(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121346
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】部品供給装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
B65G47/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021061885
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】青山 好高
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
【テーマコード(参考)】
3F080
【Fターム(参考)】
3F080AA26
3F080BA02
3F080BF04
3F080CD07
3F080CF02
3F080CG10
3F080DA16
3F080DB08
(57)【要約】
【課題】部品供給通路内に整然とした部品列を形成し、特別な機構を付加することなく部品列全体を移動させて、最先の部品を供給ロッドの収容凹部に送り込むこと。
【解決手段】部品1を部品列14の状態で部品供給通路5内に待機させ、最先の部品1を、部品搬送力によって供給ロッド24の受入凹部28に移載し、次いで、供給ロッド24の進出動作で目的箇所へ送給する形式のものであって、最先の部品1と、連続する部品1を吸引する吸引部材15が設けられ、吸引部材15を磁化状態にしたり、消磁状態にしたりするように動作をする磁石20が設けられ、吸引部材15の長さは、部品列14の部品個数を所定個数とするように設定され、吸引磁力で部品列14の部品1が隙間なく連なっているとともに、吸引部材15が消磁されたとき部品列全体が一斉に移動して、最先の部品1が受入凹部28に移載されるように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁性材料製の部品を部品列の状態で部品供給通路内に待機させ、待機している部品の最先の部品を、部品に付与した部品搬送力によって供給ロッドの受入凹部に移載し、次いで、供給ロッドの進出動作で部品を目的箇所へ送給する形式のものであって、
部品供給通路内の部品列をなす部品に、吸引力を付与する吸引部材が設けられ、
吸引部材を磁化状態にしたり、消磁状態にしたりするように動作をする磁石が設けられ、
部品の搬送方向で見た吸引部材の長さは、部品列を形成する部品個数を所定個数とするように設定され、
吸引部材からの吸引磁力により、吸引部材に対面している部品は部品供給通路の内面に吸着されているとともに、磁力線が部品を通過することによって、吸引部材に対面していない部品も含めて、各部品が隙間なく連なるように構成され、吸引部材が消磁されたとき、部品搬送力によって部品列全体が一斉に移動して、最先の部品が受入凹部に移載されるように構成したことを特徴とする部品供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、寸法が小さくて軽量な部品に適した、部品供給装置に関している。
【背景技術】
【0002】
特開2015-117127号公報には、部品供給通路内を列状で搬送される部品が、供給ロッドの受入凹部へ移載されて、目的箇所へ送給されることが記載されている。
【0003】
特開2010-1154号公報には、つぎに記載する発明が開示されている。すなわち、部品供給通路内の部品を一つずつ送り出すために、最先部品の進出を禁止する進退式の第1規制部材と、2番目の部品の進出を禁止する進退式の第2規制部材が設けられ、第2規制部材を進出禁止位置とし、第1規制部材を進出可能位置とすることによって、最先の部品だけが自由になって搬送される。その後、第1規制部材を進出禁止位置に戻し、第2規制部材を進出可能位置に後退させると、2番目の部品が今度は最先部品になる。それから第2規制部材を進出禁止位置に戻すことによって、両規制部材は初期の待機状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-117127号公報
【特許文献2】特開2010-1154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されている技術においては、部品間に隙間のない状態で一体性をもって、部品を整然とした列状の状態で搬送することについては、何も配慮がなされていない。また、特許文献2に記載されている機構は、第1規制部材、第2規制部材、両部材の進退駆動装置などによって構成されており、構成部材が多くなって構造的にも複雑になっている。
【0006】
寸法が小さくて軽量な部品を、部品間に隙間が生じることなく、列状の状態で搬送し、列の最先の部品一つだけを供給ロッドの受入凹部に移載するためには、部品列が整然とした列形態をなしているとともに、列先端の一つだけの部品を正確に受入凹部へ送り込む必要がある。また、部品の存在を正確に検知して供給ロッドを動作させるなど、装置の作動信頼性を高めることも重要である。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、部品供給通路内の複数の部品が整然とした部品列を形成し、この部品列の途中に隙間ができたりしないようにして、しかも、特別な機構を付加することなく部品列全体を移動させて、最先の部品一つだけを供給ロッドの収容凹部に送り込むことを目的とする。また、装置の作動信頼性を高めやすい機構にすることも重要視している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、
複数の磁性材料製の部品を部品列の状態で部品供給通路内に待機させ、待機している部品の最先の部品を、部品に付与した部品搬送力によって供給ロッドの受入凹部に移載し、次いで、供給ロッドの進出動作で部品を目的箇所へ送給する形式のものであって、
部品供給通路内の部品列をなす部品に、吸引力を付与する吸引部材が設けられ、
吸引部材を磁化状態にしたり、消磁状態にしたりするように動作をする磁石が設けられ、
部品の搬送方向で見た吸引部材の長さは、部品列を形成する部品個数を所定個数とするように設定され、
吸引部材からの吸引磁力により、吸引部材に対面している部品は部品供給通路の内面に吸着されているとともに、磁力線が部品を通過することによって、吸引部材に対面していない部品も含めて、各部品が隙間なく連なるように構成され、吸引部材が消磁されたとき、部品搬送力によって部品列全体が一斉に移動して、最先の部品が受入凹部に移載されるように構成したことを特徴とする部品供給装置である。
【発明の効果】
【0009】
部品供給通路内の部品に吸引力を付与する吸引部材が設けられ、吸引部材を磁化状態にしたり、消磁状態にしたりするように動作をする磁石が設けられ、部品の搬送方向で見た吸引部材の長さは、部品列を形成する部品個数を所定個数とするように設定されている。
【0010】
本明細書において、吸引部材に対面している部品を対面部品または対面ナットと表現し、吸引部材に対面していない部品を非対面部品または非対面ナットと表現する。
【0011】
吸引部材が磁化状態とされているときには、対面部品を磁力線が通過するので、これら対面部品は部品供給通路の内面に吸着される。同時に、対面部品同士も吸引されて、隙間なく連なっている。対面部品は磁化されているので、この磁化された対面部品に対して、その隣の非対面部品が吸引される。吸引方向は、部品供給通路の長手方向である。この吸引された非対面部品も磁化されているので、さらにその隣の非対面部品が吸引される。このような連鎖的な吸引が所定個数の非対面部品に及ぶので、対面部品をも含めて所定個数の部品が隙間なく列状の一体化された部品列を形成する。
【0012】
したがって、部品供給通路内に待機している部品は、一体性のある連続状態となっているので、磁気吸引力が消滅して部品列に部品搬送力が作用したときには、直ちに一体性のある状態で一斉に移動することが可能となる。また、何等かの外力が装置に作用することによって部品列に衝撃的な力が作用しても、磁気的一体性が部品列に付与されているので、部品列に隙間ができたり、列に乱れができたりすることがない。
【0013】
磁気的吸引力で列状に一体化された部品列の長さ、すなわち待機部品個数をより多くして、増産時における供給ロッドの供給進退回数の増加に対応することが確実に実施できる。部品列を形成する部品個数は、部品の搬送方向で見た吸引部材の長さを加減したり、磁石の吸引力を加減したりすることによって、所要の個数に増減することが、簡単に実施できる。このようにして、部品列全体が吸着しあった列状部材になって、部品供給通路内で動けない停止状態になり、待機状態として異常な部品挙動がなくて、良好な部品待機が可能となる。
【0014】
部品供給通路の内面に吸着されている対面部品に非対面部品が吸引されるので、非対面部品も部品供給通路の内面に密着したり、部品供給通路の内面からわずかに離隔した位置におかれたりする。したがって、部品列を形成する対面部品、非対面部品のいずれの箇所においても、部品が重なり合うような現象が回避できる。
【0015】
個々の部品が磁化されて部品同士が吸引しあうので、部品間に隙間が発生することなく、部品供給通路内で複数個の部品が一体性のある状態で結合した部品列が形成される。
【0016】
吸引部材を消磁状態にすると、部品列を形成していた磁力が消滅するので、部品列は部品供給通路を上記停止状態から進行できる状態になる。このような部品列に対して、傾斜、空気噴射および直進フィーダなどによる部品搬送力が作用すると、所要個数の部品があたかもワンピースの列状態で一斉に移送される。部品列自体は、上述のようにして部品間隙間や隣り合う部品との重なりなどが回避された状態になっているため、部品列は最先部品から最後端部品までが完全に連なった状態で整然と一斉に移動して、最先の部品が供給ロッドの受入凹部に移載される。厚さが薄くて軽量な部品においては、ワンピースの列状態で一斉に移動することによって、列が乱れたりすることなく、確実な部品供給が実現する。
【0017】
このように、吸引部材が消磁状態になると、部品間の隙間や部品同士の重なり合いのない部品列が一斉に搬送されるので、供給ロッドの受入凹部に向かう部品搬送が確実に達成され、作動信頼性の高い部品供給装置がえられる。
【0018】
つまり、部品供給通路内に待機している段階で、搬送に適した整然とした部品列を磁力付与によって予め整えておき、吸引部材が消磁されると、整然とした部品列の状態を維持したまま搬送される。
【0019】
通常は、特許文献2に記載されているように、部品供給通路内の部品を一つずつ送り出すために、最先部品の進出を禁止する進退式の第1規制部材と、2番目の部品の進出を禁止する進退式の第2規制部材が設けられ、第2規制部材を進出禁止位置とし、第1規制部材を進出可能位置とすることによって、最先の部品だけが自由になって搬送される。その後、第1規制部材を進出禁止位置に戻し、第2規制部材を進出可能位置に後退させると、2番目の部品が今度は最先部品になる。それから第2規制部材が進出禁止位置に戻ることによって、両規制部材は初期の待機状態となる。
【0020】
とくに注目されるのは、本願発明においては、部品列に磁力を作用させたり、作用させなかったりすることによって、寸法が小さくて軽量な部品の送給を行うものであるから、上述のような第1規制部材や第2規制部材を用いるような複雑な機構を採用することなく、良好な部品供給装置がえられる。換言すると、寸法が小さくて軽量な部品の送給においては、上述の第1規制部材や第2規制部材による制御機構が採用できない、という問題が解消されるのである。
【0021】
本願発明は、上述のような装置発明であるが、以下に記載する実施例から明らかなように、部品の移送挙動等を特定した方法発明として存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図10】制御装置、信号線、空気管などを示す制御系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明の部品供給装置を実施するための形態を説明する。
【実施例0024】
【0025】
最初に、供給される部品について説明する。
【0026】
本願発明における供給対象部品は、磁性材料である鉄でできたものであり、寸法が小さくて軽量なものである。とくに、厚さが薄くて重なりやすい部品である。例えば、貨幣コインのように厚さが薄くて軽量な部品や、薄型の円形や四角型のプロジェクションナットなどである。この実施例では、後者の四角い薄型のプロジェクションナットであり、ねじ孔の中心軸線方向の厚さ寸法が2.5mm、縦横寸法が8mmとされている。以下、本明細書において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【0027】
ナットは符号1で示され、正方形の本体2の中央部にねじ孔3が開けてあり(
図4参照)、本体2の下面の四隅に溶着用突起4(
図1、
図2等参照)が設けてある。
【0028】
つぎに、部品供給通路について説明する。
【0029】
部品供給通路5は、
図2に示すように、断面コ字型の長尺な通路部材6に蓋板7をボルト付けまたは溶接をしたもので、部品供給通路5の空間断面形状は、ナット1の断面形状に合致した矩形断面とされ、通路空間の縦横寸法は、ナット1の周囲に空隙ができて円滑なナット移行ができるようになっている。通路部材6は、非磁性材料であるステンレス鋼で構成されている。蓋板7は、部品供給通路5内のナット1の整列状態を確認するために、透明のアクリル製板材で構成してある。符号8は、部品供給通路5の天井面を示し、符号9は、部品供給通路5の底内面を示している。通路部材6は、装置の機枠などで構成された静止部材10に固定されている。本実施例では、後述の磁石によって、ナット1が吸着される部品供給通路5の内面は、部品供給通路5の天井面8である。
【0030】
部品供給通路5内のナット1に部品搬送力が付与されている。部品搬送力は、傾斜、空気噴射および直進フィーダなど、種々な方法でえられるが、ここでは通路部材6や蓋板7を、
図1に示すように、傾斜姿勢で配置した傾斜方式である。また、
図1に2点鎖線で示したような空気噴射管41を部品供給通路5内に開口して、噴射空気によって部品搬送力を補助することができる。
【0031】
パーツフィーダ12で選別されたナット1は、空気噴射管13からの噴射空気で送出されて、通路部材6に到達する。ナット1は、最先のナットがa、その次がb、以下順次c~gまで並んでおり、このように並んだ状態によって部品列14が形成されている。
【0032】
つぎに、吸引部材について説明する。
【0033】
吸引部材15は、磁性材料製の分厚い板状部材で構成されている。ここでは、鉄鋼材料が用いてある。
図1の例では、蓋板7に部品供給通路5を覆わない箇所を作り、そこに吸引部材15をはめ込むようにして配置している。すなわち、蓋板7で覆われていない箇所を、吸引部材15で覆っている。
図7に示すように、吸引部材15やガイド筒18を通路部材6と一体化するために、結合部材21が採用されている。結合部材21は、溶接またはボルト付けで通路部材6と吸引部材15の一体化がなされている。
【0034】
吸引部材15の下面17は、部品供給通路5の天井面8と滑らかに連なっている。
図1の場合は、部品供給通路5がわずかに湾曲しているので、天井面8、底内面9も同様の湾曲をしている。したがって、吸引部材15の下面17にも同様な湾曲形状が付与してある。
図1に示すように、吸引部材15は、部品供給通路5のわずかな湾曲に沿った形状にしてある。このようにして、部品供給通路5の天井側の内面が、吸引部材15の下面17と天井面8によって構成されている。
【0035】
部品列14は符号a~gで示した個数のナットで形成されている。以下の説明において、この部品列14をナット列14と表現することもある。ナット列14の個数は、ナットの消費速度に対して、ナット不足にならないように設定される。
【0036】
吸引部材15を磁化状態にしたり、消磁状態にしたりするように動作をする磁石が設けられている。このような磁石の動作は、磁石を吸引部材15に接近させて磁化状態にしたり、磁石を吸引部材15から遠ざけて消磁状態にしたりすることができる。または、磁石を電磁石にして作動電流の断続で、磁化状態と消磁状態を形成することができる。いろいろと考えられる磁化・消磁方式のうち、この実施例は、前者の方式である。
【0037】
吸引部材15の中央部に、空間断面が円形とされたガイド筒18が一体的に形成されており、その中に摺動可能な状態で非磁性材料製の容器19が挿入され、その中に永久磁石20が収容してある。ガイド筒18にエアシリンダ22が固定され、そのピストンロッド23が容器19に結合されている。
【0038】
つぎに、ナット列について説明する。
【0039】
図1は、エアシリンダ22のピストンロッド23が最も進出していて、永久磁石20がナット列14に最接近している状態である。この状態においては、吸引部材15が磁化されるとともに、
図9に示すように、永久磁石20の磁力線30が吸引部材15から吸引部材15に対面している対面ナットb、c、dを通過するので、これら3つのナットは吸引部材15の下面17に吸引される。すなわち、ナットb、c、dが前述の対面部品、対面ナットである。また、ナットb、c、dを通過する磁力線によって、ナットbとcが引きつけ合うのと同時に、ナットcとdが引きつけ合う。
【0040】
さらに、磁化されたナットbに、最先のナットaが吸引される。同様に、磁化されたナットdに、ナットeが吸引される。このようにしてナットeも磁化されているので、今度はその隣のナットfがナットeに吸引される。対面ナットb、c、dから外れているナットa、e、f、gが非対面ナットである。このような連鎖的な磁力吸引作用によって、ナットaからgに及ぶ一体性のある列状のナット列14が形成される。このような引きつけ合いは、例えば、多数のナットや釘に磁石を接触させてから磁石を引き上げると、多数のナットや釘が数珠つなぎのようになって引き上げられる現象と同じである。
【0041】
吸引部材15の下面17に吸着されている対面ナットb、c、dに非対面ナットa、e、f、gが吸引されるので、非対面ナットも対面ナットに近いものは、部品供給通路の内面(天井面8)に密着したり、部品供給通路5の内面(天井面8)からわずかに離隔した位置におかれたりする。
図1のナットf、
図9のナットgがわずかに天井面8から離隔している。したがって、部品列14を形成する対面ナット、非対面ナットのいずれの箇所においても、部品が重なり合うような現象が回避できる。天井面8や吸引部材15の下面17は、部品供給通路5の内面を形成していることになる。
【0042】
図9は、上述のように、磁力線30の態様を示している。この場合、永久磁石20の極性は、図示のように永久磁石20の左右にS極またはN極が配置されている。この極性を90度回した位置にして、すなわち永久磁石20の上下にS極またはN極を配置することも可能である。より多くの対面ナットに磁力線30を通過させて対面ナットの個数増加を図ることからすると、図示の方向に極性を配置するのが望ましい。
【0043】
上記のナット列14におけるナット個数は、吸引部材15の搬送方向長さを加減して調節することができる。一方、永久磁石の吸引力を加減することによって、増減することができる。
図1では、非対面ナット1は、最先のナットaと後方のナットe以降であるが、永久磁石の吸引力を強化すれば、非対面ナット1を増加でき、つまりナットf、gあるいはそれ以上にまで吸引力を及ばせて、タイトに連なったナット列14をさらに長くすることができる。また、ナット1の搬送方向で見た吸引部材15の長さをさらに長くすることによっても、ナット列14の長さを長くすることができる。
【0044】
吸引部材15から遠ざかるにしたがって非対面ナットにおける吸引力が低下するので、この吸引力が実質的に役にたたない値になった箇所で、一体性のある部品列14は終了することになる。
【0045】
ナット列14が磁力で列方向に吸引されていると、対面ナット1は部品供給通路5の上側の内面に吸着され、非対面ナット1は対面ナットに近いものは部品供給通路5の内面に接触するが、対面ナットから遠さかるにしたがって部品供給通路5の内面への接触がなくなってゆく。
図1では、磁力作用が低くなっているナットfは、天井面8から少し離れて天井面8と底内面9の間に位置し、さらにナットgは、底内面9に接触している。
【0046】
つぎに、供給ロッドについて説明する。
【0047】
細長い部材で構成された供給ロッド24は、断面が矩形とされており、静止部材10に固定したエアシリンダ25によって進退する。供給ロッド24とエアシリンダ25は、平行に配置してあり、よって両者の進退方向は同じである。供給ロッド24の端部と、エアシリンダ25のピストンロッド26が、結合部材27を介して一体化されている。エアシリンダ25が最後退したことを検知するセンサー49が、エアシリンダ25の端部に取り付けられている。
【0048】
供給ロッド24は、通路部材6の長手方向に対して直交した向きに配置され、ナット1を収容する受入凹部28が設けてある。受入凹部28には四角いナット1を受け入れるのに適した形状と寸法が付与され、受入凹部28の奥部に永久磁石29が埋設してある。部品供給通路5を出たナット1は、永久磁石29によって吸引されて受入凹部28に入り、奥まで入りきった状態では、ナット本体2の横側面が供給ロッド24の横側面31からわずかに突き出た状態になっている。
【0049】
一方、2番目のナット1は、
図4や
図5に示すように、通路部材6や蓋板7の端部からわずかに突き出た箇所で、受入凹部28内のナット1と衝合している。つまり、
図4に示すように、供給ロッド24の横側面31と、通路部材6や蓋板7の端部との間に空隙Lが形成され、空隙Lの中央部において、受入凹部28内のナット1と2番目のナット1が突き当たっている。
【0050】
受入凹部28にナット1が存在するかどうかを検知するために、センサー44が受入凹部28の上位に設置してある。センサー44には、種々なタイプのものが採用できるが、ここでは静電容量型近接センサーである。センサー44は、エアシリンダ25に固定した支持アーム45の下面に取り付けられている。
【0051】
つぎに、リフト機構について説明する。
【0052】
図5に2点鎖線で示すように、鋼板部品32が載置された固定電極33と、それと同軸で対をなす可動電極34が設けられている。本実施例におけるナット1の供給目的箇所は、ナット1が電極の中心軸線上に位置する箇所である。
図6に示すように、可動電極34の下端部に受入凹部35が形成され、その奥部に永久磁石43が埋設してある。ここでは、ナット1を受入凹部35にはめ込むために、リフト機構36が採用されている。
【0053】
受入凹部28の底面から突き出るリフト部材37は、円形のカップ状の形であり、それを電極の中心軸線と平行な方向に昇降させるために、エアシリンダ38が設けてある。エアシリンダ38は、結合筒39を介して供給ロッド24の下面に取り付けてあり、そのピストンロッド40がリフト部材37の下部に固定してある。リフト部材37には、永久磁石42がはめ込んであり、上昇中にナット1が位置ずれを起こさないようになっている。永久磁石43の吸引力は、永久磁石42の吸引力よりも強く設定してある。
【0054】
エアシリンダ38の動作でリフト部材37が上昇すると、円形のリフト部材37の円形の端部がナット1の下面に当たってナット1が上昇し、ナット1は可動電極34の受入凹部35に入って、永久磁石43で吸引される。それに引き続いて、供給ロッド24が後退する。その後、ナット1は永久磁石43で吸引されたまま受入凹部35に残り、次いで可動電極34が進出して鋼板部品32に電気抵抗溶接がなされる。
【0055】
つぎに、装置の動作を説明する。
【0056】
図10に示した制御系統図を参照しながら説明する。同図において矢線は信号を伝達する信号線を示し、矢印のない実線は作動空気の給排空気管を示す。
【0057】
始動時の状態としては色々な形態があるが、ここでの始動時状態は、受入凹部28が空で永久磁石20がナット列14に最も接近した状態であるため、ナットaからナットgにおよぶ複数のナット1は、前述のように磁力線の通過や、ナット間の吸引でワンピースになって部品供給通路5内に待機している。そして、センサー49によってエアシリンダ25が最後退の位置におかれていることが検知され、部品供給通路5の出口開口部と受入凹部28が正確に対面した状態となっている。
【0058】
ここで装置の起動スイッチ46をオンにすると、シーケンス回路や簡単なコンピュータ装置で構成された制御装置47に起動信号が入力される。同時に、受入凹部28にナット1が入っていないことをセンサー44が検知し、この検知信号が制御装置47で処理されて、空気切換弁48が作動し、エアシリンダ22に作動空気が送られる。これによって、エアシリンダ22が後退し、永久磁石20はナット列14から遠ざかってナット列14に対する吸引磁力が消滅する。これによって、ナット列14は自重で部品供給通路5の底内面9上へ移行して滑降し、最先のナットaが受入凹部28内に進入して永久磁石29の吸引力を受け、2番目のナットbが
図4に示す空隙Lの箇所で最先ナットaに突き当たる。
【0059】
その後、制御装置47からの作動信号によって供給ロッド24が進出し、ナット1(ナットa)が可動電極34と同軸になった位置で停止する。この停止信号がトリガー信号になって、エアシリンダ38が作動して、リフト部材37が上昇し、最先のナットaが受入凹部35に挿入され、永久磁石43の吸引で安定したナット保持状態となる。次いで、供給ロッド24が、リフト機構36と一緒になって後退する。
【0060】
このナット保持状態のときに、エアシリンダ22の動作で永久磁石20がナット列14に最接近し、今度はナットbが最先ナットとなって、ナット列14が不動状態になり、つぎのナット列14の移動に備える。
【0061】
つぎのサイクルとして、エアシリンダ25が動作して供給ロッド24が進出して、ナット1が可動電極34の中心軸線上に到った位置で停止する。最先位置になったナットbが振動などでわずかに進出することがあっても、ナットbは進出した供給ロッド24の横側面31で受け止められ、供給ロッド2の進退動作に支障を来すことはない。
【0062】
部品供給通路5の高さ寸法は、2つのナット1が重なり合ったときの寸法よりも小さく設定しておくのが望ましい。こうすることによって、何等かの原因で部品供給通路5内におけるナット1が重複しそうになっても、確実に防止できる。
【0063】
図8に示す変形例は、蓋板7の一部を切り取るようなことはせず、蓋板7の上側に直接吸引部材15を取り付けたものである。この場合、蓋板7はできるだけ薄く作り、素材は透明アクリル板のような非磁性材料とするのが望ましい。こうすることによって、強い磁力がナット列14に作用する。
【0064】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、永久磁石を電磁石に換えることも可能である。
【0065】
上述の各エアシリンダの進退動作や空気噴射などの動作は、
図10に示すように、一般的に採用されている制御手法で容易に行うことが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0066】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0067】
吸引部材15が磁化状態とされているときには、対面ナットb、c、d(
図1参照)またはb、c、d、e(
図8参照)を磁力線が通過するので、これら対面ナットは部品供給通路5の内面17に吸着される。同時に、対面ナット同士も吸引されて、隙間なく連なっている。対面ナットは磁化されているので、この磁化された対面ナットに対して、その隣の非対面ナットa、e、f、gが吸引される。吸引方向は、部品供給通路5の長手方向である。この吸引された非対面ナットも磁化されているので、さらにその隣の非対面ナットが吸引される。このような連鎖的な吸引が所定個数の非対面ナットに及ぶので、対面ナットをも含めて所定個数のナット1が隙間なく列状の一体化されたナット列14を形成する。
【0068】
したがって、部品供給通路5内に待機しているナット1は、一体性のある連続状態となっているので、磁気吸引力が消滅してナット列14に部品搬送力が作用したときには、直ちに一体性のある状態で一斉に移動することが可能となる。また、何等かの外力が装置に作用することによってナット列14に衝撃的な力が作用しても、磁気的一体性がナット列14に付与されているので、ナット列14に隙間ができたり、列に乱れができたりすることがない。
【0069】
磁気的吸引力で列状に一体化されたナット列14の長さ、すなわち待機ナット個数をより多くして、増産時における供給ロッド24の供給進退回数の増加に対応することが確実に実施できる。ナット列14を形成するナット個数は、ナット1の搬送方向で見た吸引部材15の長さを加減したり、永久磁石20の吸引力を加減したりすることによって、所要の個数に増減することが、簡単に実施できる。このようにして、ナット列14全体が吸着しあった列状部材になって、部品供給通路5内で動けない停止状態になり、待機状態として異常な部品挙動がなくて、良好な部品待機が可能となる。
【0070】
部品供給通路5の内面に吸着されている対面部品に非対面部品が吸引されるので、非対面部品も部品供給通路5の内面に密着したり、部品供給通路5の内面からわずかに離隔した位置におかれたりする。したがって、ナット列14を形成する対面部品、非対面部品のいずれの箇所においても、ナット1が重なり合うような現象が回避できる。
【0071】
個々のナット1が磁化されてナット同士が吸引しあうので、ナット間に隙間が発生することなく、部品供給通路5内で複数個のナット1が一体性のある状態で結合したナット列14が形成される。
【0072】
吸引部材15を消磁状態にすると、ナット列14を形成していた磁力が消滅するので、ナット列14は部品供給通路5を上記停止状態から進行できる状態になる。このようなナット列14に対して、傾斜、空気噴射および直進フィーダなどによる部品搬送力が作用すると、所要個数のナット1があたかもワンピースの列状態で一斉に移送される。ナット列14自体は、上述のようにして部品間隙間や隣り合うナット1との重なりなどが回避された状態になっているため、ナット列14は最先ナットaから最後端ナットgまでが完全に連なった状態で整然と一斉に移動して、最先のナットaが供給ロッド24の受入凹部28に移載される。厚さが薄くて軽量なナット1においては、ワンピースの列状態で一斉に移動することによって、列が乱れたりすることなく、確実な部品供給が実現する。
【0073】
このように、吸引部材15が消磁状態になると、ナット間の隙間やナット同士の重なり合いのないナット列14が一斉に搬送されるので、供給ロッド24の受入凹部28に向かう部品搬送が確実に達成され、作動信頼性の高い部品供給装置がえられる。
【0074】
つまり、部品供給通路5内に待機している段階で、搬送に適した整然としたナット列14を磁力付与によって予め整えておき、吸引部材15が消磁されると、整然としたナット列14の状態を維持したまま搬送される。
【0075】
通常は、特許文献2に記載されているように、部品供給通路5内のナット1を一つずつ送り出すために、最先ナット1の進出を禁止する進退式の第1規制部材と、2番目のナット1の進出を禁止する進退式の第2規制部材が設けられ、第2規制部材を進出禁止位置とし、第1規制部材を進出可能位置とすることによって、最先のナット1だけが自由になって搬送される。その後、第1規制部材を進出禁止位置に戻し、第2規制部材を進出可能位置に後退させると、2番目のナット1が今度は最先ナットになる。それから第2規制部材が進出禁止位置に戻ることによって、両規制部材は初期の待機状態となる。
【0076】
とくに注目されるのは、本願発明においては、ナット列14に磁力を作用させたり、作用させなかったりすることによって、寸法が小さくて軽量なナット1の送給を行うものであるから、上述のような第1規制部材や第2規制部材を用いるような複雑な機構を採用することなく、良好な部品供給装置がえられる。換言すると、寸法が小さくて軽量なナット1の送給においては、上述の第1規制部材や第2規制部材による制御機構が採用できない、という問題が解消されるのである。
上述のように、本発明の装置によれば、部品供給通路内に整然とした部品列を形成し、この部品列の途中に隙間ができたりしないようにして、しかも、特別な機構を付加することなく部品列全体を移動させて、最先の部品一つだけを供給ロッドの収容凹部に送り込む。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。