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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121393
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】調整可能な光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20220812BHJP
   G02C 1/00 20060101ALI20220812BHJP
   G02C 7/08 20060101ALI20220812BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20220812BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220812BHJP
   G03B 35/18 20210101ALI20220812BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G02B7/04 Z
G02C1/00
G02C7/08
G02B7/00 Z
G02B7/04 E
G02B7/02 Z
G03B35/18
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016023
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/050979
(32)【優先日】2021-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(31)【優先権主張番号】10 2021 105 705.1
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】515100639
【氏名又は名称】オプトチューン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル アシュワンデン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アンドレアス ニーデラー
(72)【発明者】
【氏名】ローマン パッツァイダー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ラニング
(72)【発明者】
【氏名】ピット ジェバーズ
【テーマコード(参考)】
2H044
2H059
2H199
【Fターム(参考)】
2H044AJ01
2H044BE04
2H044BF00
2H059AA24
2H059CA00
2H199CA02
2H199CA12
2H199CA97
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アクチュエータと光学要素とを空間的に分離し、空間的な制約や重量の制限を軽減する。
【解決手段】光学要素(10)、アクチュエータ(20)、及び伝送ユニット(30)を備え、前記伝送ユニット(30)は第1のファイバー(310)を備え、前記第1のファイバー(310)は、前記アクチュエータ(20)から前記光学要素(10)に引張力を伝達するように構成され、該引張力により前記光学要素(10)の光学特性の変化をもたらす、調整可能な光学デバイス(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学要素(10)、アクチュエータ(20)及び伝送ユニット(30)を備える調整可能な光学デバイス(1)であって、
- 前記伝送ユニット(30)は、第1のファイバー(310)を備え、
- 前記第1のファイバー(310)は、前記アクチュエータ(20)から前記光学要素(10)に引張力を伝達するように構成され、かつ
- 前記引張力により、前記光学要素(10)の光学特性の変化をもたらす、
前記調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項2】
保持要素(40)を備え、前記保持要素(40)は、保持力を生成するように構成され、前記保持力は、前記引張力に対して反対方向に作用し、
前記第1のファイバー(310)は、第1の端部(310a)及び第2の端部(310b)を備え、前記第1の端部(310a)は前記アクチュエータ(20)に結合され、かつ前記第2の端部(310b)は前記光学要素(10)に結合され、
前記引張力は、前記第1の端部(310a)に作用し、かつ
前記保持力は、前記第2の端部(310b)に作用する、
請求項1に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項3】
第2のファイバー(320)及びピボット要素(50)を備え、
前記ピボット要素(50)は、前記ピボット要素(50)がピボット点(51)の周りに回転可能であるピボット点(51)を備え、
前記第1のファイバー(310)の前記第2の端部(310b)及び前記第2のファイバー(320)の第2の端部(320b)は、前記ピボット点(51)に対して前記ピボット要素(50)の反対側に接続され、
前記第1のファイバー(310)の引張力は、前記ピボット要素(50)を第1の方向に回転させ、かつ前記第2のファイバー(320)の引張力は、前記ピボット要素(50)を第2の方向に回転させ、ここで前記第1の方向は前記第2の方向と反対である、
請求項1又は2に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項4】
前記第1のファイバー(310)は、第1の主延長方向を有する第1の部分(311)、第2の主延長方向を有する第2の部分(312)、及び偏向部分(313)を備え、前記偏向部分(313)は、前記第1のファイバー(310)に沿って前記第1の部分(311)と前記第2の部分(312)との間に配置され、かつ
前記第1の主延長方向は、前記第2の主延長方向に対して斜め方向であり、かつ
前記偏向部分(313)において前記第1のファイバー(310)は、偏向要素(70)と接触しており、ここで前記偏向要素(70)は、マウント(71)及びガイド要素(72)を備え、
前記ガイド要素(72)は、前記偏向部分(313)をガイドするように構成され、
前記ガイド要素(72)は、前記偏向部分(313)に直接接触しており、
前記ガイド要素(72)は、支点(73)で前記マウント(71)に旋回可能に接続され、
前記支点(73)と前記偏向部分(313)との間の距離は、前記偏向部分(313)に沿って変化する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項5】
前記伝送ユニットは、外殻構造体(60)を備え、前記第1のファイバー(310)及び前記外殻構造体(60)は、ボーデンケーブルを形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項6】
ロックユニット(80)を備え、オン状態では前記ロックユニット(80)は、規定の状態で光学特性を維持するように構成され、オフ状態では前記ロックユニット(80)は、光学特性の変化を制限しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項7】
制御ユニット(83)及び加速度計(84)を備え、前記加速度計(84)は、前記光学デバイス(1)に作用する加速力を測定するように構成され、
前記加速度計(84)は、出力信号(840)を前記制御ユニット(83)に送信し、
前記出力信号(840)は、測定された加速度に依存し、かつ
前記制御ユニット(83)は、前記加速度計(84)の出力信号(840)が所定の値を超えた場合に、前記ロックユニット(80)をオン状態に設定するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項8】
前記アクチュエータ(20)は、形状記憶合金(21)を備え、かつ
前記第1のファイバー(310)は前記形状記憶合金を備えるか、又は前記第1のファイバー(310)は前記形状記憶合金からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項9】
前記アクチュエータ(20)は、巻線要素(22)を備え、
前記第1のファイバー(310)は、前記巻線要素(22)の周りに少なくとも部分的に巻かれ、
前記アクチュエータ(20)は、前記巻線要素(22)を回転させるように構成され、前記引張力は、前記巻線要素(22)の回転によって生成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項10】
複数の第1のファイバー(310)を備え、前記複数の第1のファイバー(310)は、前記アクチュエータ(20)から前記光学要素(10)に引張力を伝達するように構成され、
前記巻線要素(22)は、円柱形状であり、
前記巻線要素(22)は、複数の部分(221)を備え、各第1のファイバー(310)は、前記部分(221)のうちの1つの周りに巻かれ、かつ少なくとも2つの部分(221)は、異なる直径を有し、及び/又は前記円柱形状は、非円形の断面積を有する、請求項11に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項11】
複数の第1のファイバー(310)を備え、前記複数の第1のファイバー(310)は、前記アクチュエータ(20)から前記光学要素(10)に引張力を伝達するように構成され、
前記アクチュエータ(20)は、レバー(23)を備え、
前記複数の第1のファイバー(310)の第1の端部(310a)は、それぞれ、前記レバー(23)の異なる取り付け点(231)で結合されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項12】
前記光学要素(10)は、液体で満たされた容積(100)を備え、
前記容積(100)は、膜(101)によって区画され、前記膜(101)は、前記光学要素(10)の光学面を形成し、
前記膜(101)は、成形要素(102)に接続され、ここで前記引張力は前記成形要素(102)に作用し、かつ前記引張力は光学面の形状の変化をもたらし、かつ前記光学面の形状の変化により、光学特性の変化をもたらす、請求項1~11のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項13】
前記成形要素(102)の動きは、ヒンジ(103)によってガイドされるか、又は
前記成形要素(102)は、弾性的に変形可能であり、
前記アクチュエータ(20)は、複数の第1のファイバー(310)を備え、かつ
前記引張力は、前記成形要素(102)の複数の偏向点(104)に伝達され、ここで前記複数の偏向点(104)は互いに離間している、請求項1~12のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項14】
前記第1のファイバー(310)は、可撓性シャフトを形成し、
前記アクチュエータ(20)は、前記第1のファイバー(310)の第1の端部(310a)にトルクを伝達し、
前記トルクにより、前記第1のファイバーがその主延長軸を中心に回転し、かつ
前記光学要素(10)は、前記トルクを光学特性の変化に変換するように構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の調整可能な光学デバイス(1)を備えるヘッドマウント可能なデバイス(90)であって、前記ヘッドマウント可能なデバイスは、眼鏡、拡張現実グラス、仮想現実グラスのうちの少なくとも1つであり、前記ヘッドマウント可能なデバイスは、テンプル(91)を備え、前記テンプル(91)は、前記光学要素(10)とユーザーの頭部との間に機械的接続を確立するように構成され、前記アクチュエータ(20)は、前記テンプル(91)に配置される、前記ヘッドマウント可能なデバイス(90)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調整可能な光学デバイスに関する。この調整可能な光学デバイスは、電磁波、特に赤外光と紫外光との間の波長範囲の光と相互作用するように構成されている。光学デバイスの少なくとも1つの光学特性は、定義可能な様式で制御される。この光学特性は、調整可能な光学デバイスと光の相互作用を少なくとも部分的に定義する。
【0002】
前記調整可能な光学デバイスは、伝送ユニットを備える光学要素及びアクチュエータを備える。光学要素は、屈折及び/又は回折によって電磁波と相互作用する。光学要素は、前記光学要素の少なくとも1つの光学特性を調整することができる調整可能な光学要素である。光学要素は、レンズ、ミラー、プリズム、又は回折格子であり得る。特に、調整可能なレンズは屈折光学要素であり、電磁放射線、特に可視光と定義可能な様式で相互作用するように構成される。例えば、調整可能なレンズは、屈折力及び/又は円柱などの光学特性を調整するように構成される。光学的な調整可能なデバイスを調整する場合、光学要素の少なくとも1つの光学特性が変化する。
【0003】
前記アクチュエータは、電気信号を力に変換するように構成されている。アクチュエータは、ボイスコイルアクチュエータ、永久磁石アクチュエータ、静電アクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、又は油圧アクチュエータのうちの1つであり得る。
【0004】
前記伝送ユニットは、第1のファイバーを備え、前記第1のファイバーは、前記アクチュエータから前記光学要素に引張力を伝達するように構成されている。第1のファイバーは、少なくとも10GPa、特に少なくとも100GPaのヤング率を有する材料からなり得る。特に、第1のファイバーは曲げることが可能である。第1のファイバーは、カーボン、ケブラー、金属、又は繊維材料を含むことができる。第1のファイバーは、1本のファイバーであってもよく、又はファイバーの束であってもよい。該ファイバーは、特に熱膨張が小さい。特に、ファイバーの熱膨張は周辺材料と同じ大きさの範囲内(偏差1%未満)である。特に、該ファイバーは脆性でなく、かつ摩擦学的抵抗性を有する(磨耗が少ない)。ファイバーは、潤滑されていてもよい。特に、ファイバーを潤滑することで、その結果ファイバーの材料が膨潤することはない。ファイバーの材料は、可塑剤を蒸発させない。特に、第1のファイバーの材料は、可塑剤に無反応性である。
【0005】
この引張力により、光学要素の光学特性が変化する。光学特性は、回折力、球面力、円柱角、円柱力、プリズム角、プリズム力、反射率、透明度、又は色のうちの少なくとも1つであり得る。好ましくは、光学要素は調整可能なレンズであり、この光学特性は、球面力、円柱角、円柱力、プリズム角、プリズム力である。
【0006】
一実施形態によれば、該調整可能な光学デバイスは、伝送ユニットを備える光学要素及びアクチュエータを備える。前記伝送ユニットは、第1のファイバーを備える。第1のファイバーは、アクチュエータからの引張力を光学要素に伝達するように構成されている。この引張力により、光学要素の光学特性が変化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書に記載される調整可能な光学デバイスは、とりわけ以下の考察に基づいている。調整可能な光学デバイスは、電磁波と相互作用する光学要素の光学特性を制御するために、何らかの形態の作動が必要である。しかし、適切なアクチュエータの開発では、空間的な制約や重量の制限が、パワー及び精度の面での要求と正反対になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載される調整可能な光学デバイスは、アクチュエータからの力を伝送ユニットによって光学要素に伝達するというアイデアを使用している。伝送ユニットの第1のファイバーにより、アクチュエータと光学要素との空間的な分離が可能になる。さらに、第1のファイバーは、空間的要件が特に小さく、質量が特に小さい。したがって、伝送ユニットによって、アクチュエータに関連する空間的な制約が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ヘッドマウント可能なデバイスにおける2つの調整可能な光学デバイスの例示的な実施形態の模式的な透視図である。
図2図2は、ヘッドマウント可能なデバイスにおける2つの調整可能な光学デバイスの例示的な実施形態の模式的な上面図である。
図3図3図4a、図4b、図5は、調整可能な光学デバイスに備えられる光学要素の例示的な実施形態の模式的な側面図である。
図4AB図3図4a、図4b、図5は、調整可能な光学デバイスに備えられる光学要素の例示的な実施形態の模式的な側面図である。
図5図3図4a、図4b、図5は、調整可能な光学デバイスに備えられる光学要素の例示的な実施形態の模式的な側面図である。
図6図6は、調整可能な光学デバイスに備えられるアクチュエータの例示的な実施形態の模式的な側面図である。
図7図7図8図9は、調整可能な光学デバイスに備えられる偏向要素の例示的な実施形態である。
図8図7図8図9は、調整可能な光学デバイスに備えられる偏向要素の例示的な実施形態である。
図9図7図8図9は、調整可能な光学デバイスに備えられる偏向要素の例示的な実施形態である。
図10図10は、調整可能な光学デバイスに備えられる第1及び第2のファイバーを有する伝送ユニットの例示的な実施形態の模式的な断面図である。
図11図11及び図12は、調整可能な光学デバイスに備えられる巻線要素を2つの異なる側面から見た例示的な実施形態である。
図12図11及び図12は、調整可能な光学デバイスに備えられる巻線要素を2つの異なる側面から見た例示的な実施形態である。
図13図13は、調整可能な光学デバイスに備えられる光学要素の一実施形態の模式的な側面図である。
図14a図14a、14b及び14cは、調整可能な光学デバイスの例示的な実施形態の模式的な断面図である。
図14b図14a、14b及び14cは、調整可能な光学デバイスの例示的な実施形態の模式的な断面図である。
図14c図14a、14b及び14cは、調整可能な光学デバイスの例示的な実施形態の模式的な断面図である。
図15図15及び図16は、可撓性シャフトを形成する第1のファイバーの例示的な実施形態の模式的な断面図である。
図16図15及び図16は、可撓性シャフトを形成する第1のファイバーの例示的な実施形態の模式的な断面図である。
図17図17は、可撓性シャフトに接続される調整可能な光学デバイスの例示的な実施形態の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態によれば、調整可能な光学デバイスは、保持要素を備え、前記保持要素は、保持力を発生させるように構成されている。この保持力は、引張力に対して反対方向に作用する。前記第1のファイバーは、第1の端部と第2の端部とを備え、前記第1の端部は前記アクチュエータに結合され、かつ前記第2の端部は前記光学要素に結合されている。引張力が第1の端部に作用し、保持力が第2の端部に作用する。特に、保持力は弾性要素によってもたらされる。弾性要素は、バネ、曲がり梁、又は光学要素の一部であり得る。例えば、保持力は連続的に作用することができる。例えば、引張力が保持力を上回る場合、引張力によって光学特性が変化し、保持力が引張力を上回る場合、保持力によって前記光学特性の変化が逆転する。例えば、伝送ユニット、特に第1のファイバーは、アクチュエータから光学要素へ圧縮力を本質的に伝達しない。
【0011】
一実施形態によれば、調整可能な光学デバイスは、第2のファイバー及びピボット要素を備える。特に、第2のファイバーは、第1のファイバーと本質的に同一である。したがって、第1のファイバーについて開示される特徴はまた、第2のファイバーにも適用され、その逆もまた然りである。ピボット要素は、ピボット要素がピボット点を中心に回転可能なピボット点を備える。第1のファイバーの第2の端部及び第2のファイバーの第2の端部は、ピボット点に対してピボット要素の反対側に接続されている。第1のファイバーの引張力によってピボット要素が第1の方向に回転し、かつ第2のファイバーの引張力によってピボット要素が第2の方向に回転し、ここで第1の方向と第2の方向とは反対である。特に、第2のファイバーの引張力は、第1のファイバーの保持力として作用し、その逆も同様である。例えば、ピボット要素は、伝送ユニットの一部である。特に、第1のファイバーの第2の端部とピボット点との距離と、第2のファイバーの第2の端部とピボット点との距離とが異なっている。そのため、第1のファイバーの引張力と第2のファイバーの引張力とが同じであれば、ピボット要素を回転させることができる。伝送ユニットは、アクチュエータからの双方向の力を光学要素に伝達するように構成されることが可能である。
【0012】
一実施形態によれば、第1のファイバーは、第1の主延長方向を持つ第1の部分、第2の主延長方向を持つ第2の部分、及び偏向部分を備える。偏向部分は、第1のファイバーに沿って第1の部分と第2の部分との間に構成される。第1の主延長方向は、第2の主延長方向に対して斜め方向であり、偏向部分において、第1のファイバーは、偏向要素と接触している。特に、偏向要素は、第1のファイバーを経路変更するように構成され、それにより、引張力の方向が変えられる。有利なことに、偏向要素は、伝達要素の形状を調整することが可能である。
【0013】
一実施形態によれば、偏向要素は、マウント及びガイド要素を備える。ガイド要素は、前記偏向部分をガイドするように構成されている。ガイド要素は、前記偏向部分に直接接触している。ガイド要素は、マウントに支点で旋回可能に接続されており、支点と偏向部分との間の距離は、偏向部分に沿って変化する。例えば、ガイド要素は、ガイド要素に対する第1のファイバーの滑落を防止するレール状の形状を備えている。特に、ガイド要素は滑車を備え、滑車は非円形であり、かつ/又は支点は滑車の中心に配置されていない。特に、ガイド要素は、第1のファイバーとともに支点を中心に移動することで、第1のファイバーとガイド要素との間の滑り摩擦を最小にすることができる。有利なことに、偏向要素は、非円形形状又は非中心支点によって引張力を活用することができる。
【0014】
一実施形態によれば、伝送ユニットは、外殻構造体(hull)を備え、ここで、第1のファイバー及び外殻構造体は、ボーデンケーブルを形成する。第1のファイバー及び第2のファイバーは、共通の外殻構造体に配置することができる。特に、第1のファイバーと第2のファイバーはボーデンケーブルを形成する。特に、偏向要素は、外殻構造体によって形成することができる。
【0015】
一実施形態によれば、調整可能な光学デバイスは、ロックユニットを備え、オン状態では、ロックユニットは、光学特性を定義された状態に維持するように構成され、オフ状態では、ロックユニットは、光学特性の変化を制限しない。ロックユニットは、伝送ユニット、特に第1及び/又は第2のファイバーをある位置に固定するように構成されてもよく、その位置は、アクチュエータによって定義される。例えば、ロックユニットは、オフ状態とオン状態との間を切り替えるために電源を必要とする。ロックユニットは、オフ状態及び/又はオン状態を維持するための電源を必要としない。あるいは、ロックユニットは、オン状態では電力を必要とせず、かつオフ状態を維持するための電力を必要とする。よって、電源が供給されない場合、ロックユニットは自動的にオン状態に戻る。例えば、ロックユニットは、永久磁石アクチュエータ(EPM)又は形状記憶合金によって作動される。有利なことに、ロックユニットは、継続的な電力供給を必要とせずに調整状態を維持することによって、特にエネルギー効率の高い調整可能な光学デバイスを実現する。
【0016】
一実施形態によれば、調整可能な光学デバイスは、制御ユニット及び加速度計を備え、前記加速度計は、光学デバイスに作用する加速力を測定するように構成されている。加速度計は出力信号をコントロールユニットに送信し、この出力信号は測定された加速度に依存する。制御ユニットは、加速度計の出力信号が所定の値を超えた場合にロックユニットをオン状態に設定するように構成されている。所定の値は、1gの加速度に対応してもよい。あるいは、所定の値は、加速力のパターンに対応してもよく、この加速力のパターンは、トレーニングデータから決定される。特に、センサーは、前記加速力のパターンを定義するために、機械学習によって事前調整される。例えば、加速力のパターンは、調整可能な光学デバイスに1gを超える加速力が作用する前に発生する一般的な加速条件に対応している。特に、加速力のパターンは、調整可能な光学デバイスの検出された自由落下に対応し、自由落下が検出されると、ロックユニットは、オン状態に切り替わるように構成されている。ロックユニットは、所定の値を超えた後に、所定時間、オン状態を維持するように構成されてもよい。有利なことに、ロックユニットは、光学要素の可動部分の意図しない動きを防止し、それによって、調整可能な光学デバイスの加速による損傷のリスクが低減される。
【0017】
一実施形態によれば、アクチュエータは、形状記憶合金を備える。特に、形状記憶合金(shape memory alloy)(略称:SMA)は、引張力をもたらす。形状記憶合金とは、材料が閾値温度未満の場合に変形することができ、閾値温度を超えて加熱される場合に変形前の形状に戻る(「記憶」する)合金のことである。SMAは、記憶金属、記憶合金、スマートメタル、スマートアロイ、又はマッスルワイヤーと呼ばれることもある。特に、SMAに電流を流すことにより、SMAは閾値温度を超えて加熱される。SMAは、保持力によって変形することが可能である。
【0018】
一実施形態によれば、第1のファイバーは、形状記憶合金を備える。例えば、ファイバーは、受動部分及び能動部分を備える。あるいは、第1のファイバーは形状記憶合金からなる。この場合、第1のファイバーには受動部分がない。受動部分は、引張力に対する弾性が特に小さい材料からなる。言い換えれば、受動部分の引張弾性は特に低い。例えば、受動部分は、金属、ケブラー、又は炭素ファイバーを備える。受動部分の引張弾性は、能動部分の引張弾性よりも小さくてもよい。能動部分は、引張力を発生するように構成されるSMAを備える。例えば、受動部分は能動部分と光学要素との間に配置される。したがって、受動部分は能動部分からの引張力を光学要素に伝達する。
【0019】
一実施形態によれば、アクチュエータは、巻線要素を備え、第1のファイバーは、少なくとも部分的に巻線要素の周りに巻かれ、アクチュエータは、巻線要素を回転させるように構成され、この引張力は、巻線要素の回転により生成される。例えば、アクチュエータは、巻線要素を回転させるように構成されるステッピングモータ、電気ギアモータ、コンデンサモータ、リラクタンスモータのうちの1つを備える。
【0020】
一実施形態によれば、調整可能な光学デバイスは複数の第1のファイバーを備え、これらの第1のファイバーは、アクチュエータからの引張力を光学要素に伝達するように構成される。巻線要素は円柱形状であり、巻線要素は複数の部分を備え、各第1のファイバーはこれらの部分のうちの1つに巻かれる。円柱形状の少なくとも2つの部分は、異なる直径を有し、及び/又は円柱形状の断面積は、非円形である。直径が異なる部分は、共通の巻線要素によって、異なる経路長により第1のファイバーを偏向させることができる。非円形の円柱形状の断面により、第1のファイバーの偏向の経路長は巻線要素の回転位置に依存するようになる。有利なことに、異なる直径を有する部分と巻線要素の非円形断面により、引張力を発生させるための1つのモーターを使用して、第1のファイバーを特に明確に偏向させることが可能である。
【0021】
特に、各第1のファイバーのオフセット張力は個別に調整可能である。例えば、各ファイバーの引張力(プレテンション(pre-tension))は、部分の相互の相対回転を調整することによって調整可能である。さらに、各第1のファイバーの伝送は、個別に調整可能であり得る。例えば、これらのファイバーは、この伝送を変えるために、より小さな又はより大きな直径を有する部分に取り付けられ得る。ファイバーがレバーに取り付けられている場合、この伝送を変更するように、レバーと第1のファイバーとの間の取り付け位置は調整可能である。
【0022】
一実施形態によれば、調整可能な光学デバイスは複数の第1のファイバーを備え、これらの第1のファイバーは、アクチュエータからの引張力を光学要素に伝達するように構成される。前記アクチュエータは、レバーを備え、第1のファイバーの第1の端部は、前記レバーの異なる取り付け点にそれぞれ結合されている。特に、アクチュエータは、レバーを旋回させるように構成されている。第1のファイバーは、レバーを旋回させることにより偏向され、各第1のファイバーの偏向量は、レバーに沿った取り付け点の位置にそれぞれ依存する。有利なことに、複数の取り付け点を持つレバーに提供することにより、単一のアクチュエータで異なる量の偏向を提供することができる。
【0023】
一実施形態によれば、光学要素は、液体で満たされる容積を備え、前記容積は膜によって区画され、前記膜は光学要素の光学面を形成する。前記容積は、通常動作時に電磁波が少なくとも部分的に通過する区画された領域であってもよい。特に、前記容積は少なくとも部分的に膜によって区画されている。前記容積は、気相又は液相であり得る流体で満たされている。特に、流体の容積は、水ベースの液体又は油ベースの液体で満たされ得る。
【0024】
膜は成形要素に接続されており、ここで、引張力が成形要素に作用し、この引張力により光学面の形状が変化し、そしてこの光学面の形状の変化により、光学特性が変化することになる。例えば、成形要素はリング形状を有し、前記成形要素は、膜によって形成される光学面を取り囲む。引張力及び保持力により、調整可能な光学デバイスの光軸に沿った成形要素の動きをもたらす。光軸に沿った成形要素の位置を調整することにより、膜の形状が変更される。膜は可撓性があり、一側面の流体容積を制限する。特に、流体は可撓性の膜に直接隣接している。少なくとも光学特性は、可撓性の膜の形状を変えることで調整可能である。ここで、及び以下における膜という文脈における「可撓性」という用語は、膜をその主延長面に対して斜めに曲げることを可能にする膜の特性を表す。特に、膜は拡張可能である。上記及び下記において、膜という文脈における「拡張可能」という用語は、その膜をその主延長面に沿って可逆的に拡張することを可能にする膜の特性を表す。
【0025】
成形要素は膜に取り付けられている。成形要素は、リング形状を有していてもよい。特に、成形要素は膜の一表面に取り付けられている。特に、膜と成形要素は、材料接合接続によって接続されている。あるいは、成形要素と膜とは一体的に製造されてもよく、この成形要素と膜は共通の製造工程で同時に製造される。特に、成形要素と膜とは同じ材料を含み得る。成形要素と膜との主延長面は、実質的に互いに平行に延びる。主延長面に対して垂直な方向において、成形要素の厚さは膜の厚さよりも厚い。特に、成形要素の剛性は、膜の剛性よりも高い。例えば、成形要素は、膜の周囲に沿って力を伝達するように構成され、成形要素の周囲に沿って膜の偏向を制御する。
【0026】
上面図において、成形要素は非円形の輪郭を有していてもよく、この成形要素の輪郭は仮想的な円周内に延びる。上記及び下記において、「上面図」とは、非偏向状態における成形要素の主延長面に対して垂直な視点である。例えば、成形要素の主延長平面は、光軸に対して垂直に延びる。成形要素は、上面図で見られる非円形のリング形状を有していてもよい。上面図に見られる成形要素の幅は一定であってもよい。あるいは、成形要素の幅は、リングに沿った異なる位置で変化してもよい。成形要素の幅は、その円周の半径方向に沿って測定される。特に、リングの輪郭は成形要素の内縁によって規定され、この内縁は膜の光学活性領域に面している。上記及び下記において、この円周は、最小半径を持ちながら成形要素の輪郭を完全に取り囲む仮想的な円である。特に、この円周の内縁が輪郭を定義しているため、円周は成形要素と交差してもよい。
【0027】
光学要素の光学特性を調整する場合、成形要素の偏向量は、円周に対する成形要素の輪郭の横方向の距離に比例することができる。横方向の距離は、成形要素の主延長面に沿って測定される。上記及び下記において、横方向の距離は円周の半径の方向で測定される。特に、調整可能なレンズの光学特性を変化させる場合、横方向の距離が長くなると、成形要素の一部の偏向が大きくなる。
【0028】
成形要素は、偏向によって調整可能なレンズの光学特性を変化させるように構成されている。偏向は、調整可能なレンズの光軸に沿った方向への成形要素の変位を表す。特に、成形要素の偏向によって膜の形状が変化し、これにより液体レンズの光学特性が変化する。さらに、又はあるいは、成形要素は、膜の偏向を制限するように構成され、液体レンズの光学特性を所望の様式に変更する。
【0029】
一実施形態によれば、成形要素の動きはヒンジによってガイドされる。例えば、光学要素は剛性のバックウィンドウを備え、成形要素は剛性である。このバックウィンドウは、液体が充填されている容積を部分的に区切ることができる。ヒンジは、バックウィンドウと成形要素との間に機械的な接続を提供する。成形要素を移動させる場合、成形要素はバックウィンドウに旋回運動をもたらし、この成形要素の角度変位は2°未満であり、好ましくは1°未満である。特に、光学要素はベローズ構造を備え、これにより成形要素及び/又は膜をバックウィンドウに接続する。このベローズ構造は、可撓性膜材料から形成されてもよい。ベローズ構造により、バックウィンドウに対して成形要素の旋回運動が可能となり、このベローズが液密に容積を密閉する。
【0030】
ヒンジは、ベローズ構造の局所的な補剛領域によって形成されてもよい。補剛領域では、ベローズ構造がバックウィンドウに対して成形要素の動きの範囲を定めることができる。特に、補剛領域は、成形要素とバックウィンドウの相対運動を、回転軸を中心としたバックウィンドウに対する成形要素の回転運動に制限し、ここでこの回転軸は、光学要素の光軸に対して垂直に延びている。有利なことに、ヒンジによって成形要素の動きをガイドすることで、簡素化された、特に省スペースの動作が可能になる。
【0031】
あるいは、成形要素は弾性的に変形可能であり、アクチュエータは複数の第1のファイバーを備え、引張力は成形要素の複数の偏向点に伝達され、ここでこの偏向点は互いに間隔を空けて配置される。引張力は、各偏向点に別々のアクチュエータにより発生させてもよい。あるいは、複数の偏向点に適用することができる1つのアクチュエータにより引張力を発生させてもよい。それぞれの偏向点にかかる偏向力の割合は異なり得る。偏向点は、成形要素に沿って分布され得る。特に、偏向点が互いに分離されている。例えば、各偏向点にかかる引張力は個別に制御することが可能である。
【0032】
一実施形態によれば、光学要素は、調整可能なレンズであり、調整可能な光学特性は、球面、円柱力、及び円柱軸である。
【0033】
上記及び下記において、調整可能な光学要素の経線は、円周の中心を通って延びる仮想的な直線を表し、異なる経線が互いに対してある角度で延びている。
【0034】
球面(sphere)(SPHと略記)は、焦点距離をジオプター(diopter)で測定したレンズ力の量を示す。球面用の膜の偏向は、光学要素のすべての経線において等しくなる。光学要素は、膜の定義可能な変形によって球面レンズ力を変化させるように構成されている。
【0035】
円柱(cylinder)(CYLと略記)力は、光学要素の非点収差に対する光学的力を示す。膜は、円柱力を発生させるために非球面形状である。特に、円柱力を発生させるために、膜は第1の経線に沿って曲率が付加されず、かつ第2の経線に沿って曲率が最大に付加されるような形状を有し、ここで前記第1の経線及び第2の経線は互いに対して垂直に延びている。光学要素は、第2の経線に沿って膜の曲率を変化させるように構成されている。
【0036】
円柱軸は第1の経線の角度を表し、非点収差を矯正するための曲率が付加されていない。言い換えれば、円柱軸は、第1の経線が第2の経線から90度離れた角度であり、この第2の経線は円柱力を含む。円柱軸は1°~180°の角度で定義される。光学要素は、円柱軸を1°~180°の角度で変化させるように構成することができる。
【0037】
特に光学特性は、プリズム力及びプリズム軸並びにAddである。プリズム力は、プリズムジオプター(「p.d.」又は上付き三角)で測定した光学要素のプリズム力の量である。プリズム力は、メートル又は分数のイギリス単位(English unit)(例えば0.5又は1/2)で表示される。プリズムは、光軸に対する膜の表面の傾きに対応する。プリズム力は、膜の表面が傾いている角度の絶対値を定義する。調整可能なレンズは、プリズム力を変化させるように構成することができる。
【0038】
プリズム軸とは、光学要素のプリズム力の方向である。プリズム軸は、光学要素の表面が光軸に対して傾斜される経線の角度を示す。プリズム軸は、任意の経線に沿って伸びてもよい。プリズム軸は、1°~360°の角度で定義することができる。光学要素は、プリズム軸を1°~360°まで変化させることができるように構成することができる。
【0039】
Addとは、光学要素の一部に適用される倍率の付加である。特に、Addを有する光学要素としては、多焦点レンズが挙げられる。付加される倍率は、+0.75~+3.00ジオプターの範囲となり得る。
【0040】
一実施形態によれば、第1のファイバーは、可撓性シャフトを形成する。アクチュエータは、第1のファイバーの第1の端部にトルクを伝送する。このトルクにより、第1のファイバーはその主な延長軸の周りに回転する。光学要素は、トルクを光学特性の変化に変換するように構成されている。
【0041】
可撓性シャフトは、半径方向の電気機械式動力の伝達のための接続要素である。可撓性シャフトは、芯に何層ものワイヤーを巻き付けることで作成することができる。芯から外層に向かって見られるとおり、各層は前の層とは逆方向に巻くことができる。
【0042】
ワイヤーの品質、ワイヤーの本数、ワイヤーの直径、ワイヤーの巻き方の種類、及び可撓性シャフトの製造時の焼き戻し温度によって可撓性シャフトの機械的特性が決定される。機械的特性は、可撓性、ねじれ強度、動力伝達性、回転方向の一方又は両方向の異なる速度及び荷重での走行性のうちの少なくとも1つであり得る。
【0043】
特にワイヤーは、ケブラー、カーボン、スチール、ステンレス、又はブロンズを含む。ワイヤーは真鍮メッキされてもよい。ワイヤーは、0.1mm~5mmの直径であり得る。
【0044】
上記及び下記において、トルクとは引張力の一種であると理解できる。トルクは、引張力が軸から外れたところにかかることによって生じ、ここで可撓性シャフトの前記軸は、芯線により規定される。そのため、芯線の周りに螺旋状にガイドされる引張力によりトルクが生じる。したがって、芯線は引張力を導き、芯線に巻かれたワイヤーの少なくとも1層は引張力を伝達する。特に、時計回り方向のトルクは、時計回り方向に巻かれたワイヤーの少なくとも1つの層により伝達される。反時計回り方向のトルクは、反時計回り方向に巻かれたワイヤーの少なくとも1つの層により伝達される。
【0045】
また、ヘッドマウント可能なデバイス(head mountable device)も規定される。特に、本明細書で記載されるヘッドマウント可能なデバイスは、本明細書に記載される調整可能な光学デバイスを備える。したがって、ヘッドマウント可能なデバイスについて開示されているすべての特徴はまた、調整可能な光学デバイスについて開示され、その逆もまた然りである。
【0046】
一実施形態によれば、ヘッドマウント可能なデバイスは、眼鏡、拡張現実グラス、仮想現実グラスのうちの少なくとも1つである。
【0047】
眼鏡(spectacles)は、アイグラス(eyeglasses)又はグラス(glasses)とも呼ばれ、人の目の前に光学要素を保持するフレームに取り付けられた光学要素を備える眼鏡類であり、通常、鼻にかけるブリッジと耳にかけるテンプルが利用される。眼鏡は、老眼鏡及び近視用メガネなど、視力矯正に使われるのが一般的である。
【0048】
特に、眼鏡は、建設作業員又は実験技師など、飛散する破片から目を保護するために構成することができる。眼鏡は、光学要素だけでなく、目の側面の保護を含むことができる。眼鏡は、可視及び近可視の光又は放射線に対してフィルタリングするように構成されてもよい。眼鏡はサングラスでもよく、明るい日中のより良好な視界を確保し、過剰なレベルの紫外線によるためージから目を保護することができる。特に、この光学要素は、明るい光から保護するために着色されるか、又はまぶしい光を除去するために偏光する。
【0049】
特に、眼鏡は、特定の視覚情報を見るために構成することができる。例えば、眼鏡は、立体視の手段によって立体的な見え方を体験できるように構成される。
【0050】
バーチャルリアリティグラスは、着用者にバーチャルリアリティを提供するように構成することができる。特にバーチャルリアリティグラスは、ビデオゲーム、シミュレーター、又はトレーナーを体験できるように構成することができる。バーチャルリアリティグラスは、それぞれの目に別々の画像を提供する立体視ヘッドマウント可能なディスプレイ、ステレオサウンド、及び頭部動作追跡センサー(ジャイロスコープ、加速度計、磁気計、構造化光システムを含む)を含むことができる。ヘッドマウント可能なデバイスは、視標追跡センサー及びゲームコントローラーを備えることができる。
【0051】
スマートグラスとも呼ばれる拡張現実グラス(Augmented reality glasses)(略称:ARグラス)は、装着者が見ているものと一緒に、あるいはそれに情報を付加する装着可能なコンピュータグラスである。拡張現実グラスは、透明ヘッドアップディスプレイ(heads-up display)(HUD)又は拡張現実(augmented reality)(AR)オーバーレイを備えた埋め込み型ワイヤレスグラス(embedded wireless glasses)又は光学ヘッドマウント可能ディスプレイ(optical head-mounted display)(OHMD)によって、視野に情報を重ね合わせるように構成することができる。ARグラスは、投影されたデジタル画像を反射させるとともに、ARグラスを通して見ることができるように配置されている。特に、ARグラス及び/又はVRグラスは、自然言語の音声コマンドによってインターフェイスされる(連絡を取り合える)ように構成される。
【0052】
ARグラス及び/又はVRグラスは、内部又は外部のセンサーから情報を収集するように構成することができる。ヘッドマウント可能なデバイスは、他の機器又はコンピュータからのデータを制御するか、又は取り出すように構成することができる。ARグラス及び/又はVRグラスは、モバイルオペレーティングシステムを実行し、Bluetooth又はWiFiのヘッドセットを介してユーザーにオーディオ及びビデオファイルを送信するポータブルメディアプレーヤーとして機能するように構成することができる。ヘッドマウント可能なデバイスは、ライフロギング及びアクティビティトラッカー機能を実行するように構成することができる。
【0053】
一実施形態によれば、ヘッドマウント可能なデバイスはテンプルを備え、該テンプルは、光学要素とユーザーの頭部との間に機械的接続を確立するように構成され、ここでアクチュエータはテンプルに配置される。特に、テンプルは、伝送要素、特に第1のファイバーと本質的に同じ熱膨張係数を有する。
【0054】
特に、テンプルがフレーム又は光学要素に接続される領域に、伝送ユニットの偏向部分が配置される。特に、フレーム又は光学要素に対してテンプルは折り畳み可能である。
【0055】
調整可能な光学デバイスのさらなる利点及び有利な改良及び設計は、図に関連して提示される以下の例示的な実施形態からもたらされる。
【0056】
図において、類似の要素、同一の要素、又は同一の作用要素には、同一の参照符号を付す。図及び図に示された要素の比率は、縮尺どおりであるとみなされるものではない。むしろ、説明しやすく、及び/又は理解しやすくするために個々の要素は誇張して大きく見せることが可能である。
【0057】
図1は、ヘッドマウント可能なデバイス90における2つの調整可能な光学デバイス1の例示的な実施形態を模式的な透視図で示す。ヘッドマウント可能なデバイス90は、眼鏡、拡張現実グラス、又は仮想現実グラスであってもよい。調整可能な光学デバイス1は、それぞれ、光学要素10、アクチュエータ20、及び伝送ユニット30を備える。伝送ユニット30は、複数の第1のファイバー310を備え、複数の第1のファイバー310は、アクチュエータ20からの引張力を光学要素10に伝達するように構成されている。この引張力により、光学要素10の光学特性の変化をもたらす。
【0058】
ヘッドマウント可能なデバイスは、テンプル91を備える。テンプル91は、光学要素10とユーザーの頭部との間に機械的接続を確立するように構成され、ここでアクチュエータ20は、テンプル91に配置されている。調整可能な光学要素10は、ユーザーの目の前にそれぞれ配置される調整可能なレンズである。
【0059】
図2は、ヘッドマウント可能なデバイス90における調整可能な光学デバイス1の例示的な実施形態を模式的な上面図で示す。アクチュエータ20は、テンプル91に配置されている。アクチュエータ20により発生した力は、第1のファイバー310によって光学要素10に伝達される。第1のファイバー310の部分は、外殻構造体60内で延びている。第1のファイバー310及び外殻構造体60は、ボーデンケーブルを形成している。
【0060】
外殻構造体60は、それぞれ、第1のファイバー310に直接接触している。第1のファイバー310は、第1の主延長方向を有する第1の部分311、第2の主延長方向を有する第2の部分312、及び偏向部313を備える。偏向部分313は、第1のファイバー310に沿って第1の部分311と第2の部分312との間に配置され、外殻構造体60内に延びている。第1の主延長方向は、第2の主延長方向に対して斜め方向であり、偏向部分313において第1のファイバー310は外殻構造体60に接触しており、これは偏向要素70を形成する。
【0061】
図3は、調整可能な光学デバイス1に備えられる光学要素10の例示的な実施形態を模式的な側面図に示す。光学要素10は、光軸Zを有する調整可能なレンズである。調整可能な光学要素10は、液体で満たされる容積100を備える。液体は透明であり、膜101、バックウィンドウ105、及びベローズ106によって容積100が区画されている。膜101は、光学要素10の光学面を形成している。膜101は、成形要素102に接続されており、第1のファイバー310からの引張力は、成形要素102に作用する。成形要素102は、可撓性である。したがって、成形要素102の異なる部分は、光軸zに沿ったそれらの位置が変化し得る。この引張力によって光学面の形状が変化し、光学面の形状が変化することによって、調整可能な光学要素10の光学特性の変化をもたらす。
【0062】
図4aは、調整可能な光学デバイス1に備えられる光学要素10の例示的な実施形態を模式的な側面図に示す。第1のファイバー310は、成形要素102の異なる偏向点に取り付けられている。調整可能な光学デバイス1は、ロックユニット80を備え、ロックユニット80は、オン状態において、光学特性を規定の状態に維持するように構成され、オフ状態において、ロックユニット80は光学特性の変化を制限しない。
【0063】
ロックユニット80は、オン状態に切り替えられる場合、第1のファイバーの第1の端310aから第2の端310bへの引張力の伝達を遮断するように構成されている。オフ状態では、ロックユニット80は、第1のファイバー310の動きを限定しない。本実施形態では、ロックユニット80は、第1のファイバー310に対して交差するように延びるロックファイバー81を備える。ロックファイバー81は、ロックユニット80がオン状態の場合、第1のファイバー310をロックパッド82に対して押し付けるように構成されている。したがって、作動点104は、光軸Zに沿ったそれらの位置を維持し、それによって、調整可能なレンズ10の調整状態が維持される。
【0064】
図4bは、調整可能な光学デバイス1に備えられる光学要素10の例示的な実施形態を模式的な側面図に示す。第1のファイバー310は、成形要素102の異なる偏向点に取り付けられている。調整可能な光学デバイス1は、ロックユニット80を備え、ロックユニット80は、オン状態において、光学特性を規定状態に維持するように構成され、オフ状態において、ロックユニット80は光学特性の変化を制限しない。ここで、ロックユニット80は、容器の周りに周方向に延びる形状記憶合金(SMA)を備える。容器106は、SMAのカウンター支持を提供する。
【0065】
特に、容器106は、調整可能な光学部品10を調整するために配置されるアクチュエータ20のカウンター支持を提供する。アクチュエータ20は、容器106の周方向に延びる複数のSMAファイバー21を備える。アクチュエータは、SMAから成形要素102に引張力を伝達するように構成された第1のファイバー310に接続されている。SMA21は、接点要素107によって電気的に接続可能である。
【0066】
第1のファイバー310(破線)は、調整可能な光学要素10の容器106の周囲に延在するアクチュエータ20に接続されている。容器106は、調整可能な光学要素の容積を横方向に区画する。特に、容器106は剛性であり、調整可能な光学要素10を調整する場合に容器106が変形することがない。アクチュエータは、形状記憶合金21を備えるワイヤ(破線)を備え、これは容器106の周りに巻き付けられている。
【0067】
図5は、調整可能な光学デバイス1に備えられる光学要素10の例示的な実施形態を模式的な側面図に示す。図5に示す実施形態は、保持要素40を備えることにより、図3に示す実施形態と異なる。ここで、保持要素40は、保持力を生成するように構成されており、保持力は、第1のファイバー310によって提供される引張力に関して反対方向に作用する。第1のファイバー310は、第1の端部310aと第2の端部310bを備え、第1の端部310aはアクチュエータ20に結合され、第2の端部310bは光学要素10に結合される。引張力は第1の端部310aに作用し、保持力が第2の端部310bに作用する。本実施形態では、保持要素40は複数のバネを備え、これらのバネは成形要素102を光軸Zに沿って移動させるように構成されている。特に、保持要素40は、アクチュエータ20が引張力を与えず、かつロックユニット80がオフ状態であれば、調整可能な光学要素10を非調整状態へ戻すように構成されている。
【0068】
図6は、調整可能な光学デバイス1に備えられるアクチュエータ20の例示的な実施形態を模式的な側面図に示す。アクチュエータ20は、テンプル91内に配置されている。調整可能な光学デバイス1は、制御ユニット83及び加速度計84を備え、加速度計84は、該光学デバイス10に作用する加速力を測定するように構成されている。加速度計84は、出力信号840を制御ユニット83に送信する。出力信号840は測定された加速度に比例し、制御ユニット83は加速度計84の出力信号が所定の値を超えた場合にロックユニット80をオン状態にするように構成されている。
【0069】
該調整可能な光学デバイスは、複数の第1のファイバー310を備え、これらの第1のファイバー310は、アクチュエータ20からの引張力を光学要素10に伝達するように構成される。アクチュエータ20は、ベアリング232に回転可能に取り付けられたレバー23を備える。第1のファイバー310の第1の端部310aは、レバー23の異なる取り付け点231にそれぞれ結合されている。アクチュエータ20の所定のストロークに対する各第1のファイバー310の可動範囲は、レバー23に沿ったそれぞれの取り付け点231の位置に依存する。取り付け点231からベアリング232までの距離が長くなると可動範囲が大きくなる。有利なことに、レバー23は、第1のファイバー310の複数の異なる動作範囲において、1つのストロークを伝達することを可能にする。
【0070】
図7図8及び図9は、調整可能な光学デバイス1に備えられる偏向要素70の例示的な実施形態を示す。第1のファイバー310は、第1の主延長方向311aを有する第1の部分311、及び第2の主延長方向312aを有する第2の部分312、及び偏向部分313を備える。偏向部分313は、第1のファイバー310に沿って第1の部分311と第2の部分312との間に配置されている。偏向部分313において、第1のファイバー310は、偏向要素70と接触している。第1の主延長方向311aは、第2の主延長方向312aに対して斜め方向である。
【0071】
偏向要素70は、マウント71及びガイド要素72を備える。ガイド要素72は、偏向部分313をガイドするように構成され、ガイド要素72は、偏向部分313に直接接触している。ガイド要素72は、支点73でマウント71に旋回可能に連結されている。
【0072】
図7の実施形態では、ガイド要素72のうち偏向部分313と接触する部分は一定の曲率半径を有し、前記部分に対して等距離となる位置に支点が配置されている。したがって、偏向要素は、第1のファイバー310のてこ比を変化させない。
【0073】
図8の実施形態では、ガイド要素72のうち偏向部分313と接触している部分は、第2の部分312に近い側よりも第1の部分に近い側で曲率半径がより小さい。したがって、支点73と偏向部分313との間の距離は、偏向部分313に沿って変化する。支点は、第1の部分よりも第2の部分に近い位置に配置されている。したがって、偏向要素は、第1のファイバー310のてこ比を変化させ、その結果、所定のストロークに対して、第2の部分の偏向よりも第1の部分の偏向が小さくなる。
【0074】
図9の実施形態では、ガイド要素72のうち偏向部分313と接触している部分は、第2の部分312に近い側よりも第1の部分に近い側で曲率半径がより大きい。したがって、支点73と偏向部分313との間の距離は、偏向部分313に沿って変化する。支点は、第2の部分よりも第1の部分に近い位置に配置されている。したがって、偏向要素は、第1のファイバー310のてこ比を変化させ、その結果、所定のストロークに対して、第2の部分の偏向よりも第1の部分の偏向が大きくなる。
【0075】
図10は、調整可能な光学デバイスに備えられる第1のファイバー310、第2のファイバー320、及びピボット要素50を有する伝送ユニット30の例示的な実施形態を模式的な断面図で示す。第1のファイバー310及び第2のファイバー320は、外殻構造体60にガイドされる。
【0076】
ピボット要素50は、ピボット要素50がピボット点51を中心に回転可能なピボット点51を備える。第1のファイバー310の第2の端部310b及び第2のファイバー320の第2の端部320bとは、ピポット点51に対してピポット要素50の反対側に接続されている。第1のファイバー310の引張力は、第1の方向へ、特に時計回り方向へのピボット要素50の回転を引き起こし、第2のファイバー320の引張力は、第2の方向へ、特に反時計回り方向へのピボット要素50の回転を引き起こし、ここで第1の方向は、第2の方向と反対方向である。特に、第2のファイバー320の引張力は、第1のファイバー310の保持力である。
【0077】
図11及び図12は、調整可能な光学デバイスに備えられる巻線要素を2つの異なる側面から見た例示的な実施形態である。アクチュエータ20は、巻線要素22を備え、複数の第1のファイバー310は、少なくとも部分的に巻線要素22の周囲に巻かれている。アクチュエータ20は、回転軸Rの周りに巻線要素22を回転させるように配置されており、該巻線要素22の回転により引張力が発生する。
【0078】
図12の回転軸Rに沿った図に示すとおり、巻線要素22は、円柱形状を有し、複数の部分221を備える。第1のファイバーは、それぞれ、部分221の1つの周りに巻かれており、少なくとも2つの部分221は、異なる直径を有し、及び/又は円柱形状は、非円形の断面積を有する。
【0079】
図13は、調整可能な光学デバイス1に備えられる光学要素10の例示的な実施形態を模式的な側面図に示す。伝送ユニット30は、光学要素10の周方向に交差して配置される2本の第1のファイバー310を備える。アクチュエータ20は引張力を提供し、それによってバックウィンドウ105と成形要素102との間の距離は減少する。この運動により、容積100内の圧力が上昇し、それによって膜101が光軸zに沿って偏向する。
【0080】
図14aは、調整可能な光学デバイス1の例示的な実施形態を模式的な断面図で示す。アクチュエータ20は、形状記憶合金21を備える。形状記憶合金21は、第1のファイバー310によって伝達される引張力を光学要素10に与えるように配置されている。形状記憶合金21は、形状記憶合金21における電流によって作動することができる。
【0081】
特に、第1のファイバー310は形状記憶合金を備えるか、又は、第1のファイバー310は形状記憶合金21からなる。
【0082】
成形要素102の動きは、ヒンジ103によってガイドされる。ヒンジ103は、成形要素102とバックウィンドウ105の相対的な動きをガイドし、ここで成形要素102は剛性である。有利なことに、光学要素の調整状態は、成形要素102のガイドされた動きのため、特に簡単に制御することができる。
【0083】
調整可能な光学デバイス1は、形状記憶合金21とバネ85とを有するロックユニット80を備える。オン状態では、バネが第1のファイバー310をテンプルの側壁に押し付け、それにより、第1のファイバー310の運動が遮断される。オフ状態では、形状記憶合金がバネ85を第1のファイバー310から引き離す。これにより、第1のファイバーは、バネ85によってその運動が制限されない。
【0084】
図14bは、調整可能な光学デバイス1の例示的な実施形態を模式的な断面図で示す。アクチュエータ20は、第1のファイバー310を形成する形状記憶合金21を備える。形状記憶合金21は、第1のファイバー310によって伝達される引張力を光学要素10に与えるように配置されている。成形要素102の動きは、ヒンジ103によってガイドされる。ヒンジ103は、成形要素102とバックウィンドウ105の相対的な動きをガイドし、ここで成形要素102は剛性である。容積100は、剛性の容器106、バックウィンドウ105、及び膜101によって区画されている。膜101は、少なくとも部分的に成形要素102と容器106の間に延在している。膜101は、成形要素がバックウィンドウ105に対して旋回した場合に弾性的に変形することができ、それによって成形要素の少なくとも一部が光軸Zに沿って偏向することができる。ヒンジ103は、成形要素102の動きを少なくとも一部において光軸Zに沿って制限し、それによってヒンジはバックウィンドウ105に対する成形要素102の回転軸を画定している。
【0085】
図14cは、調整可能な光学デバイス1の例示的な実施形態を模式的な断面図で示す。アクチュエータ20は、図14bに示すアクチュエータと同様の働きをする。ベローズ構造106は、容積100を横方向に区画する。上記及び下記において横方向は、光軸Zに対して垂直に延びている。ベローズ構造106は、光軸Zに沿って伸縮可能な折り畳まれた膜から形成されてもよく、ヒンジ103は、ベローズ構造106の剛性の高い部分によって形成されてもよい。例えば、ベローズ構造106に塗布される接着剤によって、ベローズ構造が局所的に剛性化される。
【0086】
図15は、可撓性シャフトを形成する第1のファイバー310の例示的な実施形態をある方向における模式的な断面図で示す。第1のファイバー310は、芯線31を備え、断面図は、芯線31の主延長方向と直交する方向である。芯線31の周りに2層のワイヤーが巻かれている。第1のワイヤー層32は、芯線31の周囲に時計回り方向に巻かれ、第2のワイヤー層33は、第1のワイヤー層32の周囲に反時計回り方向に巻かれている。したがって、第1のワイヤー層32の引張力は、時計回り方向にトルクを伝達し、第2のワイヤー層33の引張力は、反時計回り方向にトルクを伝達する。
【0087】
図16は、可撓性シャフトを形成する第1のファイバーの例示的な実施形態を、芯線31の主延長方向に沿った方向の模式的な側面図で示す。特に、第1のファイバー310は、さらなるワイヤー層を備えてもよい。
【0088】
図17は、可撓性シャフトに接続される調整可能な光学デバイス10の例示的な実施形態を模式的な断面図に示す。第1のファイバー310は、可撓性シャフトを形成する。アクチュエータ20(図示せず)は、第1のファイバー310の第1の端部310aにトルクを伝達する。このトルクにより、第1のファイバーはその主延長軸の周りに、特に芯線の周りに回転する。光学要素10は、トルクを光学特性の変化に変換するように構成されている。伝送ユニット30は、第1のファイバー31と成形要素102とを機械的に結合する少なくとも1つの接続要素34を備える。接続要素34は、時計回り方向及び反時計回り方向にトルクを伝達するように構成されている。トルクは、光軸Zに沿って成形要素102を偏向させ、その結果、膜101の表面形状が変化し、それによって、調整可能な光学要素10の少なくとも1つの光学特性が変更される。
【0089】
本発明は、その説明によりこの例示的な実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明は、あらゆる新しい特徴及び特徴のあらゆる組み合わせを包含し、特に、この特徴又はこの組み合わせ自体が特許請求の範囲又は例示的な実施形態において明示的に規定されていなくても、特許請求の範囲における特徴のあらゆる組み合わせを包含する。
符号の一覧
【0090】
1 調整可能な光学デバイス
10 調整可能な光学要素
20 アクチュエータ
30 伝送ユニット
310 第1のファイバー
90 ヘッドマウント可能なデバイス
91 テンプル
60 外殻構造体
311 第1の部分
312 第2の部分
313 偏向部分
100 容積
101 膜
102 成形要素
103 ヒンジ
104 偏向点
105 バックウィンドウ
106 ベローズ
310a 第1のファイバーの第1の端部
310b 第1のファイバーの第2の端部
70 偏向要素
40 保持要素
80 ロックユニット
81 ロックファイバー
82 ロックパッド
23 レバー
231 取り付け点
232 ベアリング
83 制御ユニット
84 加速度計
71 マウント
72 ガイド要素
73 支点
z 光軸
311a 第1の部分の主延長方向
312a 第2の部分の主延長方向
50 ピボット要素
51 ピボット点
320 第2のファイバー
22 巻線要素
221 部分
R 回転軸
21 形状記憶合金
85 バネ
106 容器
31 芯線
32 第1のワイヤー層
33 第2のワイヤー層
34 接続要素
107 接触要素

図1
図2
図3
図4AB
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図14c
図15
図16
図17
【外国語明細書】