスをSiC基板1に吹き付けることでSiCのエピタキシャル膜を成長させることができる。
【0028】
図15(A)~(C)はSiC基板1をサセプタ10の基板収容部11に収容した後、SiC基板1にSiCのエピタキシャル膜1pが成膜されるまでの工程を示している。
【0029】
尚、
図15(B)は、基板収容部11に収容された基板(ウエハ)上方側から供給される原料ガスの流れを示した説明図である。
【0030】
SiC基板1にSiCのエピタキシャル膜1pを成長させる場合、原料ガスはSiC基板1の上方側から基板1のおもて面1aへ吹きつけられることになり、SiC基板1の表面での反応により成膜が進むことになるが、原料ガスはSiC基板1が回転することにより遠心力の影響を受け、SiC基板1のおもて面1a全体へと行き渡らせることができる。
【0031】
(3)従来例に係るサセプタが用いられた場合の問題点
図15(A)に示す従来例に係るサセプタ10とサセプタ10の基板収容部11に収容されたSiC基板1との間には上述したように隙間が存在する。このため、上記隙間にエピタキシャル膜の原料ガスが入り込むことがあり、SiCのエピタキシャル膜を成長させた場合、SiC基板1の裏面(サセプタ10側の面)と基板収容部11の平面部11a上にもエピタキシャル膜(図示せず)が形成されてしまうことがある。
【0032】
特に、1枚の単結晶SiC基板から貼り合わせ基板が繰り返し複数作製できるようにするため、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μm以上と大きくした場合、その分、隙間に入り込む原料ガスの量も増大し、SiC基板1の裏面と基板収容部11の平面部11aにSiCエピタキシャル膜が厚く形成され、形成されたSiCエピタキシャル膜を介しSiC基板1がSiC製のサセプタ10に固着してしまうことがあった。
【0033】
そして、SiC基板1がサセプタ10に固着してしまうと、ウエハ(SiC基板)単体での回収が困難になるため、単結晶SiC基板の収率が低下し、更に、サセプタ10を新たなものに交換する必要があるためコスト増に繋がる問題が存在した。
【0034】
2.第一実施形態に係るサセプタ
(1)サセプタの構成
(1-1)第一実施形態に係るサセプタ
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るサセプタ100は、SiC製のサセプタ本体110と炭素製の基板受け部材120とで構成されている。
【0035】
まず、上記サセプタ本体110は、
図3(A)~(B)に示すように平面部111aを有し当該平面部111a外周の直径がSiC基板(図示せず)の外径以上である基板収容部111と、当該基板収容部111を囲むと共に上記平面部111aの外周端から垂直方向に延びる壁部112aと当該壁部112aの上端から上記平面部111aの外側方向へ水平に延びる上面部112bとから成る周縁部112とで構成されている。また、上記基板収容部111の平面部111aは、
図3(A)~(B)に示すように周縁部112の上面部112bより凹んだ円形状であり、上面部112bは所定の幅を有する平面状である。尚、
図13に示した従来のサセプタ10と同様、サセプタ本体110については複数の基板収容部111を具備させてもよい。
【0036】
一方、上記基板受け部材120は、サセプタ本体110の基板収容部111に収容されると共に、
図1~
図2に示すようにSiC基板の平面形状と同一若しくは略同一の平面形状を有する基部121と当該基部121の外周縁に沿って立設されかつ上記SiC基板を支持するリング状基板受け部122とで構成されている。
【0037】
(1-2)第一実施形態の変形例に係るサセプタ
図4に示すように第一実施形態の変形例に係るサセプタ130は、サセプタ本体110の背面側に複数の突起部131が設けられている点を除き
図1に示した第一実施形態に係るサセプタ100と略同一である。尚、
図4中の符号1は、基板受け部材120のリング状基板受け部122により支持されたSiC基板を示している。
【0038】
(2)第一実施形態の変形例に係るサセプタを用いた成膜装置
図5は、変形例に係るサセプタを用いて化学気相蒸着法によりSiC基板1にエピタキシャル膜を成膜する成膜装置(エピタキシャル成長装置)の断面図であり、このエピタキシャル成長装置1000は、回転ステージ1400の筒状上端部に複数の凹部132が設けられている点を除き、
図14に示したエピタキシャル成長装置と略同一である。
【0039】
そして、変形例に係るサセプタ130の上記突起部131を回転ステージ1400の凹部132に嵌合させて上記サセプタ130を回転ステージ1400に固定し、然る後、サセプタ130に収容したSiC基板1にSiCのエピタキシャル膜が成膜される。
【0040】
(3)第一実施形態の変形例に係るサセプタが適用された場合の改善点
図6は、変形例に係るサセプタ130を適用し当該サセプタ130に収容されたSiC基板1にSiCのエピタキシャル膜1pが成膜された状態を示している。
【0041】
第一実施形態の変形例に係るサセプタ130が適用された場合、上記基部121とリング状基板受け部122とで構成された炭素製の基板受け部材120が
図6に示すようにSiC製サセプタ本体110の基板収容部111に収容され、上記リング状基板受け部122で支持されたSiC基板1と上記基板収容部111とは非接触の状態になっている。
【0042】
そして、上記リング状基板受け部122で支持されたSiC基板1と当該リング状基板受け部122との隙間、および、上記基部121と基板収容部111との隙間にSiCの原料ガスが入り込んでこれ等隙間にSiCのエピタキシャル膜が形成され、このSiCのエピタキシャル膜を介しSiC基板1とリング状基板受け部122が固着し、形成されたSiCのエピタキシャル膜を介し上記基部121と基板収容部111が固着したとしても、上記基部121とリング状基板受け部122とで構成される基板受け部材120はSiCと異なる炭素で構成されるため、SiCのエピタキシャル膜を介したSiC基板1とリング状基板受け部122との固着力、および、SiCのエピタキシャル膜を介した上記基部121と基板収容部111との固着力は低減され、特に、上記リング状基板受け部122とSiC基板1との接触面積が小さいことからその固着力は著しく低減されている。
【0043】
従って、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μm以上と大きくした場合でも、SiCが成膜されたSiC基板1単体での回収が可能なため単結晶SiC基板の収率を増大でき、かつ、サセプタの交換が不要なためコスト低減も図れる利点を有する。
【0044】
尚、上記リング状基板受け部122による改善効果が得られるようにするため、
図2に示すリング状基板受け部122の幅寸法d1を1mm~1.5mm、および、リング状基板受け部122の高さ寸法d2を0.5mm~1mmに設定することが望ましい。
【0045】
(4)SiC基板1の飛び出し
第一実施形態の変形例に係るサセプタ130を適用した場合、SiCのエピタキシャル膜を介したSiC基板1とリング状基板受け部122との固着力、および、SiCのエピタキシャル膜を介した基部121と基板収容部111との固着力は上述したように確実に低減される。しかし、同一のサセプタ130を繰り返し使用した場合、
図7に示すように、基板受け部材120の基部121とサセプタ本体110の基板収容部111との隙間にSiCのエピタキシャル膜130pが堆積して突起や段差を生じ、突起や段差の存在により基板受け部材120が基板収容部111に不安定な状態で載置される結果、SiC基板1や基板受け部材120がサセプタ本体110から飛び出してしまうことがある。
【0046】
第二実施形態に係るサセプタは、第一実施形態に係るサセプタの上記改善効果に加え、サセプタ本体からの上記SiC基板や基板受け部材の飛び出しをも回避できるサセプタの改良に関する。
【0047】
3.第二実施形態に係るサセプタ
(1)第二実施形態に係るサセプタの構成
図8に示すように本発明の第二実施形態に係るサセプタ200は、SiC製のサセプタ本体210と炭素製の基板受け部材220とで構成されている。
【0048】
まず、上記サセプタ本体210は、基板収容部211と当該基板収容部211を囲む周縁部212およびリング状庇部213とで構成されている。
【0049】
すなわち、サセプタ本体210は、平面部211aを有し当該平面部211a外周の直径がSiC基板1の外径以上である基板収容部211と、当該基板収容部211を囲むと共に上記平面部211aの外周端から垂直方向に延びる壁部212aと当該壁部212aの上端から上記平面部211aの外側方向へ水平に延びる上面部212bとから成る周縁部212と、当該周縁部212の壁部212a上端に設けられかつ周縁部212の上面部212bから上記平面部211aの内側方向へ水平に張り出すリング状庇部213とで構成され、かつ、サセプタ本体210の背面側に複数の突起部214が設けられている。
【0050】
上記基板収容部211における平面部211aは、周縁部212の上面部212bより凹んだ円形状になっており、上面部212bは所定の幅を有する平面状である。また、上記リング状庇部213における開口部213aの直径は、SiC基板1を上記基板受け部材220側に収容できるようにするためSiC基板1の外径以上に設定され、かつ、SiC基板1の上方側から供給される原料ガスの流れがリング状庇部213により阻まれないようにするため、当該リング状庇部213の平面部211a側端部213bと当該平面部211aとの間の垂直方向における長さは、上記基板受け部材220のリング状基板受け部222で支持されるSiC基板1上面と上記平面部211aとの間の垂直方向における長さより大きく設定される。尚、
図13に示した従来のサセプタ10と同様、サセプタ本体210については複数の基板収容部211を具備させてもよい。
【0051】
一方、上記基板受け部材220は、サセプタ本体210の基板収容部211に収容されると共に、
図8に示すようにSiC基板1の平面形状と同一若しくは略同一の平面形状を有する基部221と当該基部221の外周縁に沿って立設されかつ上記SiC基板1を支持するリング状基板受け部222とで構成されている。
【0052】
(2)第二実施形態に係るサセプタを用いた成膜装置
図9は、第二実施形態に係るサセプタ200を用いて化学気相蒸着法によりSiC基板1にエピタキシャル膜を成膜する成膜装置(エピタキシャル成長装置)の断面図であり、このエピタキシャル成長装置1000も、回転ステージ1400の筒状上端部に複数の凹部215が設けられている点を除き、
図14に示したエピタキシャル成長装置と略同一である。
【0053】
そして、第二実施形態に係るサセプタ200の上記突起部214を回転ステージ1400の凹部215に嵌合させて上記サセプタ200を回転ステージ1400に固定し、然る後、サセプタ200に収容したSiC基板1にSiCのエピタキシャル膜が成膜される。
【0054】
(3)第二実施形態に係るサセプタが適用された場合の改善点
図10は、第二実施形態に係るサセプタ200を適用し当該サセプタ200に収容されたSiC基板1にSiCのエピタキシャル膜1pが成膜された状態を示している。
【0055】
第二実施形態に係るサセプタ200が適用された場合、上記基部221とリング状基板受け部222とで構成された炭素製の基板受け部材220が
図10に示すようにSiC製サセプタ本体210の基板収容部211に収容され、上記リング状基板受け部222で支持されたSiC基板1と上記基板収容部211とは非接触の状態になっている。
【0056】
そして、上記リング状基板受け部222で支持されたSiC基板1と当該リング状基板受け部222との隙間、および、上記基部221と基板収容部211との隙間にSiCの原料ガスが入り込んでこれ等隙間にSiCのエピタキシャル膜が形成され、このSiCのエピタキシャル膜を介しSiC基板1とリング状基板受け部222が固着し、形成されたSiCのエピタキシャル膜を介し上記基部221と基板収容部211が固着したとしても、上記基部221とリング状基板受け部222とで構成される基板受け部材220はSiCと異なる炭素で構成されるため、SiCのエピタキシャル膜を介したSiC基板1とリング状基板受け部222との固着力、および、SiCのエピタキシャル膜を介した上記基部221と基板収容部211との固着力は低減され、特に、上記リング状基板受け部222とSiC基板1との接触面積が小さいことからその固着力は著しく低減されている。
【0057】
従って、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μm以上と大きくした場合でも、SiCが成膜されたSiC基板1単体での回収が可能なため単結晶SiC基板の収率を増大でき、かつ、サセプタの交換が不要なためコスト低減も図れる利点を有する。
【0058】
更に、同一のサセプタが繰り返し使用されて、
図7に示したように基板受け部材120の上記基部121とサセプタ本体110の基板収容部111との隙間にSiCのエピタキシャル膜130pが堆積して突起や段差を生じたとしても、
図10に示すように第二実施形態に係るサセプタ200にはリング状庇部213が設けられているため、当該リング状庇部213の作用によりSiC基板1や基板受け部材220のサセプタ本体210からの飛び出しも回避することが可能となる。
【0059】
(4)第二実施形態に係るサセプタの寸法
図11に示した第二実施形態に係るサセプタ200の寸法d3(平面部211aの外周端と平面部211a中央に収容された基板受け部材220のリング状基板受け部222により支持された基板1外周端との間の距離)、寸法d4(リング状庇部213の開口端部と平面部211a中央に収容された基板受け部材220のリング状基板受け部222により支持された基板1外周端との間の距離)、寸法d5(リング状庇部213の厚さ)、および、寸法d6(リング状庇部213の平面部側端部213bとリング状基板受け部222により支持された基板1上面間における垂直方向距離)について、以下、説明する。
【0060】
(4-1)寸法d3
上述したように基板収容部211における平面部211a外周の直径は基板1の外径以上に設定されるが、
図11に示す寸法d3(平面部211aの外周端と平面部211a中央に収容された基板受け部材220のリング状基板受け部222により支持された基板1外周端との間の距離)を0.5mm~0.7mm、すなわち、平面部211a外周の直径と基板1外径との差を1.0mm~1.4mmに設定することが好ましい。
【0061】
このように設定した場合、リング状庇部213により基板1の飛び出しを確実に防止することが可能となる。
【0062】
(4-2)寸法d4
上述したようにリング状庇部213の開口部直径は基板1の外径以上に設定されるが、
図11に示す寸法d4(リング状庇部213の開口端部と平面部211a中央に収容された基板受け部材220のリング状基板受け部222により支持された基板1外周端との間の距離)を0.2mm~0.3mm、すなわち、リング状庇部213における開口部の直径と上記基板1の外径との差を0.4mm~0.6mmに設定することが好ましい。
【0063】
このように設定した場合、サセプタ200における基板収容部211への基板受け部材220の収容並びに取り出し作業が容易になるため作業効率が向上する利点を有する。
【0064】
(4-3)寸法d5、および、寸法d6
図11に示す寸法d5(リング状庇部213の厚さ)を0.5mm以下、寸法d6(リング状庇部213の平面部側端部213bとリング状基板受け部222により支持された基板1上面間における垂直方向距離)を0.3mm以下に設定することが好ましい。
【0065】
このように設定した場合、基板1に吹付けられる原料ガスの自然な流れを阻害することなく異常な成膜を抑制できるため、基板1の成膜対象面における成膜の偏りを抑えて安定的な成膜を維持できる利点を有する。
【0066】
4.成膜装置(エピタキシャル成長装置)
本発明に係る成膜装置(エピタキシャル成長装置)について説明する。
【0067】
本発明に係る成膜装置は上記サセプタを備えるものであれば特に限定されない。
【0068】
例えば、化学気相蒸着法により基板に膜を成膜する成膜装置で、具体的には、
図5および
図9に示すエピタキシャル成長装置1000であればSiC基板にSiCのエピタキシャル膜を成膜することができる。
【0069】
5.基板成膜方法
次に、本発明に係る基板成膜方法について説明する。
【0070】
本発明に係る基板成膜方法は、上記サセプタにSiC基板を収容する基板収容工程と、基板収容工程後、サセプタを回転させつつSiC基板にSiCのエピタキシャル膜を形成する成膜工程とを含む。
【0071】
以下、エピタキシャル成長装置1000を用いてSiC基板1にSiCのエピタキシャル膜を形成する方法について説明する。
【0072】
(1)基板収容工程
基板収容工程としては、例えば、エピタキシャル成長装置1000の成膜室1100内においてサセプタ130(
図5参照)にSiC基板1を収容するか、あるいは、成膜室1100の外部においてサセプタ130にSiC基板1を収容する工程が挙げられる。
【0073】
後者の場合には、基板収容工程後にサセプタ130がエピタキシャル成長装置1000の成膜室1100へセットされる。
【0074】
(2)成膜工程
基板収容工程後、
図5に示す成膜室1100内の温度を指定温度まで上昇させる。
【0075】
温度上昇後に、SiC基板1が収容されたサセプタ130を、矢印Aで示す回転のように回転ステージ1400により回転させ、原料ガス導入口1300から矢印Bで示す方向に成膜室1100へ導入される原料ガスをSiC基板1に吹き付けることにより、SiCのエピタキシャル膜を形成することができる。
【実施例0076】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。但し、本発明は、これ等の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
図4に示すSiC製のサセプタ本体110と炭素製の基板受け部材120とで構成されたサセプタ130に、昇華法で作製した直径152.4mm(6インチ)、厚さ0.5mmのSiC基板1を収容し、
図5に示すエピタキシャル成長装置1000を用いてSiC基板1上にSiCのエピタキシャル膜を成長させた。
【0078】
まず、
図5に示す成膜室1100内に設けられた回転ステージ1400の上端にSiC基板1が収容された上記サセプタ130を固定し、成膜室1100内を図示外の排気ポンプにより真空引きをした後、上記SiC基板1を1650℃まで加熱した。
【0079】
原料ガスとしてSi系のシランガス(SiH4)、炭素系のプロパンガス(C3H8)を用い、パージガスとして水素ガス(H2)、塩化水素ガス(HCl)を用い、ドーパントガスとして窒素ガス(N2)を用いた。成膜は、SiH4:C3H8:H2:HCl:N2=0.23:0.11:97.36:2.10:1.02の流量比率で上記ガスを混合して成膜室1100内へ供給し、サセプタ130を600rpmで回転させながら上記SiC基板1上にSiCのエピタキシャル膜を成長させた。このとき、成膜室1100内の圧力は25kPaであった。また、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μmとした。
【0080】
(SiC基板単体での回収)
図6に示すSiC基板1とリング状基板受け部122との隙間、および、基部121と基板収容部111との隙間にSiCのエピタキシャル膜が形成され、当該エピタキシャル膜を介し上記SiC基板1とリング状基板受け部122、および、上記基部121と基板収容部111が固着したが、これ等の固着力は上記基板受け部材120の作用により低減されており、SiCが成膜されたSiC基板1単体での回収は可能であった。
【0081】
(SiC基板1および基板受け部材120の飛び出し)
同一のサセプタ130を繰り返し使用し、その累積成膜量が500μmを超えたとき(すなわち、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μmとした場合に同一のサセプタ130を繰り返し5回連続して使用したとき)、サセプタ130からのSiC基板1および基板受け部材120の飛び出しが確認された。
【0082】
[実施例2]
図8に示すSiC製のサセプタ本体210と炭素製の基板受け部材220とで構成されたサセプタ200に、昇華法で作製した直径152.4mm(6インチ)、厚さ0.5mmのSiC基板1を収容し、
図9に示すエピタキシャル成長装置1000を用いてSiC基板1上にSiCのエピタキシャル膜を成長させた。
【0083】
尚、評価においては、サセプタ130を用いるか、サセプタ200を用いるかのみを違いとし、SiC基板1、原料ガスの組成、混合比、原料ガスの流量、吹き付け時間、上記SiC基板1の回転速度等成膜条件は同一とし、SiCの成膜を繰り返し行った。
【0084】
(SiC基板単体での回収)
図10に示すSiC基板1とリング状基板受け部222との隙間、および、基部221と基板収容部211との隙間にSiCのエピタキシャル膜が形成され、当該エピタキシャル膜を介し上記SiC基板1とリング状基板受け部222、および、上記基部221と基板収容部211が固着したが、これ等の固着力は上記基板受け部材220の作用により低減されており、SiCが成膜されたSiC基板1単体での回収は可能であった。
【0085】
(SiC基板1および基板受け部材220の飛び出し)
同一のサセプタ200を繰り返し使用し、累積成膜量が1500μmを超えても(すなわち、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μmとした場合に同一のサセプタ200を繰り返し15回連続して使用しても)、サセプタ200からのSiC基板1および基板受け部材220の飛び出しは確認されなかった。
【0086】
[比較例1]
図12(A)に示すSiC製のサセプタ10に、昇華法で作製した直径152.4mm(6インチ)、厚さ0.5mmのSiC基板1を収容し、
図14に示すエピタキシャル成長装置1000を用いてSiC基板1上にSiCのエピタキシャル膜を成長させた。
【0087】
尚、評価においては、サセプタ10を用いるか、サセプタ130を用いるか、サセプタ200を用いるかのみを違いとし、SiC基板1、原料ガスの組成、混合比、原料ガスの流量、吹き付け時間、上記SiC基板1の回転速度、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μmにする等成膜条件は同一とし、SiCの成膜を繰り返し行った。
【0088】
(SiC基板単体での回収)
図15(C)に示すサセプタ10の基板収容部11とSiC基板1との隙間にSiCのエピタキシャル膜が形成され、該エピタキシャル膜を介しSiC基板1と基板収容部11が固着してしまい、SiCが成膜されたSiC基板1単体での回収は不可能であった。
本発明に係るサセプタよれば、1回の成膜操作によるSiC成膜量を100μm以上と大きくした場合でも、SiCが成膜された基板単体での回収が可能なため、SiCのエピタキシャル成長による安定した成膜を安価にかつ長期的に行うことができるサセプタとして利用される産業上の利用可能性を有している。