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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121216
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】運搬台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/02 20060101AFI20220812BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20220812BHJP
   B62B 5/02 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B62B3/02 H
B62B3/00 B
B62B5/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018445
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】308007228
【氏名又は名称】株式会社小川優機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】上田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友哉
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD01
3D050DD03
3D050EE03
3D050EE11
3D050FF03
3D050KK06
3D050KK11
3D050KK14
(57)【要約】
【課題】路面上に段差があっても容易に乗り越えることが可能な、操作性の良い運搬台車を提供する。
【解決手段】運搬台車100は、電動式の運搬台車である。運搬台車100は、荷台1と、荷台1の下方における前後方向の中央部に設けられる車輪2と、荷台1の下方における前部及び後部にそれぞれ設けられる昇降車輪3と、昇降車輪3と荷台1との間に設けられる昇降機4とを備える。車輪2は、荷台1の下方に設けられる電動モータ21によって作動する。昇降車輪3は、昇降機4の伸縮によって昇降する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の運搬台車であって、
荷台と、前記荷台の下方における前後方向の中央部に設けられる車輪と、前記荷台の下方における前部及び後部にそれぞれ設けられる昇降車輪と、前記昇降車輪と前記荷台との間に設けられる昇降機と、を備えており、
前記車輪は、前記荷台の下方に設けられる電動モータによって作動し、
前記昇降車輪は、前記昇降機の伸縮によって昇降することを特徴とする運搬台車。
【請求項2】
前記荷台の下方における前部及び後部には、前記昇降車輪の路面への接触を検知するための接地センサがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の運搬台車。
【請求項3】
前記荷台には、傾斜計が取り付けられており、
前記傾斜計が異常値を検知すると、前記車輪の回転をロックして前記電動モータを停止させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬台車に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場では、工事中、床面(路面)に段差が多く存在するため、運搬台車を使用して資材等の運搬物を運搬する際、段差を解消するために鋼製のスロープが利用される。
しかし、鋼製のスロープは、重量が大きいため、現場での取り扱いも容易ではなく、使いづらいものである。また、スロープを利用する場合の移動経路が限定されるため、スロープを通る移動経路を使わずに無理に段差を越えて運搬台車を移動しがちである。この場合、段差を越える際の衝撃で荷崩れが起こり易い。
従来、段差を有する路面上を移動するための運搬台車として、特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1の運搬台車は、基台(荷台)の下部の前後左右に、荷台を上昇させて支持する4つのリフティングジャッキと、車輪を上下動させて上下位置を固定可能な8つの車輪昇降部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-071998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の運搬台車は、多くのリフティングジャッキと車輪昇降部とをそれぞれ備える必要がある。このため、運搬台車の構成が複雑であり、段差を有する路面上を移動する際の操作が煩雑となる。また、比較的重量の大きい運搬台車を手動で移動させなければならない。
本発明は、前記した課題を解決し、路面上に段差があっても容易に乗り越えることが可能な、操作性の良い運搬台車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、建設現場で使用可能な運搬台車として、荷台の下方、前部及び後部に昇降車輪と、接地センサを設けることで、路面上に段差があった際には、接地センサによって路面と荷台との距離を計測しながら昇降車輪を確実に接地させて、乗り越えることができる点に着眼して、本発明に至った。
前記課題を解決するために、本発明は、電動式の運搬台車である。この運搬台車は、荷台と、前記荷台の下方における前後方向の中央部に設けられる車輪と、前記荷台の下方における前部及び後部にそれぞれ設けられる昇降車輪と、前記昇降車輪と前記荷台との間に設けられる昇降機とを備える。前記車輪は、前記荷台の下方に設けられる電動モータによって作動する。前記昇降車輪は、前記昇降機の伸縮によって昇降する。
本発明では、車輪の前方及び後方に昇降車輪をそれぞれ設けて昇降機によって昇降させることで、路面上に段差があった際に荷台を安定的に昇降させて段差を乗り越えることができる。また、電動モータによって車輪を作動させて運搬台車を移動させることができる。したがって、本発明によれば、路面上に段差があっても容易に乗り越えることが可能な、操作性の良い運搬台車を提供できる。
また、前記荷台の下方における前部及び後部には、前記昇降車輪の路面への接触を検知するための接地センサがそれぞれ設けられていることが好ましい。
このような構成では、前後の昇降車輪を確実に接地させることが可能となるため、安定した運搬台車の移動を実現でき、運搬作業の安全性が向上する。
また、前記荷台には、傾斜計が取り付けられており、前記傾斜計が異常値を検知すると、前記車輪の回転をロックして前記電動モータを停止させることが好ましい。
このような構成では、傾斜計によって荷台の傾斜度合いが異常と検知されると、車輪がロックされ、かつ電動モータが停止させられる。これにより、例えば路面が傾斜している状況や段差を越える際においても、荷台を水平に保つように調整して、荷崩れや転倒を防止することができ、運搬作業の安全性が向上する。具体的には、運搬台車の位置を水平な路面上に移動させたり、昇降車輪を昇降させたりして、荷台を水平に保つことができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、路面上に段差があっても容易に乗り越えることが可能な、操作性の良い運搬台車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る運搬台車を側方から見た遠近法で示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る運搬台車を右前斜め上方から見た遠近法で示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る運搬台車を左斜め下方から見た遠近法で示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る運搬台車を後方から見た操作部付近の遠近法で示す拡大図である。
図5A】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す模式図である。
図5B】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図5Aから続く模式図である。
図5C】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図5Bから続く模式図である。
図5D】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図5Cから続く模式図である。
図5E】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図5Dから続く模式図である。
図5F】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図5Eから続く模式図である。
図5G】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図5Fから続く模式図である。
図6A】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す模式図である。
図6B】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図6Aから続く模式図である。
図6C】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図6Bから続く模式図である。
図6D】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図6Cから続く模式図である。
図6E】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図6Dから続く模式図である。
図6F】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図6Eから続く模式図である。
図6G】本発明の実施形態に係る運搬台車を使用して上りの段差を越える例を示す図6Fから続く模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、荷台の下方側の中央部に車輪が設けられ、かつ前部及び後部に昇降車輪が設けられるとともに、前記荷台の下方、前後に複数の接地センサが設けられた電動式の運搬台車である。
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面において、同一または同種の部材については、同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また、部材のサイズおよび形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
図1は、本発明の実施形態に係る運搬台車100を左側方から見た遠近法で示す図である。本実施形態に係る運搬台車100は、建設現場の路面R上にある段差S1,S2(図5A,6A参照)を乗り越えて走行できる電動式の運搬台車である。なお、以下の説明において、上下左右前後の各方向は、図1図4に示すように、通常の運搬作業時に作業者M(図5A参照、以下同様)から見た各方向に設定する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る運搬台車100は、荷台1と、車輪2と、昇降車輪3と、昇降機4とを備えている。車輪2は、荷台1の下方における前後方向の中央部に設けられている。昇降車輪3は、荷台1の下方における前部及び後部にそれぞれ設けられている。すなわち、昇降車輪3は、車輪2の前方及び後方にそれぞれ設けられている。昇降機4は、昇降車輪3と荷台1との間に設けられている。
【0010】
図2は、本発明の実施形態に係る運搬台車100を右前斜め上方から見た遠近法で示す図である。図2に示すように、荷台1上の後縁部における左右には、作業者Mが運搬作業時に握るパイプ状の取手11がそれぞれ立設されている。荷台1上の前縁部、左縁部及び右縁部には、荷台1上の資材等の運搬物B(図5参照、以下同様)の落下を防止するためのあおり板12が上下方向に回動可能にそれぞれ設けられている。荷台1の上面には、複数の凹部13が形成されている。凹部13内に作業者Mは手を入れることができるため、運搬物Bの荷台1上への積み下ろしが容易となる。荷台1上の後縁部には、鉛直方向に立設される背面板14が設けられている。背面板14は、荷台1上の空間の後側を覆うように設けられている。
また、運搬物Bを固縛する場合には、あおり板12に取り付けられたフック16、及び凹部13の底面に設けられた開口部17を用いて、運搬物Bを荷造り紐などで縛る。凹部13の底面には、開口部17が一部に設けられている。作業者Mは、運搬物Bを荷台1上に設置し、荷台1上の側縁に設けられたあおり板12を立てるとともに、当該運搬物Bをあおり板12に設けられたフック、または開口部17を通した荷造り紐などで縛ることで、荷崩れを防止する。なお、開口部17は、凹部13を形成する側面の一部に設けられる場合もある。
【0011】
荷台1上の後部には、バッテリ51を収納するボックス5が設置されている。バッテリ51は充電可能である。また、バッテリ51は、工事現場付近で電源の取れない場所でも、電源として利用可能である。ボックス5の内部には、荷台1の水平面に対する傾斜度合いを検知する傾斜計55が設置されている。傾斜計55としては、例えば重力方向に吊るした錘や液面と傾いた物体との偏差を検出する振り子式やフロート式の傾斜センサが使用され得るが、特に限定されるものではない。また、ボックス5の内部には、運搬台車100の各部の制御を行う制御回路基板56が配置されている。ボックス5の上面には、表示灯52が取り付けられている。表示灯52は、通常時に例えば緑色に点灯する通常表示灯53と、注意喚起時に例えば黄色に点灯する注意表示灯54とを備えている。背面板14の上側には、運搬台車100に対する動作指示等の入力や情報の表示を行う操作部6が設置されている。なお、操作部6の設置位置は適宜変更され得る。
【0012】
図3は、本発明の実施形態に係る運搬台車100を左斜め下方から見た遠近法で示す図である。図3に示すように、車輪2は、荷台1の下方に設けられる電動モータ21によって作動する。車輪2の駆動軸22は、荷台1の下面に固定された支持フレーム23に、軸受24を介して、回転可能に支持されている。電動モータ21の回転駆動力はギア等を備える変速機構部25を介して、駆動軸22に伝達される。電動モータ21は、該電動モータ21の回転軸に対して電気的にブレーキをかけることができる。また、電動モータ21は、非通電時には、例えばばねの作用によって該電動モータ21の回転軸に対して機械的にブレーキがかかるように構成されている。電動モータ21として、例えばDCブラシレスモータが使用され得るが、特に限定されるものではなく、例えば他の種類のサーボモータ等が使用されてもよい。車輪2は、支持フレーム23の下面の前部における左右にそれぞれ設けられている。なお、駆動軸22に取り付けられる車輪2の数は限定されるものではなく、一つでもよいし三つ以上でもよい。支持フレーム23の下面の後部における左右には、路面Rと接触して回転自在な従動輪26がそれぞれ設けられている。
【0013】
昇降車輪3は、昇降機4の伸縮によって昇降する。昇降機4は、荷台1の下面に固定された上部フレーム41、昇降車輪3が下面に固定された下部フレーム42、及び、上部フレーム41と下部フレーム42との離間距離を調整可能な伸縮機構43とを備えている。伸縮機構43は、X字状に交差され交差部で回動可能に連結された一対のリンク部材43a、43bを左右に一組ずつ備える。すなわち、昇降機4は、本実施形態では、Xリンク式ジャッキである。ただし、昇降機4として、パンタグラフ式ジャッキ等、他の種類の昇降機が使用されてもよい。上部フレーム41の端部には、昇降機4の伸縮時に回転させられる入力軸44が設けられている。なお、図3では、前側の昇降機4の入力軸44のみが図示されている。入力軸44は、例えば電動インパクトレンチ等の回転駆動手段45によって作動される。本実施形態では、一つの昇降機4につき左右二つの昇降車輪3,3が取り付けられている。なお、一つの昇降機4に取り付けられる昇降車輪3の数は限定されるものではなく、一つでもよいし、三つ以上でもよい。
【0014】
荷台1の下方における前部及び後部には、昇降車輪3の路面Rへの接触、すなわち接地を検知するための接地センサ31がそれぞれ設けられている。具体的には、接地センサ31は、昇降機4の下部フレーム42に取り付けられている。図3では、接地センサ31は、左側の昇降車輪3付近の下部フレーム42の下面に固定されているが、これに限定されるものではない。接地センサ31は、該接地センサ31から路面Rまでの距離を計測する。接地センサ31として、例えばIRレーザを用いたToF(タイム・オブ・フライト)方式のレーザ距離センサが使用され得る。ただし、接地センサ31は、例えば超音波センサ等の他の種類の非接触式または接触式の距離センサであってもよい。接地センサ31の計測値が、接地センサ31から昇降車輪3の下端(路面Rに接触する部分)までの距離、すなわち接地センサ31の取付け高さよりも大きい場合、昇降車輪3が接地していないことが判る。
【0015】
図4は、本発明の実施形態に係る運搬台車100を後方から見た操作部6付近の遠近法で示す拡大図である。図4に示すように、背面板14の後面には、運搬台車100の各部へのバッテリ51からの電力供給のオン・オフを行うための主電源ボタン15が設置されている。なお、主電源ボタン15の設置位置は適宜変更され得る。
【0016】
操作部6は、走行操作部7と、操作表示部8とを備えている。走行操作部7には、操作レバー71が設けられている。操作レバー71が図4中のP(下)位置にあるとき、電動モータ21の回転軸に対して電気的にブレーキがかかり、車輪2の回転がロックされる。操作レバー71が図4中のN(中央)位置にあるとき、電動モータ21の回転軸に対する電気的なブレーキは解除される。ただし、主電源ボタン15によって電源がオフされているときは、電動モータ21の回転軸に対して機械的にブレーキがかかり、車輪2の回転がロックされる。操作レバー71が図4中のD(上)位置にあるとき、電動モータ21の回転軸に対する電気的なブレーキは解除され、電動モータ21が駆動させられる。これにより、車輪2が回転させられて、運搬台車100の移動がアシストされる。操作レバー71がD位置にあるときに操作レバー71から手を離すと、操作レバー71はN位置に戻る。これにより、アシスト効果は切れて電動モータ21は停止するようになっている。一方、操作レバー71がP位置にあるときに操作レバー71から手を離しても、操作レバー71はP位置に保持されるようになっている。
【0017】
操作表示部8には、前輪上昇操作ボタン81、前輪下降操作ボタン82、後輪上昇操作ボタン83及び後輪下降操作ボタン84が設けられている。前輪上昇操作ボタン81が押されている間は前側の昇降機4が縮むことで前側の昇降車輪3が上昇し、前輪下降操作ボタン82が押されている間は前側の昇降機4が伸びることで前側の昇降車輪3が下降する。後輪上昇操作ボタン83が押されている間は後側の昇降機4が縮むことで後側の昇降車輪3が上昇し、後輪下降操作ボタン84が押されている間は後側の昇降機4が伸びることで後側の昇降車輪3が下降する。
【0018】
また、操作表示部8には、運搬台車100の状態を表示する複数のインジケータランプを備える表示部85が設けられている。傾斜計55が異常値、例えば荷台1の水平面に対する傾斜度合いが規定値を越えることを検知すると、注意表示灯54が点灯するとともに、表示部85における対応するインジケータランプが点灯する。ここで、荷台1の前側が後側よりも低くなる傾斜の場合と、荷台1の前側が後側よりも高くなる傾斜の場合とで、異なるインジケータランプが点灯する。また、傾斜計55が異常値を検知すると、運搬台車100は、車輪2の回転をロックして電動モータ21を停止させる。具体的には、電動モータ21の回転軸に対して電気的にブレーキがかかることで車輪2の回転がロックされ、電動モータ21の駆動は停止させられる。なお、車輪2の回転をロックして電動モータ21を停止させる際の荷台1の傾斜度合いの規定値は、注意表示灯54を点灯させるとともにインジケータランプを点灯させる際の規定値よりも一段大きくなるように設定されてもよい。接地センサ31によって、昇降車輪3の路面Rへの非接触、すなわち昇降車輪3が接地していないことが検知されると、注意表示灯54が点灯するとともに、表示部85における対応するインジケータランプが点灯する。ここで、前側の昇降車輪3が接地していない場合と、後側の昇降車輪3が接地していない場合とで、異なるインジケータランプが点灯する。
【0019】
次に、このように構成された運搬台車100の動作について説明する。
まず、図5A図5Gを参照して、本実施形態に係る運搬台車100を使用して上りの段差S1を越える例について説明する。
図5Aに示すように、作業者Mは、路面Rのうちの低路面R1上において、運搬台車100を前進させて、上りの段差S1の手前で止める。このとき、前側及び後側の昇降車輪3はともに、車輪2及び昇降車輪3がすべて接地する基準位置にある。続いて、図5Bに示すように、作業者Mは、前輪上昇操作ボタン81を押して前側の昇降機4を縮めることで前側の昇降車輪3を上昇させる。前側の昇降車輪3の上昇距離は、上りの段差S1の高さと同じ値とされる。続いて、図5Cに示すように、作業者Mは、運搬台車100を少し前進させて、前側の昇降車輪3が上りの段差S1を越えて路面Rのうちの高路面R2上に来たら止める。続いて、図5Dに示すように、作業者Mは、前輪下降操作ボタン82を押して前側の昇降機4を伸ばすとともに後輪下降操作ボタン84を押して後側の昇降機4を伸ばすことで、荷台1を水平に保ちながら上昇させる。なお、前側の昇降機4と後側の昇降機4とを同時に同じ量だけ伸ばすことで前側の昇降車輪3と後側の昇降車輪3とを同時に同じ距離だけ下降させるボタンが操作表示部8に設けられていてもよい。このようにすれば、荷台1をより水平に保ちながら上昇させることができる。荷台1の上昇距離は、上りの段差S1の高さと同じ値とされ、前側の昇降車輪3は基準位置にある。続いて、図5Eに示すように、作業者Mは、運搬台車100を少し前進させて、後側の昇降車輪3が低路面R1上にある状態で車輪2が上りの段差S1を越えたら止める。続いて、図5Fに示すように、作業者Mは、後輪上昇操作ボタン83を押して後側の昇降機4を縮めることで後側の昇降車輪3を基準位置まで上昇させる。そして、図5Gに示すように、作業者Mが運搬台車100を前進させると、運搬台車100全体が上りの段差S1を乗り越えて高路面R2上に移動する。
【0020】
次に、図6A図6Gを参照して、本実施形態に係る運搬台車100を使用して下りの段差S2を越える例について説明する。
図6Aに示すように、作業者Mは、路面Rのうちの高路面R2上において、運搬台車100を前進させて、下りの段差S2の手前で止める。このとき、前側及び後側の昇降車輪3はともに基準位置にある。続いて、図6Bに示すように、作業者Mは、運搬台車100を少し前進させて、車輪2が高路面R2上にある状態で前側の昇降車輪3が下りの段差S2を越えたら止める。続いて、図6Cに示すように、作業者Mは、前輪下降操作ボタン82を押して前側の昇降機4を伸ばすことで前側の昇降車輪3を下降させて低路面R1に接地させる。前側の昇降車輪3の下降距離は、下りの段差S2の高さと同じ値とされる。続いて、図6Dに示すように、作業者Mは、運搬台車100を少し前進させて、後側の昇降車輪3が高路面R2上にある状態で車輪2が下りの段差S2を越えたら止める。続いて、図6Eに示すように、作業者Mは、前輪上昇操作ボタン81を押して前側の昇降機4を縮めるとともに後輪上昇操作ボタン83を押して後側の昇降機4を縮めることで、荷台1を水平に保ちながら下降させる。なお、前側の昇降機4と後側の昇降機4とを同時に同じ量だけ縮めることで前側の昇降車輪3と後側の昇降車輪3とを同時に同じ距離だけ上昇させるボタンが操作表示部8に設けられていてもよい。このようにすれば、荷台1をより水平に保ちながら下降させることができる。荷台1の下降距離は、下りの段差S2の高さと同じ値とされ、前側の昇降車輪3は基準位置にある。続いて、図6Fに示すように、作業者Mは、運搬台車100を少し前進させて、後側の昇降車輪3が下りの段差S2を越えたら止める。そして、図6Gに示すように、作業者Mは、後輪下降操作ボタン84を押して後側の昇降機4を伸ばすことで後側の昇降車輪3を下降させて低路面R1に接地させる。後側の昇降車輪3の下降距離は、下りの段差S2の高さと同じ値とされる。これにより、運搬台車100全体が下りの段差S2を乗り越えて低路面R1上に移動する。
【0021】
前記したように、本実施形態に係る運搬台車100は、電動式の運搬台車である。運搬台車100は、荷台1と、荷台1の下方における前後方向の中央部に設けられる車輪2と、荷台1の下方における前部及び後部にそれぞれ設けられる昇降車輪3と、昇降車輪3と荷台1との間に設けられる昇降機4とを備える。車輪2は、荷台1の下方に設けられる電動モータ21によって作動する。昇降車輪3は、昇降機4の伸縮によって昇降する。
本実施形態では、車輪2の前方及び後方に昇降車輪3をそれぞれ設けて昇降機4によって昇降させることで、路面R上に段差S1,S2があった際に荷台1を安定的に昇降させて段差S1,S2を乗り越えることができる。また、電動モータ21によって車輪2を作動させて運搬台車100を移動させることができる。
したがって、本実施形態によれば、路面R上に段差S1,S2があっても容易に乗り越えることが可能な、操作性の良い運搬台車100を提供できる。
【0022】
また、荷台1の下方における前部及び後部には、昇降車輪3の路面Rへの接触を検知するための接地センサ31がそれぞれ設けられている。このような構成では、前後の昇降車輪3を確実に接地させることが可能となるため、安定した運搬台車100の移動を実現でき、運搬作業の安全性が向上する。
【0023】
また、荷台1には、傾斜計55が取り付けられており、傾斜計55が異常値を検知すると、運搬台車100は、車輪2の回転をロックして電動モータ21を停止させる。
このような構成では、傾斜計55によって荷台1の傾斜度合いが異常と検知されると、車輪2がロックされ、かつ電動モータ21が停止させられる。これにより、例えば路面Rが傾斜している状況や段差S1,S2を越える際においても、荷台1を水平に保つように調整して、荷崩れや転倒を防止することができ、運搬作業の安全性が向上する。具体的には、運搬台車100の位置を水平な路面R上に移動させたり、昇降車輪3を昇降させたりして、荷台1を水平に保つことができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、運搬台車100が建設現場で使用される場合について説明したが、これに限定されるものではない。本発明の運搬台車は、例えば事務機器等の機械やタンス等の家具を運搬する場合などの各種運搬作業に使用され得る。
また、前記実施形態では、図5A図5G図6A図6Gを参照して、運搬台車100を使用して段差S1,S2を越える例について説明したが、この例に限定されるものではない。例えば、図5Bにおける前側の昇降車輪3の上昇距離は、少し余裕をもって上りの段差S1の高さよりも大きく設定してもよい。ただし、この場合、図5Cにおいて前側の昇降車輪3を下降させて高路面R2に接地させる必要がある。
また、上記の実施形態では、運搬台車100には、接地センサ31及び傾斜計55が設けられているが、作業者Mが荷台1の傾斜度合いを判断することで、傾斜計55が設けられない場合もある。また、荷台1の傾斜度合いは、傾斜計55に限定することなく、接地センサ31によって判断する場合であっても良い。
【符号の説明】
【0025】
100 運搬台車
1 荷台
2 車輪
3 昇降車輪
31 接地センサ
4 昇降機
5 ボックス
55 傾斜計
21 電動モータ
R 路面
R1 低路面
R2 高路面
S1,S2 段差
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G