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特開2022-121411積層型のIII-V族半導体ダイオード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121411
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】積層型のIII-V族半導体ダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20220812BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L29/91 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022017445
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】10 2021 000 609.7
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】517397497
【氏名又は名称】3-5 パワー エレクトロニクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】3-5 Power Electronics GmbH
【住所又は居所原語表記】Gostritzer Str. 61-63, 01217 Dresden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス コヴァルスキー
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ドゥーデク
(72)【発明者】
【氏名】リテッシュクマー ボージャニ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】GaAsを含有するか又はGaAsからなる積層型のIII-V族半導体ダイオードを提供する。
【解決手段】積層型のIII-V族半導体ダイオードは、高濃度nドープされたカソード層12と、高濃度pドープされたアノード層16と、カソード層とアノード層との間に配置されたドリフト領域14と、を備える。ドリフト領域は、低濃度nドープされたドリフト層14.1と、低濃度pドープされたドリフト層14.2と、を有する。nドープされたドリフト層は、pドープされたドリフト層とカソード層との間に配置されており、両方のドリフト層はそれぞれ、少なくとも5μmの層厚と、それぞれの層厚に沿って最大で8×1015cm-3のドーパント濃度最大値と、を有し、両方のドリフト層の相互のドーパント濃度最大値は、0.1から10の比を有し、pドープされたドリフト層の層厚に対するnドープされたドリフト層の層厚の比は、0.5から3である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaAsを含有するかまたはGaAsからなる、積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)であって、前記積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)は、
・高濃度nドープされたカソード層(12)と、
・高濃度pドープされたアノード層(16)と、
・前記カソード層(12)と前記アノード層(16)との間に配置されたドリフト領域(14)と、
を有し、
・前記ドリフト領域(14)は、低濃度nドープされたドリフト層(14.1)と、低濃度pドープされたドリフト層(14.2)と、を有し、
・前記nドープされたドリフト層(14.1)は、前記pドープされたドリフト層(14.2)と前記カソード層(12)との間に配置されている積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)において、
・両方の前記ドリフト層(14.1,14.2)は、それぞれ、少なくとも5μmの層厚(D,D)と、それぞれの該層厚(D,D)に沿って最大で8×1015cm-3のドーパント濃度最大値と、を有し、
・両方の前記ドリフト層(14.1,14.2)の相互の前記ドーパント濃度最大値は、0.1から10の比を有し、
・前記pドープされたドリフト層の前記層厚(D)に対する前記nドープされたドリフト層の前記層厚(D)の比は、0.5から3であり、
・前記アノード層(16)は、一定のドーパント濃度特性を有する第1の区分(16.1)と、前記第1の区分(16.1)と前記ドリフト領域(14)との間に配置された、前記第1の区分(16.1)へ向かう方向で段状に上昇するドーパント濃度特性を有する第2の区分(16.2)と、を有する、
積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項2】
前記nドープされたドリフト層(14.1)の前記層厚(D)は、前記pドープされたドリフト層(14.2)の前記層厚(D)よりも大きい、
請求項1記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項3】
前記nドープされたドリフト層(14.1)および/または前記pドープされたドリフト層(14.2)は、少なくとも20μmの層厚(D,D)または少なくとも40μmの層厚(D,D)を有する、
請求項1または2記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項4】
前記nドープされたドリフト層(14.1)は、前記層厚(D)に沿って、前記カソード層(12)へ向かう方向で前記ドーパント濃度最大値まで上昇するドーパント濃度特性を有し、前記pドープされたドリフト層(14.2)は、前記層厚(D)に沿って、前記アノード層(16)へ向かう方向で前記ドーパント濃度最大値まで上昇するドーパント濃度特性を有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項5】
前記上昇するドーパント濃度特性は、直線状にかつ/または凹状にかつ/または凸状に構成されている、かつ/または、1つもしくは複数の段を有する、
請求項4記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項6】
1つまたは複数または全ての前記段は、凸状のエッジまたは凹状のエッジまたは直線状のエッジを有する、
請求項5記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項7】
両方の前記ドリフト層(14.1,14.2)の前記ドーパント濃度特性は、それぞれ、別の前記ドリフト層(14.1,14.2)へ向かう方向で、9×1014cm-3未満の値、または6×1014cm-3未満の値、または3×1014cm-3未満の値、または2×1014cm-3未満の値だけ下降する、
請求項3から6までのいずれか1項記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項8】
前記カソード層(12)および/または前記アノード層(16)は、少なくとも1×1017cm-3のドーパント濃度、または少なくとも5×1018cm-3のドーパント濃度、または少なくとも8×1018cm-3のドーパント濃度を有する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項9】
前記カソード層(12)および/または前記アノード層(16)は、少なくとも2μmの層厚(D,D)、または少なくとも5μmの層厚(D,D)、または少なくとも20μmの層厚(D,D)を有する、
請求項1から8までのいずれか1項記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項10】
前記カソード層(12)は、一定のドーパント濃度特性を有する第1の区分(12.1)と、前記第1の区分(12.1)と前記ドリフト領域(14)との間に配置された、前記第1の区分(12.1)へ向かう方向で直線状にかつ/または凹状にかつ/または段状に上昇するドーパント濃度特性を有する第2の区分(12.2)と、を有する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項11】
前記第2の区分(12.2,16.2)は、少なくとも0.5μmおよび最大で10μmの層厚(DK2,DA2)、好適には少なくとも2μmおよび最大で4μmの層厚(DK2,DA2)を有する、
請求項9記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【請求項12】
スイッチング速度を向上させるために、前記pドープされたドリフト層および/または前記アノード層において等電子中心または等価電子中心が設けられている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の積層型のIII-V族半導体ダイオード(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaAsを含有するかまたはGaAsからなり、高濃度nドープされたカソード層と、高濃度pドープされたアノード層と、カソード層とアノード層との間に配置されたドリフト領域と、を備えた、積層型のIII-V族半導体ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
-n-n構造を備えた、ガリウムヒ素からなる、高電圧耐性のある半導体ダイオードが、German Ashkinazi著、“GaAs Power Devices”、ISBN 965-7094-19-4、第8頁および第9頁から公知である。
【0003】
別の積層型のIII-V族半導体ダイオードが、欧州特許第3321971号明細書および欧州特許第3321970号明細書から公知であり、半導体ダイオードは、ドリフト領域とカソードまたはアノードとの間に付加的な中間層を有する。欧州特許第3321971号明細書、独国特許出願公開第102016111844号明細書、特開平06-314801号公報および独国特許出願公開第102018000395号明細書から、別の半導体デバイスが公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような背景から、本発明の課題は、従来技術をさらに発展させた装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1記載の特徴を備えた、積層型のIII-V族半導体ダイオードによって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0006】
本発明の対象において、GaAsを含有するかまたはGaAsからなり、高濃度nドープされたカソード層と、高濃度pドープされたアノード層と、カソード層とアノード層との間に配置されたドリフト領域と、を有する、積層型のIII-V族半導体ダイオードが提供される。
【0007】
ドリフト領域は、低濃度nドープされたドリフト層と、低濃度pドープされたドリフト層と、を有し、nドープされたドリフト層は、pドープされたドリフト層とカソード層との間に配置されている。
【0008】
両方のドリフト層はそれぞれ、少なくとも5μmの層厚と、それぞれの層厚に沿って最大で8×1015cm-3のドーパント濃度最大値と、を有する。
【0009】
両方のドリフト層の相互のドーパント濃度最大値は、0.1から10の比を有する。
【0010】
pドープされたドリフト層の層厚に対するnドープされたドリフト層の層厚の比は、0.5から3である。
【0011】
当然ながら、GaAsからなるかまたはGaAsを含有する半導体ダイオードの全ての半導体層、つまり特にカソード層とアノード層とドリフト領域とは、それぞれGaAsからなるかまたはGaAsを少なくとも含有する。
【0012】
換言すれば、III-V族半導体ダイオードの各々の半導体層は、少なくとも元素GaおよびAsを有する。
【0013】
半導体層は、好ましくはエピタキシによって生成される。一改良形態では、カソード層またはアノード層は、基板層によって構成され得る。好ましくは、基板層上に別のIII-V族半導体層がエピタキシャルに成長させられ、これにより、III-V族半導体ダイオードを構成することができる。
【0014】
これとは択一的に、III-V族半導体ダイオードは、少なくとも1つの半導体ボンディング部を有する。この場合、2つのGaAs半導体ウェハまたはGaAsウェハの表面が一体化されている。
【0015】
好ましくは、それぞれのGaAs半導体層のドーピングは、エピタキシ中に供給される。好ましくは、エピタキシは、MOVPEおよび/またはLPEによって実施される。
【0016】
一改良形態では、ドーピングは、エピタキシャル成長の後に追加的に、またはこれとは択一的にエピタキシ中に供給する代わりに、イオン注入によって実施される。
【0017】
なお、半導体ダイオードは、好ましくは、別の材料からなる別の層、特に金属製の端子コンタクト層を有する。端子コンタクト層は、たとえば完全にまたは部分的に、金属、たとえば金または金属合金からなり、たとえば電子ビーム蒸着によってまたはスパッタリングによって生成される。
【0018】
カソード層およびアノード層の、少なくとも端子コンタクト層に隣接する領域は、好適には高いドーパント濃度を有し、これにより、可能な限り低抵抗のコンタクトを構成することができ、半導体ダイオードの直列抵抗または電力損失をできるだけ低く維持することができる。
【0019】
ドリフト領域は、少なくとも10μmの全幅を有することを特徴とする。好ましくは、全幅は、少なくとも20μm、または少なくとも40μm、または少なくとも60μmである。全幅は、弱pドープされた領域または層と、弱nドープされた領域または層と、に分割されている。
【0020】
両方のドリフト層の層厚の比は、nドープされたドリフト層が、pドープされたドリフト層の少なくとも2分の1の厚さであるか、またはnドープされたドリフト層が、pドープされたドリフト層の最大で3倍の厚さであるように選択される。
【0021】
両方のドリフト層のそれぞれのドーパント濃度は、それぞれ別のドリフト層に隣接する領域において可能な限り低く、場合により別のドリフト層から離れる方向でいくらか上昇する。一改良形態では、上昇部分は、1つまたは複数の段によって形成される。
【0022】
したがって、pn接合部は、ドリフト領域内に、極めて低いドーパント濃度を有する範囲において構成されている。
【0023】
広幅の、低濃度ドープされた2つの異なる層からなるドリフト領域によって、1100V超の極めて高い逆電圧、またはさらには1200V超の極めて高い逆電圧を有するダイオードが実現され、面積あたりの小さなオン抵抗および特に低い容量で製作され得る。
【0024】
一改良形態では、スイッチング速度、つまり順方向と逆方向との切換を向上させるために、pドープされたドリフト層および/またはアノード層において、等電子中心または等価電子中心が組み込まれる。この場合、等電子中心または等価電子中心は、不純物複合体である。不純物セル複合体は、エネルギ的に深い位置にあり、電荷担体の寿命を著しく低減させ、すなわち、これらの等電子中心または等価電子中心は、特に逆方向動作において電荷担体を除去する。
【0025】
一実施形態では、等電子中心は、Nおよび/またはZnOおよび/またはMnおよび/またはIII主族元素および/またはV主族元素を含有する。
【0026】
別の一改良形態では、等電子中心の濃度は、5×1011cm-3から8×1014cm-3の範囲、または5×1012cm-3から1×1014cm-3の範囲、または1×1013cm-3から8×1013cm-3の範囲にある。好ましくは、等電子中心の濃度は、ドリフト層またはアノード層のそれぞれの領域のドーパント濃度よりも、係数1000から10、または係数100から20だけ低い。
【0027】
特に、ダイオード面積1mmあたり最大で80nCの逆回復電荷量(Reverse Recovery Charge)を有するGaAsパワーダイオードが製作され得る。
【0028】
一実施形態では、nドープされたドリフト層の層厚は、pドープされたドリフト層の層厚よりも大きい。別の一実施形態では、nドープされたドリフト層および/またはpドープされたドリフト層は、少なくとも20μmの層厚または少なくとも40μmの層厚を有する。両方のドリフト層の極めて高い層厚によって、特に、ダイオードの絶縁耐力を改善することが可能になる。
【0029】
一改良形態では、nドープされたドリフト層は、層厚に沿って、カソード層へ向かう方向でドーパント濃度最大値まで上昇するドーパント濃度特性を有する。
【0030】
pドープされたドリフト層へ向かう方向における、nドープされたドリフト層のドーパント濃度の緩慢な低減により、特に、極めて低いドーパント濃度を実現することおよび制御された再現可能なpn接合部を形成することが可能になる。
【0031】
別の択一的な改良形態では、pドープされたドリフト層は、層厚に沿って、アノード層へ向かう方向でドーパント濃度最大値まで上昇するドーパント濃度特性を有する。すでに述べたように、上昇部分は、段状、つまり階段状の特性によっても形成され得る。
【0032】
上昇するドーパント濃度特性は、択一的な実施形態では、直線状にまたは凹状にまたは凸状に構成されている。凸状の上昇部分は、たとえばガウス曲線に従って延在しており、凹状の上昇部分は、たとえば指数関数に従って延在している。当然ながら、濃度特性は、常に8×1015cm-3の最大ドーピングよりも低い。
【0033】
別の一改良形態では、nドープされたドリフト層および/またはpドープされたドリフト層のドーパント濃度特性は、層厚に沿って、1つまたは複数の段を有する。1つまたは複数または全ての段は、択一的な改良形態では、凸状のエッジまたは凹状のエッジまたは直線状のエッジを有する。
【0034】
別の一実施形態では、両方のドリフト層のドーパント濃度特性はそれぞれ、別のドリフト層へ向かう方向で、3×1015cm-3未満の値、または6×1014cm-3未満の値、または3×1014cm-3未満の値、または2×1014cm-3未満の値だけ下降する。
【0035】
一改良形態では、ドーパント濃度は、nドープされたドリフト層および/またはpドープされたドリフト層の少なくとも80%の厚さに沿って、5×1013cm-3よりも大きい。
【0036】
別の一実施形態では、カソード層は、少なくとも1×1018cm-3のドーパント濃度、または少なくとも5×1018cm-3のドーパント濃度、または少なくとも8×1018cm-3のドーパント濃度を有する。
【0037】
さらに別の一実施形態では、アノード層は、少なくとも1×1017cm-3のドーパント濃度、または少なくとも5×1017cm-3のドーパント濃度、または少なくとも8×1018cm-3のドーパント濃度を有する。僅かなドーピングにより、ダイオードのスイッチオフ挙動を改善することおよび逆回復電荷量を低減させることが可能になる。
【0038】
なお、ダイオードの直列抵抗を可能な限り低く維持するためにまたは可能な限り低抵抗のコンタクトを形成するために、特に、カソード層およびアノード層の、金属製の端子コンタクトに隣接する領域において、可能な限り高いドーパント濃度が求められる。
【0039】
別の一改良形態では、カソード層および/またはアノード層は、少なくとも2μmの層厚、または少なくとも5μmの層厚、または少なくとも20μmの層厚を有する。小さな層厚により、ダイオードの直列抵抗を低く維持することが容易になる。
【0040】
さらに別の一改良形態では、カソード層および/またはアノード層は、一定のドーパント濃度特性を有する第1の区分と、第1の区分とドリフト領域との間に配置された、第1の区分へ向かう方向で直線状にかつ/または凹状にかつ/または段状に上昇するドーパント濃度特性を有する第2の区分と、を有する。好ましくは、段状のドーパント濃度領域は、1つもしくは2つもしくは3つの段を有するか、または、1つもしくは2つもしくは3つの段からなる。
【0041】
第2の層区分によって、特に、ドリフト領域の範囲における低いレベルからアノード層および/またはカソード層の第2の区分の大幅に高いレベルまでに至るドーパント濃度の移行を形成することが可能になる。
【0042】
一実施形態では、第2の層区分は、ドーピングプロファイルの特性において、少なくとも1つの段もしくは厳密に1つの段を有するか、または、少なくとも2つの段もしくは厳密に2つの段を有する。
【0043】
別の一実施形態では、唯1つの段の場合、段の上面では、ドーパント濃度が、第2の領域に隣接するドリフト層のドーパント濃度よりも、係数2だけ大きいか、または係数5だけ大きいか、または係数8だけ大きい。
【0044】
第1の区分のドーパント濃度での跳躍的な移行、つまり8×1015cm-3のドーパント濃度での上昇を、移行領域、つまり第2の区分を介した漸進的なまたは段階的な上昇によって回避することにより、特に、ダイオードのスイッチオフ挙動が大幅に改善される。
【0045】
第2の区分は、第1の実施形態では、少なくとも0.5μmおよび最大で10μmの層厚を有する。好適には、カソード層の第2の区分は、3μmから5μmの層厚を有する一方、アノード層の第2の区分は、好適には2μmから4μmの層厚を有する。
【0046】
別の一改良形態では、カソード層またはアノード層は、基板として構成されている。基板として構成されたアノード層またはカソード層の典型的な層厚は、100μmから250μmである。
【0047】
以下では、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図中、同種の部材には同一の符号を付している。図示の実施形態は、非常に概略的に示したものであり、すなわち、間隔ならびに横方向および縦方向の延在部分は、縮尺通りではなく、別記しない限り、互いに導出可能な幾何学的関係も有していない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】積層型のIII-V族半導体ダイオードの第1の実施形態を示す図である。
図2】積層型のIII-V族半導体ダイオードの第2の実施形態を示す図である。
図3】積層型のIII-V族半導体ダイオードの第3の実施形態を示す図である。
図4】別の一実施形態における積層型のIII-V族半導体ダイオードに沿ったドーパント濃度特性を示す図である。
図5】積層型のIII-V族半導体ダイオードに沿ったドーパント濃度特性の別の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1には、GaAsを有するかまたはGaAsからなる、積層型のIII-V族半導体ダイオード10の第1の実施形態の図が示されている。高濃度nドープされた基板層は、カソード層12を構成しており、カソード層12上には、全厚Dを有するドリフト領域14が配置されており、これに続いて、層厚Dを有する、高濃度pドープされたアノード層16が配置されている。
【0050】
ドリフト領域14は、層厚Dを有する、カソード層12に隣接する弱nドープされたドリフト層14.1と、層厚Dを有する、nドープされたドリフト層14.1とアノード層16との間に配置された、弱pドープされたドリフト層14.2と、に分割されている。
【0051】
これに応じて、基板によって構成されたカソード層12は、50μmから250μmのいくらか大きい層厚Dを有する。カソード層のドーパント濃度は、好適には少なくとも8×1018cm-3であり、層厚に沿って一定であるかまたは少なくとも実質的に一定である。
【0052】
別の層は、好適には、カソード層12上にエピタキシャルに生成される。ドーピングは、エピタキシ中にまたは後続のイオン注入によって生成され得る。nドープされたドリフト層14.1の層厚Dは、少なくとも5μm、好適には少なくとも40μmである。ドーパント濃度は、pドープされたドリフト層14.2へ向かう方向で、ドーパント濃度最大値から、最大で8×1015cm-3、好適には最大で2×1015cm-3だけ低減される。
【0053】
pドープされたドリフト層14.2の層厚Dは、少なくとも5μm、好適には少なくとも20μmである。好適には、pドープされたドリフト層14.2の層厚Dは、nドープされたドリフト層14.1の層厚Dの2分の1または3分の1である。pドープされたドリフト層14.2のドーパント濃度は、アノード層16へ向かう方向で、ドーパント濃度最大値を除いて、少なくとも1×1017cm-3、または少なくとも1×1018cm-3だけ増大される。
【0054】
図2には、別の一実施形態が示されている。以下では、図1との相違点のみを説明する。
【0055】
積層型のIII-V族半導体ダイオード10は、少なくとも1×1018cm-3の一定のドーパント濃度、好適には少なくとも8×1018cm-3の一定のドーパント濃度を有する第1の区分12.1と、第2の区分12.2と、を備えたカソード層12を有する。第2の区分12.2は、第1の区分12.1とドリフト領域14との間に配置されており、0.5μmから10μmの比較的小さな層厚DK2、好適には3μmから5μmの比較的小さな層厚DK2を有する。
【0056】
第2の層区分は、カソード層の高濃度ドープされた第1の区分12.1から低濃度nドープされたドリフト層14.1へのドーパント濃度の移行を形成するのに用いられる。このために、第2の区分12.2は、第1の区分12.1へ向かう方向でドーパント濃度最小値からドーパント濃度最大値まで上昇するドーパント濃度特性を有する。ドーパント濃度特性は、直線状に、または凹状に、または凸状に、または1つもしくは複数の段を備えた段状に構成されている。段状の特性では、好適には、1つまたは複数または全ての段のエッジが、凸状にまたは凹状にまたは直線状に構成されている。
【0057】
第1の実施形態では、第2の区分12.2のドーパント濃度最大値は、第1の区分12.1のドーパント濃度に対応している一方、第2の区分12.2のドーパント濃度最小値は、nドープされたドリフト領域のドーパント濃度最大値に対応している。別の一実施形態では、第1の区分12.1と第2の区分12.2との間かつ/または第2の区分12.2とドリフト領域14との間の界面に、ドーパント濃度跳躍箇所が構成されており、ドーパント濃度跳躍は、第2の区分12.2のドーパント濃度特性に基づき、第2のカソード区分12.2を有しない半導体ダイオード10の一実施形態の場合よりも小さくなる。
【0058】
図3には、さらに別の一実施形態が示されている。以下では、図2との相違点のみを説明する。
【0059】
積層型のIII-V族半導体ダイオード10は、少なくとも1×1017cm-3の一定のドーパント濃度を有する第1の区分16.1と、第1の区分16.1へ向かう方向で上昇するドーパント濃度プロファイルおよび0.5μmから10μmの層厚DA2、好適には2μmから4μmの層厚DA2を有する第2の区分16.2と、を備えたアノード層16を有する。
【0060】
カソード層12の第2の区分12.2と同様に、アノード層16の第2の区分16.2は、ドーパント濃度の移行を形成するのに用いられる。第2の区分16.2のドーパント濃度特性は、直線状に、または凹状に、または凸状に、または1つもしくは複数の段を備えた段状に構成されている。段状の特性では、好適には、1つまたは複数または全ての段のエッジが、凸状にまたは凹状にまたは直線状に構成されている。
【0061】
さらに別の、本明細書では図示しない一実施形態では、積層型のIII-V族半導体ダイオード10は、2つの区分16.1,16.2を備えた前述のアノード層16と、図1の第1の実施例に示したドリフト領域14と、を有するが、第2の区分12.2を有しない。
【0062】
図4には、さらに別の一実施形態が示されている。以下では、図1との相違点のみを説明する。)
【0063】
図4には、図1の実施例に対応する層列を備えた積層型のIII-V族半導体ダイオード10に沿った種々異なるドーパント濃度特性が示されている。nドープされたドリフト層14.1のドーパント濃度特性は、択一的な実施形態では、カソード層12へ向かう方向で凸状にまたは凹状にまたは直線状に上昇するように延在している。
【0064】
pドープされたドリフト層14.2のドーパント濃度特性は、択一的な実施形態では、アノード層16へ向かう方向で一定にまたは上昇するように延在しており、上昇部分は、段状にまたは凸状にまたは直線状にまたは凹状に構成されている。
【0065】
nドープされたドリフト層14.1および/またはpドープされたドリフト層14.2の凸状の上昇部分は、第1の実施形態ではガウス分布状に構成されている。
【0066】
これとは択一的に、nドープされたドリフト層14.1および/またはpドープされたドリフト層14.2の凹状の上昇部分は、一実施形態では、指数曲線に従って延在している。
【0067】
図5には、さらに別の一実施形態が示されている。以下では、図4との相違点のみを説明する。
【0068】
図5には、積層型のIII-V族半導体ダイオード10に沿った種々異なるドーパント濃度特性が例示的に示されている。
【0069】
ドーパント濃度特性は、カソード層12の第1の区分12.1に関するn型ドーパントの、一定の高ドーパント濃度で開始し、カソード層の第2の区分12.2に関するドーパント濃度下降部分がこれに続いており、この下降部分は凸状に構成されており、第1の区分12.1のドーパント濃度レベルでまたは大幅に低いレベルで開始する。
【0070】
これに続いて、nドープされたドリフト層14.1に関するドーパント濃度は、さらに下降する。この減少部分は、より緩慢に、段を伴ってまたは段を伴わずに生ぜしめられる。
【0071】
nドープされたドリフト層14.1とpドープされたドリフト層14.2との間で、ドーパントの交替が生じ、pドープされたドリフト層14.2は、図示された実施例では、一定のまたは直線状に上昇するまたは段状のp型ドーパント濃度を有する。
【0072】
アノード層16の、ドリフト領域に隣接する第2の区分16.2では、p型ドーパントのドーパント濃度は、矩形に構成された複数の段を介して階段状に上昇する。アノード層16の、隣接する第1の区分16.1は、少なくとも1×1017cm-3の一定のドーパント濃度レベルを有する。
【0073】
これに加えて、アノード層16は、第1の区分16.1に続く第3の区分16.3を有し、したがって、第1の区分16.1は、第2の区分16.2と第3の区分16.3との間に配置されている。第3の区分16.3は、第1の区分16.1よりも高いドーパント濃度、好適には少なくとも5×1018cm-3の一定のドーパント濃度、または少なくとも1×1019cm-3の一定のドーパント濃度を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】