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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121413
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】固定子アセンブリ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20220812BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
H02K3/28 J
H02K3/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022017659
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】202110172185.4
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】カイフゥー・ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】クンシィン・スゥン
(72)【発明者】
【氏名】リャンリアン・ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】チュンシィア・ツァィ
(72)【発明者】
【氏名】シュアン・ヅォウ
(72)【発明者】
【氏名】チュンシゥアン・ファン
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA01
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC04
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD06
5H603CD22
5H603CD28
5H603CE02
5H603CE05
(57)【要約】
【課題】本発明は、固定子アセンブリ及びモータを提供する。
【解決手段】固定子アセンブリは、固定子鉄心及び多分岐路方形導体巻線を含み、固定子鉄心の内周には、固定子スロットが偶数個設けられており、各固定子スロットが、方形導体を収容する複数の層に分けられており、多分岐路方形導体巻線は、固定子スロット内に設けられ、B個の並列分岐路を含み、Bが4の整数倍であり、固定子アセンブリの毎極毎相スロット数Qが奇数であり、QとBは、(Q+1)*2/B及び(Q-1)*2/Bの両方が整数であるという関係を満たし、本発明の固定子アセンブリにおいて、特殊な巻線接続設計により、各本の並列分岐路間に磁界の位相差がなくなり、しかも、各本の並列分岐路が固定子スロット内の各々の層を均等に通り、これにより、並列分岐路間の循環電流の発生が根本的に抑制されるとともに、高調波が抑制され、モータの効率が向上する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子アセンブリであって、固定子鉄心及び多分岐路方形導体巻線を含み、前記固定子鉄心の内周には、固定子スロットが偶数個設けられており、各前記固定子スロットが、方形導体を収容する複数の層に分けられており、
前記多分岐路方形導体巻線は、前記固定子スロット内に設けられ、B個の並列分岐路を含み、Bが4の整数倍であり、
前記固定子アセンブリの毎極毎相スロット数Qが奇数であり、QとBは、(Q+1)*2/B及び(Q-1)*2/Bの両方が整数であるという関係を満たし、各前記並列分岐路が固定子スロット内の各々の層を均等に通り、これにより、各前記並列分岐路間に磁界の位相差がなくなる、ことを特徴とする固定子アセンブリ。
【請求項2】
前記固定子鉄心が前記固定子スロットの個数に応じて2つの領域に平均に分けられており、各前記領域内において、前記固定子スロット内における各前記並列分岐路の配置方式が異なる、ことを特徴とする請求項1に記載の固定子アセンブリ。
【請求項3】
前記固定子スロットは、時計回り又は反時計回りにそれぞれ1からSまで番号が付けられ、そのうち、1番目からS/2番目までのスロットが第1領域として定義され、S/2+1番目からS番目までのスロットが第2領域として定義され、
各前記並列分岐路には順番に番号が付けられ、それぞれ奇数番号及び偶数番号とされ、
前記固定子スロット内に各前記並列分岐路を配置する場合、奇数番号の前記並列分岐路は、前記第1領域における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q+1)*2/B回現れ、前記第2領域における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q-1)*2/B回現れ、偶数番号の前記並列分岐路は、前記第1領域における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q-1)*2/B回現れ、前記第2領域における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q+1)*2/B回現れる、ことを特徴とする請求項2に記載の固定子アセンブリ。
【請求項4】
前記並列分岐路は、第1型方形導体コイルが接続されて構成されるか、又は、第1型方形導体コイルと第2型方形導体コイルとが接続されて構成され、前記第1型方形導体コイルが、スロット内部分、渡り線部分及び溶接部分を含み、前記スロット内部分が、第1直線セグメント及び第2直線セグメントを含み、前記第2型方形導体コイルが、スロット内部分、引出線端子部分及び溶接部分を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の固定子アセンブリ。
【請求項5】
各前記第1型方形導体コイル及び各前記第2型方形導体コイルの溶接部分が何れも同じ湾曲構造を有するか、又は、
各前記第1型方形導体コイルの渡り線部分が何れも同じ湾曲構造を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の固定子アセンブリ。
【請求項6】
前記固定子アセンブリの引出線が、前記渡り線部分の所在する端に位置し、各前記並列分岐路が、複数の前記第1型方形導体コイル及び2つの前記第2型方形導体コイルを含むか、又は、
前記固定子アセンブリの引出線が、前記溶接部分の所在する端に位置し、各前記並列分岐路が、複数の前記第1型方形導体コイルのみを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の固定子アセンブリ。
【請求項7】
各前記並列分岐路は、先頭部が相互に接続され、末尾部が相互に接続されて、それぞれUVW三相巻線を形成し、前記三相巻線がスター接続法又はデルタ接続法で接続される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の固定子アセンブリ。
【請求項8】
前記三相巻線のうち、U相巻線が後となる並列分岐路は、第1並列分岐路を元にして時計回り又は反時計回りにいくつかの位置決めスロットだけ回転させることによって得られるものであり、且つV相巻線及びW相巻線は、U相巻線をそれぞれ時計回り又は反時計回りに同数の複数の位置決めスロットだけ回転させることによって得られるものである、ことを特徴とする請求項7に記載の固定子アセンブリ。
【請求項9】
モータであって、請求項1~8のいずれか一項に記載の固定子アセンブリ、及び1つの回転子を含み、前記回転子が前記固定子アセンブリの内部に同軸に設けられている、ことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの技術分野に関し、特に、固定子アセンブリ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
方形導体モータには、固定子スロットの占積率が高く、放熱接触面積が大きい等の利点があり、高電力密度モータの重要な開発方向の1つになりつつある。しかしながら、方形導体モータの各スロット内の導体数が比較的少ないため、これらの導体は、それぞれ固定子スロット内の異なる位置を占め、その所在位置の磁気回路特性が異なる。方形導体モータの巻線の設計プロセスでは、何らかの特定の極-スロットコンビネーションの構造の場合、各分岐路の磁気回路構造が完全に一致するような多分岐路の技術案を設計することは困難である。このことから、各分岐路間に磁界の位相差が生じ、ひいては、分岐路間に循環電流が発生し、高調波が現れ、モータの効率及びノイズ等の性能が影響されてしまう。
【0003】
従来の方形導体モータの技術案では、通常、少ない並列分岐路数、例えば2つの並列分岐路、又は1つの直列分岐路が選択されることにより、分岐路間に循環電流が存在しない構造を比較的に容易に設計でき、製造プロセスも複雑ではない。しかし、モータの性能に対する人々の要求が継続的に高まっているため、モータにおいて、より多くの並列分岐路数を使用する必要がある場合は、循環電流のない巻線構造を設計することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題について、本発明は、上記問題を解消し、又は、少なくとも部分的に解決するために、固定子アセンブリ及びモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明には、以下の技術案が用いられている。
【0006】
本発明の1つの局面では、固定子アセンブリが開示されており、前記固定子アセンブリが、固定子鉄心及び多分岐路方形導体巻線を含み、前記固定子鉄心の内周には、固定子スロットが偶数個設けられており、各前記固定子スロットが、方形導体を収容する複数の層に分けられており、
前記多分岐路方形導体巻線は、前記固定子スロット内に設けられ、B個の並列分岐路を含み、Bが4の整数倍であり、
前記固定子アセンブリの毎極毎相スロット数Qが奇数であり、QとBは、(Q+1)*2/B及び(Q-1)*2/Bの両方が整数であるという関係を満たし、各前記並列分岐路が固定子スロット内の各々の層を均等に通り、これにより、各前記並列分岐路間に磁界の位相差がなくなる。
【0007】
さらに、前記固定子鉄心が前記固定子スロットの個数に応じて2つの領域に平均に分けられており、各前記領域内において、前記固定子スロット内における各前記並列分岐路の配置方式が異なる。
【0008】
さらに、前記固定子スロットは、時計回り又は反時計回りにそれぞれ1からSまで番号が付けられ、そのうち、1番目からS/2番目までのスロットが第1領域として定義され、S/2+1番目からS番目までのスロットが第2領域として定義され、
各前記並列分岐路には順番に番号が付けられ、それぞれ奇数番号及び偶数番号とされ、
前記固定子スロット内に各前記並列分岐路を配置する場合、奇数番号の前記並列分岐路は、前記第1領域における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q+1)*2/B回現れ、前記第2領域における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q-1)*2/B回現れ、偶数番号の前記並列分岐路は、前記第1領域における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q-1)*2/B回現れ、前記第2領域における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q+1)*2/B回現れる。
【0009】
さらに、前記並列分岐路は、第1型方形導体コイルが接続されて構成されるか、又は、第1型方形導体コイルと第2型方形導体コイルとが接続されて構成され、前記第1型方形導体コイルが、スロット内部分、渡り線部分及び溶接部分を含み、前記スロット内部分が、第1直線セグメント及び第2直線セグメントを含み、前記第2型方形導体コイルが、スロット内部分、引出線端子部分及び溶接部分を含む。
【0010】
さらに、各前記第1型方形導体コイル及び各前記第2型方形導体コイルの溶接部分が何れも同じ湾曲構造を有するか、又は、
各前記第1型方形導体コイルの渡り線部分が何れも同じ湾曲構造を有する。
【0011】
さらに、前記固定子アセンブリの引出線が、前記渡り線部分の所在する端に位置し、各前記並列分岐路が、複数の前記第1型方形導体コイル及び2つの前記第2型方形導体コイルを含むか、又は、
前記固定子アセンブリの引出線が、前記溶接部分の所在する端に位置し、各前記並列分岐路が、複数の前記第1型方形導体コイルのみを含む。
【0012】
さらに、各前記並列分岐路は、先頭部が相互に接続され、末尾部が相互に接続されて、それぞれUVW三相巻線を形成し、前記三相巻線がスター接続法又はデルタ接続法で接続される。
【0013】
さらに、前記三相巻線のうち、U相巻線が後となる並列分岐路は、第1並列分岐路を元にして時計回り又は反時計回りにいくつかの位置決めスロットだけ回転させることによって得られるものであり、且つV相巻線及びW相巻線は、U相巻線をそれぞれ時計回り又は反時計回りに同数の複数の位置決めスロットだけ回転させることによって得られるものである。
【0014】
本発明のもう1つの局面では、モータが開示されており、前記モータが、上記いずれかの固定子アセンブリ、及び1つの回転子を含み、前記回転子が前記固定子アセンブリの内部に同軸に設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の利点及び有益な効果は、下記の通りである。
【0016】
本発明の固定子アセンブリにおいて、各本の並列分岐路間に磁界の位相差がなく、各本の並列分岐路が固定子スロット内の各々の層を均等に通り、その結果、並列分岐路間の循環電流の発生が根本的に抑制されるとともに、高調波が抑制され、モータの効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより、様々な他の利点及びメリットが当業者にとって明らかになる。図面は、好ましい実施形態を例示するためのものだけであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。また、図面全体において、同じ部品には同じ参照符号が付されている。
【0018】
図1】本発明の一実施例における固定子アセンブリの径方向断面図である。
図2】本発明の一実施例における第1型方形導体コイルの構造図である。
図3】本発明の一実施例における第2型方形導体コイルの構造図である。
図4】本発明の一実施例におけるスロット内のU相方形導体の各並列分岐路の配置模式図である。
図5】本発明の一実施例におけるU相第1並列分岐路の巻線の結線模式図である。
図6】本発明の一実施例におけるU相第1並列分岐路の巻線の結線模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的、技術案及び利点が更に明白になるように、以下、本発明の具体的な実施例及び対応する図面と併せて、本発明の技術案を明確かつ完全に説明する。明らかなことに、記載された実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて創造的な努力をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0020】
固定子の方形導体巻線を設計する場合、循環電流のない巻線構造を得るには、各分岐路について、各々の磁極対での各々の層の位置にQ*2/B本の導体が現れるようにする必要がある。例えば、8極、72スロット、4分岐路のモータの場合、その極数P=8、固定子スロット数S=72、毎極毎相スロット数Q=72/8/3=3、Q*2/B=1.5であるため、この数値は必ずしも整数ではないことが分かるが、方形導体は整数の数で現れなければならない。従って、このタイプのモータについて、現在、循環電流のない方形導体巻線に係る完璧な設計がない。
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の各実施例による技術案を詳しく説明する。
【0022】
本発明には、まず、固定子アセンブリが開示されている。図1に示すように、固定子アセンブリが、固定子鉄心1及び多分岐路方形導体巻線3を含み、固定子鉄心1の内周には、軸方向に貫通する固定子スロットが偶数個均等に設けられており、固定子スロットが径方向内側に向いて開口し、固定子鉄心スロットの一端が挿入側で、他端が接続側であり、方形導体を固定子スロット内に積み重ね易くするために、各固定子スロットが、方形導体を収容する複数の層に分けられ、好ましくは、各固定子スロットが6層又は8層に分けられる。
【0023】
多分岐路方形導体巻線3は、固定子スロット内に設けられ、B個の並列分岐路を含み、Bが4の整数倍であり、例えば、4つの並列分岐路又は8つの並列分岐路である。
【0024】
固定子アセンブリの毎極毎相スロット数Qが奇数であり、QとBは、(Q+1)*2/B及び(Q-1)*2/Bの両方が整数であるという関係を満たすことで、各分岐路については、各々の磁極対での各々の層の位置に整数本の方形導体が現れ、各並列分岐路が固定子スロット内の各々の層を均等に通り、これにより、各並列分岐路間に磁界の位相差がなくなる。
【0025】
以上をまとめて、本実施形態の固定子アセンブリにおいて、各本の並列分岐路間に磁界の位相差がなく、しかも、各本の並列分岐路が固定子スロット内の各々の層を均等に通り、その結果、並列分岐路間の循環電流の発生が根本的に抑制されるとともに、高調波が抑制され、モータの効率が向上する。
【0026】
1つの好ましい実施形態において、図1に示すように、固定子鉄心1が固定子スロットの個数に応じて2つの領域に平均に分けられており、各領域内において、固定子スロット内における各並列分岐路の配置方式が異なり、その結果、各領域固定子スロット内の巻線が相互に接続された場合、各本の並列分岐路間に磁界の位相差がなく、さらに、並列分岐路間に循環電流が発生しない。
【0027】
具体的に、固定子スロットは、時計回り又は反時計回りにそれぞれ1からSまで番号が付けられ、そのうち、1番目からS/2番目までのスロットが第1領域1-1として定義され、S/2+1番目からS番目までのスロットが第2領域1-2として定義され、例えば、固定子スロットの数が72個の場合、時計回り又は反時計回りに固定子スロットに番号を付けると、番号はそれぞれ1から72となり、1番目から36番目までの固定子スロットが第1領域1-1として定義され、37番目から72番目までの固定子スロットが第2領域1-2として定義される。
【0028】
各並列分岐路には順番に番号が付けられ、それぞれ奇数番号及び偶数番号とされる。
【0029】
固定子スロット内に各並列分岐路を配置する場合、奇数番号の並列分岐路は、第1領域1-1における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q+1)*2/B回現れ、第2領域1-2における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q-1)*2/B回現れ、偶数番号の並列分岐路は、第1領域1-1における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q-1)*2/B回現れ、第2領域1-2における各々の磁極対での各々の層の位置に(Q+1)*2/B回現れる。このような配置により、2つの領域における並列分岐路の配置方式が異なり、さらに、各本の並列分岐路間に磁界の位相差がなくなり、並列分岐路間の循環電流の発生が抑制される。
【0030】
一実施形態において、図2図3に示すように、並列分岐路は、第1型方形導体コイル5が接続されて構成されるか、又は、第1型方形導体コイル5と第2型方形導体コイル6とが接続されて構成されており、方形導体コイルが2つの直線セグメントを含み、2つの直線セグメントがそれぞれ2つの異なる固定子スロットの隣接する2つの層に位置する場合、方形導体コイルが第1型方形導体コイル5となり、方形導体コイルが1つの直線セグメントのみを含む場合、方形導体コイルが第2型方形導体コイル6となる。第1型方形導体コイル5が、スロット内部分5-1、渡り線部分5-2、及び溶接部分5-3を含み、スロット内部分5-1が、第1直線セグメント及び第2直線セグメントを含み、第2型方形導体コイル6が、スロット内部分6-1、引出線端子部分6-2、及び溶接部分6-3を含む。
【0031】
そのうち、スロット内部分5-1が固定子スロット内に位置し、渡り線部分5-2は、同一の第1型方形導体コイル5のスロット内部分5-1の2つの直線セグメントを接続し合う役割を果たすものであり、溶接部分5-3は、2つの異なる方形導体コイルを溶接の形で接続する役割を果たすものであり、引出線端子部分6-2は、引出線端子として、第2型方形導体コイル6のスロット内部分6-1の直線セグメントと引出線とを接続し合う役割を果たすものである。
【0032】
1つの好ましい実施例において、各第1型方形導体コイル5及び各第2型方形導体コイル6の溶接部分5-3が同じ湾曲構造を有し、その結果、固定子スロットに挿入された後の方形導体コイルの端部の整形難度が大幅に低減され、固定子アセンブリの組立及び加工が容易になる。
【0033】
一実施例において、各第1型方形導体コイル5の渡り線部分5-2が同じ湾曲構造を有し、即ち、線型が1種類しか存在せず、その結果、金型の製造がより簡単になる。
【0034】
一実施形態において、固定子アセンブリの引出線が渡り線部分5-2の所在する端に位置し、各並列分岐路が、複数の第1型方形導体コイル5及び2つの第2型方形導体コイル6を含み、具体的に、各並列分岐路が、S*P/B/3/2-1個の第1型方形導体コイル5及び2つの第2型方形導体コイル6を含む。
【0035】
一実施形態において、固定子アセンブリの引出線が溶接部分5-3の所在する端に位置し、各並列分岐路が複数の第1型方形導体コイル5のみを含み、具体的に、各並列分岐路が、第2型方形導体コイル6を含まず、S*P/B/3/2個の第1型方形導体コイル5のみを含む。
【0036】
そのうち、Sが固定子スロット数、Pが極数、Bが並列分岐路数である。
【0037】
一実施形態において、各並列分岐路は、先頭部が相互に接続され、末尾部が相互に接続されて、それぞれUVW三相巻線を形成し、三相巻線がスター接続法又はデルタ接続法で接続される。そのうち、スター接続法とは、モータ巻線の三相の終端が互いに接続され、三相の始端が電源端であり、コントローラに接続されることを指し、デルタ接続法とは、三相巻線の始端と終端が互いに接続されて、3つの端点が電源端であり、コントローラに接続されることを指す。
【0038】
一実施形態において、三相巻線のうち、U相巻線が後となる並列分岐路は、第1並列分岐路を元にして時計回り又は反時計回りにいくつかの位置決めスロットだけ回転させることによって得られるものであり、且つV相巻線及びW相巻線は、U相巻線をそれぞれ時計回り又は反時計回りに同数の複数の位置決めスロットだけ回転させることによって得られるものである。
【0039】
本発明には、上記実施形態のいずれかの固定子アセンブリ、及び固定子アセンブリの内部に同軸に設けられた1つの回転子を含むモータがさらに開示されている。
【0040】
本実施形態におけるモータには、異なる分岐路間の循環電流が存在せず、エネルギーの変換効率が高い。
【0041】
上記実施形態を詳しく説明するために、特に、以下の2つの具体的な実施例を挙げる。
【実施例0042】
本実施例1には、上記固定子アセンブリを用いたモータが開示されている。図1に示すように、その固定子鉄心1には、それぞれ2-1、2-2……2-72と番号付けられた72個の固定子スロットがあり、各スロットのいずれにも8層の多分岐路方形導体巻線3が設けられており、回転子に最も近い層が第1層と定義され、以下同様に、固定子スロットの内部に最も近い層が第8層と定義される。
【0043】
多分岐路方形導体巻線3がスター接続法又はデルタ接続法で接続され、モータのU相巻線3-1、V相巻線3-2、W相巻線3-3はいずれも4本の並列分岐路を含む。そのうち、U相巻線3-1の並列分岐路において、U相の1番目の分岐路4-1、U相の2番目の分岐路4-2、U相の3番目の分岐路4-3及びU相の4番目の分岐路4-4は、それぞれ23個の第1型方形導体コイル5、2つの第2型方形導体コイル6、及び引出線が接続されて構成されており、V相巻線3-2及びW相巻線3-3の構成がU相巻線3-1の構成と同じであり、即ち、多分岐路方形導体巻線3は、合計で、276個の第1型方形導体コイル5、24個の第2型方形導体コイル6及びいくつかの引出線から構成されている。
【0044】
そのうち、図2に示すように、各第1型方形導体コイル5はそれぞれ、スロット内部分5-1、渡り線部分5-2及び溶接部分5-3となる3つの部分から構成されている。そのスロット内部分5-1は、2つの異なるスロット内の隣接する2つの層にそれぞれ位置する第1直線セグメント5-1-1及び第2直線セグメント5-1-2を含む。その渡り線部分5-2は、第1直線セグメント5-1-1及び第2直線セグメント5-1-2を接続し合う役割を果たすものである。その溶接部分5-3は、2つの異なる方形導体コイルを溶接の形で接続するためのものである。また、図3に示すように、各第2型方形導体コイル6は、同様に、それぞれ、スロット内部分6-1、引出線端子部分6-2及び溶接部分6-3となる3つの部分から構成されている。そのスロット内部分6-1は、1つの直線セグメントのみを含む。その引出線端子部分6-2は、引出線端子として、そのスロット内部分6-1と引出線とを接続し合う役割を果たすものである。その溶接部分6-3は、2つの異なる方形導体コイルを溶接の形で接続するためのものである。
【0045】
具体的に、この実施例1において、多分岐路方形導体巻線3の循環電流なしの配置構造としては、図1に示すように、まず、モータの固定子スロットを時計回りに1から72に番号付けて、そのうちの1番目から36番目までのスロットの全体が第1領域1-1として定義され、37番目から72番目までのスロットの全体が第2領域1-2として定義され、また、第1領域1-1と第2領域1-2とにおける多分岐路方形導体巻線3の配置方式が異なる。図4に示すように、第1領域1-1において、そのU相の1番目の分岐路4-1における方形導体コイル5又は6のスロット内部分5-1又は6-1は、スロット2-1、スロット2-3、スロット2-19、スロット2-21の第1層、スロット2-10、スロット2-12、スロット2-28、スロット2-30の第2層、スロット2-2、スロット2-20の第3層、スロット2-11、スロット2-29の第4層、スロット2-2、スロット2-4、スロット2-20、スロット2-22の第5層、スロット2-11、スロット2-13、スロット2-29、スロット2-31の第6層、スロット2-3、スロット2-21の第7層、及び、スロット2-12、スロット2-30の第8層に置かれる。一方で、第2領域1-2において、そのU相の1番目の分岐路4-1における方形導体コイル5又は6のスロット内部分5-1又は6-1は、スロット2-38、スロット2-56の第1層、スロット2-47、スロット2-65の第2層、スロット2-37、スロット2-39、スロット2-55、スロット2-57の第3層、スロット2-46、スロット2-48、スロット2-64、スロット2-66の第4層、スロット2-39、スロット2-57の第5層、スロット2-48、スロット2-66の第6層、スロット2-38、スロット2-40、スロット2-56、スロット2-58の第7層、及び、スロット2-47、スロット2-49、スロット2-65、スロット2-67の第8層に置かれる。図5には、そのU相の1番目の分岐路4-1の巻線の結線模式図が示されており、その引出線が渡り線部分5-2又は6-2の所在する端に位置する。U相の2番目の分岐路4-2、U相の3番目の分岐路4-3及びU相の4番目の分岐路4-4の配置構造は、以下のように、一定のスロット数だけ回転させることによって得られる。
【0046】
そのU相の2番目の分岐路4-2における方形導体コイル5又は6のスロット内部分5-1又は6-1の位置は、U相の1番目の分岐路4-1を元にして、時計回りに36個のスロットだけ回転させることによって得られる。図4に示すように、第1領域1-1において、その方形導体コイル5又は6のスロット内部分5-1又は6-1は、スロット2-2、スロット2-20の第1層、スロット2-11、スロット2-29の第2層、スロット2-1、スロット2-3、スロット2-19、スロット2-21の第3層、スロット2-10、スロット2-12、スロット2-28、スロット2-30の第4層、スロット2-3、スロット2-21の第5層、スロット2-12、スロット2-30の第6層、スロット2-2、スロット2-4、スロット2-20、スロット2-22の第7層、及び、スロット2-11、スロット2-13、スロット2-29、スロット2-31の第8層に置かれる。一方で、第2領域1-2において、その方形導体コイル5又は6のスロット内部分5-1又は6-1は、スロット2-37、スロット2-39、スロット2-55、スロット2-57の第1層、スロット2-46、スロット2-48、スロット2-64、スロット2-66の第2層、スロット2-38、スロット2-56の第3層、スロット2-47、スロット2-65の第4層、スロット2-38、スロット2-40、スロット2-56、スロット2-58の第5層、スロット2-47、スロット2-49、スロット2-65、スロット2-67の第6層、スロット2-39、スロット2-57の第7層、及び、スロット2-48、スロット2-66の第8層に置かれる。
【0047】
そのU相の3番目の分岐路4-3における方形導体コイル5又は6のスロット内部分5-1又は6-1の位置は、U相の1番目の分岐路4-1を元にして、反時計回りに9つのスロットだけ回転させることによって得られる。そのため、そのU相の3番目の分岐路4-3における方形導体コイル5又は6のスロット内部分5-1又は6-1は、スロット2-64、スロット2-66、スロット2-10、スロット2-12、スロット2-29、スロット2-47の第1層、スロット2-1、スロット2-3、スロット2-19、スロット2-21、スロット2-38、スロット2-56の第2層、スロット2-65、スロット2-11、スロット2-28、スロット2-30、スロット2-46、スロット2-48の第3層、スロット2-2、スロット2-20、スロット2-37、スロット2-39、スロット2-55、スロット2-57の第4層、スロット2-65、スロット2-67、スロット2-11、スロット2-13、スロット2-30、スロット2-48の第5層、スロット2-2、スロット2-4、スロット2-20、スロット2-22、スロット2-39、スロット2-57の第6層、スロット2-66、スロット2-12、スロット2-29、スロット2-31、スロット2-47、スロット2-49の第7層、及び、スロット2-3、スロット2-21、スロット2-38、スロット2-40、スロット2-56、スロット2-58の第8層に置かれる。
【0048】
そのU相の4番目の分岐路4-4における方形導体コイル5又は6のスロット内部分5-1又は6-1の位置は、U相の2番目の分岐路4-2を元にして、反時計回りに9つのスロットだけ回転させることによって得られる。そのU相の4番目の分岐路4-4における方形導体コイル5又は6のスロット内部分5-1又は6-1は、スロット2-65、スロット2-11、スロット2-28、スロット2-30、スロット2-46、スロット2-48の第1層、スロット2-2、スロット2-20、スロット2-37、スロット2-39、スロット2-55、スロット2-57の第2層、スロット2-64、スロット2-66、スロット2-10、スロット2-12、スロット2-29、スロット2-47の第3層、スロット2-1、スロット2-3、スロット2-19、スロット2-21、スロット2-38、スロット2-56の第4層、スロット2-66、スロット2-12、スロット2-29、スロット2-31、スロット2-47、スロット2-49の第5層、スロット2-3、スロット2-21、スロット2-38、スロット2-40、スロット2-56、スロット2-58の第6層、スロット2-65、スロット2-67、スロット2-11、スロット2-13、スロット2-30、スロット2-48の第7層、及び、スロット2-2、スロット2-4、スロット2-20、スロット2-22、スロット2-39、スロット2-57の第8層に置かれる。
【0049】
図4に示す巻線スロット内部分5-1又は6-1の構造を用いれば、各固定子スロット内において、U相巻線3-1の各分岐路4-1、4-2、4-3、4-4の導体数が何れも同じとされることが可能になる。例えば、スロット2-1内において、U相の1番目の分岐路4-1が1本、U相の2番目の分岐路4-2が1本、U相の3番目の分岐路4-3が1本、U相の4番目の分岐路4-4が1本ある。また、例えば、スロット2-2内において、U相の1番目の分岐路4-1が2本、U相の2番目の分岐路4-2が2本、U相の3番目の分岐路4-3が2本、U相の4番目の分岐路4-4が2本ある。また、全72個のスロットにおける各々の層では、U相巻線の各分岐路4-1、4-2、4-3、4-4の導体数も同じである。例えば、第1層において、U相の1番目の分岐路4-1が6本、U相の2番目の分岐路4-2が6本、U相の3番目の分岐路4-3が6本、U相の4番目の分岐路4-4が6本ある。このような完全に対称的な巻線構造により、異なる分岐路間で磁場の位相差によって引き起こされる循環電流を解消し、モータの効率及びノイズ品質を効果的に向上させることができる。
【0050】
U相巻線3-1の各分岐路4-1、4-2、4-3、4-4に対して、それらの先頭部同士を接続し、末尾同士を接続すると、U相巻線3-1になる。また、V相巻線3-2について、その配置構造は、U相巻線3-1を時計回りに6個のスロットだけ回転させることによって得られるものであり、W相巻線3-3について、その配置構造は、U相巻線3-1を反時計回りに6個のスロットだけ回転させることによって得られるものである。その詳細については、ここで具体的に説明しない。三相巻線がスター接続法又はデルタ接続法で接続されて、最終的に当該モータの方形導体巻線3の完全なセットを形成する。当該構造の利点としては、そのすべての方形導体コイル5又は6の溶接部分5-3又は6-3の導体が、完全に一致している湾曲構造を有し、固定子鉄心に挿入された後の方形導体コイルの端部の整形難度を低減可能であることにある。
【実施例0051】
本実施例2には、上記固定子アセンブリを用いたモータが開示されている。図1図2図4に示すように、その各分岐路コイルのスロット内部分5-1の配置位置が実施例1と全く同じである。
【0052】
本実施例2では、U相巻線3-1を例として、各本の並列分岐路4-1、4-2、4-3、4-4は、それぞれ24個の第1型方形導体コイル5及び引出線が接続されて構成され、第2型方形導体コイル6が不要となり、この点で実施例1と異なる。V相巻線3-2及びW相巻線3-3の構成はU相巻線3-1と同じである。そのため、多分岐路方形導体巻線3は、合計で288個の第1型方形導体コイル5及びいくつかの引出線から構成される。
【0053】
そのうち、図2に示すように、各第1型方形導体コイル5はそれぞれ、スロット内部分5-1、渡り線部分5-2及び溶接部分5-3となる3つの部分から構成されている。そのスロット内部分5-1は、9つのスロットをスパンとした2つのスロット内の隣接する2つの層にそれぞれに位置する第1直線セグメント5-1-1及び第2直線セグメント5-1-2を含む。その渡り線部分5-2は、第1直線セグメント5-1-1と第2直線セグメント5-1-2を接続し合う役割を果たすものであり、そのスパンが9つのスロットである。その溶接部分5-3は、2つの異なる方形導体コイルを溶接の形で接続するためのものであり、また、第1型コイル5の溶接部分5-3には、引出線端子として、そのスロット内部分5-1と引出線とを接続し合う役割を果たすものも、いくつか存在する。
【0054】
図6には、U相の1番目の分岐路4-1の巻線の結線模式図が挙げられており、その引出線が溶接部分5-3の所在する端に位置する。当該構造の利点としては、そのすべての方形導体コイル5の渡り線部分5-2が、完全に一致している湾曲構造を有し、即ち、線型が1種類しか存在せず、その結果、金型の製造がより簡単になる。同様に、そのU相の2番目の分岐路4-2における方形導体コイル5のスロット内部分5-1の位置は、U相の1番目の分岐路4-1を元にして、時計回りに36個のスロットだけ回転させることによって得られるものであり、そのU相の3番目の分岐路4-3における方形導体コイル5のスロット内部分5-1の位置は、U相の1番目の分岐路4-1を元にして、反時計回りに9つのスロットだけ回転させることによって得られるものであり、そのU相の4番目の分岐路4-4における方形導体コイル5のスロット内部分5-1の位置は、U相の2番目の分岐路4-2を元にして、反時計回りに9つのスロットだけ回転させることによって得られるものである。
【0055】
U相巻線3-1の各分岐路4-1、4-2、4-3、4-4に対して、先頭部同士を接続し、末尾部同士を接続すると、U相巻線3-1になる。また、V相巻線3-2について、その配置構造は、U相巻線3-1を時計回りに6個のスロットだけ回転させることによって得られるものであり、W相巻線3-3について、その配置構造は、U相巻線3-1を6個のスロット反時計回りにとによって得られるものである。三相巻線がスター接続法又はデルタ接続法で接続されて、最終的に当該モータの多分岐路方形導体巻線3の完全なセットを形成する。
【0056】
上記したのは、あくまでも本発明の具体的な実施形態であり、本発明の上記教示の下で、当業者は、上記実施例に基づいて他の改良又は変形を行うことができる。当業者であれば、上記具体的な記載は本発明の目的をより良く解釈するためのものであり、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲による保護範囲に基づくことが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】