(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121314
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】歩行者用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/36 20110101AFI20220812BHJP
【FI】
B60R21/36 352
B60R21/36 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018590
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
(57)【要約】
【課題】カウルカバー部における前部側の領域を迅速に膨張させることが可能な歩行者用エアバッグ装置の提供。
【解決手段】エアバッグ45と、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター30と、を備える。エアバッグが、カウルカバー部48と、カウルカバー部の両端から後方に延びる2つのピラーカバー部と、を備える。インフレーターが、外形形状を略円柱状とした本体部31と、本体部の外周面から本体部の軸直交方向に突出するように配置される取付ボルトと、を備えて、本体部を、軸方向を左右方向に略沿わせるように配置させつつ、カウルカバー部の内部に挿入させた状態で、取付ボルトを利用して収納部位側に取り付けられる。カウルカバー部の内部であって、本体部の後側となる位置に、可撓性を有したシート体から形成されて、本体部から吐出される膨張用ガスの後方への流出を抑制するガス流れ規制部材70が、配設される
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフードパネルの後端近傍に配設される収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備えて、
前記エアバッグが、膨張完了時にボディ側に配置される車体側壁部と、該車体側壁部と対向して配置される歩行者側壁部と、を有し、前記歩行者側壁部と前記車体側壁部との外周縁相互を全周にわたって結合させることにより袋状とされるとともに、膨張完了時に前記フードパネルの後端側からカウルにかけての領域の上面側を覆うカウルカバー部と、該カウルカバー部の両端から後方に延びて左右のフロントピラーの下部前面側を覆う2つのピラーカバー部と、を備える構成とされて、
前記インフレーターが、
外形形状を略円柱状とした本体部と、該本体部の外周面から前記本体部の軸直交方向に突出するように配置される取付ボルトと、を備えるとともに、
前記本体部を、軸方向を左右方向に略沿わせるように配置させつつ、前記取付ボルトを外部に突出させるようにして、前記カウルカバー部の内部に挿入させた状態で、前記取付ボルトを利用して前記収納部位側に取り付けられる構成の歩行者用エアバッグ装置において、
前記カウルカバー部の内部であって、前記本体部の後側となる位置に、可撓性を有したシート体からなるとともに、前記歩行者側壁部と前記車体側壁部とを連結するように構成されて、前記本体部から吐出される前記膨張用ガスの後方への流出を抑制するガス流れ規制部材が、配設されていることを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記インフレーターの前記本体部が、一端側に、前記膨張用ガスを吐出させるガス吐出部を、配設させるとともに、外周側を、可撓性を有したシート体からなる筒状のインナチューブに覆われた状態で、カウルカバー部の内部に配設され、
前記インナチューブが、前記本体部の外周側を覆うとともに前記取付ボルトを突出させるように構成される取付側部と、前記ガス吐出部から吐出される前記膨張用ガスを整流させるガス整流部と、を備える構成とされ、
該ガス整流部が、前記ガス吐出部側と前記本体部の中央側となる左右両端側を開口させた略筒状とされるとともに、周壁の領域に、前記膨張用ガスを流出させるガス流出孔を、備える構成とされ、
前記ガス流れ規制部材が、前記ガス整流部における前記本体部の中央側の端部の開口と、前記ガス流出孔と、の後方を覆い可能に、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記ガス流れ規制部材が、前記エアバッグの膨張時における前記歩行者側壁部の前記車体側壁部側からの離隔による張力の作用時に、前記歩行者側壁部と前記車体側壁部との連結状態を解除させるように、左右方向の全長にわたって分断可能な構成とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記ガス流れ規制部材が、左右方向となる前記本体部の長手方向に略沿った断続的な切目を設けて前記エアバッグの膨張時に該切目の周縁部位を破断させることにより、全長にわたって分断可能とする破断予定部を、有する構成とされ、
該破断予定部が、前記ガス流れ規制部材における分断後の車体側壁部側部位を前記フードパネルの上面よりも下方に配置可能な位置に、形成されていることを特徴とする請求項3に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記車体側壁部に、前記インフレーターを内部に挿入させるための挿入用開口部が、形成され、
該挿入用開口部が、
前記車体側壁部に前記本体部の軸方向に略沿うような切目を設けるように構成されて前記本体部を挿入させるための挿入用スリットと、
前記車体側壁部において、前記挿入用スリットに対して略直交方向側で離隔した位置に配置されて、前記取付ボルトを突出させるための挿通孔と、
前記車体側壁部の外周側に配置されて前記挿入用スリットを塞ぎ可能に構成される可撓性を有した蓋パネルと、
を備える構成とされて、
該蓋パネルが、一端側を、前記車体側壁部に結合されて、他端側に、前記挿通孔に対応して前記取付ボルトを突出させるための取付孔を、配設させる構成とされ、
前記ガス流れ規制部材が、前記挿入用スリットを挿通されるようにして、前記車体側壁部側の端部を、前記蓋パネルに結合させる構成とされていることを特徴とする請求項4に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフードパネルの後端近傍に配設される収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える構成の歩行者用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者用エアバッグ装置としては、膨張完了時にフードパネルの後端側からカウルにかけての領域の上面側を覆うカウルカバー部と、カウルカバー部の両端から後方に延びて左右のフロントピラーの下部前面側を覆う2つのピラーカバー部と、を有するエアバッグを備える構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来の歩行者用エアバッグ装置では、カウルカバー部の内部に、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターを配置させて、このインフレーターから吐出される膨張用ガスを内部に流入させて、エアバッグを膨張させる構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグが、カウルの上方を左右の略全域にわたって覆うように左右に長く延びるカウルカバー部と、カウルカバー部の両端から後方に延びる2つのピラーカバー部と、を備える構成であり、容積が大きく、広いエリアを覆うように膨張する構成である。そして、車両の前端側と接触する歩行者を迅速に保護する観点からは、カウルカバー部において、フードパネルの後端の上面側を覆う前部側の領域を、迅速に展開させつつ膨張させることが望ましく、従来の歩行者用エアバッグ装置では、カウルカバー部における前部側の領域を迅速に膨張させる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、カウルカバー部における前部側の領域を迅速に膨張させることが可能な歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置は、車両のフードパネルの後端近傍に配設される収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備えて、
エアバッグが、膨張完了時にボディ側に配置される車体側壁部と、車体側壁部と対向して配置される歩行者側壁部と、を有し、歩行者側壁部と車体側壁部との外周縁相互を全周にわたって結合させることにより袋状とされるとともに、膨張完了時にフードパネルの後端側からカウルにかけての領域の上面側を覆うカウルカバー部と、カウルカバー部の両端から後方に延びて左右のフロントピラーの下部前面側を覆う2つのピラーカバー部と、を備える構成とされて、
インフレーターが、
外形形状を略円柱状とした本体部と、本体部の外周面から本体部の軸直交方向に突出するように配置される取付ボルトと、を備えるとともに、
本体部を、軸方向を左右方向に略沿わせるように配置させつつ、取付ボルトを外部に突出させるようにして、カウルカバー部の内部に挿入させた状態で、取付ボルトを利用して収納部位側に取り付けられる構成の歩行者用エアバッグ装置において、
カウルカバー部の内部であって、本体部の後側となる位置に、可撓性を有したシート体からなるとともに、歩行者側壁部と車体側壁部とを連結するように構成されて、本体部から吐出される膨張用ガスの後方への流出を抑制するガス流れ規制部材が、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の歩行者用エアバッグ装置では、カウルカバー部の内部において、インフレーターの本体部の後側となる位置に、本体部から吐出される膨張用ガスの後方への流出を抑制するガス流れ規制部材が、配設されていることから、エアバッグの膨張初期に、本体部よりも後方に配置されるピラーカバー部側に膨張用ガスが流れることを抑制できる。そのため、カウルカバー部において、特に、ガス流れ規制部材より前側の領域を、迅速に膨張させることができる。
【0008】
したがって、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、カウルカバー部における前部側の領域を迅速に膨張させることができる。
【0009】
具体的には、本発明の歩行者用エアバッグ装置において、インフレーターの本体部を、一端側に、膨張用ガスを吐出させるガス吐出部を配設させるとともに、外周側を可撓性を有したシート体からなる筒状のインナチューブに覆われた状態で、カウルカバー部の内部に配設させ、
インナチューブを、本体部の外周側を覆うとともに取付ボルトを突出させるように構成される取付側部と、ガス吐出部から吐出される膨張用ガスを整流させるガス整流部と、を備える構成とし、
ガス整流部を、ガス吐出部側と前記本体部の中央側となる左右両端側を開口させた略筒状とするとともに、周壁の領域に、膨張用ガスを流出させるガス流出孔を配設させる構成とし、
ガス流れ規制部材を、ガス整流部における本体部の中央側の端部の開口と、ガス流出孔と、の後方を覆い可能に、構成することが、好ましい。
【0010】
歩行者用エアバッグ装置を上記構成とすれば、インナチューブにより、本体部のガス吐出部から吐出される膨張用ガスを、整流された状態で、エアバッグ内に流出させることができる。そして、ガス流れ規制部材は、インナチューブにおけるガス整流部の一部の後方を覆うように配置される構成であることから、ガス整流部から流出される膨張用ガスは、エアバッグの膨張初期にも、ある程度、ピラーカバー部側に流れることができ、ピラーカバー部が必要以上に遅れて膨張することを抑制でき、エアバッグ全体を、迅速かつ安定して膨張させることができる。
【0011】
さらに、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、ガス流れ規制部材を、エアバッグの膨張時における歩行者側壁部の車体側壁部側からの離隔による張力の作用時に、歩行者側壁部と車体側壁部との連結状態を解除させるように、左右方向の全長にわたって分断可能な構成とすれば、エアバッグの膨張途中において、ガス流れ規制部材による規制が解除されることから、カウルカバー部の前部側の領域を先行して膨張させた後に、カウルカバー部の全体を厚く膨張させつつ、ピラーカバー部も迅速に膨張させることが可能となって、好ましい。
【0012】
さらにまた、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、ガス流れ規制部材に、左右方向となる本体部の長手方向に略沿った断続的な切目を設けてエアバッグの膨張時に該切目の周縁部位を破断させることにより、全長にわたって分断可能とする破断予定部を、配設させる構成とし、
破断予定部を、ガス流れ規制部材における分断後の車体側壁部側部位をフードパネルの上面よりも下方に配置可能な位置に、形成することが、好ましい。
【0013】
歩行者用エアバッグ装置をこのような構成とすれば、破断予定部の破断後に生じるガス流れ規制部材の車体側壁部側部位が、収納部位から突出して膨張するエアバッグ内を流れる膨張用ガスのガス流れに影響を与えることを、抑制でき、カウルカバー部の前部側の領域よりも遅れて膨張するピラーカバー部や、カウルカバー部の後部側の領域に、膨張用ガスを円滑に流入させることができる。
【0014】
さらにまた、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、車体側壁部に、インフレーターを内部に挿入させるための挿入用開口部を、形成し、
挿入用開口部を、
車体側壁部に本体部の軸方向に略沿うような切目を設けるように構成されて本体部を挿入させるための挿入用スリットと、
車体側壁部において、挿入用スリットに対して略直交方向側で離隔した位置に配置されて、取付ボルトを突出させるための挿通孔と、
車体側壁部の外周側に配置されて挿入用スリットを塞ぎ可能に構成される可撓性を有した蓋パネルと、
を備える構成として、
蓋パネルを、一端側を車体側壁部に結合させて、他端側に、挿通孔に対応して取付ボルトを突出させるための取付孔を配設させる構成とし、
ガス流れ規制部材を、挿入用スリットを挿通されるようにして、車体側壁部側の端部を蓋パネルに結合させる構成とすることが、好ましい。
【0015】
歩行者用エアバッグ装置をこのような構成とすれば、インフレーターの本体部を、挿入用スリットを経て、折り畳まれたエアバッグの内部に挿入させる際に、挿入用スリットの周縁において挿通孔から離隔した側の領域が、ガス流れ規制部材によって塞がれるような態様となることから、インフレーターの本体部を、ガス流れ規制部材によって、挿通孔側に円滑にガイドさせることができて、誤挿入の発生を抑制して、インフレーターを容易にエアバッグに組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態である歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。
【
図2】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略縦断面図であり、インフレーターの部位を示す。
【
図3】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略縦断面図であり、取付ブラケットの部位を示す。
【
図4】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、インフレーターの部位を示す左右方向に沿った概略縦断面図である。
【
図5】実施形態の歩行者用エアバッグ装置で使用するエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【
図6】
図5のエアバッグを平らに展開した状態の底面図である。
【
図7】
図5のエアバッグにおける挿入用開口部を示す部分拡大平面図である。
【
図8】
図5のエアバッグにおける挿入用開口部を示す部分拡大底面図である。
【
図9】
図5のエアバッグにおいて、挿入用開口部の部位を示す部分拡大断面図である。
【
図10】
図5のエアバッグにおいて、挿入用開口部の部位を示す概略分解斜視図である。
【
図11】実施形態の歩行者用エアバッグ装置で使用するインナチューブの平面図である。
【
図12】
図5のエアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
【
図14】
図5のエアバッグにおいて、蓋パネルを開いた状態を示す部分拡大断面図である。
【
図15】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張する過程を示す部分拡大縦断面図である。
【
図16】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張初期におけるインナチューブとガス流れ規制部材とを示す概略断面図である。
【
図17】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略平面図である。
【
図18】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の歩行者用エアバッグ装置M(以下「エアバッグ装置」と省略する)は、車両Vにおけるフードパネル15の後端15c付近に搭載されている。実施形態のエアバッグ装置Mは、
図1~4に示すように、フードパネル15の後端15cに近接した位置であって、左右のフロントピラー5L,5Rの間となる車両Vの左右方向の略中央となる位置に、配置されている。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて説明する。
【0018】
フードパネル15は、
図1に示すように、車両Vにおけるエンジンルームの上方を覆うように配設されるもので、左右両縁側における後端15c近傍に配置される図示しないヒンジ部により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、実施形態の場合、鋼板や、アルミニウム(アルミニウム合金)等の板材からなり、
図2,3に示すように、アウタパネル15aとインナパネル15bとを備えている。フードパネル15は、後述するフロントウィンドシールド4に合わせて、
図1に示すように、後端15c側を、左右方向の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲させて構成されている。
【0019】
フードパネル15の後方には、
図2,3,18に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド4の下部4a側に連ならせるように、配設されている。このカウル7も、フードパネル15の後端15cの湾曲形状に合わせて湾曲して形成されている(
図1参照)。また、カウル7の部位には、
図1に示すように、ワイパ8が配設されている。このワイパ8は、
図2,3,18の二点鎖線に示すように、カウルルーバ7bから上方に突出するように配設されている。フロントウィンドシールド4の左右の外方には、フロントピラー5L,5Rが、配設されている。
【0020】
エアバッグ装置Mは、
図1~4に示すように、エアバッグ45と、エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター30と、エアバッグ45とインフレーター30とを収納する収納部位としてのケース20と、折り畳まれたエアバッグ45を覆うエアバッグカバー25と、エアバッグ45の後述する取付片部80をケース20に取り付ける取付ブラケット110と、を備えている。
【0021】
収納部位としてのケース20は、板金製として、
図2,3に示すように、底壁部21と、底壁部21から上方に延びて上端側を開口させて構成される略四角筒形状の周壁部22と、を備えた略箱形状とされるもので、上端側の突出用開口20aから、膨張するエアバッグ45を突出させる構成である。底壁部21には、インフレーター30を取り付ける取付ボルト39と、エアバッグ45の取付片部80を取り付ける取付ボルト112と、を、それぞれ、挿通させて、ナット42,114止めして取り付けるための取付孔21aが、形成されている(
図2~4参照)。実施形態の場合、ケース20は、前側の領域をフードパネル15の後端15cの直下に位置させ、後側の領域をフードパネル15よりも後側に位置させるように、配置されるもので、図示しないブラケットを利用して、ボディ1側のカウルパネル7aに取り付けられる構成である。
【0022】
エアバッグカバー25は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質合成樹脂製とされるもので、ケース20の上端側の突出用開口20aを覆うように配置されて、エアバッグ45の展開膨張時に、エアバッグ45に押されて後側に向かって開き可能な扉部26を、有する構成とされている(
図2,3,18参照)。このエアバッグカバー25は、所定箇所を、図示しない取付手段を用いてケース20に取り付けられている。
【0023】
インフレーター30は、本体部としてのインフレーター本体31と、インフレーター本体31をケース20に取り付けるための取付ブラケット35と、を備える構成とされている。
【0024】
本体部としてのインフレーター本体31は、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプとされるもので、
図2,4に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして、エアバッグ45における後述するカウルカバー部48の前後左右の略中央となる位置の内部に、配置される構成である。詳細には、インフレーター本体31は、カウルカバー部48の前後の中央よりもやや後方となる位置に、配置されている(
図5,6の二点鎖線参照)。インフレーター本体31は、
図4に示すように、軸方向の一端側(実施形態の場合、右端31b側)に、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出部32を配設させて構成されるもので、軸方向の他端側(左端31a側)から延びる図示しないリード線を介して、図示しない作動回路と電気的に接続されている。実施形態のエアバッグ装置Mを搭載する車両Vのフロントバンパ6(
図1参照)には、歩行者との衝突を検知可能な図示しないセンサが、配設されている。作動回路は、センサからの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター本体31を作動させることとなる。
【0025】
インフレーター本体31をケース20に取り付けるための取付ブラケット35は、
図2,4に示すように、インフレーター本体31を保持する保持部36と、保持部36から下方に突出する複数(実施形態の場合、3個)の取付ボルト39と、を備える構成とされている。保持部36は、板金製として、インフレーター本体31の下面側を支持するように左右方向(インフレーター本体31の軸方向)に略沿って延びる帯状として構成され、左右方向に沿った複数箇所(実施形態の場合、3箇所)に、インフレーター本体31を支持する支持片部37を、前後両側に突出させて構成されている。各支持片部37は、インフレーター本体31の外周面を支持可能に、保持部36の前後の縁部から先端を前後の外方に向けつつ上側に向かって延びるように傾斜して形成されるもので、前後で対称形とされている(
図2参照)。実施形態の場合、支持片部37は、
図4に示すように、取付ボルト39に対応した位置に、形成されている。取付ボルト39は、保持部36の左右両端側と左右の略中央との3箇所において、それぞれ、下方に突出するように形成されている。そして、実施形態では、この取付ブラケット35は、保持部36にインフレーター本体31を保持させた状態で、外周側からクランプ40を巻き付けることにより、インフレーター本体31を取り付ける構成である。クランプ40は、実施形態の場合、保持部36の左右両端側の2箇所に、配置されている(
図4参照)。
【0026】
すなわち、実施形態のインフレーター30では、
図3,4に示すように、本体部としてのインフレーター本体31の外周面31cから、インフレーター本体31の軸直交方向(下方)に、取付ボルト39が、突出するように配置されている。そして、インフレーター30は、クランプ40を用いて、取付ブラケット35にインフレーター本体31を取り付けた状態で、後述する挿通孔52及び取付孔56から、取付ボルト39を外部に突出させるようにして、インフレーター本体31と取付ブラケット35における保持部36とを、エアバッグ45の内部に挿入させた状態で、ケース20の底壁部21に取り付けられる構成である。詳細には、インフレーター30は、エアバッグ45における後述する蓋パネル54から突出している各取付ボルト39を、ケース20の底壁部21から突出させてナット42止めすることにより、エアバッグ45とともに、ケース20に取り付けられる構成である(
図2参照)。また、実施形態では、インフレーター30は、インフレーター本体31と取付ブラケット35における保持部36との外周側を、可撓性を有した筒状のインナチューブ85に覆われて、エアバッグ45内に収納される構成である。インフレーター30(インフレーター本体31)は、軸方向の中央を、バッグ本体46の左右の中央と略一致させるようにして(
図5,6参照)、エアバッグ45におけるカウルカバー部48の前後の中央よりもやや後側となる位置に、収納される構成であり、さらに詳細には、ガス吐出部32を配設させている右端31b側を、蓋パネル54よりも右方(すなわち、後述する挿入用スリット51よりも右方)に位置させ、左端31a側を蓋パネル54の左縁よりも右方に位置させるようにして、カウルカバー部48内に収納されている(
図8参照)。
【0027】
エアバッグ45は、
図5~10に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体46と、バッグ本体46の膨張完了時の厚さを規制するテザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CR,64L,64R,65,66L,66Rと、バッグ本体46内への膨張用ガスの流れを規制するガス流れ規制部材70と、バッグ本体46の車体側壁部46a側をケース20に取り付ける取付片部80(80L,80R)と、バッグ本体46内においてインフレーター30の外周側を覆うインナチューブ85と、を備える構成とされている。また、バッグ本体46は、インフレーター30を内部に挿入させるための挿入用開口部50を、有している。
【0028】
バッグ本体46は、膨張完了時の外形形状を、正面側から見て、左右に幅広の略U字形状とされるもので、フロントウィンドシールド4の下部4aに略沿うように左右方向に略沿って配置されるカウルカバー部48と、カウルカバー部48の両端からそれぞれ後方へ延びて左右のフロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側を覆うピラーカバー部60L,60Rと、を備えて構成されている。また、バッグ本体46は、膨張完了時にボディ1側に配置される車体側壁部46aと、車体側壁部46aと対向して配置される歩行者側壁部46bと、を有し、車体側壁部46aと歩行者側壁部46bとの外周縁相互を全周にわたって結合(縫着)させることにより、袋状とされている。
【0029】
カウルカバー部48は、膨張完了時にフードパネル15の後端15cからカウル7にかけての領域の上面側を覆うもので、詳細には、実施形態の場合、膨張完了時に、フードパネル15の後端15c側の部位から、カウル7を経て、フロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての領域の上面側(前面側)を、車幅方向(左右方向)の略全域にわたって、ワイパ8も含めて覆うように構成されている(
図17,18参照)。実施形態のエアバッグ45では、このカウルカバー部48における前後左右の略中央となる位置に、インフレーター30が収納される構成であり、車体側壁部46aにおいて、カウルカバー部48の前後左右の略中央となる領域が、インフレーター30を内部に挿入させるための挿入用開口部50を、構成している(
図6,8参照)。
【0030】
詳細には、インフレーター30は、カウルカバー部48の前後の中央よりもやや後側となる位置に、収納されるもので、挿入用開口部50も、カウルカバー部48における前後の中央よりもやや後側となる位置に、配設されている。具体的には、挿入用開口部50は、車体側壁部46aにおいて、後述する前側左右テザー64L,64Rと後側左右テザー65間の領域に、配設されている。挿入用開口部50は、
図8~10に示すように、車体側壁部46aに形成される挿入用スリット51と、インフレーター30の取付ボルト39を突出させるための挿通孔52と、挿入用スリット51を外周側から塞ぐ蓋パネル54と、を備えている。挿入用スリット51は、インフレーター30(インフレーター本体31)を挿入させるためのもので、インフレーター本体31の軸方向に略沿うように、左右方向に略沿った直線状に形成されている。この挿入用スリット51は、長さ寸法を、インフレーター本体31の長さ寸法より小さく設定されている(
図8参照)。実施形態の場合、挿入用スリット51は、中央を、バッグ本体46における左右の中央(中央の挿通孔52の位置と略一致)よりも左方にずらすようにして、配設されている(
図8参照)。挿通孔52は、インフレーター30の取付ボルト39を突出させるためのもので、挿入用スリット51に対して略直交方向側で離隔した位置、実施形態の場合、挿入用スリット51の前側に、配置されている。挿通孔52は、取付ボルト39に対応して、左右方向に沿って3箇所に形成されている。蓋パネル54は、可撓性を有したシート体からなる別部材から構成されるもので、車体側壁部46aの外周側において、挿入用スリット51を塞ぎ可能に、外形形状を、左右方向側を幅広とした略長方形状とされている。この蓋パネル54も、左右の中央を、バッグ本体46における左右の中央よりも左方にずらすようにして、配設されている。実施形態の場合、蓋パネル54は、後端54b側を、車体側壁部46aにおいて挿入用スリット51を間にして挿通孔52から離隔した側、すなわち、車体側壁部46aにおける挿入用スリット51の後方の領域に、結合部位55を形成されるように、縫合糸を用いて縫着(結合)され、前端54a側に、挿通孔52に対応して取付ボルト39を突出させるための取付孔56を、配設させる構成とされている。蓋パネル54の後端54b側を車体側壁部46aに縫着(結合)させる結合部位55は、蓋パネル54の左右の全域にわたって、連続的に形成されている。実施形態の場合、蓋パネル54は、
図12に示すような蓋パネル用基布103から、形成されている。
【0031】
バッグ本体46内において、バッグ本体46の膨張完了時の厚さを規制するテザーとしては、実施形態の場合、前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CRと、前側左右テザー64L,64Rと、後側左右テザー65と、端側テザー66L,66Rと、が、歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとを連結して、膨張完了時の歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとの離隔距離を規制するように、配設されている(
図18参照)。前側左右テザー64L,64Rは、カウルカバー部48の前後の中央よりやや前方となる位置であって、挿入用開口部50の前側において、左右方向に略沿うように配設されている。後側左右テザー65は、挿入用開口部50の後側において左右方向に略沿うように配設されている。後側左右テザー65は、車体側壁部46aへの結合部位を、歩行者側壁部46bへの結合部位よりも左右に幅広とするように、幅寸法を異ならせて構成されている(
図5,6,12参照)。前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CRは、各前側左右テザー64L,64Rの左右の外方となる位置の1箇所と、各前側左右テザー64L,64Rの前側の2箇所と、に、それぞれ、配置されるもので、前後方向に略沿うようにして、左右方向側で並設されている。前側左右テザー64L,64Rの左右の外方に配置される前後テザー62AL,62ARは、前側左右テザー64L,64Rよりも後方に延びるように、幅寸法を、残りの前後テザー62BL,62CL,62BR,62CRよりも大きく設定されている。実施形態の場合、前側左右テザー64L,64Rと前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CRとには、膨張用ガスを流通可能に開口した開口部62a,64aが、それぞれ、形成されている(
図5,12参照)。各前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CRには、開口部62aは、上下方向に略沿った長孔状として、1つずつ、形成されている。各前側左右テザー64L,64Rには、開口部64aは、上下方向に略沿った長孔状として、2つずつ、形成されている。端側テザー66L,66Rは、カウルカバー部48と各ピラーカバー部60L,60Rとの境界部位付近において、それぞれ、左右の内側を後方に位置させるように、左右方向に対して傾斜して、配設されている。これらの前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CR、前側左右テザー64L,64R、後側左右テザー65、及び、端側テザー66L,66Rは、バッグ本体46内において、左右対称的に配置されている。
【0032】
バッグ本体46内への膨張用ガスの流れを規制するガス流れ規制部材70は、カウルカバー部48の内部において、インフレーター本体31の後側となる位置に、配置されるもので(
図2参照)、可撓性を有したシート体から形成されて、歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとを連結するように構成されている。具体的には、ガス流れ規制部材70は、挿入用開口部50の配置領域内に、配設されている。実施形態の場合、ガス流れ規制部材70は、インフレーター本体31の軸方向に沿った方向側(左右方向側)の幅寸法を、挿入用開口部50における挿入用スリット51の長さ寸法と略同一として、左右に幅広とされる帯状体から構成されるもので、上端70a側を、歩行者側壁部46bに、結合部位74を形成するように縫着(結合)され、挿入用スリット51を挿通されるようにして、下端70b側を、蓋パネル54の内周面54c側に結合されている。ガス流れ規制部材70の下端70b側を蓋パネル54の内周面54c側に結合させる結合部位75は、蓋パネル54における前後方向の中央よりやや後側となる位置であって、取付孔56よりも後側となる位置に、配置されるもので、ガス流れ規制部材70の幅方向の全域にわたって、連続的に形成されている。ガス流れ規制部材70の上端70a側を歩行者側壁部46bに結合させる結合部位74も、ガス流れ規制部材70の幅方向の全域にわたって、連続的に形成されている。
【0033】
このガス流れ規制部材70は、インフレーター本体31の後側を覆うように配置される構成であるが、左右方向側の幅寸法を、挿入用開口部50における挿入用スリット51の長さ寸法を略同一に設定されて、挿入用スリット51に挿通されており、換言すれば、幅寸法を、インフレーター本体31の長さ寸法より小さく設定されて、インフレーター本体31の後側を部分的に覆うように、配置される構成である。詳細には、ガス流れ規制部材70も、左右の中央を、バッグ本体46における左右の中央(インフレーター本体31の軸方向の中央)よりも左方にずらすようにして、インフレーター本体31の右端31b側(ガス吐出部32)側を除いた領域の後側を覆うように、配設されている(
図7参照)。実施形態の場合、ガス流れ規制部材70の左右方向側の幅寸法(挿入用スリット51の長さ寸法は、インフレーター本体31の長さ寸法の2/3程度に、設定されている。また、このガス流れ規制部材70は、左右方向側の幅寸法を、インナチューブ85の左右方向側の幅寸法(取付側部86の長さ寸法)より小さく設定されている(
図7参照)。インフレーター30をバッグ本体46の内部に収納させた状態において、ガス流れ規制部材70は、インナチューブ85における左右両端側を除いた中央側の領域の後方を覆うように配設されることとなり、詳細には、ガス流れ規制部材70は、インナチューブ85における後述するガス整流部88において、左端88a側の流出用開口89Lと、左側のガス流出孔91BLと、の後方を覆い可能に、構成されている(
図7,16参照)。そして、このガス流れ規制部材70は、エアバッグ45の展開膨張時におけるバッグ本体46の膨張初期に、インフレーター本体31のガス吐出部32から吐出されて、流出用開口89Lとガス流出孔91BLとから流出される膨張用ガスGを、後方側への流出を抑制して、左右両側に向かうように偏向させることとなる(
図16参照)。
【0034】
また、このガス流れ規制部材70は、エアバッグ45の膨張時における歩行者側壁部46bの車体側壁部46a側の離隔による張力の作用時に、歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとの連結状態を解除させるように、左右方向の全長にわたって分断可能な構成とされている。具体的には、ガス流れ規制部材70は、下端70b近傍に、左右方向に略沿った断続的な切目を設けられるようにして構成される破断予定部71を、配設させている(
図10,13参照)。この破断予定部71は、
図13に示すように、ガス流れ規制部材70の左右方向の全域にわたって形成されるもので、エアバッグ45の膨張時に、切目72間の周縁部位(連結部位73)を破断させることにより、ガス流れ規制部材70を左右の全域(全長)にわたって分断させ、ガス流れ規制部材70による歩行者側壁部46bと車体側壁部46a側(蓋パネル54側)との連結状態を解除させることとなる(
図15のB及び
図18参照)。この破断予定部71は、エアバッグ45の膨張時におけるガス流れ規制部材70の分断後(破断予定部71の破断後)に形成される下端側部位76(車体側壁部側部位)を、フードパネル15の上面よりも下方に配置可能な位置に、形成されている。具体的には、破断予定部71は、ガス流れ規制部材70の下端70b近傍であって、下端70b側を蓋パネル54に結合させた状態で、挿入用スリット51の近傍となる位置に、配置されている(
図9参照)。詳細には、実施形態の場合、破断予定部71は、ガス流れ規制部材70の下側1/5程度となる位置に、配設されている(
図13参照)。そして、破断予定部71の破断後には、ガス流れ規制部材70における下端側部位76は、フードパネル15の後端15cよりも下方であって、エアバッグカバー25における開いた扉部26の先端よりも下方となる位置に、配置されることとなる(
図15のB,18参照)。
【0035】
ガス流れ規制部材70は、バッグ本体46の膨張初期には、
図15のAに示すように、歩行者側壁部46b側と蓋パネル54側(車体側壁部46a側)との連結状態を維持されて、インナチューブ85における流出用開口89Lとガス流出孔91BLとから流出される膨張用ガスGを左右の外方に向かうように偏向させ(
図16参照)、歩行者側壁部46bを車体側壁部46a側から大きく離隔させるようにバッグ本体46が膨張した際に、ガス流れ規制部材70に生じる張力T(
図13,15のA参照)によって、
図15のBに示すように、破断予定部71を破断させて分断される構成であって、長さ寸法を、他のテザー(前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CR、前側左右テザー64L,64R、後側左右テザー65、及び、端側テザー66L,66R)よりも短くするように、構成されている。具体的には、ガス流れ規制部材70の長さ寸法は、他のテザー(前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CR、前側左右テザー64L,64R、後側左右テザー65、及び、端側テザー66L,66R)の長さ寸法の8割程度に、設定されている。このガス流れ規制部材70の長さ寸法と、破断予定部71における切目72間の離隔距離(連結部位73の幅寸法)と、は、エアバッグ45の膨張初期において、上述したごとく、インナチューブ85における流出用開口89L及びガス流出孔91BLからの膨張用ガスの後方側へ向かうような流出を抑制可能として、かつ、バッグ本体46全体の迅速な膨張完了を阻害しないように、タイミング良く破断予定部71を破断可能な寸法に、設定されている。
【0036】
バッグ本体46の車体側壁部46a側をケース20に取り付ける取付片部80は、挿入用開口部50の左右両側に配設されるもので、バッグ本体46と別体として、可撓性を有したシート体から構成されて、
図3,6に示すように、前端側と後端側とを、車体側壁部46aに結合(縫着)されている。この取付片部80(80L,80R)は、取付ブラケット110を用いて、ケース20の底壁部21に取り付けられる構成であり、実施形態の場合、
図6に示すように、バッグ本体46を平らに展開した状態で、挿入用開口部50と端側テザー66L,66Rとの間であって、かつ、前側左右テザー64L,64Rの後側において、略左右対称となる2箇所に、配置されている。この取付片部80(80L,80R)は、車体側壁部46aとの間に、取付ブラケット110の後述する取付プレート111を挿入させるもので(
図3参照)、取付ブラケット110に形成される後述する取付ボルト112を挿通可能な貫通穴80aを、有している。
【0037】
インフレーター30(インフレーター本体31と取付ブラケット35における保持部36)の外周側を覆うインナチューブ85は、可撓性を有したシート体から構成されるもので、
図11に示すように、インフレーター本体31の外周側を覆うとともに取付ボルト39を突出させるように構成される取付側部86と、インフレーター本体31のガス吐出部32から吐出される膨張用ガスを整流させるガス整流部88と、を備える構成とされている。
【0038】
取付側部86は、インフレーター本体31の外周側を覆い可能に、長手方向を、インフレーター本体31の軸方向に沿わせた帯状として構成されるもので、幅方向の略中央となる位置に、取付ブラケット35の取付ボルト39を突出させるための挿通孔86cを、長手方向に沿った3箇所に、配設させている(
図12参照)。この取付側部86は、インフレーター本体31の外周側を、車両搭載状態において上面側を除いて覆い可能に構成されるもので、長手方向側(左右方向側)の幅寸法を、インフレーター本体31の長さ寸法より大きく設定されている。すなわち、この取付側部86の左右方向側の幅寸法は、ガス流れ規制部材70の左右方向側の幅寸法よりも大きく設定されている。この取付側部86は、インフレーター30とともにバッグ本体46内に収納させた状態で、右端86bをガス流れ規制部材70の右縁70dよりも右方に位置させ、左端86aをガス流れ規制部材70の左縁70cよりも左方に位置させるように、配置される構成である(
図7参照)。
【0039】
ガス整流部88は、左右両端側を開口させた略筒状とされている。ガス整流部88は、取付側部86の前縁86d側と後縁86e側とから延びるようにして、先端相互を結合させることにより略筒状とされるもので、具体的には、右端88bを取付側部86の右端86bと一致させて、左側にかけて拡径されるような略筒状とされている。ガス整流部88は、左端88aを、取付側部86の左右の中央よりやや左方となる位置に配置させるように、左右に幅広に構成されている。そして、ガス整流部88は、左端88a側と、取付側部86の右端86bと一致している右端88b側と、に、膨張用ガスGを流出させる流出用開口89L,89Rを、有する構成とされている。ガス整流部88は、上述したごとく、左右の中央側となる左側にかけて拡径されるような略筒状とされており、詳細な図示は省略するが、左側の流出用開口89Lは、開口面積を、右側の流出用開口89Rよりも大きく構成されている。また、ガス整流部88は、周壁90の領域に、膨張用ガスを流出させるガス流出孔91を、配設させている。ガス流出孔91は、前後両側において、それぞれ、左右方向側で2個並設されるもので、計4個、配設されている。ガス整流部88では、左右の中央側に位置する左端88a側(左側の流出用開口89L)と、左側のガス流出孔91FL,91BLと、が、ガス流れ規制部材70と前後で重なる領域に、配設される構成であり(
図7,16参照)、バッグ本体46内への収納時に、ガス流れ規制部材70に後方を覆われることとなる。すなわち、ガス整流部88における右端88b側(右側の流出用開口89R)と、右側のガス流出孔91FR,91BRと、は、バッグ本体46内への収納時に、ガス流れ規制部材70に後方を覆われない領域に、配設されることとなる。このインナチューブ85は、エアバッグ45の展開膨張時に、少なくとも左側のガス流出孔91FL,91BL(すなわち、流出用開口89Lの上部側の領域も含む)を、ケース20よりも上方に突出した位置に配置させるように、構成されている(
図15参照)。インナチューブ85は、
図12に示すインナチューブ用基布105から構成されるもので、インナチューブ用基布105を二つ折りして、対応する縁部相互を結合(縫着)させることにより、筒状とされている。
【0040】
実施形態のエアバッグ45は、
図12に示すように、バッグ本体46において車体側壁部46aを構成する車体側基布95及び歩行者側壁部46bを構成する歩行者側基布96と、前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CR,前側左右テザー64L,64R,後側左右テザー65,端側テザー66L,66Rをそれぞれ構成するテザー用基布98A,98B,99,100,101と、蓋パネル54を構成する蓋パネル用基布103と、ガス流れ規制部材70と、インナチューブ85を構成するインナチューブ用基布105と、取付片部80と、から構成されている。なお、これらの基布(基材)は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布を、所定形状に裁断して、形成されている。
【0041】
取付片部80(80L,80R)をケース20の底壁部21に取り付ける取付ブラケット110は、それぞれ、略長方形板状の取付プレート111と、取付プレート111から下方に突出する取付ボルト112と、を備えている。取付プレート111は、外形形状を、
図6の二点鎖線に示すように、左右方向側を幅広とした略長方形板状とされている。取付ボルト112は、詳細な図示は省略するが、左右方向に沿って2個並設されている。この取付ブラケット110は、取付片部80から突出している取付ボルト112を、ケース20の底壁部21から突出させてナット114止めすることにより、取付片部80を、ケース20の底壁部21に取り付ける構成である(
図3参照)。
【0042】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。インフレーター30は、クランプ40を利用して取付ブラケット35にインフレーター本体31を保持させた状態として、予め、インナチューブ85の取付側部86内に、取付ボルト39を挿通孔86cから突出させるようにして、挿入させておく。このとき、インナチューブ85は、詳細な図示は省略するが、ガス吐出部32から膨張用ガスが吐出される際に破断可能な図示しないテープ材によって、ガス整流部88を含めて、インフレーター本体31の周囲に巻き付けられている。そして、エアバッグ45を、ケース20内に収納可能に折り畳む。具体的には、エアバッグ45は、詳細な図示は省略するが、インフレーター30の収納スペースを確保するために、外形形状をインフレーター30と略同形としたダミーインフレーターを内部に収納させた状態で、歩行者側壁部46bを車体側壁部46aに重ねるようにバッグ本体46を平らに展開した状態から、前後方向側と左右方向側との幅寸法を縮めるようにして、ケース20内に収納可能に折り畳まれる。その後、折り畳まれたエアバッグ45(折り完了体)の周囲を、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材によりくるむ。このとき、エアバッグ45における挿入用開口部50と取付片部80との部位は、ラッピング材から露出させておく。そして、挿入用開口部50における蓋パネル54を開いて、ダミーインフレーターを、挿入用スリット51から抜くようにして、折り完了体(バッグ本体46)から取り出し、上述したごとくインナチューブ85を外部に巻き付けた状態のインフレーター30を、挿入用スリット51を経て、折り完了体(バッグ本体46)内に挿入させ、各取付ボルト39を挿通孔52から突出させて、インフレーター30をバッグ本体46の内部に収納させる。その後、蓋パネル54を、挿入用スリット51を覆うように閉じて、前端54a側の取付孔56に、各取付ボルト39を挿通させる。また、各取付片部80に取付ブラケット110を取り付けて、エアバッグ組付体を製造する。その後、エアバッグ組付体を、各取付ボルト39,112を底壁部21から突出させるようにして、ケース20内に収納させ、底壁部21から突出している各取付ボルト39,112に、ナット42,114を締結させれば、エアバッグ45とインフレーター30とを、ケース20に取り付けることができる。そして、エアバッグカバー25をケース20に取り付け、ケース20から延びる図示しないブラケットを、カウルパネル7aに取り付け、インフレーター本体31を、図示しない作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0043】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ6に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター30が作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ45が膨張することとなり、膨張するエアバッグ45が、エアバッグカバー25の扉部26を押し開き、扉部26を押し開いて形成されるケース20の突出用開口20aから上方に向かって突出しつつ、フードパネル15の後端15cの上面からカウル7の上面にかけてと、フロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側と、を覆うように、膨張を完了させることとなる(
図17,18参照)。
【0044】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、カウルカバー部48の内部において、インフレーター30の本体部としてのインフレーター本体31の後側となる位置に、インフレーター本体31から吐出される膨張用ガスの後方への流出を抑制するガス流れ規制部材70が、配設されていることから、エアバッグ45の膨張初期に、インフレーター本体31よりも後方に配置されるピラーカバー部60L,60R側に膨張用ガスが流れることを抑制できる。そのため、カウルカバー部48において、特に、ガス流れ規制部材70より前側となる前側領域48bを、迅速に膨張させることができる。
【0045】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、カウルカバー部48の前側領域48bを迅速に膨張させることができる。
【0046】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、インフレーター本体31は、一端(右端31b)側にガス吐出部32を配設させるとともに、外周側を、インナチューブ85に覆われた状態で、カウルカバー部48の内部に配設される構成であることから、ガス吐出部32から吐出される膨張用ガスGを、インナチューブ85のガス整流部88から、整流された状態で、エアバッグ45(バッグ本体46)内に流出させることができる。具体的には、インナチューブ85のガス整流部88は、2つの流出用開口89L,89Rと、4つのガス流出孔91FL,91FR,91BL,91BRと、を備えていることから、これらの流出用開口89L,89R,ガス流出孔91FL,91FR,91BL,91BRから、前後左右にバランスよく膨張用ガスを流出させることができる。さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガス流れ規制部材70が、インナチューブ85におけるガス整流部88の一部の後方を覆うように配置される構成であり、具体的には、ガス整流部88におけるインフレーター本体31の中央側の端部、すなわち、左端88a側に設けられる流出用開口89Lと、ガス流出孔91BL、との後方を覆うように配置される構成である。そのため、流出用開口89Lとガス流出孔91BLとから流出される膨張用ガスGは、ガス流れ規制部材70によって偏向されて、後方に向かって流れることを抑制され、他の流出用開口89BRとガス流出孔91BRとから流出される膨張用ガスは、ガス流れ規制部材70による規制を受けず、後方に向かって流れることとなる(
図16参照)。その結果、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ45の膨張初期にも、膨張用ガスは、ある程度、カウルカバー部48におけるガス流れ規制部材70の後側の後側領域48cや、ピラーカバー部60L,60R側に流れることとなり、ピラーカバー部60L,60Rが必要以上に遅れて膨張することを抑制でき、エアバッグ45全体を、迅速かつ安定して膨張させることができる。
【0047】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガス流れ規制部材70が、エアバッグ45の膨張時における歩行者側壁部46bの車体側壁部46a側からの離隔による張力の作用時に、歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとの連結状態を解除させるように、左右方向の全長にわたって分断可能な構成とされていることから、エアバッグ45の膨張途中において、ガス流れ規制部材70による規制が解除されることとなって、カウルカバー部48の前側領域48bを先行して膨張させた後に、カウルカバー部48の全体を厚く膨張させつつ、ピラーカバー部60L,60Rも迅速に膨張させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、ガス流れ規制部材として、エアバッグの膨張完了まで歩行者側壁部と車体側壁部との連結状態を維持させ、カウルカバー部の厚さを、膨張完了時まで規制可能な構成のものを使用してもよい。
【0048】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガス流れ規制部材70が、左右方向となるインフレーター本体31の長手方向に略沿った断続的な切目72を設けてエアバッグ45の膨張時にこの切目72の周縁部位(連結部位73)を破断させることにより、全長にわたって分断可能とする破断予定部71を、配設させる構成とされており、破断予定部71は、ガス流れ規制部材70の下端70b近傍であり、ガス流れ規制部材70における分断後の車体側壁部側部位(下端側部位76)をフードパネル15の上面よりも下方に配置可能な位置に、形成されている。そのため、破断予定部71の破断後に生じるガス流れ規制部材70の下端側部位76が、フードパネル15の後端15cよりも上方に突出せず(
図15のB参照)、ケース20から突出して膨張するエアバッグ45内を流れる膨張用ガスのガス流れに影響を与えることを、抑制でき、カウルカバー部48の前側領域48bよりも遅れて膨張するピラーカバー部60L,60Rや、カウルカバー部48の後側領域48cに、膨張用ガスを円滑に流入させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、破断予定部は、ガス流れ規制部材の上下の中央付近や、歩行者側壁部側となる上端側に、配設させる構成としてもよい。
【0049】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガス流れ規制部材70が、エアバッグ45においてインフレーター30を内部に挿入させるために形成される挿入用スリット51を挿通されるようにして、車体側壁部46a側の端部である下端70b側を、挿入用開口部50における蓋パネル54に結合させる構成とされている。そのため、インフレーター本体31を、挿入用スリット51を経て、折り畳まれたエアバッグ45の内部に挿入させる際に、挿入用スリット51の周縁において挿通孔52から離隔した側の領域が、ガス流れ規制部材70によって塞がれるような態様となることから、インフレーター本体31を、ガス流れ規制部材70によって、挿通孔52側に円滑にガイドさせることができて、誤挿入の発生を抑制して、インフレーター30を容易にエアバッグ45に組み付けることができる。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガス流れ規制部材70に形成される破断予定部71は、挿入用スリット51の近傍に配置される構成である。そのため、
図14に示すように、インフレーター本体31を、挿入用スリット51を経てエアバッグ45(バッグ本体46)の内部に挿入させる際に、インフレーター本体31や取付ボルト39が、ガス流れ規制部材70に形成される破断予定部71と干渉することも、抑制できて、インフレーター30のエアバッグ45内への挿入作業性が良好である。
【符号の説明】
【0050】
15…フードパネル、15c…後端、20…ケース(収納部位)、30…インフレーター、31…インフレーター本体(本体部)、39…取付ボルト、45…エアバッグ、46a…車体側壁部、46b…歩行者側壁部、48…カウルカバー部、50…挿入用開口部、51…挿入用スリット、52…挿通孔、54…蓋パネル、54a…前端、54b…後端、取付孔56、60L,60R…ピラーカバー部、70…ガス流れ規制部材、71…破断予定部、72…切目、V…車両、M…歩行者用エアバッグ装置。