(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012120
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】遮光フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20220107BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20220107BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20220107BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220107BHJP
【FI】
G02B5/00 A
G02B5/02 B
G02B1/111
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113703
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】399020212
【氏名又は名称】東山フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花輪 洋樹
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H042AA03
2H042AA15
2H042AA22
2H042BA03
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2H042BA15
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4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】遮光性、艶消し性および黒色度を満足する遮光フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成された遮光層14と、遮光層14の面上に形成された低屈折率層16と、を有し、遮光層14が、黒色顔料、凹凸形成用粒子、およびバインダーを含有し、低屈折率層16の550nmにおける屈折率が、1.20以上1.45以下である、遮光フィルム10とする。遮光フィルム10の光学濃度は4以上であるとよい。また、遮光フィルム10の20°光沢度は0.4%以下で、60°光沢度は5%以下、85°光沢度は13%以下であるとよい。また、遮光フィルム10の明度は25以下であるとよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成された遮光層と、前記遮光層の面上に形成された低屈折率層と、を有し、
前記遮光層が、黒色顔料、凹凸形成用粒子、およびバインダーを含有し、
前記低屈折率層の550nmにおける屈折率が、1.20以上1.45以下である、遮光フィルム。
【請求項2】
前記遮光層は、前記基材フィルムの両方の面上に形成されており、前記低屈折率層は、いずれか一方の前記遮光層の面上に形成されている、請求項1に記載の遮光フィルム。
【請求項3】
前記遮光層は、前記基材フィルムの両方の面上に形成されており、前記低屈折率層は、両方の前記遮光層の面上にそれぞれ形成されている、請求項1に記載の遮光フィルム。
【請求項4】
光学濃度が4以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
【請求項5】
20°光沢度が0.4%以下であり、60°光沢度が5%以下であり、85°光沢度が13%以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
【請求項6】
明度が、25以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光フィルムに関し、さらに詳しくは、一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタ等の光学機器のシャッターや絞り部材として好適に用いられる遮光フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタ等の光学機器のシャッターや絞り部材として、遮光フィルムが用いられている。遮光フィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの面上に形成された遮光層と、を有する構成をしている(特許文献1)。遮光層は、黒色顔料および微粒子を含有し、光学機器内に侵入した外光を遮光する遮光性と、入射光を散乱させて写り込みを防止する艶消し性と、を充足するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の遮光フィルムは、遮光性と艶消し性を両立することで、遮光層に含まれる微粒子の影響を受けて、黒色度が十分ではないという課題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、遮光性、艶消し性および黒色度を満足する遮光フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係る遮光フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成された遮光層と、前記遮光層の面上に形成された低屈折率層と、を有し、前記遮光層が、黒色顔料、凹凸形成用粒子、およびバインダーを含有し、前記低屈折率層の550nmにおける屈折率が、1.20以上1.45以下である。
【0007】
前記遮光層は、前記基材フィルムの両方の面上に形成されており、前記低屈折率層は、いずれか一方の前記遮光層の面上に形成されているとよい。また、前記遮光層は、前記基材フィルムの両方の面上に形成されており、前記低屈折率層は、両方の前記遮光層の面上にそれぞれ形成されていてもよい。
【0008】
本発明に係る遮光フィルムは、光学濃度が4以上であるとよい。また、20°光沢度が0.4%以下であり、60°光沢度が5%以下であり、85°光沢度が13%以下であるとよい。また、明度が25以下であるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る遮光フィルムによれば、黒色顔料、凹凸形成用粒子、およびバインダーを含有する遮光層の面上に、550nmにおける屈折率が1.20以上1.45以下である低屈折率層を有することから、遮光性、艶消し性および黒色度を満足する。
【0010】
そして、基材フィルムの両方の面上に遮光層が形成され、いずれか一方の遮光層の面上に低屈折率層が形成されていると、光学機器外部からの入射光の他、入射して光学機器内部で反射した光に対しても艶消し性を有するため、写り込みを抑える効果が向上する。また、基材フィルムの両方の面上に遮光層が形成され、両方の遮光層の面上にそれぞれ低屈折率層が形成されていると、光学機器外部からの入射光の他、入射して光学機器内部で反射した光に対しても艶消し性を有するため、写り込みを抑える効果が向上する。
【0011】
そして、光学濃度が4以上であると、優れた遮光性を発揮できる。また、20°光沢度が0.4%以下であり、60°光沢度が5%以下であり、85°光沢度が13%以下であると、優れた艶消し性を発揮できる。また、明度が25以下であると、優れた黒色度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る遮光フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る遮光フィルムの断面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係る遮光フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第一実施形態に係る遮光フィルムの断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る遮光フィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成された遮光層14と、遮光層14の面上に形成された低屈折率層16と、を有する。遮光層14は、基材フィルム12の一方の面上に形成されており、基材フィルム12の他方の面上には形成されていない。遮光フィルム10は、基材フィルム12側から順に、基材フィルム12、遮光層14、低屈折率層16を有する積層体で構成される。
【0015】
(基材フィルム)
基材フィルム12は、遮光層14および低屈折率層16を形成可能な強度を有するものであれば特に限定されるものではない。基材フィルム12としては、高分子フィルム、ガラスフィルム、金属箔などが挙げられる。基材フィルム12の高分子材料としては、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリシクロオレフィン,シクロオレフィンコポリマーなどのポリオレフィン、トリアセチルセルロース,ジアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。基材フィルム12の高分子材料は、これらのうちの1種のみで構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせで構成されていてもよい。これらの中では、加工性や機械的強度などの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。基材フィルム12は、単層で構成されていてもよいし、2層以上の層で構成されていてもよい。
【0016】
基材フィルム12の厚みは、特に限定されるものではないが、取り扱い性やカメラモジュールの薄型化などの観点から、2~200μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは6~50μmの範囲内、さらに好ましくは8~30μmの範囲内である。なお、「フィルム」とは、一般に厚さが0.25mm未満のものをいうが、ロール状に巻くことが可能であれば、厚さが0.25mm以上のものであっても「フィルム」に含まれるものとする。
【0017】
(遮光層)
遮光層14は、黒色顔料、凹凸形成用粒子18、およびバインダーを含有する。遮光層14は、黒色顔料を含有することで、光学機器内に侵入する外光を遮光する遮光性を満足することができる。また、遮光層14は、凹凸形成用粒子18を含有することで、表面に微細な凹凸が形成され、入射光が散乱されて写り込みが防止される艶消し性を満足することができる。
【0018】
黒色顔料は、遮光層14を黒色に着色し、遮光フィルム10に遮光性を付与するなどの目的で添加される。黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック、酸化鉄などが挙げられる。これらのうちでは、遮光性に加えて帯電防止性を付与できるなどの観点から、カーボンブラックが好ましい。
【0019】
黒色顔料は、遮光性が向上するなどの観点から、平均粒子径の小さいものがより好ましい。具体的には、平均粒子径1.0μm以下のものが好ましい。また、平均粒子径500nm以下のものが好ましい。
【0020】
黒色顔料の含有量は、遮光性が向上するなどの観点から、遮光層14全量基準で、5.0質量%以上であることが好ましい。より好ましくは10質量%以上である。また、黒色顔料の含有量は、遮光層14の強度を維持できるなどの観点から、遮光層14全量基準で、25質量%以下であることが好ましい。より好ましくは22質量%以下である。
【0021】
凹凸形成用粒子18は、遮光層14の表面に微細な凹凸を形成し、表面の入射光を散乱させて写り込みを防止する艶消し性を付与するなどの目的で遮光層14に添加する。凹凸形成用粒子18は、中実粒子であってもよいし、中空粒子であってもよい。中実粒子とは、粒子の内部に実質的に空洞を有していない粒子であり、空洞の割合が中実粒子の体積の5%未満である粒子をいう。中空粒子は、粒子の内部に空洞を有している粒子であり、空洞の割合が中空粒子の体積の5%以上である粒子をいう。
【0022】
凹凸形成用粒子18は、無機粒子であってもよいし、有機粒子であってもよい。無機粒子としては、チタン、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、カルシウムなどの金属の酸化物からなる金属酸化物粒子が挙げられる。これらは、無機粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。また、樹脂粒子としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、セルロースなどの樹脂からなる樹脂粒子が挙げられる。これらは、樹脂粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらのうちでは、無機粒子が好ましく、耐熱性などの観点から、シリカ粒子が特に好ましい。また、下記環状カルボジイミド化合物等の固体である硬化剤は、凹凸形成用粒子18としても機能することができる。
【0023】
凹凸形成用粒子18の形状は、特に限定されるものではなく、球状、針状、鱗片状、棒状、繊維状、不定形などであってもよい。これらのうちでは、艶消し性の観点から不定形であることが好ましい。
【0024】
凹凸形成用粒子18は、遮光層14の表面に微細な凹凸を形成しやすいなどの観点から、その平均粒子径は、遮光層14の平均膜厚の0.4倍以上であることが好ましい。より好ましくは0.6倍以上である。一方、形成される凸部の高さを抑えて、凹凸形成用粒子18の遮光層14からの脱落を抑えるなどの観点から、その平均粒子径は、遮光層14の平均膜厚の1.2倍以下であることが好ましい。より好ましくは1.1倍以下である。そして、凹凸形成用粒子18の平均粒子径は、遮光層14の平均膜厚によるが、0.5~20μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.0~10μmの範囲内、さらに好ましくは2.0~8.0μmの範囲内である。平均粒子径は、JIS Z8825に従うレーザー回折・散乱法により得られる体積基準の平均算術値である。
【0025】
凹凸形成用粒子18の含有量は、遮光層14の表面に微細な凹凸を形成し、表面の光沢度を低下させやすいなどの観点から、遮光層14全量基準で、3.0質量%以上であることが好ましい。より好ましくは5.0質量%以上、さらに好ましくは5.5質量%以上である。また、凹凸形成用粒子18の含有量は、相対的に黒色顔料の含有量やバインダーの含有量を確保して、遮光性を確保できる、基材フィルム12との密着性を確保できるなどの観点から、遮光層14全量基準で、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0026】
バインダーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂,ポリエステル樹脂,ポリ酢酸ビニル樹脂,ポリ塩化ビニル,ポリビニルブチラール樹脂,セルロース系樹脂,ポリスチレン/ポリブタジエン樹脂,ポリウレタン樹脂,アルキド樹脂,(メタ)アクリル樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,エポキシエステル樹脂,エポキシ樹脂,(メタ)アクリルポリオール樹脂,ポリエステルポリオール樹脂,ポリイソシアネート,エポキシ(メタ)アクリレート系樹脂,ウレタン(メタ)アクリレート樹脂,ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂,ポリエーテル(メタ)アクリレート系樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,尿素樹脂,ジアリルフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または紫外線硬化性樹脂が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物が用いられる。耐熱性などの観点から、熱硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0027】
熱硬化性樹脂の硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、アジリジン系硬化剤、金属キレート型硬化剤、メラミン樹脂系硬化剤、尿素樹脂系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。これらのうちでは、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、アジリジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤が好ましく、架橋反応の進行の程度を制御しやすいこと、および、耐屈曲性の観点から、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、またはカルボジイミド系硬化剤がより好ましい。
【0028】
硬化剤の含有量は、遮光層14のカールや割れを抑制するなどの観点から、熱硬化性樹脂100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましい。より好ましくは10~40質量部である。
【0029】
イソシアネート系硬化剤は、反応性基としてイソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物である。イソシアネート系硬化剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
イソシアネート系硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる。より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等のイソシアネート付加物;キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物;ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物;ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート;等から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネートを用いることが好ましく、脂肪族イソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)がより好ましい。
【0031】
エポキシ系硬化剤は、反応性基としてエポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。エポキシ系硬化剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0033】
カルボジイミド系硬化剤は、反応性基としてカルボジイミド基(-N=C=N-)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。前記カルボジイミド系硬化剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
カルボジイミド系硬化剤としては、例えば、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、ウレア変性カルボジイミド、環状カルボジイミド化合物等が挙げられる。これらのうちでは、耐熱性や対加水分解性の観点から、環状カルボジイミド化合物が特に好ましい。
【0035】
環状カルボジイミド化合物とは、環骨格にカルボジイミド基を1つ含み、その第一窒素と第二窒素が結合基により結合されている環状構造を1分子内に少なくとも1つ有する化合物をいい、例えば、国際公開第2010/071211号、特許公開2011-256139号、特許公開2012-1484号等に記載の化合物が挙げられる。
【0036】
環状カルボジイミド化合物は、硬化樹脂の耐熱性を向上させる観点から、1分子内に2つ以上カルボジイミド基を含む多価環状カルボジイミド化合物であることが好ましい。
【0037】
遮光層14は、必要に応じて、種々の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、防汚剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる。
【0038】
遮光層14の膜厚は、高い光学濃度、軽量化及び薄膜化の観点から、1.0~20μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは2.0~15μmの範囲内である。さらに好ましくは3.0~10μmの範囲内である。
【0039】
(低屈折率層)
低屈折率層16は、遮光層14の面上に形成され、凹凸形成用粒子18を含む遮光層14の黒色度の低下を抑えるものとして寄与する。すなわち、凹凸形成用粒子18を含む遮光層14の面上に低屈折率層16が形成されることで、低屈折率層16から見た遮光層14の黒色度が高くなる。これにより、凹凸形成用粒子18を含む遮光層14を有する遮光フィルム10において、黒色度を満足することができる。
【0040】
低屈折率層16の550nmにおける屈折率は、黒色度の向上の観点から、1.45以下である。より好ましくは1.42以下、さらに好ましくは1.38以下である。なお、上記屈折率の下限値は、特に限定されるものではなく、低いほど好ましいが、材料構成から、1.2以上あるいは1.3以上である。上記屈折率は、顕微分光膜厚計OPTM(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
【0041】
低屈折率層16の膜厚は、黒色度の向上などの観点から、好ましくは40~160nmの範囲内、より好ましくは70~140nmの範囲内、さらに好ましくは80~120nmの範囲内である。
【0042】
低屈折率層16は、中空シリカ粒子およびバインダーを含有することが好ましい。中空シリカ粒子は、中空構造であることで、低屈折率層16の屈折率を所望の屈折率まで低くしやすい。
【0043】
中空シリカ粒子は、粒子の内部に空洞を有している粒子であり、空洞の割合が体積の5%以上である粒子をいう。中空とは、外殻とその内部の空洞からなるコアシェル構造のものや、多数の空洞を有する多孔質構造のものなどをいう。中空シリカ粒子の550nmにおける屈折率は通常、1.20~1.40である。中空シリカ粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状、紡錘状、卵状、平板状、立方体状、不定形などが好ましい。これらのうちでは、球状、平板状、立方体状などが特に好ましい。
【0044】
中空シリカ粒子において、空洞の割合は、体積の10~80%であることが好ましい。より好ましくは体積の20~60%、さらに好ましくは体積の30~60%である。空洞の割合が体積の10%以上であると、屈折率を低くしやすい。空洞の割合が体積の80%以下であると、中空シリカ粒子の分散性の低下を抑えることができる。
【0045】
中空シリカ粒子の平均粒子径は、低屈折率層16の平均膜厚にもよるが、5nm以上100nm以下であることが好ましい。より好ましくは20nm以上80nm以下、さらに好ましくは40nm以上70nm以下である。中空シリカ粒子の平均粒子径がこれら好ましい範囲内であると、低屈折率層16の屈折率を所望の屈折率まで低くする効果と透明性を得ることができる。平均粒子径は、JIS Z8825に従うレーザー回折・散乱法により得られる体積基準の平均算術値である。一次粒子径だけではなく、粒子の凝集体である二次粒子径も含む。
【0046】
低屈折率層16における中空シリカ粒子の含有量は、低屈折率層16全量基準で、6.0質量%以上49.9質量%以下であることが好ましい。上記中空シリカ粒子の含有量が6.0質量%であると、低屈折率層16を低屈折率にする効果に優れる。また、この観点から、上記中空シリカ粒子の含有量は、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。そして、上記中空シリカ粒子22の含有量が49.9質量%以下であると、耐擦傷性の低下が抑えられる。また、この観点から上記中空シリカ粒子の含有量は、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0047】
バインダーとしては、低屈折率層16の耐擦傷性などの観点から、熱硬化性化合物の硬化物や紫外線硬化性化合物の硬化物などが好ましい。また、生産性などの観点から、紫外線硬化性化合物の硬化物がより好ましい。
【0048】
紫外線硬化性樹脂としては、紫外線反応性の反応性基を有するモノマー,オリゴマー,プレポリマーなどが挙げられる。紫外線反応性の反応性基としては、アクリロイル基,メタクリロイル基,アリル基,ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合型の反応性基やオキセタニル基などのカチオン重合型の反応性基などが挙げられる。これらのうちでは、アクリロイル基,メタクリロイル基,オキセタニル基がより好ましく、アクリロイル基,メタクリロイル基が特に好ましい。すなわち、(メタ)アクリレートが特に好ましい。紫外線硬化性樹脂は、(メタ)アクリレートの1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
【0049】
(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートのみで構成されていてもよいし、多官能(メタ)アクリレートで構成されていてもよいし、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの組み合わせで構成されていてもよい。(メタ)アクリレートとしては、多官能(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0050】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0051】
多官能(メタ)アクリレートとしては、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、四官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。より具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0052】
低屈折率層14を形成する硬化性組成物には、紫外線硬化性樹脂に加え、非紫外線硬化性樹脂が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、低屈折率層14を形成する硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれていてもよい。また、必要に応じ、硬化性組成物に添加する添加剤などが含まれていてもよい。このような添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、防汚剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤などが挙げられる。また、必要に応じ、溶剤が含まれていてもよい。
【0053】
非紫外線硬化性樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0054】
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系などの光重合開始剤が挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジルメチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチルー6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾールー3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられる。光重合開始剤は、これらの1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
【0055】
光重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の固形分全量基準で、0.1~10質量%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは1~5質量%の範囲である。
【0056】
遮光フィルム10は、次のようにして製造することができる。まず、基材フィルム12の面上に遮光層14を形成し、次いで、遮光層14の面上に低屈折率層16を形成する。
【0057】
(遮光層の形成)
遮光層14は、基材フィルム12の面上に遮光層14を形成する組成物を塗工し、必要に応じて乾燥、硬化することにより形成することができる。基材フィルム12の表面には、基材フィルム12と遮光層14の密着性を向上させるために、遮光層14を形成する組成物の塗工前に表面処理が施されてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
【0058】
遮光層14を形成する組成物の塗工には、リバースグラビアコート法,ダイレクトグラビアコート法,ダイコート法,バーコート法,ワイヤーバーコート法,ロールコート法,スピンコート法,ディップコート法,スプレーコート法,ナイフコート法,キスコート法などの各種コーティング法や、インクジェット法、オフセット印刷,スクリーン印刷,フレキソ印刷などの各種印刷法を用いて行うことができる。
【0059】
乾燥、および硬化工程は、塗工液に用いた溶剤等を除去し、遮光層14を硬化させることができれば特に限定されるものではないが、60~140℃の温度で30秒~240秒程度行うことが好ましい。特に、硬化温度は、70~120℃が好ましい。
【0060】
紫外線照射には、高圧水銀ランプ、無電極(マイクロ波方式)ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、その他任意の紫外線照射装置を用いることができる。紫外線照射は、必要に応じて、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。紫外線照射量は、特に限定されるものではないが、50~800mJ/cm2が好ましく、100~300mJ/cm2がより好ましい。
【0061】
(低屈折率層の形成)
低屈折率層16は、遮光層14の面上に低屈折率層16を形成する組成物を塗工し、必要に応じて乾燥、硬化することにより形成することができる。遮光層14の表面には、低屈折率層16を形成する組成物の塗工前に表面処理が施されてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
【0062】
低屈折率層16を形成する組成物の塗工は、ドライコーティング法、ウェットコーティング法等を用いることができる。ウェットコーティング法としては、リバースグラビアコート法,ダイレクトグラビアコート法,ダイコート法,バーコート法,ワイヤーバーコート法,ロールコート法,スピンコート法,ディップコート法,スプレーコート法,ナイフコート法,キスコート法などの各種コーティング法や、インクジェット法、オフセット印刷,スクリーン印刷,フレキソ印刷などの各種印刷法が挙げられる。
【0063】
乾燥工程は、塗工液に用いた溶剤等を除去できれば特に限定されるものではないが、50~150℃の温度で10秒~180秒程度行うことが好ましい。特に、乾燥温度は、50~120℃が好ましい。
【0064】
紫外線照射には、高圧水銀ランプ、無電極(マイクロ波方式)ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、その他任意の紫外線照射装置を用いることができる。紫外線照射は、必要に応じて、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。紫外線照射量は、特に限定されるものではないが、50~800mJ/cm2が好ましく、100~300mJ/cm2がより好ましい。
【0065】
低屈折率層16の形成用組成物において用いられる溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGM)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、N-メチルピロリドン、アセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、溶剤として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0066】
遮光フィルム10の遮光性を表す光学濃度は、4以上であることが好ましい。より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上である。遮光フィルム10の光学濃度がこの範囲にあることで、優れた遮光性が発揮できる。本発明の構成によれば、遮光フィルム10の光学濃度は、4以上とすることができる。また、6以上とすることができる。
【0067】
遮光フィルム10の光沢度は、低いほど好ましい。具体的には、20度光沢度は、好ましくは0.4%以下、より好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。また、60度光沢度は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下である。また、85度光沢度は、好ましくは13%以下、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下である。20度、60度、および85度の光沢度がこの範囲であると、遮光フィルム10に対して鉛直方向にほど近い角度(例えば20度)から、平面方向に近い角度で入射してきた光に対してまで、入射光に対する反射光を抑制することができる。これにより、優れた艶消し性を発揮できる。本発明の構成によれば、遮光フィルム10の20度光沢度は、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下とすることができる。また、遮光フィルム10の60度光沢度は、5%以下、3%以下、2%以下とすることができる。また、遮光フィルム10の85度光沢度は、13%以下、12%以下、10%以下とすることができる。
【0068】
遮光フィルム10の明度L*値は、低いほど好ましい。具体的には、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは18以下である。ここで、L*値は色彩のCIE表色系で表される明度(白黒度)を表し、可視光域での分光反射率から求められ、L*値が小さいほど黒色度が高いことを意味する。本発明の構成によれば、遮光フィルム10の明度L*値は、30以下、25以下、20以下、18以下とすることができる。
【0069】
低屈折率層16の表面における算術平均表面粗さ(Ra)は、0.2~2.2μmであることが好ましい。より好ましくは0.3~2.1μm、さらに好ましくは0.4~2.0μmである。Raが0.2μm以上であると、良好な低反射性、低表面光沢性を得ることができる。Raが2.2μm以下であると、基材フィルム12の厚みが薄い場合であっても遮光フィルム10のシワや断裂などを抑制することができる。
【0070】
遮光フィルム10の積分球で正反射光を受光する(SCI:Specular Component Include)方式における視感度反射率は、低いほど好ましく、5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2.5%以下である。
【0071】
以上の構成の遮光フィルム10によれば、黒色顔料、凹凸形成用粒子18、およびバインダーを含有する遮光層14の面上に、550nmにおける屈折率が1.20以上1.45以下である低屈折率層16を有することから、遮光性、艶消し性および黒色度を満足する。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0073】
図2には、本発明の第二実施形態に係る遮光フィルム20を示している。第二実施形態に係る遮光フィルム20は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成された遮光層14と、遮光層14の面上に形成された低屈折率層16と、を有する。遮光層14は、基材フィルム12の両方の面上に形成されており、低屈折率層16は、いずれか一方の遮光層14の面上に形成されている。低屈折率層16は、他方の遮光層14の面上には形成されていない。
【0074】
第二実施形態に係る遮光フィルム20は、第一実施形態に係る遮光フィルム10と比較して、基材フィルム12の両方の面上に遮光層14を有する点が相違し、これ以外については第一実施形態に係る遮光フィルム10と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0075】
第二実施形態に係る遮光フィルム20は、基材フィルム12の両方の面上に遮光層14を有することから、光学機器外部からの入射光の他、入射して光学機器内部で反射した光に対しても艶消し性を有するため、写り込みを抑える効果が向上する。
【0076】
図3には、本発明の第三実施形態に係る遮光フィルム30を示している。第三実施形態に係る遮光フィルム30は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成された遮光層14と、遮光層14の面上に形成された低屈折率層16と、を有する。遮光層14は、基材フィルム12の両方の面上に形成されており、低屈折率層16は、両方の遮光層14の面上にそれぞれ形成されている。
【0077】
第三実施形態に係る遮光フィルム30は、第二実施形態に係る遮光フィルム20と比較して、両方の遮光層14の面上にそれぞれ低屈折率層16が形成されている点が相違し、これ以外については第二実施形態に係る遮光フィルム20と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0078】
第三実施形態に係る遮光フィルム30は、基材フィルム12の両方の面上に遮光層14および低屈折率層16を有することから、光学機器外部からの入射光の他、入射して光学機器内部で反射した光に対しても優れた艶消し性を有するため、写り込みを抑える効果が向上する。
【実施例0079】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0080】
(遮光層形成用組成物<1>の調製)
黒色顔料およびバインダーを含むバインダー組成物<1>と、バインダー硬化剤<1>と、凹凸形成用粒子<1>と、を配合し、固形分濃度20質量%となるように溶剤を加え、遮光層形成用組成物<1>を調製した。
【0081】
・バインダー組成物<1>:東洋インキ製「試作マット墨A」
ポリウレタン(バインダー)
カーボンブラック(黒色顔料)
シリカ粒子(平均粒子径3μm)
溶剤(固形分濃度28.6質量%)
・バインダー硬化剤<1>:東洋インキ製「VMハードナーXB」
イソシアネート化合物
溶剤(固形分濃度75質量%)
・凹凸形成用粒子<1>:積水化成品工業製「SSX-103」
架橋ポリメタクリル酸メチル(平均粒子径3μm)
【0082】
(遮光層形成用組成物<2>の調製)
黒色顔料およびバインダーを含むバインダー組成物<2>と、バインダー硬化剤<1>と、凹凸形成用粒子<2>と、を配合し、固形分濃度20質量%となるように溶剤を加え、遮光層形成用組成物<2>を調製した。
【0083】
・バインダー組成物<2>:東洋インキ製「試作マット墨B」
ポリウレタン(バインダー)
カーボンブラック(黒色顔料)
シリカ粒子(平均粒子径3μm)
溶剤(固形分濃度28.0質量%)
・バインダー硬化剤<1>:東洋インキ製「VMハードナーXB」
イソシアネート化合物
溶剤(固形分濃度75質量%)
・凹凸形成用粒子<2>:帝人製「TCC-FP10M」
環状カルボジイミド化合物(平均粒子径2μm)
【0084】
(低屈折率層形成用組成物<1>の調製)
紫外線硬化性組成物<1>と、光重合開始剤<1>と、中空シリカ粒子<1>と、含フッ素化合物<1>と、アルミナ粒子含有組成物<1>と、を配合し、表1に記載の固形分濃度となるように溶剤を加え、低屈折率層形成用組成物<1>を調製した。
【0085】
・紫外線硬化性組成物<1>:東亞合成製「アロニックスMT-3041」
・光重合開始剤<1>:IGM Resins B.V.製「Omnirad127」
・中空シリカ粒子<1>:日揮触媒化成工業製「スルーリア4320」(平均粒子径60nm)
・含フッ素化合物<1>:信越化学工業製「KY-1203」(パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート)
・アルミナ粒子含有組成物<1>:ビックケミー製「NANOBYK-3601」
【0086】
(低屈折率層形成用組成物<2>の調製)
紫外線硬化性組成物<2>に対し、表1に記載の固形分濃度となるように溶剤を加え、低屈折率層形成用組成物<2>を調製した。
【0087】
・紫外線硬化性組成物<2>:日揮触媒化成製「ELCOM P-5062」
(メタ)アクリレート1.5質量%
中空シリカ粒子1.5質量%
光重合開始剤
溶剤(固形分濃度3質量%)
【0088】
(低屈折率層形成用組成物<3>の調製)
紫外線硬化性組成物<3>に対し、表1に記載の固形分濃度となるように溶剤を加え、低屈折率層形成用組成物<3>を調製した。
【0089】
・紫外線硬化性組成物<3>:荒川化学工業製「オプスター TU2361」
フッ素系ポリマー0.7質量%
中空シリカ粒子4.6質量%
光重合開始剤0.3質量%
(メタ)アクリレート1.5質量%
溶剤(固形分濃度10質量%)
【0090】
(遮光フィルムの作製)
基材フィルム<1>としてのポリエステルフィルム(東レ製「25-X30」、厚み25μm)に#14のワイヤーバーを用いて表1に記載の厚みとなるように遮光層形成用組成物<1>を塗布し、100℃×60秒で乾燥、硬化させて、基材フィルムの一方面上に遮光層を形成した。次いで、遮光層の面上に、低屈折率層形樹脂組成物<1>を、ワイヤーバーを用いて表1に記載の厚みとなるように塗布し、60℃×60秒で乾燥後、窒素雰囲気下、無電極(マイクロ波方式)ランプを用いて光量185mJ/cm2の紫外線を照射して、遮光層の面上に低屈折率層を形成した。以上により、実施例1~3の遮光フィルムを作製した。
【0091】
低屈折率層形樹脂組成物を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4~5の遮光フィルムを作製した。
【0092】
基材フィルムを基材フィルム<2>としてのポリエステルフィルム(東レ製「U403」、厚み125μm)に変更し、遮光層形成用組成物を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例6~8の遮光フィルムを作製した。
【0093】
基材フィルムを基材フィルム<2>としてのポリエステルフィルム(東レ製「U403」、厚み125μm)に変更し、遮光層形樹脂組成物および低屈折率層形成用組成物を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例9~10の遮光フィルムを作製した。
【0094】
低屈折率層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の遮光フィルムを作製した。
【0095】
(膜厚)
遮光フィルムをミクロトームを用いて厚み方向に潰すことなく切断し、切片サンプルを得た。切片サンプルの断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「S-4800」、倍率2000倍)を用いて、撮像から各層の膜厚を求めた。各層の膜厚は任意の10点の平均値とした。
【0096】
(算術平均粗さRa)
OLYMPUS製「3D測定レーザー顕微鏡、LEXT OLS5000」を用い、低屈折率層の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0097】
(視感度反射率(SCI))
紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製「UV-3600」)にUV-3600専用積分球付属装置(島津製作所製「ISR-3100A」)を取り付け、低屈折率層の表面の8°反射率を測定し、この測定値に比視感度値を乗じて視感度反射率を算出した。
【0098】
(光沢度)
コニカミノルタ製「Rhopoint IQ 20/60/85°」を用い、低屈折率層の表面の光沢度を測定した。
【0099】
(明度L*)
紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製「UV-3600」)にUV-3600専用積分球付属装置(島津製作所製「ISR-3100A」)を取り付け、低屈折率層の表面の8°反射率を測定し、得られた反射スペクトルから明度L*を算出した。
【0100】
(光学濃度)
光学濃度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製「361T」)を用いて、JIS K7651:1988に基づいて光学濃度を測定した。また、上記光学濃度計で表すことのできない、光学濃度が6を超えるものについては、暗室環境下でスマートホン(Apple社製)のLEDライト上に遮光フィルムを置いてライトを点灯し、光が透けて見えるものを光学濃度6、透けて見えないものを6+とした。
【0101】
【0102】
比較例1は、遮光層の面上に低屈折率層を有していない。このため、黒色度を表す明度L*の値が大きく、黒色度に劣ることがわかる。また、85°光沢度が高く斜め方向から見たときの艶消し性にも劣ることがわかる。これに対し、実施例1~10は、遮光層の面上に低屈折率層を有している。このため、黒色度を表す明度L*の値が小さく、黒色度に優れる。そして、実施例1~10は、遮光層が、黒色顔料、凹凸形成用粒子、およびバインダーを含有し、低屈折率層の550nmにおける屈折率が、1.20以上1.45以下である。このため、遮光性および艶消し性も満足する。