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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121217
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】新規導電率向上剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20220812BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20220812BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20220812BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20220812BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
C08L33/04
C08F220/10
C08K3/08
C08K3/10
C08L101/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018446
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】岡本 慎一朗
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG021
4J002BG02W
4J002CE002
4J002CE00X
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA036
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA106
4J002DE136
4J002ER007
4J002FD116
4J002FD147
4J002GQ02
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL09R
4J100BA02P
4J100BA04P
4J100BA05P
4J100BA06P
4J100BA08P
4J100BB17Q
4J100BC43P
4J100BC53P
4J100BC58P
4J100CA05
4J100CA06
4J100FA18
4J100JA45
(57)【要約】
【課題】新規導電率向上剤を提供すること。
【解決手段】
本開示は、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群を含み、ならびに必要に応じて架橋剤を含む化合物のコポリマーを含む、導電成分または導電材の導電率を向上させるための組成物、製造する方法およびマトリクスとしての使用を提供する。前記組成物は、非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物
をさらに含みうる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、
B)ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、
C)ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と
を含む、
導電体の導電率を向上させるための、組成物または組み合わせ。
【請求項2】
架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項3】
前記架橋剤はC成分群の化合物を架橋する官能基を有する、請求項2に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項4】
D)非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物
をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項5】
前記エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、式(1)
【化18】
によって表される、第一の(メタ)アクリレートであり、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、アルキルオキシ、シクロアルキルオキシもしくはアリールオキシ基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項6】
前記ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、式(2)
【化19】
によって表される、第二の(メタ)アクリレートであり、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、1個から置換可能な数までの同一又は異なるハロゲン原子で置換されたアルキル、シクロアルキル、またはアリールである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項7】
前記ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物は、式(3)
【化20】
により表される、第三の(メタ)アクリレートであり、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、ヒドロキシ基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項8】
前記非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物は、式(4)
【化21】
により表される、第四の(メタ)アクリレートであり、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、非置換のアルキル、シクロアルキル、またはアリールである、
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項9】
前記第一の(メタ)アクリレートは、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、および(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される、少なくとも1種を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項10】
前記第二の(メタ)アクリレートは、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、および1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される、少なくとも1種を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項11】
前記第三の(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される、少なくとも1種を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項12】
前記第四の(メタ)アクリレートは、エチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、およびラウリルアクリレートからなる群より選択される、少なくとも1種を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせと、導電成分と、基材とを含む、導電材。
【請求項14】
前記導電成分は、金属成分、金属酸化物、金属炭化物等の金属系成分、導電性炭素系成分、導電性有機化合物、導電性ポリマーまたはそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の導電材。
【請求項15】
導電成分または導電材の柔軟性を向上させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項16】
導電成分または導電材の耐久性を向上させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物または組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規導電性向上剤、および関連技術に関する。より特定すると、本開示は、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群、およびヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群を含み、ならびに必要に応じて架橋剤を含む化合物のコポリマーを含む、導電材の導電性を向上させるための組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
導電材や導電体については、種々の改良がなされてきている。しかし、現在提供されている導電材は、特定の組合せの導電成分を含むものに限定されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-102719号公報
【特許文献2】国際公開第2015/099049号
【特許文献3】国際公開第2019/039511号
【特許文献4】国際公開第2017/163615号
【特許文献5】特開2017-183207号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、導電材の導電性を向上させる所望の組合せの導電成分を含む導電材を提供する。
【0005】
本開示は、例えば、A)エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、B)ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、C)ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とを含む、導電体の導電率を向上させるための、組成物または組み合わせ、種々のその製造法および使用方法を提供する。
【0006】
本開示において、本明細書に記載される1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示の種々の実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、導電性向上剤が提供され、これらを用いることで、導電率を向上させることができる技術を提供することができる。本開示はまた、柔軟性を改善しつつ導電率を向上させることができる。本開示はまた、導電率を向上し、耐久性が向上した導電材を製造する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0009】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0010】
(用語の定義)
本明細書では、導電率(または抵抗率)は、以下のようにして測定する。具体的には、特に断らない限り、測定対象(例えば、フィルム等)を縦0.5cm×横2.00cm×厚さ0.2cmに切り出して、4端子測定法(例えば、ロレスタGP〔三菱化学アナリテック社製〕を用いることができるが、これに限定されない。)により測定された値を採用する。
【0011】
本明細書において、「導電材」とは、導電性を有する任意の材料を指す。本明細書では、導電材は、1.0×10-1Ω・cm以下、通常、1.0×10-2Ω・cm以下、好ましくは1.0×10-3Ω・cm以下の抵抗率を有するものを対象とするが、これに限定されない。導電材は、導電性を付与する導電成分を含む。代表的には、導電材は、通常基材と導電成分とを含んで構成される。
【0012】
本明細書において「導電率を向上」とは、本開示の成分を導電成分または導電材に加えたときに、加えていない場合と比較して導電率が有意に増加していることをいい、例えば、導電率を少なくとも、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%向上させることをいい、体積抵抗率の低下によっても表現することができる。例えば、比較対象と比べて、体積抵抗率が、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%低下させることをいう。
【0013】
本明細書において「基材」とは、マトリクスとも称し、導電材の構造の基礎的な部分を指し、導電成分を配置するための土台に該当するものである。基材としては、各種ポリマーを使用することができる。基材がポリマーである場合、基材をポリマーマトリクスと呼ぶ場合がある。
【0014】
本明細書において、「導電成分」とは、導電性を付与する任意の成分を意味する。導電成分としては、例えば、任意の金属成分、金属酸化物、金属炭化物等の金属系成分、導電性炭素系成分、導電性有機化合物、導電性ポリマー等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書において「金属系成分」とは、金属原子をその構成要素として何らかの形式で含む成分であり、金属等の金属成分の他、金属に由来する成分(例えば、金属酸化物、金属炭化物、金属硫化物等)を包含する概念である。
【0016】
本明細書において「金属成分」とは、金属または合金を含む。
【0017】
本明細書において「導電性炭素系成分」とは、炭素を含有する導電性材料を意味する。その具体的な例としては、鱗片状黒鉛などの天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素系材料;炭素繊維;フッ化カーボンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。金属炭化物は、導電性炭素系成分に含まれない。「導電性炭素系成分」は、「炭素系成分」と称する場合もある。
【0018】
本明細書において「(メタ)アクリルモノマー」とは、アクリル基および/またはメタクリル基を含むモノマーであり、その例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド等が挙げられる。
【0019】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0020】
本明細書において「エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群」とはエーテル部分を少なくとも一つ含む(メタ)アクリルモノマーの集合をいう。本開示において、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、1種使用されてもよく、複数種使用されてもよい。エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物の例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、および(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。本開示のエーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、本明細書において「エーテル部分含有(メタ)アクリレート」と称される場合がある。
【0021】
本明細書において「ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群」とはハロゲンを少なくとも一つ含む(メタ)アクリルモノマーの集合をいう。本開示において、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、1種使用されてもよく、複数種使用されてもよい。ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物の例としては、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、および1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。本開示のハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、本明細書において「ハロゲン含有(メタ)アクリレート」と称される場合がある。
【0022】
本明細書において「ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群」とはヒドロキシを少なくとも一つ含む(メタ)アクリルモノマーの集合をいう。ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群は好ましくは、架橋可能な部分を含みうる。本開示において、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、1種使用されてもよく、複数種使用されてもよい。ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。本開示のヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、本明細書において「ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート」と称される場合がある。
【0023】
本明細書において「非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群」とは実質的な官能基を有しない(例えば、アルキル基のみを含む)(メタ)アクリル構造を含むモノマーの集合をいう。本開示において、非置換含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、1種使用されてもよく、複数種使用されてもよい。非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物の例としては、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、およびイソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0024】
本発明に係る組成物または組み合わせにおいては、以下のような形態がありうる。
(1)前記エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物が、ハロゲンもヒドロキシ基も含有せず、前記ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物が、エーテル部分もヒドロキシ基も含有せず、前記ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、エーテル部分もハロゲンも含有しない形態。
(2)本発明に係る組成物または組み合わせに含まれる2以上のモノマーの一つ(第1のモノマー)が、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー、および、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマーの2つに該当し、他の一つ(第2のモノマー)が前記第1のモノマーが該当しないモノマー種である形態。
(3)本発明に係る組成物または組み合わせに含まれる3以上のモノマーの一つ(第1のモノマー)が、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー、および、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマーの2つに該当し、他の一つ(第2のモノマー)が前記第1のモノマーが該当しないモノマー種であり、他の一つ(第3のモノマー)が前記第1のモノマーが該当するモノマー種の一つと同一である形態。この場合、第1のモノマーは、第3のモノマーが該当しないモノマー種として取り扱う。
【0025】
本明細書において「架橋剤」は、ポリマー上の官能基と反応し、分子内または分子間でポリマー同士を連結させることのできる反応剤である。架橋剤の例としては、ホルムアルデヒド、2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート系など)、デュラネートTM(旭化成社製)などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において「架橋する官能基」とは、架橋構造を形成することのできる官能基のことであり、該架橋する官能基は、架橋剤と反応し分子間または分子内で架橋構造を形成することができる。
【0027】
本明細書において、「置換可能な数」とは、ある基上の水素を置換基で置換する場合に、生じる基が化学的に安定であることを条件として、置換可能な水素の最大数を意味する。
【0028】
本明細書において、アルキル基は、直鎖または分枝鎖であり得る。炭素数1~4のアルキル(C1~4アルキル)基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1~6のアルキル(C1~6アルキル)基としては、例えば、C1~4アルキル基、n-ペンチル基、イソアミル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1~10のアルキル(C1~10アルキル)基としては、例えば、C1~6アルキル基、n-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、分岐型ノニル基、n-デカニル基、イソデシル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1~18のアルキル(C1~18アルキル)基としては、例えば、C1~10アルキル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、イソステアリル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0029】
本明細書において、アルケニル基は、直鎖または分枝鎖であり得る。炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数2~10のアルケニル基としては、例えば、炭素数2~6のアルケニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0030】
本明細書において、炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0031】
本明細書において「アルコキシ置換アルキル基」とは、上記アルキル基上の1個もしくは複数個の水素原子がアルコキシ基で置換されているアルキル基をいう。
【0032】
本明細書において「ハロアルキル基」とは、上記アルキル基上の1個もしくは複数個の水素原子がハロゲン原子で置換されているアルキル基をいう。また、「ペルハロアルキル」は、上記アルキル基上の全ての水素原子がハロゲン原子で置換されているアルキル基をいう。炭素数1~6のハロアルキル基(C1-6ハロアルキル基)としては、例えば、C1-6フッ素化アルキル基などが挙げられ、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基(2,2,2-トリフルオロエチル基など)、ペルフルオロエチル基、トリフルオロn-プロピル基、テトラフルオロプロピル基(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基など)、ペルフルオロn-プロピル基、トリフルオロイソプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、トリフルオロn-ブチル基、ペルフルオロn-ブチル基、トリフルオロイソブチル基、ペルフルオロイソブチル基、トリフルオロtert-ブチル基、ペルフルオロtert-ブチル基、トリフルオロn-ペンチル基、オクタフルオロペンチル基(2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基など)、ペルフルオロn-ペンチル基、トリフルオロn-ヘキシル基、ペルフルオロn-ヘキシル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1~8のハロアルキル基(C1-8ハロアルキル基)としては、C1-6ハロアルキル基、またはC1-8フッ素化アルキル基など、例えば、ウンデカフルオロn-ヘプチル基、ペルフルオロn-ヘプチル基、トリデカフルオロオクチル基(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基など)、ペルフルオロn-オクチル基、などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0033】
本明細書において「シクロアルキル基」とは、単環又は多環式飽和炭化水素基を意味し、架橋された構造のものも含まれる。例えば、「C3-12シクロアルキル基」とは炭素原子数が3~12の環状アルキル基を意味する。C6-12シクロアルキル基の具体例としては、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、イソボルニル基、2-メチル-2-アダマンチル基、2-エチル-2-アダマンチル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。C5-12シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、C6-12シクロアルキル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。C3-12シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、C5-12シクロアルキル基などが挙げられる。好ましくは、「C6-12シクロアルキル基」が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0034】
本明細書において「シクロアルケニル基」とは、二重結合を含む単環又は多環式不飽和炭化水素基を意味し、架橋された構造のものも含まれる。上記「シクロアルキル基」の炭素間結合の1つ以上が二重結合になったものが挙げられる。例えば、「C3-12シクロアルケニル基」とは炭素原子数が3~12の環状アルケニル基を意味する。具体例として、「C6-12シクロアルケニル基」の場合には、1-シクロへキセニル基、2-シクロへキセニル基、3-シクロへキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基等が挙げられる。「C3-12シクロアルキル基」の場合には、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、C6-12シクロアルケニル基等が挙げられる。好ましくは、「C6-12シクロアルケニル基」が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0035】
本明細書において「非アリールヘテロシクロアルキル」および「非アリールヘテロ環」とは、その環内に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同種または異種の原子を1~3個有する環式基を意味し、該基は、1つまたは複数の不飽和結合を含んでいてもよいが、芳香族基を含まない。例えば、「3~8員非アリールヘテロシクロアルキル」とは、環構成原子数が3~8個の非アリールヘテロシクロアルキルを意味する。「非アリールヘテロシクロアルキル」の具体例としては、オキシラニル基、オキセタニル基、ピラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ヘキサメチレンイミニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピリジニル基、テトラヒドロピラニル基、1,3-ジオキソラニル基、1,3-ジオキサニル基、1,4-ジオキサニル基などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。尚、該基には架橋構造を有するものも含まれる。
【0036】
本明細書において「アリール基」は、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいう。例えば、ベンゼンからはフェニル基(C-)、トルエンからはトリル基(CH-)、キシレンからはキシリル基((CH-)、ナフタレンからはナフチル基(C10-)が誘導される。「C6~14アリール基」は、炭素数が6~14の芳香族炭化水素基を意味する。「C6~14アリール基」の具体例としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アズレニル基、アセナフテニル基、アセナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントリル基等が挙げられる。「C6~18アリール基」の具体例としては、例えば、C6~14アリール基、ベンゾ[a]アントリル基、ベンゾ[a]フルオレニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、クリセニル基、フルオランテニル基、ピレニル基、テトラセニル基、トリフェニレニル基などが挙げられる。アリールチオ基とは、アリール-S-基をいう。例えば、フェニル-S-基(フェニルチオ基)などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0037】
本明細書において「ヘテロアリール基」は、単環式もしくは多環式のヘテロ原子含有芳香族基を意味し、該基は、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選択される同種または異種のヘテロ原子を1個以上(例えば1~4個)含む。例えば、「5~18員ヘテロアリール基」は、環構成原子数が5~18個のヘテロアリール基を意味する。「ハロヘテロアリール基」は、環構成原子上の1個または複数個の水素がハロゲンで置換されているものを指す。「ヘテロアリール基」の具体例としては、例えば、ピロリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、イソキノリル基、トリアゾリル基、トリアジニル基、テトラゾリル基、インドリル基、イミダゾ[1,2-a]ピリジル基、ピラゾロ[1,5-a]ピリジル基、[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジル基、ベンゾイミダゾリル基、キノキサリル基、シンノリル基、キナゾリル基、インダゾリル基、ナフチリジル基、キノリノリル基、イソキノリノリル基等が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0038】
本明細書において「エーテル部分含有基」は、置換されてもよい炭化水素基の炭素原子と炭素原子の間に酸素原子を有する基を意味し、該基は、酸素原子を1個以上(例えば1~4個)含む。「エーテル部分含有基」の具体例としては、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基等が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0039】
本明細書において「ハロゲン含有基」は、部分構造にハロゲン原子を有する基を意味し、該基は、ハロゲン原子を1個以上(例えば1~4個)含む。「ハロゲン含有基」の具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、トリフルオロブチル基、トリクロロメチル基、トリクロロエチル基、トリクロロプロピル基、トリクロロブチル基等が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0040】
本明細書において「ヒドロキシ含有基」は、部分構造にヒドロキシ基を有する基を意味し、該基は、ヒドロキシ基を1個以上(例えば1~4個)含む。「ヒドロキシ含有基」の具体例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0041】
通常、用語「置換(されている)」は、特定の置換基のラジカルによる、所与の構造における1つ以上の水素ラジカルとの置き換えのことを指す。句「置換されていてもよい」は、句「非置換または置換(の)」と互換的に使用されることが認識される。例えば、「C1~10アルキル基で置換されていてもよいC6~18アリール基」は、「非置換C6~18アリール基、またはC1~10アルキル基で置換されているC6~18アリール基」と同義である。本明細書において、「置換(されている)」または「置換されていてもよい」を用いて定義される基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1または複数である。また、特に指示した場合を除き、各々の基の説明はその基が他の基の一部分または置換基である場合にも該当する。「置換基」の定義における炭素原子の数を、例えば、「C1-6」等と表記する場合もある。具体的には、「C1-6アルキル」なる表記は、炭素数1から6のアルキル基と同義である。また、本明細書において、「置換(されている)」または「置換されていてもよい」なる用語を特に明示していない置換基については、「非置換」の置換基を意味する。
【0042】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、アクリレートおよびメタクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味し、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、アクリル酸およびメタクリル酸は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0043】
本明細書において「組み合わせ」とは、組み合わせについていう場合、2種類以上の化合物について、使用する際に共に使用されることを意図して提供されることまたはその物をいう。化合物の組み合わせは、すべてが一組成物として提供されてもよいが、必ずしも一つの組成物中に組み合わせに属するすべての化合物が含まれていなくてもよく、個別に提供されてもよく、一部が同一組成物で提供されてもよい。例えば、本明細書に記載の第一の(メタ)アクリレートと第二の(メタ)アクリレートとの組み合わせ、第一の(メタ)アクリレートと第二の(メタ)アクリレートと第三の(メタ)アクリレートとの組み合わせ、と第二の(メタ)アクリレートと第三の(メタ)アクリレートと第四の(メタ)アクリレートとの組み合わせなどが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0044】
(導電材の基本的な説明)
本開示において提供される導電材は、当該分野で入手可能な任意の導電成分を含む。本開示の導電材は、本開示において提供される導電率を向上させるための組成物(導電性向上剤ともいう)を含むことにより、導電性を向上することが特徴である。
【0045】
本開示の導電材は、代表的に、導電成分の他基材を含み得る。該基材の材質は、特に限定されず、剥がす目的であれば、離型性のある材質や表面処理がされたものであることが好ましい。
【0046】
(導電性向上剤の基本的な説明)
本開示において提供される、導電率を向上させるための組成物(導電性向上剤)または組み合わせは、1つの局面において、「エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー」、「ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー」、およびヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマーを少なくとも含む。前記組成物は、架橋剤をさらに含み得る。前記組成物は、必要に応じて、非置換アルキル(メタ)アクリルモノマーをさらに含み得る。
【0047】
代表的な実施形態において、本開示において提供されるエーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物の一例は、式(1)
【化1】
により表され、含まれるエーテル含有基の種類、アルキル基の形態(炭素数、分岐もしくは直鎖の状態など)、シクロアルキル基の形態(炭素数など)、アリール基の形態(炭素数など)、メタクリルオキシ(R=メチル)、アクリルオキシ(R=H)の別などにかかわらず、いずれも導電率を向上させるものである。
【0048】
代表的な実施形態において、本開示において提供されるハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物の一例は、式(2)
【化2】
により表され、含まれるハロゲン含有基の種類、アルキル基の形態(炭素数、分岐もしくは直鎖の状態など)、シクロアルキル基の形態(炭素数など)、アリール基の形態(炭素数など)、メタクリルオキシ(R=メチル)、アクリルオキシ(R=H)の別などにかかわらず、いずれも導電率を向上させるものである。
【0049】
代表的な実施形態において、本開示において提供されるヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物の一例は、式(3)
【化3】
により表され、含まれるアルキル基の形態(炭素数、分岐もしくは直鎖の状態など)、シクロアルキル基の形態(炭素数など)、アリール基の形態(炭素数など)、メタクリルオキシ(R=メチル)、アクリルオキシ(R=H)の別などにかかわらず、いずれも導電率を向上させるものである。
【0050】
導電性向上剤の基本的な使用方法は以下のとおりである。
【0051】
(導電性向上剤が対象とする導電成分)
本開示の導電性向上剤が対象とし得る導電成分は、任意の導電性を有する成分である。好ましくは、金属系成分および導電性炭素系成分が挙げられる。より好ましくは、金属成分、カーボンブラック、グラフェンおよびカーボンナノチューブが挙げられる。さらに好ましくは、銀およびカーボンナノチューブを挙げることができる。
【0052】
(導電材の一般製法)
(1)ポリマーマトリクスの製造方法
代表的な実施形態において、本開示のポリマーマトリクスは、モノマーを加熱することで、および/または、モノマーに特定の照度の紫外線を照射して重合させることにより調製できる。このような紫外線照射は当業者が任意に条件を設定して実施することができる。ポリマーマトリクスを調製する際に、紫外線を使用して重合させて調製した場合、煩雑な操作である溶媒を除去するための乾燥操作が不要であり、作業性に優れる。
【0053】
本開示において用いられる紫外線の波長は、その領域内であればどのような波長でもよく、目的に応じて適切なものを選択することができる。例えば、本開示において、モノマーに対して初期の効果を奏することができる限りどの波長のものでもよい。代表的には、実施例において使用される光源によって照射され得る波長のものである。具体的には150nm~400nm程度の光源が使用され、好ましくは300nm~400nmである。
【0054】
本開示で用いられる紫外線の好ましい照度は、出発物質により異なる。紫外線照射装置は特に限定されるものではなく、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライトランプ、UV無電極ランプ、ショートアークランプ、LED等が挙げられる。
【0055】
モノマーを重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤、レドックス重合開始剤、ATRP(原子移動ラジカル重合)開始剤、ICAR ATRP開始剤、ARGET ATRP開始剤、RAFT(可逆的付加-開裂連鎖移動重合)剤、NMP(ニトロキシドを介した重合)剤、高分子重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの重合開始剤のなかでは、ポリマーマトリクスに熱履歴を残さないようにする観点から、光重合開始剤が好ましい。
【0056】
光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,1’-ビイミダゾール、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(p-メトキシフェニルビニル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ジtert-ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-2-オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス〔2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニルチタニウム〕などの光ラジカル重合開始剤、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(p-メトキシフェニルビニル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4,4’-ジtert-ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどの光カチオン開環重合開始剤などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤の量は、全モノマーの100重量部あたり、通常、約0.01重量部~約20重量部であることが好ましい。
【0058】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
重合開始剤として熱重合開始剤を用いる場合、当該熱重合開始剤の量は、全モノマーの100重量部あたり、通常、約0.01重量部~約20重量部であることが好ましい。
【0060】
AIBNなどの、重合反応時に窒素(N)が発生する重合開始剤を使用した場合、結果として生じる複合材は気泡を含む場合がある。このような気泡は破断の起点となりうるため、複合材の伸長性などの性質が低下するおそれがある一方で、衝撃吸収能は向上し得ることが予測される。なお、複合材に含まれる気泡は、重合開始剤に由来するものに限定されず、発泡剤を添加することで得られるものや、溶媒の除去により得られるものなど、樹脂等に気泡を含ませることができる公知の方法により得られる気泡であってよい。
【0061】
本開示において使用可能な他の重合開始剤としては、例えば、過酸化水素と鉄(II)塩、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドックス重合開始剤、金属触媒下でハロゲン化アルキルを用いるATRP(原子移動ラジカル重合)開始剤、金属と窒素含有配位子を用いるICAR ATRP開始剤やARGET ATRP開始剤、RAFT(可逆的付加-開裂連鎖移動重合)剤、NMP(ニトロキシドを介した重合)剤、ポリジメチルシロキサンユニット含有高分子アゾ重合開始剤、ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤などの高分子重合開始剤などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
モノマーを重合させる際には、分子量を調整するために連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤は、通常、モノマーと混合することによって用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、α-メチルスチレンダイマー、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)プロピオン酸、メチル2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオネート、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸3-アジド-1-プロパノールエステル、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸ペンタフルオロフェニルエステル、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロールなどのメルカプタン基含有化合物、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、特に限定されないが、通常、全モノマーの100重量部あたり約0.01重量部~約10重量部であればよい。
【0063】
モノマーを光重合させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0064】
モノマーを光重合させる際の温度は、特に限定がなく、通常、5~100℃程度の温度であることが好ましい。モノマーを重合させるのに要する時間は、重合条件によって異なるので一概には決定することができないことから任意であるが、通常、1~20時間程度である。
【0065】
重合反応は、残存しているモノマーの量が20質量%以下になった時点で、任意に終了することができる。なお、残存しているモノマーの量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0066】
以上のようにしてモノマーを重合させることにより、ポリマーマトリクスを得ることができる。
【0067】
一実施形態において、前記モノマーが架橋剤の非存在下で重合される。別の実施形態において、前記モノマーが架橋剤の存在下で重合される。
【0068】
一実施形態において、前記ポリマーマトリクスは熱重合または光重合されたものである。別の実施形態において、前記ポリマーマトリクスは熱重合されたものである。別の実施形態において、前記ポリマーマトリクスは光重合されたものである。
【0069】
モノマーを重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、塊状重合法および溶液重合法が好ましい。
【0070】
また、モノマーの重合は、例えば、ラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、付加重合法、重縮合法、触媒重合などの方法によって行うことができる。
【0071】
モノマーを溶液重合法によって重合させる場合には、例えば、モノマーを溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌しながら重合開始剤を当該溶液に添加することによってモノマーを重合させることができるほか、重合開始剤を溶媒に溶解させ、得られた溶液を撹拌しながらモノマーを当該溶液に添加することによってモノマーを重合させることができる。溶媒は、モノマーと相溶する有機溶媒であることが好ましい。
【0072】
本開示の導電材に含まれるコポリマーは、重合開始剤として過酸化物系の開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、およびアゾビスイソブチロニトリル、ならびにそれらの類似体)を使用することによって重合されてもよい。
【0073】
重合開始剤として上記使用可能な重合開始剤を用いる場合、当該重合開始剤の量は、全モノマーの100重量部あたり、通常、約0.01重量部~約20重量部であることが好ましい。
【0074】
一実施形態では、モノマーに電子線を照射することにより、電子線重合が行われる。一実施形態では、電子線のみの照射によってモノマーを重合させることができる。電子線重合において、電子線は、一実施形態では、光重合開始剤の存在下で照射され、別の実施形態では光重合開始剤の非存在下で照射される。いずれの実施形態も、本開示の範囲内である。
【0075】
モノマーを熱重合させる際の重合反応温度および雰囲気については、特に限定がない。通常、重合反応温度は、約50℃~約120℃である。熱重合反応時の雰囲気は、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。また、モノマーの熱重合反応時間は、重合反応温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、約3~20時間である。
【0076】
(2)導電材に含まれるポリマーマトリクスの製造方法
本開示の導電材に含まれるポリマー(またはポリマーマトリクス)は、特定のモノマーを2種以上混合して、適宜の重合条件のもと、必要に応じて適宜の重合開始剤等の添加剤を用いて、重合させることにより、製造することができる。そして、このポリマーマトリクスに導電成分および任意の他の成分を混合し、加熱することによって、本開示の導電材を製造することができる。ポリマーについては、以下に、個々の成分や具体的な製造条件などについて詳述する。
【0077】
1つの局面において、本開示は、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とを含むコポリマーを製造する方法に関する。
【0078】
別の局面において、本開示は、本明細書に記載のコポリマーおよび導電成分を含む導電材を製造する方法であって、
エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とを重合することによりコポリマーを得る工程、
該コポリマーおよび導電成分を混合して、混合物を得る工程、および
該混合物を加熱して導電材を生成する工程
を包含する、方法に関する。
【0079】
代表的な実施形態において、前記エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物は、式(1)
【化4】
によって表されるモノマーであり、式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、アルキルオキシ、シクロアルキルオキシもしくはアリールオキシ基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、
前記ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物は、式(2)
【化5】
によって表されるモノマーであり、式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、1個から置換可能な数までの同一又は異なるハロゲン原子で置換されたアルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、
前記ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物は、式(3)
【化6】
により表される、第三の(メタ)アクリレートであり、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、ヒドロキシ基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。
【0080】
一実施形態は、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とを含むコポリマーを製造する方法に関する。
【0081】
一実施形態では、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と共に、架橋剤が使用される。
【0082】
一実施形態は、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物を含むコポリマーを製造する方法に関する。
【0083】
本開示の一実施形態において、前記モノマーの重合は、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、および懸濁重合法からなる群より選択される重合法にしたがって行われる。理論により拘泥されることを望むものではないが、本開示のモノマーは、連鎖重合、逐次重合、またはリビング重合により重合され得る。
【0084】
(3-1)モノマーの調製方法
本開示において使用されるエーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー、ハロゲン含有アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ含有アルキル(メタ)アクリレート、架橋剤、非置換アルキル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルモノマーは、実施例に例示される製造業者などから市販されるものであってもよく、当業者に周知の方法に従って調製してもよい。
【0085】
(3-2)光重合による製造方法
一実施形態では、本開示のポリマーマトリクスは、モノマー(複数種のモノマーを含む)を、重合開始剤の存在下、露光重合することによって1工程で得られる。
一実施形態では、本開示のポリマーマトリクスは、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー、ハロゲン基で置換されたアルキル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシ基で置換されたアルキル(メタ)アクリレートを重合開始剤の存在下、紫外線を照射することにより製造することができる。
重合開始剤の好ましい例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
本工程は、通常室温にて約2時間で行われるが、これに限定されず、0.5~3時間、もしくは0.5時間~24時間またはそれ以上の時間をかけてもよい。
【0086】
(3-3)樹脂溶液の調製方法
一実施形態では、モノマーを重合することにより得られる本開示のポリマーマトリクスを、溶媒に溶解させて、樹脂溶液を生成する。好ましい溶媒の例としては、ヘプタン、オクタン、およびリモネンなどが挙げられる。
【0087】
(3-4)導電材の調製方法
一実施形態では、導電材は、(3-3)で得た樹脂溶液を導電成分、および必要に応じて分散剤と混合し、得られた混合物を、加熱して得られる。当業者は、本明細書の記載および当該分野で公知の任意の手法を用いて、この手法以外を用いても導電材を製造することができる。
【0088】
(導電成分の説明)
本開示の導電材が対象とし得る導電成分としては、例えば、鱗片状黒鉛などの天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素系材料;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;銅、金、ニッケル、錫、アルミニウム、亜鉛、鉄、銀などの金属粒子の粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などが挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの導電成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの導電成分のなかでは、作業性および成形性に優れるとともに、柔軟性および伸長性に優れた導電性フィルムを得る観点から、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェンおよび金属粒子が好ましく、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェンおよび銀粒子がより好ましい。
【0089】
ポリマーマトリクスおよび導電成分の合計固形分における導電成分の固形分の含有率は、当該導電成分の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、作業性および成形性に優れるとともに、柔軟性および伸長性に優れた導電性フィルムを得る観点から、好ましくは1質量%以上であり、作業性および成形性に優れるとともに、柔軟性および伸長性に優れた導電性フィルムを得る観点から、好ましくは100質量%以下である。
【0090】
ポリマーマトリクスおよび導電成分の合計固形分における導電成分の固形分の含有率は、作業性および成形性に優れるとともに、柔軟性および伸長性に優れた導電性フィルムを得る観点から、導電性炭素系成分の場合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、作業性および成形性に優れるとともに、柔軟性および伸長性に優れた導電性フィルムを得る観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、さらに一層好ましくは3.5~10質量%である。一方、導電成分が金属系成分の場合は、良好な導電性を付与する観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、作業性および成形性に優れる導電性フィルムを得る観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0091】
(導電材の用途)
本開示の導電材は、例えば、アクチュエータ、産業用ロボットなどに使用されるセンサ、配線、電極、基板、発電素子、スピーカー、マイクロフォン、ノイズキャンセラ、トランスデューサ、人工筋肉、小型ポンプ、医療用器具などに好適に使用することができる導電性フィルムおよび当該導電性フィルムの原料として好適に使用することができる。
【0092】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
【0093】
(導電率向上用途)
1局面において、本開示は、導電率向上用途に関する。
【0094】
より特定すると、具体的な局面では、本開示は、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とを含む、導電体の導電率を向上させるための、組成物(導電率向上剤)または組み合わせを提供する。
【0095】
従来、本開示のように銀フィラーが多量に存在する系では、ポリマー組成は導電性に影響しないと考えていたため、十分な検討がなされていなかった。しかし、ポリマー検討の結果、フッ素化アルキルアクリレートとエーテル部分含有アクリレートとヒドロキシ含有アクリレートとを共重合した系において、従来品よりも抵抗率が低下することが確認された。さらに精査した結果、フッ素化アルキルアクリレートに含まれるフッ素原子含有量が多いほど、抵抗率が低下することも確認できた。樹脂溶解性の観点から、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(V#3F)を本系では用いることとした。
【0096】
1つの具体的な実施形態では、本開示の導電材は、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマーの1態様であるアルコキシ置換アルキルアクリレートと、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマーの1態様であるフッ素化アルキル(メタ)アクリレートと、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマーの一態様であるヒドロキシ含有アクリレートとのコポリマーおよび導電成分を含む。このようにして、前記コポリマーは、導電成分の導電性を向上することができる。
【0097】
本開示のこの技術を提供することにより、任意の導電成分の導電性を向上することができる。
【0098】
1つの好ましい実施形態において、本開示において使用されるコポリマーは、アルコキシ置換アルキルアクリレートとフッ素化アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシ含有アクリレートとのコポリマーであることが有利である。その理由としては、理論に束縛されることを望まないが、化合物と反発する効果(界面活性効果)が挙げられる。フッ素系樹脂は防汚コート剤や離型剤として用いられており、化合物と反発する効果(界面活性効果)を有している。本開示において抵抗率が低下した理由に関しても、フッ素化合物の界面活性効果により、フッ素化アルキル(メタ)アクリレートと、銀粒子とが反発したことで、銀粒子同士がより密集したことによると考えられる。加えて、コポリマーの極性等も抵抗率の低下に影響していると考えられ、これらの要因が複合的に影響し、抵抗率が低下していると考えられる。さらに、実施例の様な少量の添加量で、効果が発現したと考えられることは予想外の結果である。
【0099】
一実施形態では、導電成分は、上述した導電性向上剤と同様である。
【0100】
一実施形態では、前記エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、式(1)
【化7】
によって表される第一の(メタ)アクリレートであり、式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、
は、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基もしくはアリールオキシ基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。
【0101】
一実施形態では、Rが、アルキルオキシ基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。一実施形態では、Rが、シクロアルキルオキシ基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。一実施形態では、Rが、アリールオキシ基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。
【0102】
一実施形態では、式(1)により表される化合物が、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基もしくはアリールオキシ基で置換されたアルキル(メタ)アクリレートである。一実施形態では、式(1)により表される化合物が、アルキルオキシ基もしくはシクロアルキルオキシ基で置換されたアルキル(メタ)アクリレートである。一実施形態では、式(1)により表される化合物が、アルキルオキシ置換アルキル(メタ)アクリレートである。
【0103】
一実施形態では、前記ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、式(2)
【化8】
によって表される第二の(メタ)アクリレートであり、式中、RおよびRは、本明細書中で定義されるとおりである。
【0104】
一実施形態では、Rが、ハロゲン基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。一実施形態では、Rが、フッ素原子で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。一実施形態では、Rが、塩素原子で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。一実施形態では、Rが、臭素原子で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。
【0105】
一実施形態では、式(2)により表される化合物が、ハロアルキル(メタ)アクリレートである。
【0106】
一実施形態では、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、式(3)
【化9】
によって表される第三の(メタ)アクリレートであり、式中、RおよびRは、本明細書中で定義されるとおりである。
【0107】
一実施形態では、Rが、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基である。一実施形態では、Rが、ヒドロキシ基で置換されたシクロアルキル基である。一実施形態では、Rが、ヒドロキシ基で置換されたアリール基である。
【0108】
一実施形態では、式(3)により表される化合物が、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレートである。好ましい実施形態では、式(3)により表される化合物が、4-ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0109】
前記ヒドロキシ含有(メタ)アクリレートは、対応する適切な架橋剤とともに使用され得る。該架橋剤の例としては、イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート、デュラネートTM(旭化成社製)などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0110】
一実施形態では、前記ヒドロキシ基で置換されたアルキル(メタ)アクリレートは、必要に応じて対応する適切な架橋剤とともに使用される。一実施形態では、前記ヒドロキシ基で置換されたアルキル(メタ)アクリレートは、必要に応じて架橋剤とともに使用され、架橋されてもよい。架橋剤の例としては、ホルムアルデヒドおよびイソシアネートなどを挙げることができるが、これらに限定されない。架橋剤とともに使用されることで、バインダー樹脂の耐久性が向上し、導電材の柔軟性、および/または耐久性を向上することができる。
【0111】
一実施形態では、非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群の化合物は、式(4)
【化10】
により表される第四の(メタ)アクリレートであり、式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、非置換のアルキル、シクロアルキル、またはアリールであるが、ただし、Rはエーテル、ハロゲンおよび水酸基で置換されたアルキル、シクロアルキル、またはアリールではない。
【0112】
一実施形態では、Rは、非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは、非置換シクロアルキル基である。一実施形態では、Rは、非置換アリール基である。
【0113】
一実施形態では、Rが11個またはそれより多くの炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは11個~30個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは11個~24個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
【0114】
別の実施形態では、Rは13個またはそれより多くの炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは13個~30個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは13個~24個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
【0115】
さらに別の実施形態では、Rは、18個またはそれより多くの炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは18個~30個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは18個~24個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
【0116】
一実施形態では、式(1)により表される化合物が、2-メトキシエチルアクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレートまたは2,3-エポキシプロピルメタクリレートである。
【0117】
一実施形態では、式(1)により表される化合物が、2-メトキシエチルアクリレートである。
【0118】
一実施形態では、式(2)により表される化合物が、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートである。
【0119】
一実施形態では、式(3)により表される化合物が、4-ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0120】
一実施形態では、式(3)により表される化合物を架橋させる架橋剤としてイソシアネートが使用される。
【0121】
一実施形態では、式(4)により表される化合物が、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、またはエチルアクリレートである。
【0122】
さらに別の実施形態では、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマーは、(2-メトキシエチルアクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレートまたは2,3-エポキシプロピルメタクリレートである。
【0123】
さらに別の実施形態では、ハロゲン含有(メタ)アクリレートは、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートである。
【0124】
さらに別の実施形態では、ヒドロキシ含有(メタ)アクリレートは、4-ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0125】
別の実施形態では、非置換アルキル(メタ)アクリレートは、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、またはエチルアクリレートである。
【0126】
1つの好ましい実施形態では、式(1)により表される化合物が、2-メトキシエチルアクリレートであり、式(2)により表される化合物が、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートである。
【0127】
1つの好ましい実施形態では、式(1)により表される化合物が、2-メトキシエチルアクリレートであり、式(2)により表される化合物が、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートであり、式(3)により表される化合物が、4-ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0128】
1つの好ましい実施形態では、式(1)により表される化合物が、2-メトキシエチルアクリレートであり、式(2)により表される化合物が、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートであり、式(3)により表される化合物が、4-ヒドロキシブチルアクリレートであり、これらのアクリレートは、架橋剤とともに使用または重合される。
【0129】
一実施形態では、式(1)により表される化合物が、2-メトキシエチルアクリレートであり、式(2)により表される化合物が、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートであり、式(3)により表される化合物が、4-ヒドロキシブチルアクリレートであり、式(4)により表される化合物が、イソステアリルアクリレートである。
【0130】
1つの好ましい実施形態では、式(1)により表される化合物が、2-メトキシエチルアクリレートであり、式(2)により表される化合物が、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートであり、式(3)により表される化合物が、4-ヒドロキシブチルアクリレートであり、式(4)により表される化合物が、イソステアリルアクリレートであり、これらのアクリレートは、架橋剤とともに使用または重合される。
【0131】
一実施形態では、式(1)により表される化合物が、2-メトキシエチルアクリレートであり、式(2)により表される化合物が、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートであり、式(3)により表される化合物が、4-ヒドロキシブチルアクリレートであり、式(4)により表される化合物が、エチルアクリレートである。
【0132】
1つの好ましい実施形態では、式(1)により表される化合物が、2-メトキシエチルアクリレートであり、式(2)により表される化合物が、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートであり、式(3)により表される化合物が、4-ヒドロキシブチルアクリレートであり、式(4)により表される化合物が、エチルアクリレートであり、これらのアクリレートは、架橋剤とともに使用または重合される。
【0133】
一実施形態では、A)エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、B)ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、C)ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物との質量比は、A:B:C=20~80:80~20:0.2~2.0であり、A:B:C=25~70:70~25:0.3~1.5とでき、さらに、A:B:C=29~65:70~35:0.5~1.5とできる。さらに架橋剤を含む場合は、A:B:C:架橋剤=20~80:80~20:0.2~2.0:0.2~2.0であり、A:B:C:架橋剤=25~70:70~25:0.3~1.5:0.3~1.5とでき、さらに、A:B:C:架橋剤=29~65:70~35:0.5~1.5:0.5~1.5とできる。また、D)非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物をさらに含む場合には、A:B:C:D=20~80:80~20:0.2~2.0:10~70であり、A:B:C:D=25~70:70~25:0.3~1.5:20~60とでき、さらに、A:B:C:D=29~65:70~35:0.5~1.5:30~50とできる。さらに架橋剤を含む場合は、A:B:C:D:架橋剤=20~80:80~20:0.2~2.0::10~700.2~2.0であり、A:B:C::D架橋剤=25~70:70~25:0.3~1.5:20~60:0.3~1.5とでき、さらに、A:B:C:D:架橋剤=29~65:70~35:0.5~1.5:30~50:0.5~1.5とできる。後述するコポリマーにおける各モノマー成分群の比率に関しても同様である。
【0134】
(導電材)
別の局面では、本開示は、導電性が向上された導電材を提供する。
【0135】
1つの具体的な局面では、本開示は、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群、およびヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群を含み、必要に応じて架橋剤を含む化合物のコポリマーならびに導電成分を含む、導電材を提供する。導電材の好ましい実施形態は、本明細書に記載されている任意の実施形態またはその組み合わせを利用することができ、本明細書における(導電率向上用途)の項で記載される任意の実施形態を1つまたは複数組み合わせて適用することができる。
【0136】
(製造法)
1つの局面では、本開示は、本開示の導電材および導電性向上剤の製造方法を提供する。
【0137】
具体的な局面では、本開示は、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群、ハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群、ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群、および非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群を少なくとも一つ含み、ならびに必要に応じて架橋剤を含む化合物のホモポリマーまたはコポリマーならびに導電成分を含む導電材を製造する方法を提供する。この方法は、前記モノマーおよび重合性モノマーを重合することによりコポリマーを得る工程、該コポリマーおよび導電成分を混合して、混合物を得る工程、および該混合物を加熱して導電材を生成する工程を包含する。製造法の好ましい実施形態は、本明細書に記載されている任意の実施形態またはその組み合わせを利用することができ、本明細書における(導電率向上用途)の項で記載される任意の実施形態を1つまたは複数組み合わせて適用することができる。
【0138】
本開示の製造法における前記モノマーおよび重合性モノマーを光重合することによりコポリマーを得る工程では、代表的には、以下のような条件が好ましい:大気圧下、5℃~100℃。
【0139】
本開示の製造法におけるコポリマーおよび導電成分を混合して、混合物を得る工程では、代表的には、以下のような条件が好ましい:大気圧下、室温にて遊星式混合撹拌装置による撹拌。
【0140】
本開示の製造法における混合物を加熱して導電材を生成する工程では、代表的には、以下のような条件が好ましい:大気圧下、120℃~150℃。
【0141】
(コポリマー)
本開示は、本開示の技術を用いるコポリマーを提供する。
【0142】
具体的な局面では、本開示は、エーテル部分含有(メタ)アクリレートとハロゲン含有(メタ)アクリレートとヒドロキシ含有(メタ)アクリレートのコポリマーである。
【0143】
代表的な実施例において、前記エーテル部分含有(メタ)アクリレートは、式(1)
【化11】
によって表されるモノマーであり、
前記ハロゲン含有(メタ)アクリレートは、式(2)
【化12】
によって表されるモノマーであり、
前記ヒドロキシ含有(メタ)アクリレートは、式(3)
【化13】
によって表されるモノマーであり、
式中、R、R、R、R、R、R、R、およびRは、本明細書中で定義されるとおりである。
【0144】
一実施形態において、Rは、1個またはそれより多くのヒドロキシ基で置換されたアルキル基である。
【0145】
一実施形態において、前記コポリマーは、アルコキシ置換アルキル(メタ)アクリレートと、ハロアルキル(メタ)アクリレートとを含むコポリマーである。
【0146】
前記ヒドロキシ含有(メタ)アクリレートは、コポリマー化の際、架橋剤と共に使用され得る。
【0147】
前記コポリマーは、例えば、導電材のマトリクスとして使用される。
【0148】
一実施形態では、前記コポリマーが、式(1)により表される前記エーテル部分含有(メタ)アクリレートと、式(2)により表される前記ハロゲン含有(メタ)アクリレートと、式(3)により表されるヒドロキシ含有(メタ)アクリレートとのコポリマーである。
【0149】
一実施形態において、前記コポリマーは、アルコキシ置換アルキル(メタ)アクリレートと、ハロアルキル(メタ)アクリレートと、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーである。
【0150】
本開示はまた、エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマーとハロゲン含有基で置換されたアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマーとのコポリマーを製造する方法に関しており、
該エーテル部分含有(メタ)アクリルモノマーは、式(1)
【化14】
によって表され、
式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基もしくはアリールオキシ基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、
該ハロゲン含有基で置換されたアルキル(メタ)アクリレートは、式(2)
【化15】
によって表され、
式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、
は、1個から置換可能な数までの同一又は異なるハロゲン原子で置換されたアルキル、シクロアルキル、またはアリールであるが、ただし、Rは、エーテル基を含むアルキル、シクロアルキル、またはアリールではなく、
該ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマーは、式(3)、
【化16】
によって表され、
式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、ヒドロキシ基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであるが、ただし、Rはエーテルおよびハロゲンで置換されたアルキル、シクロアルキル、またはアリールではなく、該ヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマーは、必要に応じて架橋剤を用いて架橋されてもよい。このコポリマーは、例えば、導電材のマトリクスとして使用される。
【0151】
一実施形態において、本開示は、前記コポリマーに非置換アルキル(メタ)アクリレートを含む、コポリマーを製造する方法に関しており、
前記非置換アルキル(メタ)アクリレートは、式(4)
【化17】
により表される(メタ)アクリレートであり、式中、RおよびRは、本明細書中で定義されるとおりである。
【0152】
一実施形態では、Rは、11個またはそれより多くの炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは11個~30個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは11個~24個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
【0153】
一実施形態では、Rは、13個またはそれより多くの炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは13個~30個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは13個~24個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
【0154】
一実施形態では、Rは、18個またはそれより多くの炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは18個~30個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。一実施形態では、Rは18個~24個の炭素原子を有する非置換アルキル基である。
【0155】
本開示は、マトリクス用途を提供する。
1つの局面では、本開示は、式(1)のエーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群、式(2)のハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群、式(3)のヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群、および式(4)の非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群を少なくとも一つ含み、ならびに必要に応じて架橋剤を含む化合物のコポリマーを含む、
導電成分を含む導電材中のマトリクスとして使用するための組成物を提供する。
【0156】
(混合物)
本開示はまた、混合物を提供する。
【0157】
1つの局面では、本開示は、物質としての混合物(すなわち、コポリマーと金属系成分とを含む組成物)を提供する。具体的には、本開示は、前記コポリマーおよび金属の混合物を提供する。
【0158】
代表的な実施形態において、前記混合物は、式(1)のエーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、式(2)のハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とのコポリマー、および金属の混合物である。
【0159】
一実施形態において、前記混合物は、式(1)のエーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、式(2)のハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、式(3)のヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物とのコポリマー、および金属の混合物である。
【0160】
一実施形態において、前記混合物は、式(1)のエーテル部分含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、式(2)のハロゲン含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、式(3)のヒドロキシ含有(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物と、式(4)の非置換アルキル(メタ)アクリルモノマー成分群の少なくとも一種の化合物のコポリマー、および金属の混合物である。
【0161】
一実施形態では、金属は、銀、銅、金、アルミニウム、亜鉛、錫、ニッケル、および/または鉄を含む。好ましい実施形態では、金属は銀である。理論に束縛されることを望まないが、銀は、導電性に優れ、耐性もよいからである。
【0162】
(注記)
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0163】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0164】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0165】
以下に実施例を記載する。以下の実施例で用いる生物の取り扱いは、必要な場合、監督官庁で規定される基準を遵守した。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、など)の同等品でも代用可能である。
【0166】
(実施例A:ポリマーマトリクスの調製)
本実施例では、ポリマーマトリクスを調製した。
【0167】
(実施例1)
モノマーAとして2-メトキシエチルアクリレート(62g、大阪有機化学工業株式会社製、商品名 2-MTA)、モノマーBとして2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(36g、大阪有機化学工業社製、商品名ビスコートV#3F)、モノマーCとして4-ヒドロキシブチルアクリレート(1g、大阪有機化学工業社製、商品名ビスコート4-HBA)、重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(1g、BASF社製、商品名Irgacure(登録商標) TPO)、及び連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー(1g、日油社製、商品名ノフマーMSD)を混合することにより、重合開始剤を含有するモノマー成分を得た。得られたモノマー成分を透明ガラス製の成形型(縦:100mm、横:100mm、深さ:2mm)内に注入した後、当該モノマー成分に照射線量が0.36mW/cmとなるように紫外線を照射し、モノマー成分を2時間塊状重合することによって重合体を得た。
【0168】
導電材前駆体の調製
得られた重合体 (2.50g)を、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(7.50g)に溶解して樹脂溶液を得た。
上記樹脂溶液(4.00g)に対し、銀フィラー(4.00g、福田金属箔粉工業社製、商品名 AgC-A)、架橋剤(0.010g、旭化成社製、商品名 MF-K60B)、分散剤として2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール(0.10g)、レオロジー調整剤(0.010g、ビッグケミー・ジャパン社製、商品名 RHEOBYK-410)をクラボウ社製マゼルスターにて混合し、導電材前駆体を得た。
【0169】
(塗膜形成)
得られた導電材前駆体を、剥離フィルムとして離形ポリエチレンテレフタレートフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名セパレーターSP-PET PET-01-Bu)に塗工して、塗膜を形成した。
【0170】
(導電性フィルム)
得られた塗膜について、オーブンにて120℃で30分間加熱し、およそ40μm厚の導電性フィルムを得た。
【0171】
(実施例2~4)
モノマーA、モノマーB、モノマーCと架橋剤の比率を、下記の表に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂溶液を得た。
【0172】
(実施例5)
新たにモノマーDとしてエチルアクリレート(EA、31g)を加えて、モノマーAとして2-メトキシエチルアクリレート(31g、大阪有機化学工業株式会社製、商品名 2-MTA)、モノマーBとして2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(36g、大阪有機化学工業社製、商品名ビスコートV#3F)、モノマーCとして4-ヒドロキシブチルアクリレート(1g、大阪有機化学工業社製、商品名ビスコート4-HBA)、架橋剤としてイソシアネート(1g)及び重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(1g、BASF社製、商品名Irgacure(登録商標) TPO)を上記の量で混合するように変更した以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂溶液を得た。
【0173】
(比較例1および2)
モノマーとして、2-MTA(モノマーA)及びV#3F(モノマーB)のみを用いて対応する重合体を得た。使用したモノマーA、及びモノマーBの組成の重量部は、表1に記載のとおりである。
【0174】
(比較例3)
同様に、V#3F(モノマーB)、4-HBA(モノマーC)及びイソシアネート(架橋剤)を用いて対応する重合体を得た。使用したモノマーB、モノマーCと架橋剤の組成の重量部は、表1に記載のとおりである。
【0175】
(比較例4)
同様に、V#3F(モノマーB)、4-HBA(モノマーC)、イソシアネート(架橋剤)及びEA(モノマーD)を用いて対応する重合体を得た。使用したモノマーB、モノマーCと架橋剤の組成の重量部は、表1に記載のとおりである。
【0176】
(実施例B:導電性フィルムの調製)
本実施例では、導電性フィルムを調製した。
【0177】
(導電材前駆体)
実施例Aで得られた各アクリル樹脂溶液(6.00g)に銀フィラー(7.20g、福田金属箔粉工業社製、商品名 AgC-A)、および分散剤として2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール(0.10g)をクラボウ社製マゼルスターにて混合して、導電材前駆体を得た。
【0178】
(塗膜形成)
得られた導電材前駆体を剥離フィルムとして離形ポリエチレンテレフタレートフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名セパレーターSP-PET PET-01-Bu)に塗工して、塗膜を形成した。
【0179】
(導電性フィルム)
得られた塗膜について、オーブンにて120℃で30分間加熱し、およそ40μm厚の導電性フィルムを得た。
【0180】
(結果)
実施例AおよびBに記載の手法に従って、導電性フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【表1】
【0181】
(実施例C:体積抵抗率の測定)
実施例Bで得られた導電性フィルムを縦0.5cm、横2.00cmに切り出し、ロレスタGP(三菱化学アナリテック社製)を用いて4端子法で測定した。
【0182】
(結果)
結果を表1に示す。
【0183】
(実施例D:抵抗値変化の確認)
本実施例では、抵抗値変化を確認した。
【0184】
(抵抗値の測定)
上記で得られた導電性フィルムを縦0.5cm、横2.00cmに切り出し、電極間距離を1.00cmに固定したデジタルマルチメータ〔三和電機計器株式会社製 商品名PC773〕にて伸張前抵抗値(ΩA)を測定した。
【0185】
(抵抗値変化)
次いで、導電性フィルムをマルチメータ電極上に固定したまま、電極間距離を2.00cmとし、その状態での抵抗値(ΩB)を測定した。抵抗値変化を、以下のように算出した。
抵抗値変化=ΩB/ΩA
【0186】
(結果)
結果は表1に示す。抵抗値変化は小さい(1に近い)ほど、形状変化の影響が小さいことを表すので、耐久性が高いことを意味する。したがって、抵抗値変化を耐久性としても評価することができる。
【0187】
(実施例E:柔軟性の測定)
上記実施例で得られた導電性フィルムを、試験片(ダンベル状7号形)に切り出した。この試験片について、引張試験機(エー・アンド・デイ社製: 製品名TENSILON RTG-1310)を用いて50mm/minの引張速度で柔軟性について測定した。得られた値から、ヤング率を算出した。
【0188】
(結果)
結果を表1に示す。
【0189】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本開示の導電材向上剤を用いて、効率の良い導電材を提供することができ、導電材を必要とする産業において利用可能である。