(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121176
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】制御装置およびタッチ位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220812BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G06F3/041 520
G06F3/041 650
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018379
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】國分 太陽
(57)【要約】
【課題】タッチ面が湾曲していることに起因してユーザが意図した位置と異なる位置で閾値を超える静電容量の変化が起きた場合でも、ユーザが意図した位置に近い位置がタッチ位置として検出されるようにした「制御装置およびタッチ位置検出方法」を提供する。
【解決手段】制御装置5は、ある検出ポイントにおいて閾値を上回る対応値が検出された場合、その検出ポイントを注目検出ポイントとして、注目検出ポイントに対して湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、一方の向きと反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに所定の態様で偏りが生じているか否か判別し、生じている場合には、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出するタッチ位置検出部11を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲したタッチ面を有し、静電容量の変化に対応する対応値が検出される複数の検出ポイントが前記タッチ面に配置された静電容量式のタッチパネルを制御する制御装置であって、
ある検出ポイントにおいて閾値を上回る対応値が検出された場合、その検出ポイントを注目検出ポイントとして、前記注目検出ポイントに対して湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、前記一方の向きと反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに所定の態様で偏りが生じているか否か判別し、生じている場合には、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出するタッチ位置検出部を備える
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記タッチ位置検出部は、前記注目検出ポイントの湾曲方向における周辺で静電容量の変化を示す対応値が検出された検出ポイントの範囲の大きさが一定以上の場合に、前記所定の態様で偏りが生じているか否かの判別を行う一方、一定以上ではない場合、前記注目検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記タッチ位置検出部は、前記注目検出ポイントの近辺の曲率に応じた移動量分、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
検出ポイント毎に、検出ポイントが前記注目検出ポイントとなった場合において前記所定の偏りが生じているときの、検出ポイントの湾曲方向の周辺に位置する他の検出ポイントについての対応値の分布のパターンを定義したテンプレートが用意され、
前記タッチ位置検出部は、
ある検出ポイントにおいて閾値を上回る対応値が検出された場合、その検出ポイントを前記注目検出ポイントとして、前記注目検出ポイントについて用意された前記テンプレートを取得し、
前記注目検出ポイントの湾曲方向の周辺に位置する検出ポイントについての実際の対応値の分布のパターンと、取得した前記テンプレートが示すパターンとが類似しているか否かを判別し、類似している場合、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記タッチ位置検出部は、前記注目検出ポイントの湾曲方向における周辺で静電容量の変化を示す対応値が検出された検出ポイントの範囲の大きさが一定以上の場合に、前記テンプレートを用いた判別を行う一方、一定以上ではない場合、前記注目検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記タッチ位置検出部は、前記注目検出ポイントの近辺の曲率に応じた移動量分、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記テンプレート毎に移動量が対応付けられ、
前記タッチ位置検出部は、取得したテンプレートに対応付けられた移動量分、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記タッチ位置検出部は、前記注目検出ポイントに対して湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、前記一方の向きと反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに一定以上の差があるか否か判別し、当該差がある場合には、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記タッチ位置検出部は、前記注目検出ポイントの湾曲方向における周辺で静電容量の変化を示す対応値が検出された検出ポイントの範囲の大きさが一定以上の場合に、一方の向き側に係る広がりと他方の向き側に係る広がりとに一定以上の差があるか否かを判別する処理を行う一方、一定以上ではない場合、前記注目検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記タッチ位置検出部は、前記注目検出ポイントの近辺の曲率に応じた移動量分、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項8または9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記タッチ位置検出部は、
前記注目検出ポイントに対して湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、前記一方の向きと反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに一定以上の差があるか否か判別し、
一定以上の差がある場合、前記注目検出ポイントについて検出された対応値と、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが大きい側に位置する検出ポイントの対応値に、各対応値を一定の割合で低下させる補正を施し、
注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントのうち、補正後の全ての対応値よりも値が大きな対応値が検出されたものが存在するか否かを判別し、存在する場合、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項12】
前記タッチ位置検出部は、前記注目検出ポイントの湾曲方向における周辺で静電容量の変化を示す対応値が検出された検出ポイントの範囲の大きさが一定以上の場合に、一方の向き側に係る広がりと他方の向き側に係る広がりとに一定以上の差があるか否かを判別する処理を行う一方、一定以上ではない場合、前記注目検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記タッチ位置検出部は、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントのうち、補正後の全ての対応値よりも値が大きな対応値が検出されたものが存在する場合、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントのうち最も対応値の大きい検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項11または12に記載の制御装置。
【請求項14】
前記タッチ位置検出部は、前記注目検出ポイントの近辺の曲率に応じた移動量分、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する
ことを特徴とする請求項11または12に記載の制御装置。
【請求項15】
湾曲したタッチ面を有し、静電容量の変化に対応する対応値が検出される複数の検出ポイントが前記タッチ面に配置された静電容量式のタッチパネルを制御する制御装置によるタッチ位置検出方法であって、
前記制御装置のタッチ位置検出部が、ある検出ポイントにおいて閾値を上回る対応値が検出された場合、その検出ポイントを注目検出ポイントとして、前記注目検出ポイントに対して湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、前記一方の向きと反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに所定の態様で偏りが生じているか否か判別する第1ステップと、
前記制御装置の前記タッチ位置検出部が、前記第1ステップの結果、前記所定の態様で偏りが生じていると判定した場合に、前記注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する第2ステップとを含む
ことを特徴とするタッチ位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置およびタッチ位置検出方法に関し、特に、タッチ面が湾曲したタッチパネルを制御する制御装置、および、この制御装置によるタッチ位置検出方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチ面が平らではなく、一の方向に沿って凹状に湾曲した静電容量式のタッチパネル(以下「曲面タッチパネル」という)が普及してきている。なお特許文献1には、ディスプレイと、このディスプレイに重ねて配置されるタッチパネルとを備える表示入力装置について、ディスプレイ表面上の座標系と、タッチパネル表面上の座標系との対応関係をユーザの入力に基づいて調整する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の曲面タッチパネルでは、以下の方法でタッチ位置が検出され、そのため以下のような課題があった。
図15は、曲面タッチパネルのタッチ面X1を上から見た様子を示す図である。
図15において、ユーザがタッチ面X1上の位置X2をタッチすべく、タッチ面X1の左側から矢印X3に沿って指X4を移動させたとする。するとタッチ面X1の湾曲に起因して、位置P2においてタッチ位置が検出される(=位置X2における静電容量の変化が閾値を超える)前に、位置X5に指X2の一部が接触或いは近接し、この位置X5においてタッチ位置が検出される(=位置X5における静電容量の変化が閾値を超える)ことがあった。
【0005】
以上のように従来の曲面タッチパネルでは、タッチ面が湾曲していることに起因して、ユーザが意図した位置と異なる位置に先に指等の指示体が近接し、ユーザが意図した位置と異なる位置がタッチ位置と検出されることがあった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、タッチ面が湾曲していることに起因してユーザが意図した位置と異なる位置で閾値を超える静電容量の変化が起きた場合でも、ユーザが意図した位置に近い位置がタッチ位置として検出されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明では、湾曲したタッチ面を有し、静電容量の変化に対応する対応値が検出される複数の検出ポイントがタッチ面に配置された静電容量式のタッチパネルの制御にあたって以下の処理を実行する。すなわち、ある検出ポイントにおいて閾値を上回る対応値が検出された場合、その検出ポイントを注目検出ポイントとして、注目検出ポイントに対して湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、一方の向きと反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに所定の態様で偏りが生じているか否か判別し、生じている場合には、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する。
【発明の効果】
【0008】
タッチ面の湾曲に起因してユーザが意図した検出ポイントと異なる一の検出ポイントで対応値が閾値を超えた場合(閾値を超える静電容量の変化が起きた場合)、以下の現象が発生する。すなわち当該一の検出ポイントに対して、湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、その反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに所定の態様で偏りが生じ、しかも、当該一の検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側にユーザが意図した検出ポイントが位置する。
【0009】
これを踏まえ上記のように構成した本発明によれば、ある検出ポイントにおいて閾値を上回る対応値が検出された場合において、当該所定の態様で偏りが生じている場合には、その検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントがタッチ位置として検出されることになるため、タッチ位置として検出される検出ポイントを、ユーザが意図した検出ポイントに近づけることができる。すなわち本発明によれば、タッチ面が湾曲していることに起因してユーザが意図した位置と異なる位置で閾値を超える静電容量の変化が起きた場合でも、ユーザが意図した位置に近い位置がタッチ位置として検出されるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る表示入力装置の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る表示入力装置の平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】タッチ面を切断した様子を上から見た図、および、湾曲方向分布を示す図である。
【
図6】タッチ面を切断した様子を上から見た図、および、湾曲方向分布を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る表示入力装置1の斜視図である。
図2は、表示入力装置1を上から見た平面図である。以下の説明において上下方向、左右方向および前後方向は、
図1、2において矢印で示した方向に従うものとする。特に「右向き」とは表示入力装置1を正面視したときに右に向かう向きを意味し、「左向き」とは表示入力装置1を正面視したときに左に向かう向きを意味する。
【0012】
表示入力装置1は、液晶ディスプレイや有機ELパネル等の表示パネル2と、この表示パネル2に重ねて配置されたタッチパネル3とを備え、タッチパネル3にはタッチ面4が形成されている。表示入力装置1は、表示パネル2に映像を表示する機能、および、ユーザによるタッチ面4へのタッチ入力を受け付ける機能を備えている。表示入力装置1は、車両のインストルメンタルパネルの中央部に設けられるものであり、
図2で示すように表示入力装置1の正面に向かって右側に位置する右座席の搭乗者、および、左側に位置する左座席の搭乗者が指Fでタッチすることが想定されている。ただし右座席および左座席以外の搭乗者がタッチしてもよく、指F以外の指示体でタッチが行われてもよい。
【0013】
図1、2で示すように、表示入力装置1の筐体は、左右方向に沿う方向が湾曲方向となるように凹状に湾曲しており、これに従ってタッチ面4も凹状に湾曲している。
【0014】
図3は、タッチパネル3を制御する制御装置5の機能構成例を示すブロック図である。
図3で示すように制御装置5は機能構成として、対応値検出部10、タッチ位置検出部11および処理部12を備えている。上記各機能ブロック10~12は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~12は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。また
図3で示すように、制御装置5は、記憶手段として記憶部13を備えている。
【0015】
対応値検出部10は、タッチパネル3のタッチ面4に形成された検出ポイントPのそれぞれついて、静電容量の変化に対応する対応値を検出する。以下、対応値検出部10の処理について詳述する。
【0016】
図4は、タッチ面4の一部を説明に適した態様で拡大して示す図である。
図4で示すように、タッチ面4にはマトリックス状に検出ポイントPが形成されている。検出ポイントPのそれぞれは、静電容量の変化が検出されると共に、静電容量の変化に対応する対応値が検出される対象となるポイントである。
【0017】
図3で示すようにRAM等に形成されたバッファ14には対応値テーブル15が記憶される。この対応値テーブル15は、全ての検出ポイントPについて、座標を示す座標情報(検出ポイントPを一意に識別する座標情報としても機能する)と、対応値検出部10により検出された対応値とが対応付けて登録される。
【0018】
対応値検出部10は、所定周期で、全ての検出ポイントPの静電容量の変化を検出し、静電容量の変化の大きさを示す対応値を検出する。本実施形態では説明の便宜のため、対応値は「0」~「100」の範囲で値をとるものとし、静電容量に変化がない場合には、最低値の「0」となり、想定される最大の変化が生じた場合には、最大値の「100」となるものとする。対応値検出部10は、全ての検出ポイントPの対応値を検出した後、検出した各検出ポイントPについての対応値に基づいてバッファ14に記憶された対応値テーブル15の対応値のそれぞれを更新する。この結果、所定周期で、対応値テーブル15の各検出ポイントPの対応値の値が、直近で対応値検出部10により検出された値に更新される。
【0019】
なお、タッチパネル3の方式は自己容量方式、相互容量方式の何れでもよく(当然、他の方式でもよい)、対応値検出部10は、タッチパネル3の方式に対応する方法で各検出ポイントPにおける静電容量の変化の検出および対応値の検出を行う。一例としてタッチパネル3は相互容量方式であり、タッチパネル3には、左右方向の静電容量の変化を検出すべく透明電極がパターニングされたX側センサと、上下方向の静電容量の変化を検出すべく透明電極がパターニングされたY側センサとが重ねて設けられる。そして対応値検出部10は、X側センサの各電極についての静電容量の大きさと、Y側センサの各電極の静電容量の大きさとを所定周期で取得し、これらに基づいて各検出ポイントPにおける静電容量の変化の大きさを検出すると共に、静電容量の変化の大きさを対応値に変換する。
【0020】
次にタッチ位置検出部11の処理の説明に先立って、本実施形態に係るタッチ面4がタッチされたときに生じる現象について説明する。
【0021】
図5(A)は、タッチ面4を、上下方向の略中央で水平面に沿って切断した様子を説明に適した態様で模式的に示す図である。ただし
図5(A)のタッチ面4は、説明の便宜のため、タッチ面4の曲がり具合を誇張すると共に、指Fに比して小さく描画している。
【0022】
図5(A)において検出ポイントP10が、ユーザがタッチしようとしている位置であるとする。また、検出ポイントP10の湾曲方向の右側には、検出ポイントP10から近い順に、P11、P12、・・・、P19、P20の10個の検出ポイントが存在し、検出ポイントP10の湾曲方向に沿って左側には、検出ポイントP10から近い順に、P9、P8、・・・、P1、P0の10個の検出ポイントが存在するものとする。
【0023】
以下の説明ではユーザがタッチしようとしている検出ポイントPを適宜、「目標検出ポイント」という。また、目標検出ポイントにおいてタッチ面4と接する仮想的な面のことを「仮想タッチ面」という。
図5および後述する
図6において、符号Sは、目標検出ポイントが検出ポイントP10である場合の仮想タッチ面を示している。また、ある検出ポイントPに対して湾曲方向の右側のことを単に「湾曲方向右側」といい、ある検出ポイントPに対して湾曲方向の左側のことを単に「湾曲方向左側」という。
【0024】
以上の前提の下、ユーザがタッチ面4の右側から指Fで検出ポイントP10をタッチしようとするケース(以下「ケースC1」とする)を考える。このケースC1は、右座席の搭乗者がタッチ面4をタッチすることを想定している。ケースC1では
図5(A)で示すように、検出ポイントP10を中心として右斜め前方に広がる放射状の領域H5内で、指先が検出ポイントP10に向かうように指Fが移動することが想定される。このためケースC1では、指Fは、仮想タッチ面Sに対して垂直に近い角度で検出ポイントP10に向かって移動していく。
【0025】
図5(B)は、ケースC1においてユーザのタッチが行われたときに検出ポイントP0~P20について検出される対応値の典型的な分布を示している。
図5(B)において、横軸は検出ポイントP0~P20を示し、縦軸は各検出ポイントP0~P20について検出される対応値を示している。
【0026】
以下の説明において、ある検出ポイントPの湾曲方向の周辺に位置する検出ポイントについての対応値の分布を、「その検出ポイントPについての湾曲方向分布」という。
図5(B)は、検出ポイントP10についての湾曲方向分布である。また「0」ではない対応値のことを「変動対応値」という。変動対応値は、静電容量の変化があったことを示す対応値である。なお静電容量の変化は、タッチ面4への物体の接触(或いは近接)による変化を想定している。これを踏まえ測定誤差や、物体の接触(或いは近接)以外の要因(車両の振動)等により対応値が「0」ではない値となることを考慮して、変動対応値を、「5」以上の値等、「0」を若干上回る値以上の値と定義してもよい。
【0027】
また湾曲方向分布において、ある検出ポイントPの湾曲方向右側に位置し、変動対応値が検出された検出ポイントPについての対応値の分布の広がりを「その検出ポイントPについての右側広がり」という。対応値の分布の広がりは、本実施形態では、変動対応値が検出された検出ポイントPの個数を意味する。
図5(B)において、検出ポイントP10の湾曲方向右側では、検出ポイントP11、P12、P13について変動対応値(本実施形態では「0」を上回る対応値)が検出されており、検出ポイントP10についての右側広がりは「3個」である。
【0028】
同様に湾曲方向分布において、ある検出ポイントPの湾曲方向左側に位置し、変動対応値が検出された検出ポイントPについての対応値の分布の広がりを「その検出ポイントPについての左側広がり」という。
図5(B)において、検出ポイントP10の湾曲方向左側では、検出ポイントP9、P8、P7について変動対応値(「0」を上回る対応値)が検出されており、検出ポイントP10についての左側広がりは「3個」である。
【0029】
また湾曲方向分布において、変動対応値が検出された検出ポイントPの個数を「反応個数」と表現する。
図5(B)では、検出ポイントP7、P8、P9、P10、P11、P12、P13で変動対応値が検出されており、反応個数は7個である。反応個数は、特許請求の範囲の「静電容量の変化を示す対応値が検出された検出ポイントの範囲の大きさ」に相当する。
【0030】
図5(B)で示すように、ケースC1の場合には、目標検出ポイントである検出ポイントP10において対応値がタッチ判定閾値を上回っている。なお、タッチ判定閾値とは、ユーザによるタッチが行われたとみなせる程度の静電容量の変化があったか否かを判別するための閾値である。以下、
図5、
図6を用いた説明において、対応値がタッチ判定閾値を上回っている検出ポイントを「ピーク検出ポイント」という。
【0031】
またケースC1の場合には、ピーク検出ポイントである検出ポイントP10を中心として左右対称に対応値の分布が広がっている。換言すれば検出ポイントP10についての右側広がり(3個)と、検出ポイントP10についての左側広がり(3個)とが同じである(偏りが生じていない)。また後に詳述するが、ケースC1はケースC2と比較して、反応個数が小さい(少ない)。これらの特徴は、指Fが仮想タッチ面に対して垂直に近い角度で目標検出ポイントに向かって移動し、(理想的には)指先がピンポイントで目標検出ポイントに接触するからである。以下、ケースC1のように、指Fが仮想タッチ面に対して垂直に近い角度で目標検出ポイントに向かって移動して行われるタッチのことを「垂直タッチ」という。
【0032】
以上を一般化し、垂直タッチが行われる場合には、以下の特徴が現出する。目標検出ポイントにおいて対応値がタッチ判定閾値を上回るという特徴(ただし若干ずれるケースはある)。ピーク検出ポイントについての湾曲方向分布に関し、ピーク検出ポイントを中心として左右対称に対応値の分布が広がるという特徴(ただし若干、左右対称性がくずれるケースはある)。ピーク検出ポイントについての湾曲方向分布に関し、後述する傾きタッチと比較して反応個数が小さいという特徴(これについては後に詳述)。
【0033】
次に、ユーザがタッチ面4の左から指Fで検出ポイントP10をタッチしようとするケース(以下「ケースC2」とする)を考える。
図6(A)は、
図5(A)と同様の態様でタッチ面4を示す図である。ケースC2は、左座席の搭乗者がタッチ面4をタッチすることを想定している。ケースC2では、
図6(A)で示すように、検出ポイントP10を中心として左斜め前方に広がる放射状の領域H6内で、検出ポイントP10に向かうように指Fが移動することが想定される。このためケースC2では、指Fは、仮想タッチ面Sに対して垂直から大きく傾いた角度で検出ポイントP10に向かって移動してく。
【0034】
図6(B)は、ケースC2においてユーザのタッチが行われたときに検出ポイントP0~P20について検出される対応値の典型的な分布を示している。
図6(B)で示すように、ケースC2の場合には、目標検出ポイントの検出ポイントP10ではなく、検出ポイントP10に対して湾曲方向の左側に位置する検出ポイントP9の対応値がタッチ判定閾値を上回るという特徴がある。つまり
図6(B)では、検出ポイントP9がピーク検出ポイントである。
【0035】
この特徴は、以下の理由により生じる。
図7は、
図6の要部を拡大した図である。
図7で示すようにユーザがタッチ面4の検出ポイントP10をタッチすべく、指Fを矢印Y7に沿って移動させたとする。このとき、「指Fが動く方向が、仮想タッチ面Sに対する垂直方向から左側に大きく傾くこと」、および、「タッチ面4が検出ポイントP10の左側で指Fに対して近づくように湾曲していること」に起因して、検出ポイントP10の湾曲方向左側に位置する検出ポイントPに指Fの一部が接触或いは近接し、その検出ポイントPの対応値がタッチ判定閾値を上回るという現象が発生するからである。
【0036】
またタッチ面4が湾曲していることに起因して、目標検出ポイントではない検出ポイントPで対応値がタッチ判定閾値を上回ることを踏まえると、ピーク検出ポイント近辺の曲率が大きいほど、ピーク検出ポイントと目標検出ポイントとの離間量が大きくなることが分かる。曲率が大きいほど、指Fの側面により近づくようにタッチ面4がより大きく湾曲しているということであり、目標検出ポイントからより離れた位置で、指Fの側面がタッチ面4に接触或いは近接する蓋然性が高まるからである。
【0037】
更に
図6(B)を参照し、ピーク検出ポイントについての左側広がりと、ピーク検出ポイントについての右側広がりとに、左側広がりが大きく、右側広がりが小さくなるような偏りが生じるという特徴がある。具体的には、ピーク検出ポイントである検出ポイントP9についての左側広がりは「6個」であり、検出ポイントP9についての右側広がりは「2個」であり、左側広がりが大きく、右側広がりが小さくなるような偏りが生じている。
【0038】
この特徴は、以下の理由により生じる。すなわちケースC2の場合、指Fが動く方向が、仮想タッチ面Sに対して、垂直方向から左側に大きく傾いており、更にタッチ面4が検出ポイントP10(目標検出ポイント)の湾曲方向左側で指Fに対して近づくように湾曲している。このため
図7で示すように、検出ポイントP9についての対応値がタッチ判定閾値を上回った時点では、検出ポイントP9よりも湾曲方向右側では、静電容量を広い範囲で変動させる程には指Fがタッチ面4に近づかない一方、検出ポイントP9よりも湾曲方向左側では、静電容量を広い範囲で変動させる程に指Fがタッチ面4に近づく。これに起因して検出ポイントP9の湾曲方向左側で広範囲にわたって静電容量の変化が生じるからである。なお検出ポイントP9よりも湾曲方向左側では、典型的には、検出ポイントP9をピークとして湾曲方向左側にいくに従って対応値の値が小さくなっていくような分布が生じる。
【0039】
更にピーク検出ポイントについての湾曲方向分布に関し、
図5(B)と
図6(B)との比較で明らかな通り、ケースC2の場合、ケースC1の場合と比較して、反応個数が大きい(=変動対応値が検出される検出ポイントPの個数が多い)という特徴がある。なお
図6(B)の例では、反応個数は「9個」である。
【0040】
この特徴は以下の理由により生じる。すなわちケースC2では、上述した通り検出ポイントP9よりも湾曲方向左側のタッチ面4に指Fの側面部分が近づくことに起因して、検出ポイントP9の湾曲方向左側の分布の広がりが大きくなるという現象が発生する。これに対してケースC1では、指Fが動く方向が、仮想タッチ面Sに対して垂直に近いため、このような現象が発生しないからである。以下、ケースC2のように、指Fが仮想タッチ面に対して垂直から大きく傾いた状態で目標検出ポイントに向かって移動して行われるタッチのことを「傾きタッチ」という。
【0041】
以上を一般化し、傾きタッチが行われる場合には、以下の特徴がある。ピーク検出ポイントの湾曲方向左側の分布の広がりと、湾曲方向右側の分布の広がりとに、一方の側の分布の広がりが大きく、他方の側の分布の広がりが小さくなるような偏りが生じるという特徴J1。ピーク検出ポイントに対して、分布の広がりが小さい側に目標検出ポイントが位置するという特徴J2。ピーク検出ポイント周辺の曲率が大きいほど、目標検出ポイントとピーク検出ポイントとの離間量が大きくなるという特徴J3。垂直タッチが行われた場合と比して反応個数が大きい(多い)という特徴J4。
【0042】
さて、タッチ位置検出部11は、所定周期毎に以下の処理を実行する。まずタッチ位置検出部11は、バッファ14から対応値テーブル15を取得する。次いでタッチ位置検出部11は、対応値テーブル15に記録されている対応値のうち、タッチ判定閾値を上回るものが1つでも存在するか否かを判別する。上述したようにタッチ判定閾値は、ユーザによるタッチが行われたとみなせる程度の静電容量の変化があったか否かを判別するための閾値である。タッチ判定閾値を上回る対応値が1つも存在しない場合、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。
【0043】
タッチ判定閾値を上回る対応値が1つでも存在する場合、タッチ位置検出部11は、以下の処理を行う。すなわちタッチ位置検出部11は、タッチ判定閾値を上回る対応値が1つの場合は、タッチ判定閾値を上回る対応値に対応する検出ポイントPを注目検出ポイントとして特定する。一方、タッチ判定閾値を上回る対応値が複数、存在する場合、タッチ位置検出部11は、そのうち、最も値が大きい対応値に対応する1つの検出ポイントPを注目検出ポイントとして特定する。タッチ判定閾値を超えた対応値が複数、存在する場合としては、ユーザが指Fでタッチ面4をタッチした際に、例えば
図4の検出ポイントP41、P42、P43、P44のように狭い範囲内の複数の検出ポイントPの対応値が同時にタッチ判定閾値を超える場合を想定している。なお、タッチ判定閾値を超えた対応値が複数、存在する場合に、フィルタ処理や統計学的手法により、1つの検出ポイントPを注目検出ポイントとするようにしてもよい。
【0044】
注目検出ポイントを特定した後、タッチ位置検出部11は、バッファ14の対応値テーブル15を参照し、注目検出ポイントの湾曲方向における周辺の検出ポイントPについての対応値を取得する。本実施形態ではタッチ位置検出部11は、注目検出ポイントに対して湾曲方向左側の10個の検出ポイントPについての対応値、および、注目検出ポイントに対して湾曲方向右側の10個の検出ポイントPについての対応値を取得する。ただし対応値を取得する検出ポイントPの個数は、検出ポイントPの密度や、実現したい精度等を考慮して定められるべき事項であり、本実施形態で例示する個数に限られるものではない。以下、対応値を取得した検出ポイントP(注目検出ポイントの湾曲方向における周辺の検出ポイントP)と、注目検出ポイントとをまとめて「分析対象検出ポイント群」という。
【0045】
次いでタッチ位置検出部11は、分析対象検出ポイント群の対応値に基づいて、注目検出ポイントについての湾曲方向分布を分析し、反応個数が予め定められた閾値(以下、ここで用いられる閾値を「広がり閾値」という)を上回っているか否かを判別する。この処理は、以下を目的とする。すなわち上述した通り傾きタッチの場合には、垂直タッチの場合と比較して反応個数が大きいという特徴J4がある。これを踏まえ、広がり閾値は、この広がり閾値を反応個数が上回っている場合には、行われたタッチが傾きタッチである可能性があるような値とされている。そして上記処理は、ユーザにより行われたタッチが傾きタッチに該当する可能性があるか否かを判別することを目的として行われている。
【0046】
反応個数が広がり閾値を上回っていない場合、タッチ位置検出部11は、今回行われたタッチが傾きケースに該当しないと判定し、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する。その後、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。
【0047】
反応個数が広がり閾値を上回っている場合(特許請求の範囲の「注目検出ポイントの湾曲方向における周辺で静電容量の変化を示す対応値が検出された検出ポイントの範囲の大きさが一定以上の場合」に相当)、タッチ位置検出部11は、記憶部13に記憶されたテンプレートデータベース17を参照する。テンプレートデータベース17とは、検出ポイントP毎に座標情報とテンプレートデータ(テンプレート)とを対応付けて管理するデータベースである。ただしテンプレートデータが登録されていない検出ポイントPがあってもよく、また、複数のテンプレートデータが登録された検出ポイントPがあってもよい。以下、テンプレートデータの内容について詳述する。
【0048】
ある一の検出ポイントPについてのテンプレートデータとは、当該一の検出ポイントが注目検出ポイントとなった場合において、当該一の検出ポイントについての左側広がりと、右側広がりとに所定の偏りが生じているときの、当該一の検出ポイントの湾曲方向における周辺の検出ポイントについての対応値の分布のパターンを定義したテンプレートである。換言すると、ある一の検出ポイントについてのテンプレートデータとは、タッチが傾きタッチであったときの当該一の検出ポイントについての湾曲方向分布のパターンを定義したテンプレートである。
【0049】
詳述すると
図6(A)で示すように、目標検出ポイントが検出ポイントP10の場合に、左座席の搭乗者によりタッチが行われ、その結果、タッチが傾きタッチとなるケースが発生し得る。このケースにおいては典型的には、湾曲方向分布が
図6(B)で示す態様となることは上述した通りである。
【0050】
このように本実施形態では、タッチ面4の場所ごとに、傾きタッチが行われるとしたら、どのような態様で行われるかが予め予想(想定)される。具体的には、
図6(A)の領域A61においては、左座席の搭乗者から、仮想タッチ面に垂直な方向に対して大きく左側に傾いた方向に沿って指Fが移動してタッチがなされたときに、傾きタッチが発生することが想定される。同様に領域A62においては、右座席の搭乗者から、仮想タッチ面に垂直な方向に対して大きく右側に傾いた方向に沿って指Fが移動してタッチがなされたときに、傾きタッチが発生することが想定される。
【0051】
そして本実施形態では、検出ポイントP毎に、タッチが傾きタッチであるときに、検出ポイントPについての湾曲方向分布に生じる典型的な分布のパターンが事前に導出され、当該パターンを示すテンプレートデータが用意される。例えば
図6(A)を参照し、検出ポイントP9が注目検出ポイントになった場合において、タッチが傾きタッチの場合には、検出ポイントP9についての湾曲方向分布のパターンは典型的には、
図6(B)で示すパターンとなる。従って検出ポイントP9については、
図6(B)で示すパターンを示すテンプレートデータが事前に用意され、テンプレートデータベース17には、検出ポイントP9の座標情報と対応付けて、このテンプレートデータが登録される。
【0052】
なお1つの検出ポイントPについて複数のテンプレートデータが登録されてもよい。各検出ポイントPについてのテンプレートデータの内容や個数は、後述する類似閾値も考慮して、傾きタッチが行われている場合にそれを高い精度で検出できるようにするという観点で行われた事前のテストやシミュレーションの結果を踏まえて定められるべきものである。
【0053】
また、ある検出ポイントの周囲でどのような態様で傾きタッチが行われると想定されるかは固定的に定まるものではなく、タッチパネル3がどのような場所に設置されるかによって、またタッチパネル3の具体的な形状によって、また事前のテストやシミュレーションの結果によって柔軟に定められるべきものである。
【0054】
また周囲で傾きタッチが行われないと想定される検出ポイントPについては、テンプレートデータベース17にテンプレートデータが登録されない。例えば
図6(A)を参照し、タッチ面4の湾曲方向の中央部に位置する検出ポイントPMについては、周囲で傾きタッチが行われないと想定することができ、このように想定した場合には、検出ポイントPMには、対応するテンプレートデータが登録されない。
【0055】
さてタッチ位置検出部11は、テンプレートデータベース17を参照し、注目検出ポイントの座標情報と対応付けられたテンプレートデータが存在するか否かを判別する。テンプレートデータが存在しない場合、タッチ位置検出部11は、今回行われたタッチが傾きタッチに該当しないと判定し、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する。その後、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。
【0056】
一方、テンプレートデータが存在する場合、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントに対応するテンプレートデータが示すパターンと、注目検出ポイントについての湾曲方向分布が示すパターンとについてパターンマッチングを行い、テンプレートデータが示すパターンと湾曲方向分布が示すパターンとの相違度を導出する。複数のテンプレートデータが存在する場合には、タッチ位置検出部11は、複数のテンプレートデータのそれぞれについて相違度を導出する。相違度として例えば、差の二乗和に基づく相違度や、差の絶対値和に基づく相違度を用いることができる(当然これらに限られない)。
【0057】
次いでタッチ位置検出部11は、相違度が予め定められた閾値(以下、ここで用いられる閾値を「類似閾値」という)を下回っているか否か判別する(=テンプレートデータが示すパターンと、注目検出ポイントについての湾曲方向分布が示すパターンとが類似しているか否かを判別する)。複数のテンプレートデータが存在する場合、タッチ位置検出部11は、1つでも類似閾値を下回っている相違度があれば、相違度が類似閾値を下回っていると判定する。
【0058】
テンプレートデータが示すパターンと湾曲方向分布が示すパターンとの相違度を導出し、相違度が予め予め定められた閾値を下回っているか否かを判別する処理は、特許請求の範囲の「注目検出ポイントに対して湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、一方の向きと反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに所定の態様で偏りが生じているか否かを判別する処理」に相当する。テンプレートデータが示すパターンは、当然に特徴J1を反映したパターンとなっており、テンプレートデータが示すパターンと、注目検出ポイントについての湾曲方向分布が示すパターンとが類似するか否かを判別することは、注目検出ポイントについての左側広がりと右側広がりとに、一方の側の分布の広がりが大きく、他方の側の分布の広がりが小さくなるような偏りが生じているか否かを判別することになるからである。
【0059】
相違度が類似閾値を下回っていない場合(複数のテンプレートデータが存在するときは、類似閾値を下回る相違度が一つもない場合)、タッチ位置検出部11は、今回行われたタッチが傾きタッチに該当しないと判定し、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する。その後、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。
【0060】
一方、相違度が類似閾値を下回っている場合(複数のテンプレートデータが存在するときは、類似閾値を下回る相違度が1つ以上ある場合)、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントの座標を以下の方法で補正する。すなわち、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントについての湾曲方向分布を分析し、注目検出ポイントを中心として湾曲方向右側と、湾曲方向左側とのうち、分布の広がりが小さい側(向き)を、「移動向き」として特定する。注目検出ポイントについての湾曲方向分布が
図6(B)の場合には、タッチ位置検出部11は、湾曲方向右側を「移動向き」として特定する。
【0061】
次いでタッチ位置検出部11は、注目検出ポイント近辺の曲率を特定する。本実施形態では、検出ポイントP毎に、検出ポイントP近辺の曲率を示す情報が登録されたテーブルが記憶部13に記憶されており、タッチ位置検出部11は、このテーブルを用いて注目検出ポイント近辺の曲率を認識する。次いでタッチ位置検出部11は、曲率に応じた移動量を特定する。移動量は、湾曲方向左側或いは湾曲方向右側に向かって検出ポイントPを何個分ずらすかを示す値である。本実施形態では、曲率がこの範囲に属していれば、移動量はこの値というように、曲率の範囲毎に移動量が予め定められている。
【0062】
次いでタッチ位置検出部11は、注目検出ポイントの座標を、特定した移動向きに、特定した移動量分、移動するように補正する。例えば、湾曲方向分布が
図6(B)の場合において(この場合、湾曲方向右側が移動向きとして特定される)、特定した移動量が「1」である場合には、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントである検出ポイントP9の座標について、湾曲方向右側に1つ分ずらす補正をする。この場合、補正後の座標は、検出ポイントP10の座標となる。
【0063】
以上の注目検出ポイントの座標に対する補正は、「ピーク検出ポイントに対して、分布の広がりが小さい側に目標検出ポイントが位置するという特徴J2」および「ピーク検出ポイント周辺の曲率が大きいほど、目標検出ポイントとピーク検出ポイントとの離間量が大きくなるという特徴J3」という2つの特徴を踏まえ、ピーク検出ポイントに相当する注目検出ポイントの座標を、目標検出ポイントの座標に一致させるか、少なくとも近づける補正である。
【0064】
次いでタッチ位置検出部11は、補正後の座標が示す検出ポイントPをタッチ位置として検出する。その後、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。
【0065】
処理部12は、タッチ位置検出部11によりタッチ位置と判定された検出ポイントPを認識し、対応する処理を実行する。一例として、処理部12は、タッチパネル3に表示されたアイコン内にタッチ位置に係る検出ポイントPが位置しているか否かを判別し、位置している場合には、そのアイコンがタッチされたとして、所定のアクションを実行する。
【0066】
以上説明したように本実施形態では、制御装置5は、ある検出ポイントPにおいてタッチ判定閾値を上回る対応値が検出された場合、その検出ポイントPを注目検出ポイントとして、注目検出ポイントに対して湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、一方の向きと反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに所定の態様で偏りが生じているか否か判別し、生じている場合には、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する。
【0067】
この構成によれば、ある検出ポイントPにおいて閾値を上回る対応値が検出された場合において、当該所定の態様で偏りが生じている場合には、その検出ポイントPに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントPがタッチ位置として検出されることになるため、タッチ位置として検出される検出ポイントPを、ユーザが意図した検出ポイントPに近づけることができる。すなわち本発明によれば、タッチ面4が湾曲していることに起因してユーザが意図した位置と異なる位置で閾値を超える静電容量の変化が起きた場合でも、ユーザが意図した位置に近い位置がタッチ位置として検出されるようにすることができる。
【0068】
更に本実施形態では、湾曲方向分布の態様に影響を与える要素が考慮され、また、事前のテストやシミュレーションの結果が反映されたテンプレートデータが事前に用意され、タッチ位置検出部11は、このテンプレートデータを用いてタッチが傾きタッチに該当するか否かが判別されるため、高い精度で当該判別を実行できる。
【0069】
更に本実施形態では、タッチ位置検出部11は、反応個数が広がり閾値を上回る場合(注目検出ポイントの湾曲方向における周辺で静電容量の変化を示す対応値が検出された検出ポイントの範囲の大きさが一定以上の場合)に、テンプレートを用いた判別を行う一方、一定以上ではない場合、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する。このため、不必要な場合にパターンマッチング(データベースへのアクセスや、所定のアルゴリズムによるマッチング等の処理負荷が大きな処理)を行うことを防止でき、処理効率がよい。
【0070】
次に制御装置5の動作例についてフローチャートを用いて説明する。
図8は、制御装置5がある周期において実行する処理を示すフローチャートである。
図8で示すように、対応値検出部10は、タッチパネル3のタッチ面4に形成された検出ポイントPのそれぞれついて、静電容量の変化に対応する対応値を検出する(ステップSA1)。次いで対応値検出部10は、バッファ14には対応値テーブル15における各検出ポイントPの対応値を更新する(ステップSA2)。
【0071】
タッチ位置検出部11は、バッファ14から対応値テーブル15を取得する(ステップSA3)。次いでタッチ位置検出部11は、対応値テーブル15に記録されている対応値のうち、タッチ判定閾値を上回るものが1つでも存在するか否かを判別する(ステップSA4)。タッチ判定閾値を上回る対応値が1つも存在しない場合(ステップSA4:NO)、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。
【0072】
タッチ判定閾値を上回る対応値が1つでも存在する場合(ステップSA4:YES)、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントを特定する(ステップSA5)。次いでタッチ位置検出部11は、バッファ14の対応値テーブル15を参照し、注目検出ポイントの湾曲方向における周辺の検出ポイントPについての対応値を取得する(ステップSA6)。次いでタッチ位置検出部11は、注目検出ポイントについての湾曲方向分布を分析し、反応個数が広がり閾値を上回っているか否かを判別する(ステップSA7)。
【0073】
反応個数が広がり閾値を上回っていない場合(ステップSA7:NO)、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する(ステップSA8)。その後、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。反応個数が広がり閾値を上回っている場合(ステップSA7:YES)、タッチ位置検出部11は、記憶部13に記憶されたテンプレートデータベース17を参照し、注目検出ポイントの座標情報と対応付けられたテンプレートデータが存在するか否かを判別する(ステップSA9)。テンプレートデータが存在しない場合(ステップSA9:NO)、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する(ステップSA8)。その後、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。
【0074】
テンプレートデータが存在する場合(ステップSA9:YES)、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントに対応するテンプレートデータが示すパターンと、注目検出ポイントについての湾曲方向分布が示すパターンとについてパターンマッチングを行い、テンプレートデータが示すパターンと湾曲方向分布が示すパターンとの相違度を導出する(ステップSA10)。次いでタッチ位置検出部11は、相違度が類似閾値を下回っているか否か判別する(ステップSA11)。相違度が類似閾値を下回っていない場合(ステップSA11:NO)、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する(ステップSA8)。その後、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。
【0075】
相違度が類似閾値を下回っている場合(ステップSA11:YES)、タッチ位置検出部11は、移動向きおよび移動量を特定する(ステップSA12)。次いでタッチ位置検出部11は、ステップSA12で特定した移動向きおよび移動量に基づいて、注目検出ポイントの座標を補正する(ステップSA13)。次いでタッチ位置検出部11は、ステップSA13による補正後の座標の検出ポイントPをタッチ位置として検出する(ステップSA14)。
【0076】
処理部12は、ステップSA14でタッチ位置検出部11により検出されたタッチ位置に応じた処理を実行する(ステップSA15)。
【0077】
<第1実施形態の変形例>
以上、第1実施形態について説明したが、第1実施形態について以下の構成としてもよい。すなわち第1実施形態では、タッチ位置検出部11は、テンプレートデータが示すパターンと、湾曲方向分布が示すパターンとの相違度を導出し、相違度が類似閾値を下回っている場合に、各パターンが類似していると判定した。この点に関し、タッチ位置検出部11が類似度を導出し、類似度が閾値を上回っている場合に、各パターンが類似していると判定してもよい。
【0078】
また第1実施形態ではタッチ位置検出部11は、テンプレートデータと湾曲方向分布とのパターンマッチングの前に、反応個数が広がり閾値を上回っているか否かを判別し(
図8のステップSA7)、上回っている場合にのみパターンマッチングを実行した。この点に関し、反応個数が広がり範囲を上回っているか否かの判定を行うことなく、パターンマッチングを行う構成でもよい。しかしながら、第1実施形態の構成によれば、不必要な場合にパターンマッチング(データベースへのアクセスや、所定のアルゴリズムによるマッチング等の処理負荷が大きな処理)を行うことを防止でき、処理効率がよいことは上述した通りである。
【0079】
また第1実施形態では、タッチ位置検出部11は、注目検出ポイントの座標の補正に際し、移動量を、曲率に応じた移動量とした。この点に関し、移動量を予め定められた固定値としてもよい。また、以下の構成としてもよい。すなわちテンプレートデータ毎に、湾曲方向分布が示すパターンとテンプレートデータが示すパターンとが類似しているときの適切な移動量(=目標検出ポイントと注目検出ポイントとの離間量)が事前に導出される。テンプレートデータ毎に、導出された移動量が対応付けられる。タッチ位置検出部11は、取得したテンプレートに対応付けられた移動量分、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントをタッチ位置として検出する。以上の構成でもよい。またタッチ位置検出部11が、曲率に代えて或いは曲率に加えて他の要素を踏まえて移動量を決定する構成でもよい。
【0080】
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9は、本実施形態に係る制御装置5Aの機能構成例を示すブロック図である。
図9で示すように制御装置5Aは、第1実施形態に係るタッチ位置検出部11に代えて、タッチ位置検出部11Aを備えている。記憶部13には、テンプレートデータベース17が記憶されていない。
【0081】
第1実施形態ではタッチ位置検出部11は、反応個数が広がり閾値を上回っている場合に、テンプレートデータに基づくパターンマッチングを行った。一方、本実施形態ではタッチ位置検出部11Aは、反応個数が広がり閾値を上回っている場合に、パターンマッチングに代えて以下の処理を実行する。
【0082】
すなわちタッチ位置検出部11Aは、注目検出ポイントについての湾曲方向分布を分析し、注目検出ポイントについての左側広がりと、右側広がりとに閾値(以下、ここで用いられる閾値を「差分閾値」という)を上回る差があるか否かを判別する。例えば差分閾値が「3」(個)であったとする。この場合において、湾曲方向分布が
図5(B)の場合、注目検出ポイント(検出ポイントP10)についての左側広がり(3個)と右側広がり(3個)との差は「0」であるため、タッチ位置検出部11Aは、これら広がりに差分閾値を上回る差がないと判定する。また差分閾値が「3」(個)の場合において、湾曲方向分布が
図6(B)の場合、注目検出ポイント(検出ポイントP9)についての左側広がり(6個)と、右側広がり(2個)との差は「4」であるため、タッチ位置検出部11Aは、これら広がりに差分閾値を上回る差があると判定する。
【0083】
注目検出ポイントについての左側広がりと右側広がりとに差分閾値を上回る差があるということは、各広がりに、傾きタッチが発生したとみなせるような偏りが生じているということである。逆に言えば、差分閾値は、各広がりにこの差分閾値を上回るような差が生じている場合には、傾きタッチが発生したとみなすことができるような値に設定されている。注目検出ポイントについての左側広がりと右側広がりとに差分閾値を上回る差があるか否かを判別する処理は、特許請求の範囲の「注目検出ポイントに対して湾曲方向の一方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりと、一方の向きと反対の他方の向き側の検出ポイントについて検出された対応値の分布の広がりとに所定の態様で偏りが生じているか否かを判別する処理」に相当する。
【0084】
各広がりに差分閾値を上回る差がない場合、タッチ位置検出部11Aは、今回行われたタッチが傾きタッチに該当しないと判定し、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する。その後、タッチ位置検出部11Aは、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。この場合は、傾きタッチが行わたのではなく、何らかの原因で湾曲方向に広範囲で静電容量の変化が発生したと考えられる。
【0085】
各広がりに差分閾値を上回る差がある場合、タッチ位置検出部11Aは、第1実施形態と同様の方法で注目検出ポイントの座標を補正し、補正後の座標の検出ポイントPをタッチ位置として検出する。つまりタッチ位置検出部11Aは、注目検出ポイントの座標について、注目検出ポイントを中心として分布の広がりが小さい側に、曲率に応じた移動量だけ移動するような補正を施し、補正後の座標の検出ポイントPをタッチ位置として検出する。
【0086】
なお本実施形態では、注目検出ポイントについての左側広がりと右側広がりとに差があったら注目検出ポイントの座標の補正をするのではなく、差分閾値を上回る差があって初めて注目検出ポイントの座標の補正を行う。これは垂直タッチが行われた場合に、注目検出ポイントの左右の分布の広がりが完全な左右対象となるわけではなく、垂直タッチが行われた(従って注目検出ポイントと目標検出ポイントとが近接している)にもかかわらず、注目検出ポイントの座標の補正が行われることを防止するためである。
【0087】
本実施形態では、注目検出ポイントの湾曲方向左側の分布の広がりと湾曲方向右側の分布の広がりとに差分閾値を上回る差があり、傾きタッチがなされたとみなせる場合には、注目検出ポイントがそのままタッチ位置として検出されるのではなく、目標検出ポイントに近づくように補正された座標が示す検出ポイントPがタッチ位置として検出される。このため第1実施形態と同様、タッチ面4が湾曲していることに起因してユーザが意図した位置と異なる位置でタッチ判定閾値を超える対応値が検出された場合でも、ユーザが意図した位置に近い位置がタッチ位置として検出されるようにすることができる。
【0088】
次に本実施形態に係る制御装置5Aの動作例を
図10のフローチャートを用いて説明する。
図10のフローチャートについて、
図8のフローチャートと同一の処理については同一の符号を付し、その説明を省略する。ステップSA7において反応個数が広がり閾値を上回っていると判定した場合(ステップSA7:YES)、タッチ位置検出部11Aは、タッチ位置検出部11Aは、注目検出ポイントについての湾曲方向分布を分析し、注目検出ポイントについての左側広がりと、右側広がりとに差分閾値を上回る差があるか否かを判別する(ステップSB1)。
【0089】
各広がりに差分閾値を上回る差がない場合(ステップSB1:NO)、タッチ位置検出部11Aは、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する(ステップSA8)。その後、タッチ位置検出部11Aは、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。各広がりに差分閾値を上回る差がある場合(ステップSB1:YES)、処理手順はステップSA12へ移行する。
【0090】
<第2実施形態の変形例>
上述した第2実施形態について、以下の構成としてもよい。すなわち第1実施形態の変形例と同様、タッチ位置検出部11Aが、反応個数が広がり閾値を上回っているか否かを判別する処理を実行しない構成でもよい。ただし第2実施形態によれば、反応個数が広がり閾値を上回っていない場合、つまり、反応個数の大きさから傾きタッチではないと判定できるとき、不必要な処理が行われないことになり処理効率がよい。また注目検出ポイントの座標の補正に関し、移動量を固定値としてもよく、また、曲率に代えて或いは曲率に加えて他の要素を踏まえて移動量を決定する構成でもよい。
【0091】
<第3実施形態>
次に第3実施形態について第2実施形態との比較を通して説明する。
図11は、本実施形態に係る制御装置5Bの機能構成例を示すブロック図である。
図11で示すように、制御装置5Bは、第2実施形態に係るタッチ位置検出部11Aに代えて、タッチ位置検出部11Bを備えている。記憶部13には、テンプレートデータベース17が記憶されていない。
【0092】
第2実施形態ではタッチ位置検出部11Aは、注目検出ポイントの湾曲方向左側の分布の広がりと、湾曲方向右側の分布の広がりとに差分閾値を上回る差がある場合、注目検出ポイントの座標の補正を行い、補正後の座標の検出ポイントPをタッチ位置とした。一方、本実施形態に係るタッチ位置検出部11Bは、左側広がりと右側広がりとに差分閾値を上回る差がある場合、以下の処理を実行する。
【0093】
すなわちタッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントについての湾曲方向分布を分析し、注目検出ポイントを中心として、分布の広がりが大きい側(向き)が湾曲方向右側であるか湾曲方向左側であるかを特定する。次いでタッチ位置検出部11Bは、第1実施形態と同様の方法で注目検出ポイント近辺の曲率を特定する。次いでタッチ位置検出部11Bは、曲率に応じた係数K(ただし0<K<1)を特定する。本実施形態では曲率がこの範囲に属していれば、係数Kはこの値というように、曲率の範囲毎に係数Kが予め定められている。
【0094】
次いでタッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントに対して分布の広がりが大きい側に位置する検出ポイントPの対応値、および、注目検出ポイントについての対応値のそれぞれに、係数Kを乗じる補正(各対応値を一定の割合で低下させる補正)を施す。
【0095】
図12(A)は、
図6(B)と同じ湾曲方向分布を示す図である。従って
図12(A)では注目検出ポイントは、検出ポイントP9である。湾曲方向分布が
図12(A)の分布であり、特定した係数Kが「0.8」であるとするとタッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントに対して分布の広がりが大きい側である湾曲方向左側に位置する検出ポイントP8、P7、P6、P5、P4、P3の対応値、および、注目検出ポイントである検出ポイントP9の対応値のそれぞれについて「0.8」を乗じる補正をする。この結果、補正後の湾曲方向分布は、
図12(B)のようになる。
【0096】
一方、湾曲方向分布が
図13(A)の分布であったとする。
図13(A)では、注目検出ポイントは検出ポイントP9である。そして特定した係数Kが「0.8」であるとすると、補正後の湾曲方向分布は、
図13(B)のようになる。
【0097】
次いでタッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントの各対応値うち、補正後の全ての対応値よりも値が大きなものが存在するか否かを判別する。存在する場合、タッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントPのうち最も対応値の大きい検出ポイントPをタッチ位置として検出する。一方、存在しない場合、タッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する。
【0098】
例えば
図12(B)の例では、注目検出ポイント(検出ポイントP9)に対して分布の広がりが小さい側である湾曲方向右側に位置する検出ポイントP10、P11の各対応値うち、検出ポイントP10の対応値は、補正後の全ての対応値よりも値が大きい。従って、この例の場合、タッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントPの各対応値うち、補正後の全ての対応値よりも値が大きなものが存在すると判定する。更にタッチ位置検出部11Bは、目標検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側(湾曲方向右側)に位置する検出ポイントP10、P11のうち最も対応値の大きい検出ポイントP10をタッチ位置として検出する。
【0099】
また
図13(B)の例では、注目検出ポイント(検出ポイントP9)に対して分布の広がりが小さい側(湾曲方向右側)には、補正後の全ての対応値よりも大きな対応値が検出された検出ポイントは存在しない(検出ポイントP10の対応値<補正後の検出ポイントP9の対応値、かつ、検出ポイントP11の対応値<補正後の検出ポイントP9の対応値)。この場合、タッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントである検出ポイントP9をタッチ位置として検出する。
【0100】
本実施形態の意義を説明する。注目検出ポイントについての左側広がりと右側広がりとに、傾きタッチが行われたとみなせるような偏りが生じている場合であっても、実際には傾きタッチが行われたわけではなく、何か別の原因で偏りが生じているケースがある。このような場合は、元々ユーザが意図していた目標検出ポイントがタッチされており、目標検出ポイントについての対応値が周囲の検出ポイントPについての対応値と比較して相当に大きくなる傾向がある。
【0101】
そして本実施形態によれば、注目検出ポイントについての対応値、および、分布の広がりが大きい側に位置する検出ポイントPの対応値のそれぞれについて各対応値を一定の割合で低下させる補正が施された上で、分布の広がりが小さい側に、補正後の全ての対応値よりも大きな検出値の対応値が検出された検出ポイントPが存在しない場合には、注目検出ポイントがそのままタッチ位置として検出される。このため注目検出ポイントについての対応値が相当に大きい場合(=注目検出ポイントが目標検出ポイントである可能性が高い場合)には、注目検出ポイントがそのままタッチ位置として検出される可能性が高く、右側広がりと左側広がりとに所定の態様で偏りが生じているものの実際には傾きタッチが行われていないときに、目標検出ポイントがタッチ位置として検出される可能性を向上することができる。
【0102】
一方で、注目検出ポイントについての対応値が相当に大きいわけではない場合には、注目検出ポイントに対して、分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントPがタッチ位置として検出されることになり、第2実施形態と同様、タッチ面4が湾曲していることに起因してユーザが意図した位置と異なる位置でタッチ判定閾値を超える対応値が検出された場合でも、ユーザが意図した位置に近い位置がタッチ位置として検出されるようにすることができる。
【0103】
次に本実施形態に係る制御装置5Bの動作例を
図14のフローチャートを用いて説明する。
図14のフローチャートについて、
図10のフローチャートと同一の処理については同一の符号を付し、その説明を省略する。ステップSB1において注目検出ポイントについての右側広がりと左側広がりとに差分閾値を上回る差があると判定した場合(ステップSB1:YES)、タッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントについての湾曲方向分布を分析し、注目検出ポイントを中心として、分布の広がりが大きい側(向き)が湾曲方向右側であるか湾曲方向左側であるかを特定する(ステップSC1)。
【0104】
次いでタッチ位置検出部11Bは、曲率に応じた係数Kを特定する(ステップSC2)。次いでタッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントに対して分布の広がりが大きい側に位置する検出ポイントPの対応値、および、注目検出ポイントについての対応値のそれぞれに、係数Kを乗じる補正(各対応値を一定の割合で低下させる補正)を施す(ステップSC3)。
【0105】
次いでタッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントの各対応値うち、補正後の全ての対応値よりも値が大きなものが存在するか否かを判別する(ステップSC4)。存在しない場合(ステップSC4:NO)、タッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントをタッチ位置として検出する(ステップSA8)。その後、タッチ位置検出部11は、その周期の処理を終了し、次の周期が到来するまで待機する。
【0106】
一方、存在する場合(ステップSC4:YES)、タッチ位置検出部11Bは、注目検出ポイントに対して分布の広がりが小さい側に位置する検出ポイントPのうち最も対応値の大きい検出ポイントPをタッチ位置として検出する(ステップSC5)。その後、処理手順はステップSA15へ移行する。
【0107】
<第3実施形態の変形例>
上述した第3実施形態について、以下の構成としてもよい。すなわち第1実施形態の変形例と同様、タッチ位置検出部11Bが、反応個数が広がり閾値を上回っているか否かを判別する処理を実行しない構成でもよい。ただし第3実施形態によれば、反応個数が広がり閾値を上回っていない場合、つまり、反応個数の大きさから傾きタッチではないと判定できるときに不必要な処理が行われないことになり処理効率がよい。また係数Kは、曲率に応じた値であったが、固定値であってもよい。
【0108】
また、タッチ位置として検出する検出ポイントPを、注目検出ポイントからずらす場合に、第1実施形態のように曲率に応じた移動量だけずらす構成としてもよく、また、第1実施形態の変形例のように固定値の移動量だけずらすか、曲率に代えて或いは曲率に加えて他の要素を踏まえて決定された移動量だけずらすようにしてもよい。
【0109】
以上、本発明の実施形態(変形例を含む)を説明したが、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0110】
タッチパネル3および制御装置5は、車両に搭載されるものであったが、車両に搭載されていなくてもよいことは当然である。
【0111】
また制御装置5の機能ブロックが実行するとした処理の一部または全部を、制御装置5と外部装置とが協働して、または、外部装置が単独で実行する構成としてもよい。この場合、制御装置5と外部装置とが協働して特許請求の範囲の「制御装置」として機能する。
【0112】
また第1実施形態において、テンプレートデータベース17は、制御装置5が備える記憶部13に記憶されていたが、テンプレートデータベース17が外部装置に記憶され、タッチ位置検出部11が外部装置にアクセスしてテンプレートデータベース17を参照する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0113】
3 タッチパネル
4 タッチ面
5、5A、5B 制御装置
10 対応値検出部
11、11A、11B タッチ位置検出部