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特開2022-121367床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121367
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157586
(22)【出願日】2021-09-28
(62)【分割の表示】P 2021018051の分割
【原出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000161356
【氏名又は名称】宮地エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】西垣 登
(72)【発明者】
【氏名】村井 向一
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA13
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】コンクリート床版の下面側への雨水の浸入を防ぎ、橋桁とコンクリート床版との接合境界面を水平切断しやすくする。
【解決手段】橋桁2上に敷設されて橋梁1の路面を構成するコンクリート床版3と橋桁2との接合境界面Jを無水式のワイヤーソー5によって切断する床版切断装置CDの装置本体が、コンクリート床版3の下方に配置されており、床版切断装置CDが下方に配置された部分のコンクリート床版3を上方から覆う全天候型の仮囲い20が、コンクリート床版3の上面に配置されており、床版切断装置CDが下方に配置された部分のコンクリート床版3には、ワイヤーソー5を通すためのコンクリート床版3を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁上に敷設されて橋梁の路面を構成するコンクリート床版と前記橋桁との接合境界面を無水式のワイヤーソーによって切断する床版切断装置の装置本体が、前記コンクリート床版の下方に配置されており、
前記床版切断装置が下方に配置された部分の前記コンクリート床版を上方から覆う全天候型の仮囲いが、前記コンクリート床版の上面に配置されており、
前記床版切断装置が下方に配置された部分の前記コンクリート床版には、前記ワイヤーソーを通すための前記コンクリート床版を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造。
【請求項2】
橋桁上に敷設されて橋梁の路面を構成するコンクリート床版と前記橋桁との接合境界面を無水式のワイヤーソーによって切断する床版切断装置の装置本体が、前記コンクリート床版の上方に配置されており、
前記床版切断装置が配置された部分の前記コンクリート床版を上方から覆う全天候型の仮囲いが、前記コンクリート床版の上面に配置されており、
前記床版切断装置が配置された部分の前記コンクリート床版には、前記ワイヤーソーを通すための前記コンクリート床版を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造。
【請求項3】
前記仮囲いは、
前記コンクリート床版の長手方向に沿って伸縮動作自在な蛇腹式防護膜と、
前記蛇腹式防護膜を前記コンクリート床版上に沿って長手方向に移動させる走行部と、を備えており、
前記蛇腹式防護膜は、複数のフレームと、前記複数のフレーム同士を連結して上方及び側方に蛇腹を構成する膜体と、を有しており、
前記走行部は、前記複数のフレームうちいずれかのフレームにおける両端部に取り付けられた脚部と、前記脚部の下端部に設けられて前記コンクリート床版の上面に接するタイヤと、を有しており、
前記複数のフレームは、前記いずれかのフレームにおける両端部に取り付けられた前記脚部よりも外側に位置し、前記膜体と共に前記仮囲いの側面を構成する両側の側面構成部を有し、
前記両側の側面構成部のうち、少なくとも一方の側面構成部は、前記コンクリート床版の側端部に設けられた壁高欄よりも外側方に位置し、当該少なくとも一方の側面構成部の下端部は、前記タイヤよりも下方に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造。
【請求項4】
前記両側の側面構成部のうち、一方の側面構成部は、前記コンクリート床版の側端部に設けられた壁高欄よりも外側方に位置し、他方の側面構成部は、前記コンクリート床版の上面よりも上方に位置していることを特徴とする請求項3に記載の床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造。
【請求項5】
前記両側の側面構成部の各々は、前記コンクリート床版の側端部に設けられた壁高欄よりも外側方に位置していることを特徴とする請求項3に記載の床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全無水式のワイヤーソーを用いた床版切断装置と、床版の切断作業時に用いられる床版切断用仮囲いの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高架橋等における橋梁は、年月の経過によって老朽化したり、設計荷重よりも大きな交通荷重によって損傷したりするため改修工事が適時行われる。また、その改修工事を行う際は、橋梁の路面を構成するコンクリート床版の撤去作業が行われる。
コンクリート床版の撤去に係る技術として、例えば特許文献1には、冷却水を使用しない無水式ワイヤーソーによって橋桁とコンクリート床版の接合境界面を水平切断し、コンクリート床版を適宜のブロックに切断して解体・撤去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-194495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、橋梁には、厚み方向にコンクリート床版を貫通する貫通孔が穿孔される場合があるため、雨水が、コンクリート床版の下面側に流れ込んでくることがある。そして、コンクリート床版下方の切断箇所まで雨水が入ってくると、コンクリート床版の切断時に発生し、かつワイヤーソーに付着した切粉が雨水によって団子状になることがある。そのような現象が発生すると、コンクリート床版の切断時の摩擦が大きくなり、橋桁とコンクリート床版との接合境界面を水平切断しにくくなる場合がある。
本発明の課題は、コンクリート床版の下面側への雨水の浸入を防ぎ、橋桁とコンクリート床版との接合境界面を水平切断しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造であって、
橋桁上に敷設されて橋梁の路面を構成するコンクリート床版と前記橋桁との接合境界面を無水式のワイヤーソーによって切断する床版切断装置の装置本体が、前記コンクリート床版の下方に配置されており、
前記床版切断装置が下方に配置された部分の前記コンクリート床版を上方から覆う全天候型の仮囲いが、前記コンクリート床版の上面に配置されており、
前記床版切断装置が下方に配置された部分の前記コンクリート床版には、前記ワイヤーソーを通すための前記コンクリート床版を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造であって、
橋桁上に敷設されて橋梁の路面を構成するコンクリート床版と前記橋桁との接合境界面を無水式のワイヤーソーによって切断する床版切断装置の装置本体が、前記コンクリート床版の上方に配置されており、
前記床版切断装置が配置された部分の前記コンクリート床版を上方から覆う全天候型の仮囲いが、前記コンクリート床版の上面に配置されており、
前記床版切断装置が配置された部分の前記コンクリート床版には、前記ワイヤーソーを通すための前記コンクリート床版を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造において、
前記仮囲いは、
前記コンクリート床版の長手方向に沿って伸縮動作自在な蛇腹式防護膜と、
前記蛇腹式防護膜を前記コンクリート床版上に沿って長手方向に移動させる走行部と、を備えており、
前記蛇腹式防護膜は、複数のフレームと、前記複数のフレーム同士を連結して上方及び側方に蛇腹を構成する膜体と、を有しており、
前記走行部は、前記複数のフレームうちいずれかのフレームにおける両端部に取り付けられた脚部と、前記脚部の下端部に設けられて前記コンクリート床版の上面に接するタイヤと、を有しており、
前記複数のフレームは、前記いずれかのフレームにおける両端部に取り付けられた前記脚部よりも外側に位置し、前記膜体と共に前記仮囲いの側面を構成する両側の側面構成部を有し、
前記両側の側面構成部のうち、少なくとも一方の側面構成部は、前記コンクリート床版の側端部に設けられた壁高欄よりも外側方に位置し、当該少なくとも一方の側面構成部の下端部は、前記タイヤよりも下方に位置していることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造において、
前記両側の側面構成部のうち、一方の側面構成部は、前記コンクリート床版の側端部に設けられた壁高欄よりも外側方に位置し、他方の側面構成部は、前記コンクリート床版の上面よりも上方に位置していることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の床版切断工事における床版切断装置と仮囲いの配置構造において、
前記両側の側面構成部の各々は、前記コンクリート床版の側端部に設けられた壁高欄よりも外側方に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンクリート床版の下面側への雨水の浸入を防ぎ、橋桁とコンクリート床版との接合境界面を水平切断しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】接合境界面の構成を示す斜視図である。
図2】床版切断装置の構成を示す拡大正面図である。
図3】第1実施例における床版切断装置を示す平面図である。
図4】同、縦断面図である。
図5】コンクリート床版を切断作業方向と直交する方向に切断する場合の一例を示す断面図である。
図6】第1実施例における床版切断装置の変形例を示す平面図である。
図7】第2実施例における床版切断装置を示す平面図である。
図8】第3実施例における床版切断装置を示す平面図である。
図9】同、縦断面図である。
図10】床版切断用仮囲いの構成を示す概略平面図であり、(a)は蛇腹式防護膜を拡げた状態、(b)は蛇腹式防護膜を縮めた状態である。
図11図10の床版切断用仮囲いの縦断正面図である。
図12】床版切断装置及び床版切断用仮囲いの参考例を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
<第1実施形態>
図1において符号1は橋梁を示す。この橋梁1は、例えば鉄道や道路が建設される高架橋であり、本実施形態における橋梁1は、道路が建設される高架橋を指している。
高架橋である橋梁1は、橋脚(図示せず)間に架設された複数の橋桁2と、これら複数の橋桁2上に敷設されて橋梁1の路面を構成するコンクリート床版3と、を備える。コンクリート床版3の側縁部にはコンクリート製の壁高欄1aが一体的に設けられている。
なお、本実施形態における橋梁1は高架橋であるとしたが、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその他の種類の橋を採用してもよい。
【0014】
複数の橋桁2には、これら複数の橋桁2同士の連結強度を向上させたり、橋梁1自体の強度を向上させたりするための補強材が設けられている。このような補強材としては、例えば複数の橋桁2間に水平に架け渡された補強梁4a、鉛直方向に配置された鉛直ブレース4b、水平方向に配置された水平ブレース4c等が挙げられる。
なお、補強梁4aや鉛直ブレース4bは、図3等に示すように、複数の橋桁2の延在方向に間隔を空けて複数設けられている。そのため、橋梁1は、これら補強梁4a及び鉛直ブレース4bによって延在方向に沿って区切られた状態となっている。
【0015】
コンクリート床版3は、橋桁2の上面に載る部分として下方に膨出するハンチ部3aを有し、橋梁1の建造時に、このハンチ部3aが、橋桁2の上面に突出して設けられた複数のジベル2a(例えば頭付きスタッドジベル)を含んだ状態となるようにコンクリート打設されて形成されている。そのため、コンクリート床版3は、複数のジベル2aを介して橋桁2と接合した状態となっている。このように橋桁2とコンクリート床版3とが接合し合う面を接合境界面Jと称する。
【0016】
コンクリート床版3は、上記のように橋梁1における路面を構成しており、通常時には多くの車両が通行する。そのため、年月の経過によって老朽化したり、設計荷重よりも大きな交通荷重がかかることによって損傷したりするのに応じて橋梁改修工事が適時行われる。
橋梁改修工事は、橋梁1の延在方向に沿って長い区間で行われる場合が多いため、改修工事予定区間のコンクリート床版3は、複数のエリア(解体予定箇所)に分割されて解体・撤去作業が行われる。
本実施形態においては、橋梁1をなるべく通行止めしないようにして橋梁改修工事が行われるものとする。
【0017】
コンクリート床版3は、本実施形態における床版切断装置CD(CD1,CD2,CD3)によって上記のジベル2aごと接合境界面Jが切断されることで橋桁2と切り離される。そして、コンクリート床版3は、輸送車両に積み込むことができる程度の大きさとなるように複数に、かつ順次解体される。
【0018】
本実施形態における床版切断装置CDは、図2に示すように、ワイヤーソー5と、ワイヤー駆動部6と、ガイドレール7と、ガイドシャフト8と、を少なくとも備えた状態が基本構成とされている。この基本構成に、ワイヤーソー5の走行を円滑にするための固定プーリ9(後述する)が追加されてもよい。
【0019】
ワイヤーソー5は、ワイヤー駆動部6によって走行駆動される無水式ワイヤーソーであり、一端部と他端部とを接続することで無端状にすることができる。そして、このようなワイヤーソー5を、一定の張力が付与された状態で高速回転することで、ジベル2aごと接合境界面Jを切断することができる。
また、無端状のワイヤーソー5は、平面視した場合においてループ状に配置される。
【0020】
なお、ジベル2aごと接合境界面Jを切断できるようにワイヤーソー5を配置する場合は、ワイヤーソー5を、切断対象の橋桁2を挟んで一方側と他方側との間に通す必要がある。そのため、接合境界面J(ハンチ部3a)には、ワイヤーソー5を通すための挿通孔Jhが形成されることとなる。
【0021】
ワイヤー駆動部6は、ワイヤーソーを走行駆動させるものであり、駆動プーリ6aと、本体装置部6bと、を有する。
【0022】
駆動プーリ6aは、接合境界面Jと略等しい高さ位置に配置されて水平回転するプーリである。ワイヤーソー5が挿入される溝が外周端面に沿って形成されており、ワイヤーソー5は、この溝に挿入された状態となるように駆動プーリ6aに巻かれる。
【0023】
本体装置部6bは、駆動プーリ6aを回転駆動させるとともにガイドレール7に沿って走行駆動するものである。
より詳細には、駆動プーリ6aを回転可能な状態で保持する保持部60と、駆動プーリ6aを回転させる第一モーター61と、ガイドレール7に沿って走行駆動可能な状態で当該ガイドレール7に係合する係合部62と、係合部62をガイドレール7に沿って走行駆動させる第二モーター63と、を有する。
なお、本実施形態における係合部62は、ガイドレール7の上下に設けられてガイドレール7を挟持する上下の車輪と、これら上下の車輪を保持する車輪保持部と、を備えており、上下の車輪が第二モーター63によって回転するように構成されている。
【0024】
ガイドレール7は、切断対象の橋桁2の延在方向に沿って配置され、長さ方向に沿ってワイヤー駆動部6が走行移動するものであり、レール本体7aと、レール保持部7bと、を有する。
【0025】
レール本体7aは、ワイヤー駆動部6における係合部62が確実に係合可能で、かつ、係合部62が確実に走行駆動可能な形状に形成されている。
具体的には、レール本体7aのワイヤー駆動部6側端部における上下端部には突条70がそれぞれ形成されている。そして、これら上下の突条70に、ワイヤー駆動部6における係合部62の上下の車輪がそれぞれ引っ掛かるようになっている。上下の車輪は、上下の突条70に確実に係合することで十分な摩擦力を発揮し、空回りせずに第二モーター63によって回転する。
【0026】
レール保持部7bは、レール本体7aを保持するものであり、橋桁2におけるスチフナ2bやコンクリート床版3の下面に取り付けられる。
スチフナ2bに取り付けられる場合は、図2に示すように、基端部がクランプによって取り付けられる。コンクリート床版3の下面に取り付けられる場合はアンカー止めされる。
【0027】
なお、ガイドレール7は、複数のレール本体7aを長さ方向に連続させることにより、1本の長尺なものとして取り扱うようにしてもよい。
【0028】
ガイドシャフト8は、切断対象の橋桁2の上端部における両側縁に沿って配置されるとともにガイドレール7と平行に配置され、ワイヤーソー5の下面に接する。より詳細には、ワイヤーソー5のうち、切断対象の橋桁2の上端部における両側縁からはみ出した部分の下面に接している。
このようなガイドシャフト8が設けられることにより、切断作業が進むにつれて弛緩するワイヤーソー5の撓みを確実に抑制しつつ、ワイヤーソー5の走行駆動をガイドできる。その結果、ワイヤーソー5の水平度を確保することができるので、接合境界面Jの切断作業を正確に行うことができ、橋桁2の上端部(上フランジ)がワイヤーソー5によって傷つけられることを防ぐことができる。
【0029】
本実施形態におけるガイドシャフト8は、ガイドレール7に沿って長尺な角型パイプシャフトによって構成されている。すなわち、角型パイプシャフトからなるシャフト本体8aと、このシャフト本体8aを保持するシャフト保持部8bと、を有する。
シャフト保持部8bは、橋桁2におけるスチフナ2bやコンクリート床版3の下面に取り付けられる。スチフナ2bに取り付けられる場合は基端部がクランプによって取り付けられる。コンクリート床版3の下面に取り付けられる場合は、図2に示すように、アンカー止めされる。
【0030】
なお、本実施形態においては、ガイドシャフト8におけるシャフト本体8aは、角型パイプシャフトによって構成されるものとしたが、これに限られるものではなく、回転軸を有する丸型パイプシャフトによって構成されてもよい。丸型のガイドシャフト8は、回転軸が橋桁2の上端部における両側縁に沿うようにして配置されており、これによってワイヤーソー5の走行に合わせて軸周りに回転自在となる。ワイヤーソー5の走行に合わせて回転すれば、ワイヤーソー5との間に生じる摩擦を極力抑えることができるので、ワイヤーソー5の破損やガイドシャフト8の損傷が生じにくくなる。
【0031】
床版切断装置CDは、以上のような基本構成となっている。
そして、コンクリート床版3は、以上のような基本構成を備えた床版切断装置CDによって、上記のジベル2aごと接合境界面Jが切断されることで橋桁2と切り離される。
【0032】
以下においては、このような床版切断装置CDの実施例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記の基本構成や橋梁1の構成を始めとする共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。また、以下に挙げる実施例及び変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
【0033】
〔第1実施例〕
まず、第1実施例について図面を参照して説明する。
本実施例における床版切断装置CD1は、図3図5等に示すように、ワイヤーソー5と、一対のワイヤー駆動部6と、一対のガイドレール7と、一対のガイドシャフト8と、備えている。
なお、図3図6)において矢印Yで表す方向は、ワイヤーソー5による接合境界面Jの切断作業方向(以下、切断作業方向Y)を示している。ワイヤーソー5は、切断作業方向Yの上流側から下流側に向かって接合境界面Jを切断していく。また、図3において双方向矢印X-X´で表す方向は、平面視において切断作業方向Yと直交する方向(以下、直交方向X)を示している。
また、図3図6)における白抜きの矢印は、一対のワイヤー駆動部6及びワイヤーソー5の進行方向を表している。さらに、ワイヤーソー5に沿って付された符号が付与されていない矢印は、ワイヤーソー5の走行駆動方向を表している。
【0034】
複数の橋桁2は、切断作業方向Y及び切断作業方向Yの逆方向に沿って長尺に形成されており、補強梁4aは、図3図4に示すように、直交方向Xに沿って複数の橋桁2間に架け渡されている。
一対のワイヤー駆動部6は、切断対象の橋桁2を挟んで、直交方向Xに沿って隣り合うように配置されている。また、これら一対のワイヤー駆動部6は、駆動プーリ6aが同じ高さ位置に配置されている。
ガイドレール7及びガイドシャフト8は、切断作業方向Y及び切断作業方向Yの逆方向に沿って配置されている。
【0035】
本実施例におけるワイヤーソー5の長さは、例えば、一対のワイヤー駆動部6における駆動プーリ6a間に撓みなく長円環状に巻き回された場合のワイヤーソー5の長さよりも長尺に設定されている。
より詳細に説明すると、まず、ワイヤーソー5は、上記のように、平面視した場合においてループ状に配置されるものであるため、一対のワイヤー駆動部6(駆動プーリ6a)に巻かれた状態においては、切断作業方向Yの上流側に位置する部位(以下、上流側部位5a)と、切断作業方向Yの下流側に位置する部位(以下、下流側部位5b)と、を有することになる。
そして、上流側部位5aは、一対のワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側であって、かつ、接合境界面Jのうち切断作業方向Yの上流側に配置されている。一方、下流側部位5bは、一対のワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側であって、かつ、接合境界面Jのうち上流側部位5aよりも下流側に配置されている。すなわち、一対のワイヤー駆動部6に巻かれたワイヤーソー5のうち、上流側部位5aと下流側部位5bの双方とも、一対のワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側に位置しており、その上で、上流側部位5aは、下流側部位5bよりも切断作業方向Yの上流側に位置している。すなわち、上流側部位5aと下流側部位5bの双方とも、上記のように長尺に設定されることで、「く」の字(記号<、V字でもよい)に配置できるようになっている。
【0036】
接合境界面Jのうち、ワイヤーソー5の上流側部位5aが通される箇所と、下流側部位5bが通される箇所には、挿通孔Jhがそれぞれ形成されている。
そして、上流側の挿通孔Jhには、一対のワイヤー駆動部6に巻かれたワイヤーソー5の上流側部位5aが通され、下流側の挿通孔Jhには、一対のワイヤー駆動部6に巻かれたワイヤーソー5の下流側部位5bが通される。
さらに、一対のワイヤー駆動部6を一対のガイドレール7に沿って下流側に移動させることで、ワイヤーソー5に張力を付与することができる(図3に示す状態を指す)。このような状態が、床版切断装置CD1によって切断作業を進める場合の初期状態である。
なお、挿通孔Jhは、直交方向Xに沿って形成されているが、これに限られるものではなく、平面視において直交方向Xに対して傾斜して形成されてもよい。
【0037】
以上のような床版切断装置CD1によって接合境界面Jの切断作業を行う場合は、一対のワイヤー駆動部6における駆動プーリ6aを走行駆動(高速回転)させながら、当該一対のワイヤー駆動部6を一対のガイドレール7に沿って下流側に走行移動させる。ワイヤーソー5の上流側部位5aは、上流側の挿通孔Jhから下流側の挿通孔Jhに向かって切断を行い、ワイヤーソー5の下流側部位5bは、下流側の挿通孔Jhから更に下流側に向かって切断を行う。
このとき、ワイヤーソー5の上流側部位5aと下流側部位5bは共に、一対のガイドシャフト8に沿ってガイドされた状態のまま高速回転している。
【0038】
一対のワイヤー駆動部6を一対のガイドレール7に沿って下流側に走行移動させていくと、補強梁4a及び鉛直ブレース4bによって、一対のワイヤー駆動部6の進行が阻まれることになる。ただし、ワイヤーソー5は、補強梁4aよりも上方の位置(補強梁4aとコンクリート床版3の下面との間)で走行駆動しているため、補強梁4a及び鉛直ブレース4bによって進行が阻まれない。
このような場合には、一対のワイヤー駆動部6を、補強梁4a及び鉛直ブレース4bを挟んで上流側に位置する一対のガイドレール7から、下流側に位置する一対のガイドレール7への盛替えを行う。
【0039】
接合境界面Jの切断作業を更に進めていくと、ワイヤーソー5の上流側部位5aが、下流側の挿通孔Jhまで到達する。その位置まで接合境界面Jを切断すると、初期状態のようなワイヤーソー5の張力を維持できないため、切断作業を継続する場合は、ワイヤーソー5の下流側部位5bによって切断した最下流位置を基点にして、床版切断装置CD1自体の盛替えを行う。
すなわち、ワイヤーソー5は一旦外し、一対のワイヤー駆動部6、一対のガイドレール7、一対のガイドシャフト8を、次の切断作業が行われる位置まで移し替えて設置する。
そして、前の切断作業においてワイヤーソー5の下流側部位5bによって切断した最下流位置に、次の切断作業におけるワイヤーソー5の上流側部位5aを配置する。また、その更に下流側に、次の作業における下流側の挿通孔Jhを形成し、当該挿通孔Jhに、ワイヤーソー5の下流側部位5bを通すようにする。これにより、床版切断装置CD1の盛替えが完了し、切断作業を継続することができる。
【0040】
なお、一対のワイヤー駆動部6は、図示しない制御装置によって、本実施例においては同期して一対のガイドレール7に沿って走行移動するように制御されているが、別々に走行移動するように制御されてもよい。また、このように一対のワイヤー駆動部6が別々に走行移動するのに加えて、一対のワイヤー駆動部6を僅かに切断作業方向Yの逆方向に走行移動できるようにしてもよい。このように制御されれば、例えばワイヤーソー5が引っ掛かって走行駆動しないような事象が発生した場合に、ワイヤーソー5を掛け直したり、一対のワイヤー駆動部6の位置を手動で直したりする必要がなくなり、作業効率を向上させることができる。
また、上記の制御装置は、無線又は有線によって、作業員が所持する操作部と通信可能に接続されており、操作部から遠隔操作できるようになっている。
さらに、切断作業箇所の周囲には、切断作業を監視するカメラが複数配置されている。これら複数のカメラは、無線又は有線によって、上記の操作部(表示部を備えるものとする)又は/及びそれ以外の表示装置と通信可能に接続されている。そのため、複数のカメラで撮影した映像は、上記の操作部や表示装置に表示できるようになっている。これにより、作業員は、作業状況を監視することができ、作業の効率化や安全確保が図られることになる。
【0041】
また、図3における矢印Aは、コンクリート床版3の切断時に発生する切粉の噴出方向を表しており、本実施例における床版切断装置CD1の場合は、上流側部位5aによって切断される時と、下流側部位5bによって切断される時の2方向に切粉が噴出する。そのため、上流側部位5aによって切断される範囲と、下流側部位5bによって切断される範囲に粉塵養生を行うことが望ましい。
なお、粉塵養生は、切粉の飛散を防止するカバー(図示省略)であり、このようなカバーの端部に、後述する集塵装置23のホースが装着できるようになっている。
【0042】
切断作業を予定の位置まで完了させた後は、図5に示すように、無水用のカッターブレード10aを有するカッター装置10によって、コンクリート床版3を直交方向Xに沿って切断する。
なお、カッター装置10による切断作業は、カッターブレード10aが略円形であるため、直交方向Xの最端部まで行えない。そこで、コンクリート床版3における直交方向Xの最端部は、コア削孔等で端部止めを行う(コア削孔部3bと称する)。
以上のような方法で、コンクリート床版3を、輸送車両に積み込むことができる程度の大きさのコンクリートブロックに解体することができる。なお、当該コンクリートブロックの撤去は、クレーンによって行われる。
【0043】
本実施例によれば、コンクリート床版3と橋桁2とを切り離すための床版切断装置CD1が、ワイヤーソー5と、一対のワイヤー駆動部6と、一対の長尺なガイドレール7と、一対の長尺なガイドシャフト8と、を備えた簡易な構成となっているので、床版切断装置CD1をコンパクト化してコンクリート床版3の下方に確実に設置できる。すなわち、従来公知の種々の技術においては、ワイヤーソーを装置内外で複数のプーリに繰り込み、電動モーターで巻き上げて接合境界面を切断する仕組みとなっている。よって、ワイヤーソーを繰り込むプーリの数が多くなれば、その分、切断長さが長くなる。そのデメリットとしては、「床版切断装置を現場内で組立・解体・盛替え作業の際に時間と手間が掛かる。」、「切断装置形状が大きく、現場内(橋梁主桁部)の障害物が設置条件に影響する。」といったものが挙げられる。これに対し、本実施例によれば、ワイヤーソー5を繰り込むプーリを極力少なくしたので、コンパクト化が実現され、現場での設置・転用が簡素化できる。また、プーリを極力少なくしたとしても、ワイヤーソー5の長さとガイドレール7を長くすることでコンクリート床版3の切断長を増長する事が簡単にできる。さらには、補強梁4a等の障害物の影響も低減できる。
さらに、一対のワイヤー駆動部6は、ワイヤーソー5が巻かれるとともに、接合境界面Jと略等しい高さ位置に配置されて水平回転する駆動プーリ6aをそれぞれ有しており、ワイヤーソー5の長さは、一対のワイヤー駆動部6における駆動プーリ6a間に撓みなく長円環状に巻き回された場合のワイヤーソー5の長さよりも長尺に設定され、ワイヤーソー5のうち、切断作業方向Yの上流側に位置する上流側部位5aと下流側に位置する下流側部位5bは、一対のワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側に配置されるので、ワイヤーソー5における上流側部位5aと下流側部位5bの双方で同時に接合境界面Jの切断作業を行うことができ、これによって十分な切断長を確保でき、橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを水平切断しやすくなる。
また、このような床版切断装置CD1を用いた床版切断方法によれば、同様の効果を発揮することができる。
【0044】
(変形例)
図6は、第1実施例における変形例であり、床版切断装置CD1によって、複数の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを同時に切断する場合の形態を表している。
【0045】
このように複数の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを同時に切断する場合は、一対のワイヤー駆動部6のうち、一方(直交方向XにおけるX側)のワイヤー駆動部6を、一方の橋桁2における外側(直交方向XにおけるX側)に配置し、他方(直交方向XにおけるX´側)のワイヤー駆動部6を、他方の橋桁2における外側(直交方向XにおけるX´側)に配置する。
また、一対のワイヤー駆動部6の位置に伴って、一対のガイドレール7も同様に、複数の橋桁2の外側(直交方向XにおけるX側とX´側)に配置する。なお、ガイドレール7は、隣の車線を構成する橋桁2のスチフナ2bやコンクリート床版3に取り付けてもよい。
【0046】
一対のガイドシャフト8は、本変形例においては、各橋桁2の上端部における両側縁に沿って配置されている。ただし、これに限られるものではなく、一対のワイヤー駆動部6や一対のガイドレール7と同様に、複数の橋桁2の外側(直交方向XにおけるX側とX´側)に配置してもよい。
【0047】
上流側及び下流側の挿通孔Jhも複数の橋桁2のそれぞれに形成し、ワイヤーソー5を当該挿通孔Jhに通しつつ、一対のワイヤー駆動部6に巻きつけて、複数の橋桁2の外側(直交方向XにおけるX側とX´側)を回るように配置する。そして、このように配置されたワイヤーソー5を一対のワイヤー駆動部6によって走行駆動させれば、複数の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを同時に切断することができる。
【0048】
なお、粉塵養生は、各橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jごとに2か所必要であるため、2本の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを切断する場合は、合計4か所の粉塵養生が必要となる。
【0049】
以上のような構成の床版切断装置CD1によって行われる切断作業によれば、2本の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを同時に切断することができるので、各橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jごとに切断作業を行う場合よりも効率が良い。
【0050】
〔第2実施例〕
続いて、第2実施例について図面を参照して説明する。
本実施例における床版切断装置CD2は、図7に示すように、ワイヤーソー5と、一対のワイヤー駆動部6と、一対のガイドレール7と、一対のガイドシャフト8と、一対の固定プーリ9と、備えている。
なお、図7において矢印Yで表す方向は、切断作業方向Yであり、双方向矢印X-X´で表す方向は、直交方向Xであり、矢印Aで表す方向は、切粉の噴出方向である。
【0051】
一対の固定プーリ9は、駆動プーリ6aと同様に、ワイヤーソー5が巻かれるとともに、接合境界面Jと略等しい高さ位置に配置されて水平回転する。そして、切断対象の橋桁2の上端部における両側縁側で、かつ、切断対象の橋桁2における切断作業方向Yの上流側の端部に配置されており、床版切断装置CD2の盛替えが行われるまで、この位置から他の位置に移動しない。
【0052】
なお、一対の固定プーリ9同士の間隔が長いと、ワイヤーソー5の長さも余計に長くなってしまう。そのため、1本の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを切断する場合の一対の固定プーリ9同士の間隔は、当該一対の固定プーリ9が橋桁2やコンクリート床版3等に干渉しない範囲で極力短くなるように設定されている。
【0053】
本実施例におけるワイヤーソー5の長さも、例えば、一対のワイヤー駆動部6における駆動プーリ6a間に撓みなく長円環状に巻き回された場合のワイヤーソー5の長さよりも長尺に設定されている。
より詳細に説明すると、まず、ワイヤーソー5は、平面視した場合においてループ状に配置されるものであるため、一対のワイヤー駆動部6(駆動プーリ6a)に巻かれた状態においては、切断作業方向Yの上流側に位置する部位(以下、上流側部位5a)と、切断作業方向Yの下流側に位置する部位(以下、下流側部位5b)と、を有することになる。
そして、上流側部位5aは、一対のワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側に配置され、かつ、一対の固定プーリに巻かれている。一方、下流側部位5bは、一対のワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側であって、かつ、接合境界面Jのうち上流側部位5aよりも下流側に配置されている。すなわち、一対のワイヤー駆動部6に巻かれたワイヤーソー5のうち、上流側部位5aと下流側部位5bの双方とも、一対のワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側に位置しており、その上で、上流側部位5aは、一対の固定プーリ9に巻かれている。すなわち、上流側部位5aと下流側部位5bの双方とも、上記のように長尺に設定されることで、「く」の字(記号<もしくは亀甲括弧、V字でもよい)に配置できるようになっている。
【0054】
接合境界面Jのうち、ワイヤーソー5の下流側部位5bが通される箇所には、挿通孔Jhが形成されており、当該挿通孔Jhには、一対のワイヤー駆動部6に巻かれたワイヤーソー5の下流側部位5bが通される。
さらに、一対のワイヤー駆動部6を一対のガイドレール7に沿って下流側に移動させることで、ワイヤーソー5に張力を付与することができる(図7に示す状態を指す)。このような状態が、床版切断装置CD2によって切断作業を進める場合の初期状態である。
【0055】
以上のような床版切断装置CD2によって接合境界面Jの切断作業を行う場合は、一対のワイヤー駆動部6における駆動プーリ6aを走行駆動(高速回転)させながら、当該一対のワイヤー駆動部6を一対のガイドレール7に沿って下流側に走行移動させる。ワイヤーソー5の上流側部位5aは、一対の固定プーリ9の位置から動かず、ワイヤーソー5の下流側部位5bは、挿通孔Jhから下流側に向かって切断を行う。
このとき、ワイヤーソー5の下流側部位5bは、一対のガイドシャフト8に沿ってガイドされた状態のまま高速回転している。
【0056】
一対のワイヤー駆動部6を一対のガイドレール7に沿って下流側に走行移動させていくと、補強梁4a及び鉛直ブレース4bによって、一対のワイヤー駆動部6の進行が阻まれることになるため、一対のワイヤー駆動部6の盛替えを行う。
【0057】
接合境界面Jの切断作業を更に進めていくと、一対のワイヤー駆動部6が、一対のガイドレール7における下流側の端部まで到達する。若しくは、ワイヤーソー5の下流側部位5bが、一対のワイヤー駆動部6(駆動プーリ6a)における切断作業方向Yの下流側端部まで移動する。ところが、そのような位置まで接合境界面Jを切断すると切断作業を継続できないため、切断作業を継続する場合は、ワイヤーソー5の下流側部位5bによって切断した最下流位置を基点にして、床版切断装置CD2自体の盛替えを行う。
すなわち、ワイヤーソー5は一旦外し、一対のワイヤー駆動部6、一対のガイドレール7、一対のガイドシャフト8、一対の固定プーリ9を、次の切断作業が行われる位置まで移し替えて設置する。
そして、前の切断作業においてワイヤーソー5の下流側部位5bによって切断した最下流位置に、次の切断作業における一対の固定プーリ9を配置する。また、その更に下流側に、次の作業における挿通孔Jhを形成し、当該挿通孔Jhに、ワイヤーソー5の下流側部位5bを通すようにする。これにより、床版切断装置CD2の盛替えが完了し、切断作業を継続することができる。
【0058】
なお、図3における矢印Aは、上記のように、コンクリート床版3の切断時に発生する切粉の噴出方向を表しており、本実施例における床版切断装置CD2の場合は、下流側部位5bによって切断される時のみ切粉が噴出する。そのため、下流側部位5bによって切断される範囲にのみ粉塵養生を行えば粉塵対策を行うことができる
【0059】
切断作業を予定の位置まで完了させた後は、カッター装置10によって、コンクリート床版3を直交方向Xに沿って切断し、コンクリート床版3を、輸送車両に積み込むことができる程度の大きさのコンクリートブロックに解体する。
【0060】
本実施例によれば、コンクリート床版3と橋桁2とを切り離すための床版切断装置CD2が、ワイヤーソー5と、一対のワイヤー駆動部6と、一対の長尺なガイドレール7と、一対の長尺なガイドシャフト8と、一対の固定プーリ9と、を備えた簡易な構成となっているので、床版切断装置CD2をコンパクト化してコンクリート床版3の下方に確実に設置できる。すなわち、従来公知の種々の技術においては、ワイヤーソーを装置内外で複数のプーリに繰り込み、電動モーターで巻き上げて接合境界面を切断する仕組みとなっている。よって、ワイヤーソーを繰り込むプーリの数が多くなれば、その分、切断長さが長くなる。そのデメリットとしては、「床版切断装置を現場内で組立・解体・盛替え作業の際に時間と手間が掛かる。」、「切断装置形状が大きく、現場内(橋梁主桁部)の障害物が設置条件に影響する。」といったものが挙げられる。これに対し、本実施例によれば、ワイヤーソー5を繰り込むプーリを極力少なくしたので、コンパクト化が実現され、現場での設置・転用が簡素化できる。また、プーリを極力少なくしたとしても、ワイヤーソー5の長さとガイドレール7を長くすることでコンクリート床版3の切断長を増長する事が簡単にできる。さらには、補強梁4a等の障害物の影響も低減できる。
さらに、一対のワイヤー駆動部6は、ワイヤーソー5が巻かれるとともに、接合境界面Jと略等しい高さ位置に配置されて水平回転する駆動プーリ6aをそれぞれ有しており、ワイヤーソー5の長さは、一対のワイヤー駆動部6における駆動プーリ6a間に撓みなく長円環状に巻き回された場合のワイヤーソー5の長さよりも長尺に設定され、ワイヤーソー5のうち、切断作業方向Yの上流側に位置する上流側部位5aと下流側に位置する下流側部位5bは、一対のワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側に配置され、ワイヤーソー5の上流側部位5aが、一対の固定プーリ9に巻かれるので、ワイヤーソー5における下流側部位5bで接合境界面Jの切断作業を行うことができ、これによって十分な切断長を確保でき、橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを水平切断しやすくなる。加えて、ワイヤーソー5の上流側部位5aの位置では粉塵養生を行う必要がなく、下流側部位5bによって切断される範囲にのみ粉塵養生を行えば粉塵対策を行うことができるので、環境保全や施工性、コストの面で優れる。
また、このような床版切断装置CD2を用いた床版切断方法によれば、同様の効果を発揮することができる。
【0061】
なお、本実施例における床版切断装置CD2によって、複数の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを切断する場合は、一対のワイヤー駆動部6、一対のガイドレール7を、複数の橋桁2の外側(直交方向XにおけるX側とX´側)に配置し、一対のガイドシャフト8は、各橋桁2の上端部における両側縁に沿って配置する。また、一対の固定プーリ9のうち、一方(直交方向XにおけるX側)の固定プーリ9を、一方の橋桁2における外側(直交方向XにおけるX側)に配置し、他方(直交方向XにおけるX´側)の固定プーリ9を、他方の橋桁2における外側(直交方向XにおけるX´側)に配置する。
そして、挿通孔Jhを複数の橋桁2のそれぞれに形成し、ワイヤーソー5を当該挿通孔Jhに通しつつ、一対のワイヤー駆動部6と一対の固定プーリ9に巻きつけて、複数の橋桁2の外側(直交方向XにおけるX側とX´側)を回るように配置する。そして、このように配置されたワイヤーソー5を一対のワイヤー駆動部6によって走行駆動させれば、複数の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを同時に切断することができる。
【0062】
〔第3実施例〕
続いて、第3実施例について図面を参照して説明する。
本実施例における床版切断装置CD3は、図8及び図9に示すように、ワイヤーソー5と、1つのワイヤー駆動部6と、1本のガイドレール7と、1本のガイドシャフト8と、備えている。
なお、図8において矢印Yで表す方向は、切断作業方向Yであり、双方向矢印X-X´で表す方向は、直交方向Xである。
【0063】
1つのワイヤー駆動部6は、切断対象の橋桁2の直交方向Xに間隔を空けて配置されている。また、1本のガイドレール7は、ワイヤー駆動部6が走行移動可能な位置に配置されている。
1本のガイドシャフト8は、橋桁2の上端部における一側縁に沿って配置され、ワイヤー駆動部6及びガイドレール7よりも、切断対象の橋桁2に近い位置に配置されている。
【0064】
本実施例におけるワイヤーソー5の長さは、例えば、平面視においてワイヤー駆動部6から橋桁2に向かって切断作業方向Yと直交する方向に撓みなく長円環状に配置した場合のワイヤーソー5の長さよりも長尺に設定されている。
より詳細に説明すると、まず、ワイヤーソー5は、平面視した場合においてループ状に配置されるものであるため、ワイヤー駆動部6(駆動プーリ6a)に巻かれた状態においては、切断作業方向Yの上流側に位置する部位(以下、上流側部位5a)と、切断作業方向Yの下流側に位置する部位(以下、下流側部位5b)と、を有することになる。
さらに、接合境界面Jのうち、ワイヤーソー5の上流側部位5aが通される箇所と、下流側部位5bが通される箇所には、挿通孔Jhがそれぞれ形成されている。上流側の挿通孔Jhには、ワイヤー駆動部6に巻かれたワイヤーソー5の上流側部位5aが通され、下流側の挿通孔Jhには、ワイヤー駆動部6に巻かれたワイヤーソー5の下流側部位5bが通される。
すなわち、ワイヤーソー5は、ワイヤー駆動部6と接合境界面Jとの間に架け渡されて配置されることとなる。
その上で、ワイヤーソー5の上流側部位5aと下流側部位5bは双方とも、ワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側に配置されている。そして、ワイヤー駆動部6をガイドレール7に沿って下流側に移動させることで、ワイヤーソー5に張力を付与することができる(図8に示す状態を指す)。このような状態が、床版切断装置CD3によって切断作業を進める場合の初期状態である。
【0065】
以上のような床版切断装置CD3によって接合境界面Jの切断作業を行う場合は、ワイヤー駆動部6における駆動プーリ6aを走行駆動(高速回転)させながら、当該ワイヤー駆動部6をガイドレール7に沿って下流側に走行移動させる。ワイヤーソー5の上流側部位5aは、上流側の挿通孔Jhから下流側の挿通孔Jhに向かって切断を行い、ワイヤーソー5の下流側部位5bは、下流側の挿通孔Jhから更に下流側に向かって切断を行う。
このとき、ワイヤーソー5の上流側部位5aと下流側部位5bは共に、ガイドシャフト8に沿ってガイドされた状態のまま高速回転している。
【0066】
ワイヤー駆動部6をガイドレール7に沿って下流側に走行移動させていくと、補強梁4a及び鉛直ブレース4bによって、ワイヤー駆動部6の進行が阻まれることになるため、ワイヤー駆動部6の盛替えを行う。
【0067】
接合境界面Jの切断作業を更に進めていくと、ワイヤーソー5の上流側部位5aが、下流側の挿通孔Jhまで到達する。その位置まで接合境界面Jを切断すると、初期状態のようなワイヤーソー5の張力を維持できないため、切断作業を継続する場合は、ワイヤーソー5の下流側部位5bによって切断した最下流位置を基点にして、床版切断装置CD3自体の盛替えを行う。
【0068】
切断作業を予定の位置まで完了させた後は、カッター装置10によって、コンクリート床版3を直交方向Xに沿って切断し、コンクリート床版3を、輸送車両に積み込むことができる程度の大きさのコンクリートブロックに解体する。
【0069】
本実施例によれば、コンクリート床版3と橋桁2とを切り離すための床版切断装置CD3が、ワイヤーソー5と、1つのワイヤー駆動部6と、1本のガイドレール7と、1本のガイドシャフト8と、を備えた簡易な構成となっているので、床版切断装置CD3をコンパクト化してコンクリート床版3の下方に確実に設置できる。すなわち、従来公知の種々の技術においては、ワイヤーソーを装置内外で複数のプーリに繰り込み、電動モーターで巻き上げて接合境界面を切断する仕組みとなっている。よって、ワイヤーソーを繰り込むプーリの数が多くなれば、その分、切断長さが長くなる。そのデメリットとしては、「床版切断装置を現場内で組立・解体・盛替え作業の際に時間と手間が掛かる。」、「切断装置形状が大きく、現場内(橋梁主桁部)の障害物が設置条件に影響する。」といったものが挙げられる。これに対し、本実施例によれば、ワイヤーソー5を繰り込むプーリを極力少なくしたので、コンパクト化が実現され、現場での設置・転用が簡素化できる。また、プーリを極力少なくしたとしても、ワイヤーソー5の長さとガイドレール7を長くすることでコンクリート床版3の切断長を増長する事が簡単にできる。さらには、補強梁4a等の障害物の影響も低減できる。
さらに、ワイヤー駆動部6は、ワイヤーソー5が巻かれるとともに、接合境界面Jと略等しい高さ位置に配置されて水平回転する駆動プーリ6aを有しており、ワイヤーソー5の長さは、平面視においてワイヤー駆動部6から橋桁2に向かって切断作業方向Yと直交する方向に撓みなく長円環状に配置した場合のワイヤーソー5の長さよりも長尺に設定され、ワイヤーソー5のうち、切断作業方向Yの上流側に位置する上流側部位5aと下流側に位置する下流側部位5bは、ワイヤー駆動部6よりも切断作業方向Yの上流側に配置されるので、ワイヤーソー5における上流側部位5aと下流側部位5bの双方で同時に接合境界面Jの切断作業を行うことができ、これによって十分な切断長を確保でき、橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを水平切断しやすくなる。
また、このような床版切断装置CD3を用いた床版切断方法によれば、同様の効果を発揮することができる。
【0070】
なお、本実施例における床版切断装置CD3によって、複数の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを切断する場合は、挿通孔Jhを複数の橋桁2のそれぞれに形成し、ワイヤーソー5を当該挿通孔Jhに通しつつ、ワイヤー駆動部6に巻きつけて、複数の橋桁2の外側(直交方向XにおけるX側とX´側)を回るように配置する。そして、このように配置されたワイヤーソー5をワイヤー駆動部6によって走行駆動させれば、複数の橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを同時に切断することができる。また、ガイドシャフト8は、複数の橋桁2における上端部の内側縁(床版切断装置CD3側の縁部)に沿って配置する。
【0071】
<第2実施形態>
図10及び図11は、床版切断用仮囲い20(以下、仮囲い20)の構成を示すものであり、符号21は蛇腹式防護膜、符号22は走行部、符号23は集塵装置、符号24は照明装置、符号25は換気装置である。
図示のように、仮囲い20は、全天候型で防音防塵式のもので、コンクリート床版3と橋桁2との接合境界面Jを切断する床版切断装置CD(CD1,CD2,CD3)が、コンクリート床版3の下方に配置された場合に、床版切断装置CDが下方に配置された部分のコンクリート床版3の上方及び側方を覆うものである。
このような仮囲い20は、蛇腹式防護膜21と、走行部22と、集塵装置23、照明設備24及び換気装置25を備えている。
【0072】
蛇腹式防護膜21は、コンクリート床版3の長手方向に沿って伸縮動作自在に構成されている。すなわち、アーチ状に形成された複数のフレームが膜体によって、コンクリート床版3の長手方向に連結された状態となっている。そして、図10(a),(b)に示すように、複数のフレーム同士が離間することで膜体が拡がり、複数のフレーム同士が近接することで膜体が折りたたまれて縮まる。
また、蛇腹式防護膜21は、コンクリート床版3の上方及び側方(左右両側の壁高欄1aの外側)を覆っているが、図11に示すように、コンクリート床版3の側方を覆う部分の下端部は、コンクリート床版3の下方にも回り込むようにして配置されている。つまり、蛇腹式防護膜21を構成する複数のフレームの下端部は、橋桁2側に折れ曲がるように略L字状に形成されている。なお、この蛇腹式防護膜21の下端部は、床版切断装置CDの動作を妨げないように、少なくとも駆動プーリ6aよりも下方に位置している。この蛇腹式防護膜21の下端部に、上記の監視用のカメラを設けてもよい。
【0073】
走行部22は、蛇腹式防護膜21をコンクリート床版3上に沿って長手方向に移動させるものであり、複数のフレームのうち数本のフレームにおける両端部に取り付けられた脚部と、この脚部の下端部に設けられたタイヤと、を有する。すなわち、蛇腹式防護膜21は、走行部22によってコンクリート床版3上に支持されており、タイヤによってコンクリート床版3上を移動できるようになっている。
本実施形態におけるタイヤは、図示しない電動モーターによって駆動可能に構成されている。電動モーターは、図示しない制御装置によって制御されており、各タイヤに付属する電動モーターを個別に駆動させることもできるし、同期して駆動させることもできる。これにより、直線部と曲線部がある橋梁1でも対応できることとなる。つまり、直線部であれば、全てのタイヤを駆動させればよく、曲線部であればカーブ内側よりもカーブ外側のタイヤを大きく移動させればよい。
また、上記の制御装置は、無線又は有線によって、作業員が所持する操作部と通信可能に接続されており、操作部から遠隔操作できるようになっている。
なお、本実施形態におけるタイヤは電動モーターによって駆動可能としたが、作業員による手押しで蛇腹式防護膜21を移動できるものとしてもよい。
【0074】
集塵装置23は、蛇腹式防護膜21の粉塵を収集する装置であり、蛇腹式防護膜21内に設置されている。その数は、性能に応じて複数でもよいし、一つでもよい。本実施形態においては、台車23aに載せられた状態でコンクリート床版3上を走行可能に設置されている。台車23aは、走行部22の脚部に連結されて蛇腹式防護膜21の移動と共に移動してもよいし、走行部22の脚部と連結せずに別々に移動するようにしてもよい。また、本実施形態における集塵装置23は、橋梁1の路側帯(壁高欄1a側)に寄せてコンクリート床版3上に配置されている。
集塵装置23は、本体からホース(パイプ)を伸ばして使用できるものとする。ホースは、壁高欄1aの外側からコンクリート床版3下に取り廻してもよいし、コンクリート床版3に貫通孔を形成して当該貫通孔からコンクリート床版3下に取り廻してもよい。すなわち、集塵装置23のホースは、コンクリート床版3の下面に引き込まれ、その先端部は、ワイヤーソー5の近傍に配置される。そして、コンクリート床版3の切断作業時に発生する切粉を収集する。
【0075】
照明装置24は、蛇腹式防護膜21内に複数設置されている。本実施形態においては、蛇腹式防護膜21の複数のフレームに取り付けられており、蛇腹式防護膜21の移動と共に移動する。
【0076】
換気装置25は、蛇腹式防護膜21内の空気を換気するものであり、蛇腹式防護膜21内に設置されている。その数は、性能に応じて複数でもよいし、一つでもよい。本実施形態においては、走行部22の脚部に取り付けられており、蛇腹式防護膜21の移動と共に移動する。また、本実施形態における換気装置25は、脚部における橋梁1中央側に設けられているが、脚部における壁高欄1a側に設けられてもよいし、橋梁1の路側帯に寄せてコンクリート床版3上に設けられてもよい。また、照明装置24と同様に、蛇腹式防護膜21のフレームに取り付けられてもよい。
【0077】
以上のように構成された仮囲い20は、蛇腹式防護膜21によって、2車線の橋梁1を構成するコンクリート床版3の上方及び左右の壁高欄1aの両側方を覆っているが、これに限られるものではない。例えば、センターライン上に位置する走行部22を更に設けることによって蛇腹式防護膜21のフレームの撓みを抑え、4車線の橋梁1を構成するコンクリート床版3の上方及び左右側方を覆うようにしてもよい。また、センターライン上に位置する走行部22と、片側の壁高欄1a側に位置する走行部22とによって、コンクリート床版3の片側1車線分の上方及び一側方を覆うようにしてもよい。
このような仮囲い20により、例えば床版切断装置CDによって切断作業が行われるコンクリート床版3の上方及び側方をカバーできる。例えば幅2mでの全断面一体切断撤去も可能になり、トレーラー等で搬出でき、また、2交代制の夜間作業にも対応することができる。
【0078】
また、本実施形態における仮囲い20は、図11に示すように、コンクリート床版3の下面に接する振れ止め26を備えてもよい。振れ止め26は、蛇腹式防護膜21のフレームにおける下端部に設けられている。このような振れ止め26は、風が強い日や、蛇腹式防護膜21内を通行する車両の風圧によって、蛇腹式防護膜21が煽られることが懸念される場合に、必要に応じて設けられるものとする。
【0079】
なお、下部防護吊足場16は、解体・撤去される予定のコンクリート床版3の側方から下方にかけて配置されたものであり、橋桁2に引っ掛けられたチェーン等の吊部材によって吊られている。この下部防護吊足場16は、コンクリート床版3の側方から下方にかけて配置されていることにより、作業時の足場として、さらに側方及び下方に対する安全設備として機能する。
この下部防護吊足場16に対して集塵装置23の本体を設置してもよい。
【0080】
橋梁には、厚み方向にコンクリート床版を貫通する貫通孔が穿孔される場合がある。
例えば、コンクリート床版3にハンチ部3aが存在しない場合があり、上記のような挿通孔Jhを形成できない。そのような場合には、ワイヤーソー5の上流側部位5a及び下流側部位5bを通すための開口溝を、コンクリート床版3に貫通形成する必要がある。なお、開口溝は、橋桁2上面の幅寸法(直交方向Xの寸法)よりも長尺に形成される。
また、上記のように集塵装置23のホースを、コンクリート床版3の上方から下方に向かって取り廻す場合も、貫通孔をコンクリート床版3に形成する必要がある。
さらに、複数の橋桁2における継手部は、添接板やボルトが設けられて構造が複雑化している場合があるため、接合境界面Jの切断作業に先行して露出させておく場合がある。このような場合にも、継手部を露出させるための開口を、コンクリート床版3に貫通形成する必要がある。
以上のように、橋梁1には、厚み方向にコンクリート床版3を貫通する貫通孔が穿孔される場合があるため、雨水が、コンクリート床版3の下面側に流れ込んでくることがある。コンクリート床版3下方の切断箇所まで雨水が入ってくると、コンクリート床版3の切断時に発生し、かつワイヤーソー5に付着した切粉が雨水によって団子状になることがある。そのような現象が発生すると、コンクリート床版3の切断時の摩擦が大きくなり、橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jを水平切断しにくくなる場合がある。
また、日本は梅雨時期・台風の影響により、工事中断する事も多く、作業効率の低下や工程延長となる場合がある。
これに対して、本実施形態によれば、全天候型の床版切断用仮囲い20によって、床版切断装置CDが下方に配置された部分のコンクリート床版3の上方及び側方を覆うことができる。また、蛇腹式防護膜21を必要に応じて伸縮させることができるので、コンクリート床版3の下面側への雨水の浸入を防ぎやすくなり、その結果、橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jが水平切断しやすくなる。しかも、床版切断用仮囲い20は、蛇腹式防護膜21をコンクリート床版3上に沿って長手方向に移動させる走行部22を有するので、床版切断装置CDの盛替えに応じた床版切断用仮囲い20の移動も容易となる。さらに、コンクリート床版3を厚み方向に貫通する貫通孔の径や、障害物の状況次第ではコンクリート床版3上の車両の通行も可能であるため、橋梁1をなるべく通行止めしないようにして橋梁改修工事を行うことが可能となる。また、本実施形態のような全天候型の床版切断用仮囲い20を設置すれば、雨天時の影響低減を図ることができる。
【0081】
なお、ワイヤーソー5の走行駆動に合わせて集塵装置23(又はホース)を移動させなければならない場合は、ワイヤーソー5の走行駆動と、仮囲い20の走行部22による移動とを同期・連動させるようにしてもよい。
【0082】
(参考例)
以下においては、コンクリート床版3上用の床版切断装置CD4がコンクリート床版3の上に配置された場合に、床版切断装置CD4が上面に配置された部分を、本実施形態における床版切断用仮囲い20によって覆う際の参考例について説明する。なお、以下の説明において、上記の説明と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0083】
コンクリート床版3上に配置される床版切断装置CD4は、橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jに沿う方向と、コンクリート床版3の幅方向および厚み方向に延設される完全無水式のワイヤーソー5と、ワイヤーソー5をその延設経路に沿った走行方向に案内するとともに走行駆動させるための複数のプーリと、を有しており、ワイヤーソー5によって、コンクリート床版3を、橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jに沿う方向と、コンクリート床版3の幅方向および厚み方向に切断してブロック状に解体するためのものである。
なお、床版切断装置CD4の本体部は、図12に示すように、それぞれ駆動プーリをはじめとする複数のプーリを備えた第一装置CD4a及び第二装置CD4bによって構成されており、ワイヤーソー5は、これら二つの装置CD4a,CD4bを備えた本体部によって走行駆動される。このように二つの装置CD4a,CD4bを用いるため、接合境界面Jに沿う方向と、コンクリート床版3の幅方向および厚み方向に延設できる程度に長尺なワイヤーソー5を走行駆動させることができる。
【0084】
床版切断用仮囲い20(以下、仮囲い20)は、以上のような床版切断装置CD4が設けられたコンクリート床版3の上方及び左右の壁高欄1aの側方を覆っている。
本参考例における仮囲い20は、第2実施形態において説明した仮囲い20と同様の構成であるため、第2実施形態と同様の効果を発揮する。また、特許第6758787号には、移動式ファクトリーとして、本参考例に類似する実施形態が開示されているが、本参考例は、特許第6758787号における移動式ファクトリーに係る実施形態よりも使い勝手がよい。
【0085】
なお、本参考例の場合、コンクリート床版3上に床版切断装置CD4が設けられることから車両の通行止めが必要となる。そのため、仮囲い20は、蛇腹式防護膜21の開口部を覆う開口部用膜を備えてもよい。開口部用膜で開口部を覆うことによって、開口部からの雨水の浸入を防ぐことができるので、雨天時でも、橋桁2とコンクリート床版3との接合境界面Jが水平切断しやすくなる。
【符号の説明】
【0086】
CD 床版切断装置
J 接合境界面
Jh 挿通孔
Y 切断作業方向
X 直交方向
1 橋梁
2 橋桁
2a ジベル
3 コンクリート床版
3a ハンチ部
4a 補強梁
4b 鉛直ブレース
5 ワイヤーソー
5a 上流側部位
5b 下流側部位
6 ワイヤー駆動部
6a 駆動プーリ
7 ガイドレール
8 ガイドシャフト
9 固定プーリ
図1
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図12