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特開2022-121397硫酸銅又はその水和物を使用するアレンケトンの製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121397
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】硫酸銅又はその水和物を使用するアレンケトンの製造
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/00 20060101AFI20220812BHJP
   C07C 49/203 20060101ALI20220812BHJP
   C07C 33/042 20060101ALI20220812BHJP
   C07C 43/15 20060101ALI20220812BHJP
   C07C 45/67 20060101ALI20220812BHJP
   B01J 27/055 20060101ALI20220812BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
C07C45/00
C07C49/203 A
C07C33/042
C07C43/15
C07C45/67
B01J27/055 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016265
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】21155685
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】アキノ, ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169CB25
4G169DA05
4H006AA02
4H006AC25
4H006AC27
4H006BA05
4H006BA36
4H006BC31
4H006BC34
4H006BE63
4H006FE11
4H006GP01
4H039CA99
4H039CL25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CuSO触媒を使用した高収率、高選択率のアレンケトンの製造方法を提供する。
【解決手段】式(I)の不飽和ケトンの製造方法であって、

プロピニルアルコールとα,β-不飽和ケトンなどを、触媒としてCuSO又はCuSOの水和物の存在下で反応させることにより製造する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の不飽和ケトンを、式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物と
【化2】

を触媒としてのCuSO又はCuSOの水和物の存在下で反応させることにより製造する方法であって、
式中、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表し、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、
は、直鎖又は分岐鎖のC1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
5’及びR5’’は、
直鎖又は分岐鎖のいずれかのC1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表すか、
又はR5’及びR5’’は、直鎖又は分岐鎖のC1~10-アルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基を一緒に形成し、
式中、波線が、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す、
方法。
【請求項2】
がメチル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
=メチルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
が、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)及び(R2-IV)
【化3】

からなる群から選択され、式中、点線が、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)又は(R2-IV)の置換基が式(I)又は式(II)の化合物の残部に結合している結合を表し、
点線
【化4】

を有する二重結合がいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表し、
いずれの波線も、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を互いから独立して表し、
nが1、2、3又は4、特に1又は2を表す
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
式(II)の化合物:式(IIIa)又は(IIIb)の化合物のモル比が、1:15~1:1の範囲であり、
式(IIIa)の化合物を使用する場合、
前記比が、1:5~1:2の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1:3.5~1:2の範囲、最も好ましくは1:3~1:2の範囲、特に1:2.5~1:2の範囲であり、
又は式(IIIb)の化合物を使用する場合、
前記比が、1:10~1:2の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1:8~1:3の範囲、最も好ましくは1:8~1:5の範囲である
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
CuSO又はCuSOの水和物の量が、式(II)の化合物の量を基準にして、0.005~1mol%の範囲であり、好ましくは0.005~0.6mol%の範囲であり、より好ましくは0.01~0.2mol%の範囲であり、最も好ましくは0.01~0.15mol%の範囲であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記CuSOの水和物が、CuSO・5HO、CuSO・3HO及びCuSO・HOからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
一般式(I)の化合物が、6-メチルヘプタ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9,13-テトラエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,13-トリエン-2-オン及び6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(IV)
【化5】

のジエンケトンを製造する方法であって、以下のステップ:
a)請求項1~8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を調製するステップ、
次いで
b)塩基又は酸、好ましくは塩基の存在下で、式(I)の化合物を異性化して、式(IV)のジエンケトンを得るステップ
を含む方法。
【請求項10】
i)式(II)の化合物、
【化6】

ii)式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化7】

及び
iii)CuSO又はCuSOの水和物
を含む、反応物の混合物であって、
式中、
が、メチル基又はエチル基を表し、
が、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表し、
が、メチル基又はエチル基を表し、
が、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、
が、直鎖又は分岐鎖のC1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
5’及びR5’’が、
直鎖又は分岐鎖のいずれかのC1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表すか、
又はR5’及びR5’’が、直鎖又は分岐鎖のC1~10-アルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基を一緒に形成する、
反応物の混合物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、アレンケトンの製造に関する。
【0002】
[発明の背景]
式(I)のアレンケトンは、重要な部類の工業化学物質であり、ビタミン類及び芳香成分の合成における中心的生成物である。特に重要。実行可能な合成経路の1つは、第三級プロパルギルカルビノールを出発生成物として使用する。
【0003】
米国特許第3,029,287号明細書及びG.Saucy et al.Helv.Chim.Acta 1967,50(4),1158-1167は、強酸、特に硫酸又はリン酸又はp-トルエンスルホン酸の存在下で、第三級プロパルギルアルコールとケタール又はエノールエーテルとを縮合してアレンケトンを形成することを開示している。
【0004】
米国特許第6,380,437号明細書は、脂肪族スルホン酸又はその金属塩の存在下で、第三級プロパルギルアルコールとケタール又はアルケニルアルキルエーテルとを縮合してアレンケトンを形成することを開示している。
【0005】
米国特許第3,330,867号明細書及び国際公開第2017/131607号は、水素を用いてアレンケトンを異性化して不飽和ケトンを得ることができることを開示している。
【0006】
アレンケトンの調製における強酸の使用は、この化学物質(強酸)が取り扱いにおいて危険であり、特別な保護方法を使用し、製造工程で使用される設備について特定の及び耐食性の材料を必要とするため、不利である。
【0007】
[発明の概要]
したがって、本発明によって解決される問題は、強酸及び腐食条件の非存在下で、式(I)のアレンケトンを高収率で製造する方法を提供することである。
【0008】
驚くべきことに、請求項1に記載の方法及び請求項10に記載の反応物の混合物は、この問題を解決することができることが判明した。
【0009】
硫酸銅(II)及びその水和物は、前記反応のための触媒として特によく適していることが判明した。
【0010】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オール及びイソプロペニルメチルエーテルからの6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンの形成を表す。
図2】DLL及びイソプロペニルメチルエーテルからの6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オンの形成を表す。
図3】3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール及びブテニルメチルエーテルからの3,6,10-トリメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン(=TMUTO)及び7,11-ジメチルドデカ-5,6,10-トリエン-3-オン(DMDTO)の形成を表す。
図4】3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オール及びブテニルメチルエーテルからの7,11,15-トリメチルヘキサデカ-5,6-ジエン-3-オン(TMHDO)及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オン(TMPDO)の形成を表す。
【0012】
[発明の詳細な説明]
第1の態様において、本発明は、式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物とを、
【化1】

触媒としてのCuSO又はCuSOの水和物の存在下で反応させることによる、式(I)のアレンケトンを製造する方法であって、
式中、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表し、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、
は、直鎖又は分岐鎖のC1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
5’及びR5’’は、
直鎖又は分岐鎖のいずれかのC1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表すか、
又はR5’及びR5’’は、直鎖又は分岐鎖のC1~10-アルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基を一緒に形成し、
式中、波線は、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す、
方法に関する。
【0013】
明確にするために、本明細書で使用されている幾つかの用語を以下のように定義する。
【0014】
本明細書において、「Cx~y-アルキル」基とは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基であり、即ち、例えば、C1~3-アルキル基は、1~3個の炭素原子を含むアルキル基である。アルキル基は、直鎖でも又は分岐鎖でもよい。例えば、-CH(CH)-CH-CHは、C-アルキル基とみなされる。
【0015】
本明細書において、複数の式の中に、記号又は基についての同じ標識が存在する場合、1つの特定の式の内容においてなされた前記基又は記号の定義が、同じ前記標識を含む他の式にも適用される。
【0016】
本明細書において、置換基、部分、又は基の内容における「互いから独立して」という用語は、同様に指定された置換基、部分、又は基が、同じ分子の中で異なる意味を有して同時に存在することができることを意味する。
【0017】
本明細書において、式中の点線はいずれも、置換基が分子の残部に結合している結合を表す。
【0018】
本明細書において、波線はいずれも、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を、互いから独立して表す。
【0019】
後で極めて詳細に説明される、CuSO又はCuSOの水和物である特定の触媒(=「Cat」)の存在下で、式(II)の化合物を、式(IIIa)又は式(IIIb)の化合物のいずれかと反応させる。
【化2】
【0020】
[式(II)の化合物]
式(II)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0021】
は、メチル基又はエチル基、好ましくはメチル基を表す。
【0022】
は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基、好ましくはメチル基を表す。
【0023】
好ましい実施形態では、Rは、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)及び(R2-IV)
【化3】

からなる群から選択される基を表す。
【0024】
点線は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)又は(R2-IV)の置換基が、式(I)又は式(II)の化合物の残部に結合している結合を表す。点線
【化4】

を有する二重結合はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表す。波線はいずれも、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を、互いから独立して表す。
【0025】
上記の式中、nは1、2、3又は4、特に1又は2を表す。
【0026】
好ましい実施形態のうち1つでは、Rは、式(R2-I)の基又は式(R2-II)の基のいずれかを表す。
【0027】
別の好ましい実施形態では、Rは、式(R2-III)の基又は式(R2-IV)の基のいずれかを表す。
【0028】
式(II)の化合物は、2-メチルブタ-3-イン-2-オール(=メチルブチノール、「MBY」)、3-メチルペンタ-1-イン-3-オール(=エチルブチノール、「EBY」)、3,5-ジメチルヘキサ-1-イン-3-オール、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)、3,7-ジメチルオクタ-1-イン-3-オール、3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール(=エチルデヒドロリナロール、「EDLL」)、3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オール、3,7,11-トリメチルドデカ-6-エン-1-イン-3-オール、3,7,11-トリメチルドデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール(=デヒドロネロリドール、「DNL」)、3,7,11-トリメチルドデカ-4,6,10-トリエン-1-イン-3-オール(=エチニルプソイドイオノール、「EPI」)、3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-イン-3-オール及び3-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-エン-4-イン-3-オールからなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
式(II)の化合物は、2-メチルブタ-3-イン-2-オール(=メチルブチノール、「MBY」)、3-メチルペンタ-1-イン-3-オール(=エチルブチノール、「EBY」)、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)、3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール(=エチルデヒドロリナロール、「EDLL」)、3,7,11-トリメチルドデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール(=デヒドロネロリドール、「DNL」)及び3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0030】
式(II)の化合物は、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)又は3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールであることがより一層好ましい。
【0031】
[式(IIIa)の化合物]
式(IIIa)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0032】
式(IIIa)において、Rは、メチル基又はエチル基を表し、Rは、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、Rは、直鎖又は分岐鎖の、C1~10-アルキル基、特にメチル基又はエチル基を表す。
【0033】
好ましくは、R基はメチル基を表す。
【0034】
好ましくは、R基はHを表す。
【0035】
好ましくは、R基はメチル基を表す。
【0036】
式(IIIa)の化合物は、最も好ましくは、イソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)又はイソプロペニルエチルエーテル(「IPE」)のいずれかであり、特にイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)である。
【0037】
式(IIIa)の化合物の合成が原因で、式(IIIa)の化合物の混合物もまた、式(II)の化合物との反応に使用されることが極めて多い。例えば、ブテニルメチルエーテルについては、メタノール及びメチルエチルケトンから調製される、2-メトキシブタ-1-エンと(E)-2-メトキシブタ-2-エンと(Z)-2-メトキシブタ-2-エンとの混合物が使用されることが多い。
【0038】
[式(IIIb)の化合物]
式(IIIb)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0039】
式(IIIb)において、Rは、メチル基又はエチル基を表し、Rは、H又はメチル基若しくはエチル基を表す。
【0040】
5’及びR5’’は、一実施形態では、各々が、直鎖又は分岐鎖のいずれかのC1~10-アルキル基、特にメチル基又はエチル基を表す。別の実施形態では、R5’及びR5’’は、直鎖又は分岐鎖のC1~10-アルキレン基、特にエチレン基又はプロピレン基を一緒に形成する。
【0041】
好ましくは、R基はメチル基を表す。
【0042】
好ましくは、R基はHを表す。
【0043】
好ましい一実施形態では、R5’=R5’’であり、特にR5’=R5’’=メチル又はエチルであり、より好ましくはR5’=R5’’=CHである。
【0044】
別の好ましい実施形態では、R5’及びR5’’は、エチレン(CHCH)基又はプロピレン(CHCHCH若しくはCH(CH)CH)基を一緒に形成する。
【0045】
式(IIIb)の化合物は、最も好ましくは、2,2-ジメトキシプロパン、又は2,2-ジエトキシプロパン、又は2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、又は2,2,4-トリメチル-1,3-ジオキソラン、又は2,2-ジメチル-1,3-ジオキサンのいずれかである。
【0046】
式(IIIb)の化合物は、最も好ましくは、2,2-ジメトキシプロパン又は2,2-ジエトキシプロパンのいずれか、特に2,2-ジメトキシプロパンである。
【0047】
式(IIIb)の化合物より、式(IIIa)の化合物を使用する方が好ましい。
【0048】
[硫酸銅(II)]
式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物との反応は、触媒としてのCuSO又はCuSOの水和物の存在下で実行される。
【0049】
一実施形態では、触媒は、CuSO、即ち無水硫酸銅(II)である。
【0050】
別の好ましい実施形態では、触媒は無水硫酸銅(II)の水和物である。CuSOの水和物は、CuSO・5HO、CuSO・3HO及びCuSO・HOからなる群から選択されるのが好ましい。CuSO・5HOが触媒として最も好ましい。
【0051】
反応は、式(II)の化合物:式(IIIa)又は(IIIb)の化合物のモル比が1:15~1:1の範囲である場合に実行されるのが好ましいことが判明した。
【0052】
式(IIIa)の化合物を使用する場合、前記比は、1:5~1:2の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1:3.5~1:2の範囲、最も好ましくは1:3~1:2の範囲、特に1:2.5~1:2の範囲である。
【0053】
式(IIIb)の化合物を使用する場合、前記比は、1:10~1:2の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1:8~1:3の範囲、最も好ましくは1:8~1:5の範囲である。
【0054】
さらに、CuSO又はその水和物である触媒の量は、式(II)の化合物の量を基準にして、0.005~1mol%の範囲であることが好ましく、好ましくは0.01~0.6mol%の範囲であり、より好ましくは0.005~0.6mol%の範囲であり、最も好ましくは0.01~0.15mol%の範囲である。
【0055】
反応は、70~170℃の範囲の温度で行われるのが好ましい。一実施形態では、温度は、好ましくは110~160℃の範囲であり、最も好ましくは115~150℃の範囲の温度である。この温度範囲は、式(IIIa)の化合物としてのイソプロペニルメチルエーテルに特に好適である。
【0056】
別の実施形態では、温度は、好ましくは75~100℃の範囲であり、最も好ましくは80~95℃の範囲の温度である。この温度範囲は、式(IIIa)の化合物としてのブテニルメチルエーテルに特に好適である。
【0057】
反応は、好ましくは5~20barの範囲の圧力で、より好ましくは6~15barの範囲の圧力で行われる。
【0058】
一実施形態では、反応は、好ましくは5~20baraの範囲の圧力で、より好ましくは6~15baraの範囲の圧力で行われる。この圧力範囲は、式(IIIa)の化合物としてのイソプロペニルメチルエーテルに特に好適である。
【0059】
別の実施形態では、反応は、周囲圧力(1bara)で行われるのが好ましい。この圧力は、式(IIIa)の化合物としてのブテニルメチルエーテルに特に好適である。
【0060】
反応は、溶媒なしでも、又は有機溶媒の存在下でも行うことができる。好ましくは、反応は溶媒なしで行われる。
【0061】
反応が有機溶媒の不在下で行われる場合でも、出発材料である式(II)及び(IIIa)又は(IIIb)の化合物はなお、有機溶媒中に用意されてもよい。したがって、反応物の混合物の総重量を基準にして、10重量%までの量の有機溶媒、好ましくは5重量%までの量の有機溶媒、より好ましくは3重量%までの量の有機溶媒が存在してもよい。
【0062】
反応が有機溶媒中で行われる場合、極性非プロトン性有機溶媒、例えば、脂肪族ケトン、例えばアセトンが好ましい。
【0063】
上記の反応は、式(I)の化合物を、高転化率、高収率及び高選択率でもたらすことが判明した。
【0064】
特に、6-メチルヘプタ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9,13-テトラエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,13-トリエン-2-オン及び6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンからなる群から選択される式(I)の化合物を、好ましくは生成できることが判明した。
【0065】
有機溶媒を伴う又は伴わない、反応物の混合物それ自体もまた、本発明の目的である。
【0066】
したがって、本発明は、さらなる態様において、
i)式(II)の化合物、
【化5】

ii)式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化6】

及び
iii)CuSO又はCuSOの水和物
を含む、反応物の混合物に関する。
【0067】
式(II)の化合物及び式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、並びに触媒は、既に上で十分に説明されている。
【0068】
式(I)の化合物を、塩基又は酸、好ましくは塩基の存在下で異性化して、式(IV)
【化7】

のジエンケトンを得ることができる。
【0069】
したがって、本発明は、さらなる態様において、式(IV)
【化8】

のジエンケトンを製造する方法であって、次のステップ:
a)上で既に極めて詳細に説明されている式(I)の化合物を調製するステップ、
次いで
b)塩基又は酸、好ましくは塩基の存在下で、式(I)の化合物を異性化して、式(IV)のジエンケトンを得るステップ
を含む方法に関する。
【0070】
式(I)の化合物を異性化して式(IV)の化合物を得ることは、例えば米国特許第3,330,867号明細書及び国際公開第2017/131607号から大抵は当業者に公知であり、この両方の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0071】
異性化ステップ、即ちステップb)で使用される塩基は、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物又は炭酸塩又は炭酸水素塩、好ましくは水酸化物、特にKOH又はNaOHである。
【0072】
別の好ましい実施形態では、塩基は、塩基性イオン交換樹脂、好ましくは塩基性陰イオン交換樹脂である、DOWのAmberlite(登録商標)IRA 900、Dowex(登録商標)MSA-1、Diaion(登録商標)HPA25又はPA308、及びAmberlyst(登録商標)A260H、XE-4、XE-8、XE-8新型及びXE-10、並びに同一の化学構造及び類似の物理化学的性質を有する等価な樹脂である。
【0073】
この異性化ステップにおける温度は、好ましくは30℃未満、特に-10℃~25℃の間、好ましくは0℃~10℃の範囲である。
【0074】
前記異性化ステップは、好ましくは、C1~6-アルコール中、特にメタノール中、又は水性媒体中で実行される。
【0075】
前記各方法は、それぞれ式(I)又は(IV)の化合物を、式(II)の化合物に対して高収率及び高選択率で製造することを可能にする。ゆえに、本発明は、当業者に公知の方法に勝る大きな利点を提供している。
【0076】
[実施例]
本発明を以下の実験によってさらに説明する。
【0077】
[実験シリーズ1]
表1に示されている(3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールの量に対して)0.1mol-%の各金属触媒の存在下で、3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールを、3当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、120℃で90分間撹拌した。それぞれの生成物、即ち6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンを、表1に示す転化率及び収率で得た(図1を参照)。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果は、硫酸銅(II)又はその水和物は、前記反応について優れた触媒挙動を有するが、他の金属触媒は活性がないか、又はごくわずかしかないことを示す。
【0080】
国際公開第2017/131607号の実施例2に示されている反応により、表1の6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンを定量的に異性化して、3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-3,5-ジエン-2-オンを得た。
【0081】
[実験シリーズ2]
実験シリーズ2では、実験シリーズ1の触媒としてのCuSO・5HOを使用する反応の反応パラメーター(IPM及び触媒の濃度、反応温度並びに反応時間)を、表2に示されているように変動させた。
【0082】
【表2】
【0083】
[実験シリーズ3]
(表3に示されている(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)の量に対する))量の、触媒としてのCuSO・5HOの存在下で、DLLを、表3に示されている数の当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、115℃の温度で60分間撹拌した。それぞれの生成物、即ち6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オンを、表3に示す転化率及び選択率で得た(図2を参照)。
【0084】
【表3】
【0085】
表3の結果は、CuSO・5HOが優れた触媒であることを示す。
【0086】
国際公開第2017/131607号の実施例2に示されている反応により、表3の6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オンを定量的に異性化して、6,10-ジメチルウンデカ-3,5,9-トリエン-2-オンを得た。
【0087】
[実験シリーズ4]
表4に示されている量の各触媒の存在下で、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)を、2.6当量のブテニルメチルエーテル(2-メトキシブタ-1-エン/(E)-2-メトキシブタ-2-エン/(Z)-2-メトキシブタ-2-エン=53/37/10の混合物)と混合し、80~95℃の温度で、表4に示す反応時間の間、撹拌した。それぞれの生成物、即ち7,11-ジメチルドデカ-5,6,10-トリエン-3-オン(=DMDTO)及び3,6,10-トリメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン(=TMUTO)を、表4に示す転化率、収率及び選択率で得た(図3を参照)。
【0088】
【表4】
【0089】
国際公開第2017/131607号の実施例2に示されている反応により、表4の3,6,10-トリメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン及び7,11-ジメチルドデカ-5,6,10-トリエン-3-オンを定量的に異性化して、3,6,10-トリメチルウンデカ-3,5,9-トリエン-2-オン、及び7,11-ジメチルドデカ-4,6,10-トリエン-3-オンをそれぞれ得た。
【0090】
[実験シリーズ5]
表5に示されている量の各触媒の存在下で、3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールを、2.6当量のブテニルメチルエーテル(2-メトキシブタ-1-エン/(E)-2-メトキシブタ-2-エン/(Z)-2-メトキシブタ-2-エン=53/37/10の混合物)と混合し、80~95℃の温度で、表5に示す反応時間の間、撹拌した。それぞれの生成物、即ち7,11,15-トリメチルヘキサデカ-5,6-ジエン-3-オン(TMHDO)及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オン(TMPDO)を、表5に示す転化率、収率及び選択率で得た(図4を参照)。
【0091】
【表5】
【0092】
国際公開第2017/131607号の実施例2に示されている反応により、表5の7,11,15-トリメチルヘキサデカ-5,6-ジエン-3-オン及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンを定量的に異性化して、7,11,15-トリメチルヘキサデカ-4,6-ジエン-3-オン、及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-3,5-ジエン-2-オンをそれぞれ得た。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】