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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121244
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】補強構造及び補強方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20220812BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20220812BHJP
   E21D 13/02 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/06 301D
E21D13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018500
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】森田 大介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健治
【テーマコード(参考)】
2D054
2D155
【Fターム(参考)】
2D054AA03
2D054AA04
2D054AA05
2D054AC01
2D155AA02
2D155AA10
2D155CA01
2D155DA11
2D155KB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トンネルの変形をより確実に抑えることができる補強構造及び補強方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る補強構造は、トンネルの軸方向に所定の間隔で配置されると共に、トンネルの周方向に延在する主桁11を有するトンネル覆工体の補強構造であって、主桁11に接続される支持部材20と、支持部材20に接続される補強部材30と、を備え、支持部材20は、主桁11に溶接される接続部21cと、接続部21cから接続部21cに交差する方向に延びる連結部22と、接続部21c及び連結部22が固定されていると共に、補強部材30に接続される継手部23と、を有し、補強部材30によってトンネル覆工体の主桁11が支持される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの軸方向に所定の間隔で配置されると共に、前記トンネルの周方向に延在する主桁を有するトンネル覆工体の補強構造であって、
前記主桁に接続される支持部材と、
前記支持部材に接続される補強部材と、
を備え、
前記支持部材は、
前記主桁に溶接される接続部と、
前記接続部から前記接続部に交差する方向に延びる連結部と、
前記接続部及び前記連結部が固定されていると共に、前記補強部材に接続される継手部と、を有し、
前記補強部材によって前記トンネル覆工体の前記主桁が支持される、
補強構造。
【請求項2】
前記接続部は、前記主桁から延びると共に上下一対に並ぶフランジに設けられ、
前記連結部は、一対の前記フランジを接続するウェブである、
請求項1に記載の補強構造。
【請求項3】
前記継手部は、前記接続部及び前記連結部の前記主桁との反対側の端部に固定される継手板である、
請求項1又は2に記載の補強構造。
【請求項4】
前記支持部材は、前記主桁が挿し込まれる凹部を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の補強構造。
【請求項5】
トンネルの軸方向に所定の間隔で配置されると共に、前記トンネルの周方向に延在する主桁と、前記主桁に支持されるスキンプレートを有するトンネル覆工体の補強方法であって、
前記主桁に支持部材を接続する工程と、
前記支持部材に補強部材を接続して前記主桁を支持する工程と、
前記スキンプレートを撤去する工程と、
を備え、
前記支持部材は、前記主桁に溶接される接続部と、前記接続部から前記接続部に交差する方向に延びる連結部と、前記接続部及び前記連結部が固定されていると共に前記補強部材に接続される継手部と、を有する、
補強方法。
【請求項6】
先行トンネルに対し後に施工される後行トンネルであって、前記後行トンネルの軸方向に所定の間隔で配置されると共に、前記後行トンネルの周方向に延在する主桁と前記主桁に支持されるスキンプレートを有する後行トンネル覆工体の補強方法であって、
前記後行トンネル覆工体の前記主桁に支持部材を接続する工程と、
前記支持部材に補強部材の一端を接続する工程と、
前記補強部材の他端を、前記先行トンネルの先行トンネル覆工体、又は前記先行トンネル内に設置した被支持部材と接続して、前記主桁を支持する工程と、
前記後行トンネルの前記スキンプレートを撤去する工程と、
を備え、
前記支持部材は、前記主桁に溶接される接続部と、前記接続部から前記接続部に交差する方向に延びる連結部と、前記接続部及び前記連結部が固定されていると共に前記補強部材に接続される継手部と、を有する、
補強方法。
【請求項7】
前記後行トンネルは、前記先行トンネル覆工体の一部を切削しながら構築されるものであって、
切削された前記先行トンネル覆工体を支持する先行支持構造を設ける工程を備える、
請求項6に記載の補強方法。
【請求項8】
前記支持部材を接続する工程では、前記支持部材に前記主桁が挿し込まれることによって前記主桁に前記支持部材が支持される、
請求項5~7のいずれか一項に記載の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トンネル覆工体の補強構造及び補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地下構造物の施工方法が記載されている。この地下構造物は、本線シールドトンネルと支線シールドトンネルとの合流領域に施工された大断面トンネルである。地下構造物の内部には、地下構造物の軸線方向に延びる地下空洞が形成されている。地下空洞の断面積は、本線シールドトンネル及び支線シールドトンネルの外形に沿うように、地下構造物の一方端部から他方端部に向けて小さくなっている。地下構造物は、複数のシールドトンネルを連結してなる地下空洞の外郭躯体を備える。外郭躯体では、周方向に隣り合うシールドトンネルを互いに連結する連結路が構築されており、シールドトンネル及び連結路には鉄筋コンクリートが打設されている。複数のシールドトンネルは、外郭躯体において一方端部から他方端部まで延伸される全長シールドトンネルと、全長シールドトンネルよりも短い短尺シールドトンネルにより構成される。
【0003】
この地下構造物の施工方法では、地下構造物が構築される予定の場所である地下構造物予定領域の一方端部と他方端部との間において複数のシールドトンネルを周方向に構築し、複数のシールドトンネルを連結してなる外郭躯体を構築した後に、外郭躯体の内周側領域を掘削して地下空洞を形成する。そして、全長シールドトンネルを一方端部から他方端部まで延伸し、短尺シールドトンネルを一方端部から他方端部まで延伸しないように構築し、更に、外郭躯体を、その断面積が一方端部から他方端部に向けて小さくなるように構築する。
【0004】
特許文献2には、大断面トンネルの構築方法が記載されている。大断面トンネルは、本線トンネル及び支線トンネルを内包可能な大断面覆工体によって形成されている。大断面覆工体は、円筒状に並設された複数本のトンネルと、各トンネルに充填された中詰コンクリートの硬化体と、複数本のトンネルを跨ぐように配置された主筋とを備える。複数本のトンネルは、間隔をあけて形成された複数本の先行トンネルと、隣り合う先行トンネルの間に形成された後行トンネルとを含む。
【0005】
先行トンネル内には先行鉄筋及び先行中詰コンクリートが設けられており、後行トンネル内には後行鉄筋及び後行中詰コンクリートが設けられている。隣り合う先行トンネル及び後行トンネルは、一部が重なった状態で並設されている。主筋は、先行トンネル及び後行トンネルを周方向に貫通しており、大断面トンネルの径方向内側と径方向外側のそれぞれに配置されている。一対の主筋の間には、主筋に交差する方向に延びる複数のせん断補強筋が配筋されている。
【0006】
大断面トンネルの構築方法では、複数本の先行トンネルを並設し、各先行トンネル内に先行鉄筋を配筋した後に各先行トンネル内に先行中詰コンクリートを充填する。そして、互いに隣り合う先行トンネルの間に後行トンネルを構築し、後行トンネル内に後行鉄筋を配筋する。後行トンネルの構築では、隣接する先行トンネルの断面の一部を切削すると共に、後行トンネルの外面が先行中詰コンクリートに当接するように後行トンネルを構築する。より具体的には、先行トンネルと後行トンネルとの接合部において後行トンネルのスキンプレートの一部を撤去し、後行トンネルの鋼製セグメントの主桁と先行中詰コンクリートとの間にスペーサを介設する。このスペーサを介して後行トンネルの外面を先行中詰コンクリートに当接させることにより、後行トンネルの変形の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-3398号公報
【特許文献2】特開2018-12945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したトンネル覆工体では、鋼製セグメントの主桁とコンクリートとの間にスペーサ等の部材を介設することによってトンネルの変形の抑制を図っている。しかしながら、スペーサは主桁とコンクリートの間に設けられるので、外力が付与されたときに当該外力を適切に主桁に伝達できないことが懸念される。従って、外力が付与されたときに、外力を主桁に適切に伝達してトンネルの変形をより確実に抑えることが求められる。
【0009】
本開示は、トンネルの変形をより確実に抑えることができる補強構造及び補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る補強構造は、トンネルの軸方向に所定の間隔で配置されると共に、トンネルの周方向に延在する主桁を有するトンネル覆工体の補強構造であって、主桁に接続される支持部材と、支持部材に接続される補強部材と、を備え、支持部材は、主桁に溶接される接続部と、接続部から接続部に交差する方向に延びる連結部と、接続部及び連結部が固定されていると共に、補強部材に接続される継手部と、を有し、補強部材によってトンネル覆工体の主桁が支持される。
【0011】
この補強構造では、支持部材を介して外力を直接主桁に伝達できるので、外力を主桁に適切に伝達してトンネルの変形を確実に抑えることができる。また、支持部材は、主桁に接続される接続部と、接続部に交差する方向に延びる連結部と、接続部及び連結部に固定される継手部とを備え、接続部は主桁に溶接されると共に継手部は補強部材に接続される。従って、接続部、連結部及び継手部によって支持部材の強度を高めることができるので、外力を適切に主桁に伝達できると共にトンネルの変形をより確実に抑制することができる。
【0012】
接続部は、主桁から延びると共に上下一対に並ぶフランジに設けられ、連結部は、一対のフランジを接続するウェブであってもよい。この場合、H形鋼等の形鋼を支持部材として用いることができるので、汎用性が高い支持部材とすることが可能となる。
【0013】
継手部は、接続部及び連結部の主桁との反対側の端部に固定される継手板であってもよい。この場合、補強部材及び支持部材を介した主桁への外力の伝達をより直接的に行ってより強固な補強構造とすることができる。
【0014】
支持部材は、主桁が挿し込まれる凹部を有してもよい。この場合、支持部材を主桁に容易に取り付けることができるので、トンネル施工の施工性を向上させることができる。
【0015】
本開示の一側面に係る補強方法は、トンネルの軸方向に所定の間隔で配置されると共に、トンネルの周方向に延在する主桁と、主桁に支持されるスキンプレートを有するトンネル覆工体の補強方法であって、主桁に支持部材を接続する工程と、支持部材に補強部材を接続して主桁を支持する工程と、スキンプレートを撤去する工程と、を備え、支持部材は、主桁に溶接される接続部と、接続部から接続部に交差する方向に延びる連結部と、接続部及び連結部が固定されていると共に補強部材に接続される継手部と、を有する。
【0016】
この補強方法では、支持部材を介して外力を直接主桁に伝達できるので、外力を主桁に適切に伝達してトンネルの変形を確実に抑えることができる。支持部材は、主桁に接続される接続部と、接続部に交差する方向に延びる連結部と、接続部及び連結部に固定される継手部とを備え、接続部は主桁に溶接されると共に継手部は補強部材に接続される。従って、接続部、連結部及び継手部によって支持部材の強度を高めることができるので、外力を適切に主桁に伝達できると共にトンネルの変形をより確実に抑制することができる。
【0017】
本開示の別の側面に係る補強方法は、先行トンネルに対し後に施工される後行トンネルであって、後行トンネルの軸方向に所定の間隔で配置されると共に、後行トンネルの周方向に延在する主桁と、主桁に支持されるスキンプレートを有する後行トンネル覆工体の補強方法であって、後行トンネル覆工体の主桁に支持部材を接続する工程と、支持部材に補強部材の一端を接続する工程と、補強部材の他端を、先行トンネルの先行トンネル覆工体、又は先行トンネル内に設置した被支持部材と接続して、主桁を支持する工程と、後行トンネルのスキンプレートを撤去する工程と、を備え、支持部材は、主桁に溶接される接続部と、接続部から接続部に交差する方向に延びる連結部と、接続部及び連結部が固定されていると共に補強部材に接続される継手部と、を有する。
【0018】
この補強方法では、補強部材及び支持部材を介して外力が主桁に伝達されるので、外力に主桁を適切に伝達してトンネルの変形を確実に抑制することができる。また、支持部材は、前述と同様、主桁に接続される接続部、連結部及び継手部を有し、接続部が主桁に溶接されると共に継手部が補強部材に接続される。従って、接続部、連結部及び継手部によって外力を適切に主桁に伝達してトンネルの変形をより確実に抑制することができる。
【0019】
後行トンネルは、先行トンネル覆工体の一部を切削しながら構築されるものであって、切削された先行トンネル覆工体を支持する先行支持構造を設ける工程を備えてもよい。この場合、先行トンネル覆工体の切削された部分を先行支持構造によって支持することができる。
【0020】
支持部材を接続する工程では、支持部材に主桁が挿し込まれることによって主桁に支持部材が設置されてもよい。この場合、主桁に支持部材を挿し込むことによって支持部材の設置を行えるので、支持部材を容易に主桁に取り付けることができる。よって、トンネル施工の施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、トンネルの変形をより確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係るトンネル覆工体の補強構造を模式的に示す断面図である。
図2】トンネル覆工体の主桁、支持部材及び補強部材を示す断面図である。
図3図2のA-A線に沿って見た矢視図である。
図4】第2実施形態に係る先行トンネル覆工体及び後行トンネル覆工体の補強構造を模式的に示す断面図である。
図5図4の後行トンネル覆工体の主桁、支持部材及び補強部材を示す断面図である。
図6】実施形態に係る先行トンネル覆工体及び後行トンネル覆工体の補強方法の工程を示す図である。
図7図6の続きの工程を示す図である。
図8図7の続きの工程を示す図である。
図9図8の続きの工程を示す図である。
図10図9の続きの工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る補強構造及び補強方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0024】
(第1実施形態)
本実施形態に係る補強構造1及び補強方法は、例えば、2体のトンネル覆工体のトンネル間補強を行う補強構造及び補強方法である。一例としての補強構造1は、地下に設けられた2体のトンネル覆工体の切拡げ構造である。すなわち、補強構造1は、2体のトンネル覆工体の切開き躯体を構成する。本実施形態に係る補強方法は、2体のトンネル覆工体の切拡げ方法であって、例えば、2体のトンネル覆工体の切開き施工において実行される。
【0025】
例えば、補強構造1は、2体のトンネル覆工体の一方である先行トンネル覆工体2Aと、2体のトンネル覆工体の他方である後行トンネル覆工体2Bとの間に介在した状態で先行トンネル覆工体2A及び後行トンネル覆工体2Bを補強する。先行トンネル覆工体2A及び後行トンネル覆工体2Bは、先行トンネル覆工体2A及び後行トンネル覆工体2Bが互いに対向する対向方向D4に沿って並んでいる。先行トンネル覆工体2A及び後行トンネル覆工体2Bのそれぞれは、例えば、シールド掘進工法又はシールド推進工法によって施工された外郭躯体を含むシールドトンネルである。
【0026】
シールドトンネルでは、シールド掘進機が地中を掘進しながら当該シールド掘進機の後方でトンネルの壁面となるセグメント10が組み立てられる。シールド掘進機を掘進して組み立てられたセグメント10は、先行トンネル覆工体2A(先行トンネル)及び後行トンネル覆工体2B(後行トンネル)のそれぞれの外郭となる。以下では、先行トンネル覆工体2Aと後行トンネル覆工体2Bを識別する必要がないときには、先行トンネル覆工体2A及び後行トンネル覆工体2Bをまとめてトンネル覆工体2として説明する。
【0027】
例えば、トンネル覆工体2には、トンネル内部補強用支保工4が設けられる。一例として、トンネル内部補強用支保工4は、鉛直方向D1に延びる第1支保工4bと、第1支保工4bの上端部から先行トンネル覆工体2A及び後行トンネル覆工体2Bが互いに対向する対向領域Aに向かって斜め下方に延びる第2支保工4cとを含む。第1支保工4bは、トンネル覆工体2の内周面Sに設置される一対の支持部4dと、一対の支持部4dを互いに接続する棒状部4fとを有する。第2支保工4cは、トンネル覆工体2の内周面Sにおける対向領域Aの隣接位置に設けられる支持部4gと、支持部4d及び支持部4gを互いに接続する棒状部4hとを有する。しかしながら、トンネル内部補強用支保工4の構成は、上記の第1支保工4b及び第2支保工4cの例に限られず適宜変更可能である。
【0028】
例えば、トンネル覆工体2は、複数のセグメント10を含む。複数のセグメント10がトンネルの軸方向D2に沿って連結されることによってトンネルが構築される。セグメント10は、主桁11と、スキンプレート12と、複数の縦リブ13(図2参照)とを備える。なお、図1では、トンネル覆工体2の全体の理解の容易化のため、セグメント10の図示を簡略化している。
【0029】
補強構造1は、主桁11に接続される支持部材20と、支持部材20に接続される補強部材30とを備える。支持部材20は、トンネル覆工体2の外郭を支持する部材であって、トンネル覆工体2と補強部材30の間に介在する。支持部材20については後に詳述する。補強部材30は、例えば、一対のトンネル覆工体2の間に介在して一対のトンネル覆工体2を補強する突っ張り材として機能する。具体的には、補強部材30は、先行トンネル覆工体2Aに接続する支持部材20と、後行トンネル覆工体2Bに接続する支持部材20とを互いに接続して支持する。
【0030】
例えば、補強構造1は、鉛直方向D1に沿って並ぶ複数の補強部材30を備える。補強部材30は、例えば、地山の掘削に伴って徐々に設置される部材である。すなわち、先行トンネル覆工体2Aと後行トンネル覆工体2Bの間の地山の掘削に伴って上側に位置する補強部材30が設置され、更に、補強部材30の下方の地山が掘削された後に下側の補強部材30が設置される。図1の例では、トンネル覆工体2の上側、下側、及び鉛直方向D1の中央、のそれぞれに補強部材30が設置されている。一例として、トンネル覆工体2の上側に2本、トンネル覆工体2の下側に1本、トンネル覆工体2の鉛直方向D1の中央に1本、の補強部材30がそれぞれ設置されている。
【0031】
補強部材30は、対向方向D4に延在する切梁(中間部材)31と、一対の切梁31の間に介在するジャッキ32と、一対の支持部材20のそれぞれに連結された腹起し33とを有する。腹起し33は、支持部材20と切梁31の間において軸方向D2に延在して、トンネル覆工体2から作用する圧力を切梁31に伝達している。切梁31は、腹起し33とジャッキ32の間において対向方向D4に延在している。ジャッキ32は、油圧ジャッキであってもよいし、キリンジャッキであってもよく、ジャッキ32の種類は特に限定されない。ジャッキ32は、先行トンネル覆工体2Aに向かって延びる切梁31と、後行トンネル覆工体2Bに向かって延びる切梁31との間において、各切梁31を対向方向D4に支持している伸縮自在な部材である。支持部材20及び補強部材30はコンクリートに埋設され、例えば、断面視コの字状の構造物Bを構成する。
【0032】
図2は、セグメント10、支持部材20、及び補強部材30の一部を拡大した側断面図である。図3は、図2のA-Aに沿った矢視図である。図2及び図3に示されるように、主桁11は、トンネル覆工体2の周方向D3に延びる鋼製主桁である。スキンプレート12は、トンネル覆工体2の外周面を構成する部材である。スキンプレート12は、主桁11の外周側に連結されて、トンネル覆工体2と地山とを区分する。
【0033】
スキンプレート12は、例えば、円弧状断面を有する曲板状の鋼材によって構成されており、トンネル覆工体2と地山とを区分する隔壁として機能する。支持部材20が設けられる部位のスキンプレート12は、支持部材20が設けられる前に予め切除され撤去されている。図3では、切除されたスキンプレート12を2点鎖線で示している。主桁11は、例えば、軸方向D2に沿って並ぶ中主桁11A及び外主桁11Bを含んでいる。主桁11は、トンネルの周方向D3、及びトンネルの径方向に延在すると共に軸方向D2に板厚を有する板状部11bを有する。縦リブ13は、トンネルの軸方向D2、及びトンネルの径方向に延在すると共に周方向D3に板厚を有するリブであって、周方向D3に沿って複数の縦リブ13が並ぶように配置されている。
【0034】
支持部材20は、主桁11に接合される接合部21と、接合部21から延びる連結部22と、補強部材30に連結される継手部23を備える。連結部22は、継手部23に固定されている。接合部21は、主桁11に接続される接続部21cを有する。例えば、接続部21cは、上下一対に並ぶフランジの一部であり、連結部22は上下一対に並ぶフランジの接続部21c以外の他部と当該一対のフランジを連結するウェブである。
【0035】
接続部21cは、例えば、板状を呈する部材の一部に構成される。一例として、板状を呈する部材は、軸方向D2及び対向方向D4に延びると共に鉛直方向D1に板厚を有する。接続部21cは、例えば、主桁11に対向する端面21bに設けられる。接続部21cは、例えば、主桁11が挿し込まれる凹部(凹形状)である。当該凹部に主桁11の板状部11bが挿し込まれた状態で主桁11に支持部材20が溶接される。この場合、主桁11及び支持部材20の接続構造をねじれ等に強い構造とすることができ、更に、主桁11に対する接続部21cの接続を挿し込みによって容易に行うことができる。一例として、接続部21cは、端面21bの軸方向D2の中央において対向方向D4に窪んでいる。しかしながら、接続部の態様は、凹部である接続部21cに限られない。例えば、接続部はフランジ形状の貫通孔を有する鋼材とボルトナットからなり、主桁11と支持部材20とを接続するものであればよく、接続部の態様は適宜変更可能である。
【0036】
連結部22は、連結部22は、例えば、板状を呈する。連結部22は、鉛直方向D1及び対向方向D4の双方に延在すると共に軸方向D2に板厚を有する。連結部22は主桁11に対向する端面22bを有し、端面22bは主桁11に沿って延在している。図2の例では、端面22bは主桁11に沿って斜めに延在している。
【0037】
継手部23は、支持部材20と補強部材30とを互いに接続する継ぎ手として機能する継手板である。継手部23は、接続部21c及び連結部22の主桁11との反対側に位置する。継手部23は、鉛直方向D1及び軸方向D2の双方に延在すると共に対向方向D4に板厚を有する。例えば、継手部23は、連結部22に溶接によって固定されている。継手部23は、例えば、ボルトナット固定部材B1によって補強部材30(腹起し33)に固定される。
【0038】
腹起し33は、例えば、一対のフランジ33bとウェブ33cとを備える形鋼(一例としてH形鋼)である。一対のフランジ33bは対向方向D4に並んでおり、ウェブ33cは一対のフランジ33bを互いに接続する。フランジ33bは、鉛直方向D1及び軸方向D2の双方に延在すると共に対向方向D4に板厚を有する。ウェブ33cは、軸方向D2及び対向方向D4の双方に延在すると共に鉛直方向D1に板厚を有する。
【0039】
一対のフランジ33bのうち、主桁11側に位置するフランジ33bに継手部23がボルトナット固定部材B1によって接合されている。腹起し33は、例えば、スティフナー33dを備える。スティフナー33dはL形状を呈する。スティフナー33dは、フランジ33bの内面に接触する第1面部33fと、第1面部33fから折れ曲がると共にウェブ33cに接触する第2面部33gとを有する。
【0040】
スティフナー33dは、その第1面部33fがボルトナット固定部材B2を介してフランジ33bに接合されている。例えば、腹起し33は複数のスティフナー33dを備える。各スティフナー33dは、支持部材20の対向方向D4の延長上、及び切梁31の対向方向D4の延長上、のそれぞれに接合されている。このように腹起し33がスティフナー33dを備えることによって、腹起し33の剛性を高めることができる。
【0041】
補強部材30は、例えば、切梁31を腹起し33に接合する接合板34を備える。接合板34は、切梁31の対向方向D4の端部に溶接固定されている。接合板34は、鉛直方向D1及び軸方向D2の双方に延在すると共に、対向方向D4に板厚を有する。接合板34は、腹起し33のフランジ33bにボルトナット固定部材B3を介して接合されている。例えば、切梁31の軸方向D2の位置は、支持部材20の軸方向D2の位置からずれている。
【0042】
切梁31の軸方向D2の位置は、支持部材20の軸方向D2の位置に隣接している。切梁31は、一対のフランジ31bとウェブ31cとを備える形鋼(一例としてH形鋼)である。一対のフランジ31bは鉛直方向D1に並んでおり、ウェブ31cは一対のフランジ31bを互いに接続する。フランジ31bは、軸方向D2及び対向方向D4の双方に延在すると共に鉛直方向D1に板厚を有する。ウェブ31cは、鉛直方向D1及び対向方向D4の双方に延在すると共に軸方向D2に板厚を有する。フランジ31b及びウェブ31cのそれぞれが接合板34を介してボルトナット固定部材B3によって腹起し33に接合されている。
【0043】
次に、本実施形態に係る補強方法について説明する。まず、図1に示されるように、先行トンネル覆工体2Aを構築する(先行トンネル覆工体を構築する工程)。このとき、トンネルの施工予定領域において軸方向D2に延伸する先行トンネル覆工体2Aを構築する。先行トンネル覆工体2Aの構築ではシールド掘進機が用いられ、シールド掘進機によって地山を掘進しつつ先行トンネル覆工体2Aが構築される。
【0044】
次に、後行トンネル覆工体2Bを構築する(後行トンネル覆工体を構築する工程)。このとき、トンネルの施工予定領域における先行トンネル覆工体2Aの隣接位置に、軸方向D2に延伸する後行トンネル覆工体2Bを構築する。後行トンネル覆工体2Bの構築でもシールド掘進機が用いられ、シールド掘進機によって地山を掘進しつつ後行トンネル覆工体2Bが構築される。
【0045】
続いて、図2及び図3に示されるように、トンネル覆工体2(例えば、後行トンネル覆工体2B)の主桁11に支持部材20を接続する。具体的には、セグメント10のスキンプレート12の一部を切除して切除したスキンプレート12を撤去する(スキンプレートを撤去する工程)。そして、主桁11に支持部材20の接続部21cを接続する(支持部材を接続する工程)。具体的には、主桁11の板状部11bを支持部材20の接続部21cに嵌め込むことによって、主桁11に対する支持部材20の接続を行う。なお、接続部21cに板状部11bが挿し込まれた状態で板状部11bに接続部21cが溶接固定される。
【0046】
以上のように主桁11に支持部材20が接続された後には、支持部材20に補強部材30を接続して主桁11を支持する(主桁を支持する工程)。具体的には、継手部23にスティフナー33d付きの腹起し33をボルトナット固定部材B1によって固定する。図1図3に示されるように、接合板34を支持部材20の軸方向D2の隣接位置に接合し、切梁31を腹起し33にボルトナット固定部材B3によって固定することにより、補強部材30の一端を支持部材20に接続する(補強部材の一端を接続する工程)。
【0047】
続いて、支持部材20(被支持部材)の接続、及び切梁31の設置を先行トンネル覆工体2Aにも行う。なお、先行トンネル覆工体2A(先行トンネル覆工体2Aの主桁)には支持部材20(被支持部材)が設置されている。補強部材30の後行トンネル(後行トンネル覆工体2B)との反対側の端部は、先行トンネル覆工体2Aに設置された被支持部材に接続される。そして、ジャッキ32を設置して主桁11を支持し(主桁を支持する工程)、補強部材30を完成させる。
【0048】
支持部材20及び補強部材30の設置は、例えば、地山の掘削に伴って上から順次行われる。そして、最下部の支持部材20及び補強部材30の設置が完了した後に、コンクリートで埋設して構造物Bを構築する(補強部材を埋設する工程)。その後、一連の工程が完了する。
【0049】
次に、本実施形態に係る補強構造1及び補強方法の作用効果について説明する。補強構造1では、トンネル覆工体2において、複数の主桁11がトンネルの軸方向D2に並ぶように配置されると共に、複数の主桁11のそれぞれがトンネルの周方向D3に延びるように配置されている。補強構造1は、主桁11を支持する支持部材20と、支持部材20を補強する補強部材30とを備え、補強部材30によってトンネル覆工体2の主桁11が支持される。
【0050】
支持部材20は主桁11と補強部材30との間に介在しており、外力が付与されたときに当該外力は補強部材30から支持部材20を介して主桁11に伝達される。従って、支持部材20を介して外力を直接主桁11に伝達できるので、外力を主桁11に適切に伝達してトンネルの変形を確実に抑えることができる。
【0051】
図2及び図3に示されるように、支持部材20は、主桁11に接続される接続部21cと、接続部21cに交差する方向に延びる連結部22と、接続部21c及び連結部22に固定される継手部23とを備え、接続部21cは主桁11に溶接されると共に継手部23は補強部材30に接続される。従って、接続部21c、連結部22及び継手部23によって支持部材20の強度を高めることができるので、外力を適切に主桁11に伝達できると共にトンネルの変形をより確実に抑制することができる。
【0052】
接続部21cは、主桁11から延びると共に上下一対に並ぶフランジ(接合部21)に設けられており、連結部22は、一対のフランジを接続するウェブであってもよい。この場合、H形鋼等の形鋼を支持部材として用いることができるので、汎用性が高い支持部材20とすることが可能となる。
【0053】
継手部23は、接続部21c及び連結部22の主桁11との反対側の端部に固定される継手板であってもよい。この場合、継手部23を介して補強部材30に支持部材20を強固に接続できるので、補強部材30及び支持部材20を介した主桁11への外力の伝達をより直接的に行ってより強固な補強構造1とすることができる。
【0054】
接続部21cは、主桁11が挿し込まれる凹部であってもよい。この場合、接続部21cに主桁11を挿し込むことによって主桁11に支持部材20を取り付けることができる。従って、支持部材20を主桁11に容易に取り付けることができるので、トンネル施工の施工性を向上させることができる。
【0055】
本実施形態に係る補強方法では、先行トンネル覆工体2A及び後行トンネル覆工体2Bのそれぞれにおいて、複数の主桁11がトンネルの軸方向D2に並ぶように配置されると共に、各主桁11がトンネルの周方向D3に延びるように配置されている。この補強方法では、スキンプレート12が撤去され、主桁11に支持部材20が接続され、支持部材20に補強部材30が接続され、補強部材30によって主桁11が支持される。支持部材20は主桁11と補強部材30との間に介在しており、外力が付与されたときに当該外力は補強部材30から支持部材20を介して主桁11に伝達される。
【0056】
従って、支持部材20を介して外力を直接主桁11に伝達できるので、外力を主桁11に適切に伝達してトンネルの変形を確実に抑えることができる。支持部材20は、主桁11に接続される接続部21cと、接続部21cに交差する方向に延びる連結部22と、接続部21c及び連結部22に固定される継手部23とを備え、接続部21cは主桁11に溶接されると共に継手部23は補強部材30に接続される。従って、接続部21c、連結部22及び継手部23によって支持部材20の強度を高めることができるので、外力を適切に主桁11に伝達できると共にトンネルの変形をより確実に抑制することができる。
【0057】
支持部材20を設置する工程では、支持部材20に主桁11が挿し込まれることによって主桁11に支持部材20が設置されてもよい。この場合、主桁11に支持部材20を挿し込むことによって支持部材20の設置を行えるので、支持部材20を容易に主桁11に取り付けることができる。よって、トンネル施工の施工性を向上させることができる。
【0058】
本実施形態に係る補強方法は、補強部材30を設置する工程の後に、コンクリートで補強部材30を埋設する工程を備えてもよい。この場合、補強部材30によって先行トンネル覆工体2A及び後行トンネル覆工体2Bを補強した状態でコンクリートが埋設される。よって、トンネル構造を強固にできると共にコンクリートの埋設によってトンネル施工が完了する。すなわち、補強部材30等の撤去を不要とすることができるので、トンネル施工の施工性を一層向上させることができる。
【0059】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る補強構造51及び補強方法について図4を参照しながら説明する。図4に示されるように、第2実施形態に係る補強構造51は、一例として、鋼板コンクリート構造物60に設けられる。鋼板コンクリート構造物60は、例えば、先行トンネル70の先行トンネル覆工体71に配置された先行支持構造72と、先行トンネル70の後に施工された後行トンネル80の後行トンネル覆工体81に配置された後行支持構造82と、先行トンネル覆工体71及び後行トンネル覆工体81に打設される躯体コンクリートとを備える。
【0060】
補強構造51では、鋼板を埋設型枠として、先行支持構造72と後行支持構造82を巻き込んで埋設して躯体コンクリートが打設されて硬化することによって鋼板コンクリート構造物60が構成される。先行支持構造72は、先行トンネル覆工体71及び後行トンネル覆工体81が並設される方向である第1方向A1に延びる複数の先行型鋼73と、第1方向A1に直交する第2方向A2に延びる複数の支保工74とを備える。後行支持構造82は、例えば、複数の後行型鋼83を備える。また、先行トンネル覆工体71の支保工74は、第2方向A2に延在する支保工74の連結部材である先行型鋼73で接続、支持される。鋼板コンクリート構造物60は、更に、先行トンネル覆工体71の内部に配置される先行型鋼73と、後行トンネル覆工体81の内部に配置される後行型鋼83とに架け渡され、接続する中間型鋼110を備える。
【0061】
図5は、先行トンネル70と後行トンネル80の境界付近を拡大した断面図である。図5に示されるように、後行トンネル覆工体81は、シールド掘進機が先行トンネル70の先行トンネル覆工体71と、先行トンネル覆工体71の内部に充填された充填材を切削しながら構築される。この切削と並行して裏込め材85が注入され硬化した裏込め材85が形成されている。後行トンネル覆工体81は主桁84とスキンプレート86とを備える。スキンプレート86の一部は撤去されている。補強構造51は、後行トンネル覆工体81の主桁84に接続される支持部材90と、支持部材90に接続される補強部材100とを備える。支持部材90は、前述した支持部材20と同様、接続部91と、連結部92と、継手部93とを備える。
【0062】
接続部91は主桁84に溶接されており、連結部92は接続部91から接続部91に交差する方向に延びている。継手部93には接続部91及び連結部92が固定されており、継手部93は補強部材100に接続されている。補強部材100は、後行トンネル覆工体81の主桁84を支持する突っ張り材であり、先行トンネル覆工体71に配置された支保工74から反力を受けて支持される。主桁84の先行トンネル覆工体71側には裏込め材85が充填されており、支持部材90は裏込め材85をつぼ掘り(局所掘り)して少なくとも一部を撤去した状態で設置されている。裏込め材85と支保工74との間には、例えば、充填材88が充填されている。充填材88は、一例として、エアモルタルである。補強部材100は、充填材88をつぼ掘り(局所掘り)して少なくとも一部を撤去した状態で設置されている。
【0063】
次に、第2実施形態に係るトンネルの補強方法について説明する。図6に示されるように、まず、先行トンネル70を施工する。先行トンネル70の施工では、先行シールド掘進を行う。先行シールド掘進では、先行トンネル覆工体71の鋼製セグメントピース71bと切削可能セグメントピース71cにより構築され、各セグメントピースとスキンプレートとの間に形成されるテールクリアランスに裏込め材85が充填される。そして、先行トンネル覆工体71を支持する先行支持構造72を設置する(先行支持構造を設ける工程)。このとき、後行シールド掘進時の内部支保のためのコンクリートCを打設して、切削予定エリアRに充填材88(エアモルタル)を打設する。なお、この充填材88は、後行シールド掘進時における地山保持のために設けられる。
【0064】
以上のように先行トンネル70を施工した後には、図7に示されるように、後行トンネル80を施工する。後行トンネル80の施工では後行シールド掘進を行い、先行トンネル覆工体71の切削可能セグメントピース71cと切削予定エリアRの充填材88(エアモルタル)を切削しながら掘進する。後行シールド掘進では主桁84を含む鋼製セグメントが構築される。このとき、先行シールド掘進のときと同様、裏込め材85が充填される。具体的には、裏込め材85は、切削予定エリアRの充填材88(エアモルタル)と切削可能セグメントピース71cの未切削部分と、後行トンネル80の後行トンネル覆工体81の間隙に充填される。
【0065】
主桁84を含む後行トンネル80の鋼製セグメントを構築した後には、図7及び図8に示されるように、まず、支保工74に対向する切削予定エリアRの充填材88と裏込め材85のつぼ掘り(局所掘り)を行い、また、スキンプレート86の一部も撤去される(スキンプレートを撤去する工程)。その結果、支保工74と主桁84が対向する空間が形成される。このとき、先行トンネル覆工体71の隔壁又は先行支持構造72を露出させる。そして、スキンプレート86が撤去された部分の主桁84に支持部材90を設置する(支持部材を設置する工程)。このとき、例えば、上下一対の支持部材90のそれぞれに主桁84を挿し込んで各主桁84に各支持部材90を取り付ける。次に、支持部材90に補強部材100の一端を接続する(補強部材の一端を接続する工程)。そして、先行トンネル70内に設置された被支持部材である支保工74に補強部材100の他端を接続し、補強部材100によって主桁84を支持する(主桁を支持する工程)。先行トンネル覆工体71の内部に配置された支保工74、補強部材100及び支持部材90を介して主桁84が支持されるので、後行トンネル覆工体81の変形を防止できる。従って、主桁84を支持した後に、残りの後行トンネル覆工体81のスキンプレート86、後行トンネル80の裏込め材85、先行トンネル覆工体71の内部の充填材88を撤去して、以降の作業空間を確保できる。すなわち、後行トンネル80の掘進、後行トンネル覆工体81構築後に、そのまま先行トンネル70の充填材88(エアモルタル)と後行トンネルの裏込め材85を撤去して作業空間を確保しようとすると、後行トンネル覆工体81の当該部分の主桁84は支持力が不足して変形する恐れがあるが、第2実施形態においては、後行トンネル覆工体81の変形を防止でき安全に作業空間を確保できる。
【0066】
そして、図9及び図10に示されるように、後行トンネル覆工体81の内部に後行支持構造82を配置する(後行支持構造を配置する工程)。このとき配置される後行支持構造82は、先行支持構造72と同様、第1方向A1に延びる複数の後行型鋼83と、第2方向A2に延びる複数の支保工87とを備える。そして、中間型鋼110を、後行型鋼83と先行型鋼73の間に架け渡し配置して、後行型鋼83と先行型鋼73に接続する。中間型鋼110と後行型鋼83は、第1方向A1に沿って並ぶ一対の先行型鋼73同士を互いに連結する継手鋼材である。このとき、例えば、第2方向A2に並ぶ一対の後行型鋼83が設置される。その後、一対の後行型鋼83を互いに連結する複数のせん断鋼材及び配力鋼材を設置する。そして、後行シールド内へのエアモルタルの設置、並びに、先行トンネル覆工体71の内部、及び後行トンネル覆工体81の内部への躯体コンクリートの打設を行った後に補強構造51が完成し、一連の工程が終了する。先行支持構造72の第1方向A1の両端に位置する支保工74,74は、先行トンネル70の先行トンネル覆工体71の両端に配置される後行トンネル80の後行トンネル覆工体81,81の主桁84,84のそれぞれに設けられる支持部材90と、支持部材90に接続される補強部材100を介して支持する。
【0067】
以上、第2実施形態に係る補強構造51では、支持部材90が主桁84と補強部材100との間に介在している。よって、外力が付与されたときに当該外力は補強部材100から支持部材90を介して主桁84に伝達される。従って、支持部材90を介して外力を直接主桁84に伝達できるので、第1実施形態と同様、外力を主桁84に適切に伝達して先行トンネル70及び後行トンネル80の変形を確実に抑えることができる。
【0068】
また、第2実施形態に係るトンネルの補強方法では、先行トンネル70の後に施工される後行トンネル80の後行トンネル覆工体81の主桁84に支持部材90を接続し、支持部材90には補強部材100の一端が接続される。補強部材100の他端は、先行トンネル70内に設置された被支持部材(支保工74)に接続される。従って、被支持部材、補強部材100及び支持部材90を介して外力が主桁84に伝達されるので、外力を主桁84に適切に伝達してトンネルの変形を確実に抑制することができる。
【0069】
図5に示されるように、支持部材90は、前述と同様、主桁84に接続される接続部91、連結部92及び継手部93を有し、接続部91が主桁84に溶接されると共に継手部93が補強部材100に接続される。従って、接続部91、連結部92及び継手部93によって外力を適切に主桁84に伝達してトンネルの変形をより確実に抑制することができる。
【0070】
第2実施形態において、後行トンネル80は、先行トンネル覆工体71の一部を切削しながら構築されるものであって、切削された先行トンネル覆工体71を支持する先行支持構造72を設ける工程を備える。よって、先行トンネル覆工体71の一部が切削されながら後行トンネル80が構築され、切削された先行トンネル覆工体71が先行支持構造72によって支持される。従って、先行トンネル覆工体71の切削された部分を先行支持構造72によって支持することができる。
【0071】
以上、本開示に係る補強構造及び補強方法の種々の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る補強構造及び補強方法は、種々の実施形態の一部同士の組み合わせであってもよい。すなわち、前述した第1実施形態の一部、及び第2実施形態の一部が組み合わされたものであってもよい。
【0072】
また、本開示に係る補強構造及び補強方法は、前述した種々の実施形態に対して更に変形することが可能である。すなわち、補強構造の各部の構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様、並びに補強方法の工程の内容及び順序は、特許請求の範囲に記載した要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…補強構造、2…トンネル覆工体、2A…先行トンネル覆工体、2B…後行トンネル覆工体、4…トンネル内部補強用支保工、4b…第1支保工、4c…第2支保工、4d…支持部、4f…棒状部、4g…支持部、4h…棒状部、10…セグメント、11…主桁、11A…中主桁、11B…外主桁、11b…板状部、12…スキンプレート、13…縦リブ、20…支持部材(被支持部材)、21…接合部、21b…端面、21c…接続部、22…連結部、22b…端面、23…継手部、30…補強部材、31…切梁(中間部材)、31b…フランジ、31c…ウェブ、32…ジャッキ、33…腹起し、33b…フランジ、33c…ウェブ、33d…スティフナー、33f…第1面部、33g…第2面部、34…接合板、51…補強構造、60…鋼板コンクリート構造物、70…先行トンネル、71…先行トンネル覆工体、72…先行支持構造、73…先行型鋼、74…支保工、80…後行トンネル、81…後行トンネル覆工体、82…後行支持構造、83…後行型鋼、84…主桁、85…裏込め材、86…スキンプレート、87…支保工、88…充填材、90…支持部材、91…接続部、92…連結部、93…継手部、100…補強部材、110…中間型鋼、A…対向領域、A1…第1方向、A2…第2方向、B…構造物、B1,B2,B3…ボルトナット固定部材、C…コンクリート、D1…鉛直方向、D2…軸方向、D3…周方向、D4…対向方向、R…切削予定エリア、S…内周面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10