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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121253
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】熱電発電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/32 20060101AFI20220812BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20220812BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H01L35/30
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018513
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 正和
(72)【発明者】
【氏名】岸澤 利彦
(72)【発明者】
【氏名】木津 喜嗣
(57)【要約】
【課題】耐熱性を向上すること。
【解決手段】熱電発電モジュール1は、シート状に形成され、熱可塑性層112を有する第1基材11と、シート状に形成され、熱可塑性層122を有する第2基材12と、第1基材11と第2基材12との間に配置された複数の熱電変換素子21と、第1基材11と熱電変換素子21との間に配置された複数の第1電極22と、第2基材12と熱電変換素子21との間に配置された複数の第2電極23と、第1基材11と第2基材12とを接合する接合部Aと、を備え、熱電変換素子21、複数の第1電極22、及び複数の第2電極23が接合部Aにより封止されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成され、熱可塑性層を有する第1基材と、
シート状に形成され、熱可塑性層を有する第2基材と、
前記第1基材と前記第2基材との間に配置された複数の熱電変換素子と、
前記第1基材と前記熱電変換素子との間に配置された複数の第1電極と、
前記第2基材と前記熱電変換素子との間に配置された複数の第2電極と、
前記第1基材と前記第2基材とを接合する接合部と、
を備え、
前記熱電変換素子、前記複数の第1電極、及び前記複数の第2電極が接合部により封止されている、
熱電発電モジュール。
【請求項2】
前記接合部において、前記第1基材の前記熱可塑性層と前記第2基材の前記熱可塑性層との間に介在する液状ガスケット、
を備える、請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項3】
前記第1基材と前記第2基材とは、1枚のシート状の基材を折り曲げて形成されており、前記基材の曲げ部に対して一方側が前記第1基材であり、他方側が前記第2基材である、
請求項1又は2に記載の熱電発電モジュール。
【請求項4】
前記第1基材は、前記熱可塑性層に積層された金属層を有し、
前記第2基材は、前記熱可塑性層に積層された金属層を有し、
前記第1電極は、前記第1基材の前記金属層を加工して形成され、
前記第2電極は、前記第2基材の前記金属層を加工して形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項5】
前記第1基材は、前記熱可塑性層に積層されたシールド層を有し、
前記第2基材は、前記熱可塑性層に積層されたシールド層を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項6】
前記第1基材又は前記第2基材に配置され、前記接合部の内側から外側まで延びる端部電極と、
前記接合部の外側において、前記端部電極に接続された導体と、
を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項7】
前記第1基材又は前記第2基材の前記接合部の外側を貫通した孔部、
を備え、
前記導体は、導線と、前記導線の先端部に配置されたT字型の端子と、を有し、
前記孔部には、前記端子が挿通される、
請求項6に記載の熱電発電モジュール。
【請求項8】
前記第1基材の前記接合部の外側を貫通した孔部と、
前記第2基材の前記接合部の外側を貫通した孔部と、
前記第1基材の前記孔部及び前記第2基材の前記孔部に挿通される絶縁ネジと、
を備え、
前記導体は、導線と、前記導線の先端部に配置されたO字型又はU字型の端子と、を有し、
前記絶縁ネジは、前記第1基材の前記孔部と前記第2基材の前記孔部と前記端子とに挿通される、
請求項6に記載の熱電発電モジュール。
【請求項9】
前記端部電極と前記導体との接続部は、熱収縮チューブ、樹脂モールド又は絶縁コーティングによって覆われて封止されている、
請求項6から8のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項10】
前記端部電極と前記導体との接続部は、高温板及び低温板によって挟まれ、厚さ方向に押圧されて封止されている、
請求項6から8のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項11】
前記接合部の内側において、前記第1電極又は前記第2電極に接続された導体、
を備え、
前記導体は、前記接合部の外側まで延びている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項12】
前記導体は、導線と、前記導線の先端部に配置された端子と、前記導線を被覆する被覆部と、を有し、
前記端子は、前記第1電極又は前記第2電極に接続され、
前記被覆部は、外周面が熱可塑性を有する材料で形成され、前記接合部において、前記第1基材の前記熱可塑性層と前記第2基材の前記熱可塑性層との間に介在する、
請求項11に記載の熱電発電モジュール。
【請求項13】
前記導体は、熱可塑性を有する材料で少なくとも一部が絶縁コーティングされている、
請求項11に記載の熱電発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱電発電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電発電モジュールは、焼却や熱処理を行う工場及び設備などで使用されるため、風雨に晒される環境下、高湿及び高温環境下、並びに粉塵下で稼働する。このため、電位差が生じる熱電発電モジュールは、水及び粉塵が電路となり短絡が生じやすい。そこで、熱電発電モジュールは、水及び粉塵が内部に侵入しないように、封止部材によって封止される。
【0003】
熱電発電モジュールの外側をOリングで囲み、さらに、付勢部材を使用して熱交換板の変形を吸収することでOリングとの密着を良好に維持し、シール性能を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-080883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
封止部材の耐熱性が低い場合、高温環境下では、封止部材が熱分解して低分子化することがある。低分子化した封止部材は、封止性が低下する。これにより、水及び粉塵が熱電発電モジュールの内部に浸入して、電路となるおそれがある。また、熱電発電モジュールの内部に配置された絶縁部材が吸湿して、絶縁性が低下するおそれがある。
【0006】
本開示は、耐熱性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従えば、シート状に形成され、熱可塑性層を有する第1基材と、シート状に形成され、熱可塑性層を有する第2基材と、前記第1基材と前記第2基材との間に配置された複数の熱電変換素子と、前記第1基材と前記熱電変換素子との間に配置された複数の第1電極と、前記第2基材と前記熱電変換素子との間に配置された複数の第2電極と、前記第1基材と前記第2基材とを接合する接合部と、を備え、前記熱電変換素子、前記複数の第1電極、及び前記複数の第2電極が接合部により封止されている、熱電発電モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、耐熱性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る熱電発電モジュールの第1基材を模式的に示す平面図であり、上方から見た図である。
図3図3は、第1実施形態に係る熱電発電モジュールの第2基材を模式的に示す平面図であり、下方から見た図である。
図4図4は、第1基材を模式的に示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図6図6は、変形例1に係る熱電発電モジュールの第1基材を模式的に示す平面図であり、上方から見た図である。
図7図7は、変形例1に係る熱電発電モジュールの第2基材を模式的に示す平面図であり、下方から見た図である。
図8図8は、変形例1に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図9図9は、変形例2に係る熱電発電モジュールの第1基材を模式的に示す平面図であり、上方から見た図である。
図10図10は、変形例2に係る熱電発電モジュールの第2基材を模式的に示す平面図であり、下方から見た図である。
図11図11は、変形例2に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図12図12は、変形例3に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図13図13は、変形例4に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図14図14は、変形例5に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図15図15は、導体の一例を模式的に示す概略図である。
図16図16は、導体の他の例を模式的に示す概略図である。
図17図17は、導体の他の例を模式的に示す概略図である。
図18図18は、第2実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図19図19は、第3実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図20図20は、第3実施形態に係る熱電発電モジュールの第1基材及び第2基材を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する複数の実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
実施形態においては、「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、及び「下」の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、熱電発電モジュール1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。左右方向と前後方向と上下方向とは直交する。
【0012】
(第1実施形態)
[熱電発電モジュール]
図1は、第1実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。図2は、第1実施形態に係る熱電発電モジュールの第1基材を模式的に示す平面図であり、上方から見た図である。図3は、第1実施形態に係る熱電発電モジュールの第2基材を模式的に示す平面図であり、下方から見た図である。熱電発電モジュール1は、図示しない高温板と低温板との間に設置される。熱電発電モジュール1は、高温板と低温板とによって両側(図中の上下)に温度差を与えることによって、ゼーベック効果により発電する。
【0013】
図1に示すように、熱電発電モジュール1は、第1基材11と、第2基材12と、第1基材11と第2基材12との間に配置される熱電変換素子21とを備える。以下の説明に用いる各図における熱電変換素子21、第1電極22及び第2電極23の配置は模式的に示すものである。
【0014】
第1基材11及び第2基材12のそれぞれは、電気絶縁材料によって形成される。図2図3に示すように、実施形態において、第1基材11及び第2基材12のそれぞれは、シート状に形成されている。第1基材11及び第2基材12のそれぞれは、可撓性を有する。実施形態において、第1基材11と第2基材12とは、矩形状に形成されている。第1基材11と第2基材12とは、熱電変換素子21を挟んで向かい合う。実施形態において、第2基材12は、第1基材11よりも上方に配置される。
【0015】
図4は、第1基材を模式的に示す断面図である。実施形態では、第1基材11は、第1層111と、第2層(金属層)114と、第3層(シールド層)115とを有する3層構造である。実施形態では、第1基材11は、下方から、第3層115、熱可塑性層113、第1層111、熱可塑性層112、第2層114の順で積層されている。
【0016】
第1層111は、シート状のポリイミドで構成されている。第1層111の厚さは、例えば25μmである。第1層111は、上面側に熱可塑性層112、下面側に熱可塑性層113を有する。
【0017】
熱可塑性層112及び熱可塑性層113は、第1層111の上面及び下面の全面又は少なくとも周縁部に配置されている。熱可塑性層112及び熱可塑性層113は、例えば240℃以上に加熱することにより軟化し、その後冷却されることにより硬化する。これにより、熱可塑性層112又は熱可塑性層113を対象物に重ねた状態で加熱すると、熱可塑性により接合する。
【0018】
第2層114は、第1層111の上面側に積層されている。第2層114の厚さは、例えば300μmである。第2層114と第1層111との間に、熱可塑性層112が介在する。第2層114は、導電性を有する材料で構成されている。第2層114は、例えば銅箔である。第2層114がエッチングなどによって加工されて、残留した部分が第2電極23となる。実施形態では、第1基材11の周縁部において、第2層114が除去されて、熱可塑性層112が露出する。
【0019】
第3層115は、第1層111の下面側に積層されている。第3層115の厚さは、例えば18μmである。第3層115と第1層111との間に、熱可塑性層113が介在する。第3層115は、第1層111のポリイミドには水の浸透性があるので、水を遮断する材料で構成されている。第3層115は、例えば銅箔である。銅箔は熱伝導性が高いことも望ましい特性である。第3層115は、図示しない熱電発電装置の高温板に直接接触するか、又は熱伝導グリース等を介して接触する。
【0020】
図2図3に示すように、接合部Aは、熱可塑性層112及び熱可塑性層113において加熱されて接合する領域である。接合部Aは、枠形状に配置されている。接合部Aは、上下方向視において、面方向に整列された複数のpn素子対の周囲を囲んで配置される。接合部Aは、第1基材11の上面の周縁部に配置される。
【0021】
第2基材12は、第1基材11と同様に構成されているので、断面図の図示を省略する。実施形態では、第2基材12は、上方から、第3層(シールド層)125、熱可塑性層123、第1層121、熱可塑性層122、第2層(金属層)124の順で積層されている。実施形態では、第2基材12は、第1基材11より面積が大きい矩形状に形成されている。実施形態では、第2基材12は、左右方向の長さが第1基材11と同じである。実施形態では、第2基材12は、前後方向の長さは第1基材11より長い。これにより、第2基材12は、接合部Aより前部の幅が第1基材11より長い。これにより、第1基材11と第2基材12とを重ねた状態で、第2基材12の前部の下面が露出する。
【0022】
図1に示すように、このように構成された第1基材11と第2基材12とを重ねた状態で接合部Aを加熱することにより、第1基材11の上面の周縁部と、第2基材12の下面の周縁部とが接合して封止する。
【0023】
熱電変換素子21は、第1基材11の上面側と第2基材12の下面側との間に1つ以上配置される。複数の熱電変換素子21は、複数の第1電極22及び第2電極23によって接続される。
【0024】
熱電変換素子21は、熱電材料によって形成される。熱電変換素子21を形成する熱電材料として、マンガンケイ化物系化合物(Mn-Si)、マグネシウムケイ化物系化合物(Mg-Si-Sn)、スクッテルダイト系化合物(Co-Sb)、ハーフホイスラ系化合物(Zr-Ni-Sn)、及びビスマステルル系化合物(Bi-Te)が例示される。熱電変換素子21は、マンガンケイ化物系化合物、マグネシウムケイ化物系化合物、スクッテルダイト系化合物、ハーフホイスラ系化合物、又はビスマステルル系化合物から選択される1つの化合物により構成されてもよいし、少なくとも2つの化合物の組み合わせにより構成されてもよい。
【0025】
熱電変換素子21は、p型素子21Pと、n型素子21Nとを含む。p型素子21P及びn型素子21Nのそれぞれは、所定面内に複数配置される。前後方向において、p型素子21Pとn型素子21Nとは交互に配置される。左右方向において、p型素子21Pとn型素子21Nとは交互に配置される。
【0026】
第1電極22及び第2電極23は、導電性を有する金属により形成される。第1電極22は、第1基材11と熱電変換素子21との間に配置されている。第1電極22は、第1基材11の上面に設けられる。第1電極22は、第1基材11の上面と平行な所定面内において複数設けられる。第2電極23は、第2基材12と熱電変換素子21との間に配置されている。第2電極23は、第2基材12の下面に設けられる。第2電極23は、第2基材12の下面と平行な所定面内において複数設けられる。実施形態では、第1電極22は、第1基材11の第2層114を加工して形成される。実施形態では、第2電極23は、第2基材12の第2層124を加工して形成される。
【0027】
第1電極22及び第2電極23は、隣接する一対のp型素子21P及びn型素子21Nのそれぞれに接続される。第1電極22及び第2電極23は、複数の熱電変換素子21を直列に接続する。第1電極22及び第2電極23により複数の熱電変換素子21が直列に接続された直列回路が形成される。p型素子21P及びn型素子21Nが第1電極22及び第2電極23を介して電気的に接続されることにより、pn素子対が構成される。複数のpn素子対が第1電極22及び第2電極23を介して直列に接続されることにより、複数の熱電変換素子21を含む直列回路が構成される。
【0028】
熱電変換素子21に電流が供給されることにより、熱電発電モジュール1がペルチェ効果により吸熱又は発熱する。第1基材11と第2基材12との間に温度差が与えられることにより、熱電発電モジュール1は、ゼーベック効果により発電する。
【0029】
第1基材11上に配置される第1電極22の下面は、熱電発電モジュール1の加熱面である。第2基材12上に配置される第2電極23の上面は、熱電発電モジュール1の冷却面である。
【0030】
[電力の取り出し部]
実施形態では、接合部Aの外側で回路の電力を外部に取り出すものとして説明する。熱電発電モジュール1は、端部電極31及び端部電極32を備える。端部電極31及び端部電極32は、回路の電力を外部に取り出すための電極である。端部電極31及び端部電極32は、導電性を有する金属により形成される。端部電極31及び端部電極32は、第1基材11又は第2基材12に配置され、接合部Aの内側から外側まで延びる。図3に示すように、実施形態では、端部電極31及び端部電極32は、第2基材12の下面に設けられる。実施形態では、端部電極31及び端部電極32は、第2基材12の周縁部において下面側に露出する。実施形態では、端部電極31及び端部電極32は、第2基材12の第2層124を加工して形成される。端部電極31は、回路の一方の端部の熱電変換素子21に接続されている。端部電極32は、回路の他方の端部の熱電変換素子21に接続されている。接合部Aの外側において、端部電極31には、図5に示すリード線(導体)41が接続されている。端部電極32も、図示しないリード線が同様に接続されている。
【0031】
図5は、第1実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。図5に示すリード線41は、第2基材12の下面側に露出した端部電極31に電気的に接続されている。リード線41は、導線42と、導線42の先端部に配置された端子43とを有する。導線42は、耐熱用導線である。端子43は、導電性の材料で形成されている。端子43は、端部電極31と接触した状態で、例えば半田などによって固定されている。端部電極31とリード線41との接続部は、カバー44によって覆われている。カバー44は、端部電極31とリード線41との接続部を封止する。カバー44は、例えば熱収縮チューブである。カバー44は、例えばポリイミドで構成されている。カバー44は、内周面に熱可塑性層を有する。カバー44の内周面は、第1基材11の第3層115及び第2基材12の第3層125と接合する。カバー44は、第1基材11と端部電極31とリード線41と第2基材12とを挟んだ状態で接合されている。端部電極32に接続された図示しないリード線も、リード線41と同様に構成されている。
【0032】
このように構成された熱電発電モジュール1は、図示しない高温板および低温板によって挟まれる。
【0033】
[封止方法及び作用]
第1基材11と第2基材12とを重ねた状態で周縁部である接合部Aを加熱することによって、第1基材11の熱可塑性層112と第2基材12の熱可塑性層122とが接合される。これにより、第1基材11と第2基材12とは、周縁部である接合部Aにおいて、第1基材11の熱可塑性層112と第2基材12の熱可塑性層122とが接合して封止される。
【0034】
さらに、接合部Aの外側で回路の電力が外部に取り出される。端部電極31とリード線41との接続部は、カバー44によって全体が覆われて、封止される。
【0035】
[効果]
実施形態は、第1基材11と第2基材12とを、接着剤又は樹脂材料で構成されたシール材及び枠部材などの封止部材を使用せず、熱可塑性層112と熱可塑性層122とによって接合できる。実施形態は、接着剤又は封止部材の経年による劣化が生じない。実施形態によれば、風雨に晒される環境下、高湿及び高温環境下、並びに粉塵下で、封止性を長期にわたって維持できる。このように、実施形態は、耐熱温度の低い接着剤及び樹脂材料を使用しないので、耐熱性を向上できる。
【0036】
実施形態は、風雨に晒される環境下、高湿及び高温環境下、並びに粉塵下で、長期間に亘って、短絡原因となる水及び粉塵が熱電発電モジュール1の内部に侵入することを規制できる。実施形態は、高温環境下で長期間に亘って、絶縁を維持した状態で熱電発電をできる。このようにして、実施形態によれば、水分の侵入による故障の発生を抑制して、安定して発電できる。
【0037】
実施形態は、樹脂材料又は金属材料で構成された封止部材を使用しない。実施形態は、封止部材によって伝熱路が形成されることがないので、熱電発電の効率を向上できる。
【0038】
実施形態は、接合部Aの外側において、回路の電力を外部に取り出す。実施形態によれば、接合部Aにおいて封止した後に、リード線41を接続できる。
【0039】
実施形態は、回路の電力を外部に取り出す、端部電極31及び端部電極32とリード線との接続部が、カバー44によって封止される。実施形態は、外部から水及び粉塵が熱電発電モジュール1の内部に侵入することを規制できる。
【0040】
実施形態は、第1基材11及び第2基材12は、3層構造のシート状に形成されている。実施形態によれば、構成を簡素化できる。
【0041】
(変形例1)
図6は、変形例1に係る熱電発電モジュールの第1基材を模式的に示す平面図であり、上方から見た図である。図7は、変形例1に係る熱電発電モジュールの第2基材を模式的に示す平面図であり、下方から見た図である。図8は、変形例1に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。変形例1は、回路の電力の取り出し部の構成が実施形態と異なる。
【0042】
第1基材11と第2基材12とは、同じ面積を有する矩形状に形成されている。これにより、第1基材11と第2基材12とを重ねた状態で、第1基材11の上面及び第2基材12の下面は露出しない。第1基材11又は第2基材12の接合部Aの外側に、貫通孔である孔部35及び孔部36が形成される。実施形態では、第2基材12の接合部Aの外側に、貫通孔である孔部35及び孔部36が形成される。
【0043】
端部電極33及び端部電極34は、第1基材11又は第2基材12の上面に設けられる。実施形態では、端部電極33及び端部電極34は、第1基材11の上面に設けられる。実施形態では、端部電極33及び端部電極34は、第1基材11の第2層114を加工して形成される。
【0044】
孔部35及び孔部36は、第1基材11又は第2基材12を貫通して形成される。実施形態では、孔部35及び孔部36は、第2基材12を貫通して形成される。孔部35及び孔部36は、接合部Aの外側に配置されている。孔部35及び孔部36は、第1基材11と第2基材12とを重ねた状態で、端部電極33及び端部電極34と向かい合う位置に配置されている。
【0045】
リード線(導体)45は、第1基材11の上面側に露出した端部電極33に電気的に接続されている。リード線45は、導線46と、導線46の先端部に配置された端子47とを有する。導線46は、耐熱用導線である。端子47は、T字型の端子である。端子47は、孔部35に挿通される。端子47は、端部電極33と接触する。端部電極34に接続された図示しないリード線も、リード線45と同様に構成されている。端部電極33とリード線45との接続部及び端部電極34と図示しないリード線との接続部は、絶縁コーティング48によって覆われている。
【0046】
変形例によれば、T字型の端子を使用して、端部電極33とリード線45及び端部電極34と図示しないリード線を容易に接続できる。端部電極33とリード線45との接続部及び端部電極34と図示しないリード線との接続部を、絶縁コーティング48によって封止できる。
【0047】
(変形例2)
図9は、変形例2に係る熱電発電モジュールの第1基材を模式的に示す平面図であり、上方から見た図である。図10は、変形例2に係る熱電発電モジュールの第2基材を模式的に示す平面図であり、下方から見た図である。図11は、変形例2に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。変形例2は、回路の電力の取り出し部の構成が変形例1と異なる。
【0048】
第1基材11の接合部Aの外側に、孔部37及び孔部38が形成され、第2基材12の接合部Aの外側に、孔部35及び孔部36が形成される。
【0049】
端部電極33に、孔部37が形成されている、端部電極34に、孔部38が形成されている。孔部37及び孔部38は、第1基材11を貫通して形成される。孔部37及び孔部38は、接合部Aの外側に配置されている。孔部37及び孔部38の直径は、孔部35及び孔部36の直径より小さい。
【0050】
孔部35及び孔部36は、第2基材12を貫通して形成される。孔部35及び孔部36は、第1基材11と第2基材12とを重ねた状態で、孔部37及び孔部38と向かい合う位置に配置されている。
【0051】
リード線(導体)51は、第1基材11の上面側に露出した端部電極33に電気的に接続されている。リード線51は、導線52と、導線52の先端部に配置された端子53とを有する。導線52は、耐熱用導線である。端子53は、O字型又はU字型の端子である。端子53は、端部電極33と接触する。端子53は、孔部35及び孔部37に挿通された絶縁ネジ54によって固定されている。絶縁ネジ54は、孔部35と孔部37と端子53とに挿通される。端部電極34に接続された図示しないリード線も、リード線51と同様に構成されている。端部電極33とリード線51との接続部及び端部電極34と図示しないリード線との接続部は、絶縁コーティング55によって覆われている。
【0052】
変形例によれば、O字型又はU字型の端子を使用して、端部電極33とリード線45及び端部電極34と図示しないリード線を容易に接続できる。
【0053】
(変形例3)
図12は、変形例3に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。変形例3は、図示しない端部電極とリード線51との接続部は、高温板56と低温板57とによって挟まれて、絶縁コーティング55が上下方向に押圧されて封止されている点が変形例2と異なる。変形例3では、絶縁ピン54は使用されていない。
【0054】
絶縁コーティング55は、端部電極33とリード線51との接続部及び端部電極34と図示しないリード線との接続部において、高温板56と低温板57との間を充填するように施されている。
【0055】
高温板56は、第1基材11上に配置される第1電極22の下面側に位置する第3層115と面で接触している。高温板56は、設備に設置される。高温板56は、矩形の板状の部材である。高温板56は、熱伝導性が高い材料によって形成されている。高温板56は、例えば鋼材又はアルミニウム合金等の金属によって形成されている。高温板56は、設備からの熱を受けとる。高温板56の熱は、図示しない伝熱部材を介して、熱電発電モジュール1に伝導される。
【0056】
低温板57は、第2基材12上に配置される第2電極23の上面側に位置する第3層125と面で接触している。低温板57は、上下方向において、高温板56と向かい合い、離間して設置される。低温板57は、矩形の板状の部材である。低温板57は、熱伝導性が高い材料によって形成されている。低温板57は、例えば鋼材又はアルミニウム合金等の金属によって形成されている。低温板57は、熱電発電モジュール1からの熱を受けとる。低温板57の熱は、熱電発電装置の周囲に放熱されるか水冷される。
【0057】
変形例によれば、端部電極33とリード線51との接続部及び端部電極34と図示しないリード線との接続部を、熱電発電装置の高温板及び低温板によって押圧して封止できる。
【0058】
(変形例4)
図13は、変形例4に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。変形例4は、回路の電力の取り出し部の構成が実施形態と異なる。接合部Aの内側において、第1電極22又は第2電極23に接続されたリード線(導体)61を備える。
【0059】
リード線61は、導線62と、導線62の先端部に配置された端子63と、導線62を被覆する被覆部64とを有する。導線62は、耐熱用導線である。導線62は、接合部Aの外側まで延びている。端子63は、第1電極22又は第2電極23に接続される。変形例4では、端子63は、第1基材11に配置された端部電極39と接合部Aの内側において接続される。
【0060】
被覆部64が筒状、言い換えると。中空部材である場合について説明する。導線62を、被覆部64の中空内に挿通する。
【0061】
導線62は、ポリイミドに対して難接合性である。そこで、例えば、ポリイミドに対して接合容易な被覆部64によって、導線62を被覆する。被覆部64は、例えば、中空の筒状、又は、リード線を絶縁シートで挟んだリボン状に形成されている。被覆部64は、熱可塑性層112と熱可塑性層122と接合するために、第1基材11の熱可塑性層112と第2基材12の熱可塑性層122と接合可能な材料で構成されている。被覆部64は、外周面が熱可塑性を有する材料で形成される。被覆部64は、接合部Aにおいて、熱可塑性層112と熱可塑性層122との間に介在する。被覆部64は、接合部Aにおいて、熱可塑性層112と熱可塑性層122と接合されて封止する。
【0062】
被覆部64は、電気絶縁性を有する。被覆部64は、内部の導線62を保護するために、剛性を有する材料で構成されている。被覆部64として剛性のある材料を用いることにより、導線62を屈曲させ、熱電変換素子21に応力がかかることが抑制される。被覆部64は、回路の電力の取り出し部に図示しない蓋を設けたり、又は、被覆部64の内部にフッ素樹脂等の水分を通さない材料を充填したりすることによって封止する。
【0063】
変形例によれば、回路の電力を接合部Aの内側から取り出すことができる。変形例によれば、被覆部64として剛性のある材料を用いることにより、導線62を屈曲させ、熱電変換素子21に応力がかかることを抑制できる。
【0064】
(変形例5)
図14は、変形例5に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。図15は、導体の一例を模式的に示す概略図である。図16は、導体の他の例を模式的に示す概略図である。図17は、導体の他の例を模式的に示す概略図である。変形例5は、回路の電力の取り出し部の構成が実施形態と異なる。
【0065】
導体65は、軸部66と、先端部67と、を有する。軸部66と、先端部67とは、導電性を有する材料で一体に構成されている。先端部67は、端部電極39に接続されている。
【0066】
導体65は、絶縁コーティング68で外周の少なくとも一部を覆われている。絶縁コーティング68は、熱可塑性を有する材料で構成されている。図15ないし図17においては、説明のため、絶縁コーティング68には色を付している。図15に示すように、導体65は、軸部66のみに絶縁コーティング68が施されていてもよい。図16に示すように、導体65は、軸部66及び先端部67の一部に絶縁コーティング68が施されていてもよい。図17に示すように、導体65は、軸部66の一部に絶縁コーティング68が施されていてもよい。
【0067】
変形例によれば、導体65は屈曲することなく、回路の外部へ電力を取り出すことができる。変形例によれば、回路の電力の取り出し部に不要な応力が作用しないので、耐久性を保つことができる。
【0068】
(第2実施形態)
図18は、第2実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。封止枠70を有する点で第1実施形態と異なる。
【0069】
封止枠70は、例えば、超高耐熱シリコンなどで構成された液状ガスケットである。封止枠70は、接合部Aに配置されている。封止枠70は、矩形の枠状に形成されている。封止枠70は、上下方向視において、第1基材11と第2基材12との間の周縁部に配置される。封止枠70は、接合部Aにおいて、第1基材11の熱可塑性層112と第2基材12の熱可塑性層122との間に介在する。封止枠70は、積層された熱電変換素子21、第1電極22及び第2電極23の厚さと同程度の厚さを有する。
【0070】
封止枠70は、高温板及び低温板よりも熱伝導性が低い材料で形成されている。これにより、封止枠70を介した熱のリークが抑制される。
【0071】
封止枠70は、耐熱性を有する材料で形成されている。より詳しくは、封止枠70は、長期間にわたって、250℃程度の温度と、結露する環境下における使用に耐えうる材料で形成されている。
【0072】
実施形態は、液状ガスケットを使用することにより、封止性を向上できる。
【0073】
(第3実施形態)
図19は、第3実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。図20は、第3実施形態に係る熱電発電モジュールの第1基材及び第2基材を模式的に示す平面図である。封止枠70を有する点で第1実施形態と異なる。
【0074】
第1基材11と第2基材12とは、一枚のシート状の基材10を折り曲げて構成されている。実施形態では、曲げ部10aの下方側を第1基材11とし、上方側を第2基材12とする。
【0075】
接合部Aは、基材10の曲げ部10aを除く周縁部に配置されている。矩形状の基材10においては、3辺が接合部Aであり、1辺が曲げ部10aになる。
【0076】
実施形態は、接合部Aの面積を低減できる。実施形態は、封止性を向上できる。
【0077】
(その他の変形例)
端部電極31とリード線41との接続部を覆うカバー44は、熱収縮チューブに限定されず、樹脂モールド又は絶縁コーティングでもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…熱電発電モジュール、11…第1基材、111…第1層、112…熱可塑性層、113…熱可塑性層、114…第2層(金属層)、115…第3層(シールド層)、12…第2基材、121…第1層、122…熱可塑性層、123…熱可塑性層、124…第2層(金属層)、125…第3層(シールド層)、21…熱電変換素子、21P…p型素子、21N…n型素子、22…第1電極、23…第2電極、31…端部電極、32…端部電極、41…リード線(導体)、42…導線、43…端子、44…カバー、A…接合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20