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特開2022-121416コンピューティング・デバイス及び波形データ管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121416
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】コンピューティング・デバイス及び波形データ管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 9/00 20060101AFI20220812BHJP
   G01R 13/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G01D9/00 A
G01R13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017973
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】63/147,153
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/592,998
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521513904
【氏名又は名称】イニシャル・ステート・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Initial State Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ビー・クールマン・ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】アダム・エム・リーブス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ブイダ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ジェイ・ワルド
(72)【発明者】
【氏名】ケイス・ディー・ルール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・アール・ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル・パーソンズ
【テーマコード(参考)】
2F070
【Fターム(参考)】
2F070AA01
2F070BB01
2F070CC01
2F070CC11
2F070FF12
2F070GG06
2F070GG08
2F070HH06
2F070HH08
(57)【要約】
【課題】取得した波形データから特定の問題を解決するのに必要な情報を容易に抽出できるようにする。
【解決手段】コンピューティング・デバイス12は、ネットワーク28に接続するためのポート22と、1つ以上のプロセッサ16を有する。プロセッサ16は、コンピューティング・デバイス12に接続されたリポジトリ24に新しい波形データが追加されると、新しい波形データについて、一連の測定を実行し、その測定の結果を新しい波形データにメタデータとして添付する。新しい波形データと、これに添付されたメタデータは、リポジトリ24に保存される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューティング・デバイスであって、
該コンピューティング・デバイスがネットワークに接続できるようにするポートと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
1つ以上の該プロセッサが、
コンピューティング・デバイスに接続されたリポジトリに新しい波形データが追加されたか判断する処理と、
上記新しい波形データについて一連の測定を実行する処理と、
上記測定の結果を上記新しい波形データにメタデータとして添付する処理と、
上記新しい波形データと添付された上記メタデータをリポジトリに保存する処理と
を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードを実行するよう構成されるコンピューティング・デバイス。
【請求項2】
1つ以上の上記プロセッサが、
ユーザ・デバイスからネットワーク経由で新しい一連の測定を受ける処理と、
上記新しい一連の測定を上記リポジトリに追加する処理と
を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードを実行するよう更に構成される請求項1のコンピューティング・デバイス。
【請求項3】
1つ以上の上記プロセッサが、
上記リポジトリ内の既存の波形データについて上記新しい一連の測定を実行する処理と、
上記新しい一連の測定の結果を上記波形データの夫々に添付されたメタデータに追加する処理と
を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードを実行するよう更に構成される請求項2のコンピューティング・デバイス。
【請求項4】
1つ以上の上記プロセッサのうち少なくとも1つが、機械学習システムの一部として構成される請求項1から3のいずれかのコンピューティング・デバイス。
【請求項5】
1つ以上の上記プロセッサに一連の測定を実行させるコードが、利用可能な全ての測定、ユーザが指定した測定及び初期評価の後で限定された測定の中の1つ以上を1つ以上の上記プロセッサに実行させるコードを有する請求項1から4のいずれかのコンピューティング・デバイス。
【請求項6】
1つ以上のプロセッサに初期評価を実行させるコードが、
機械学習プロセスを実行して分類を生成する処理と、
パターン認識を実行する処理と、
測定の結果、ユーザ定義の特性及び波形データに添付されたメタデータのいずれかに基づいて上記初期評価を形成する処理
の中の少なくとも1つの処理を1つ以上の上記プロセッサに実行させるコードを有する請求項1から5のいずれかのコンピューティング・デバイス。
【請求項7】
波形データを管理する方法であって、
リポジトリに新しい波形データが追加されたか判断する処理と、
上記新しい波形データについて一連の測定を実行する処理と、
測定の結果を上記新しい波形データにメタデータとして添付する処理と、
上記新しい波形データ及び添付された上記メタデータをリポジトリに格納する処理と
を具える波形データ管理方法。
【請求項8】
ユーザ・デバイスから新しい一連の測定を受ける処理と、上記新しい一連の測定をリポジトリに追加する処理とを更に具える請求項7の波形データ管理方法。
【請求項9】
リポジトリ内の既存の波形データについて上記新しい一連の測定を実行する処理と、上記新しい一連の測定の結果を波形データの夫々に添付されたメタデータに追加する処理とを更に具える請求項8の波形データ管理方法。
【請求項10】
ユーザ・デバイスから信号を受ける処理と、上記信号に示される少なくとも1つのタスクを実行する処理と、上記タスクの結果を上記ユーザ・デバイスに提供する処理とを更に具える請求項7の波形データ管理方法。
【請求項11】
機械学習を用いて、上記メタデータに基づいて上記波形データについての将来の測定値に関する予測を提供する処理を更に具える請求項7から10のいずれかの波形データ管理方法。
【請求項12】
上記一連の測定を実行する処理が、利用可能な全ての測定、ユーザが指定した測定及び初期評価の後の限定された測定の中の1つ以上の測定を実行する処理を有する請求項7から11のいずれかの波形データ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、コンピューティング・デバイスを有する試験測定システムにおける波形データの管理に関し、特に取得した波形データから測定に係るメタデータを自動的に生成することに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアは、オシロスコープなどの試験測定装置で被試験デバイス(DUT)の信号を測定し、取得したデータを精製し、理解可能な形の情報にして取り出す。信号の波形や工学データ(engineering data)には、埋もれていて、そのままでは抽出が難しい情報があるために、オシロスコープなどの試験測定装置が利用されている。テキストを使用してテキストを検索する場合(この場合、コンピュータは、検索する形式と同じデータ形式を扱うことができる)とは異なり、人間は、テキストと状況(context:コンテキスト)を利用して波形データや工学データを検索し理解する必要がある。
【0003】
これにより、システムが人間の要求を波形の特徴や測定値へと効率的に変換するためには、データから何らかの有形なものを抽出しなければならないという課題が生じる。また、エンジニアは、多くの場合、データ取得時に、特定の問題を解決するのに必要な測定方法や検査方法を知る必要がある。このため、デバッグ/設計サイクルにおいて変更を理解するために後ほど必要となるような後で必要になる可能性のある情報ではなくて、取得したデータから特定の問題を解決するのに必要な情報だけを抽出することになる。
【0004】
例として、ユーザが、10個の波形データを、最小2乗平均平方根(root-mean-square:RMS)値から最大RMS値までソート(並べ替え)する場合を想定する。RMSは、試験測定装置(例えば、オシロスコープ)で一般的に行われている測定である。全てのファイルに測定値が含まれている場合なら、所望のソートも単純な動作となろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-208875号公報
【特許文献2】特開2010-134790号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「IoT時代の無線規格を知る Z-Wave編」、アイティメディア株式会社、[online]、[2022年1月30日検索]、インターネット<https://edn.itmedia.co.jp/edn/series/3582/>
【非特許文献2】「Z-Wave」の記事、Wikipedia(日本語版)、[online]、[2022年1月31日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/Z-Wave>
【非特許文献3】「Controller Area Network」の記事、Wikipedia(日本語版)、[online]、[2022年1月31日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/Controller_Area_Network>
【非特許文献4】「RS-232」の記事、Wikipedia(日本語版)、[online]、[2022年1月31日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/RS-232>
【非特許文献5】「トリガ入門」、第8頁で「ラント・トリガ」に言及、テクトロニクス、2010年6月発行、[online]、[2022年1月31日検索]、インターネット<http://jp.tek.com/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、候補の波形のデータを取り込んだエンジニアが、たまたま、記憶された波形の中の5個の波形についてのみRMS値を取得したと仮定しよう。1つの解決手法では、システムが、これら波形のファイルの夫々を開いて、欠落しているRMS測定を実行し、データのソートを実行することもできよう。しかし、これらの波形ファイルは、大きくなる傾向があり、これら波形ファイルを開いて測定し、次いで、RMS測定値を保存するための時間は、長くなるであろうことから、複数の波形ファイルに対して、どのくらい時間がかかるのかの予測が難しくなる。
【0008】
開示される装置及び方法の実施形態は、従来技術における欠点に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、メタデータとして波形ファイルに測定方法や測定値(measurement)を添付する処理を含む。ポイントとなる課題は、システムを可能な限り有用なものにするために、どの測定を採用するのが良いか、そして、どのようにしてそれら測定を取り入れるか、という点にある。実施形態は、測定方法、分類、デコード(復号方法)、及びその他のアルゴリズムのライブラリを作成し、これらの全てが、新しいデータが追加されるたびに一連のデータ(data set:データ・セット:複数のデータから構成されるグループ)に対して実行されても良い。本願で使用される用語「測定(measurement)」とは、データについて実行される任意の測定方法、クエリ(query)、検索、フィルタ処理(フィルタリング)、分類、デコードなどを意味する。測定のライブラリに加えて、システムは、リポジトリに既に存在する過去のデータを自動的に巡回して検索する(crawl:クロール)機能を実装しても良い。ライブラリは、新しい測定を実行したときに、その新しい測定をライブラリに追加してアップデート(更新)されても良い。
【0010】
また、実施形態は、データの利用を拡大する機能も提供する。本願で用いられる用語「データ」とは、試験測定装置から取得した波形データを意味し、データ・ポイント、画像などが含まれていても良い。本願で用いられる用語「メタデータ」とは、波形データに添付される情報で、この情報は、試験測定装置からのデータには含まれていない別の情報であっても良い。このメタデータには、例えば、試験を実行する人の名前、その人の連絡先情報、試験の日時、波形が生成された被試験デバイスの説明(シリアル番号を含む)といった管理情報が含まれても良い。本願の実施形態では、メタデータが、データを取得した測定方法、これら測定の結果(つまり、測定値)などを含んでいても良い。
【0011】
例えば、上述の例において、ユーザが10個の波形を最小RMS値から最大RMS値まで並べ替えたい場合、これらの測定値は、データがリポジトリに追加されるときに、このデータから取得されることになろう。これにより、波形データについて、こうした情報が直ぐに利用可能になるので、ユーザはソート(並べ替え)を容易に実行可能になる。
【0012】
上述の例においては、本願発明による改善された手法によれば、最新のクラウド環境における実質的に無制限のコンピューティング・リソースと相まって、自動化されたプロセスを使用して、RMS測定値をシステム内の全てのファイルに常に添付し、そのデータを巡回して検索/調査(crawl:クロール)できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、波形データと関連メタデータを収集、解析、保存するシステムを示す。
図2図2は、波形メタデータを収集、解析、保存するシステムの機械学習コンポーネントを示す。
図3図3は、波形データ及びメタデータを取り込む方法のフローチャートを示す。
図4図4は、波形データとメタデータを分析する方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、ユーザに上述の機能を提供するシステム10の実施形態を示す。このシステムには、コンピューティング・デバイス12があり、これは、実際には、複数のコンピューティング・デバイス14などから構成される「クラウド」が含まれていても良い。コンピューティング・デバイス14の夫々には、プロセッサ16、メモリ18、ユーザ・インタフェース20及びポート22があり、ポート22によって、デバイス14は、ネットワーク28への接続26を介して他のリソースに接続することが可能になる。この接続26は、インターネット、イントラネット、VPN(仮想プライベート・ネットワーク)による接続で構成されても良いし、場合によっては、直接の接続から構成されても良い。同様に、リポジトリ(repository)24は、コンピューティング・デバイス12に直接接続されていても良いし、コンピューティング・デバイス12の一部であっても良いし、ネットワーク28を介してコンピューティング・デバイス12に接続されても良い。
【0015】
上述したように、コンピューティング・デバイス12及びリポジトリ24は、試験測定装置30から波形データを受ける。試験測定装置30は、例えば、オシロスコープであっても良く、被試験デバイス(DUT)32について試験を行い、その結果として、システムで使用する波形データが生じる。ただし、波形データは、ユーザが過去に別途蓄積しておいたものであっても良いので、試験測定装置30がシステム内に必須とは限らない。後で詳しく説明するように、ユーザは、接続36を介してネットワーク28に接続されたユーザ・デバイス34を使用して、直接又はコンピューティング・デバイス12を介してリポジトリ24にアクセスしても良い。ユーザ・デバイス34は、デスクトップ・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、タブレット、携帯電話、又は、AR(augmented reality:拡張現実)若しくはVR(virtual reality:仮想現実)ヘッド・セットのようなコンピューティング・デバイスやその他のコンピューティング・デバイスであっても良く、これによって、ユーザは、ネットワーク28を介して、リポジトリ24にアクセスしたり、コンピューティング・デバイス12へ信号を送信することができる。ユーザ・デバイス34には、コンピューティング・デバイス12から戻ってきた結果をユーザに表示するディスプレイがあっても良い。
【0016】
コンピューティング・デバイス12は、上述のように、1つ以上のプロセッサを有していても良く、図2に示すように、機械学習システム38の機能を有するようにプログラミングされていても良い。本願で使われる用語「機械学習システム(machine learning system)」とは、自律的に動作し、明示的にプログラムされることなしに、経験から学習し、改善できるシステムを意味する。上記のプログラミングとは、機械学習システムを形成するためのプロセッサのプログラミングを指す。機械学習システムは、本願でトレーニング・セットと呼ぶ、特定のデータ・セットを使い切ることで、経験を積む。システムの実施形態では、以下でより詳細に説明するが、新しいデータ・セットを特定することによって、トレーニング・セットを補充しても良い。分散型のコンピューティング・デバイスに関して上述したものと同様に、リポジトリ24は、複数のリポジトリから構成されても良いし、単一のリポジトリの複数のパーティションから構成される、などでも良い。1つのリポジトリ40は、上述した複数の測定のライブラリを有していても良い。別のリポジトリ42は、実際のデータとメタデータを有していても良い。もう1つのリポジトリ44は、トレーニング・データ・セットのライブラリを有していても良い。
【0017】
この実施形態では、リポジトリに、最初は、過去のデータを蓄積する。過去のデータは、システムがビジーでない場合などに、結果として、システムで実施される全ての測定を受けても良い。新しいデータに関して、図3は、新しいデータを追加する方法を示す。工程50では、コンピューティング・デバイスが、1つ以上のプロセッサを利用して、リポジトリが新しい波形データを追加したかを判断する。これは、リポジトリからの通知によって生じても良いし、又は、リポジトリに問い合わせることによって生じても良い。次いで、1つ以上のプロセッサは、工程52において、波形データについて、一連の測定(a set of measurements:複数の測定からなるグループ)を実行する。
【0018】
実施される一連の測定には、様々な測定が含まれても良い。一連の測定の例としては、もしシステムに、どの測定を実行する必要があるかに関する知識が全くないか又は極めてわずかしかない場合には、実施可能なあり得る全ての測定であっても良い。別の例では、例えば、ユーザが選択した、ユーザ定義によるパワー・リップル測定を実行するというように、ユーザが定義できる一連の測定を実行しても良い。
【0019】
別の例としては、信号の初期評価に基づいて、定義された一連の測定を実行する方法がある。システムは、受信信号の特性に基づいて、例えば、自動的にパワー・リップル測定を実行することを決定する。信号の特性は、初期評価によって求めても良い。この初期評価は、機械学習システムによって実行される分類、パターン認識、測定結果、ユーザ定義の特性及びデータ取得時に付加されたタグ付け/メタデータの中のいずれか又は全てに基づいて行っても良いだろう。測定結果の例としては、例えば、中心周波数が915MHzと測定される、でも良く、この場合、Z-Wave規格に関する全ての測定を実行しても良い(非特許文献1及び2参照)。ユーザ定義の特性の例としては、データに200個のデータ・ポイントが含まれている場合や、平均振幅が3ボルトを超える場合、などのようなものが含まれていても良い。システムによってイネーブルされるものの例としては、時刻/日付、オペレータ名、「USB」ようなユーザが追加したタグなど、データ取得時に追加されたタグ付け/メタデータであっても良い。更に別の例としては、「ラボ(lab:研究所)内の別のシステムが正常であるとのレポートに基づいて、特定の測定を実行する」というように、別のシステムの状態に基づいていても良い。
【0020】
図3に戻ると、工程52において、システムが波形データについて測定を行うと、工程54において、その測定結果が波形データに添付される。これは、工程56において、リポジトリに格納される。工程58では、上述のように、機械学習システムを将来アップデートするために、データをトレーニング・データ・セットに追加しても良い。このデータを追加するとの判断は、新しいデータを既存のデータに対して比較し、新しいデータの属性(attributes:特徴的特性)が既存のデータに含まれていないと判断した結果として生じても良く、その結果として、トレーニング・データ・セットに新しいデータを追加する。別の分析方法では、機械学習システムが、エラー・ベクトルを有し、エラー・ベクトルを改善する方向に、データ・セット(一連のデータ)を選択しても良い。
【0021】
このシステムの存在により、自動メタデータ作成を利用可能なケースを拡張できる。図4は、システムを使用する方法の実施形態を示す。工程60において、コンピューティング・デバイス12は、図1に示すユーザ・デバイス34を介してユーザ入力を受ける。ユーザ入力によって、工程62において、タスクを実行する要求がコンピューティング・デバイス12に送信されるが、タスクは、多くの形式の中のいずれかであっても良い。例えば、検索処理によれば、「アドレス=x40h の I2C デコードを検索(find I2C decodes with address = x40h)」のような既存のデータに対する新しい検索を利用できる。測定又はアルゴリズムの夫々は、数値や文字列などの構造化データを作成でき、これらデータはソート(sort:並べ替え)可能な特性を持っている(例えば、RMS値で昇順にすることによって、波形データを検索する)。波形データから必要な部分だけを抽出(精製)して測定値を得る場合、「100μsから1msの間の立ち上がりエッジを持つデジタル波形を表示する」など、検索や自動化のための複雑なフィルタを設定できる。
【0022】
機械学習又は他の方法を使用して、システムは、波形データと測定値を、検索性が非常に高く、人間が理解しやすい形式に分類できるので、例えば、「CAN(Controller Area Network)バスに関する捕捉データの全てを表示」といったことが容易に可能となる。ユーザは、メタデータ/測定値から「プロセスが、RS-232信号上でxAF、xFF、x16、x45を検出したら、ユーザに電子メール及びリンクを送信する」などのような通知を作成できる。また、特定の項目、特徴、傾向、しきい値、エラーなどを検出するようにシステムに要求することもでき、例えば、「検出されたラント・トリガ・イベントを全て表示する」といったことができる(非特許文献5参照)。
【0023】
機械学習システムの強みの一つは、予測を行う能力にある。機械学習システムは、将来の測定値に関する予測を行うことができる、例えば、「不良の蓋然性95%以上を示す波形データの全てを表示する」といったことができる。
【0024】
コンピューティング・デバイスは、工程64において、結果をユーザに提示する。上述した検索条件やクエリなどのユーザ入力は、工程66において、リポジトリ内にある測定方法のライブラリなどに保存されても良い。
【0025】
このようにして、新しい測定値、測定方法や機能がシステムに追加されたときに、新しいメタデータを継続的に収集及び集計できる。また、システムに入力される新しいデータに関する新しいメタデータを収集して集計し、検索やその他のタスクを新しいデータで更新することもできる。
【0026】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0027】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0028】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Versatile Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0029】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0030】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。例えば、ある特定の特徴が特定の態様に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様との関連においても利用できる。

実施例
【0031】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0032】
実施例1は、コンピューティング・デバイスであって、コンピューティング・デバイスがネットワークに接続できるようにするポートと、1つ以上のプロセッサとを具え、1つ以上の該プロセッサは、コンピューティング・デバイスに接続されたリポジトリに新しい波形データが追加されたか判断する処理と、上記新しい波形データについて一連の測定(a set of measurements)を実行する処理と、上記測定の結果を上記新しい波形データにメタデータとして添付する処理と、上記新しい波形データと添付された上記メタデータをリポジトリに保存する処理とを1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードを実行するよう構成される。
【0033】
実施例2は、実施例1のコンピューティング・デバイスであって、1つ以上の上記プロセッサが、ユーザ・デバイスからネットワーク経由で新しい一連の測定を受ける処理と、新しい一連の測定をリポジトリに追加する処理とを1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードを実行するよう更に構成される。
【0034】
実施例3は、実施例2のコンピューティング・デバイスであって、1つ以上のプロセッサが、リポジトリ内の既存の波形データについて新しい一連の測定を実行する処理と、新しい一連の測定の結果を上記波形データの夫々に添付されたメタデータに追加する処理とを1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードを実行するよう更に構成される。
【0035】
実施例4は、実施例1から3のいずれかのコンピューティング・デバイスであって、1つ以上のプロセッサが、ユーザ・デバイスからの信号を受信する処理と、上記信号で示される少なくとも1つのタスクを実行する処理と、タスクの結果をユーザ・デバイスに提供する処理とを1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードを実行するよう更に構成される。
【0036】
実施例5は、実施例4のコンピューティング・デバイスであって、上記少なくとも1つのタスクは、検索、ソート(並び替え)、フィルタリング、分類、トリガ、検出及び予測の中の1つ以上を含む。
【0037】
実施例6は、実施例1から5のいずれかのコンピューティング・デバイスであって、1つ以上のプロセッサのうち少なくとも1つが、機械学習システムの一部として構成されている。
【0038】
実施例7は、実施例6のコンピューティング・デバイスであって、機械学習システムは、リポジトリ内の波形データを、波形データの形式で分類するように構成されている。
【0039】
実施例8は、実施例6のコンピューティング・デバイスであって、機械学習システムは、将来の測定値に関する予測を提供するように構成されている。
【0040】
実施例9は、実施例1から8のいずれかのコンピューティング・デバイスであって、1つ以上の上記プロセッサに一連の測定を実行させるコードが、利用可能な全ての測定、ユーザが指定した測定及び初期評価の後で限定された測定の中の1つ以上を1つ以上の上記プロセッサに実行させるコードを有する。
【0041】
実施例10は、実施例9のコンピューティング・デバイスであって、1つ以上のプロセッサに初期評価を実行させるコードが、機械学習プロセスを実行して分類を生成する処理と、パターン認識を実行する処理と、測定の結果、ユーザ定義の特性及び波形データに添付されたメタデータのいずれかに基づいて上記初期評価を形成する処理の中の少なくとも1つの処理を1つ以上の上記プロセッサに実行させるコードを有する。
【0042】
実施例11は、実施例1から10のいずれかのコンピューティング・デバイスであって、コンピューティング・デバイスは、1つ以上の試験測定装置に接続されている。
【0043】
実施例12は、実施例1から11のコンピューティング・デバイスであって、コンピューティング・デバイスは、複数のコンピューティング・デバイスを含み、1つ以上のプロセッサが、複数のコンピューティング・デバイスの間に分散配置される。
【0044】
実施例13は、波形データを管理する方法であって、リポジトリに新しい波形データが追加されたか判断する処理と、新しい波形データについて一連の測定を実行する処理と、測定の結果を新しい波形データにメタデータとして添付する処理と、新しい波形データ及び添付されたメタデータをリポジトリに格納する処理とを具えている。
【0045】
実施例14は、実施例13の方法であって、ユーザ・デバイスから新しい一連の測定を受ける処理と、新しい一連の測定をリポジトリに追加する処理とを更に具えている。
【0046】
実施例15は、実施例14の方法であって、リポジトリ内の既存の波形データについて新しい一連の測定を実行する処理と、新しい一連の測定の結果を波形データの夫々に添付されたメタデータに追加する処理とを更に具えている。
【0047】
実施例16は、実施例13から15のいずれの方法であって、ユーザ・デバイスから信号を受ける処理と、上記信号に示される少なくとも1つのタスクを実行する処理と、タスクの結果をユーザ・デバイスに提供する処理とを更に具えている。
【0048】
実施例17は、実施例16の方法であって、上記少なくとも1つのタスクは、検索、ソート、フィルタリング、分類、トリガ、検出及び予測の中の1つ以上を含む。
【0049】
実施例18は、実施例13から17のいずれの方法であって、機械学習を用いて、リポジトリ内の波形データを、波形データの形式で分類する処理を更に具えている。
【0050】
実施例19は、実施例13から17のいずれの方法であって、機械学習を用いて、メタデータに基づいて、波形データについての将来の測定値に関する予測を提供する処理を更に具えている。
【0051】
実施例20は、実施例13から19のいずれかの方法であって、一連の測定を実行する処理が、利用可能な全ての測定、ユーザが指定した測定及び初期評価の後の限定された測定の中の1つ以上を実行する処理を有している。
【0052】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0053】
10 システム
12 コンピューティング・デバイス
14 コンピューティング・デバイス
16 プロセッサ
18 メモリ
20 ユーザ・インタフェース
22 ポート
24 リポジトリ
26 接続
28 ネットワーク
30 試験測定装置
32 被試験デバイス(DUT)
34 ユーザ・デバイス
36 接続
38 機械学習システム
40 リポジトリ
42 リポジトリ
44 リポジトリ
図1
図2
図3
図4