(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121398
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】第三級アミンのSO3付加物を使用する不飽和ケトンの製造
(51)【国際特許分類】
C07C 45/00 20060101AFI20220812BHJP
C07D 213/18 20060101ALI20220812BHJP
C07C 49/203 20060101ALI20220812BHJP
C07C 45/67 20060101ALI20220812BHJP
C07C 33/042 20060101ALI20220812BHJP
C07C 43/15 20060101ALI20220812BHJP
B01J 31/26 20060101ALI20220812BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220812BHJP
【FI】
C07C45/00
C07D213/18
C07C49/203 A
C07C45/67
C07C33/042
C07C43/15
B01J31/26 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016266
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】21155686
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】アキノ, ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
【テーマコード(参考)】
4C055
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA01
4C055GA10
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA32A
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BE14A
4G169BE14B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169CB25
4G169CB72
4G169DA02
4H006AA02
4H006AC25
4H006AC27
4H006BA51
4H006BA52
4H006BC31
4H006BC34
4H006FE11
4H006GP01
4H039CA99
4H039CL25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第三級アミンSO
3付加物を使用した、不飽和ケトンの高収率、高選択率の製造方法を提供する。
【解決手段】式(I)の不飽和ケトンを製造する方法であって、
プロピニルアルコールなどとアルケニルエーテルなどを、触媒として第三級アミンのSO
3付加物の存在下で反応させることにより製造する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の不飽和ケトンを、
式(IIa)又は(IIb)の化合物と、
【化2】
式(IIIa)又は(IIIb)の化合物と
【化3】
を触媒としての第三級アミンのSO
3付加物の存在下で反応させることにより製造する方法であって、
式中、
Qは、式
【化4】
の基を表し、
R
1は、メチル基又はエチル基を表し、
R
2は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表し、
R
3は、メチル基又はエチル基を表し、
R
4は、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、
R
5は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
R
5’及びR
5’’は、
直鎖又は分岐鎖のいずれかのC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表すか、
又はR
5’及びR
5’’は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基を一緒に形成し、
前記付加物の第三級アミンは、
ピリジン
又は
式(X)の第三級アミン
【化5】
[式中、R
6及びR
7及びR
8は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基を表す]
のいずれかであり、
式中、波線は、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表し、
点線はいずれも、置換基Qが式(I)の化合物の残部に結合している結合を表す、
方法。
【請求項2】
R1がメチル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R2=メチルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
R
2が、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)及び(R2-IV)
【化6】
からなる群から選択され、
式中、点線が、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)又は(R2-IV)の置換基が式(I)又は式(IIa)又は(IIb)の化合物の残部に結合している結合を表し、
点線
【化7】
を有する二重結合はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表し、
波線がいずれも、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を、互いから独立して表し、
nが1、2、3又は4、特に1又は2を表す
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
式(IIa)又は(IIb)の化合物:式(IIIa)又は(IIIb)の化合物のモル比が1:15~1:1の範囲であり、
式(IIIa)の化合物を使用する場合、
前記比が、1:5~1:2の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1:3.5~1:2の範囲、最も好ましくは1:3~1:2の範囲、特に1:2.5~1:2の範囲であり、
又は式(IIIb)の化合物を使用する場合、
前記比が、1:10~1:2の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1:8~1:3の範囲、最も好ましくは1:8~1:5の範囲である
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第三級アミンのSO3付加物の量が、式(IIa)又は(IIb)の化合物の量を基準にして、0.01~1mol%の範囲であり、好ましくは0.02~0.6mol%の範囲であり、より好ましくは0.05~0.6mol%の範囲であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第三級アミンのSO
3付加物が、
【化8】
であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第三級アミンのSO
3付加物が、
【化9】
であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物が、式(I’’)
【化10】
であり、式(IIb)の化合物と、式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、好ましくは式(IIIa)の化合物とを、
【化11】
触媒としての前記第三級アミンのSO
3付加物の存在下で反応させることによって調製されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一般式(I)の化合物が、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、6-メチル-5-オクテン-2-オン、6,10-ジメチル-5,9-ウンデカジエン-2-オン、6,10-ジメチル-5-ウンデセン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-5,9-ジエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-5,13-ジエン-2-オン及び6,10,14-トリメチル-5,9,13-ペンタデカ-トリエン-2-オンからなる群から選択され、好ましくは6-メチル-5-ヘプテン-2-オンであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(I)の化合物が、式(I’)
【化12】
であり、式(IIa)の化合物と、式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、好ましくは式(IIIa)の化合物と
【化13】
を触媒としての前記第三級アミンのSO
3付加物の存在下で反応させることによって調製されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
一般式(I)の化合物が、6-メチルヘプタ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9,13-テトラエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,13-トリエン-2-オン及び6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~8又は11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
i)式(IIa)の化合物、
【化14】
ii)式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化15】
及び
iii)触媒としての第三級アミンのSO
3付加物
を含む、反応物の混合物であって、
前記付加物の第三級アミンは、
式(V)のピリジン化合物
【化16】
[式中、R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~12-アルキル基若しくはC
5~12-シクロアルキル基のいずれかを表す]、
又は
式(X)の第三級アミン
【化17】
[式中、R
6及びR
7及びR
8は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基を表す]
のいずれかであり、
式中、
R
1は、メチル基又はエチル基を表し、
R
2は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表し、
R
3は、メチル基又はエチル基を表し、
R
4は、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、
R
5は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
R
5’及びR
5’’は、
直鎖又は分岐鎖のいずれかのC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表すか、
又はR
5’及びR
5’’は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基を一緒に形成する、
反応物の混合物。
【請求項14】
α)式(IIb)の化合物、
【化18】
β)式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化19】
γ)触媒としての第三級アミンのSO
3付加物
を含む、反応物の混合物であって、
前記付加物の第三級アミンは、
式(V)のピリジン化合物
【化20】
[式中、R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~12-アルキル基若しくはC
5~12-シクロアルキル基のいずれかを表す]、
又は
式(X)の第三級アミン
【化21】
[式中、R
6及びR
7及びR
8は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基を表す]
のいずれかであり、
式中、
R
1は、メチル基又はエチル基を表し、
R
2は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表し、
R
3は、メチル基又はエチル基を表し、
R
4は、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、
R
5は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
R
5’及びR
5’’は、
直鎖又は分岐鎖のいずれかのC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表すか、
又はR
5’及びR
5’’は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基を一緒に形成する、
反応物の混合物。
【請求項15】
式(IV)
【化22】
のジエンケトンを製造する方法であって、以下のステップ:
a)請求項11又は12に記載の式(I’)の化合物を調製するステップ、
次いで
b)塩基又は酸、好ましくは塩基の存在下で、式(I’)の化合物を異性化して、式(IV)のジエンケトンを得るステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、不飽和ケトンの製造に関する。
【0002】
[発明の背景]
式(I)の不飽和ケトンは、重要な部類の工業化学物質であり、ビタミン類及び芳香成分の合成における中心的生成物である。特に重要。実行可能な合成経路の1つは、第三級プロパルギルカルビノール又は第三級ビニルカルビノールをそれぞれ、出発生成物として使用する。
【0003】
米国特許第3,029,287号明細書及びG.Saucy et al. Helv. Chim. Acta 1967, 50(4), 1158-1167は、強酸、特に硫酸又はリン酸又はp-トルエンスルホン酸の存在下で、第三級プロパルギルアルコールとケタール又はエノールエーテルとを縮合してアレンケトンを形成することを開示している。
【0004】
米国特許第6,380,437号明細書は、脂肪族スルホン酸又はその金属塩の存在下で、第三級プロパルギルアルコールとケタール又はアルケニルアルキルエーテルとを縮合してアレンケトンを形成することを開示している。
【0005】
米国特許第3,330,867号明細書及び国際公開第2017/131607号は、水素を用いてアレンケトンを異性化して不飽和ケトンを得ることができることを開示している。
【0006】
アレンケトンの調製における強酸の使用は、この化学物質(強酸)が取り扱いにおいて危険であり、特別な保護方法を使用し、製造工程で使用される設備について特定の及び耐食性の材料を必要とするため、不利である。
【0007】
G.Saucyet al. Helv. Chim. Acta 1967, 50, 2091-2095及びG.Saucy etal. Helv. Chim. Acta 1967, 50, 2095-2100は、第三級ビニルカルビノールとイソプロペニルエーテルとの反応のための触媒として、リン酸又は硫酸又はp-トルエンスルホン酸を使用することができることを開示している。
【0008】
独国特許第19649564号明細書は、この反応のために、多種多様な有機リン化合物を触媒として使用することができることを開示している。
【0009】
国際公開第2010/046199号は、この反応のために有力な触媒としての無機アンモニウム(NH4
+)塩を開示している。
【0010】
しかしながら、無機アンモニウム塩は、概して不利な溶解性を有し、無機アンモニウム塩は、特に1mol%未満の濃度で使用される場合、収率及び選択率を低下させることが示されている。
【0011】
[発明の概要]
したがって、本発明によって解決される問題は、強酸及び腐食条件の非存在下で、式(I)の不飽和ケトンを高収率で製造する方法を提供することである。
【0012】
驚くべきことに、請求項1に記載の方法及び請求項13及び14に記載の反応物の混合物は、この問題を解決することができることが判明した。
【0013】
第三級アミンのSO3付加物は、前記反応のための触媒として特によく適していることが判明した。
【0014】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(DLL)及びイソプロペニルメチルエーテル(IPM)からの6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オンの形成を表す。
【
図2】3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール(「LL」)及びイソプロペニルメチルエーテル(IPM)からの6,10-ジメチルウンデカ-5,9-ジエン-2-オンの形成を表す。
【
図3】3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール(「EDLL」)及びイソプロペニルメチルエーテル(IPM)からの6,10-ジメチルドデカ-4,5,9-トリエン-2-オンの形成を表す。
【
図4】MBE及びDMPからの6-メチルヘプタ-5-エン-2-オンの形成を表す。
【
図5】3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール及びブテニルメチルエーテルからの3,6,10-トリメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン(=TMUTO)及び7,11-ジメチルドデカ-5,6,10-トリエン-3-オン(DMDTO)の形成を表す。
【
図6】3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オール及びブテニルメチルエーテルからの7,11,15-トリメチルヘキサデカ-5,6-ジエン-3-オン(TMHDO)及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オン(TMPDO)の形成を表す。
【0016】
[発明の詳細な説明]
第1の態様において、本発明は、式(I)
【化1】
の不飽和ケトンを、
式(IIa)又は(IIb)の化合物と、
【化2】
式(IIIa)又は(IIIb)の化合物と
【化3】
を触媒としての第三級アミンのSO
3付加物の存在下で反応させることにより製造する方法であって、
式中、
Qは、式
【化4】
の基を表し、
R
1は、メチル基又はエチル基を表し、
R
2は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表し、
R
3は、メチル基又はエチル基を表し、
R
4は、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、
R
5は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
R
5’及びR
5’’は、
直鎖又は分岐鎖のいずれかのC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表すか、
又はR
5’及びR
5’’は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基を一緒に形成し、
前記付加物の第三級アミンは、
ピリジン
又は
式(X)の第三級アミン
【化5】
[式中、R
6及びR
7及びR
8は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基を表す]
のいずれかであり、
式中、波線は、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表し、
点線はいずれも、置換基Qが式(I)の化合物の残部に結合している結合を表す、
方法に関する。
【0017】
明確にするために、本明細書で使用されている幾つかの用語を以下のように定義する。
【0018】
本明細書において、「Cx~y-アルキル」基とは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基であり、即ち、例えば、C1~3-アルキル基は、1~3個の炭素原子を含むアルキル基である。アルキル基は、直鎖でも又は分岐鎖でもよい。例えば、-CH(CH3)-CH2-CH3は、C4-アルキル基とみなされる。
【0019】
本明細書において、複数の式の中に、記号又は基についての同じ標識が存在する場合、1つの特定の式の内容においてなされた前記基又は記号の定義が、同じ前記標識を含む他の式にも適用される。
【0020】
本明細書中、置換基、部分、又は基の内容における「互いから独立して」という用語は、同様に指定された置換基、部分、又は基が、同じ分子の中で異なる意味を有して同時に存在することができることを意味する。
【0021】
本明細書において、式中の点線はいずれも、置換基が分子の残部に結合している結合を表す。
【0022】
本明細書において、「第三級アミン」という用語は、3個の炭素原子に結合している少なくとも1個の窒素原子を有する化合物に関する。前記結合は、脂肪族結合による3個の異なる炭素原子への結合とすることができ、又は前記結合はオレフィン結合若しくは芳香族結合であってもよい。芳香族結合又はオレフィン結合の場合、3つの結合のうち2つは同じ炭素原子への結合である。したがって、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(=DBU)及びピリジンは、したがって、本発明の意味において全て第三級アミンの例である。
【0023】
本明細書の任意の式の波線はいずれも、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す。全ての分子において、炭素-炭素二重結合はE配置であることが好ましい。
【0024】
式(I)の不飽和ケトンは、2種の変形、即ち、式(I’)の化合物及び式(I’’)の化合物、即ち、
【化6】
のQが
【化7】
である、
【化8】
を包含する。
【0025】
[式(I’)の化合物]
式(I’)の化合物は、後で極めて詳細に説明される触媒としての第三級アミンのSO
3付加物(=「Cat」)の存在下で、式(IIa)の化合物と、式(IIIa)又は式(IIIb)、好ましくは式(IIIa)の化合物とを反応させることによって調製される。
【化9】
【0026】
この実施形態によれば、一般式(I)の化合物は、好ましくは、6-メチルヘプタ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9,13-テトラエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,13-トリエン-2-オン及び6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンからなる群から選択される。
【0027】
[式(I’’)の化合物]
式(I’’)の化合物は、後で極めて詳細に説明される触媒としての第三級アミンのSO
3付加物(=「Cat」)の存在下で、式(IIb)の化合物と、式(IIIa)又は式(IIIb)、好ましくは式(IIIa)の化合物とを反応させることによって調製される。
【化10】
【0028】
この実施形態によれば、一般式(I)の化合物は、好ましくは、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、6-メチル-5-オクテン-2-オン、6,10-ジメチル-5,9-ウンデカジエン-2-オン、6,10-ジメチル-5-ウンデセン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-5,9-ジエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-5,13-ジエン-2-オン及び6,10,14-トリメチル-5,9,13-ペンタデカ-トリエン-2-オンからなる群から選択され、好ましくは6-メチル-5-ヘプテン-2-オンである。
【0029】
[式(IIa)及び(IIb)の化合物]
式(IIa)及び(IIb)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0030】
R1は、メチル基又はエチル基、好ましくはメチル基を表す。
【0031】
R2は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基、好ましくはメチル基を表す。
【0032】
好ましい実施形態では、R
2は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)及び(R2-IV)
【化11】
からなる群から選択される基を表す。
【0033】
点線は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)又は(R2-IV)の置換基が、式(I)又は式(IIa)又は(IIb)の化合物の残部に結合している結合を表す。点線
【化12】
を有する二重結合はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表す。波線はいずれも、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を、互いから独立して表す。
【0034】
上記の式中、nは1、2、3又は4、特に1又は2を表す。
【0035】
好ましい実施形態のうち1つでは、R2は、式(R2-I)の基又は式(R2-II)の基のいずれかを表す。
【0036】
別の好ましい実施形態では、R2は、式(R2-III)の基又は式(R2-IV)の基のいずれかを表す。
【0037】
式(IIa)の化合物は、2-メチルブタ-3-イン-2-オール(=メチルブチノール、「MBY」)、3-メチルペンタ-1-イン-3-オール(=エチルブチノール、「EBY」)、3,5-ジメチルヘキサ-1-イン-3-オール、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)、3,7-ジメチルオクタ-1-イン-3-オール、3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール(=エチルデヒドロリナロール、「EDLL」)、3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オール、3,7,11-トリメチルドデカ-6-エン-1-イン-3-オール、3,7,11-トリメチルドデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール(=デヒドロネロリドール、「DNL」)、3,7,11-トリメチルドデカ-4,6,10-トリエン-1-イン-3-オール(=エチニルプソイドイオノール、「EPI」)、3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-イン-3-オール及び3-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-エン-4-イン-3-オールからなる群から選択されることが好ましい。
【0038】
式(IIa)の化合物は、2-メチルブタ-3-イン-2-オール(=メチルブチノール、「MBY」)、3-メチルペンタ-1-イン-3-オール(=エチルブチノール、「EBY」)、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)、3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール(=エチルデヒドロリナロール、「EDLL」)、3,7,11-トリメチルドデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール(=デヒドロネロリドール、「DNL」)及び3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0039】
式(IIa)の化合物は、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)、3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール(=エチルデヒドロリナロール、「EDLL」)及び3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールからなる群から選択されることがより一層好ましい。
【0040】
式(IIb)の化合物は、2-メチル-3-ブテン-2-オール(「MBE」)、3-メチル-4-ペンテン-3-オール(「EBE」)、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール(=リナロール、「LL」)、3,7-ジメチル-1-オクテン-3-オール(「DMOE」)及び3,7,11-トリメチル-1,6-ドデカジエン-3-オール(ネロリドール、「NL」)、特に(6E)-3,7,11-トリメチル-1,6-ドデカジエン-3-オール(=E-ネロリドール、「E-NL」)からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0041】
式(IIb)の化合物は、2-メチル-3-ブテン-2-オール(「MBE」)、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール(=リナロール、「LL」)、3,7-ジメチル-1-オクテン-3-オール(「DMOE」)及び3,7,11-トリメチル-1,6-ドデカジエン-3-オール(ネロリドール、「NL」)、特に(6E)-3,7,11-トリメチル-1,6-ドデカジエン-3-オール(=E-ネロリドール、「E-NL」)からなる群から選択されることがより一層好ましい。
【0042】
式(IIb)の化合物は、2-メチル-3-ブテン-2-オール(「MBE」)又は3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール(=リナロール、「LL」)であることがより一層好ましい。
【0043】
[式(IIIa)の化合物]
式(IIIa)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0044】
式(IIIa)において、R3は、メチル基又はエチル基を表し、R4は、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、R5は、直鎖又は分岐鎖の、C1~10-アルキル基、特にメチル基又はエチル基を表す。
【0045】
好ましくは、R3基はメチル基を表す。
【0046】
好ましくは、R4基はHを表す。
【0047】
好ましくは、R5基はメチル基を表す。
【0048】
式(IIIa)の化合物は、最も好ましくは、イソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)又はイソプロペニルエチルエーテル(「IPE」)のいずれかであり、特にイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)である。
【0049】
式(IIIa)の化合物の合成が原因で、式(IIIa)の化合物の混合物もまた、式(IIa)又は(IIb)の化合物との反応に使用されることが極めて多い。例えば、ブテニルメチルエーテルについては、メタノール及びメチルエチルケトンから調製される、2-メトキシブタ-1-エンと(E)-2-メトキシブタ-2-エンと(Z)-2-メトキシブタ-2-エンとの混合物が使用されることが多い。
【0050】
[式(IIIb)の化合物]
式(IIIb)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0051】
式(IIIb)において、R3は、メチル基又はエチル基を表し、R4は、H又はメチル基若しくはエチル基を表す。
【0052】
R5’及びR5’’は、一実施形態では、各々が、直鎖又は分岐鎖のいずれかのC1~10-アルキル基、特にメチル基又はエチル基を表す。別の実施形態では、R5’及びR5’’は、直鎖又は分岐鎖のC1~10-アルキレン基、特にエチレン基又はプロピレン基を一緒に形成する。
【0053】
好ましくは、R3基はメチル基を表す。
【0054】
好ましくは、R4基はHを表す。
【0055】
好ましい一実施形態では、R5’=R5’’であり、特にR5’=R5’’=メチル又はエチルであり、より好ましくはR5’=R5’’=CH3である。
【0056】
別の好ましい実施形態では、R5’及びR5’’は、エチレン(CH2CH2)基又はプロピレン(CH2CH2CH2若しくはCH(CH3)CH2)基を一緒に形成する。
【0057】
式(IIIb)の化合物は、最も好ましくは、2,2-ジメトキシプロパン、又は2,2-ジエトキシプロパン、又は2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、又は2,2,4-トリメチル-1,3-ジオキソラン、又は2,2-ジメチル-1,3-ジオキサンのいずれかである。
【0058】
式(IIIb)の化合物は、最も好ましくは、2,2-ジメトキシプロパン又は2,2-ジエトキシプロパンのいずれか、特に2,2-ジメトキシプロパンである。
【0059】
式(IIIb)の化合物より、式(IIIa)の化合物を使用する方が好ましい。
【0060】
[第三級アミンのSO3付加物]
式(IIa)又は(IIb)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物との反応は、触媒としての第三級アミンのSO3付加物の存在下で実行される。
【0061】
大抵は、第三級アミンの他にさらなるSO3反応性基を構造の中に何ら有していない任意の第三級アミンが、SO3との付加物を形成するための第三級アミンとして好適である。当然ながら、窒素電子の孤立電子対のSO3分子への接近可能性を立体的に妨害する分子構造を有する第三級アミンはあまり適切でない。
【0062】
第三級アミンの付加物は当業者に公知であり、T. T. Tidwell, Synthesis (Germany) , 1990, 1990(10): 857-870の中で使用されているように、第三級アミンとSO3から容易に調製することができる。
【0063】
一実施形態では、SO
3-付加物のための第三級アミンとして特に好適であるのは、式(V)のピリジン化合物であり、
【化13】
式中、R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~12-アルキル基若しくはC
5~12-シクロアルキル基のいずれかを表す。
【0064】
R30=R31=R32=R33であることが好ましく、好ましくはR30=R31=R32=R33=Hである。
【0065】
R30、R31、R32、R33及びR34の各基のうち1つがメチル基であることがさらに好ましい。
【0066】
R34がメチル基又はHを表し、好ましくはHを表すこともまた好ましい。
【0067】
式(V)の第三級アミンとして最も好ましいのは、ピリジン又はα-ピコリン若しくはβ-ピコリン若しくはγ-ピコリンである。最も好ましいのはピリジンである。
【0068】
したがって、好ましい実施形態のうちの1つでは、第三級アミンのSO
3付加物は、
【化14】
である。
【0069】
別の実施形態では、SO3-付加物のための第三級アミンとして特に好適であるのは、トリアルキルアミンである。トリアルキルアミンとして特に好適であるのは、窒素に対するアルファ位にCH2基を有するアミンであり、好ましくはトリエチルアミンである。
【0070】
したがって、別の好ましい実施形態では、第三級アミンのSO
3付加物は、
【化15】
である。
【0071】
第三級アミンとしてさらに特に好適であるのは、架橋第三級アミンであり、特に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(=DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(=DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(=DABCO)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(=キヌクリジン)及びスパルテイン、特に、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(=DABCO)又は1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(=キヌクリジン)からなる群から選択される架橋第三級アミンである。
【0072】
反応は、式(IIa)又は(IIb)の化合物:式(IIIa)又は(IIIb)の化合物のモル比が1:15~1:1の範囲である場合に実行されるのが好ましいことが判明した。
【0073】
式(IIIa)の化合物を使用する場合、前記比は、1:5~1:2の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1:3.5~1:2の範囲、最も好ましくは1:3~1:2の範囲、特に1:2.5~1:2の範囲である。
【0074】
式(IIIb)の化合物を使用する場合、前記比は、1:10~1:2の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1:8~1:3の範囲、最も好ましくは1:8~1:5の範囲である。
【0075】
さらに、触媒、即ち第三級アミンのSO3付加物の量は、式(IIa)又は(IIb)の化合物それぞれの量を基準にして、0.005~1mol%の範囲であることが好ましく、好ましくは0.01~0.6mol%の範囲であり、より好ましくは0.005~0.6mol%の範囲であり、最も好ましくは0.01~0.15mol%の範囲である。
【0076】
反応は、70~170℃の範囲の温度で行われるのが好ましい。一実施形態では、温度は、好ましくは110~160℃の範囲であり、最も好ましくは115~150℃の範囲の温度である。この温度範囲は、式(IIIa)の化合物としてのイソプロペニルメチルエーテルに特に好適である。
【0077】
別の実施形態では、温度は、好ましくは75~100℃の範囲であり、最も好ましくは80~95℃の範囲の温度である。この温度範囲は、式(IIIa)の化合物としてのブテニルメチルエーテルに特に好適である。
【0078】
反応は、好ましくは5~20barの範囲の圧力で、より好ましくは6~15barの範囲の圧力で行われる。
【0079】
一実施形態では、反応は、好ましくは5~20baraの範囲の圧力で、より好ましくは6~15baraの範囲の圧力で行われる。この圧力範囲は、式(IIIa)の化合物としてのイソプロペニルメチルエーテルに特に好適である。
【0080】
別の実施形態では、反応は、周囲圧力(1bara)で行われるのが好ましい。この圧力は、式(IIIa)の化合物としてのブテニルメチルエーテルに特に好適である。
【0081】
反応は、溶媒なしでも、又は有機溶媒の存在下でも行うことができる。好ましくは、反応は溶媒なしで行われる。
【0082】
反応が有機溶媒の不在下で行われる場合でも、出発材料である式(IIa)、又は(IIb)、又は(IIIa)、又は(IIIb)の化合物はなお、有機溶媒中に用意されてもよい。したがって、反応物の混合物の総重量を基準にして、10重量%までの量の有機溶媒、好ましくは5重量%までの量の有機溶媒、より好ましくは3重量%までの量の有機溶媒が存在してもよい。
【0083】
反応が有機溶媒中で行われる場合、極性非プロトン性有機溶媒、例えば、脂肪族ケトン、例えばアセトンが好ましい。
【0084】
上記の反応は、式(I)の化合物を、高転化率、高収率及び高選択率でもたらすことが判明した。
【0085】
特に、6-メチルヘプタ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9,13-テトラエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,13-トリエン-2-オン及び6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンからなる群から選択される式(I)の化合物を、好ましくは生成できることが判明した。
【0086】
有機溶媒を伴う又は伴わない、反応物の混合物それ自体もまた、本発明の目的である。
【0087】
したがって、本発明は、さらなる態様において、
i)式(IIa)の化合物、
【化16】
ii)式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化17】
及び
iii)触媒としての第三級アミンのSO
3付加物
を含む、反応物の混合物であって、
当該付加物の第三級アミンは、
式(V)のピリジン化合物
【化18】
[式中、R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~12-アルキル基若しくはC
5~12-シクロアルキル基のいずれかを表す]、
又は
式(X)の第三級アミン
【化19】
[式中、R
6及びR
7及びR
8は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基を表す]
のいずれかであり、
式中、
R
1は、メチル基又はエチル基を表し、
R
2は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表し、
R
3は、メチル基又はエチル基を表し、
R
4は、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、
R
5は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
R
5’及びR
5’’は、
直鎖又は分岐鎖のいずれかのC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表すか、
又はR
5’及びR
5’’は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基を一緒に形成する、
反応物の混合物に関する。
【0088】
式(IIa)の化合物及び式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、並びに触媒は、既に上で十分に説明されている。
【0089】
この反応物の混合物は、式(I’)の化合物の形成をもたらす。式(I’)の化合物を、塩基又は酸、好ましくは塩基の存在下で異性化して、式(IV)のジエンケトンを得ることができる。
【化20】
【0090】
したがって、本発明は、さらなる態様において、式(IV)
【化21】
のジエンケトンを製造する方法であって、次のステップ:
a)上で既に極めて詳細に説明されている式(I’)の化合物を調製するステップ、
次いで
b)塩基又は酸、好ましくは塩基の存在下で、式(I’)の化合物を異性化して、式(IV)のジエンケトンを得るステップ
を含む方法に関する。
【0091】
式(I’)の化合物を異性化して式(IV)の化合物を得ることは、例えば米国特許第3,330,867号明細書及び国際公開第2017/131607号から大抵は当業者に公知であり、この両方の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0092】
異性化ステップ、即ちステップb)で使用される塩基は、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物又は炭酸塩又は炭酸水素塩、好ましくは水酸化物、特にKOH又はNaOHである。
【0093】
別の好ましい実施形態では、塩基は、塩基性イオン交換樹脂、好ましくは塩基性陰イオン交換樹脂である、DOWのAmberlite(登録商標)IRA 900、Dowex(登録商標)MSA-1、Diaion(登録商標)HPA25又はPA308、及びAmberlyst(登録商標)A260H、XE-4、XE-8、XE-8新型及びXE-10、並びに同一の化学構造及び類似の物理化学的性質を有する等価な樹脂である。
【0094】
この異性化ステップにおける温度は、好ましくは30℃未満、特に-10℃~25℃の間、好ましくは0℃~10℃の範囲である。
【0095】
前記異性化ステップは、好ましくは、C1~6-アルコール中、特にメタノール中、又は水性媒体中で実行される。
【0096】
さらなる態様において、本発明は、
α)式(IIb)の化合物、
【化22】
β)式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化23】
γ)触媒としての第三級アミンのSO
3付加物
を含む、反応物の混合物であって、
当該付加物の第三級アミンは、
式(V)のピリジン化合物
【化24】
[式中、R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~12-アルキル基若しくはC
5~12-シクロアルキル基のいずれかを表す]、
又は
式(X)の第三級アミン
【化25】
[式中、R
6及びR
7及びR
8は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基を表す]
のいずれかであり、
式中、
R
1は、メチル基又はエチル基を表し、
R
2は、飽和又は不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖又は環式の、1~46個のC原子を有するヒドロカルビル基を表し、
R
3は、メチル基又はエチル基を表し、
R
4は、H又はメチル基若しくはエチル基を表し、
R
5は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
R
5’及びR
5’’は、
直鎖又は分岐鎖のいずれかのC
1~10-アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表すか、
又はR
5’及びR
5’’は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10-アルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基を一緒に形成する、
反応物の混合物にも関する。
【0097】
式(IIb)の化合物及び式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、並びに触媒は、既に上で十分に説明されている。
【0098】
この反応物の混合物は、式(I’’)の化合物の形成をもたらす。
【0099】
上記の前記各方法は、それぞれ式(I)又は(IV)の化合物を、式(IIa)又は(IIb)の化合物に対して高収率及び高選択率で製造することを可能にする。ゆえに、本発明は、当業者に公知の方法に勝る大きな利点を提供している。
【0100】
[実施例]
本発明を以下の実験によってさらに説明する。
【0101】
[実験シリーズ1]
表1に示されている量の各触媒の存在下で、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(「DLL」)を4当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、115℃の温度で100分間撹拌した。それぞれの生成物、即ち6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オンを、表1に示す収率及び選択率で得た(
図1を参照)。
【0102】
【0103】
国際公開第2017/131607号の実施例2に示されている反応により、表1の6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オンを定量的に異性化して、6,10-ジメチルウンデカ-3,5,9-トリエン-2-オンを得た。
【0104】
[実験シリーズ2]
(3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール(「LL」)の量に対して)0.01mol%の各触媒の存在下で、3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール(「LL」)を、表2に示されている数の当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、150℃の温度で16時間撹拌した。それぞれの生成物、即ち6,10-ジメチルウンデカ-5,9-ジエン-2-オンを、表2に示す収率及び選択率で得た(
図2を参照)。
【0105】
【0106】
国際公開第2017/131607号の実施例2に示されている反応により、表2の6,10-ジメチルウンデカ-5,9-ジエン-2-オンを定量的に異性化して、6,10-ジメチルウンデカ-4,9-ジエン-2-オンを得た。
【0107】
[実験シリーズ3]
(3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール(「EDLL」)の量に対して)0.1mol%のピリジンのSO
3付加物の存在下で、EDLLを、4当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、115℃の温度で100分間撹拌した。生成物、即ち6,10-ジメチルドデカ-4,5,9-トリエン-2-オンを、表3に示す収率及び選択率で得た(
図3を参照)。
【0108】
【0109】
国際公開第2017/131607号の実施例2に示されている反応により、表3の6,10-ジメチルドデカ-4,5,9-トリエン-2-オンを定量的に異性化して、6,10-ジメチルドデカ-3,5,9-トリエン-2-オンを得た。
【0110】
[実験シリーズ4]
(2-メチルブタ-3-エン-2-オール(「MBE」)の量に対して)0.005mol%の、触媒としてのピリジン・SO
3の存在下で、MBEを、8.0当量の2,2-ジメトキシプロパン(「DMP」)と混合し、150℃の温度で8時間撹拌した。生成物、即ち6-メチルヘプタ-5-エン-2-オンを、表4に示す収率及び選択率で得た(
図4を参照)。
【0111】
【0112】
[実験シリーズ5]
表5に示されている量の各触媒の存在下で、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)を、2.6当量のブテニルメチルエーテル(2-メトキシブタ-1-エン/(E)-2-メトキシブタ-2-エン/(Z)-2-メトキシブタ-2-エン=53/37/10の混合物)と混合し、80~95℃の温度で、表5に示す反応時間の間、撹拌した。それぞれの生成物、即ち7,11-ジメチルドデカ-5,6,10-トリエン-3-オン(=DMDTO)及び3,6,10-トリメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン(=TMUTO)を、表5に示す転化率、収率及び選択率で得た(
図5を参照)。
【0113】
【0114】
国際公開第2017/131607号の実施例2に示されている反応により、表5の3,6,10-トリメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、及び7,11-ジメチルドデカ-5,6,10-トリエン-3-オンを定量的に異性化して、3,6,10-トリメチルウンデカ-3,5,9-トリエン-2-オン、及び7,11-ジメチルドデカ-4,6,10-トリエン-3-オンをそれぞれ得た。
【0115】
[実験シリーズ6]
表6に示されている量の各アンモニウム触媒の存在下で、3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールを、2.6当量のブテニルメチルエーテル(2-メトキシブタ-1-エン/(E)-2-メトキシブタ-2-エン/(Z)-2-メトキシブタ-2-エン=53/37/10の混合物)と混合し、80~95℃の温度で表6に示す反応時間の間、撹拌した。それぞれの生成物、即ち7,11,15-トリメチルヘキサデカ-5,6-ジエン-3-オン(TMHDO)及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オン(TMPDO)を、表6に示す収率及び選択率で得た(
図6を参照)。
【0116】
【0117】
国際公開第2017/131607号の実施例2に示されている反応により、表6の7,11,15-トリメチルヘキサデカ-5,6-ジエン-3-オン及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンを定量的に異性化して、7,11,15-トリメチルヘキサデカ-4,6-ジエン-3-オン、及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-3,5-ジエン-2-オンをそれぞれ得た。
【外国語明細書】