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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121454
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】耐火部材
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20220812BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20220812BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
F16L5/04
A62C3/16 B
E04B1/94 F
E04B1/94 T
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091749
(22)【出願日】2022-06-06
(62)【分割の表示】P 2018016456の分割
【原出願日】2018-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2017174564
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000165996
【氏名又は名称】株式会社古河テクノマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 道雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 周幸
(72)【発明者】
【氏名】灘友 滉
(72)【発明者】
【氏名】大庭 啓彦
(72)【発明者】
【氏名】三栖 厚男
(57)【要約】
【課題】配管の外周面と貫通孔の内周面との間に熱膨張性部材を設ける場合に、現場での施工作業性を良好にするとともに、施工時間を短くする。
【解決手段】耐火部材1は、二重構造の床を構成する上側板材に形成された貫通孔の内周面と該貫通孔に挿通される配管の外周面との間、及び二重構造の床を構成する下側板材に形成された貫通孔の内周面と該貫通孔に挿通される配管の外周面との間にそれぞれ配置され、貫通孔の内周面と配管の外周面との隙間を覆う弾性材料からなるシール3、4材と、シール材3、4に固定されるとともに上側板材と下側板材との間の中空部分に配置され、火災時の熱によって膨張する熱膨張性部材2とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災時に、建物の二重構造の床に形成された貫通孔を介した延焼を抑制する耐火部材において、
上記二重構造の床を構成する上側板材に形成された上記貫通孔の内周面と該貫通孔に挿通される上記配管の外周面との間、及び上記二重構造の床を構成する下側板材に形成された上記貫通孔の内周面と該貫通孔に挿通される上記配管の外周面との間にそれぞれ配置され、上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面との隙間を覆う弾性材料からなるシール材と、
上記シール材に固定されるとともに上記上側板材と上記下側板材との間の中空部分に配置され、火災時の熱によって膨張する熱膨張性部材とを備えていることを特徴とする耐火部材。
【請求項2】
建物の区画部に形成された貫通孔の内周面と、該貫通孔に挿通される配管の外周面との間に配置され、火災時に上記貫通孔を介した延焼を抑制する耐火部材において、
上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面との間に配置され、火災時の熱によって膨張する熱膨張性部材と、
上記熱膨張性部材を保持するとともに、上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面との間に配置される保持部材と、
上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面の全周に亘って密着した状態で取り付けられる弾性材料からなるシール材とを備えており、
上記シール材は、上記保持部材を挟んで上記貫通孔の内周面側と上記配管の外周面側とに配置されることを特徴とする耐火部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の配管が貫通する貫通孔に設けられる耐火部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば集合住宅のような建物の場合、床に貫通孔を設けて排水管等の配管を貫通孔内に配置し、排水を上の階の部屋から下へ流すことができるようになっている。一般的に、配管の外径は貫通孔の内径よりも小さくなっているので配管の外周面と貫通孔の内周面との間には隙間ができてしまう。この隙間には、例えば特許文献1、2にそれぞれ開示されている耐火部材を配設して下の階の部屋で火災が発生した場合に炎が上の階の部屋に達しないようにすることが行われている。
【0003】
特許文献1の部材は、貫通孔の内周面と配管の外周面との間に装着可能な厚みを有し、かつ、配管の外周に沿って巻くことが可能な長さを有する熱膨張性耐熱シール材と、このシール材の側面に貼り付けられる粘着テープとを備えている。この特許文献1の部材を用いて施工する際には、配管の外周面に熱膨張性耐熱シール材を巻き付け、この状態を粘着テープで保持する。熱膨張性耐熱シール材と、貫通孔の内周面との間には隙間があるので、その隙間にモルタルや耐火パテ等の充填材を充填して隙間を塞ぐ。
【0004】
特許文献2の部材は、熱膨張体と、熱膨張体を変形させた際に形状を維持する形状維持部と、係止具とを備えている。この特許文献2の部材を用いて施工する際には、熱膨張体を貫通孔内に配置して係止具を貫通孔の上縁部に係止させる。その後、貫通孔の内周面と配管の外周面との隙間に上方からコーキング材を充填して隙間を塞ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-240854号公報
【特許文献2】特開2017-109069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように配管の外周面と貫通孔の内周面との隙間に熱膨張性部材を設けることで、下の階の部屋で火災が発生した場合に、その炎が熱膨張性部材に達すると熱膨張性部材が膨張して貫通孔を塞ぎ、上の階への延焼を抑制することができる。
【0007】
しかし、特許文献1の部材の施工時には、貫通孔の内周面と配管の外周面との隙間にモルタルや耐火パテ等の不定形な充填材を充填しなければならず、現場での施工作業性が悪いとともに施工に時間がかかるという問題がある。特許文献2の場合も不定形なコーキング材を充填しなければならないので同様な問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、配管の外周面と貫通孔の内周面との間に熱膨張性部材を設ける場合に、現場での施工作業性を良好にするとともに、施工時間を短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、弾性材からなるシール材を熱膨張性部材に固定しておき、このシール材によって配管の外周面と貫通孔の内周面との隙間を閉塞するようにした。
【0010】
第1の発明は、建物の区画部に形成された貫通孔の内周面と、該貫通孔に挿通される配管の外周面との間に配置され、火災時に上記貫通孔を介した延焼を抑制する耐火部材において、上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面との間に配置され、火災時の熱によって膨張する熱膨張性部材と、上記熱膨張性部材を保持する保持部材と、上記保持部材を介して上記熱膨張性部材に固定され、上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面との隙間を覆う弾性材料からなるシール材とを備え、上記熱膨張性部材と上記シール材とは間隔をあけて配置され、上記熱膨張性部材と上記シール材との間には上記シール材とは別部材で構成されたゴムシール材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、熱膨張性部材を貫通孔の内周面と配管の外周面との間に配置することで、火災時には、熱膨張性部材が貫通孔の内部において膨張して貫通孔が閉塞され、貫通孔を介した延焼が抑制される。一方、熱膨張性部材を貫通孔の内周面と配管の外周面との間に配置すると、この熱膨張性部材には弾性材料からなるシール材が固定されているので、このシール材によって貫通孔の内周面と配管の外周面との隙間が覆われる。よって、従来のような不定形な充填材を貫通孔の内周面と配管の外周面との間に充填する作業は不要になり、現場での施工作業性が良好になるとともに、施工時間が短くなる。
【0012】
また、シール材を貫通孔の内周面と配管の外周面との間に配置することで、配管が偏心することなく、貫通孔の中心に来るように調整することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、上記保持部材は、複数の開口を有するとともに、不燃材料で構成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、熱膨張性部材を保持部材に保持した状態で貫通孔の内周面と配管の外周面との所定位置に配置することが可能になる。この状態で火災時の熱によって熱膨張性部材が膨張しようとすると、保持部材に複数の開口があるので、保持部材が熱膨張性部材の膨張を阻害することはない。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、上記保持部材は網状部材であることを特徴とする。
【0016】
第4の発明は、第2または3の発明において、上記シール材は、上記保持部材に密着していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、火災時の煙等が貫通孔を通って別の部屋に侵入するのを抑制することができる。
【0018】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、上記熱膨張性部材の下部を覆うフィルム状または箔状の不燃部材を備えていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、熱膨張性部材の下部を不燃部材で覆っておくことで、熱膨張性部材の膨張時に熱膨張性部材が部分的に下方へ落下しにくくなる。また、不燃部材がフィルム状または箔状で薄いものであることから熱膨張性部材の膨張を阻害することはない。
【0020】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、上記耐火部材は、上記配管の外周面に沿った形状に変形する可撓性を有していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、耐火部材の形状を配管の外周面に沿った形状にすることが容易になる。
【0022】
第7の発明は、第6の発明において、上記配管の外周面に沿うように配置される複数の上記耐火部材を備えていることを特徴とする。
【0023】
第8の発明は、上記保持部材は上記区画部に対して固定手段により固定されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、配管の移動や地震、その他の振動による耐火部材のズレや落下を抑制することができる。
【0025】
第9の発明は、火災時に、建物の二重構造の床に形成された貫通孔を介した延焼を抑制する耐火部材において、上記二重構造の床を構成する上側板材に形成された上記貫通孔の内周面と該貫通孔に挿通される上記配管の外周面との間、及び上記二重構造の床を構成する下側板材に形成された上記貫通孔の内周面と該貫通孔に挿通される上記配管の外周面との間にそれぞれ配置され、上記貫通孔の内周面と上記配管の外周面との隙間を覆う弾性材料からなるシール材と、上記シール材に固定されるとともに上記上側板材と上記下側板材との間の中空部分に配置され、火災時の熱によって膨張する熱膨張性部材とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、弾性材からなるシール材を熱膨張性部材に固定しておき、このシール材によって配管の外周面と貫通孔の内周面との隙間を閉塞することができるので、配管の外周面と貫通孔の内周面との間に熱膨張性部材を設ける場合に、現場での施工作業性を良好にすることができるとともに、施工時間を短くすることができる。
【0027】
第2の発明によれば、複数の開口を有する保持部材で熱膨張性部材を保持するようにしたので、火災時に熱膨張性部材の膨張を阻害することなく、熱膨張性部材を貫通孔の内周面と配管の外周面との所定位置に配置することができる。
【0028】
第3の発明によれば、保持部材を網状部材としたので簡単かつ安価な構成としながら、火災時の膨張を阻害することなく熱膨張性部材を保持できる。
【0029】
第4の発明によれば、シール材が保持部材に密着しているので、火災時に煙等を遮断する効果がより一層高まる。
【0030】
第5の発明によれば、熱膨張性部材の下部を覆うフィルム状または箔状の不燃部材を備えているので、火災時に熱膨張性部材の膨張を阻害することなく、熱膨張性部材の部分的な落下を防止することができる。
【0031】
第6の発明によれば、耐火部材の形状を配管の外周面に沿った形状にすることが容易になるので、現場での施工作業性がより一層良好になる。
【0032】
第7の発明によれば、例えば配管が貫通孔に挿通された状態で、配管の外周面と貫通孔の内周面との間に熱膨張性部材を配置していくことができる。
【0033】
第8の発明によれば、配管の移動や地震、その他の振動による耐火部材のズレや落下を抑制することができ、所期の耐火性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態1に係る耐火部材を内周側から見た図である。
図2】実施形態1に係る耐火部材を外周側から見た図である。
図3図1におけるIII-III線断面図である。
図4】湾曲させた状態の耐火部材を上方から見た斜視図である。
図5】耐火構造の縦断面図である。
図6】配管が貫通孔に挿通された状態を上方から見た斜視図である。
図7】1つ目の耐火部材を設置した状態を上方から見た斜視図である。
図8】2つ目の耐火部材を設置した状態を上方から見た斜視図である。
図9】実施形態2に係る図5相当図である。
図10】実施形態2に係る図1相当図である。
図11】実施形態2の変形例2に係る図5相当図である。
図12】実施形態3に係る図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
(実施形態1)
図1図4は、本発明の実施形態1に係る耐火部材1を示すものである。この耐火部材1は、図5図8に示すように、建物の区画部100に形成された貫通孔101の内周面101aと、該貫通孔101に挿通される配管102の外周面102aとの間に配置されて使用される部材である。この耐火部材1を貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置しておくことで、火災時に貫通孔101を介した延焼を抑制することができる。この実施形態では、建物が集合住宅である場合について説明するが、建物としては、集合住宅以外であってもよく、少なくとも2階を有する戸建て住宅、事務所、工場、店舗等であってもよい。また、区画部100は、例えばALC床等の耐火性を有する床を挙げることができるが、これに限られるものではない。
【0037】
区画部100は水平に延びており、この区画部100の所定の部位に上下方向に貫通する貫通孔101が形成されている。この貫通孔101は断面が略円形となっている。また、配管102は、例えば排水管等を挙げることができるが、これに限られるものではない。図5に示すように、配管102は、貫通孔101に挿通された状態で上の階の部屋R1から下の階の部屋R2まで略鉛直に延びている。配管102は、例えば二重構造にすることができるが、これに限られるものではない。また、配管102は樹脂製とすることができる。樹脂製とした場合、火災の熱によって縮径したり、焼け落ちたりする可能性があるが、後述するように熱膨張性部材2が貫通孔2の内部で膨張することで貫通孔2を閉塞して上の階への延焼が抑制される。
【0038】
配管102の外径は、貫通孔101の内径よりも小さく設定されており、このため、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間には全周に亘って所定の隙間が形成されることになる。この隙間を塞ぐように上記耐火部材1が設置されることによって本発明の耐火構造Aを構成することができる。
【0039】
尚、この実施形態の説明では、耐火構造Aを構成した状態において耐火部材1の配管102側となる側を「内周側」といい、反対側、即ち耐火部材1の貫通孔101側を「外周側」というものとする。また、耐火構造Aを構成した状態において耐火部材1の上側となる側を「上」といい、耐火部材1の下側となる側を「下」というものとする。
【0040】
(耐火部材1の構成)
耐火部材1は、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置され、火災時の熱によって膨張する熱膨張性部材2と、外周側シール材3及び内周側シール材4と、保持部材5と、フィルム状不燃部材6と、ゴムシール材7を備えている。熱膨張性部材2は、建物に使用されている熱膨張性部材であればよく、種類は特に限定されないが、火災時の熱によって膨張する部材を挙げることができる。例えば、膨張黒鉛とホウ酸との化合物を熱膨張性部材2として使用することができる。この膨張黒鉛としては、炎で加熱したときに例えば100倍以上に膨張するものを使用することができる。
【0041】
熱膨張性部材2の性状は、特に限定されるものではないが、例えば、パテ状、ペースト状等のように、長期間に亘って垂れ落ちない性状とすることができる。好ましいのは、熱膨張性部材2を、数mm厚のテープ状に成形しておくことであり、外力を加えたときに撓ませることが可能な可撓性を有しているのが好ましい。
【0042】
このような性質を持つ熱膨張性部材2は、例えば柔軟なゴムまたは熱可塑性エラストマーに、膨張黒鉛、ホウ砂、可塑剤等を混合することによって得ることができる。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソブレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム等を挙げることができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。また、熱膨張性部材2としては、例えば、厚みが2~8mm(4mmが好ましい)であり、かつ、膨張黒鉛を配合したブチルゴムシーリング材が好ましい。熱膨張性部材2の上下方向の寸法は、貫通孔101の上下方向の寸法よりも短くすることができる。
【0043】
図1に示すように、保持部材5は、複数の開口5aを有するとともに、熱膨張性部材2を保持する部材である。保持部材5は、不燃材料からなる網状部材、具体的には金網(ラス金網)等を使用することができるが、これ以外にも、板材に複数の開口を形成した部材、針金を編んで作った部材等で構成することができる。
【0044】
保持部材5は、熱膨張性部材2の内周側に配置されている。保持部材5の一部が熱膨張性部材2に埋め込まれることによって保持部材5が熱膨張性部材2に固定されている。保持部材5は、熱膨張性部材2の下部から上部に亘るように、かつ、熱膨張性部材2の左右方向(図1における左右方向)両端部に亘るように形成されている。
【0045】
保持部材5の上部は、熱膨張性部材2の上部よりも上方へ突出するように形成されている。そして、保持部材5の上部には、耐火部材1の外周側へ突出する係止部5bが設けられている。この係止部5bは、保持部材5の上部を外周側へ向けて屈曲させることによって形成されており、保持部材5の本体部分と一体化されている。係止部5bは、耐火部材1を設置する際に、貫通孔101の周縁部に上方から係合することによって耐火部材1の落下を抑制するためのものである。保持部材5としては、例えば、0.20~1.0kg/m(0.5kg/mが好ましい)の亜鉛メッキ鋼線からなる金網を挙げることができる。また、保持部材5の端部は曲げ加工されており、作業者の怪我を防止している。
【0046】
外周側シール材3及び内周側シール材4は、保持部材5を介して熱膨張性部材2に固定されており、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの隙間を覆って気密性を確保するための弾性材料からなる部材である。外周側シール材3及び内周側シール材4は、例えばゴム製の発泡材(スポンジ)等を使用することができる。発泡材を使用する場合にはゴム製のものが好ましい。
【0047】
外周側シール材3は、保持部材5の上部において外周側の面に固定されていて、保持部材5の左右方向両端部に亘って延びている。内周側シール材4は、保持部材5の上部において内周側の面に固定されていて、保持部材5の左右方向両端部に亘って延びている。外周側シール材3及び内周側シール材4は、保持部材5に対して例えば気密性を有する粘着テープ等によって固定されており、外周側シール材3及び内周側シール材4と保持部材5とが密着している。また、外周側シール材3及び内周側シール材4と保持部材5との間には隙間ができないようになっている。これにより、火災時の煙等が貫通孔101を通って別の部屋に侵入するのを抑制することができる。
【0048】
外周側シール材3及び内周側シール材4の断面形状は略矩形状にすることができるが、これに限られるものではない。また、図3に示すように、外周側シール材3の内外方向の厚みは、内周側シール材4の内外方向の厚みよりも薄く設定されている。尚、これは一例であり、外周側シール材3の内外方向の厚みと内周側シール材4の内外方向の厚みとを同じにしてもよいし、外周側シール材3の内外方向の厚みを、内周側シール材4の内外方向の厚みよりも厚く設定してもよい。外周側シール材3の内外方向の厚みと内周側シール材4の内外方向の厚みとを合わせた寸法が、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの隙間の寸法よりも長く設定されている。これにより、外周側シール材3及び内周側シール材4を貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置した際に圧縮して弾性変形させることができる。
【0049】
外周側シール材3としては、例えば、密度0.02~0.10g/cm(0.06g/cmが好ましい)のEPDMスポンジ、CRスポンジ、ウレタンスポンジなどスポンジ類を挙げることができる。内周側シール材4も外周側シール材3と同様なスポンジ類を挙げることができる。
【0050】
フィルム状不燃部材6は、熱膨張性部材2の下部を覆う部材であり、例えばアルミニウム箔を有する基材に粘着層が設けられた不燃性のアルミテープ等で構成することができるが、これに限られるものではなく、薄い金属材に粘着層や接着層を設けたフィルム状の不燃部材や、箔状の不燃部材等を使用することができる。フィルム状不燃部材6は、必要に応じて設ければよい。
【0051】
フィルム状不燃部材6は、熱膨張性部材2の下部における外周側の面から下端面を経て、内周側の面に亘るように貼り付けられている。これにより、熱膨張性部材2の下端面だけでなく、外周側の面及び内周側の面もフィルム状不燃部材6で覆うことができる。フィルム状不燃部材6としては、例えば、厚みが50~500μm(200μmが好ましい)のアルミ箔、銅箔等を挙げることができる。
【0052】
ゴムシール材7は、例えば、ブチルゴム等で構成することができ、熱膨張性部材2の上方に設けられている。ゴムシール材7は、熱膨張性部材2の上端面に接触しており、そこから上方へ延び、外周側シール材3及び内周側シール材4の下端面に達するように形成されている。このゴムシール材7も保持部材5に固定されている。ゴムシール材7の厚みと、熱膨張性部材2の厚みとは同じにすることができるが、一方を厚くしてもよい。ゴムシール材7は、必須の構成部材ではなく、省略することもできる。ゴムシール材7としては、例えば、厚みが2~8mm(4mmが好ましい)のブチルゴム系シーリング材を挙げることができる。
【0053】
上記のように、耐火部材1を構成する各部材は、一般の作業者が手で力を加えると容易に変形させることができるものであり、従って、耐火部材1は、配管102の外周面102aに沿った形状に変形する可撓性を有している(図4参照)。
【0054】
また、配管102の外周面102aに沿うように配置される複数の耐火部材1を備えた構成とすることもできる。例えば、配管102の外周面102aの周長の1/2の長さを持った耐火部材1を2つ組み合わせることで、配管102の外周面102aの全周に亘って耐火部材1を配置することができる。3つ以上の耐火部材1を組み合わせることもできる。
【0055】
(耐火部材1の施工要領)
次に、上記のように構成された耐火部材1の施工要領について説明する。図6は、耐火部材1を施工する前であり、配管102が貫通孔101に挿通された状態を上方から見ている。配管102が貫通孔101に挿通された後に、耐火部材1を設置する方法を後施工と呼ぶ。以下の説明では後施工について説明するが、本発明は後施工だけでなく、配管102が挿通される前の貫通孔101の内部に耐火部材1を固定し、その後、配管102を貫通孔101に挿通する施工方法にも対応できる。
【0056】
まず、図4に示すように耐火部材1を配管102の外周面102aに沿った形状に変形させる。この例では2つの耐火部材1を使用する場合を示しており、従って、1つの耐火部材1は変形後に半円弧に近い形状をなす。
【0057】
その後、図7に示すように、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に耐火部材1を差し込んでいき、外周側シール材3及び内周側シール材4を貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に押し込む。貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置された外周側シール材3及び内周側シール材4は、弾性変形して圧縮された状態になるので、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとに全周に亘って密着して隙間が覆われる。このとき、保持部材5の係止部5bが貫通孔101の周縁部に位置する。
【0058】
1つ目の耐火部材1を設置した後、図8に示すように2つの目の耐火部材1を同様にして設置する。尚、耐火部材1を1つで構成することもでき、この場合は、配管102の外周面102aの周長と同じ長さを有する耐火部材1を用意すればよい。
【0059】
以上のようにして、建物の区画部100に形成された貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に、熱膨張性部材2とシール材3、4とが配置された耐火構造Aを構成することができる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、熱膨張性部材2を貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置することで、火災時には、熱膨張性部材2が貫通孔101の内部において膨張して貫通孔101が閉塞され、貫通孔101を介した延焼が抑制される。一方、熱膨張性部材2を貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置すると、この熱膨張性部材2には弾性材料からなるシール材3、4が固定されているので、このシール材3、4によって貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの隙間を覆うことができる。よって、従来のような不定形な充填材を貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に充填する作業は不要になり、現場での施工作業性が良好になるとともに、施工時間が短くなる。
【0060】
また、シール材3、4を貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に配置することで、配管102が偏心することなく、貫通孔101の中心に来るように調整することができる。
【0061】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係る耐火構造Aの縦断面図であり、この実施形態2では、区画部100の構造が中空床である点で実施形態1とは異なっており、それに伴って図10に示すように耐火部材1がゴムシール材を備えていない点も実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0062】
実施形態2の区画部100は、いわゆる二重構造の床である。区画部100は、上側板材110と、上側板材110から下方に離れて配置された下側板材111と、上側板材110及び下側板材111を繋ぐように形成された中間部材112とを備えている。上側板材110及び下側板材111に貫通孔101がそれぞれ形成されている。上側板材110と下側板材111とが上下方向に離れているので、区画部100は中空状になる。
【0063】
この実施形態2の耐火部材1は、ゴムシール部が無いので、中心線方向(上下方向)の寸法が短くなっている。また、実施形態2の耐火部材1の熱膨張性部材2の中心線方向の寸法は、実施形態1のものに比べて短くすることができる。
【0064】
上側板材110の貫通孔101に2つの耐火部材1を差し込み、また、下側板材111の貫通孔101にも2つの耐火部材1を差し込む。これら4つの耐火部材1は全て同じものとすることができる。火災時には、熱膨張性部材2が貫通孔101の内部において膨張して貫通孔101が閉塞されるので、貫通孔101を介した延焼が抑制される。
【0065】
この実施形態2の場合も実施形態1と同様に現場での施工作業性が良好になるとともに、施工時間が短くなる。
【0066】
また、図示しないが、配管102には継手管が設けられていてもよい。継手管を有する場合も、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に耐火部材1を差し込むことで設置することができる。
【0067】
また、図11に示す実施形態2の変形例2のように、配管102が屈曲している場合にも本発明を適用することができる。この例では、配管102の屈曲形状に対応するように、上側板材110の貫通孔101と、下側板材111の貫通孔101とが水平方向に離れている。配管102が屈曲している場合も、貫通孔101の内周面101aと配管102の外周面102aとの間に耐火部材1を差し込むことで設置することができる。
【0068】
また、例えば特開2006-234140号公報に開示されているように、中空壁の貫通部にスリーブ管を使用する工法があるが、本実施形態では図11に示すように任意の形状に屈曲した形状の配管102であっても対応可能である。
【0069】
(実施形態3)
図12は、本発明の実施形態3に係る耐火構造Aの縦断面図であり、この実施形態3では、区画部100が壁(中空壁)である点で実施形態1、2のものとは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0070】
区画部200は、上下方向に延びる第1板部201及び第2板部202で構成されている。第1板部201及び第2板部202は、互いに水平方向に間隔をあけて配置されるとともに、互いに平行に延びている。第1板部201及び第2板部202にそれぞれ貫通孔101が形成されている。第1板部201と第2板部202とが水平方向に離れているので、区画部200は中空状になる。
【0071】
この実施形態3の耐火部材1は、実施形態2のものと同様に、ゴムシール部が無いので中心線方向(水平方向)の寸法が短くなっている。また、耐火部材1の熱膨張性部材2の中心線方向の寸法を実施形態1のものに比べて短くすることができる。
【0072】
第1板部201の貫通孔101に2つの耐火部材1を差し込み、また、第2板部202の貫通孔101にも2つの耐火部材1を差し込む。これら4つの耐火部材1は全て同じものとすることができる。火災時には、熱膨張性部材2が貫通孔101の内部において膨張して貫通孔101が閉塞されるので、貫通孔101を介した延焼が抑制される。
【0073】
この実施形態3の場合も実施形態1と同様に現場での施工作業性が良好になるとともに、施工時間が短くなる。
【0074】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0075】
実施形態2の中空床や実施形態3の中空壁では、特に限定されるものではないが、部材として石膏ボードを使用することができる。実施形態2や実施形態3の場合、耐火部材1を上記開口部に設置する際に地震などの振動による脱落を防止するために、耐火部材1の係止部5bをタッカー(例えばステイプラー)等の固定手段によって石膏ボードに固定することができる。固定手段は、タッカーに限られるものではなく、区画部を構成している部材に差し込むことやねじ込むことができる部材を使用することができる。また、石膏ボードに限らず、例えばALC(軽量気泡コンクリート)等にも固定手段によって係止部5bを固定することができる。係止部5bを固定しておくことで、配管の移動や地震、その他の振動による耐火部材1のズレや落下を抑制することができ、所期の耐火性能を発揮できる。また、実施形態1において耐火部材1の係止部5bを固定手段によって区画部に固定することもできる。耐火部材1は固定手段を備えた構成とすることもできる。また、耐火構造Aは固定手段を備えた構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、例えば床や壁等の建物の区画部に形成された貫通孔の内周面と、該貫通孔に挿通される配管の外周面との間に配置して使用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 耐火部材
2 熱膨張性部材
3 外周側シール材
4 内周側シール材
5 保持部材
6 フィルム状不燃部材
7 ゴムシール材
100 区画部(床)
101 貫通孔
101a 内周面
102 配管
102a 外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12