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  • 特開-固体酸化物形燃料電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121160
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1213 20160101AFI20220812BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20220812BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20220812BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20220812BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/12 101
H01M8/1226
H01M4/86 T
H01M4/86 U
B23K20/00 310L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018350
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】大濱 宏和
(72)【発明者】
【氏名】酒井 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】谷口 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 侑子
【テーマコード(参考)】
4E167
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167AA06
4E167AA07
4E167AA08
4E167AA09
4E167AA10
4E167AA11
4E167AA12
4E167AA13
4E167AA21
4E167AB02
4E167AB03
4E167AB04
4E167AB05
4E167AB06
4E167BA00
5H018AA06
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018EE12
5H126AA02
5H126AA15
5H126BB06
5H126GG02
5H126JJ03
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】支持体と発電セルとの間の導電性の低下が抑制された固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池は、発電セルと、金属製の支持体と、発電セルの燃料極と支持体とを接合する接合層300と、を有する。接合層には、燃料極と支持体の並ぶz方向に延長する柱状の導電性酸化物層310と金属酸化物層320が含まれている。z方向に直交する方向で隣り合って並ぶ導電性酸化物層と金属酸化物層との間に、通電経路としての機能を果たす界面が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層(110)、前記固体電解質層の一面(110a)に設けられる空気極(120)、および、前記固体電解質層の前記一面の裏面(110b)に設けられる燃料極(130)を備える発電セル(100)と、
前記燃料極に設けられる金属製の支持体(200)と、
前記燃料極と前記支持体との間に介在され、前記燃料極と前記支持体とを接合する接合層(300)と、を有し、
前記接合層には、前記燃料極と前記支持体の並ぶ並び方向に延長する柱状の導電性酸化物層(310)と、前記並び方向に延長する柱状の金属酸化物層(320)と、が含まれ、
前記並び方向に直交する横方向で隣り合って並ぶ前記導電性酸化物層と前記金属酸化物層との間に、通電経路としての機能を果たす界面が形成されている固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記導電性酸化物層と前記金属酸化物層それぞれは前記支持体と前記燃料極それぞれに拡散接合されている請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記支持体には、Fe,Ni,Co,Cu,Ag,Pt,Ti,Cr,Al,Mn,Mg,Znのうちの少なくとも2つが含まれている請求項1または請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記接合層には、Fe,Ni,Co,Cu,Ag,Pt,Ti,Cr,Al,Mn,Mg,Znのうちの少なくとも1つが含まれている請求項1~3いずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記燃料極はセラミック複合材料で形成されている請求項1~4いずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記セラミック複合材料には、Ni,Cu,Fe,Ru,Pdのうちの少なくとも1つと、伝導体酸化物とが含まれている請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
前記導電性酸化物層と前記金属酸化物層のうちの一方は他方よりも前記横方向の長さが長い請求項1~6いずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
前記導電性酸化物層と前記金属酸化物層のうちの一方は他方よりも前記横方向の単位長さ当たりの分布密度が高い請求項1~7いずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項9】
前記接合層の前記並び方向の長さは、前記導電性酸化物層と前記金属酸化物層のうちの少なくとも1つの前記横方向の長さよりも長い請求項1~8いずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項10】
前記接合層の前記並び方向の長さは、前記導電性酸化物層と前記金属酸化物層のうちの少なくとも1つの前記横方向の長さよりも短い請求項1~8いずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、固体酸化物形燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、発電セルと、発電セルの燃料極相側に設けられた燃料極集電体と、燃料極集電体に設けられたセパレータと、を備える燃料電池スタックが知られている。セパレータは燃料極集電体を介して発電セルと電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-273303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるセパレータの燃料極集電体側の表面にNiまたはCuから成る保護板が設けられている。この保護板が酸化すると、セパレータ(支持体)と発電セルとの間の導電性が低下する虞がある。
【0005】
本開示の目的は、支持体と発電セルとの間の導電性の低下が抑制された固体酸化物形燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による固体酸化物形燃料電池は、
固体電解質層(110)、固体電解質層の一面(110a)に設けられる空気極(120)、および、固体電解質層の一面の裏面(110b)に設けられる燃料極(130)を備える発電セル(100)と、
燃料極に設けられる金属製の支持体(200)と、
燃料極と支持体との間に介在され、燃料極と支持体とを接合する接合層(300)と、を有し、
接合層には、燃料極と支持体の並ぶ並び方向に延長する柱状の導電性酸化物層(310)と、並び方向に延長する柱状の金属酸化物層(320)と、が含まれ、
並び方向に直交する横方向で隣り合って並ぶ導電性酸化物層と金属酸化物層との間に、通電経路としての機能を果たす界面が形成されている。
【0007】
これによれば支持体(200)と発電セル(100)との間の導電性の低下が抑制される。
【0008】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】固体酸化物形燃料電池の概略構成を示す断面図である。
図2】接合層を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0011】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせが可能である。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、組み合わせが可能であることを明示していなくても、実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1図2に基づいて本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池を説明する。それに当たって、以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、z方向と示す。図面では「方向」を省略して、単に、x、y、zと表記している。z方向が並び方向に相当する。x方向とy方向が横方向に含まれる。
【0013】
図1に示すように固体酸化物形燃料電池10は、発電セル100、支持体200、および、接合層300を有する。これらはz方向で積層されている。発電セル100と支持体200とが接合層300を介して連結されている。発電セル100に接合層300が拡散接合されている。接合層300に支持体200が拡散接合されている。
【0014】
発電セル100は、固体電解質層110、空気極120、および、燃料極130を有する。固体電解質層110はz方向で並ぶ一面110aと裏面110bを有する。この固体電解質層110の一面110a側に空気極120が設けられている。固体電解質層110の裏面110b側に燃料極130が設けられている。
【0015】
固体電解質層110は伝導体酸化物からなる。伝導体酸化物は酸素イオンを輸送するための酸素空孔を備えている。この伝導体酸化物としては例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)やガドリニウム安定化セリア(GDC)などを採用することができる。例えば、固体電解質層110の空気極120側をガドリニウム安定化セリア(GDC)で生成し、燃料極130側をイットリア安定化ジルコニア(YSZ)で生成することができる。
【0016】
空気極120は(La,Sr)MnO、(La,Sr)CoO、(La,Sr)(Co,Fe)Oなどの電子導電性を示す酸化物である。空気極120には酸化剤ガスとしての空気が供給される。
【0017】
空気極120は多孔質になっている。この空気極120の気孔を通って、空気に含まれる酸素が固体電解質層110側に流動する。酸素は空気極120から電子を受け取って酸素イオンになる。この酸素イオンが固体電解質層110に供給される。酸素イオンは固体電解質層110の燃料極130側に輸送される。
【0018】
燃料極130はセラミック複合材料で形成されている。このセラミック複合材料には、Ni,Cu,Fe,Ru,Pdのうちの少なくとも1つと伝導体酸化物とが含まれている。伝導体酸化物としては、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を採用することができる。燃料極130には燃料ガスが供給される。この燃料ガスとしては、例えば水素やメタンがある。
【0019】
燃料極130は多孔質になっている。この燃料極130の気孔を通って、水素が固体電解質層110に向かって流動する。この水素が燃料極130の固体電解質層110側に供給される。
【0020】
支持体200は金属製である。支持体200の形成材料には、Fe,Ni,Co,Cu,Ag,Pt,Ti,Cr,Al,Mn,Mg,Znのうちの少なくとも2つが含まれている。本実施形態ではこの形成材料にCr,Ni,Alが含まれている。また、例えば、この形成材料にCr,Fe,Alが含まれた構成を採用することもできる。
【0021】
支持体200は接合層300側の内面200aとその裏側の外面200bを有する。支持体200にはこの内面200aと外面200bとに開口する導入孔200cが形成されている。
【0022】
接合層300には金属材料が含まれている。この金属材料には、Fe,Ni,Co,Cu,Ag,Pt,Ti,Cr,Al,Mn,Mg,Znのうちの少なくとも1つが含まれている。本実施形態ではこの金属材料にNi,Alが含まれている。
【0023】
接合層300は燃料極130側の第1接合面300aとその裏側の第2接合面300bを有する。接合層300にはこの第1接合面300aと第2接合面300bとに開口する貫通孔300cが形成されている。
【0024】
図1に示すように、この貫通孔300cと導入孔200cがz方向で並んでいる。これら2つの孔の中空が連通している。この2つの孔の中空を介して、燃料極130に水素が供給される。
【0025】
これまでに説明したように、空気極120から固体電解質層110に酸素イオンが供給される。この酸素イオンが固体電解質層110の燃料極130側に輸送される。これとともに、水素が燃料極130の固体電解質層110側に供給される。これら酸素イオンと水素が燃料極130と固体電解質層110との間で化学反応する。これにより水と電子が生成される。
【0026】
生成された水は貫通孔300cと導入孔200cを介して固体酸化物形燃料電池10の外に排出される。生成された電子は支持体200と固体電解質層110の一面110aに接続された取り出し電極400と図示しない電気負荷とによって構成される閉ループを流動する。この取り出し電極400は支持体200と同一若しくは不同の金属材料で形成されている。
【0027】
<接合層の微細構造>
上記したように支持体200は発電セル100で生成された電子を電気負荷に供給する通電経路としての機能を果たしている。この支持体200と発電セル100の燃料極130との間に介在される接合層300も電子を電気負荷に供給する通電経路としての機能を果たしている。そのために接合層300の燃料極130と支持体200との間の電気抵抗が低いことが望まれる。
【0028】
本実施形態の接合層300は、図2に示す導電性酸化物層310と金属酸化物層320それぞれを複数有している。本実施形態の導電性酸化物層310はNiAlである。金属酸化物層320はAlである。
【0029】
これら導電性酸化物層310と金属酸化物層320はz方向に延びる柱状を成している。接合層300の備える複数の微細な導電性酸化物層310と複数の微細な金属酸化物層320はz方向に直交する方向で隣り合っている。これら2層の間に、通電経路としての機能を果たす界面が形成されている。そしてこれら2層は支持体200と燃料極130それぞれに拡散接合されている。
【0030】
係る構成となっているため、接合層300の電気抵抗には異方性がある。接合層300のz方向の電気抵抗は、z方向に直交する方向の電気抵抗よりも低くなっている。換言すれば、接合層300のz方向の電気伝導度は、z方向に直交する方向の電気伝導度よりも高くなっている。
【0031】
上記した通電経路としての機能を果たす界面は、例えばヘテロ界面である。このヘテロ界面でナノイオニクス効果が生じることが期待される。このナノイオニクス効果により接合層300での電気電導度の向上が期待される。
【0032】
これら導電性酸化物層310と金属酸化物層320を備える接合層300は、粒状の接合層300の構成材料を支持体200の内面200a側に設けて、粒状の構成材料を焼結することで製造される。この焼結条件や構成材料に含まれる材料の組成比、そして粒の大きさや量などは適宜調整可能である。これらを調整することで、導電性酸化物層310と金属酸化物層320それぞれの大きさや分布密度などを調整することができる。
【0033】
上記調整を行うことで、例えば、導電性酸化物層310のz方向に直交する方向の第1長さL1を、金属酸化物層320のz方向に直交する方向の第2長さL2よりも長くすることができる。逆に、第2長さL2を第1長さL1よりも長くすることができる。
【0034】
導電性酸化物層310のz方向に直交する方向の単位長さ当たりの第1分布密度ρ1を、金属酸化物層320のz方向に直交する方向の単位長さ当たりの第2分布密度ρ2よりも高めることができる。逆に、第2分布密度ρ2を第1分布密度ρ1よりも高めることができる。
【0035】
導電性酸化物層310と金属酸化物層320それぞれのz方向の厚みTを、第1長さL1と第2長さL2のうちの少なくとも一方よりも長くすることができる。逆に、第1長さL1と第2長さL2のうちの少なくとも一方を厚みTよりも長くすることができる。
【0036】
以上に示したように、導電性酸化物層310と金属酸化物層320それぞれの大きさや分布密度を調整することで、接合層300のz方向の電気抵抗を最適化することができる。換言すれば、接合層300のz方向の電気伝導度を最適化することができる。
【0037】
<作用効果>
上記したように接合層300は、両者の間に通電経路としての機能を果たす界面を形成する導電性酸化物層310と金属酸化物層320を有する。この界面は接合層300の内部に形成されている。そのため、例え接合層300の表層が経年劣化などによって電気抵抗が高まったとしても、支持体200と発電セル100との間の導電性が低まることが抑制される。
【0038】
接合層300の備える導電性酸化物層310と金属酸化物層320それぞれは支持体200と燃料極130それぞれに拡散接合されている。これにより支持体200と燃料極130との間の接合強度が高まっている。支持体200と燃料極130との間の電気抵抗が低まっている。
【0039】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0040】
10…固体酸化物形燃料電池、100…発電セル、110…固体電解質層、110a…一面、110b…裏面、120…空気極、130…燃料極、200…支持体、300…接合層、310…導電性酸化物層、320…金属酸化物層
図1
図2