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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121302
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】細胞培養バッグ及びセット
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
C12M3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018575
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横尾 誠一
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029DG01
4B029DG06
4B029DG08
4B029GA08
4B029GB02
4B029GB04
4B029GB05
4B029GB07
(57)【要約】
【課題】本発明は無菌的な細胞培養、細胞を使用する場(例えば、手術室)への無菌的な搬送、および細胞の簡便な取り出しが可能な培養容器のうち、閉鎖された環境を開封せずに試料回収が可能な培養容器を提供する。
【解決手段】無菌導入口を備えた細胞培養バッグであって、前記バッグには複数の培養支持体が収容され、かつ、前記バッグが溶着可能なポリマーで構成されている、細胞培養バッグ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌導入口を備えた細胞培養バッグであって、前記バッグには複数の培養支持体が収容され、かつ、前記バッグが溶着可能なポリマーで構成されている、細胞培養バッグ。
【請求項2】
さらに支持体が収容されてなる、請求項1に記載の細胞培養バッグ。
【請求項3】
培養液が収容された培養液収容室と、複数の培養支持体が収容された細胞培養室を備えた細胞培養バッグであって、前記バッグは溶着可能なポリマーで構成され、前記培養液収容室と前記細胞培養室を開放することにより前記培養液が前記培養液収容室から前記細胞培養室に移動可能に構成されている、細胞培養バッグ。
【請求項4】
前記細胞培養室もしくは前記培養液収容室に無菌導入口が設けられている、請求項3に記載の細胞培養バッグ。
【請求項5】
前記培養支持体上に培養細胞が接着して細胞培養体を形成してなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞培養バッグ。
【請求項6】
前記培養支持体が生体適合性である、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞培養バッグ。
【請求項7】
培養液と少なくとも1つの培養容器を含む細胞培養室が複数備えられ、隣接する細胞培養室が溶着部で隔てられ、かつ、各細胞培養室に収容された前記培養支持体上に培養細胞が接着して細胞培養体を形成してなる、細胞培養バッグ。
【請求項8】
前記培養支持体が生体適合性である、請求項7に記載の細胞培養バッグ。
【請求項9】
培養液と少なくとも1つの細胞培養体を含む2以上の細胞培養バッグのセットであって、前記細胞培養体は培養支持体上に培養細胞が接着して形成されたものであり、かつ、各細胞培養バッグ中の培養細胞は同等な培養条件で培養されたものである、2以上の細胞培養バッグのセット。
【請求項10】
1つの細胞培養体と培養液を含むサンプリング用の細胞培養バッグをさらに含む、請求項9に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養バッグ及びセットに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療に用いられる細胞培養体は、哺乳動物から採取された細胞を材料に体外で培養工程を経て、様々な疾患に対して投与される。
【0003】
採取された細胞数を体外で培養する目的は治療効果を発揮し得る数量まで細胞を増幅する場合もあれば、単に細胞を活性化する場合もある。また人工的な組織や臓器を体外で形成する場合もある。多くの再生医療に用いる細胞培養体は、血液や角膜内皮など拒絶反応が発生しない細胞種を除いて、自家細胞を用いることで拒絶反応を回避できるメリットがある。これは免疫抑制剤の使用を必要とせず、臓器移植に対して大きなメリットがある。また自家細胞を用いた再生医療には他家由来感染症の危険性がなく、安全性確保に大きなメリットがある。しかしながらこの場合、形成された細胞培養体は投与される個体と採取された個体を一致させる必要があり、1ロット1対象にしか使用できない個別化再生医療となる。そのため1ロットを大量生産し多数の患者に投与することは出来ない。
【0004】
細胞培養体を商業生産しヒトをはじめとする哺乳動物に用いる為には品質や安全性、特に製造中の外部由来汚染物質の混入を防止する為に多額の経費を使用して、高度に清浄化された製造環境を構築する必要性があると考えられてきた。そのため、再生医療に用いる細胞培養体の製造には多額の経費が必要な一方、大量生産による経費の回収はできず、極めて高額になり易かった。また多くの再生医療が有効性の確認のため臨床試験が行われているが、病院内の加工施設で研究者により製造された細胞加工物を用いて再生医療の臨床試験が実施される。有効性が見込まれる再生医療の商用利用の際に企業の製造施設と病院内の製造施設は構造や製造者が異なるため、同一性の担保が問題となる。即ち、病院内で製造された細胞加工物の臨床試験データは、同一製品であっても企業で製造された細胞加工物の臨床試験データとして扱うことは出来ない。その為、商業利用の際には企業が初めから臨床試験をやり直すことが必要となる。そこで、本発明者らは極めて安価で様々な細胞に適用可能な培養容器であって、高額な無菌施設や機器を必要とせず、ゆえに施設や機器変更に伴う製造プロトコールの大幅な変更や新規申請を回避でき、無菌的な細胞培養、細胞を使用する場(例えば、手術室)への無菌的な搬送、および、細胞の簡便な取り出しが可能で、異なる製造所や製造者の間でも同一な品質の細胞加工物を製造可能な培養容器である、接着細胞用の再生医療用シングルユースシステムを考案した(特許文献1)。再生医療用シングルユースシステムは医療用ゴム栓などの無菌導入口を通じて、細胞を投入でき、細胞培養体を製造できる密封された環境で構築された培養容器である。
【0005】
しかしながら、細胞培養体の品質と安全性を立証するためには、細胞培養体の試料回収が必須であり、医療現場での使用直前ではなく、細胞培養体の出荷または譲渡までに試料を回収し、検査結果を照合し、品質と安全性を確立することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2015/190090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生体への移植に用いられる細胞培養体の出荷または譲渡前には培養して得られた細胞の品質管理のためのサンプリングが求められる場合がある。しかしながら、細胞培養体が移植に用いられる場合には、細胞培養バッグは、無菌環境、例えば、高度に清浄化された無菌施設内で開封することが必要となり、多額の経費が必要となる。
【0008】
本発明は、外部汚染リスクを生じさせずに細胞培養バッグから培養細胞をサンプリングする手法およびそのための細胞培養バッグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の細胞培養バッグ及びセットを提供するものである。
項1. 無菌導入口を備えた細胞培養バッグであって、前記バッグには複数の培養支持体が収容され、かつ、前記バッグが溶着可能なポリマーで構成されている、細胞培養バッグ.
項2. さらに支持体が収容されてなる、項1に記載の細胞培養バッグ.
項3. 培養液が収容された培養液収容室と、複数の培養支持体が収容された細胞培養室を備えた細胞培養バッグであって、前記バッグは溶着可能なポリマーで構成され、前記培養液収容室と前記細胞培養室を開放することにより前記培養液が前記培養液収容室から前記細胞培養室に移動可能に構成されている、細胞培養バッグ.
項4. 前記細胞培養室もしくは前記培養液収容室に無菌導入口が設けられている、項3に記載の細胞培養バッグ.
項5. 前記培養支持体上に培養細胞が接着して細胞培養体を形成してなる、項1~4のいずれか1項に記載の細胞培養バッグ.
項6. 前記培養支持体が生体適合性物質を含む、項1~5のいずれか1項に記載の細胞培養バッグ.
項7. 培養液と少なくとも1つの培養容器を含む細胞培養室が複数備えられ、隣接する細胞培養室が溶着部で隔てられ、かつ、各細胞培養室に収容された前記培養支持体上に培養細胞が接着して細胞培養体を形成してなる、細胞培養バッグ.
項8. 前記培養支持体が生体適合性物質を含む、項7に記載の細胞培養バッグ.
項9. 培養液と少なくとも1つの細胞培養体を含む2以上の細胞培養バッグのセットであって、前記細胞培養体は培養支持体上に培養細胞が接着して形成されたものであり、かつ、各細胞培養バッグ中の培養細胞は同等な培養条件で培養されたものである、2以上の細胞培養バッグのセット.
項10. 1つの細胞培養体と培養液を含むサンプリング用の細胞培養バッグを含む、項9に記載のセット.
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、一つの細胞培養バッグを無菌的に複数の部分に分離することによって、細胞のサンプリング検査を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の細胞培養バッグの一例を示す。
図2】クランプにより培養液収容室と細胞培養室が隔てられた細胞培養バッグを示す。
図3】クランプを緩めて培養液が細胞培養バッグ全体に培養液が広がった状態を示す。
図4】(a)細胞培養後に細胞培養バッグを溶着するときの一例及び(b)生体適合性支持体表面の顕微鏡写真を示す。
図5】溶着部を切り離した細胞培養バッグのセットを示す。
図6】回収された細胞培養体の組織標本を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔定義〕
本明細書において使用される用語の定義を以下に記載する。
【0013】
「培養支持体」は、細胞が接着し増殖可能な表面を持つ全ての支持体を包含する。培養支持体は、生体適合性の支持体であってもよく、例えば、それ自体が細胞と共に生体に移植されたときに生体適合性であり得る。また、「培養支持体」は、移植可能な細胞培養体を製造可能なものであり得る。培養し自体は、非生体適合性の支持体であってもよく、例えば、培養皿、例えば、細胞シートのような細胞培養体を培養するための培養皿が挙げられる。
培養支持体としてはまた、細胞をその表面から容易に剥離する可能な培養皿等が挙げられる。このような培養支持体の例としては、温度依存的に細胞の接着性が変化する培養皿(温度感受性培養皿)が挙げられる。培養支持体の一例を図1の(5)に示す。
【0014】
「支持体」は、培養支持体を固定する容器であり、培養支持体に均一な細胞の播種を可能とするために、培養支持体を固定するものである。実施例では「支持体」としてトランスウェルが使用されている。
【0015】
「支持体」として、細胞播種時に細胞が「培養支持体」に均一に接着するまでの間、重力または遠心力に対して平面形状を保つことができる容器が挙げられる。
【0016】
「生体適合性」は、培養支持体もしくは支持体のうち動物に移植しても、異物化反応を引き起こしにくい性質をいう。「生体適合性」は、移植材料おいて好ましい特性であると考えられる。培養支持体もしくは支持体に使用される生体適合性物質として、たとえば羊膜、コラーゲンシートが挙げられる。
【0017】
「細胞培養体」は、培養細胞を含むものである。「細胞培養体」は細胞のみで構成されていてもよく、細胞培養体と生体適合性の培養支持体との複合体(例えば、細胞が生体適合性物質に付着、内封された状態)であってもよい。
【0018】
「細胞培養バッグ」は、インキュベーター内などの培養環境下で、細胞培養に適した環境を提供可能なバッグであって、溶着可能なポリマーで構成されている。細胞培養バッグは、例えば、ガス透過性を有し得る。
【0019】
「無菌導入口」は、細胞バッグ内に、細胞、細胞培養体および培養支持体などの物を無菌的に導入または取り出し可能な口である。無菌導入口としては、ゴム栓や無菌接続デバイスが該当する。無菌導入口は、図1に示されるような細胞導入口3や培養液導入口2が該当する。図1において、4は空気が出入り可能な無菌導入口である。
【0020】
「細胞培養室」は、培養支持体が収容された細胞培養バッグの区画である。細胞培養バッグが複数の区画を有する場合、それぞれの区画は、閉鎖していてもよいし、互いに連通していてもよい。
【0021】
「培養液収容室」は、培養液が収容された細胞培養バッグの区画である。培養液収容室は、培養開始前の培養液が収容された区画の状態を表す用語として用いられる。
【0022】
〔本発明の細胞培養バッグ〕
本発明の細胞培養バッグ1は、複数の培養支持体5を備えることを特徴とし、前記培養支持体5は、さらに支持体により支えられていてもよい。本発明の細胞培養バッグの一例を図1に示す。細胞培養バッグ1は、3つの無菌導入口2,3,4を備えており、具体的には培養液導入口2、細胞導入口3、空気出入口4である。
【0023】
培養支持体5上に培養細胞が接着して培養支持体上で細胞培養体を形成する。培養支持体5が羊膜、コラーゲンシートなどの柔らかい材料の場合、さらに支持体(図示せず)により支えられていてもよい。
【0024】
細胞培養体は、単独で、または培養支持体と一緒に、ヒトなどの哺乳動物への埋入、移植などに用いることができる。
【0025】
培養支持体5は、細胞を接着させて培養するためのものであり、培養細胞は培養支持体に接着した状態で培養される。培養支持体は容器、シート等の任意の形状のものを含むことができる。
【0026】
本発明の細胞培養バッグ1は、複数の細胞培養室を備え、複数の細胞培養室のそれぞれは、他の細胞培養室と連通部によって連通していることができる。複数の細胞培養室それぞれは、培養支持体を備えることができる。連通部は、培養支持体が一つの細胞培養室から他の細胞培養室に移動しないように形成されている(例えば、連通部は培養支持体が通過しない程度の小さな形状を有し得る)。連通部は、圧着可能な素材で形成されていることができる。連通部は、例えば、図1に示される切り込み6によって形成される連通部であってもよい。
【0027】
培養される細胞は、無菌導入口(細胞導入口)3から培養支持体5に向けて供給され、例えば適切な径の注射器などにより培養支持体5に向けて供給され、培養支持体5に接着した状態で培養される。
【0028】
無菌導入口2,3,4は、例えば医療用ゴム栓などを用いることができ、その場合、注射器で培養細胞を培養支持体に供給し、注射器を抜いた場合でも密封状態が維持される。
【0029】
無菌導入口2は、例えば前記ゴム栓のほかフィルターにより構成され、無菌状態を維持しつつ、細胞培養液を供給、または排出することができるものを使用してもよい。培養液を細胞培養体の製造工程中に供給した後に無菌導入口2を溶着することで、細胞培養バッグ内の無菌状態を維持することができるし、細胞を導入する以前に予め培養液を供給した後に、無菌導入口を溶着することで、細胞培養バッグ内の無菌状態を維持することができる。培養液を導入後に無菌導入口(空気出入口)4を溶着することで細胞培養バッグ内を密閉状態に保つことができる。
【0030】
また、図5に示すようにこれら無菌導入口2,3,4が設置されている培養液収容室または細胞培養室7の一部を溶着し、切断することで細胞培養バッグ内の無菌状態を維持することができる。
【0031】
図2は、細胞培養液(培地)をバッグ内に導入後にバッグを立てて培養液を片側に寄せ、クランプ8で挟むことによって培養液がクランプ8を超えて移動できないようにしたときの図を示す。前記クランプ8により細胞培養バッグは大部分の培養液が収容された培養液収容室7と複数の培養支持体5が収容された細胞培養室に分けられる。図2は細胞培養室側に培養液導入口2が設けられているので細胞培養室に細胞培養液が少し残されているが、培養液収容室7側に無菌導入口が設けられ、クランプ8で挟んだ状態で培養液導入口2から培養液を導入し、前記導入口2を溶着により封止することで、細胞培養室に培養液がない状態で培養液が充填された培養液収容室と複数の支持体が収容された細胞培養室に分けることもできる。
【0032】
図2において、培養支持体5に培養細胞を供給して培養細胞を接着させた後にクランプ8を徐々に緩め、培養液を細胞培養室に流動させる(図3)。図3に示す細胞培養バッグ1は中央付近にV字型の切り込み6が形成されている。この2つの切り込み6はクランプによるバッグの挟み込みと、後の溶着が容易になるようにするものであるが、これらの切り込みはなくてもよい。
【0033】
培養液は、培養支持体5に接着した培養細胞がはがれないような速度でバッグ内に行き渡らせることができる。図3の状態で所定の培養期間密閉状態で培養することで、所望の数及び/又は性質を有する培養細胞が支持体に接着した細胞培養体を得ることができる。細胞の培養期間は、例えば1~4週間が挙げられる。このような期間内であれば、培地交換無しで培養しても問題は生じないことを本発明者は確認している。
【0034】
なお、図1図2では、培養支持体5に培養細胞が接着して培養されるが、図3~6では、支持体5上に薄膜からなる培養支持体9が載せられ、細胞は培養支持体9に接着して培養される。
【0035】
培養後、細胞が良好に培養されたのかを確認するために、細胞の一部をサンプリングすることができる。そして、本発明では、複数の細胞培養体の一部をサンプリングに供することができる(以下、「サンプリング用の細胞培養体」という)。所定の培養期間の後、サンプリング用の細胞培養体を含む区画を形成するために、溶着装置10を用いて細胞培養バッグ1に溶着部を形成することができる(図4)。溶着部は、サンプリング用の細胞培養体とその他の細胞培養体が含まれる領域とを分断する目的で1箇所形成すればよいが、2箇所以上形成してもよい。サンプリング用の細胞培養体は培養が首尾よく行われたことを確認するためのものであるので、細胞数が少ない、もしくは、細胞培養体のサイズが小さいものであってもよい。溶着部を切り離し(図5)、サンプルング用の細胞培養体が含まれる部分11とその他の細胞培養体が含まれる部分12とに分け、サンプリング用の細胞培養バッグ11から支持体5上の細胞培養体9を取り出すことによって細胞をサンプリングすることができる。取り出された細胞培養体の組織標本を図6に示す。図5において、11,12はサンプリング用又は移植用の細胞培養体を含む区画である。
【0036】
サンプリング検査によって、この細胞培養体の有用性及び安全性が確認されることで、同等/同一条件で培養された同一バッグ内の他の細胞培養体の有用性及び安全性が推認されれば、当該他の細胞培養体をヒトなどの哺乳動物に対する移植、埋入などの材料として使用することができる。
【0037】
本発明の細胞培養バッグ1は可撓性のものであり、例えば樹脂製のバッグが使用できる。細胞培養バッグは細菌、ウイルスなどは通さないが、気体は透過できる材料を使用することが望ましい。
【0038】
ある態様では、細胞の培養は、細胞培養施設において行われ、細胞培養施設において細胞がサンプリングされ、その後、細胞は患者がいる病院に送られる。ある態様では、細胞の培養は、細胞培養施設において行われ、患者がいる病院に送られ、その後、細胞がサンプリングされる。ある態様では、細胞の培養およびサンプリングは、患者がいる病院において行われる。
【0039】
本発明の培養対象となる細胞は、特に限定されず、動物細胞を広く用いることができ、例えば、細胞株、遺伝子改変された細胞を用いることもできる。
【0040】
培養対象となる細胞の一例は、体細胞、前駆細胞、および幹細胞である。幹細胞は、自己複製能と分化能とを有する細胞であれば特に制限されず、多能性幹細胞でもよく、体性幹細胞でもよく、単一分化性を持つ幹細胞でもよい。
【0041】
多能性幹細胞は、自己複製能と、外胚葉、中胚葉および内胚葉のいずれにも分化し得る多分化能とを有する細胞である。多能性幹細胞としては、ES細胞、iPS細胞、EG細胞、MAP細胞、APS細胞、Muse細胞などが挙げられ、体性幹細胞としては、間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞などが挙げられる。単一分化性を持つ幹細胞は、未分化な幹細胞から、分化した一種類の細胞のみを供給する細胞である。単一分化性を持つ幹細胞は、皮膚表皮幹細胞などの皮膚表皮由来上皮幹細胞や、角膜上皮幹細胞、口腔粘膜上皮幹細胞などの重層偏平上皮幹細胞などが挙げられる。
【0042】
培養対象となる細胞の他の例は、生体を構成する体細胞、及びその前駆細胞である。具体的には、リンパ球、好中球、単球、巨核球、マクロファージ、線維芽細胞、基底細胞、ケラチノサイト、上皮前駆細胞、周皮細胞、内皮細胞、脂肪前駆細胞、筋芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、肝実質細胞、膵β細胞、グリア細胞等が挙げられる。
【0043】
細胞をサンプリングする方法または細胞を培養する方法であって、細胞が導入された細胞培養バッグを提供することと、当該細胞培養バッグ内において培養に適した条件下で当該細胞を培養することと、細胞培養バッグを溶着することによって互いに連通しない複数の部分に分けることと、前記溶着部において細胞培養バックを複数の部分に分離することとを含む、方法。本発明の方法は、分離された複数部分の一部に含まれる細胞をサンプリング検査に供することをさらに含んでいてもよい。本発明の方法は、分離された複数部分の一部に含まれる細胞を更に培養することを含んでいてもよい。本発明の方法は、分離された複数部分の一部から、細胞培養体を取り出すことを含んでいてもよい。取り出された細胞培養体は、単独で、または培養支持体と共に、動物(例えば、非ヒト動物、非ヒト哺乳動物、およびヒト)の体に移植することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 細胞培養バッグ
2 無菌導入口(培養液導入口)
3 無菌導入口(細胞導入口)
4 無菌導入口(空気出入口)
5 培養支持体(図1,2)
6 切り込み
7 細胞培養室
8 クランプ
9 培養支持体(図3~5)
10 溶着装置
11 細胞培養体を含む区画
12 細胞培養体を含む区画
図1
図2
図3
図4
図5
図6