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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121165
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】サキサグリプチン含有錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/403 20060101AFI20220812BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220812BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220812BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220812BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
A61K31/403
A61K9/20
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/34
A61K47/36
A61P3/10
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018357
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】592073695
【氏名又は名称】日医工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯野 弥生
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 大介
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076DD38
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF05
4C076FF36
4C076GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA03
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高湿度条件下においても安定性が良好な、錠剤内部にサキサグリプチンを含有する錠剤を提供すること。
【解決手段】錠剤内部にサキサグリプチンを含有する、打錠圧50N~350Nによる錠剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤内部にサキサグリプチンを含有する、打錠圧50N~350Nによる錠剤。
【請求項2】
錠剤内部にサキサグリプチンを含有する、打錠圧50N~350Nによる湿製錠剤。
【請求項3】
錠剤内部にさらに賦形剤を含有する請求項1又は2記載の錠剤。
【請求項4】
錠剤内部にさらに賦形剤及び結合剤を含有する請求項1又は2記載の錠剤。
【請求項5】
賦形剤が、乳糖、マンニトール、キシリトール及びソルビトールから選ばれる1種以上である請求項3又は4記載の錠剤。
【請求項6】
結合剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール-アクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、デンプングリコール酸ナトリウム及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種以上である請求項4又は5記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤内部にサキサグリプチンを含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サキサグリプチンは、GLP-1を分解するDPP-4活性を阻害することにより活性型GLP-1の血中濃度を上昇させ、インスリン分泌促進作用を介して血糖低下作用を発揮する2型糖尿病治療剤である。
【0003】
サキサグリプチンは、分子内環化反応によりサイクリックアミジン(主としてシス-サイクリックアミジン)を生成する不安定な化合物であり、当該分子内環化反応は、通常の錠剤化プロセス、例えば湿式造粒法、ローラー圧縮、錠剤化を受けるときに加速されることが知られている(特許文献1)。
この課題を解決するため、特許文献1では、錠剤内部ではなく、第2フィルムコーティング被膜中にサキサグリプチンを含有する錠剤が開示されている。
また、特許文献2には、サキサグリプチンとヒドロキシプロピルセルロースなどのポリマーとを溶媒に溶解し、pHを調整していない状態のpHより高く且つ4.0未満に調整して溶液を調製し、溶液を乾燥させて粉末とすることにより、サキサグリプチンの安定化を図る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4901727号公報
【特許文献2】特開2020-196705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のフィルムコーティング被膜中にサキサグリプチンを含有させた錠剤は、加湿条件における安定性が十分ではなく、更なる安定性の改善が必要であり、また、有効成分をフィルムコーティング被膜中に含有することは溶出性のばらつきが大きいという新たな課題を見出した。また、特許文献2では、安定なサキサグリプチン含有粉末が得られているが、この粉末を錠剤化した場合の安定性については全く記載されていない。
従って、本発明の課題は、高湿度条件下においても安定性が良好な、錠剤内部にサキサグリプチンを含有する錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、サキサグリプチンを用いて種々の方法でサキサグリプチンを内部に含有する錠剤を製造し、その安定性を評価したところ、サキサグリプチンに種々の賦形剤などの添加剤を添加し、50N~350Nという低い打錠圧により錠剤とすれば、錠剤内部にサキサグリプチンを含有し、高湿度条件下でもサイクリックアミジンをほとんど生じることがなく、かつ溶出性の安定した錠剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[6]を提供するものである。
[1]錠剤内部にサキサグリプチンを含有する、打錠圧50N~350Nによる錠剤。
[2]錠剤内部にサキサグリプチンを含有する、打錠圧50N~350Nによる湿製錠剤。
[3]錠剤内部にさらに賦形剤を含有する[1]又は[2]記載の錠剤。
[4]錠剤内部にさらに賦形剤及び結合剤を含有する[1]又は[2]記載の錠剤。
[5]賦形剤が、乳糖、マンニトール、キシリトール及びソルビトールから選ばれる1種以上である[3]又は[4]記載の錠剤。
[6]結合剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール-アクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、デンプングリコール酸ナトリウム及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種以上である[4]又は[5]記載の錠剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の錠剤は、錠剤内部にサキサグリプチンを安定に含有する錠剤であり、かつ溶出性も安定しており医薬製剤として優れた錠剤である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の医薬は、錠剤内部にサキサグリプチンを含有する、打錠圧50N~350Nによる錠剤である。
【0010】
本発明の医薬の有効成分はサキサグリプチンである。サキサグリプチンは、化学名(1S,3S,5S)-2-[(2S)-2-アミノ-2-(3-ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デシ-1-イル)アセチル]-2-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボニトリルであり、水和物として用いるのが好ましい。
サキサグリプチンは、DPP-4活性を阻害することにより活性型GLP-1の血中濃度を上昇させ、インスリン分泌促進作用を介して血糖低下作用を発揮するので、本発明の医薬は2型糖尿病治療剤として用いられる。
【0011】
本発明の錠剤中のサキサグリプチンの含有量は、特に制限されるものではないが、0.5質量%~50質量%が好ましく、0.5質量%~30質量%がより好ましく、0.5質量%~20質量%がさらに好ましい。また、本発明の錠剤1錠中のサキサグリプチン又はサキサグリプチン水和物の含有量は、サキサグリプチンとして2.5mg~5mgであるのが好ましい。
【0012】
本発明の錠剤は、打錠圧50N~350Nによる錠剤であるが、打錠圧50N~350Nによる湿製錠剤であるのがサキサグリプチンの安定性及び溶出性の安定化の点から、より好ましい。
本発明の錠剤には、通常、賦形剤、結合剤などが含まれる。
ここで、湿製錠剤とは、第17改正日本薬局方に薬品を含む湿潤した練合物を一定の型にはめ込んで成形した後、乾燥して製される錠剤と定義されており、通常、有効成分又は有効成分を含む主薬顆粒と賦形剤との混合物に、結合剤を溶解した水又は含水有機溶媒を加えて練合して練合物を得、当該練合物を低圧で圧縮成形し、乾燥して得られる錠剤;あるいは有効成分又は有効成分と結合剤を溶解した水又は含水有機溶媒の溶液に賦形剤を加えて練合して練合物を得、当該練合物を低圧で圧縮成形し、乾燥して得られる錠剤である。
従って、通常、本発明の湿製錠剤には、サキサグリプチン以外に、賦形剤、又は賦形剤及び結合剤が含まれる。
【0013】
賦形剤としては、サキサグリプチンを安定に製剤中に存在させる観点から、乳糖及び糖アルコールから選ばれる1種以上が好ましく、乳糖、マンニトール、キシリトール及びソルビトールから選ばれる1種以上がより好ましく、乳糖及びマンニトールから選ばれる1種以上がさらに好ましい。
これらの賦形剤は、サキサグリプチンを安定に製剤中に存在させる観点から、本発明の錠剤中に70質量%~99.5質量%含有するのが好ましく、80質量%~99.5質量%含有するのがより好ましく、85質量%~99.5質量%含有するのが更に好ましい。
【0014】
結合剤としては、サキサグリプチンを安定に製剤中に存在させる観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール-アクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、デンプングリコール酸ナトリウム及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種以上が好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーから選ばれる1種以上がより好ましい。
これらの結合剤は、サキサグリプチンを安定に製剤中に存在させる観点から、本発明の錠剤中に0質量%~5質量%含有するのが好ましく、0質量%~3質量%含有するのがより好ましく、0質量%~2質量%含有するのが更に好ましい。
【0015】
さらに、本発明の錠剤には、ステアリン酸マグネシウム、トウモロコシデンプン、軽質無水ケイ酸、ジメチルポリシロキサン(内服用)などの滑沢剤、矯味剤、着色剤、香料、pH調整剤などを含有させることができる。
【0016】
本発明の錠剤は、打錠圧を50N~350Nとする以外は、通常の錠剤又は湿製錠剤の製造法と同様の方法で製造される。
湿製錠剤の場合には、具体的には、サキサグリプチン又はサキサグリプチンを含む主薬顆粒と賦形剤との混合物に、結合剤を溶解した水又は含水有機溶媒を加えて練合して練合物を得、当該練合物を打錠圧50N~350Nで圧縮成形し、乾燥して得られる。
ここで、打錠圧が50N未満では良好な錠剤の形態を保持できない可能性があり、350Nを超えると錠剤の崩壊性が低下する可能性があり、サキサグリプチンの安定性も保持できない可能性がある。好ましい打錠圧は、75N~300Nであり、より好ましくは100N~250Nである。
【0017】
主薬顆粒及び練合物の製造方法としては、湿式造粒法ならば特に限定されないが、安定性の観点から攪拌造粒法による造粒あるいは練合が望ましい。
【0018】
含水有機溶媒における有機溶媒としては、エタノールが好ましい。好ましい溶媒としては、含水エタノールが挙げられる。
これらの溶媒の使用量は、サキサグリプチン、賦形剤及び結合剤の合計量100質量部に対して、5質量部~60質量部が好ましく、10質量部~50質量部がより好ましい。
ここで、サキサグリプチン又はサキサグリプチン及び結合剤を含有する水又は含水有機溶媒の溶液のpHは、サキサグリプチンの安定性確保の観点から、1~4が好ましく、1~3がより好ましく、2~3がさらに好ましい。
【0019】
本発明の錠剤の硬度は、輸送時及び取扱い性の点から、20N以上が好ましく、40N以上がより好ましい。
【0020】
本発明の錠剤は、錠剤内部にサキサグリプチンを安定に含有する錠剤であり、かつ溶出性のばらつきもなく医薬製剤として優れた錠剤である。
【実施例0021】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1
精製水44.8g、無水エタノール(エタノール(99.5)、富士フィルム和光純薬製)19.2gを混和した液にサキサグリプチン水和物(三洋化学研究所製)10.56gを添加して混合した後、6M塩酸(富士フィルム和光純薬製)、1M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)及び6M 水酸化ナトリウム溶液(キシダ化学製)でpH2に調整し、練合液とした。D-マンニトール(マンニットP、三菱商事ライフサイエンス製)629.44gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得た。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で打錠圧150Nの条件下で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥し、錠剤を得た。
【0023】
実施例2
精製水44.8g、無水エタノール(エタノール(99.5)、富士フィルム和光純薬製)19.2gにポリビニルアルコール(ゴーセノールEG-03P、日本合成化学工業製)3.2gを溶解させた結合液にサキサグリプチン水和物(三洋化学研究所製)10.56gを添加して混合させた後、6M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)、1M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)及び6M 水酸化ナトリウム溶液(キシダ化学製)でpH2に調整し、練合液とした。D-マンニトール(マンニットP、三菱商事ライフサイエンス製)626.24gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得た。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で打錠圧150Nの条件下で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥し、錠剤を得た。
【0024】
実施例3
精製水44.8g、無水エタノール(エタノール(99.5)、富士フィルム和光純薬製)19.2gにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL、日本曹達製)3.2gを溶解させた結合液にサキサグリプチン水和物(三洋化学研究所製)10.56gを添加して混合させた後、6M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)、1M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)及び6M 水酸化ナトリウム溶液(キシダ化学製)でpH2に調整し、練合液とした。D-マンニトール(マンニットP、三菱商事ライフサイエンス製)626.24gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得た。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で打錠圧150Nの条件下で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥し、錠剤を得た。
【0025】
実施例4
精製水44.8g、無水エタノール(エタノール(99.5)、富士フィルム和光純薬製)19.2gを混和した液にマクロゴール6000(マクロゴール6000(粉末)、三洋化成製)6.4gを添加して溶解させた後、サキサグリプチン水和物(三洋化学研究所製)10.56gを添加して混合させた後、6M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)、1M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)及び6M 水酸化ナトリウム溶液(キシダ化学製)でpH2に調整し、練合液とした。D-マンニトール(マンニットP、三菱商事ライフサイエンス製)623.04gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得た。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所性)で打錠圧150Nの条件下で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥し、錠剤を得た。
【0026】
実施例5
精製水44.8g、無水エタノール(エタノール(99.5)、富士フィルム和光純薬製)19.2gにポリビニルアルコール(ゴーセノールEG-03P、日本合成化学工業製)3.2gを溶解させた結合液にマクロゴール6000(マクロゴール6000(粉末)、三洋化成製)6.4gを添加して溶解させた後、サキサグリプチン水和物(三洋化学研究所製)10.56gを添加して混合させた後、6M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)、1M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)及び6M 水酸化ナトリウム溶液(キシダ化学製)でpH2に調整し、練合液とした。D-マンニトール(マンニットP、三菱商事ライフサイエンス製)619.84gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得た。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で打錠圧150Nの条件下で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥し、錠剤を得た。
【0027】
実施例6
精製水44.8g、無水エタノール(エタノール(99.5)、富士フィルム和光純薬製)19.2gにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL、日本曹達製)3.2gを溶解させた結合液にマクロゴール6000(マクロゴール6000(粉末)、三洋化成製)6.4gを添加して溶解させた後、サキサグリプチン水和物(三洋化学研究所製)10.56gを添加して混合させた後、6M塩酸(富士フィルム和光純薬製)、1M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)及び6M 水酸化ナトリウム溶液(キシダ化学製)でpH2に調整し、練合液とした。D-マンニトール(マンニットP、三菱商事ライフサイエンス製)619.84gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得た。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で打錠圧150Nの条件下で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥し、錠剤を得た。
【0028】
比較例1(実施例3の練合物の乾燥物に滑沢剤を添加し、乾式打錠したもの)
実施例3で得たサキサグリプチン含有の練合物を熱風乾燥機(DAE-20、三和化機工業製)で約8時間乾燥し、得られた乾燥物9.9g、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム-S、日油製)0.1gを袋の中で混合した。この混合物を卓上精密万能試験機 (オートグラフAGS-X島津製作所製)で直径8mm、打錠圧を8000Nの条件下で圧縮成形し、錠剤を得た。
【0029】
比較例2(実施例6の練合物の乾燥物に滑沢剤を添加し、乾式打錠したもの)
実施例6で得たサキサグリプチン含有の練合物を熱風乾燥機DAE-20(三和化機工業製)で約8時間乾燥し、得られた乾燥物9.9g、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム-S、日油製)0.1gを袋の中で混合した。直径8mm、打錠圧を8000Nの条件下で圧縮成形し、錠剤を得た。
【0030】
比較例3(フィルムコーティング層にサキサグリプチンを含有させた例)
乳糖(SuperTab 30GR、DFE pharma製)1485g、結晶セルロース1350g(セオラスUF-711、旭化成製)、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol、FMC製)150gを袋の中で混合した。次に、混合物にステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム-S、日油製)を添加して混合後、小型高速起点式打錠機(VIRGO、菊水製作所製)で圧縮成形し、200mgプラセボ錠剤を得た。 6M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)を希釈して調整した0.1N 塩酸 (約340g)にコーティング剤(OPADRY II WHITE、日本カラコン製)60gを混合し、1M塩酸(富士フィルム和光純薬製)、6M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)及び6M 水酸化ナトリウム溶液(キシダ化学製)でpH2にpHを調整する。OPADRY II WHITEはポリビニルアルコール(PVA)40%、ポリエチレングリコール(PEG)20%、タルク15%、二酸化チタンを25%含む。錠剤コーティング装置にプラセボ錠剤約300gを投入し、pHを調整した液を添加してフィルムコーティングを行い、インナーシール層をプラセボ錠剤にコートした。
次に6M 塩酸(富士フィルム和光純薬製)を希釈して調整した0.1N 塩酸 (約600g)にサキサグリプチン水和物(三洋化学研究所製)7.94gを添加して混合させた後、6M 水酸化ナトリウム溶液(キシダ化学製)でpH2に調整する。その後コーティング剤(OPADRY II WHITE、日本カラコン製) 60gを添加し 6M塩酸(富士フィルム和光純薬製)でpH2に調整する。OPADRY II WHITEはポリビニルアルコール(PVA)40%、ポリエチレングリコール(PEG)20%、タルク15%、二酸化チタンを25%含む。錠剤コーティング装置(HC-Labo、フロイント産業製)にインナーシール層をコートしたプラセボ錠剤約300gを投入し、pHを調整した液を添加してフィルムコーティングを行い、第1層にインナーシール層、第2層にサキサグリプチンを含有する層を有する錠剤を得た。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
<結果>
開始時及び40℃75%RHで開放及び密封条件下、60℃(湿度なりゆき)で開放及び密封条件下で1週間保管した錠剤について、液体クロマトグラフ法によりサイクリックアミジン及び総類縁物質量を測定した。
表3~6に示す通り、一般的な乾式打錠法で製造した錠剤と比べて、湿式打錠法により製造した錠剤は、保存中のサイクリックアミジン及び総類縁物質の増加量が少なかった。また、湿式打錠法により得られた錠剤(実施例1~6)は、薬物をフィルムコート部に含む特許4901727号を参照した比較例3と比較して、加湿条件下における安定性が向上するのみならず、密封条件で保存したときの安定性も向上していた。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
液体クロマトグラフ法による測定条件を以下に示す。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210nm)
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 粒径1.7μm
2.1mm×100mm
カラム温度:30℃付近の一定温度
移動相A:Buffer/アセトニトリル混液(90:10)
移動相B:Buffer/アセトニトリル混液(60:40)
Buffer:リン酸二水素カリウム2.72gに1000mL水を加え、リン酸を用いてpH4.0に調整する。
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を、下記の表7に示すように制御した。
流量:0.3mL/min
【0039】
【表7】
【0040】
製造例1
精製水44.8g、無水エタノール(エタノール(99.5))19.2gに ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL)3.2gを溶解させた結合液にサキサグリプチン水和物10.56gを添加して混合させた後、6M塩酸、1M塩酸及び6M水酸化ナトリウム溶液でpH3に調整し、練合液とする。D-マンニトール(マンニットP)626.24gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得る。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥する。
【0041】
製造例2
精製水44.8g、無水エタノール(エタノール(99.5))19.2gにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL)3.2gを溶解させた結合液にサキサグリプチン水和物21.16gを添加して混合させた後、6M塩酸、1M塩酸及び6M水酸化ナトリウム溶液でpH3に調整し、練合液とする。D-マンニトール(マンニットP)626.24gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得る。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥する。
【0042】
製造例3
精製水67.2g、無水エタノール(エタノール(99.5))28.8gにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL)3.2gを溶解させた結合液にサキサグリプチン水和物21.16gを添加して混合させた後、6M塩酸、1M塩酸及び6M水酸化ナトリウム溶液でpH3に調整し、練合液とする。D-マンニトール(マンニットP)626.24gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得る。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥する。
【0043】
製造例4
精製水89.6g、無水エタノール(エタノール(99.5))38.4gにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL)3.2gを溶解させた結合液にサキサグリプチン水和物21.16gを添加して混合させた後、6M塩酸、1M塩酸及び6M水酸化ナトリウム溶液でpH3に調整し、練合液とする。D-マンニトール(マンニットP)626.24gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得る。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥する。
【0044】
製造例5
精製水67.2g、無水エタノール(エタノール(99.5))28.8gにヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL)3.2gを溶解させた結合液にサキサグリプチン水和物21.16gを添加して混合させた後、6M塩酸、1M塩酸及び6M水酸化ナトリウム溶液でpH2に調整し、練合液とする。D-マンニトール(マンニットP)626.24gを攪拌造粒機(VG-05、パウレック製)に投入し、練合液を加えて練合し、サキサグリプチンを含有する練合物を得る。
この練合物を湿式打錠機(EMT-18、三共製作所製)で圧縮成形し、ベルトコンベア式乾燥機(ETD-18、三共製作所製)を用いて、85℃の温度で約5分間乾燥する。