(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121436
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、キャリア付樹脂膜、プリプレグ、プリント配線基板および半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/42 20060101AFI20220812BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20220812BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
C08G59/42
C08J5/24 CFC
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089445
(22)【出願日】2022-06-01
(62)【分割の表示】P 2017106236の分割
【原出願日】2017-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大東 範行
(72)【発明者】
【氏名】橘 賢也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 忠相
(72)【発明者】
【氏名】山下 航平
(57)【要約】
【課題】絶縁層の表面粗度の低減とメッキ導体層との密着性に優れており、多層プリント配線板のビルドアップ層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂、それを用いたキャリア付樹脂膜、プリプレグ、プリント配線基板および半導体装置が提供すること。
【解決手段】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、多層プリント配線基板のビルドアップ層を構成する絶縁層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)と、常温で液状のエポキシ樹脂(B)と、下記式(1)で表される構造部位を有した活性エステル化合物(C)と、無機充填材(D)と、を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【化6】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層プリント配線基板のビルドアップ層を構成する絶縁層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、
軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)と、
常温で液状のエポキシ樹脂(B)と、
下記式(1)で表される構造部位を有した活性エステル化合物(C)と、
無機充填材(D)と、
を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)において、lはそれぞれ独立で0以上、6以下の整数であり、mはそれぞれ独立で1以上、5以下の整数であり、nは1以上、6以下の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
シアネートエステル樹脂、マレイミド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂、ビニル樹脂、アクリレート化合物から選択される少なくとも一種をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンエーエル樹脂から選択される少なくとも一種である熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記無機充填材(D)がタルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウムから選択される少なくとも一種である熱硬化性樹脂。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記無機充填材(D)の含有量が、前記熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対し、50質量%以上、85質量%以下である熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記無機充填材(D)が、アミノ系、エポキシ系、チオール系の群から選択される少なくとも一種のシランカップリング剤で表面処理されたものである熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
キャリア基材と、
前記キャリア基材上に設けられている、請求項1乃至7いずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備える、キャリア付樹脂膜。
【請求項9】
請求項1乃至7いずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなる、プリプレグ。
【請求項10】
請求項1乃至7いずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備える、プリント配線基板。
【請求項11】
請求項10に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の回路層上に搭載された、または前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、キャリア付樹脂膜、プリプレグ、プリント配線基板および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んでおり、これらの電子機器に使用される半導体装置の小型化が急速に進行している。そして、半導体装置に使用されるプリント配線基板には、薄型化と高密度で微細な回路が求められている。
【0003】
これまでのプリント配線基板に用いる絶縁層を形成するための樹脂組成物においては、様々な開発が行われてきた。この種の技術として、たとえば特許文献1に記載の樹脂組成物が挙げられる。同文献によれば、エポキシ樹脂と活性エステル樹脂と平均粒子径が0.1μm以上、10μm以下の第1のシリカと、平均粒子径が1nm以上、100nm未満の第2のシリカとを含み、第1のシリカ100重量部に対する第2のシリカの含有量が0.6重量部以上、30重量部以下である樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記文献に記載の樹脂組成物においては、絶縁信頼性と、セミアディティブプロセス(SAP)特性との両立の点で改善の余地を有していることが判明した。
【0006】
通常、微細配線形成にSAP法を用いる場合、薬液によるデスミア処理が行われている。このようなデスミア処理は、例えば、アルカリ膨潤液により絶縁層表面の膨潤処理を施した後、過マンガン酸水溶液により樹脂表面に粗化処理を行い、続いて中和処理を行う方法が利用される。この時、絶縁層表面とメッキ導体層間の密着性は、主に絶縁層表面に形成された微細な粗度によるアンカー効果によって発現している。粗化された絶縁層表面のアンカー効果は粗度が大きいほどメッキ導体層との密着性は高まるが、粗度が大きいと形成されたメッキ導体層の部分エッチング量が多くなるため微細配線形成が難しくなる。逆に粗度を小さくすると無電解メッキ導体層との密着性を十分発揮できない可能性が高くなる。そのため、低粗度でメッキ導体層との密着性を両立することが必要とされている。
【0007】
また、絶縁層には、絶縁層表面に形成される配線パターンからなる導体層との間の線熱膨張率に差が生じないように線熱膨張率が低いことも要求される。絶縁層の線熱膨張率が高いと、導体層との間の線熱膨張率の差が大きくなり、絶縁層と導体層の間にクラックが発生する等の問題が生じやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、薬液によるデスミア処理を利用した場合において、プリント配線基板における絶縁層のSAP特性について検討したところ、詳細なメカニズムは定かではないが、デスミア処理による絶縁層の膨潤の抑制とSAP特性の向上との間に強い相関関係があることを見出した。
【0009】
このような相関関係に着眼して、本発明者らは熱硬化性樹脂組成物に使用される硬化剤や配合樹脂等について鋭意検討を進めた結果、絶縁層を構成する樹脂成分として、特定の「分子骨格内部にエステル基とその両末端が一価のナフタレンオキシ基を有した構造部位を有した活性エステル化合物」が、デスミア耐性を高め、かつ絶縁層の表面粗度の低減とメッキ導体層との密着性を高めることができることを見出した。
【0010】
また、絶縁層表面を微細な粗度形状と誘電正接の低減が可能になるため高周波領域による信号の伝送損失を低減できることを見出した。
【0011】
また、レーザーによる層間接続用のブラインドビアホールに発生するスミアの除去性に優れた層間接続信頼性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明によれば、
多層プリント配線基板のビルドアップ層を構成する絶縁層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、
軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)と、
常温で液状のエポキシ樹脂(B)と、
下記式(1)で表される構造部位を有した活性エステル化合物(C)と、
無機充填材(D)と、
を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0013】
【化2】
(式(1)において、lはそれぞれ独立で0以上、6以下の整数であり、mはそれぞれ独立で1以上、5以下の整数であり、nは1以上、6以下の整数である。)
さらに、本発明によれば、
シアネートエステル樹脂、マレイミド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂、ビニル樹脂、アクリレート化合物から選択される少なくとも一種をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0014】
さらに、本発明によれば、
熱可塑性樹脂をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0015】
さらに、本発明によれば、
上記熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンエーエル樹脂から選択される少なくとも一種である熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、
上記無機充填材(D)がタルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウムから選択される少なくとも一種である熱硬化性樹脂が提供される。
【0017】
さらに、本発明によれば、
上記無機充填材(D)の含有量が、上記熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量%に対し、50質量%以上、85質量%以下である熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0018】
さらに、本発明によれば、
上記無機充填材(D)が、アミノ系、エポキシ系、チオール系の群から選択される少なくとも一種のシランカップリング剤で表面処理されたものである熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0019】
さらに、本発明によれば、
キャリア基材と、上記キャリア基材上に設けられている、上記熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備える、キャリア付樹脂膜が提供される。
【0020】
さらに、本発明によれば、
上記熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなる、プリプレグが提供される。
【0021】
さらに、本発明によれば、
上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備える、プリント配線基板が提供される。
【0022】
さらに、本発明によれば、
上記プリント配線基板と、上記プリント配線基板の回路層上に搭載された、または上記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、絶縁層の表面粗度の低減とメッキ導体層との密着性に優れており、多層プリント配線板のビルドアップ層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂、それを用いたキャリア付樹脂膜、プリプレグ、プリント配線基板および半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態におけるキャリア付樹脂膜の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】本実施形態における半導体装置の製造プロセスの一例を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0026】
以下、熱硬化性樹脂組成物、キャリア付き樹脂膜、プリプレグ、プリント配線基板、および半導体装置に説明する。
【0027】
はじめに、本実施形態における熱硬化性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」ということもある)について説明する。
【0028】
本実施形態に係る樹脂組成物は、多層プリント配線基板のビルドアップ層を構成する絶縁層を形成するために用いられるものである。その他、プリント配線基板を構成する絶縁層としては、例えば、プリプレグ、コア基材、ソルダーレジストなどにおける絶縁層等が挙げられる。
【0029】
樹脂組成物は、例えば、溶剤を含むワニス状とすることができる。一方で、樹脂組成物は、フィルム状であってもよい。この場合、例えば、ワニス状の樹脂組成物を塗布して得られる樹脂膜に対し溶剤除去処理を行うことにより、フィルム状の樹脂組成物を得ることができる。なお、フィルム状の樹脂組成物は、キャリア基材上に積層されてキャリア付樹脂膜を構成したり、繊維基材に含浸させてプリプレグを構成したりすることができる。
[軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)]
軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を有する化合物であり、従来公知のものをいずれも使用できる。分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ化合物等が挙げられる。なお、水素添加されたエポキシ化合物であってもよい。
【0030】
軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)としては、例えば、DIC社製HP-4700/HP-4710(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、DIC社製HP-6000(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬社製NC-7000L/NC7300L、新日鐵化学社製ESN-475V/ESN-375/ESN-170/ESN-480(ナフトール型エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂、三菱化学社製jER1032H60/日本化薬社製EPPN-502H等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、DIC社製エピクロンHP-7200L(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬社製NC-3000/NC-3000L/NC3500(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、DIC社製エピクロンN660、エピクロンN690、日本化薬社製EOCN-104S等のノボラック型エポキシ樹脂、三菱化学社製YX-4000HK等のビフェニル型エポキシ樹脂、新日鉄住金化学社製TX0712等のリン含有エポキシ樹脂、日産化学工業社製TEPIC等のトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、三菱化学社製YL6810の固形のビスA型エポキシ樹脂等が挙げられる。軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)を使用することで、ガラス転移温度(Tg)が高く、クラック耐性に優れる絶縁層が得られる。耐熱性の観点から芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。中でも、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物がより好ましい。
【0031】
軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)として、これらの中の一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよく、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0032】
[常温で液状のエポキシ樹脂(B)]
本発明の樹脂組成物は、常温で液状のエポキシ樹脂(B)を含有する。液状のエポキシ樹脂(B)は、常温(例えば20℃)おいては液状で、エポキシ基を1乃至2個以上有するエポキシ樹脂であり、例えば、液状の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、水添型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、1官能の反応性希釈タイプのエポキシ樹脂等がなどが挙げられる。市販されているものとしては、三菱化学社製jER828EL/jER807/jER152/jER630/jER604/YX8034、DIC社製HP4032/HP4032D、ADEKA社製EP-4088L/EP-4000/ED-523L、単官能として三光社製OPP-G等が挙げられる。液状のエポキシ樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。常温で液状のエポキシ樹脂(B)を使用することで、無機充填材を高充填しても流動性に優れ、硬化後の架橋密度の調整や機械強度や破断伸びに優れるためメッキ導体層との密着性優れる絶縁層が得られる。耐熱性の観点から2官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物において、常温で液状のエポキシ樹脂(B)の含有量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、0.5質量%以上、25質量%以下が好ましく、1質量%以上、20質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上、12質量%以下が更に好ましい。含有量が少なすぎると樹脂シートの可とう性や流動性が低下する場合があり、含有量が多すぎると、ガラス転移温度の低下やキャリア付樹脂膜からキャリア剥離性が低下する場合があり、また低粗度でのメッキ導体層の密着性が低下する場合がある。また常温で液状のエポキシ樹脂(B)と軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)の合計量100質量%(不揮発分)に対し、常温で液状のエポキシ樹脂(B)の含有量は2質量%以上、55質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上、45質量%以下の範囲がより好ましく、10質量%以上、35質量%以下の範囲が更に好ましい。
【0034】
[活性エステル化合物(C)]
本発明の樹脂組成物は、硬化剤として下記式(1)で表される、分子骨格内部にエステル基とその両末端が一価のナフタレンオキシ基を有した構造部位を有した活性エステル化合物(C)を含有する。これにより、絶縁層表面を粗化処理した際、表面粗度の低減とメッキ導体層との密着性を両立し、低吸水で誘電正接の低減、およびレーザーによる層間接続用のブラインドビアホールに発生するスミアの除去性に優れる。
【0035】
【化3】
(式(1)において、lはそれぞれ独立で0以上、6以下の整数であり、mはそれぞれ独立で1以上、5以下の整数であり、nは1以上、6以下の整数である。)
上記式(1)において、lは0以上、6以下の整数であり、1以上、5以下の整数であることが好ましく、1以上、4以下の整数であるのがより好ましい。mは1以上、5以下の整数であり、1以上、4以下の整数であることが好ましく、1以上、3以下の整数であ
るのがより好ましい。nは1以上、6以下の整数であり、1以上、5以下の整数であることが好ましく、1以上、3以下の整数であるのがより好ましい。
【0036】
活性エステル化合物(C)は、従来公知の方法により得ることができる。上記活性エステル化合物(C)は、例えば、ジヒドロキシナフタレン化合物とベンジルアルコールとを反応させてベンジル変性ナフタレン化合物を得る工程と、得られたベンジル変性ナフタレン化合物と芳香族ジカルボン酸塩化物と一価フェノール系化合物とを反応させる工程とを経ることにより得られる活性エステル化合物である。活性エステル化合物(C)は、例えば、国際公開第2016/098488号公報等に記載されている。
【0037】
活性エステル化合物(C)の市販品としては、DIC社製「EXB-8100L-65T、EXB-8150L-65T」等が挙げられる。
【0038】
活性エステル化合物(C)の含有量は、軟化点が50℃以上のエポキシ樹脂(A)の含有量と常温で液状のエポキシ樹脂(B)の含有量と活性エステル化合物(C)の含有量の合計100質量%に対して、20質量%以上、80質量%以下の範囲内であることが好ましく、30質量%以上、70質量%以下がより好ましく、40質量%以上、60質量%以下が更に好ましい。活性エステル化合物(C)の含有量が20質量%以上であると、樹脂組成物の硬化物の誘電特性を高めることができる。特に好ましくは、上記のエポキシ樹脂の全エポキシ当量に対して、活性エステル化合物のエステル当量の比が、0.45:0.55~0.65:0.35の範囲である。
【0039】
本発明に係る樹脂組成物は、活性エステル化合物(C)に加えて、活性エステル化合物(C)以外の他の硬化剤を含んでいてもよい。上記他の硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記他の硬化剤としては、フェノール化合物、アミン化合物、酸無水物及びジシアンジアミド等が挙げられる
本実施形態に係る樹脂組成物は、必須成分として無機充填材(D)を含んでいる。これにより、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の貯蔵弾性率E'を向上させることができる。さらに、得られる絶縁層の線膨張係数を小さくすることができる。
【0041】
[無機充填材(D)]
本発明の樹脂組成物は、無機充填材(D)を含有する。これにより、絶縁層と配線パターンからなる導体層との熱膨張率の差を低減することによりクラックの発生を抑止することができる。また、多層プリント配線基板を薄化した際に半導体装置の反りを低減することできるため、半田接続部の接続信頼性を向上させることができる。無機充填材(D)としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。
【0042】
これらの中でも、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、これらの中の一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の樹脂組成物において、無機充填材(D)は、カップリング剤等により表面処理されていることが好ましい。これにより、多層プリント配線板作製工程における絶縁層の表面粗化工程でデスミア性に優れた多層プリント配線板用樹脂組成物を得ることができる。
【0044】
表面処理の方法としては、特に限定されないが、湿式方式または乾式方式で予め処理されていてもよく、または樹脂組成物中に含有するカップリング剤で処理されていてもよい。特に、予め表面処理されていることが好ましく、無機充填材(D)の凝集を抑制でき、分散性に優れるため高充填しても流動性に優れ、微細粗度の形成が可能となる。
【0045】
表面処理に使用される上記カップリング剤は、例えば、エポキシシラン、スチリルシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、メルカプトシラン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメトキシルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、クロロプロピルシラン、ウレイドシラン化合物等を挙げることができる。これらの中でもアミノシラン、エポキシシラン、チオール系のアルコキシシランが好ましく、特に2級アミノシラン化合物が好ましい。2級アミノシラン化合物としては、例えばN-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメトキシルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これにより、多層プリント配線板作製工程における絶縁層の表面粗化工程でデスミア性により優れた多層プリント配線板用樹脂組成物を得ることができる。
【0046】
上記カップリング剤の無機充填材への表面処理剤量は、比表面積に依存するので、特に限定しないが、無機充填材の上記無機充填材に対して0.01質量%以上、5質量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.1質量%以上、3質量%以下が好ましい。カップリング剤の含有量が上記上限値を超えると、多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物にクラックが入る場合があり、上記下限値未満であると、樹脂成分との密着力が低下する場合がある。カップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、無機充填材(D)を十分に被覆することができ、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の耐熱性を向上させることができる。また、カップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、反応に影響を与えるのを抑制でき、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の曲げ強度等の低下を抑制することができる。
【0047】
無機充填材(D)の平均粒子径は、特に限定されないが、0.05μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましい。無機充填材(D)の平均粒子径が上記下限値以上であると、ワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、塗布時の作製時の作業性を向上させることができる。また、無機充填材(D)の平均粒子径は、特に限定されないが、4.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.5μm以下が特に好ましい。無機充填材(D)の平均粒子径が上記上限値以下であると、ワニス中で無機充填材(D)の沈降等の現象を抑制でき、より均一な樹脂層を得ることができる。また、充填量をさらに向上させることができる。また、プリント配線基板の回路寸法L/Sが15/15μmを下回る際には、配線間の絶縁性に影響を与えるのを抑制することができる。また、微細配線形成に必要な低粗度かつメッキ導体層との密着性を両立することができる。
【0048】
無機充填材(D)の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることができる。
【0049】
また、無機充填材(D)の形状やサイズは、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を一種類または二種類以上で併用してもよい。また、無機充填材の高充填化、高流動化の観点から、例えば平均粒子径0.5μm以上の無機充填剤と平均粒子径0.5μm未満、特に好ましくは、平均粒子径0.2μm以下の異なる無機充填剤を組合せることが好ましい。
【0050】
無機充填材(D)の形状は、燐片状や針状などのように異方性がある形状である場合、高剛性化、および低CTE化に有利となる。低CTE化、充填性、流動性の観点より球状のシリカが好ましい。
【0051】
樹脂組成物中に含まれる無機充填材(D)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、50.0質量%以上、85.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以上、75.0質量%以下がより好ましい。無機充填材(D)の含有量が上記範囲内であると、得られる絶縁層の強度やメッキ導体層との密着性に優れる。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、シアネートエステル樹脂、マレイミド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂、ビニル樹脂、アクリレート化合物から選択される少なくとも一種をさらに含んでもよい。これにより、ガラス転移温度を上げることができ耐熱性を付与できる。
【0053】
上記シアネートエステル樹脂は、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。具体的には、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等のビスフェノール型シアネートエステル樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネートエステル樹脂が好ましい。これにより、架橋密度増加による耐熱性が向上し、さらには難燃性も向上する。ノボラック型シアネートエステル樹脂は、硬化反応後にトリアジン環を形成するからである。さらに、ノボラック型シアネートエステル樹脂は、その構造上ベンゼン環の割合が高く、炭化しやすいためと考えられる。
【0054】
上記マレイミド化合物は、例えば分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましい。
【0055】
分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物としては、例えば、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N'-エチレンジマレイミド、N,N'-ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子内に3つ以上のマレイミド基を有する化合物等が挙げられる。
【0056】
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。これらのマレイミド化合物の中でも、低吸水率である点等から、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(大和化成工業社製、BMI-4000)、ビフェニルアラルキル型マレイミド(日本化薬社製、MIR-3000)が好ましく、耐熱性の観点から、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業社製、BMI-1000)、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(大和化成工業社製、BMI-5100)、こ、ポリフェニルメタンマレイミド(大和化成工業社製、BMI-2300)が好ましい。
【0057】
上記ベンゾシクロブテン樹脂の市販品としては、XUS-35077XUS(ダウケミカル社製)、上記アクリレートの市販品とてしは、A-9300(新中村化学工業社製)などが挙げられる。
【0058】
シアネートエステル樹脂、マレイミド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂、ビニル樹脂、アクリレート化合物から選択される少なくとも一種の樹脂の含有量は、特に限定されないが、上記多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物全体の0.5質量%以上、50質量%以下が好ましく、特に1質量%以上、30質量%以下が好ましい。含有量が上記下限値未満であるとガラス転移温度を上げる効果が十分得られない場合があり、上記上限値を超えると吸水率が悪化しデスミア処理後の表面平滑性が低下する場合がある。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上とそれらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0060】
この中でも、上記熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選択される一種以上を含むことができる。硬化物の伸びを高める観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂を用いてもよい。
【0061】
上記フェノキシ樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、ビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール)骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP(4,4'-(1,4)-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール)骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ(4,4'-シクロヘキシィジエンビスフェノール)骨格を有するフェノキシ樹脂等ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ノボラック骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノキシ樹脂、ノルボルネン骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。またフェノキシ樹脂として、これら中の骨格を複数種類有した構造を用いることもできるし、それぞれの骨格の比率が異なるフェノキシ樹脂を用いることができる。さらに異なる骨格のフェノキシ樹脂を複数種類用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有するフェノキシ樹脂を複数種類用いたり、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0062】
上記フェノキシ樹脂としては、分子内にエステル基を有するものが時に好ましい。分子内にエステル基を有するフェノキシ樹脂としては、下記一般式(2)で表されており、末端にエポキシ基を有する、重量平均分子量Mwが5000以上、200000以下のエステル化フェノキシ樹脂である。このエステル化フェノキシ樹脂は、吸水性を示す水酸基等の極性基の一部または全てが、それぞれ疎水性基でキャップされている。
【0063】
【化4】
(上記式(2)中、Aは、上記式(3)で表される構造を含み、R
1及びR
2は、互いに異なっていてもよく、水素原子又は上記式(4)で表される構造である。ただし、R
1及びR
2の少なくともいずれか一方は上記式(4)で表される基である。R
3の5モル%以上は炭素数1~10の脂肪族カルボニル基又は芳香族カルボニル基で、残りは水素原子であり、nは繰り返し数の平均値であり、5以上、500以下の整数である。上記式(3)中、X
1は直接結合、炭素数1以上、13以下の2価の炭化水素基、-O-、-S-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-及び-CO-から選ばれる基であり、R
4~R
11は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上、12以下のアルキル基、炭素数1以上、12以下のアルコキシ基、炭素数6以上、12以下のアリール基、炭素数1以上、12以下のアルケニル基、炭素数1以上、12以下のアルキニル基から任意に選ばれる基である。)
上記(3)で表される構造は、下記式(5)または下記式(6)で表される構造である。
【0064】
【化5】
上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限値は、例えば、10,000以上であり、好ましくは15,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上である。これにより、他の樹脂との相溶性や溶剤への溶解性を向上させることができる。一方、フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限値は、例えば、60,000以下であり、好ましく55,000以下であり、より好ましくは50,000以下である。これにより、成膜性が向上し、プリント配線基板の製造に用いる場合に不具合が発生するのを抑制することができる。
【0065】
上記ポリイミド樹脂の市販品としては、PAIDシリーズ(荒川化学工業社製)およびリカコートSN20(新日本理化社製)、上記ポリアミドイミド樹脂の市販品としては、バイロマックスHR16NN(東洋紡績社製)、上記ポリアミド樹脂の市販品としては、カヤフレックスBPAM-155(日本化薬社製)、上記ポリフェニレンエーテル樹脂の市販品としては、NORYL Resin SA90(SABC社製)などが挙げられる。
【0066】
熱可塑性樹脂(例えば、フェノキシ樹脂)の含有量は、とくに限定されないが、無機充填材を除く熱硬化性樹脂組成物全体に対して、0.5質量%以上、40質量%以下が好ましく、1質量%以上、20質量%以下がより好ましい。含有量が上記下限値以上であると、絶縁層の機械強度の低下や、絶縁層と導体回路とのメッキ密着性の低下を抑制することができる。上記上限値以下であると、絶縁層の熱膨張率の増加を抑制でき、耐熱性の低下を抑制することができる。
【0067】
このほか、必要に応じて、樹脂組成物には硬化促進剤、カップリング剤を適宜配合することができる。
【0068】
硬化促進剤としては特に限定されないが、これにより硬化時間および硬化温度を適宜調整することができる。硬化促進剤としては、例えば、TPP、TPP-K、TPP-S、TPTP-S(北興化学工業社製)などの有機ホスフィン化合物、キュアゾール2MZ、2E4MZ、2PZ、1B2PZ、Cl1Z、Cl1Z-CN、Cl1Z-CNS、Cl1Z-A、2MZ-OK、2MA-OK、2PHZ(四国化成工業社製)などのイミダゾール化合物、ノバキュア(旭化成工業社製)、フジキュア(富士化成工業社製)などのアミンアダクト化合物、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7,4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4-ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の有機金属錯体又は有機金属塩、等が挙げられる。硬化促進剤は2種以上を併用してもよい。
【0069】
硬化促進剤の含有量は、無機充填材(D)を除く不揮発分の100質量%に対し、0.01質量%以上、5.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上、3.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上、1.5質量%以下であることが特に好ましい。硬化促進剤の含有量をかかる範囲内に設定することにより、樹脂組成物から得られる硬化物の耐熱性をより優れたものとすることができる。
【0070】
さらに、樹脂組成物は、別途カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤は樹脂組成物の調製時に直接添加してもよいし、無機充填材(D)にあらかじめ添加しておいてもよい。カップリング剤の使用により、繊維基材または無機充填材(D)と各樹脂との界面の濡れ性をさらに向上させることができる。したがって、カップリング剤を使用することは好ましく、得られる絶縁層の耐熱性を改良することができる。
【0071】
カップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0072】
これにより、繊維基材または無機充填材(D)と各樹脂との界面の濡れ性を高くすることができ、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の耐熱性をより向上させることができる。
【0073】
シランカップリング剤としては、各種のものを用いることができるが、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン等が挙げられる。
【0074】
具体的な化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうちの一種または二種以上を組み合せて用いることができる。これらのうちエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシランが好ましく、アミノシランとしては、1級アミノシラン又はアニリノシランがより好ましい。
【0075】
さらに、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、硬化促進剤、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤、ゴム粒子等の上記成分以外の添加物を添加してもよい。
【0076】
顔料としては、カオリン、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、合成ウルトラマリン青等の無機顔料、フタロシアニン等の多環顔料、アゾ顔料等が挙げられる。
【0077】
染料としては、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、キサンテン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、インジゴイド、オキサジン、キナクリドン、ベンツイミダゾロン、ビオランスロン、フタロシアニン、アゾメチン等が挙げられる。
【0078】
本発明の樹脂組成物は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等の有機溶媒中で、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、自転公転式分散方式等の各種混合機を用いて溶解、混合、撹拌して樹脂ワニスとすることができる。
【0079】
樹脂ワニスの固形分は、特に限定されないが、40質量%以上、80質量%以下が好ましく、特に50質量%以上、70質量%以下が好ましい。これにより、樹脂ワニスを使ってキャリア付樹脂膜にした際の膜の均一性に優れ、繊維基材への含浸性をさらに向上させることができる。
【0080】
次いで、本実施形態の樹脂膜について説明する。
【0081】
本実施形態の樹脂膜は、ワニス状である上記熱硬化性樹脂組成物をフィルム化することにより得ることができる。例えば、本実施形態の樹脂膜は、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を塗布して得られた塗布膜に対して、溶剤を除去することにより得ることができる。このような樹脂膜においては、溶剤含有率が樹脂膜全体に対して5質量%以下とすることができる。本実施形態において、たとえば100℃以上、150℃以下、1分以上、5分以下の条件で溶剤を除去する工程を実施してもよい。これにより、熱硬化性樹脂を含む樹脂膜の硬化が進行することを抑制しつつ、十分に溶剤を除去することが可能となる。
【0082】
本実施形態の樹脂膜は、繊維基材を内部に含むことができ、上記樹脂組成物を当該繊維基材に含浸してなるプリプレグであってもよい。
【0083】
本実施形態において、樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、樹脂組成物からなる上記樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法等が挙げられる。
【0084】
上記繊維基材としては、例えば、ガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材を用いると、プリント配線基板の機械的強度、耐熱性を良好なものとすることができる。
【0085】
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上90μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上できる。
【0086】
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の樹脂組成物の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマ等のレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、樹脂基板の反りを抑制できたりする。
【0087】
上記ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる一種または二種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられる。
(キャリア付き樹脂膜)
次いで、本実施形態のキャリア付樹脂膜について説明する。
【0088】
図1(a)は、本実施形態におけるキャリア付樹脂膜10の構成の一例を示す断面図である。
【0089】
本実施形態のキャリア付樹脂膜10は、
図1(a)に示すように、キャリア基材40と、キャリア基材40上に設けられている、めっきプロセス用のプライマー層30、および、めっき層の下地となる絶縁膜20を備えることができる。キャリア付樹脂膜10において、プライマー層30または絶縁膜20の少なくとも一方が、上記樹脂組成物からなる樹脂膜で構成されることが好ましい。これにより、樹脂膜のハンドリング性を向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態のキャリア付樹脂膜12は、
図1(b)に示すように、キャリア基材40と、キャリア基材40上に形成された上記樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備えることができる。当該樹脂膜は、めっき層の下地となる絶縁膜20として用いることができる。
【0091】
キャリア付樹脂膜10,12は、巻き取り可能なロール形状でも、矩形形状などの枚葉形状であってもよい。キャリア付樹脂膜10,12の表面は、例えば、露出していてもよく、保護フィルム(カバーフィルム)で覆われていてもよい。保護フィルムとしては、公知の保護機能を有するフィルムを用いることができるが、例えば、PETフィルムを使用してもよい。
【0092】
本実施形態において、キャリア基材40としては、例えば、高分子フィルムや金属箔などを用いることができる。当該高分子フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシート等の離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。当該金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅および/または銅系合金、アルミおよび/またはアルミ系合金、鉄および/または鉄系合金、銀および/または銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートで構成されるシートが安価および剥離強度の調節が簡便なため最も好ましい。これにより、上記キャリア付樹脂膜10から、適度な強度で剥離することが容易となる。
【0093】
上記樹脂膜の厚みの下限値は、特に限定されないが、例えば、1μm以上でもよく、3μm以上でもよく、5μm以上でもよい。これにより、樹脂膜10の機械強度を高めることができる。一方、樹脂膜10の厚みの上限値は、特に限定されないが、例えば、500μm以下としてもよく、300μm以下としてもよく、100μm以下としてもよい。これにより、半導体装置の薄層化を図ることができる。上記樹脂膜の厚みとしては、絶縁膜20の厚みでもよく、絶縁膜20およびプライマー層30の合計厚みでもよい。
【0094】
上記プライマー層30の膜厚の下限値は、例えば、1μm以上であり、好ましくは2μm以上である。これにより、絶縁信頼性を向上させることができる。一方、上記プライマー層30の膜厚の上限値は、例えば、10μm以下であり、好ましくは8μm以下である。これにより、プリント配線基板の薄層化を実現できる。また、プライマー層30の膜厚を上記範囲内とすることにより、ビルドアップ層における絶縁層の特性を失うことなく薄膜化に対応したプリント配線基板を得ることができる。
【0095】
上記絶縁膜20の膜厚の下限値は、例えば、5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。これにより、絶縁信頼性を向上させることができる。一方、上記絶縁膜20の膜厚の上限値は、例えば、50μm以下であり、好ましくは40μm以下である。これにより、プリント配線基板の薄層化を実現できる。また、絶縁膜20の膜厚を上記範囲内とすることにより、プリント配線基板を製造する際に、内層回路の凹凸を充填して成形することができるとともに、好適なビルドアップ層の絶縁樹脂層厚みを確保することができる。
【0096】
キャリア基材40の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上、100μm以下としてもよく、10μm以上、70μm以下としてもよい。これにより、キャリア付樹脂膜10を製造する際の取り扱い性が良好となり好ましい。
【0097】
本実施形態のキャリア付樹脂膜10の樹脂膜は、単層でも多層でもよく、1種または2種以上の膜で構成されていてもよい。当該樹脂シートが多層の場合、同種で構成されてもよく、異種で構成されてもよい。また、キャリア付樹脂膜10は、樹脂膜10上の最外層側に、保護膜を有していてもよい。
【0098】
本実施形態の樹脂膜は、上記熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜である。当該樹脂膜の硬化膜は、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される。上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物である硬化膜は、プリント配線基板のビルドアップ層を構成する絶縁層として用いることができる。
(プリント配線基板)
本実施形態のプリント配線基板は、上記の樹脂膜の硬化物(熱硬化性樹脂組成物の硬化物)で構成された絶縁層を備えるものである。
【0099】
本実施形態において、樹脂膜の硬化物は、例えば、通常のプリント配線基板のビルドアップ層、コア基材を有しないプリント配線基板におけるビルドアップ層、PLPに用いられるコアレス基板のビルドアップ層、MIS基板のビルドアップ層等に用いることができる。このようなビルドアップ層を構成する絶縁層は、複数の半導体パッケージを一括して作成するために利用させる大面積のプリント配線基板において、当該プリント配線基板を構成するビルドアップ層にも好適に用いることができる。
【0100】
また、本実施形態において、絶縁膜形成用の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜において、ガラス繊維を含浸する構成とすることができる。このような樹脂膜をビルドアップ層に用いた半導体パッケージにおいても、樹脂膜の硬化物の線膨張係数を低くすることができるので、パッケージ反りを十分に抑制することができる。
(半導体パッケージ)
図2は、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の一例を示す工程断面図である。
【0101】
本実施形態の半導体装置(半導体パッケージ200)は、プリント配線基板と、プリント配線基板の回路層上に搭載された、またはプリント配線基板に内蔵された半導体素子240と、を備えることができる。
【0102】
以下、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の概要について説明する。
【0103】
まず、
図2(a)に示すように、絶縁層102、ビアホール104および金属層108を備えるコア基材100を準備する。絶縁層102にはビアホール104が形成されている。ビアホール104には、金属層(ビア)が埋設されている。当該金属層は、無電解金属めっき膜106で覆われていてもよい。絶縁層102の表面に形成された金属層108(所定の回路パターンを有する回路層)は、ビアホール104に形成されたビアと電気的に接続する。
図2(a)には、金属層108は、コア基材100の一面上に形成されているが、両面に形成されていてもよい。
【0104】
続いて、コア基材100の一面上に金属層108を埋め込むように、上記熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜を形成する。当該樹脂膜として、絶縁膜20およびプライマー層30の複数層を用いることができる。また、当該樹脂膜として、絶縁膜20のみの単層を用いてもよい。
【0105】
続いて、上記樹脂膜に、不図示の開口部を形成する。開口部は、金属層108を露出させるように形成することができる。開口部の形成方法としては、特に限定されず、例えば、レーザー加工法、露光現像法またはブラスト工法、などの方法を用いることができる。
【0106】
本実施形態において、このような開口部を形成した後、上記樹脂膜(絶縁膜20、プライマー層30)を熱硬化させてもよい。これにより、上記樹脂膜を、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物で構成することができる。
【0107】
また、必要に応じて、デスミア処理を行うことができる。デスミア処理では、開口部の内部に生じたスミアを除去するとともに、上記樹脂膜の表面を粗化できる。
【0108】
上記デスミア処理の方法は特に限定されないが、たとえば、以下のように行うことができる。まず、樹脂膜を積層したコア基材100を、有機溶剤を含む膨潤液に浸漬し、次いでアルカリ性過マンガン酸塩水溶液に浸漬し、中和して粗化処理することができる。有機溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルやエチレングリコール等を用いる事ができる。このような膨潤液として、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリングディップ セキュリガント P」が挙げられる。過マンガン酸塩としては、たとえば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等を用いることができる。膨潤液や過マンガン酸塩水溶液の液温としては、例えば、50℃以上でもよく、100℃以下でもよい。また、膨潤液や過マンガン酸塩水溶液への浸漬時間は、例えば、1分間以上でもよく、30分間以下でもよい。
【0109】
デスミア処理する工程では、上記の湿式のデスミア処理のみを行うことができるが、デスミア処理に加えてプラズマ照射を行っても良い。
【0110】
続いて、プライマー層30上に無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっき法の例を説明する。例えば、下地層のプライマー層30の表面上に触媒核を付与する。この触媒核としては、特に限定されないが、例えば、貴金属イオンやパラジウムコロイドを用いることができる。引き続き、この触媒核を核として、無電解めっき処理により、無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっきには、例えば、硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウム等を含むものを用いることができる。なお、無電解めっき後に、100℃以上、250℃以下の加熱処理を施し、めっき被膜を安定化させるができる。
【0111】
続いて、
図2(b)に示すように、無電解金属めっき膜202上に所定の開口パターン(開口部206)を有するレジスト204を形成する。この開口パターンは、例えば回路パターンに相当する。レジスト204としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、液状およびドライフィルムを用いることができる。微細配線形成の場合には、レジスト204としては、感光性ドライフィルム等を用いることができる。感光性ドライフィルムを用いた一例を説明する。例えば、無電解金属めっき膜202上に感光性ドライフィルムを積層し、非回路形成領域を露光して光硬化させ、未露光部を現像液で溶解、除去する。硬化した感光性ドライフィルムを残存させることにより、レジスト204を形成する。
【0112】
続いて、
図2(c)に示すように、少なくともレジスト204の開口パターン内部かつ無電解金属めっき膜202上に、電気めっき処理により、電解金属めっき層208を形成する。電気めっきとしては、特に限定されないが、通常のプリント配線基板で用いられる公知の方法を使用することができ、例えば、硫酸銅等のめっき液中に浸漬させた状態で、めっき液に電流を流す等の方法を使用することができる。電解金属めっき層208は単層でもよく多層構造を有していてもよい。電解金属めっき層208の材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田のいずれか1種以上を用いることができる。
【0113】
続いて、
図2(d)に示すように、アルカリ性剥離液や硫酸または市販のレジスト剥離液等を用いて、レジスト204を除去する。
【0114】
続いて、
図2(e)に示すように、電解金属めっき層208が形成されている領域以外領域(開口部210)における無電解金属めっき膜202を除去する。すなわち、電解金属めっき層208をマスクとして、下層の無電解金属めっき膜202を選択的に除去する。例えば、ソフトエッチング(フラッシュエッチング)等を用いることにより、無電解金属めっき膜202を除去することができる。ここで、ソフトエッチング処理は、例えば、硫酸および過酸化水素を含むエッチング液を用いたエッチングにより行うことができる。これにより、所定のパターンを有する金属層220を形成することができる。このように、セミアディティブプロセス(SAP)によって、本実施形態の樹脂膜の硬化物からなる絶縁層上に、無電解金属めっき膜202および電解金属めっき層208で構成される金属層220を形成することができる。
【0115】
さらに、コア基材100および上記ビルドアップ層で構成されるプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返すことにより、多層にすることができる。
【0116】
以上により、本実施形態のプリント配線基板が得られる。
【0117】
続いて、
図2(f)に示すように、得られたプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返す。そして、必要に応じて、ソルダーレジスト層230をプリント配線基板の両面又は片面に積層する。
【0118】
ソルダーレジスト層230の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストをラミネートし、露光、および現像により形成する方法、または液状レジストを印刷したものを露光、および現像することにより形成する方法によりなされる。
【0119】
続いて、リフロー処理を行なうことによって、半導体素子240を配線パターンの一部である接続端子上に、半田バンプ250を介して固着させる。その後、半導体素子240、および半田バンプ250等を封止材層260で覆うように封止する。
【0120】
以上により、
図2(f)に示す、半導体パッケージ200が得られる。
【0121】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0122】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(熱硬化性樹脂組成物の調製)
各実施例および各比較例について、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物(樹脂ワニスP)を調整した。
【0123】
まず、表1に示す固形分割合で各成分を溶解または分散させ、メチルエチルケトンで不揮発分70質量%となるように調整し、高速撹拌装置を用い撹拌して樹脂ワニスPを調製した。
【0124】
表1における各成分の原料の詳細は下記のとおりである。
(熱硬化性樹脂)
エポキシ樹脂A1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC-3000、エポキシ当量276g/eq)
エポキシ樹脂A2:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC-3500、エポキシ当量205g/eq)
エポキシ樹脂A3:トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER1032H60、エポキシ当量169g/eq)
エポキシ樹脂A4:ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製、HP-6000、エポキシ当量250g/eq)
エポキシ樹脂A5:4官能ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP-4710、エポキシ当量171g/eq)
エポキシ樹脂B1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON、830S、エポキシ当量170g/eq、常温で液状)
エポキシ樹脂B2:2官能ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(ADEKA社製、EP-4088L、エポキシ当量170g/eq、常温で液状)
エポキシ樹脂B3:トリグリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER630、エポキシ当量96g/eq、常温で液状)
エポキシ樹脂B4:2官能ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP-4032D、エポキシ当量142g/eq、常温で液状)
シアネートエステル樹脂:フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザ社製、PT-30)
マレイミド化合物:ビフェニルアラルキル型マレイミド(日本化薬社製、MIR-3000)
アクリレート化合物:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学工業社製、A-9300)
ベンゾシクロブテン樹脂:ジビニルテトラメチルシロキサンベンゾシクロブテン樹脂(ダウケミカル社製、XUS-35077XUS)
(硬化剤)
活性エステル系硬化剤1:式(1)で表される構造部位を有する活性エステル樹脂(DIC社製、EXB-8100L-65T、活性エステル当量245g/eq)
活性エステル系硬化剤2:ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂(DIC社製、HPC-8000-65T、活性エステル当量223g/eq)
(熱可塑性樹脂)
フェノキシ樹脂1:エステル化フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、YL7899)
フェノキシ樹脂2:フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、YX6900)
ポリフェニレンエーテル樹脂:末端OH含有ポリフェニレンエーテル樹脂(SABI社製、SA90、数平均分子量1670)
ポリイミド樹脂:シリコーン変性ポリイミド樹脂(酸無水物として4,4'-ビスフェノールA酸二無水物と4,4'-オキシジフタル酸無水物、ジアミンとして2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとα,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量836)を用いて、モル比が酸無水物50/50mol%、ジアミン80/20mol%、重量平均分子量49000)
(無機充填材)
無機充填材:球状シリカ粒子(アドマテックス社製、アミノフェニルプロピルトリメトキシシラン処理されたSC4050、平均粒径1.1μm)
(カップリング剤)
カップリング剤:アミノフェニルプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-573)
(硬化促進剤)
アミン化合物:N,N-ジメチルアミノピリジン
(キャリア付き樹脂膜:樹脂シートの製造)
厚み38μmのPETフィルムの片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後の樹脂層の厚みの総和が30μmとなるように、得られた樹脂ワニスPを塗工し、これを160℃の乾燥装置で3分間乾燥して、PETフィルム上に、絶縁膜が積層された樹脂シート(キャリア付き樹脂膜)を得た。
(プリント配線板)
2ステージビルドアップラミネーター(ニチゴー・モートン社製 CVP300)を用いて、厚さ30μmの樹脂シート(キャリア付き樹脂膜1)から積層体を製造した。具体的には、厚み100μmのELC-4785TH-G(住友ベークライト社製、銅箔12μm)を用いて、ドリル機で所定のところを開孔して、無電解めっきにより、導通を図り、銅箔をエッチングして回路形成面を有する残銅60%のコア層を作製した。また、キャリア付き樹脂膜の樹脂膜を枚葉にカットし、上記CVP300にセットして上記コア層に仮付けし、真空ラミネーター内で110℃、0.8MPa、30秒間真空ラミネーションをおこなった。
【0125】
その後、ニチゴー・モートン社製CPV300が備えるホットプレス装置を用いて、110℃、0.6MPa、60秒間ホットプレスして平滑化した。
【0126】
その後、得られた積層体を熱風乾燥装置に160℃、60分間入れた後、PETフィルムを剥離し、樹脂膜の熱硬化性樹脂の硬化反応をおこなった。
【0127】
つぎに、得られた積層板に炭酸レーザーによりビア孔を形成した。ビア内および、樹脂層表面を、60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP:過マンガン酸ナトリウム濃度60g/l、NaOH濃度45g/l)に45分浸漬後、中和して粗化処理をおこなった。
【0128】
これを脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき皮膜を約0.5μm形成し、レジストを形成し、無電解銅めっき皮膜を給電層としてパターン電気めっき銅20μm形成させ、回路加工を施した。つぎに、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行った後、フラッシュエッチングで給電層を除去した。同様の工程を更にもう一回繰返し内層回路と合せて6層基板を作製した。次いで、ソルダーレジスト層を形成し、半導体素子搭載パッドなどが露出するように開口部を形成した。最後に、ソルダーレジスト層から露出した回路層上へ、無電解ニッケルめっき層3μmと、さらにその上へ、無電解金めっき層0.1μmとからなるめっき層を形成し、得られた基板を50mm×50mmサイズに切断し、プリント配線板を得た。
(半導体パッケージの作製)
半導体パッケージは、得られたプリント配線基板上に半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ10mm×10mm、厚み0.1mm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP-4152S)を充填し、その後、液状封止樹脂を硬化させることで半導体パッケージを得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。上記半導体素子の半田バンプは、Sn/Pb組成の共晶で形成されたものを用いた。最後に14mm×14mmのサイズにルーターで個
片化し、半導体パッケージを得た。
【0129】
以上のようにして、各実施例および各比較例において得られた樹脂ワニスP(熱硬化性樹脂組成物)を用いて、キャリア付き樹脂膜、プリント配線基板、半導体パッケージを作成した。これらについて、下記の評価を行った。評価結果について、表1に示す。
(硬化物)
上記キャリア付き樹脂膜の厚み30μmの樹脂膜を4枚重ね、銅箔を用いてホットプレスを用いて200℃、1kgf/mm2のプレス条件で、2時間加熱加圧し、樹脂膜を硬化させた。次いで、得られた硬化物の銅箔をエッチングにより除去し、サンプルとして硬化物を製造した。
(誘電正接)
得られた硬化物について、1GHzでの誘電正接を空洞共振器法で測定した。
(表面粗さRa、ピール強度)
得られたプリント配線板を用いて、JIS C-6481:1996に準拠して、上述の粗化処理後の23℃におけるピール強度を測定した。
【0130】
ここで、当該粗化処理後の表面粗さRaについて、非接触型3次元光干渉式表面粗さ計(ビーコ社製、WYKO NT1100)で測定することにより評価した。尚、表面粗さRaは10点測定し、10点の平均値とした。
(吸湿耐熱試験)
得られた半導体パッケージについて、JEDEC(レベル1)に準拠して、温度85℃、湿度85%、時間168時間の前処理を行い、その後、260℃に達するリフロー炉に3回通し、超音波探傷装置でビア内のめっき、および配線形成されためっきについて評価した。各符号は以下の通りである。
○:めっき膨れ無し
△:リフロー2回まで、めっき膨れ無し
×:リフロー1回以下で、めっき膨れ有り
(スミア除去性)
ブラインドビアホール底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、得られた画像からビアホール底部の壁面からの最大スミア長を測定した。尚サンプルは、プリント配線板の製造過程のビア内および、樹脂層表面を粗化処理した後のサンプルを使用した。スミア除去性は、各符号は以下の通りである。
◎:最大スミア長が2μm未満
○:最大スミア長が2μm以上3.5μm未満
×:最大スミア長が3.5μm以上
(絶縁試験)
得られたプリント配線基板のL/S=15/15μmの微細回路パターンの絶縁信頼性評価を行った。温度130℃、湿度98%、印加電圧5.0Vの条件で連続湿中絶縁抵抗を評価した。なお、抵抗値106Ω以下を故障とした。評価基準は以下の通りである。
○:200時間以上故障なし
△:100以上、200時間未満で故障あり
×:100時間未満で故障あり
【0131】
【表1】
比較例1および2の熱硬化性樹脂組成物を使用した場合、誘電正接が高くなるため、伝送損失が大きくなると考えられる。比較例1の熱硬化性樹脂組成物を使用した場合、スミア除去性に劣る。比較例2の熱硬化性樹脂組成物を使用した場合、めっきのピール強度が低く、Raも大きくなることからSAP特性が低下することが分かった。また、比較例1および2の熱硬化性樹脂組成物を使用した場合、吸湿耐熱性や絶縁性に劣ることが分かった。
【0132】
これに対して、実施例1から15の熱硬化性樹脂組成物を使用することにより、低誘電正接を有しており、低粗面化によってSAP特性が向上した絶縁層を実現できることが分かった。またブラインドビア低部のスミア除去性にも優れている。この絶縁層は、プリント配線基板のビルドアップ層に好適であることが分かった。また、実施例1から15の熱硬化性樹脂組成物を使用することにより、絶縁性に優れたビルドアップ基板、およびリフロー耐熱性に優れた半導体装置を得られることが分かった。
【0133】
以上、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。