(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121126
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】支持ユニットおよび打鋲装置
(51)【国際特許分類】
B21J 15/30 20060101AFI20220812BHJP
B21J 15/10 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B21J15/30 Z
B21J15/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018298
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】池本 光希
(57)【要約】
【課題】リベットが打鋲される一対の被締結部材を支持する際に、一対の被締結部材の一方が傷つけられることを防止する。
【解決手段】リベットが打鋲位置Pに打鋲される一対の被締結部材210,220を支持する支持ユニット10であって、打鋲位置Pを取り囲むように一対の被締結部材210,220の一方を支持する上部クランプ11と、打鋲位置Pを取り囲むように一対の被締結部材210,220の他方を支持する下部クランプ12と、を備え、上部クランプ11は、金属材料により形成されており、打鋲位置Pを通過する軸線X回りの周方向に延びる支持面11aにより一対の被締結部材210,220の一方を支持し、支持面11aには、フッ素樹脂を主成分とした固体潤滑塗料が塗布されている支持ユニット10を提供する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リベットが打鋲位置に打鋲される一対の被締結部材を支持する支持ユニットであって、
前記打鋲位置を取り囲むように一対の前記被締結部材の一方を支持する第1支持体と、
前記打鋲位置を取り囲むように一対の前記被締結部材の他方を支持する第2支持体と、を備え、
前記第1支持体は、金属材料により形成されており、前記打鋲位置を通過する軸線回りの周方向に延びる支持面により一対の前記被締結部材の一方を支持し、
前記支持面には、フッ素樹脂を主成分とした固体潤滑塗料が塗布されている支持ユニット。
【請求項2】
前記支持面に塗布された前記固体潤滑塗料により形成される保護層の厚さは、20μm以上かつ40μm以下である請求項1に記載の支持ユニット。
【請求項3】
前記保護層の鉛筆硬度は、4H以上かつ6H以下である請求項2に記載の支持ユニット。
【請求項4】
一対の被締結部材の打鋲位置にリベットを打鋲する打鋲装置であって、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された支持ユニットと、
前記打鋲位置において前記支持ユニットにより支持された一対の前記被締結部材に軸線に沿って延びる貫通孔の孔明けを行う孔明けユニットと、
前記孔明けユニットにより形成された前記貫通孔に前記軸線に沿って前記リベットを挿入するリベット挿入ユニットと、
前記貫通孔に前記リベットが挿入された状態で、前記第1支持体および前記第2支持体に前記軸線に沿って一対の軸状の加締め部材を挿入し、一対の前記加締め部材を近接させて一対の前記被締結部材を前記リベットで加締める加締めユニットと、を備える打鋲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持ユニットおよび打鋲装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、航空機の胴体パネル等の被締結物にリベットを打鋲して被締結物を締結する打鋲装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される打鋲装置は、重ねて配置された一対の被締結物の一方を上側支持体で支持し、一対の被締結物の他方を下側支持体で支持し、一対の被締結物が所定の位置に固定された状態とする。
【0003】
そして、特許文献1に開示される打鋲装置は、固定された状態の一対の被締結物の打鋲位置に孔明けユニットにより貫通孔をあけ、リベット吸着ユニットにより貫通孔にリベットを挿入する。また、打鋲装置は、加締めユニットにより貫通孔に挿入されたリベットを加締めることにより、リベットを一対の被締結物の打鋲位置に打鋲する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される打鋲装置は、一対の被締結物の一方に直接的に接触した状態で上側支持体が一対の被締結物の一方を支持する。そのため、一対の被締結物の一方の上側支持体と接触する部分が、貫通孔を孔明けする際、あるいはリベットを加締める際に、上側支持体により傷つけられる場合がある。特に、一対の被締結物の一方の上側支持体と接触する部分が曲面形状を有している場合、上側支持体の角部が被締結物に局所的に接触して被締結物が傷つけられる可能性が高い。
【0006】
被締結物が傷つけられると、被締結物の疲労強度が低下し、あるいは被締結物の表面の空気抵抗が増加してしまう。そのため、疲労強度の低下や空気抵抗の増加を抑制するためには、被締結物の表面を磨いて傷を修復するという別途の作業が必要となってしまう。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、リベットが打鋲される一対の被締結部材を支持する際に、一対の被締結部材の一方が傷つけられることを防止することが可能な支持ユニットおよび打鋲装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様にかかる支持ユニットは以下の手段を採用する。
本開示の一態様にかかる支持ユニットは、リベットが打鋲位置に打鋲される一対の被締結部材を支持する支持ユニットであって、前記打鋲位置を取り囲むように一対の前記被締結部材の一方を支持する第1支持体と、前記打鋲位置を取り囲むように一対の前記被締結部材の他方を支持する第2支持体と、を備え、前記第1支持体は、金属材料により形成されており、前記打鋲位置を通過する軸線回りの周方向に延びる支持面により一対の前記被締結部材の一方を支持し、前記支持面には、フッ素樹脂を主成分とした固体潤滑塗料が塗布されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、リベットが打鋲される一対の被締結部材を支持する際に、一対の被締結部材の一方が傷つけられることを防止することが可能な支持ユニットおよび打鋲装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の打鋲装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示す制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図4】一対の被締結部材から支持ユニットが退避した状態を示す縦断面である。
【
図5】
図4に示す上部クランプを軸線に沿ってみた平面図である。
【
図7】一対の被締結部材が支持ユニットにより支持された状態を示す縦断面図である。
【
図8】孔明けユニットによる孔明け動作前の打鋲装置を示す縦断面図である。
【
図9】孔明けユニットによる孔明け動作が完了した状態の打鋲装置を示す縦断面図である。
【
図10】貫通孔にリベットが挿入された一対の被締結部材を示す縦断面図である。
【
図11】加締めユニットによる加締め動作前の打鋲装置を示す縦断面図である。
【
図12】加締めユニットによる加締め動作中の打鋲装置を示す縦断面図である。
【
図13】比較例の打鋲装置を示す縦断面図であり、孔明けユニットによる孔明け動作中の状態を示す。
【
図14】比較例の打鋲装置を示す縦断面図であり、孔明けユニットによる孔明け動作中の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る打鋲装置100について、図面を参照して説明する。
本実施形態の打鋲装置100は、航空機の胴体パネル等の一対の被締結部材210,220の打鋲位置P(
図4等参照)にリベット300を打鋲する装置である。一対の被締結部材210,220は、例えば、アルミニウム合金により板状に形成される部材である。リベット300は、例えば、アルミニウム合金により軸状に形成される部材である。
【0012】
図1に示すように、打鋲装置100は、支持ユニット10と、孔明けユニット20と、リベット供給ユニット30と、リベット挿入ユニット40と、加締めユニット50と、制御部60と、を備える。
図1に示すように、制御部60とその他の各部とは、信号線を介して通信可能なように電気的に接続されている。
【0013】
本実施形態において、
図2および
図3は、制御部60が実行する処理を示すフローチャートである。
図4は、一対の被締結部材210,220から支持ユニット10が退避した状態を示す縦断面である。
図5は、
図4に示す上部クランプ11を軸線に沿ってみた平面図である。
図6は、
図4に示すA部分の部分拡大図である。
図7は、一対の被締結部材210,220が支持ユニット10により支持された状態を示す縦断面図である。
【0014】
支持ユニット10は、リベット300が打鋲位置P(
図4等参照)に打鋲される一対の被締結部材210,220を支持する装置である。支持ユニット10は、打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xと同軸の位置に移動するとともに、軸線Xとは異なる軸線上に退避することが可能な移動機構(図示略)を有する。
図4および
図7に示すように、支持ユニット10は、軸線X上に同軸に配置された上部クランプ(第1支持体)11および下部クランプ(第2支持体)12を有する。
【0015】
図4に示すように、上部クランプ11は、軸線Xに沿って延びる筒状に形成される部材であり、金属材料(例えば、ステンレス合金)により形成されている。
図7に示すように、上部クランプ11は、打鋲位置Pを取り囲むように被締結部材210の表面を上方から支持する。
【0016】
図4に示すように、下部クランプ12は、軸線Xに沿って延びる筒状に形成される部材であり、金属材料(例えば、ステンレス合金)により形成されている。
図7に示すように、下部クランプ12は、打鋲位置Pを取り囲むように被締結部材220の表面を下方から支持する。
【0017】
図7に示すように、上部クランプ11は、下端に形成される支持面11aにより被締結部材210を上方から支持する。下部クランプ12は、上端に形成される支持面12aにより被締結部材220を下方から支持する。支持ユニット10は、上部クランプ11および下部クランプ12により、軸線Xに沿った上方および下方から一対の被締結部材210,220を挟み込んで支持する。
【0018】
図5に示すように、上部クランプ11の支持面11aは、打鋲位置Pを通過する軸線X回りの周方向RDに沿って円環状に延びる面である。ここでは、支持面11aが円環状であるものとしたが、円環の一部が切り欠かれた略円環状にしてもよいし、楕円環状にしてもよい。
【0019】
図示を省略するが、下部クランプ12の支持面12aは、打鋲位置Pを通過する軸線X回りの周方向RDに沿って円環状に延びる面である。ここでは、支持面11aが円環状であるものとしたが、円環の一部が切り欠かれた略円環状にしてもよいし、楕円環状にしてもよい。
【0020】
図6に示すように、上部クランプ11の支持面11aには、フッ素樹脂を主成分とした固体潤滑塗料が塗布されている。上部クランプ11の支持面11aには、固体潤滑塗料により保護層11bが形成される。固体潤滑塗料が塗布される支持面11aには、密着性を高めるために予め化成処理がなされている。化成処理は、例えば、りん酸塩の溶液を用いて金属材料により形成される支持面11aの表面にりん酸塩被膜を生成する処理である。
【0021】
保護層11bの厚さT1は、20μm以上かつ40μm以下の任意の厚さに設定されている。保護層11bの厚さを20μm以上かつ40μm以下としているのは、保護層11bが部分的に剥がれることのよる金属材料の露出を抑制し、かつ保護層11bの厚さT1が収縮することによる加工精度の低下を抑制するためである。
【0022】
保護層11bの鉛筆硬度は、4H以上かつ6H以下の任意の硬度に設定されている。保護層11bの鉛筆硬度を4H以上かつ6H以下としているのは、保護層11b自体が被締結部材210の表面を傷つけることを抑制し、かつ保護層11bの厚みが収縮することによる加工精度の低下を抑制するためである。鉛筆硬度とは、JIS5600-5-4(ISO/DIN15184)で規定されるひっかき硬度である。
【0023】
次に、孔明けユニット20について、図面を参照して説明する。
図8は、孔明けユニット20による孔明け動作前の打鋲装置100を示す縦断面図である。
図9は、孔明けユニット20による孔明け動作が完了した状態の打鋲装置100を示す縦断面図である。
【0024】
孔明けユニット20は、打鋲位置Pにおいて支持ユニット10により支持された一対の被締結部材210,220に貫通孔230の孔明けを行う装置である。
図8および
図9に示すように、孔明けユニット20は、先端および外周面に刃が形成されたドリル21と、ドリル21を軸線X回りに回転させるとともに軸線Xに沿って移動させる駆動部(図示略)が内蔵された本体部22とを有する。孔明けユニット20は、打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xと同軸の位置に移動するとともに、軸線Xとは異なる軸線上に退避することが可能な移動機構(図示略)を有する。
【0025】
リベット供給ユニット30は、リベット挿入ユニット40が打鋲位置Pの貫通孔230へ挿入するリベット300を供給する装置である。リベット供給ユニット30は、制御部60からの指示に従って、打鋲位置Pへ挿入するべきリベット300を多品種のリベット300の中から選択的に供給する。
【0026】
リベット挿入ユニット40は、孔明けユニット20により形成された貫通孔230に軸線Xに沿ってリベット300を挿入する装置である。リベット挿入ユニット40は、リベット供給ユニット30により供給されるリベット300の頭部310を保持し、軸線Xに沿ってリベット300の軸部320を貫通孔230に挿入する。リベット挿入ユニット40は、打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xと同軸の位置に移動するとともに、軸線Xとは異なる軸線上に退避することが可能な移動機構(図示略)を有する。
【0027】
加締めユニット50は、貫通孔230にリベット300の軸部320が挿入された状態で、上部クランプ11および下部クランプ12に軸状の上部ダイ(加締め部材)51および軸状の下部ダイ(加締め部材)52を挿入し、これらを近接させて一対の被締結部材210,220をリベット300で加締める装置である。加締めユニット50は、打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xと同軸の位置に移動するとともに、軸線Xとは異なる軸線上に退避することが可能な移動機構(図示略)を有する。
【0028】
制御部60は、支持ユニット10と、孔明けユニット20と、リベット供給ユニット30と、リベット挿入ユニット40と、加締めユニット50と、を制御する装置である。
なお、制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。
【0029】
そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0030】
次に、本実施形態の制御部60が実行する処理について、
図2および
図3を参照して説明する。
ステップS101で、制御部60は、支持ユニット10が打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xと同軸の位置に移動するように移動機構(図示略)を制御する。ステップS101による支持ユニット10の移動が完了すると
図4に示す状態となる。
【0031】
ステップS102で、制御部60は、上部クランプ11および下部クランプ12を互いに近接するように軸線Xに沿って移動させ、上部クランプ11が被締結部材220の上面を打鋲位置Pで上方から支持し、下部クランプ12が被締結部材210の下面を打鋲位置Pで下方から支持した状態とする。
【0032】
ステップS102による支持動作が完了すると
図7に示す状態となる。なお、支持ユニット10が一対の被締結部材210,220を打鋲位置Pで支持する状態は、後述するステップS112まで保持される。支持ユニット10は、例えば、0.1tf以上かつ1.0tf以下の加圧力で一対の被締結部材210,220を打鋲位置Pで支持する。
【0033】
ステップS103で、制御部60は、孔明けユニット20が打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xと同軸の位置に移動するように移動機構(図示略)を制御する。ステップS103による孔明けユニット20の移動が完了すると
図8に示す状態となる。
【0034】
ステップS104で、制御部60は、孔明けユニット20を軸線Xに沿って下方に移動させてドリル21の先端を打鋲位置Pに突き当て、孔明け動作を実行する。ステップS103による孔明け動作が完了すると
図9に示す状態となり、一対の被締結部材210,220を貫通する貫通孔230が形成される。
【0035】
ステップS105で、制御部60は、孔明けユニット20を軸線Xに沿った上方に移動させ、更に打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xとは異なる他の軸線上の退避位置に退避するように移動機構(図示略)を制御する。
【0036】
ステップS106で、制御部60は、リベット供給ユニット30により供給されるリベット300を保持するリベット挿入ユニット40が打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xと同軸の位置に移動するように移動機構(図示略)を制御する。その後、制御部60は、リベット300を保持した状態で、リベット挿入ユニット40を軸線Xに沿って下方に移動させてリベット300の軸部320の先端を貫通孔230に挿入する挿入動作を実行する。ステップS107によるリベット300の挿入動作が完了すると
図10に示す状態となる。
【0037】
ステップS108で、制御部60は、リベット挿入ユニット40を軸線Xに沿った上方に移動させ、更に打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xとは異なる他の軸線上の退避位置に退避するように移動機構(図示略)を制御する。
【0038】
ステップS109で、制御部60は、加締めユニット50が打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xと同軸の位置に移動するように移動機構(図示略)を制御する。また、加締めユニット50の上部ダイ51を軸線Xに沿って下方に移動させ、上部ダイ51の先端部がリベット300の頭部310に突き当てられた状態とする。ステップS109による加締めユニット50の移動が完了すると
図11に示す状態となる。
【0039】
ステップS110で、制御部60は、加締め動作を実行するように加締めユニット50を制御する。制御部60は、加締めユニット50の下部ダイ52を軸線Xに沿って上方に移動させ、軸部320の下端が貫通孔230の内径ID1よりも大きくなるように軸部320を塑性変形させ、
図12に示す状態とする。加締めユニット50は、例えば、2.0tf以上かつ7.0tf以下の加圧力でリベット300を塑性変形させる。
【0040】
ステップS111で、制御部60は、上部ダイ51を軸線Xに沿って上方に移動させ、下部ダイ52を軸線Xに沿って下方に移動させ、更にこれらが打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xとは異なる他の軸線上の退避位置に退避するように移動機構(図示略)を制御する。
【0041】
ステップS112で、制御部60は、加締めユニット50による加締め動作が終了し、一対の被締結部材210,220が打鋲位置Pにおいてリベット300により締結されたため、支持ユニット10による支持を解除して支持ユニット10を退避させる。具体的には、制御部60は、上部クランプ11および下部クランプ12を互いに離間するように軸線Xに沿って移動させる。さらに、制御部60は、支持ユニット10が打鋲位置Pを通過する鉛直方向の軸線Xとは異なる他の軸線上の退避位置に退避するように移動機構(図示略)を制御する。
【0042】
ステップS113で、制御部60は、ステップS101-ステップS112による1つのリベット300の締結動作(孔明け動作、挿入動作、加締め動作)が終了したことから、リベット300の打鋲を終了させるかどうかを判断する。制御部60は、他のリベット300の締結動作を行う場合はNOと判断してステップS101-ステップS112の処理を他のリベット300について再び繰り返す。一方、制御部60は、他のリベット300の締結動作を行わない場合はYESと判断して本フローチャートの処理を終了させる。
【0043】
以上の
図2および
図3で説明した打鋲装置の動作においては、ステップS106からステップS108のリベットの挿入をリベット挿入ユニット40が実行し、ステップS109からステップS111の加締め動作を加締めユニット50が実行するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、リベット挿入ユニット40と加締めユニット50の機能を備える単一のリベット挿入/加締めユニット(図示略)により、ステップS106からステップS108のリベットの挿入と、ステップS109からステップS111の加締め動作とを実行するようにしてもよい。
【0044】
ここで、比較例の打鋲装置100Aについて図面を参照して説明する。
図13および
図14は、比較例の打鋲装置100Aを示す縦断面図であり、孔明けユニット20による孔明け動作中の状態を示す。
図13は、上部クランプ11の支持面11aに固体潤滑塗料を塗布した直後の状態を示す。一方、
図14は、上部クランプ11の支持面11aに固体潤滑塗料を塗布してから所定回数(例えば、数百から数千)に渡ってリベット300を打鋲した後の状態を示す。
【0045】
図13に示すように、上部クランプ11の支持面11aに固体潤滑塗料により形成される保護層11cは、厚さT2を有する。一方、
図14に示すように、上部クランプ11の支持面11aに固体潤滑塗料により形成される保護層11cは、厚さT2よりも薄い厚さT3を有する。厚さT2は、本実施形態の打鋲装置100の保護層11bの厚さT1(20μm以上かつ40μm以下)よりも十分に厚いものとする。
【0046】
厚さT3は、厚さT2に比べて十分に薄いものとなっている。これは、所定回数(例えば、数百から数千)に渡ってリベット300を打鋲する際に、保護層11cに圧力がかかり保護層11cが圧縮されたからである。このように、リベット300を打鋲する際に保護層11cにかかる圧力により、保護層11cの厚さが薄くなってしまう。
【0047】
保護層11cを構成する固体潤滑塗料の収縮率が保護層11cの厚さによらず一定であるとしても、保護層11cの厚さが過度に厚い場合、収縮による厚さの変化が大きくなってしまう。そして、保護層11cの厚さの変化が大きくなると、ドリル21により形成される貫通孔230の加工精度が低下してしまう。
【0048】
図13および
図14に示すように、ドリル21は、貫通孔230の上端部にリベット300の頭部310を収容する座繰り部を形成する。貫通孔230の上端から座繰り部の下端までの軸線Xに沿ったカウンタ深さは、
図13ではDp1であるが、
図14ではDp1よりも深いDp2となっている。
【0049】
これは、ドリル21の軸線X方向の位置が保護層11cの下端を基準とした位置となっており、保護層11cが薄くなった分だけカウンタ深さが深くなったからである。
図14には、収縮する前の保護層11cの外形の位置が破線で示されている。保護層11cが収縮したことにより、一対の被締結部材210,220に対するドリル21の進入量が増加し、カウンタ深さがDp1からDp2に増加している。
【0050】
このように、保護層11cの厚さが過度に厚い場合、収縮による保護層11cの厚さの変化が大きくなってしまい、ドリル21により形成される貫通孔230の加工精度が低下してしまう。そこで、本実施形態では、保護層11bの厚さに上限を設けるようにした。
【0051】
以上説明した実施形態に記載の支持ユニット(10)は、例えば以下のように把握される。
本実施形態の支持ユニットは、リベット(300)が打鋲される打鋲位置(P)を有する一対の被締結部材(210,220)を支持する支持ユニット(10)であって、前記打鋲位置を取り囲むように一対の前記被締結部材の一方を支持する第1支持体(1)と、前記打鋲位置を取り囲むように一対の前記被締結部材の他方を支持する第2支持体(12)と、を備え、前記第1支持体は、金属材料により形成されており、前記打鋲位置を通過する軸線(X)回りの周方向(RD)に延びる支持面(11a)により一対の前記被締結部材の一方を支持し、前記支持面には、フッ素樹脂を主成分とした固体潤滑塗料が塗布されている。
【0052】
本実施形態の支持ユニットによれば、リベットが打鋲位置に打鋲される一対の被締結部材は、打鋲位置を取り囲むように一方の被締結部材が第1支持体により支持され、打鋲位置を取り囲むように他方の被締結部材が第2支持体により支持される。第1支持体は、金属材料により形成されており、一方の被締結部材を支持する支持面にフッ素樹脂を主成分とした固体潤滑塗料が塗布されている。固体潤滑塗料が塗布された支持面により被締結部材が支持されるため、リベットが打鋲される一対の被締結部材を支持する際に、一対の被締結部材の一方が傷つけられることを防止することができる。
【0053】
本実施形態の支持ユニットにおいて、前記支持面(11a)に塗布された前記固体潤滑塗料により形成される保護層(11b)の厚さ(T1)は、20μm以上かつ40μm以下であるのが好ましい。
保護層が薄すぎると、繰り返しの利用により保護層が部分的に剥がれ、金属材料が露出する可能性がある。また、保護層が厚すぎると保護層にかかる圧力により保護層の厚みが収縮し、リベットを挿入する貫通孔を孔明けする際の加工精度が低下してしまう可能性がある。発明者らは、保護層の厚さを20μm以上かつ40μm以下とすることにより、保護層が部分的に剥がれることのよる金属材料の露出を抑制し、かつ保護層の厚さが収縮することによる加工精度の低下を抑制することができるとの知見を得た。
【0054】
本実施形態の支持ユニットにおいて、前記保護層(11b)の鉛筆硬度は、4H以上かつ6H以下であるのが好ましい。
保護層の硬度が高すぎると保護層自体が保護層に接触する被締結部材の表面を傷つけてしまう可能性がある。また、保護層の硬度が低すぎると保護層にかかる圧力により保護層の厚みが収縮し、リベットを挿入する貫通孔を孔明けする際の加工精度が低下してしまう可能性がある。発明者らは、保護層の鉛筆硬度を4H以上かつ6H以下とすることにより、保護層自体が被締結部材の表面を傷つけることを抑制し、かつ保護層の厚みが収縮することによる加工精度の低下を抑制することができるとの知見を得た。
【0055】
以上説明した実施形態に記載の打鋲装置(100)は、例えば以下のように把握される。
本実施形態の打鋲装置は、一対の被締結部材の打鋲位置にリベットを打鋲する打鋲装置であって、上記のいずれかの支持ユニットと、前記打鋲位置において前記支持ユニットにより支持された一対の前記被締結部材に軸線に沿って延びる貫通孔(230)の孔明けを行う孔明けユニット(20)と、前記孔明けユニットにより形成された前記貫通孔に前記軸線に沿って前記リベットを挿入するリベット挿入ユニット(40)と、前記貫通孔に前記リベットが挿入された状態で、前記第1支持体および前記第2支持体に前記軸線に沿って一対の軸状の加締め部材を挿入し、一対の前記加締め部材を近接させて前記リベットにより一対の前記被締結部材を加締める加締めユニット(50)と、を備える。
【0056】
本実施形態の打鋲装置によれば、支持ユニットにより支持された一対の被締結部材に孔明けユニットにより貫通孔が形成され、リベット挿入ユニットにより貫通孔にリベットが挿入され、加締めユニットにより一対の被締結部材がリベットで加締められる。第1支持体は、金属材料により形成されており、一方の被締結部材を支持する支持面にフッ素樹脂を主成分とした固体潤滑塗料が塗布されている。固体潤滑塗料が塗布された支持面により被締結部材が支持されるため、リベットが打鋲される一対の被締結部材を支持する際に、一対の被締結部材の一方が傷つけられることを防止することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 支持ユニット
11 上部クランプ(第1支持体)
11a 支持面
11b 保護層
11c 保護層
12 下部クランプ(第2支持体)
12a 支持面
20 孔明けユニット
21 ドリル
22 本体部
30 リベット供給ユニット
40 リベット挿入ユニット
50 加締めユニット
51 上部ダイ
52 下部ダイ
60 制御部
100,100A 打鋲装置
210,220 被締結部材
230 貫通孔
300 リベット
310 頭部
320 軸部
ID1 内径
P 打鋲位置
RD 周方向
X 軸線