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特開2022-121134レーザ溶接ヘッド、レーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法
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  • 特開-レーザ溶接ヘッド、レーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法 図1
  • 特開-レーザ溶接ヘッド、レーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法 図2
  • 特開-レーザ溶接ヘッド、レーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121134
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】レーザ溶接ヘッド、レーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/03 20060101AFI20220812BHJP
   B23K 26/342 20140101ALI20220812BHJP
【FI】
B23K26/03
B23K26/342
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018314
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】505125945
【氏名又は名称】学校法人光産業創成大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】福世 訓久
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA32
4E168CA00
4E168CA06
4E168CB22
4E168DA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高出力のレーザ光を用いた溶接においても、作業者の眼への負担をかけることなく、溶接箇所の立体構造を観察できるようにできるレーザ溶接に用いられるレーザ溶接ヘッド、レーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法を提供する。
【解決手段】被溶接材Zの溶接箇所にレーザ光を射出するレーザ溶接ヘッドであり、溶接箇所の三次元画像データを取得する撮像手段20を備えるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶接材の溶接箇所にレーザ光を射出するレーザ溶接ヘッドであり、
前記溶接箇所の三次元画像データを取得する撮像手段を備えることを特徴とするレーザ溶接ヘッド。
【請求項2】
前記撮像手段が、
前記溶接箇所をそれぞれ別の角度から撮像する第1カメラ及び第2カメラと、
前記第1カメラと前記溶接箇所の間及び前記第2カメラと前記溶接箇所の間に介在する複数の光学レンズとを有し、
前記複数の光学レンズのうちの少なくとも1つが、前記レーザ光の光路上に設けられて、前記レーザ光を前記溶接箇所に集光させるレーザ集光用レンズとして機能する、請求項1記載のレーザ溶接ヘッド。
【請求項3】
前記複数の光学レンズのうちの前記溶接箇所に臨む位置に設けられた1つの光学レンズが、前記第1カメラに対応する対物レンズ及び前記第2カメラに対応する対物レンズとして兼用されており、
前記対物レンズが、前記レーザ集光用レンズとして機能する、請求項2記載のレーザ溶接ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか一項に記載のレーザ溶接ヘッドと、
前記三次元画像データが示す前記溶接箇所の三次元画像を表示するディスプレイとを具備するレーザ溶接装置。
【請求項5】
被溶接材の溶接箇所にレーザ光を射出するレーザ溶接ヘッドを用いたレーザ溶接方法であり、
溶接中に前記溶接箇所の三次元画像を撮像してディスプレイに表示することを特徴とするレーザ溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接に用いられるレーザ溶接ヘッド、レーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、Φ0.1~1mmの線材を用いる微細溶接において、溶接中に遠近感が分からないと作業が困難な場合がある。このために従来のレーザ溶接ヘッドとしては、例えば双眼顕微鏡を備え、溶接箇所を観察しながら作業できるように構成されたものがある(特許文献1)。
【0003】
ところが、このように双眼顕微鏡により溶接箇所を直視する構成であると、例えば作業の高効率化を図るべくレーザ光の出力を上げると、作業者の眼に負担がかかるといった問題が生じる。もちろん、顕微鏡内にはIRカットフィルタや電子シャッタが装備されており、レーザ光の反射光が作業者の眼に入り込むことを防止する構造としているが、それでも長時間の作業時には眼が疲れてしまう。
【0004】
溶接箇所を直視することなく観察する方法としては、CMOSカメラやCCDカメラにより溶接箇所を撮影してディスプレイに映し出し、そのディスプレイ越しに観察する方法が考えられるが、これでは映し出される溶接箇所が二次元的になって立体構造が分かり難く、溶接の良し悪しを正確に判断することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-215781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題を解決すべく図ったものであり、高出力のレーザ光を用いた溶接においても、作業者の眼への負担をかけることなく、しかも溶接箇所の立体構造を観察できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係るレーザ溶接ヘッドは、被溶接材の溶接箇所にレーザ光を射出するレーザ溶接ヘッドであり、前記溶接箇所の三次元画像データを取得する撮像手段を備えることを特徴とするものである。
【0008】
このように構成されたレーザ溶接ヘッドであれば、溶接箇所の三次元画像データを取得する撮像手段を備えているので、この三次元画像を表示することで、溶接箇所を直視することなく溶接箇所を観察することができる。これにより、高出力のレーザ光を用いた溶接においても、作業者の眼への負担をかけることなく、溶接箇所の立体構造を観察することが可能となる。
【0009】
前記撮像手段が、前記溶接箇所をそれぞれ別の角度から撮像する第1カメラ及び第2カメラと、前記第1カメラと前記溶接箇所の間及び前記第2カメラと前記溶接箇所の間に介在する複数の光学レンズとを有し、前記複数の光学レンズのうちの少なくとも1つが、前記レーザ光の光路上に設けられて、前記レーザ光を前記溶接箇所に集光させるレーザ集光用レンズとして機能することが好ましい。
このような構成であれば、光学レンズの少なくとも1つをレーザ集光レンズとして兼用しているので、部品点数の削減を図れる。
【0010】
前記複数の光学レンズのうちの前記溶接箇所に臨む位置に設けられた1つの光学レンズが、前記第1カメラに対応する対物レンズ及び前記第2カメラに対応する対物レンズとして兼用されており、前記対物レンズが、前記レーザ集光用レンズとして機能することが好ましい。
このような構成であれば、1つの光学レンズが、第1カメラ用の対物レンズ、第2カメラ用の対物レンズ、及びレーザ集光用レンズとして兼用されているので、部品点数のさらなる削減を図れ、ひいては小型化・軽量化・低コスト化などにつながる。
【0011】
また、本発明に係るレーザ溶接装置は、上述したレーザ溶接ヘッドと、前記三次元画像データが示す前記溶接箇所の三次元画像を表示するディスプレイとを具備することを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明に係るレーザ溶接方法は、被溶接材の溶接箇所にレーザ光を射出するレーザ溶接ヘッドを用いたレーザ溶接方法であり、溶接中に前記溶接箇所の三次元画像を撮像してディスプレイに表示することを特徴とする方法である。
【0013】
このようなレーザ溶接装置やレーザ溶接方法によれば、上述したレーザ溶接ヘッドと同様、高出力のレーザ光を用いた溶接においても、作業者の眼への負担をかけることなく、溶接箇所の立体構造を観察することができるといった作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0014】
上述した構成の本発明によれば、高出力のレーザ光を用いた溶接においても、作業者の眼への負担をかけることなく、溶接箇所の立体構造を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態におけるレーザ溶接装置の全体構成を示す模式図。
図2】同実施形態におけるレーザ溶接ヘッドの内部構造を示す模式図。
図3】その他の実施形態におけるレーザ溶接ヘッドの内部構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るレーザ溶接装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態のレーザ溶接装置100は、例えば欠けたりヒビが入ったりした金型等の被溶接材Zを肉盛溶接等により補修するために用いられるものであり、特にΦ0.1mm~1mm程度の線材Xを用いた微細溶接に資するものである。ただし、このレーザ溶接装置100は、肉盛溶接や微細溶接に用いられるものに限られるものではなく、種々のレーザ溶接に用いて構わない。
【0018】
具体的にこのレーザ溶接装置100は、図1に示すように、レーザ溶接ヘッドからレーザ光を射出して、そのレーザ光を被溶接材Zの溶接箇所Zxに照射するとともに、溶接中の溶接箇所ZxをディスプレイDに映し出すように構成されている。
なお、溶接箇所Zxとは、被溶接材Zの修復を要する箇所であり、ここでは肉盛される箇所である。また、この溶接箇所Zx或いはその近傍には、レーザが照射される線材Xが配置されることになる。
【0019】
レーザ溶接ヘッドは、図2に示すように、レーザ光源(不図示)からのレーザ光が通過する光路Laと、溶接箇所Zxを撮像する撮像手段20とを備えており、ここでは撮像手段20の焦点にレーザ光が射出されるように構成されている。なお、レーザ光としては種々のものを用いて構わないが、ここではYAGレーザを用いている。
【0020】
然して、本実施形態の撮像手段20は、溶接箇所Zxの立体構造を撮像可能なものであり、溶接箇所Zxの三次元画像データを取得するものである。
【0021】
より具体的に説明すると、この撮像手段20は、所謂3Dカメラの原理を利用して構成されたものであり、図2に示すように、溶接箇所Zxをそれぞれ別の角度から撮像する第1カメラ21及び第2カメラ22と、第1カメラ21と溶接箇所Zxとの間、及び、第2カメラ22と溶接箇所Zxとの間に介在する複数の光学レンズ23とを備えている。
【0022】
第1カメラ21及び第2カメラ22は、互いに異なる視点に配置されたものであり、ここでは溶接箇所Zxを通過する対称軸Tに対して線対称に配置されている。なお、撮像手段20としては、2つのカメラを備えるものに限らず、3つ以上のカメラを備えたものであっても良い。
【0023】
光学レンズ23は、第1カメラ21の光路上に設けられたもの(以下、第1レンズ23aという)と、第2カメラ22の光路上に設けられたもの(以下、第2レンズ23bという)とがあり、ここでは複数の第1レンズ23a及び複数の第2レンズ23bが上述した対称軸Tに対して線対称に配置されている。
【0024】
第1レンズ23aとしては、ズームレンズ、結像レンズ、正立プリズム、及び接眼レンズが設けられており、第2レンズ23bとしても同様に、ズームレンズ、結像レンズ、正立プリズム、及び接眼レンズが設けられている。ただし、第1レンズ23aや第2レンズ23bとしてはこれらの光学レンズ23に限られるものではなく、種々の光学レンズ23を用いて構わないし、配置も適宜変更して構わない。
【0025】
より具体的に説明すると、本実施形態の撮像手段20は、1つの対物レンズ23cにより作られた互いに平行な一対の光軸上の一方に第1カメラ21及び第1レンズ23aが配置されるとともに、他方に第2カメラ22及び第2レンズ23bが配置された所謂平行光路型のものである。
【0026】
すなわち、上述した複数の光学レンズ23のうちの溶接箇所Zxに臨む位置に設けられた1つの光学レンズ23、言い換えれば最も溶接箇所Zx側に配置されている1つの光学レンズ23が、第1カメラ21に対応する対物レンズ23c及び第2カメラ22に対応する対物レンズ23cとして兼用されている。
【0027】
上述した構成において、本実施形態の撮像手段20は、図2に示すように、複数の光学レンズ23のうちの少なくとも1つが、レーザ光の光路La上に設けられており、レーザ光を溶接箇所Zxに集光させるレーザ集光用レンズ23dとして機能する。
【0028】
ここでは、レーザ光の光路Laの一部が、上述した対称軸T上に沿って設けられており、上述した対物レンズ23cが、レーザ集光用レンズ23dとして機能する。より具体的には、レーザ光の光路Laが、上述した対称軸Tと交わり、その交点Pから対称軸Tに沿って溶接箇所Zxに向かうように設定されている。このレーザ光の光路Laと対称軸Tとの交点Pには、この交点Pに導かれたレーザ光を溶接箇所Zxに向かって反射させるミラー等の反射部材(不図示)が設けられている。
【0029】
レーザ光の光路Laと対称軸Tとの交点Pは、この実施形態では、対物レンズ23cよりもカメラ側にあり、その他の光学レンズ23よりも溶接箇所Zx側に設けられている。これにより、レーザ光は、対物レンズ23c以外の光学レンズ23を通過することなく、対物レンズ23cを通過して集光しながら溶接箇所Zxに導かれる。
【0030】
上述した撮像手段20は、情報処理装置Cに接続されており、撮像手段20により撮像されたデータは情報処理装置Cに出力される。
【0031】
情報処理装置Cは、専用乃至汎用のコンピュータであり、第1カメラ21により撮像された第1画像データと、第2カメラ22により撮像された第2画像データとを画像処理することにより、溶接箇所Zxの三次元画像を示す三次元画像データを作成するものである。
【0032】
この情報処理装置Cは、三次元画像データが示す三次元画像を表示するディスプレイDを備えている。本実施形態では、撮像手段20が、溶接中の溶接箇所Zxの立体構造をリアルタイムに撮像し、その三次元画像がディスプレイDにリアルタイムに表示されるように構成されている。
【0033】
このように構成されたレーザ溶接装置100によれば、レーザ溶接ヘッドが、溶接箇所Zxの三次元画像データを取得する撮像手段20を備えており、この三次元画像がディスプレイDに表示されるので、作業者は溶接箇所Zxを直視することなく溶接箇所Zxを観察することができる。
これにより、高出力のレーザ光を用いた溶接においても、作業者の眼への負担をかけることなく、溶接箇所Zxの立体構造を観察することが可能となる。
【0034】
また、撮像手段20を構成する対物レンズ23cが、レーザ集光用レンズ23dとして兼用されているので、装置の部品点数を削減することができ、ひいては小型化・軽量化・低コスト化などを図れる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0036】
例えば、撮像手段20としては、前記実施形態では平行光路型のものを説明したが、例えば図3に示すように、内斜型のものであっても良い。具体的にこの撮像手段20は、所定の内向角をもった一対の光軸上の一方に第1カメラ21及び第1レンズ23aが配置されるとともに、他方に第2カメラ22及び第2レンズ23bが配置されており、第1カメラ21に対応する対物レンズ23cと第2カメラ22に対応する対物レンズ23cとがそれぞれ別のものである。
【0037】
また、前記実施形態では、撮像手段により撮像された三次元画像が情報処理装置のディスプレイに表示される態様を説明したが、ディスプレイとしては、例えばタブレット端末や携帯端末が備えるものであっても良いし、作業者が装着できるゴーグル型のものであっても良い。さらには、プロジェクタ等により投影可能なスクリーンや壁面などをディスプレイとして用いても良い。
【0038】
さらに、前記実施形態では、複数の光学レンズのうちの対物レンズのみがレーザ集光用レンズとして機能する場合について説明したが、その他の1又は複数の光学レンズがレーザ集光用レンズとして機能するものであっても良い。
【0039】
その他、本発明は上記の各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前述した種々の構成の一部又は全部を適宜組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
100・・・レーザ溶接装置
Z ・・・被溶接材
Zx ・・・溶接箇所
X ・・・線材
La ・・・光路
D ・・・ディスプレイ
20 ・・・撮像手段
21 ・・・第1カメラ
22 ・・・第2カメラ
23 ・・・光学レンズ
23a・・・第1レンズ
23b・・・第2レンズ
23c・・・対物レンズ
23d・・・レーザ集光用レンズ
図1
図2
図3