IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特開-車両用灯具 図1
  • 特開-車両用灯具 図2
  • 特開-車両用灯具 図3
  • 特開-車両用灯具 図4
  • 特開-車両用灯具 図5
  • 特開-車両用灯具 図6
  • 特開-車両用灯具 図7
  • 特開-車両用灯具 図8
  • 特開-車両用灯具 図9
  • 特開-車両用灯具 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121205
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/10 20180101AFI20220812BHJP
   F21S 41/155 20180101ALI20220812BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20220812BHJP
   F21S 41/19 20180101ALI20220812BHJP
   F21S 41/29 20180101ALI20220812BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20220812BHJP
   F21Y 105/00 20160101ALN20220812BHJP
【FI】
F21S45/10
F21S41/155
F21S41/20
F21S41/19
F21S41/29
F21W102:00
F21Y105:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018425
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】志藤 雅也
(57)【要約】
【課題】静電気対策のなされた車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10は、アウターレンズ14と、アウターレンズ14に対して内側に配置された面状発光体20と、面状発光体20に電気的に接続された接続回路基板22と、面状発光体20と接続回路基板22の少なくとも一方のアウターレンズ14側の面に設けられたグランド電位部24と、を備える。グランド電位部24は、面状発光体20のアウターレンズ14側の面に設けられた透明電極層を含み、透明電極層は、接続回路基板22のグランド電極に接続されていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターレンズと、
前記アウターレンズに対して内側に配置された面状発光体と、
前記面状発光体に電気的に接続された接続回路基板と、
前記面状発光体と前記接続回路基板の少なくとも一方のアウターレンズ側の面に設けられたグランド電位部と、を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記グランド電位部は、前記面状発光体の前記アウターレンズ側の面に設けられた透明電極層を含み、前記透明電極層は、前記接続回路基板のグランド電極に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記透明電極層は、前記面状発光体の外周に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記接続回路基板は、前記アウターレンズ側から見て前記面状発光体の縁からはみ出しているはみ出し部と、前記はみ出し部においてアウターレンズ側の面に設けられたグランド電極とを有し、
前記グランド電位部は、前記グランド電極を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記車両用灯具は、前記アウターレンズに対して内側に配置された複数の面状発光体を備え、
前記グランド電位部は、前記複数の面状発光体のうち前記アウターレンズに最も近接して配置された面状発光体と当該面状発光体に接続された接続回路基板の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具、例えば、自動車などの車両に用いられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL(Electroluminescence)などの面状発光体を用いた車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/098822号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用灯具は、車両に取り付けられたとき車体から外部に露出されるアウターレンズなどの露出部を有する。こうした露出部が車両走行中に風や砂埃などを受けると、その表面に摩擦帯電が起こる。摩擦帯電による露出部への電荷の蓄積が進むと、この露出部と接地電位部(例えば車体)との電位差が拡大し、その結果車両用灯具の内部に誘起される静電場によって灯具内のリフレクタ、エクステンション等の導電部材に誘導帯電が引き起こされる。近接する要素間の電位差が限界を超えれば、それら要素間に静電気放電が起こる。発光素子へと放電したとすると、最悪の場合、発光素子は破壊されうる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、静電気対策のなされた車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、アウターレンズと、アウターレンズに対して内側に配置された面状発光体と、面状発光体に電気的に接続された接続回路基板と、面状発光体と接続回路基板の少なくとも一方のアウターレンズ側の面に設けられたグランド電位部と、を備える。
【0007】
この態様によると、たとえアウターレンズが帯電したとしても、面状発光体と接続回路基板の少なくとも一方のアウターレンズ側の面にグランド電位部が設けられているから、その静電気の放電はアウターレンズからグランド電位部に対して発生することが期待される。したがって、アウターレンズから面状発光体の発光素子へと放電が起こるリスクを低減することができ、発光素子を静電気破壊から保護することができる。
【0008】
グランド電位部は、面状発光体のアウターレンズ側の面に設けられた透明電極層を含み、透明電極層は、接続回路基板のグランド電極に接続されていてもよい。
【0009】
透明電極層は、面状発光体の外周に設けられていてもよい。
【0010】
接続回路基板は、アウターレンズ側から見て面状発光体の縁からはみ出しているはみ出し部と、はみ出し部においてアウターレンズ側の面に設けられたグランド電極とを有し、グランド電位部は、グランド電極を含んでもよい。
【0011】
車両用灯具は、アウターレンズに対して内側に配置された複数の面状発光体を備えてもよい。グランド電位部は、複数の面状発光体のうちアウターレンズに最も近接して配置された面状発光体と当該面状発光体に接続された接続回路基板の少なくとも一方に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、静電気対策のなされた車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る車両用灯具を示す概略断面図である。
図2】実施の形態に係る面状発光体を示す概略正面図である。
図3】実施の形態に係る面状発光体の他の一例を示す概略正面図である。
図4図4(a)および図4(b)は、実施の形態に係る車両用灯具の他の例を示す概略断面図である。
図5】実施の形態に係る面状発光体の回路構成の一例を示す模式図である。
図6】実施の形態に係る面状発光体と接続回路基板の接続の一例を示す模式図である。
図7】他の実施の形態に係る面状発光体を示す概略正面図である。
図8図7に示される面状発光体と接続回路基板の接続の一例を示す模式図である。
図9】実施の形態に係る面状発光体の他の一例を示す概略正面図である。
図10】更なる他の実施の形態に係る面状発光体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に用いられる「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具10を示す概略断面図である。図2は、実施の形態に係る面状発光体20を示す概略正面図である。
【0016】
車両用灯具10は、車両(例えば自動車)の前部の左右に配置される一対の前照灯ユニットを有する車両用前照灯装置である。一対の前照灯ユニットは実質的に同一の構成であるため、図1には車両用灯具10として左右いずれか一方側に配置される前照灯ユニットの構造を示す。
【0017】
車両用灯具10は、前方に開口された凹部を有するランプボディ12と、ランプボディ12の開口を閉塞するアウターレンズ14とを備える。アウターレンズ14は、光透過性をもつカバーであり、アウターカバーなどとも称される。ランプボディ12とアウターレンズ14が互いに結合されて両者間に車両用灯具10の構成要素を収納するための灯室16が形成される。
【0018】
また、車両用灯具10は、アウターレンズ14に対して内側(つまり灯室16内)に配置された面状発光体20と、面状発光体20に電気的に接続された接続回路基板22とを備える。
【0019】
この実施の形態では、面状発光体20は、アウターレンズ14上に配置されている。面状発光体20は、例えば、アウターレンズ14の内面に接着されることにより、アウターレンズ14に固定されてもよい。面状発光体20は、フィルム状に形成され、可撓性を有してもよく、それにより、アウターレンズ14の内面の形状に追従してもよい。面状発光体20は、一例として、図2に示されるように、その長手方向に細長く延びている。面状発光体20の長手方向は、図2において左右方向であり、これは車幅方向に相当する。
【0020】
面状発光体20への給電のために、面状発光体20は、接続回路基板22を介して電源(図1では図示を省略)に接続可能である。接続回路基板22は、面状発光体20の外縁部に接続される。接続回路基板22は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)であってもよい。接続回路基板22は、例えば、面状発光体20の長手方向端部で面状発光体20に接続され、そこからランプボディ12側に延びていてもよい。エクステンションなどの目隠し部材が灯室16内に設けられ、それによって接続回路基板22が正面から見えないように隠されてもよい。
【0021】
車両用灯具10は、面状発光体20のアウターレンズ14側の面に設けられたグランド電位部24を備える。グランド電位部24は、アウターレンズ14と面状発光体20の間に挟み込まれている。
【0022】
この実施の形態では、グランド電位部24は、透明電極層であり、例えばITO等の透明導電材料で形成される。あるいは、透明電極層は、例えば銅などの不透明な導電材料で形成されたメッシュ電極であってもよく、それにより光透過性を有してもよい。透明電極層は、例えば無色透明であるが、用途に応じて有色透明とされてもよい。
【0023】
グランド電位部24は、面状発光体20の全面を被覆するように配置されている。そのため、面状発光体20が発する光はグランド電位部24を通じてアウターレンズ14に入射し、車両用灯具10外へと出射される。
【0024】
なお、グランド電位部24が面状発光体20に設けられる場合、その全面を覆うことは必須ではなく、グランド電位部24は、面状発光体20の一部を被覆してもよい。
【0025】
図3は、実施の形態に係る面状発光体の他の一例を示す概略正面図である。図示されるように、グランド電位部24、すなわち透明電極層は、面状発光体20の外周に設けられてもよい。グランド電位部24は、面状発光体20の外周部で全周にわたり設けられている。
【0026】
透明電極層とはいえ、この層を面状発光体20からの光が透過するときには僅かな吸収や拡散など何らかの影響が生じうる。グランド電位部24を面状発光体20の外周に設けることにより、面状発光体20の中央部ではグランド電位部24が介在せずに開放され、面状発光体20からの光の透過量の低下を防ぐことができる。
【0027】
グランド電位部24がメッシュ電極である場合、グランド電位部24は、密なメッシュを面状発光体20の外周部に有し、それよりも疎なメッシュを面状発光体20の中央部に有してもよい。
【0028】
グランド電位部24は、面状発光体20の外周部のうち全周ではなく、その一部に設けられてもよい。例えば、グランド電位部24は、面状発光体20の両縁(例えば上縁および下縁、または、左縁および右縁)、またはこれら各縁のうち少なくとも1つに設けられてもよい。あるいは、グランド電位部24は、面状発光体20の外周部の少なくとも一部に設けるとともに、またはそれに代えて、面状発光体20の中央部の少なくとも一部に設けられてもよい。グランド電位部24は、さまざまなパターンで面状発光体20上に配置されてもよい。
【0029】
図4(a)および図4(b)は、実施の形態に係る車両用灯具10の他の例を示す概略断面図である。図1に示されるように面状発光体20がアウターレンズ14上にあることは必須ではなく、面状発光体20は、灯室16内においてアウターレンズ14から隙間をあけて配置されてもよい。
【0030】
例えば、図4(a)に示されるように、面状発光体20は、その外周部で支持フレーム26に支持され、アウターレンズ14に対向して配置されてもよい。あるいは、図4(b9)に示されるように、面状発光体20は、その背面(つまりアウターレンズ14とは反対側の面)で支持プレート28に支持され、アウターレンズ14に対向して配置されてもよい。この場合にも、グランド電位部24が面状発光体20のアウターレンズ14側の面に設けられる。グランド電位部24は面状発光体20上にあるので、グランド電位部24とアウターレンズ14の間には空間が形成される。あるいは、後述のように、グランド電位部24が接続回路基板22(図4(a)および図4(b)では図示を省略)のアウターレンズ14側の面に設けられてもよい。支持フレーム26および支持プレート28は、ランプボディ12に取り付けられていてもよい。
【0031】
図5は、実施の形態に係る面状発光体20の回路構成の一例を示す模式図である。図6は、実施の形態に係る面状発光体20と接続回路基板22の接続の一例を示す模式図である。図5および図6には、面状発光体20の層構造が模式的に示されている。
【0032】
面状発光体20は、透明基板30を有し、この透明基板30上に発光部32が形成されている。透明基板30は、一例として、光透過性を有する合成樹脂材料で形成されたフィルム状の基板である。あるいは、透明基板30は、例えばガラスなど他の透明材料で形成されてもよい。透明基板30は、例えば無色透明であるが、用途に応じて有色透明とされてもよい。透明基板30は、外部から発光部32への水分や酸素等の侵入を防ぐためのバリア層としての役割も果たす。
【0033】
発光部32は、陽極層32a、発光層32b、陰極層32cを備え、これらは透明基板30上に順に積層されている。陽極層32aは、例えばITO等の透明導電材料で形成された透明電極層であり、発光層32bと透明基板30との間にある。発光層32bは、有機EL材料で形成されている。陽極層32aと陰極層32cとの間に電圧が印加されるとき、発光層32bは可視光で発光することができる。陰極層32cは、例えば銅、アルミニウムなど不透明な導電材料で形成される。また、透明基板30上には発光部32を被覆するバリア層34が設けられている。バリア層34は、透明基板30とともに発光部32を封止し、発光部32への水分や酸素等の侵入を防ぐ。このようにして、面状発光体20は、フィルム状の有機EL素子として構成される。
【0034】
なお、陰極層32cに透明導電材料が用いられてもよい。また、バリア層34も透明材料で形成されてもよく、面状発光体20が透明なフィルム状の有機EL素子として構成されてもよい。
【0035】
面状発光体20には、陽極層32aと電気的に接続された陽極給電部36と、陰極層32cと電気的に接続された陰極給電部38が設けられている。陽極給電部36と陰極給電部38は、面状発光体20の外周部、例えば面状発光体20の長手方向端部に設けられる。陽極給電部36は、接続回路基板22の陽極端子部40に接続され、陰極給電部38は、接続回路基板22の陰極端子部42に接続される。接続回路基板22は、陽極端子部40を電源44(例えば車載バッテリ)のプラス側電極へと接続し、陰極端子部42を電源44のマイナス側電極、例えばボディアース46へと接続する。このようにして、電源44は、接続回路基板22を介して面状発光体20に給電することができる。
【0036】
一方、グランド電位部24としての透明電極層は、透明基板30上で発光部32と反対側に配置されている。この透明電極層は、図6に示されるように、透明基板30上で発光部32が設けられた面(図において上面)とは反対側の透明基板30の面(図において下面)に接着層48aにより貼り付けられていてもよい。また、グランド電位部24は、上述のように面状発光体20がアウターレンズ14上に配置される場合、アウターレンズ14の内面に接着層48bにより貼り付けられていてもよい。接着層48a、48bは、光透過性を有する。接着層48a、48bは、接着剤を透明基板30に塗布することにより形成されてもよく、または両面テープであってもよい。接着層48aを用いる代わりに、グランド電位部24は、例えば蒸着などの成膜工程により透明基板30上に形成されてもよい。また、接着層48bを用いる代わりに、グランド電位部24は、アウターレンズ14上に成膜されていてもよい。
【0037】
グランド電位部24は、接続電極50を有し、この接続電極50が接続回路基板22のグランド電極52に接続されている。接続回路基板22は、グランド電極52を電源44のマイナス側電極、例えばボディアース46へと接続する。こうして、グランド電位部24は、接地される。
【0038】
図6に示されるように、面状発光体20と接続回路基板22は、異方性導電膜54を用いて接続される。面状発光体20の陽極給電部36と陰極給電部38はそれぞれ、透明基板30上でアウターレンズ14とは反対側の面に露出されている。また、グランド電位部24の接続電極50も、透明基板30上でアウターレンズ14とは反対側の面に露出されている。接続回路基板22の陽極端子部40、陰極端子部42、およびグランド電極52はそれぞれ、接続回路基板22の同じ面上で、陽極給電部36、陰極給電部38、および接続電極50に対応する位置に設けられている。なお図6では簡単のために陽極給電部36と陽極端子部40を示し、陰極給電部38と陰極端子部42は図示を省略している。異方性導電膜54を介して接続回路基板22を貼り合わせることにより、対応する面状発光体20の給電部と接続回路基板22の端子部とが電気的に接続される。
【0039】
なお、グランド電位部24の接地の取り方は任意である。例えば、グランド電位部24はコネクタ部および配線ケーブルを介して接地電位に接続されてもよい。あるいは、グランド電位部24はアースコードを介して接地されてもよい。
【0040】
実施の形態に係る車両用灯具10によれば、電源44から接続回路基板22を通じて面状発光体20に給電することにより、発光部32を発光させることができる。発光部32が発する光は灯室16からアウターレンズ14を通じて外部に出射される。このようにして、車両用灯具10は灯具としての機能を発揮することができる。
【0041】
車両用灯具10が車両に設置されているとき、アウターレンズ14の外面は外部環境にさらされる。アウターレンズ14が車両走行中に風や砂埃などを受けたり、あるいはアウターレンズ14を布で拭いたりすることにより、その表面が帯電しうる。こうした摩擦帯電が進行し、アウターレンズ14に多くの電荷が蓄積されると、アウターレンズ14から灯室16内への静電気放電が起こりうる。もし、面状発光体20に放電したとすると、最悪の場合、発光部32が破壊されうる。
【0042】
しかしながら、実施の形態に係る車両用灯具10によれば、面状発光体20のアウターレンズ14側の面にグランド電位部24が設けられている。そのため、たとえアウターレンズ14が帯電したとしても、その静電気の放電はアウターレンズ14からグランド電位部24に対して発生することが期待される。グランド電位部24は、発光部32を被覆し、発光部32への静電気放電をいわば遮蔽する効果をもつ。したがって、アウターレンズ14から面状発光体20の発光部32へと放電が起こるリスクを低減することができ、面状発光体20を静電気破壊から保護することができる。
【0043】
図7は、他の実施の形態に係る面状発光体20を示す概略正面図である。図8は、図7に示される面状発光体20と接続回路基板22の接続の一例を示す模式図である。上述の実施の形態では、グランド電位部24は、面状発光体20に設けられているが、接続回路基板22のアウターレンズ14側の面に設けられてもよい。
【0044】
この実施の形態では、接続回路基板22は、アウターレンズ14側(つまり正面)から見て面状発光体20の縁からはみ出しているはみ出し部60を有する。図示の例では、はみ出し部60は、面状発光体20の上縁と下縁それぞれから上方と下方にはみ出している。接続回路基板22は、グランド電位部24として、このはみ出し部60においてアウターレンズ14側の面に設けられたグランド電極62を有する。グランド電極62は、面状発光体20の縁に沿って延び、アウターレンズ14に向かって露出されている。
【0045】
図7および図8に示される実施の形態においても、図3に示される面状発光体20の外周部にグランド電位部24を設けた実施の形態と同様に、面状発光体20の発光部32へと放電リスクを低減し、面状発光体20を静電気破壊から保護することができる。
【0046】
また、図9に示されるように、接続回路基板22は、はみ出し部60を面状発光体20との接続部に有し、このはみ出し部60においてアウターレンズ14側の面に設けられたグランド電極62を有してもよい。このようにしても、グランド電極62は、静電気対策に役立つものと期待される。
【0047】
なお、グランド電位部24として、図7および図8に示されるグランド電極62と、図9に示されるグランド電極62が併用されてもよい。
【0048】
図10は、更なる他の実施の形態に係る面状発光体20を示す模式図である。複数の面状発光体20が車両用灯具10に設けられてもよい。これら複数の面状発光体20は、上述の実施の形態と同様に、アウターレンズ14に対して内側に配置される。面状発光体20は、互いに密着して重ね合わされ、または互いに間隔を空けてアウターレンズ14側からランプボディ12側へと配列されてもよい。他の面状発光体20が後方に配置された面状発光体20は、当該他の面状発光体20からの光をアウターレンズ14に向けて透過させるために透明に構成されてもよい(この場合、面状発光体20の陰極層とバリア層が透明材料で形成される。発光層は通例、その厚さが十分に小さく、実質的に光透過性を有する)。
【0049】
グランド電位部24は、複数の面状発光体20のうちアウターレンズ14に最も近接して配置された面状発光体20と当該面状発光体20に接続された接続回路基板22の少なくとも一方に設けられている。図示の例では、グランド電位部24として、アウターレンズ14に最も近接した面状発光体20に接続された接続回路基板22上に露出されたグランド電極62が設けられている。これに加えて、またはこれに代えて、グランド電位部24として、アウターレンズ14に最も近接した面状発光体20のアウターレンズ14側の面に透明電極層が設けられてもよい。
【0050】
なお、複数の面状発光体20は、アウターレンズ14側から見て、互いに重なり合わないように、または部分的にのみ重なって配置されてもよい。この場合も、グランド電位部24は、複数の面状発光体20のうちアウターレンズ14に最も近接して配置された面状発光体20と当該面状発光体20に接続された接続回路基板22の少なくとも一方に設けらてもよい。これに加えて、またはこれに代えて、他の面状発光体20または接続回路基板22にグランド電位部24が設けられてもよい。
【0051】
本発明は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、実施の形態及び変形例を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えたりすることも可能であり、そのような組み合わせ、もしくはさらなる変形が加えられた実施の形態や変形例も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態や変形例、及び上述した実施の形態や変形例と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例及びさらなる変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0052】
グランド電位部24は、面状発光体20と接続回路基板22の両方に設けられてもよい。よって、グランド電位部24は、面状発光体20のアウターレンズ14側の面に設けられた透明電極層と、接続回路基板22のはみ出し部60においてアウターレンズ14側に設けられたグランド電極62との両方を含んでもよい。
【0053】
面状発光体20は、有機EL素子には限定されない。面状発光体20は、無機ELなど他のEL素子、またはその他の発光素子を有してもよい。
【0054】
上述の実施の形態では、車両用灯具10としてヘッドランプを例示した。しかしながら、車両用灯具はこれに限定されず、実施の形態に係る車両用灯具10は、ターンシグナルランプ、ストップランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプ、コーナーリングランプ、ハザードランプ、ポジションランプ、バックランプ、フォグランプ等の各種の車両用灯具に広く適用することができる。
【0055】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0056】
10 車両用灯具、 14 アウターレンズ、 20 面状発光体、 22 接続回路基板、 24 グランド電位部、 52 グランド電極、 60 はみ出し部、 62 グランド電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10