(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121092
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20220812BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20220812BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20220812BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20220812BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20220812BHJP
G06F 1/18 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G09F9/00 348A
F16C11/04 F
G09F9/00 350Z
G09F9/00 312
H05K7/14 C
H05K5/02 V
G06F1/16 312F
G06F1/18 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018257
(22)【出願日】2021-02-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】堀越 正太
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
【テーマコード(参考)】
3J105
4E360
5E348
5G435
【Fターム(参考)】
3J105AA02
3J105AA12
3J105AB02
3J105AB42
3J105AB50
3J105AC07
3J105AC10
3J105BC01
4E360AB04
4E360AB05
4E360AB16
4E360AB42
4E360BA02
4E360BB12
4E360BB22
4E360CA02
4E360EA24
4E360ED04
4E360GA60
4E360GB46
4E360GC03
5E348AA09
5E348AA29
5E348AA30
5E348AA40
5G435AA14
5G435EE02
5G435EE16
5G435EE47
5G435LL07
5G435LL08
(57)【要約】
【課題】第1筐体から第2筐体に亘るフレキシブル基板がユーザーから視認されにくく、しかも寿命の低減を防止する。
【解決手段】電子機器10は、第1筐体12に設けられたディスプレイ18と、第2筐体14に設けられたディスプレイ基板30と、ディスプレイ18とディスプレイ基板30とを接続するフレキシブル基板32とを備える。第1筐体12は、第2筐体14に対する回動動作によりヒンジ16と同軸上で回転し、フレキシブル基板32が挿通されたヒンジ取付部34を備える。ヒンジ取付部34は、フレキシブル基板32をディスプレイ18へ導く第1開口部34aa、フレキシブル基板32をディスプレイ基板30へ導く第2開口部34ab、およびフレキシブル基板32が通っている基板孔34aとを備える。フレキシブル基板32は、第2開口部34abを通過する領域に、平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力を付与する保護シート46を備えている。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1筐体および第2筐体と、
前記第1筐体に対して前記第2筐体を相対的に回動可能に連結するヒンジと、
前記第1筐体に設けられたディスプレイと、
前記第2筐体に設けられたプリント基板と、
前記ディスプレイと前記プリント基板とを接続するフレキシブル基板と、
を備え、
前記第1筐体は、前記第2筐体に対する回動動作により前記ヒンジと同軸上で回転し、前記フレキシブル基板が挿通された回転体を備え、
前記回転体は、前記フレキシブル基板を前記ディスプレイへ導く第1開口部、前記フレキシブル基板を前記プリント基板へ導く第2開口部、および前記フレキシブル基板が通っている基板孔を備え、
前記フレキシブル基板は、前記第2開口部を通過する領域に、平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力を付与する保護シートを備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記第1筐体と前記第2筐体との回動動作にともなって前記フレキシブル基板が前記第2開口部の両縁部に当接して屈曲する場合で、より急角度に屈曲させられる一方に対面する面に前記保護シートが設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記第1筐体と前記第2筐体とが互いの一面が対向した状態で互いに積層された収納形態で、前記基板孔は前記第1筐体と前記第2筐体との積層方向に延在しており、前記回転体は、前記基板孔を挟んで前記第2筐体に対面する側の第1半体およびその反対側の第2半体とを有しており、前記保護シートはフレキシブル基板における前記第1半体に対面する面に設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記第2筐体内において、前記フレキシブル基板は、順に並んで互いに逆向きに湾曲した第1及び第2の折返し部を有し、
前記フレキシブル基板は、前記第1の折返し部では外周側に位置し、前記第2の折返し部では内周側に位置する表面に、前記プリント基板に対する接続部を有し、
前記第2筐体は、上面にキーボードを有し、後側面に前記第1筐体が前記ヒンジを介して連結されたものであり、
前記フレキシブル基板は、前記第2筐体の前記後側面に形成された筐体開口部から前記第2筐体内へと前方に向かって挿入された後、下方且つ後方に向かって円弧状に折り返されることで前記第1の折返し部が形成され、さらに下方且つ前方に向かって円弧状に折り返されることで前記第2の折返し部が形成されており、
前記プリント基板は、前記第2筐体の前記上面を形成する上カバー材に対して相対的に固定されると共に、前記フレキシブル基板の前記接続部が接続される被接続部が下向きに設けられ、
前記フレキシブル基板は、前記接続部が上向きに設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
前記第2の折返し部の外周側を通って前記第1の折返し部の内周側に突出する案内板を有することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記保護シートはステンレス箔であることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、例えば特許文献1で示されるように、ディスプレイを搭載した第1筐体と、マザーボードを搭載した第2筐体とがヒンジで連結されている。特許文献1に記載の電子機器では、第1筐体と第2筐体とを接続する配線部材が細いワイヤ状であって、ヒンジの回転軸に沿って配策されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の構成は、ディスプレイの制御用の基板(ディスプレイ基板)を第1筐体のベゼル部材の内側に収納している。このため、ベゼル部材は、ディスプレイ基板の分だけ幅広になり、外観品質が低下する。そこで、ディスプレイ基板を第2筐体内に収納し、ディスプレイとディスプレイ基板との間を第1筐体から第2筐体に亘るフレキシブル基板で接続することが考えられる。
【0005】
フレキシブル基板はある程度の幅があり特許文献1のようにヒンジの回転軸に沿って配策することは難しいため、第1筐体と第2筐体との間を横断するように配置される。この場合、第1筐体と第2筐体との間にはフレキシブル基板がユーザーから視認されないようにカバーを設けることが望ましい。カバーは、例えば第1筐体に固定される。
【0006】
ところが、このようなカバーは第1筐体と第2筐体とが相対的に回動する際に、その一部がフレキシブル基板に当接して屈曲させながら圧力を加える場合があり、回動回数に応じて繰り返しのストレスが加わって該フレキシブル基板の寿命を低減させる懸念がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、第1筐体から第2筐体に亘るフレキシブル基板がユーザーから視認されにくく、しかも寿命を低減させることのない電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係る電子機器は、電子機器であって、第1筐体および第2筐体と、前記第1筐体に対して前記第2筐体を相対的に回動可能に連結するヒンジと、前記第1筐体に設けられたディスプレイと、前記第2筐体に設けられたプリント基板と、前記ディスプレイと前記プリント基板とを接続するフレキシブル基板と、を備え、記第1筐体は、前記第2筐体に対する回動動作により前記ヒンジと同軸上で回転し、前記フレキシブル基板が挿通された回転体を備え、前記回転体は、前記フレキシブル基板を前記ディスプレイへ導く第1開口部、前記フレキシブル基板を前記プリント基板へ導く第2開口部、および前記フレキシブル基板が通っている基板孔と、を備え、前記第2開口部を通過する領域で、前記フレキシブル基板は、前記第2開口部を通過する領域に、平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力を付与する保護シートを備えている。
【0009】
上記の電子機器におけるフレキシブル基板は、回転体の基板孔を通っておりユーザーから視認されにくい。また、フレキシブル基板には保護シートが設けられていることから、回転体の一部が直接的に接触することが防止される。さらに、保護シートは、プリント基板に対して平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力を付与することから、過度に屈曲することが防止されストレスを低減させることができる。このように、フレキシブル基板は適切に保護され寿命の低減を防止することができる。
【0010】
前記第1筐体と前記第2筐体との回動動作にともなって前記フレキシブル基板が前記第2開口部の両縁部に当接して屈曲する場合で、より急角度に屈曲させられる一方に対面する面に前記保護シートが設けられていてもよい。これにより一層適切にフレキシブル基板を保護することができる。
【0011】
前記第1筐体と前記第2筐体とが互いの一面が対向した状態で互いに積層された収納形態で、前記基板孔は前記第1筐体と前記第2筐体との積層方向に延在しており、前記回転体は、前記基板孔を挟んで前記第2筐体に対面する側の第1半体およびその反対側の第2半体とを有しており、前記保護シートはフレキシブル基板における前記第1半体に対面する面に設けられていてもよい。これにより、第1筐体が収納形態の0度位置から使用形態の所定角度にまで回動するまでに、フレキシブル基板が第1半体によって覆われ、しかも該第1半体の端部は保護シートに当接することからフレキシブル基板を保護することができる。
【0012】
前記第2筐体内において、前記フレキシブル基板は、順に並んで互いに逆向きに湾曲した第1及び第2の折返し部を有し、前記フレキシブル基板は、前記第1の折返し部では外周側に位置し、前記第2の折返し部では内周側に位置する表面に、前記プリント基板に対する接続部を有し、前記第2筐体は、上面にキーボードを有し、後側面に前記第1筐体が前記ヒンジを介して連結されたものであり、前記フレキシブル基板は、前記第2筐体の前記後側面に形成された筐体開口部から前記第2筐体内へと前方に向かって挿入された後、下方且つ後方に向かって円弧状に折り返されることで前記第1の折返し部が形成され、さらに下方且つ前方に向かって円弧状に折り返されることで前記第2の折返し部が形成されており、前記プリント基板は、前記第2筐体の前記上面を形成する上カバー材に対して相対的に固定されると共に、前記フレキシブル基板の前記接続部が接続される被接続部が下向きに設けられ、前記フレキシブル基板は、前記接続部が上向きに設けられていてもよい。
【0013】
前記第2の折返し部の外周側を通って前記第1の折返し部の内周側に突出する案内板を有してもよい。このような案内板により、フレキシブル基板が適切に案内される。また、案内板と回転体とによりフレキシブル基板が屈曲されるような構成であっても、保護シートにより過度な屈曲が防止される。
【0014】
前記保護シートはステンレス箔であると、薄くかつ適度な弾性を有する構成とすることができて好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記態様によれば、第1筐体から第2筐体に亘るフレキシブル基板がユーザーから視認されにくく、しかも寿命を低減させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、下カバー材を取り外した状態での電子機器の底面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う第2筐体の模式的な断面斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、筐体間の角度姿勢を0度に設定した状態での電子機器の後部を拡大した模式的な側面断面図である。
【
図4B】
図4Bは、筐体間の角度姿勢を65度に設定した状態での電子機器の後部を拡大した模式的な側面断面図である。
【
図4C】
図4Cは、筐体間の角度姿勢を130度に設定した状態での電子機器の後部を拡大した模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、電子機器10は、第1筐体12と第2筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、筐体12,14間が0度姿勢(
図4A参照)と130度姿勢(
図4C)との間で回動可能である。筐体12,14間の回動範囲は、130度以上でもよい。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、携帯電話、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0019】
以下、電子機器10について、第1筐体12を第2筐体14に対して閉じて0度姿勢とした状態(
図4A参照)を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、厚み方向を上下、と呼んで説明する。第1筐体12については、
図1のように開いてディスプレイ18を視認する状態を基準とし、ディスプレイ18の表示面側を正面、ディスプレイ18の裏側を背面、ヒンジ16側を下、ヒンジ16側と逆側を上、と呼ぶこともある。
【0020】
先ず、電子機器10の全体構成を説明する。
【0021】
第2筐体14は、扁平な箱体である。第2筐体14は、上面14aを形成する上カバー材20と、下面(底面)14bを形成する下カバー材21(
図4A参照)と、を有する。第2筐体14の前後左右の側面14cは、上カバー材の四周縁部から起立した壁部によって形成されている。上面14aには、キーボード24及びタッチパッド25が設けられている。第2筐体14の内部には、マザーボード26やバッテリ装置27(
図2参照)の他、SSD(Solid State Drive)、メモリ、アンテナ装置等の各種電子部品が収容されている。第2筐体14の後側面14cには、左右方向に延在した切欠き状の凹状部14dが設けられている。凹状部14dには、ヒンジ16が配置される。
【0022】
第1筐体12は、第2筐体14よりも薄い扁平な箱体である。ディスプレイ18は、第1筐体12の正面12aに設けられている。第1筐体12は、背面12bを形成する背面カバー材28を有する。第1筐体12では、例えばガラスとタッチフィルムが一体となったものを用い、ベゼルに相当する部分を省略してもよい。第1筐体12の前後左右の側面12cは、背面カバー材28の四周縁部から起立した壁部によって形成されている。側面12cは、背面カバー28とは独立した部材で構成してもよい。ディスプレイ18は、正面12aに臨んで映像を表示するディスプレイ部18aと、タッチ操作のためのタッチパネル部18bと、を有する。ディスプレイ部18aは、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。タッチパネル部18bは、省略されてもよい。第1筐体12は、
図1中の下側面14cにヒンジ16が取り付けられている。
【0023】
ヒンジ16は、筐体12,14の後側面12c,14c間を連結している。本実施形態のヒンジ16は、左右方向に延在した1本の長尺な構造である。ヒンジ16は、例えば左右一対設けられてもよい。
【0024】
次に、筐体12,14間の電気的な接続構造について説明する。
図2は、下カバー材21を取り外した状態での電子機器10の底面図である。
図3は、
図2中のIII-III線に沿う第2筐体14の模式的な断面斜視図である。
図4A、
図4B、
図4Cは、それぞれ筐体12,14間の角度姿勢を0度、65度、130度に設定した状態での電子機器10の後部を拡大した模式的な側面断面図である。
図3では、第2筐体14の上下を反転して図示すると共に、第1筐体12の図示を省略している。
【0025】
図2~
図4Cに示すように、電子機器10は、ディスプレイ18の制御用のプリント基板(PCB:printed circuit board)として、ディスプレイ基板30及びタッチパネル基板31を第2筐体14内に収容している。
【0026】
ディスプレイ基板30は、ディスプレイ部18aでの映像表示を制御するためのサブボードである。ディスプレイ基板30はマザーボード26と接続されており、後述する他のサブボードも同様にマザーボード26と接続されている。ディスプレイ基板30は、筐体12,14間に亘るフレキシブル基板32を介してディスプレイ部18aと電気的に接続されている。フレキシブル基板32は、例えば左右に並んだ2枚1組で用いられている。
【0027】
タッチパネル基板31は、タッチパネル部18bの制御用のサブボードである。タッチパネル基板31は、タッチパネル部18bで検出されたタッチ操作に基づくアナログ信号を所定のデジタル信号に変換してマザーボード26に送信する。タッチパネル基板31は、筐体12,14間に亘るフレキシブル基板33を介してタッチパネル部18bと電気的に接続されている。フレキシブル基板33は、例えば左右に並んだ2枚1組で用いられている。
【0028】
基板30,31は、第2筐体14の後部で上カバー材20の内面に対して所定のブラケット等を介して固定され、下カバー材21の内面に近い位置で水平に設置されている(
図4A参照)。フレキシブル基板32,33は、例えば可撓性を持った絶縁性フィルムを用い、薄く且つ柔軟に形成したフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible printed circuit)である。
【0029】
図4A~
図4Cに示すように、第1筐体12の下側面(後側面)12cには、ヒンジ取付部34が設けられている。ヒンジ取付部34は、正面12aから垂直に突出した部分である。ヒンジ取付部34は、第1筐体12が第2筐体14に対する回動動作をするときヒンジ16と同軸上で回転する回転体である。ヒンジ取付部34は、背面カバー材28の下側面12cを形成する部分である第2半体42と、枠壁29の下縁部から突出した部分である第1半体44とで顎状に形成され、左右方向に延在している。枠壁29は第1筐体12の端部からディスプレイ18に直交する向きに突出している幅の小さい部材である。ヒンジ取付部34は、先端側が第2筐体14の凹状部14d内に配置され、凹状部14d内で回動可能である。フレキシブル基板32,33は、ヒンジ取付部34を貫通するスリット状の基板孔34aを通って第1筐体12外へと引き出された後、凹状部14dを通して第2筐体14内に引き込まれている。第1半体44および第2半体42はフレキシブル基板32(33)を覆うカバーを兼ねている。
【0030】
第2筐体14内において、フレキシブル基板32(33)は、先ず、下カバー材21の内面付近から上カバー材20の内面付近へと斜め上方に延在しつつ前方に延びている。続いて、フレキシブル基板32(33)は、上から下に向かって2回折り返されることでS字形状部36を描いた後、再び下カバー材21の内面に沿って前方に延びている。
【0031】
S字形状部36は、フレキシブル基板32(33)がディスプレイ18から基板30(31)に向かう延在方向、つまりフレキシブル基板32(33)のディスプレイ18側から基板30(31)側までの軌跡上で順に並んで設けられ、互いに逆向きに湾曲した2つの折返し部36a,36bで形成されている。ディスプレイ18に近い側の折返し部(第1の折返し部)36aは、前方に向かう方向から下方且つ後方に向かう方向に略半円を描いて折り返されている。基板30(31)に近い側の折返し部(第2の折返し部)36bは、折返し部36aの出口で後方に向かう方向から下方且つ前方に向かう方向に略半円を描いて折り返されている。
【0032】
第2筐体14は、凹状部14dを形成する前壁が波形板(案内板)14eで形成されている。波形板14eは、下カバー材21の内面から上カバー材20の内面付近へと斜め上方に延在しつつ前方に延びた波形状の板部である。すなわち、波形板14eは、折返し部36bの外周側を通って折返し部36aの内周側に突出する形状であって、フレキシブル基板32(33)を案内している。波形板14eは、その上端と上カバー材20の内面との間にフレキシブル基板32(33)が通過する隙間を形成している。波形板14eは、S字形状部36の形状に沿った断面形状を有し、フレキシブル基板32(33)の移動を阻害することなく、S字形状部36の形状を保持することができる。
【0033】
フレキシブル基板32(33)は、折返し部36aでは円弧の外周側に位置し、折返し部36bでは円弧の内周側に位置する表面38に、基板30(31)に対する接続部32a(33a)を有する。つまり表面38は、接続部32a(33a)が設けられた部分では上面である。接続部32a(33a)は、基板30(31)の下面に設けられた被接続部30a(31a)に接続されるコネクタ端子である。接続部32a(33a)は、表面38から上向きに設置されている。
図2及び
図3中の参照符号32b(33b)は、フレキシブル基板32(33)に接続部32a(33a)を固定するための支持板である。
【0034】
ヒンジ取付部34、基板孔34aおよびその周辺部についてさらに説明する。
【0035】
図4Aに示す0度姿勢を基準としたとき、ヒンジ取付部34は、基板孔34aを挟んで第2筐体14に対面する側が第1半体44であり、その反対側が第2半体42となっている。0度姿勢における電子機器10は、第2筐体14の上面14aに第1筐体12の正面12aが対向した状態で互いに積層された収納形態となっている。この収納形態において、基板孔34aは、第1筐体12と第2筐体14との積層方向に延在しており、一端が第1筐体12内に連通する第1開口部34aaであり、他端が第2開口部34abとなっている。第2開口部34bは、第1筐体12の回動動作に応じて第2筐体14の後側面14cに対面する。
【0036】
第1半体44の断面は、第2筐体14に対面する側が凸の円弧形状である。第2半体42の断面は第1半体44に対面する側と反対側が凸の円弧形状である。第1半体44と第2半体42とは第1開口部34aaを挟んで、それぞれの円弧縁の延長線が連続するように配置されている。第2半体42は、第1半体44よりも大きい円弧形状であり、第1筐体12の回動にともなって凹状部14d内で回転する(
図4B,4C参照)。
【0037】
第1半体44における基板孔34aとの対向面は傾斜面44aを形成しており、第2開口部34abが開口方向に向けて広がる形状になっている。第2半体42における第2開口部34abの近傍には凸部42aが形成されており、フレキシブル基板32,33を適正な向きに支持する(
図4C参照)。
【0038】
フレキシブル基板32(33)は、第2開口部34abを通過する領域に、第1半体44の端部44bに対面する面に保護シート46を備えている。保護シート46は、無負荷時に平面状となるシートであり、屈曲された状態では平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力を付与する弾性材である。保護シート46は、例えばステンレスなどの金属箔であると、薄くかつ適度な弾性を有する構成とすることができて好適である。保護シート46はフレキシブル基板32(33)の全幅に合わせて設けられている(
図3参照)。なお、保護シート46は相当に薄く形成することが可能であるが、識別が容易となるように各図において適度に厚く図示している。
【0039】
次に、本実施形態の電子機器10での筐体12,14間の回動動作と作用効果を説明する。
【0040】
図4Aに示す0度姿勢では、電子機器10は、第2筐体14の上面14aに第1筐体12の正面12aが対向した状態で互いに積層された収納形態となっている。この状態では、フレキシブル基板32(33)は、下向きに配置されたヒンジ取付部34の第2開口部34abよって後方に引き寄せられ、S字形状部36が波形板14eに沿って配置されている。
図4A~
図4C中の参照符号Cは、ヒンジ16による筐体12,14間の回動中心を示している。また、
図4A~
図4C中の参照符号43は、第2筐体14の下面14bに取り付けられたゴム脚である。
【0041】
0度姿勢では、フレキシブル基板32(33)は、第2半体42によって後側面が覆われており視認されることがない。また基板孔34aの第2開口部34abは下向きであり、ユーザーからはほとんど視認されない。
【0042】
0度姿勢では、基板孔34aが上下方向に延在することになり、第1半体44の端部44bがフレキシブル基板32(33)に当接し得る。そして、フレキシブル基板32(33)は波形板14eによって第2開口部34abから折返し部36aまで上方に案内されていることから、第1半体44の端部44bは該フレキシブル基板32(33)が下向きに凸となるように押圧し得る。特に、第1半体44はフレキシブル基板32(33)を覆うカバーとしての機能を有することからある程度の下向き長さがあり、その長さによっては端部44bがフレキシブル基板32(33)をやや強く押圧することもあり得る。
【0043】
しかしながら、電子機器10におけるフレキシブル基板32(33)には、第2開口部34abを通過する領域で、第1半体44に対面する側に保護シート46が設けられていることから、端部44bが直接当接することがなくフレキシブル基板32(33)が保護される。
【0044】
仮に保護シート46が設けられていない場合には、フレキシブル基板32(33)は端部44bに押圧されることにより、
図4Aにおける仮想線で示すように屈曲度合いが相当に急角度となって大きなストレスを受ける。しかしながら、フレキシブル基板32(33)には保護シート46によって平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力が付与されることから、屈曲度合いが適度に緩角度となり、ストレスを低減させることができる。したがって、第1筐体12と第2筐体14との回動が繰り返し行われても、フレキシブル基板32(33)の寿命を低減させることがない。
【0045】
電子機器10を使用する際には、第1筐体12を開いて例えば90度~130度の間の角度姿勢に設定する。
図4Aに示す0度姿勢から第1筐体12が開かれると、例えば
図4Bに示す65度姿勢までの間は、ヒンジ取付部34の基板孔34aの第2開口部34abの前後位置が次第に前方に移動し、フレキシブル基板32(33)が前方に押し込まれる。このため、フレキシブル基板32(33)は、第2筐体14内でS字形状部36が変形しつつ、折返し部36aが前方に移動する(
図4B参照)。これによりフレキシブル基板32(33)は、筐体12,14間の回動動作時にディスプレイ18と基板30(31)との相対距離が変化した場合であっても、この変化に柔軟に追従でき、断線等の不具合を生じることが抑制される。
【0046】
また、65度姿勢では基板孔34aは水平に近い向きであり、第2開口部34abは略前向きの開口となり第2筐体14で覆われて視認されない。さらに、フレキシブル基板32(33)の下面は第2半体42で十分に覆われることから視認されない。第1半体44が適度な長さを有していることから、フレキシブル基板32(33)の上面もほとんど覆われて視認されない。
【0047】
さらに、0度から65度姿勢に移行するまでに、第1半体44の端部44bはフレキシブル基板32(33)に対して多少摺接し得るが、保護シート46が設けられていることから端部44bがフレキシブル基板32(33)を直接的に摺接および摩耗させることがなく、該フレキシブル基板32(33)の寿命を低減させることがない。
【0048】
図4Bに示す65度姿勢から
図4Cに示す130度姿勢までの間は、ヒンジ取付部34の基板孔34aの第2開口部34abの位置変化に応じてフレキシブル基板32(33)が後方に引き出され、0度姿勢における形状とほぼ同じとなる。
【0049】
また、130度姿勢では基板孔34aは後ろに向かって下がる傾斜となり、第2開口部34abは斜め前向きの開口となるが、第1半体44が適度な長さを有していることからほとんど視認されることがない。さらに、第1半体44の端部44bには、フレキシブル基板32(33)が視認されないような庇を設けてもよい。さらにまた、フレキシブル基板32(33)の下面は第2半体42で十分に覆われることから視認されない。第1半体44が適度な長さを有していることから、フレキシブル基板32(33)の上面もほとんど覆われて視認されない。
【0050】
なお、
図4Cに示すように130度姿勢では、第2半体42の凸部42aがフレキシブル基板32(33)を直接的に当接して屈曲させている。しかしながら、この130度姿勢ではフレキシブル基板32(33)の屈曲角度は緩やかであり、しかも保護シート46が平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力が作用して屈曲角度が一層緩やかとなり、フレキシブル基板32(33)に対するストレスを軽減させることができる。本実施形態では、第1筐体12と第2筐体14との回動動作にともなってフレキシブル基板32(33)は第2開口部34abの両縁部である端部44bと凸部42aに当接して屈曲するが、保護シート46は、より急角度に屈曲させられる端部44bに対面する面に設けられており、一層適切にフレキシブル基板32(33)を保護することができる。
【0051】
設計条件により、仮に0度姿勢よりも130度姿勢の方がフレキシブル基板32(33)が急角度に屈曲するような場合には、保護シート46はフレキシブル基板32(33)における第2開口部34abを通過する領域で第2半体42の端部(つまり凸部42a)に対面する側に設けてもよい。
【0052】
上記のように、電子機器10におけるフレキシブル基板32(33)は、ヒンジ取付部34の基板孔34aを通っていることからユーザーから視認されにくい。特に、基板孔34aの一方の面を形成する第1半体44は適度な長さを有しており、0度位置から130度位置に亘ってフレキシブル基板32(33)を覆って視認されにくくしている。
【0053】
第1半体44はフレキシブル基板32(33)を視認されにくくするために適度な長さを有しており、その端部44bは回動角度によって該フレキシブル基板32(33)に当接し得るが、保護シート46によって適切に保護され寿命を低減させることがない。保護シート46は、平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力を付与することから、フレキシブル基板32(33)が過度に屈曲することを防止してストレスを低減させることができる。
【0054】
なお、保護シート46はフレキシブル基板32(33)における第1半体44に対面する側に設けられていると端部44bとの直接的接触を回避させることができて好適であるが、逆側に設けられている場合でも、平面に復帰させる曲げ弾性によって過度の屈曲を防止する作用は得られ、ストレス低減のための相応の効果が得られる。
【0055】
また、電子機器10は、基板30(31)の被接続部30a(31a)が下向きに設けられ、フレキシブル基板32(33)の接続部32a(33a)が上向きに設けられている。これにより第2筐体14では、マザーボード26等と共に基板30(31)等も上カバー材20側に固定される。このため、第2筐体14は、下カバー材21を取り外すことで容易に内部のメンテナンスが可能である。この際、第2筐体14では、接続部32a(33a)が上向きであることで、下カバー材21を取り外すだけで引っ張るだけで、接続部32a(33a)を被接続部30a(31a)から容易に取り外すことができる。従って、電子機器10は、基板30(31)が第2筐体14に搭載されているにもかかわらずディスプレイ18の交換も容易である。
【0056】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
10 電子機器
12 第1筐体
14 第2筐体
14e 波形板(案内板)
16 ヒンジ
18 ディスプレイ
30 ディスプレイ基板(プリント基板)
31 タッチパネル基板(プリント基板)
32,33 フレキシブル基板
34 ヒンジ取付部(回転体)
34a 基板孔
34aa 第1開口部
34ab 第2開口部
36a 折返し部(第1の折返し部)
36b 折返し部(第2の折返し部)
42 第2半体
42a 凸部
44 第1半体
44b 端部
46 保護シート
【手続補正書】
【提出日】2022-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1筐体および第2筐体と、
前記第1筐体に対して前記第2筐体を相対的に回動可能に連結するヒンジと、
前記第1筐体に設けられたディスプレイと、
前記第2筐体に設けられたプリント基板と、
前記ディスプレイと前記プリント基板とを接続するフレキシブル基板と、
を備え、
前記第1筐体は、前記第2筐体に対する回動動作により前記ヒンジと同軸上で回転し、前記フレキシブル基板が挿通された回転体を備え、
前記回転体は、前記フレキシブル基板を前記ディスプレイへ導く第1開口部、前記フレキシブル基板を前記プリント基板へ導く第2開口部、および前記フレキシブル基板が通っている基板孔を備え、
前記フレキシブル基板は、前記第2開口部を通過する領域に、平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力を付与する保護シートを備え、
前記第2筐体内において、前記フレキシブル基板は、順に並んで互いに逆向きに湾曲した第1及び第2の折返し部を有し、
前記フレキシブル基板は、前記第1の折返し部では外周側に位置し、前記第2の折返し部では内周側に位置する表面に、前記プリント基板に対する接続部を有し、
前記第2筐体は、上面にキーボードを有し、後側面に前記第1筐体が前記ヒンジを介して連結されたものであり、
前記フレキシブル基板は、前記第2筐体の前記後側面に形成された筐体開口部から前記第2筐体内へと前方に向かって挿入された後、下方且つ後方に向かって円弧状に折り返されることで前記第1の折返し部が形成され、さらに下方且つ前方に向かって円弧状に折り返されることで前記第2の折返し部が形成されており、
前記プリント基板は、前記第2筐体の前記上面を形成する上カバー材に対して相対的に固定されると共に、前記フレキシブル基板の前記接続部が接続される被接続部が下向きに設けられ、
前記フレキシブル基板は、前記接続部が上向きに設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
電子機器であって、
第1筐体および第2筐体と、
前記第1筐体に対して前記第2筐体を相対的に回動可能に連結するヒンジと、
前記第1筐体に設けられたディスプレイと、
前記第2筐体に設けられたプリント基板と、
前記ディスプレイと前記プリント基板とを接続するフレキシブル基板と、
を備え、
前記第1筐体は、前記第2筐体に対する回動動作により前記ヒンジと同軸上で回転し、前記フレキシブル基板が挿通された回転体を備え、
前記回転体は、前記フレキシブル基板を前記ディスプレイへ導く第1開口部、前記フレキシブル基板を前記プリント基板へ導く第2開口部、および前記フレキシブル基板が通っている基板孔を備え、
前記フレキシブル基板は、前記第2開口部を通過する領域に、平面に復帰させる方向の曲げ弾性付勢力を付与する保護シートを備え、
前記保護シートはステンレス箔であることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
前記第1筐体と前記第2筐体との回動動作にともなって前記フレキシブル基板が前記第2開口部の両縁部に当接して屈曲する場合で、より急角度に屈曲させられる一方に対面する面に前記保護シートが設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
前記第1筐体と前記第2筐体とが互いの一面が対向した状態で互いに積層された収納形態で、前記基板孔は前記第1筐体と前記第2筐体との積層方向に延在しており、前記回転体は、前記基板孔を挟んで前記第2筐体に対面する側の第1半体およびその反対側の第2半体とを有しており、前記保護シートはフレキシブル基板における前記第1半体に対面する面に設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器において、
前記第2の折返し部の外周側を通って前記第1の折返し部の内周側に突出する案内板を有することを特徴とする電子機器。